説明

アルミン酸塩修飾又はホウ酸塩修飾二酸化ケイ素を含む光透過性熱保護要素

本発明は、少なくとも1つの支持要素と、アルカリケイ酸塩水溶液及びアルミン酸塩修飾又はホウ酸塩修飾二酸化ケイ素を含む反応生成物を含有する少なくとも1つの保護コーティングとを含む光透過性熱保護要素に関する。本発明は、前記要素を製造するための方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの支持要素とアルカリ金属ケイ酸塩水溶液及びアルミン酸塩又はホウ酸塩修飾二酸化ケイ素を含有する反応生成物を含む少なくとも1つの保護層とを有する透明な熱保護要素、並びに透明な熱保護要素を製造するためのプロセスにも関する。
【0002】
ドイツ特許出願公開第2 414 575号は、少なくとも片面にバリア形成物質を含有する層を有するポリマー膜を含む耐火層を含有する火炎遮蔽窓ガラスについて記載している。この物質は、アルミン酸塩又はアルカリ金属ケイ酸塩であってもよい。この物質は熱的に絶縁隔壁を形成するので、この物質の目的は、(1つ又は複数の)層が加熱時に赤外線をより通さないようにすることである。
【0003】
米国特許第4,190,698号は、水和アルカリ金属ケイ酸塩及び1種又は複数の助剤、例えば尿素、多価アルコール、コロイダルシリカ又はアルミン酸ナトリウムなどを含む少なくとも1つの乾燥層を含有する透明な防火窓ガラスについて記載している。コロイダルシリカ及びアルミン酸ナトリウムを使用すると、4未満のモジュラスが達成される。助剤を加える目的は、火災の場合における上記乾燥層の耐性の向上及びそれによる防火窓ガラスの耐性の向上である。これらの防火窓ガラスの製造における欠点は、最初の配合物から水を蒸発させることが必要なことであり、これは、製造技術の観点から困難である。乾燥防火層は、開放表面上への鋳込み、及びその後の乾燥によって形成され、閉鎖された空洞中に形成することはできない。保護層にアルミン酸ナトリウムを加えると沈殿物を生じ、それによって、さらなる欠点として、保護層が急速に濁ることも知られている。
【0004】
国際公開第2004/014813号パンフレットは、水ガラス及びアルミン酸塩を含む溶液に基づく熱保護要素の製造について記載しており、このアルミン酸塩は、クエン酸などの有機酸を用いて部分的に中和してからケイ酸塩溶液に加えなければならない。アルミン酸塩の部分中和を実施しないと、水ガラスとアルミン酸塩の安定な溶液が得られない。これらの熱保護要素の製造における欠点は、熱保護要素のための最初の配合物から水を蒸発させることが必要なことであり、これは、製造技術の点で困難である。
【0005】
国際公開第94/04355号パンフレットは、少なくとも1つの支持要素及び水含有アルカリ金属ケイ酸塩から構成される保護層を有する透明な熱保護要素の製造について記載している。このような透明な熱保護要素は、例えば、防火ガラスの製造のために使用されている。熱保護要素の重要な構成成分は、モジュラスとして知られている二酸化ケイ素のアルカリ金属酸化物の合計量に対するモル比が4:1より大きい混合比でアルカリ金属ケイ酸塩とシリカアクアゾルを反応させることによって製造される水含有アルカリ金属ケイ酸塩の保護層である。シリカゾル成分は、この場合は、アルカリ金属ケイ酸塩の硬化剤として使用されている。シリカゾルを用いた硬化により、他の既知の保護層で必要であり、製造技術の点で困難である、層の最初の配合物からの水の蒸発を省くことが可能になる。
【0006】
しかしながら、水含有アルカリ金属ケイ酸塩及び硬化剤としてのシリカゾルから構成される保護層の欠点は、国際公開第94/04355号パンフレットに記載されているように、使用中に濁る傾向があるということである。これは、20℃を超える温度に長期にわたってさらされた場合に特にあてはまり、夏季の間これが続くと、混濁プロセスが加速する可能性がある。
【0007】
