アレルギーワクチン
本発明は、自己IgEポリペプチドに対するワクチンに関する方法および材料を提供する。キメラ自己IgEポリペプチドと、アルミニウム化合物、またはMN51、すなわちミネラルオイル溶液中のオレイン酸マンニドであるモンタニド不完全アジュバント(ISA) 51と、を含む組成物を記載する。前記組成物の投与は抗自己応答を誘導し、それによって検出可能な遊離IgEのレベルを低下させるはずである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2002年9月5日に出願された米国仮出願第60/408,648号の利益を請求するものである。
【0002】
背景
1. 技術分野
本発明は、ポリペプチド(例えば、キメラIgEポリペプチド)とアジュバントとを含むワクチンの使用に関する方法および材料に関する。そのようなワクチンを用いて、抗自己応答(例えば、抗自己IgE応答)を誘導することができる。
【背景技術】
【0003】
2. 背景情報
過去数十年の間、免疫系の機能不全により引き起こされる様々な疾患が現代医学の主要な課題になってきている。2つのそのような領域は、アレルギー性疾患および自己免疫疾患である。アレルギーは、過去20〜30年間、ほとんど蔓延状態になってきた。概算で総人口の20〜30%が罹患している。アトピー性アレルギー、またはIgE媒介性アレルギーが、優勢な形態である。
【0004】
一般的な型のアトピー性アレルギーとしては、花粉症、毛皮アレルギー、塵ダニアレルギー、昆虫毒アレルギー、外因性喘息、および多くの型の食物アレルギーが挙げられる。興味深い問題は、これらの型の疾患に対するワクチンを開発できるかどうかである。20世紀の始め以来、減感作療法を用いてアレルギーが治療されてきた(Noon, Lancet, 1:1572(1911);およびFreeman, Lancet, 1:1178(1914))。これは、アレルゲン依存的治療戦略であり、注入によって患者を治療するためのアレルゲン抽出物の使用を含む。減感作療法は、しかしながら、しばしば効力が低いことおよび時には重篤な副作用があることから、疑問が投げかけられてきた。さらに、個々のアレルギー形態のそれぞれについて、異なる抽出物を用いなければならない。かくして、アレルギーを治療するための新しい戦略が現在、評価されている。
【0005】
ワクチンは、典型的には、ミョウバンなどのアジュバントと共に投与する。しかしミョウバンは、細胞媒介性免疫応答の比較的弱い増強物質である(KrishnanらInfect. Immun., 68:54-63(2000)ならびにGuptaら、Adjuvant properties of aluminium and calcium compounds, p. 229-248. M.F. PowellおよびM.J. Newman(編), Vaccine design: the subunit and adjuvant approach. Plenum Press, New York, NY(1995))。さらに、水酸化アルミニウムは、注入部位に好酸球を誘引し、IgE媒介性アレルギー反応を促進し得る抗原特異的な総IgE抗体のレベルを増加させることが報告されている(Baylorら、Vaccine, 20:S18-S23 (2002); Walls, Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 156:431-435 (1977);およびNagelら、J.Immunol., 118:334-341(1977))。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、自己ポリペプチドに対するワクチンに関する材料および方法を提供する。例えば、本発明は、ポリペプチド(例えば、キメラIgEポリペプチド)とアジュバントとを含む組成物を提供する。このポリペプチドは、典型的には、自己および非自己成分を含み、これは哺乳動物に投与した場合、抗自己および抗非自己免疫応答の両方をもたらし得る。例えば、哺乳動物に投与した場合、本発明で提供されるキメラIgEポリペプチドは、喘息、アレルギー、および湿疹などのIgE関連疾患のIgE抗体作用を低減させることができる。アジュバントは、典型的には、他のアジュバントを含む組成物と比較して、比較的高い抗自己応答を与えるように選択される。
【0007】
本発明は、アジュバントと組合せたキメラIgEポリペプチドを用いて、哺乳動物における検出可能な遊離IgE抗体のレベルを低下させることができるという発見に基づくものである。例えば、アルミニウム化合物と組合せたキメラIgEポリペプチドの投与は、予想外にも、アルミニウム化合物が総IgEレベルを増加させるという以前の報告と違って、検出可能な遊離IgE抗体のレベルの低下をもたらした。
【0008】
一般的には、本発明の一態様は、ポリペプチド(例えば、OROポリペプチドまたはOSOポリペプチド)およびミョウバンを含む組成物を特徴とし、ここで該ポリペプチドは自己IgEポリペプチド配列を含むものであり、かつ、哺乳動物への該組成物の投与は100を超える力価希釈50値を示す抗自己IgE抗体応答を生成する。この組成物は、約10μg〜約1 gの前記ポリペプチドを含んでもよい。この組成物は、約280μgの前記ポリペプチドを含んでもよい。この組成物は、約10μl〜約1 mlのミョウバンを含んでもよい。この組成物は、約50μlのミョウバンを含んでもよい。力価希釈50値は、150、200、または400を超えるものであってよい。