電子顕微鏡写真から、水性アルカリ金属ケイ酸塩保護層の混濁は結晶化プロセスが原因であることが確認される。周期表の主グループIIIの元素の酸化物、特に酸化ホウ素又は酸化アルミニウムの追加によって、ガラス中の結晶化プロセスが促進されることが知られており、結果的にガラスの混濁が加速されることが予想される。
【0008】
したがって、高い透明性及び耐老化性を有する、透明な熱保護要素及びさらにこのような熱保護要素中で保護層として使用する物質が必要とされている。その上、保護層の出発組成物は、流動性があり、空洞中への鋳込みに適しており、その後適切な期間に硬化して保護層を形成するものであるべきである。
【0009】
したがって、かかる熱保護要素及びさらにこれらの熱保護要素中で保護層として使用する物質を提供することが本発明の目的であった。
【0010】
この目的は驚くべきことに、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液及びアルミン酸塩又はホウ酸塩修飾二酸化ケイ素を含有し、モジュラスが4〜7である反応生成物を含む保護層によって達成された。国際公開第2004/014813号パンフレットに記載されているような有機酸の追加は、ここでは必要ない。
【0011】
本発明はしたがって、少なくとも1つの支持要素とアルカリ金属ケイ酸塩水溶液及びアルミン酸塩又はホウ酸塩修飾二酸化ケイ素を含有する反応生成物を含む少なくとも1つの保護層とを有し、前記反応生成物のモジュラスが4〜7であることを特徴とする、透明な熱保護要素を提供する。
【0012】
アルカリ金属ケイ酸塩水溶液と同様に、水ガラス、好ましくはカリウム水ガラスを使用することが可能である。
【0013】
本発明の目的に適した二酸化ケイ素は、例えば、沈降二酸化ケイ素、シリカゲル、発熱性二酸化ケイ素又はシリカゾルの形で保護層中に導入することができ、或いはそれらから得ることができる。発熱性二酸化ケイ素又はシリカゾル、特に好ましくはシリカゾルを用いることが優先される。水含有二酸化ケイ素は、安定な懸濁液、ゾル若しくはゲル又はコロイド溶液若しくはコロイド分散液、例えばこのような形態の二酸化ケイ素のシリカゾルから得ることが好ましい。シリカゾル及びそれらの製造は、当業者に既知のものである。シリカゾルは市販されており、ここで一例としてH.C.Starck GmbH製のレバシル(Levasil)(登録商標)の商標名で入手できる製品を挙げることができる。
【0014】
シリカゾルは、水に非晶質二酸化ケイ素を溶かしたコロイド溶液であり、二酸化ケイ素ゾルとも呼ばれるが、通常はシリカゾルと略称される。これらの場合、二酸化ケイ素は、表面がヒドロキシル化された球状粒子の形で存在する。コロイド粒子の粒子直径は、一般に1〜200nmであり、粒径と相関関係があるBET比表面積(G.N.Sears、Analytical Chemistry 28巻、12号、1981〜1983、1956年12月の方法によって決定した)は15〜2000m/gとなる。SiO粒子の表面は、適切な対イオンによって相殺される電荷を持っており、コロイド溶液の安定化をもたらす。
【0015】
本発明の目的に適したシリカゾルは、pHが7〜11.5であり、例えば、少量のNaO、KO、LiO、アンモニア、有機窒素塩基、水酸化テトラアルキルアンモニウム又はアルカリ金属アルミン酸塩若しくはアンモニウムアルミン酸塩をアルカリ化剤として含有する。引用するpH値は、特に指示がない限り、25℃で決定したpH値である。適したシリカゾルの固体濃度は、SiO換算で5〜60重量%であることが好ましい。
【0016】
本発明の目的では、アルミン酸塩修飾二酸化ケイ素、特にアルミン酸塩修飾シリカゾルは、例えば、適当量のアルミン酸塩イオン、Al(OH)を撹拌しながら二酸化ケイ素に加えることによって調製することができる。アルミン酸塩イオンの溶液は、適切なことには希アルミン酸ナトリウム又はアルミン酸カリウム溶液である。二酸化ケイ素粒子は、適切なことには二酸化ケイ素粒子の表面積1nm当たり約0.05〜約2、好ましくは約0.1〜約2 Al原子である。アルミン酸塩修飾二酸化ケイ素粒子は、挿入又は置換されたアルミン酸塩イオンを含み、固定された負の表面電荷を有するアルミノケイ酸塩サイトをもたらす。アルミン酸塩修飾二酸化ケイ素粒子は、従来の未修飾二酸化ケイ素とは対照的に、それらの高い負の表面電荷をpH3まで保持する。未修飾二酸化ケイ素の場合、負の表面電荷は、pHを、通常pH約2に下げると減少し、これは未修飾二酸化ケイ素の零電荷点に相当する。したがって、未修飾二酸化ケイ素粒子のpH約8未満における表面電荷は、アルミン酸塩修飾二酸化ケイ素の表面電荷よりも小さい。アルミン酸塩修飾二酸化ケイ素のpHは、好ましくはイオン交換樹脂を用いて、3〜11、好ましくは約4〜10の範囲のpHに適切に設定することができる。次いでアルミン酸塩修飾二酸化ケイ素は、二酸化ケイ素含有量が約1〜60重量%となるように濃縮してよい。アルミン酸塩修飾二酸化ケイ素を調製するためのプロセスは、「The Chemistry of Silica」Ralph K.Iler著、407〜409頁、John Wiley & Sons、1979と米国特許第5,368,833号にも記載されている。
【0017】
類似の製造プロセスは、ホウ酸塩修飾二酸化ケイ素、特にホウ酸塩修飾シリカゾルに使用することができる。
【0018】
アルミン酸塩又はホウ酸塩修飾シリカゾルの製造には、本質的に、イオン交換による水ガラスの脱アルキル、SiO粒子の所望の粒径(分布)の調整及び安定化、所望のSiO濃度の調整並びにSiO粒子のアルミン酸塩又はホウ酸塩修飾の製造ステップを実施することが含まれる。これらのどのステップにおいても、SiO粒子がコロイド溶解状態のままであることはない。これによって、分離した一次粒子の存在が説明される。
【0019】
アルミン酸塩又はホウ酸塩修飾二酸化ケイ素は、未修飾二酸化ケイ素中のSiOの全重量に対して、アルミン酸塩又はホウ酸塩含有量が0.01〜1.5重量%であることが好ましく、0.05〜1.0重量%であることが特に好ましい。
【0020】
モジュラスという用語が知られている。当業者にとって、珪酸質結合剤のモジュラスは、分析によって決定できる、結合剤の固体中の二酸化ケイ素(SiO)とアルカリ金属酸化物MO(M=ホウ素、リチウム、ナトリウム又はカリウム)のモル比である。
【0021】
アルミン酸塩又はホウ酸塩修飾二酸化ケイ素は、モジュラスが4.2〜6.5であることが好ましい。
【0022】
反応生成物は、凝固点を降下させる薬剤をさらに含有できることが好ましく、凝固点を降下させる薬剤は、グリセリン、グリコール、糖、ジエチレングリコール及びポリエチレングリコールからなる群から選択される単官能価及び/又は多官能価アルコールであってよい。
【0023】
本発明の熱保護要素は、好ましくは防火複合ガラスである。
【0024】
本発明の好ましい実施形態では、(1つ又は複数の)保護層は、いずれの場合にも少なくとも2つの支持要素の間に位置している。2つの支持要素の間に保護層があるサンドイッチ構造或いは支持要素と保護層が交互に連続した多重サンドイッチ構造をこのようにして得ることができる。支持要素は、外側に存在することが好ましい。本発明の透明な熱保護要素に適した支持要素は、ガラス要素、特にガラス板又は窓ガラス材であるが、技術的及び物理的要件、例えば耐熱性を満たす限りは所望の光学的性質を有する他の物質も適している。しかしながら、ガラス製の支持要素が特に好ましい。支持物質として熱的又は化学的にプレストレスを与えたガラスを全体的に又は部分的に使用することも可能である。
【0025】
本発明の透明な熱保護要素は、本発明によれば、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液及びアルミン酸塩又はホウ酸塩修飾二酸化ケイ素を含有し、モジュラスが4〜7である反応生成物を用いて、この反応生成物を2つの支持要素の間の型穴中に導入することによって、或いはこの反応生成物を1つの支持要素に塗布し、続いて含水量を保持しながら硬化させて固体ケイ酸塩層を形成し、硬化させたケイ酸塩中の二酸化ケイ素とアルカリ金属酸化物のモル比(モジュラス)を4:1〜7:1の比にすることによって、得ることができる。
【0026】
本発明のプロセスは、それらの間に間隔が空くように配置された複数の支持要素の隙間に、反応生成物と、適宜、シリカゾル、無機若しくは有機酸、エステル、酸アミド、グリオキサール、アルキレン炭酸塩、アルカリ金属炭酸塩及び炭酸水素塩、ホウ酸塩、リン酸塩又はパラホルムアルデヒドなどの1種又は複数の他の硬化剤を充填し、複合要素を得ることを可能にする。高含水量の結果として、組成物は、非常に良く流れ、支持要素の間隔が短い複合要素の隙間にも難なく注ぐことができる。反応生成物は硬化して、乾燥することなく、すなわち水を除去することなく完全なケイ酸塩層を形成するので、乾燥操作を省くことができ、それによってこのような熱保護要素の製造が著しく単純化される。反応又は硬化時間は、加熱により既知の方法で縮めることができる。室温におけるキャスタブル反応生成物の可使時間は十分に長いので、いかなる場合でも通常の製造手順を可能とすることができる。加熱製造要素の製造の場合、キャスタブル反応生成物は、記載のように、少なくとも2つの支持要素の間の型穴に導入又は注ぎ込むことができる。しかしながら、キャスタブル反応生成物を1つの支持要素に塗布し、続いてもう1つの支持要素をまだ硬化していない保護層の上部に置き、或いは保護層を硬化させてからもう1つの支持要素を既知の方法で上記保護層上に接着させて結合することも可能である。支持要素へのキャスタブル反応生成物の塗布方法を変えることによって多重サンドイッチ構造を製造する場合、後者のプロセスを何回も繰り返さなければならない。適切な空洞中への注入の変形は、したがってこのような構造で利点がある。
【0027】
反応生成物は、処理の前に脱ガスすることが好ましい。これは、本発明の熱保護要素の光学的特性に悪影響を及ぼし得る封入ガスが、硬化ケイ酸塩層中に存在しないことを保証する。しかしながら、脱ガスも、空洞を満たした後で初めて実施することができる。支持要素へのケイ酸塩層の接着を増加させるために、陰イオン若しくは陽イオン界面活性剤の形態の助剤を処理前に反応生成物に加えてもよく、及び/又は支持要素の表面をこのような薬剤で前処理してもよい。支持要素の表面は、好ましくは結合剤、特にオルガノ官能性シラン及び/又はワックス分散液で前処理してもよい。
【0028】
本発明に基づいて製造した硬化ケイ酸塩の保護層は、優れた固有強度を有し、好ましくはガラス板又は他の透明な成分の形態の隣接する支持要素に対して優れた接着を示す。出発組成物として使用する反応生成物は、流動性があり、容易に成形することができる。硬化保護層は、高い光学特性及び透明性を持ち、優れた耐老化性を有する。硬化ケイ酸塩の形態の保護層における特性は、二酸化ケイ素の含有量が30〜55重量%の範囲のケイ酸塩層によって得られる。酸化ナトリウム、酸化カリウム若しくは酸化リチウム又はその混合物の形態のアルカリ金属酸化物の含有量は、16%以下である。硬化ケイ酸塩層は、水を最大で60%まで含有する。その結果、このような保護層を有する本発明の熱保護要素は、気化プロセスに比較的大量の水を利用可能なので極めて高い耐火性値を達成する。本発明によれば、アルミン酸塩又はホウ酸塩修飾二酸化ケイ素の使用は、保護層の耐老化性の改善をもたらす。
【0029】
透明な熱保護要素の場合、保護層又はケイ酸塩層は、有利には2枚のガラス板の間に配置され、これらのガラス板と一緒に複合要素を形成する。より高い耐熱性値を達成するためには、いずれの場合にも2枚のガラス板の間に配置される複数のケイ酸塩層を含み、ガラス板と多ケイ酸塩層が複合要素を形成する熱保護要素を構築する。本発明に基づくこれらの配置では、ケイ酸塩層は、支持要素を形成する隣接するガラス板と直接接触している。
【0030】
透明な熱保護要素の保護層中の、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液及びアルミン酸塩又はホウ酸塩修飾二酸化ケイ素を含有する反応生成物の使用は、文献中にこの形でこれまで記載されていない。
【0031】
本発明はしたがって、熱保護要素の少なくとも1つの保護層中の、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液及びアルミン酸塩又はホウ酸塩修飾二酸化ケイ素を含有し、モジュラスが4〜7であることを特徴とする反応生成物のこのような使用をさらに提供する。
【0032】
本発明の透明な熱保護要素の好ましい範囲は、ここで同様に適用される。
【0033】
最初に言及したように、このような使用におけるシリカゾルのアルミン酸塩又はホウ酸塩修飾は、結晶化の遅延よりもむしろ、より早い結晶化及びそれによる保護層の混濁をもたらすことが予想されるので、特に、このような使用は驚くべきことである。
【0034】
以下の実施例は、本発明を一例として例示しているに過ぎず、限定するものとみなすべきではない。
【実施例】
【0035】
以下防火層組成物と呼ぶ反応生成物は、カリウム水ガラスとアルミン酸塩又はホウ酸塩修飾シリカゾルの反応によって製造される。
【0036】
特定のモジュラス及び固形分を有するカリウム水ガラスは市販されているが、後述の通りにシリカゾルと水酸化カリウムとの反応によって調製することもできる。
【0037】
実施例1:モジュラスが2.25であり、固形分が55重量%であるカリウム水ガラスの調製
KOH含有量が約86.5重量%の商用水酸化カリウムペレット2460gを脱イオン水429gと一緒にコンデンサーと滴下漏斗とを備え、撹拌した6リットルの三つ口フラスコに入れた。三つ口フラスコを水浴中に配置した。冷却しながら、レバシル(登録商標)50/50%(比表面積:約50m/g;固形分:約50.5重量%;製造業者:H.C.Starck GmbH)5127gを、60〜80℃の範囲の温度が保持されるような速度で加えた。
【0038】
シリカゾルを加えた後、混合物を70℃でさらに3時間撹拌した。
【0039】
反応の副生成物として形成した沈殿物を沈殿させた後、溶液をデカントして移した。
【0040】
実施例2:比表面積が約50m/gであり、固形分が約50.5重量%であるシリカゾルのアルミン酸塩又はホウ酸塩修飾
アルミン酸塩又はホウ酸塩含有量は、未修飾シリカゾルの固形分に基づいてAl又はBとして計算した重量%で示す。
【0041】
例えば、a)0.64及びb)0.32重量%のAlとc)0.22重量%のBを含有するゾルを以下のようにして製造した:
【0042】
レバシル(登録商標)50/50% 1000gを、撹拌機、加熱用マントル、滴下漏斗及び蒸留橋を備えた三つ口フラスコ中に入れた。水500mlに商用アルミン酸ナトリウム25gを溶かした溶液a)60ml若しくはb)120ml又はc)水250mlに商用四ホウ酸ナトリウム5gと10%強度水酸化ナトリウム溶液6.6gとを溶かした溶液79mlをゆっくり1滴ずつ加えた。
【0043】
添加を完了した後、混合物を加熱し、最初の固形分に戻るような量(ml単位)の水を蒸留除去した。
【0044】
次いで蒸留橋を還流冷却器と取り替え、混合物を3時間の合計沸騰時間の間還流した。
【0045】
形成した不溶性物質を24時間の間沈殿させ、その後のデカンテーションによって分離除去した。
【0046】
実施例3:カリウム水ガラスとAlを0.32重量%含有するアルミン酸塩修飾シリカゾルからのモジュラスが4.7である防火層組成物の製造
実施例1のように特徴付けられたカリウム水ガラス170.4gを商用エチレングリコール13.5gと一緒にガス出口を備えた撹拌した250ml多口フラスコ中に入れた。加熱可能な水浴を用いて混合物を20℃まで加熱した。
【0047】
実施例2a)に記載されているように製造された、Alを0.32重量%含有し、比表面積が50m/gであり、固形分が50.5%であるシリカゾル116gを30分間にわたって加えた。
【0048】
反応混合物を20℃でさらに1.5時間の間撹拌した。次いで反応混合物を30分間にわかって40℃まで加熱し、この温度で30分間保持した。
【0049】
加熱浴中の水を取り替えることによって反応混合物を15分間にわたって20℃まで冷却した。この温度で混合物をさらに60分間撹拌した。終わりの20分の間、約110mbarの水ポンプ減圧を、ガス出口を介して適用した。
【0050】
この反応混合物約60mlを、ガラス製のピストン型ピペットを用いて100mlガラス瓶中に移し、クラウンシールを用いて閉めた。
【0051】
瓶に詰めた試料を乾燥器中80℃で約20時間加熱した。
【0052】
次いで沈殿していないことを完全な反応の判定基準として視覚的に確認し、適当な濁度光度計(例えばLange製の型式LTP 5)を用いて濁度1.6TU/F(ホルマジンに基づく濁度単位)を測定した。
【0053】
次いで80℃における試料の貯蔵を、濁度を定期的に測定しながら、63日後に3.5TU/Fに達するまで、すなわち濁度が視覚的に観察することができるまで続けた。
【0054】
実施例4:カリウム水ガラスとAlを0.64重量%含有するアルミン酸塩修飾シリカゾルからのモジュラスが4.7である防火層組成物の製造
実施例2b)に記載されているように製造され、Alを0.64重量%含有し、比表面積が50m/gであり、固形分が50.5%であるシリカゾルを実施例3に記載されている反応手順によって反応させた。
【0055】
実施例3に記載されているように20時間加熱した後、試料の濁度は、4.5TU/Fであった。反応が完了した後、濁度は3日後に2.1TU/Fに下がった。
【0056】
83日後、濁度が3.5TU/Fまで新たに増加したことが観察された。
【0057】
実施例5:カリウム水ガラスとBを0.22%含有するホウ酸塩修飾シリカゾルからのモジュラスが4.7である防火層組成物の製造
実施例2c)に記載されているように製造され、Bを0.22重量%含有し、比表面積が50m/gであり、固形分が50.5%であるシリカゾルを実施例3に記載されている反応手順によって反応させた。
【0058】
実施例3に記載されているように20時間加熱した後、試料は沈降を示し、濁度は2.2TU/Fであった。
【0059】
濁度の3.5TU/Fまでの増加は、25日後に認められた。
【0060】
比較例:カリウム水ガラスと未修飾シリカゾルからの防火層組成物の製造
比表面積が50m/gであり、固形分が50.5%である未修飾シリカゾルを実施例3に記載されている反応手順によって反応させた。
【0061】
実施例3に記載されているように20時間加熱した後、試料は沈降を示し、濁度は1.5TU/Fであった。
【0062】
濁度の3.5TU/Fまでの増加は、20日後に観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの支持要素と、
アルカリ金属ケイ酸塩水溶液及びアルミン酸塩又はホウ酸塩修飾二酸化ケイ素を含有する反応生成物を含む少なくとも1つの保護層と、を有し、
前記反応生成物のモジュラスが4〜7であることを特徴とする、透明な熱保護要素。
【請求項2】
前記二酸化ケイ素が、シリカゾル、沈降二酸化ケイ素、シリカゲル及び発熱性二酸化ケイ素からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の透明な熱保護要素。
【請求項3】
前記二酸化ケイ素がシリカゾルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の透明な熱保護要素。
【請求項4】
前記二酸化ケイ素のアルミン酸塩又はホウ酸塩含有量が、未修飾二酸化ケイ素中のSiOの全重量に対して、0.01〜2.0重量%であることを特徴とする、請求項1〜3の少なくとも一項に記載の透明な熱保護要素。
【請求項5】
前記二酸化ケイ素のアルミン酸塩又はホウ酸塩含有量が、未修飾二酸化ケイ素中のSiOの全重量に対して、0.01〜1.5重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%であることを特徴とする、請求項4に記載の透明な熱保護要素。
【請求項6】
前記アルカリ金属ケイ酸塩水溶液が水ガラスであることを特徴とする、請求項1に記載の透明な熱保護要素。
【請求項7】
前記反応生成物のモジュラスが4.2〜6.5であることを特徴とする、請求項1〜6の少なくとも一項に記載の透明な熱保護要素。
【請求項8】
前記反応生成物が、凝固点を降下させる薬剤をさらに含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の透明な熱保護要素。
【請求項9】
前記熱保護要素が防火複合ガラスであることを特徴とする、請求項1〜8の少なくとも一項に記載の透明な熱保護要素。
【請求項10】
1つ又は複数の前記保護層が、いずれの場合にも少なくとも2つの支持要素の間に位置していることを特徴とする、請求項1〜9の少なくとも一項に記載の透明な熱保護要素。
【請求項11】
前記反応生成物を2つの支持要素の間の型穴中に導入し、或いは1つの支持要素に塗布し、続いて含水量を保持したまま硬化させて固体ケイ酸塩層を形成し、前記硬化ケイ酸塩中の二酸化ケイ素とアルカリ金属酸化物のモル比を4:1〜7:1の比にすることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の透明な熱保護要素の製造方法。
【請求項12】
前記支持要素の表面を、オルガノ官能性シラン及び/又はワックス分散液の形態の結合剤で前処理することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
熱保護要素の少なくとも1つの保護層中の、アルカリ金属ケイ酸塩水溶液及びアルミン酸塩又はホウ酸塩修飾二酸化ケイ素を含有する反応生成物の使用において、前記反応生成物のモジュラスが4〜7であることを特徴とする使用。
【請求項14】
前記二酸化ケイ素が、シリカゾル、沈降二酸化ケイ素、シリカゲル及び発熱性二酸化ケイ素からなる群から選択されることを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記修飾二酸化ケイ素がシリカゾルであることを特徴とする、請求項13又は14に記載の使用。
【請求項16】
前記反応生成物のモジュラスが4.2〜6.5であることを特徴とする、請求項13〜15の少なくとも一項に記載の使用。
【請求項17】
前記二酸化ケイ素のアルミン酸塩又はホウ酸塩含有量が、未修飾二酸化ケイ素中のSiOの全重量に対して、0.01〜2.0重量%であることを特徴とする、請求項13〜16の少なくとも一項に記載の使用。
【請求項18】
前記二酸化ケイ素のアルミン酸塩又はホウ酸塩含有量が、未修飾二酸化ケイ素中のSiOの全重量に対して、0.01〜1.5重量%、好ましくは0.05〜1.0重量%であることを特徴とする、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記熱保護要素が防火複合ガラスであることを特徴とする、請求項13〜18の少なくとも一項に記載の使用。
【請求項20】
1つ又は複数の前記保護層が、いずれの場合にも少なくとも2つの支持要素の間に位置していることを特徴とする、請求項13〜19の少なくとも一項に記載の使用。

【公表番号】特表2011−517628(P2011−517628A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550009(P2010−550009)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際出願番号】PCT/CH2009/000080
【国際公開番号】WO2009/111897
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(502013067)ヴェトロテヒ・サン−ゴバン・(インターナショナル)・アクチェンゲゼルシャフト (3)
【出願人】(510239060)アクゾ ノーベル ケミカルズ インターナショナル ビー.ブイ. (3)
【Fターム(参考)】