【0009】
別の実施形態においては、本発明は、ポリペプチド(例えば、OROポリペプチドまたはOSOポリペプチド)およびMN51を含む組成物を特徴とし、ここで該ポリペプチドは自己IgEポリペプチドを含むものであり、かつ、哺乳動物への該組成物の投与は100を超える力価希釈50値を示す抗自己IgE抗体応答を生成する。この組成物は、約10μg〜約1 gの前記ポリペプチドを含んでもよい。この組成物は、約100μgの前記ポリペプチドを含んでもよい。この組成物は、約10μl〜約1 mlのMN51を含んでもよい。この組成物は、約50μlのMN51を含んでもよい。力価希釈50値は150、200、または400を超えるものであってよい。
【0010】
本発明の別の実施形態は、ミョウバンと、約280μgのポリペプチド(例えば、OROポリペプチドまたはOSOポリペプチド)とを含む組成物を特徴とする。
【0011】
別の実施形態においては、本発明は、MN51と、少なくとも約100μgのポリペプチド(例えば、OROポリペプチドまたはOSOポリペプチド)とを含む組成物を特徴とする。
【0012】
別の態様においては、本発明は、哺乳動物が100を超える力価希釈50値を示す抗自己IgE抗体応答を生成する条件下で、IgEポリペプチドに由来する自己ポリペプチド配列を含むポリペプチドとミョウバンとを含む組成物を、該哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物において抗自己IgE抗体応答を誘導する方法を特徴とする。
【0013】
別の実施形態においては、本発明は、哺乳動物が100を超える力価希釈50値を示す抗自己IgE抗体応答を生成する条件下で、IgEポリペプチドに由来する自己IgEポリペプチド配列を含むポリペプチドとMN51とを含む組成物を、該哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物において抗自己IgE抗体応答を誘導する方法を特徴とする。
【0014】
別の実施形態においては、本発明は、哺乳動物(例えば、サルまたはヒトなどの霊長動物)における可逆的な抗自己IgE応答を誘導する方法を特徴とする。そのような方法は、前記哺乳動物が、応答がピークに達した後に時間と共に低下するような様式で自己IgEに対する抗体応答を開始する条件下で、自己IgE配列を有するポリペプチドを、該哺乳動物に投与することを含む。例えば、この抗自己IgE応答は、時間と共に低下する(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月またはそれ以上の月数以内に検出不能なレベルまで減少する)一次応答であってよい。
【0015】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物(例えば、サルまたはヒトなどの霊長動物)が一次抗自己IgE応答を経験した後に、前記哺乳動物における抗自己IgE応答を誘導する方法を特徴とする。そのような方法は、前記哺乳動物が、二次抗体応答と一致するような様式で自己IgEに対する抗体応答を開始する条件下で、自己IgE配列を有するポリペプチドを、該哺乳動物に投与することを含む。
【0016】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物(例えば、サルまたはヒトなどの霊長動物)における一連の抗自己IgE応答を誘導する方法を特徴とする。そのような方法は、前記哺乳動物が各投与の少なくとも1年(例えば、少なくとも11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1ヶ月以内)以内にピークに達する検出可能な抗自己IgE応答を開始する条件下で、自己IgE配列を有するポリペプチドを、該哺乳動物に異なる時点で投与することを含む。
【0017】
本発明の別の実施形態は、自己IgEポリペプチド配列を含むポリペプチドと、アルミニウム化合物とを含む組成物を特徴とし、ここで哺乳動物への該組成物の投与は、該哺乳動物における検出可能な遊離IgEのレベルを低下させる。このポリペプチドは、キメラIgEポリペプチドであってもよい。このポリペプチドは、配列番号3、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載の配列を含みうる。この組成物は、約10μg〜約1 gの前記ポリペプチドを含んでもよい。この組成物は、約280μgの前記ポリペプチドを含んでもよい。前記アルミニウム化合物は、アルミニウムヒドロゲル化合物であってもよい。前記アルミニウム化合物は、ミョウバンであってもよい。この組成物は、約10μl〜約1 mlのミョウバンを含んでもよい。この組成物は、約50μlのミョウバンを含んでもよい。前記の低下は少なくとも約10%の低下(例えば、少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90または95%の低下)であってよい。この低下は、約10%〜約95%(例えば、約20%〜約95%、約25%〜約95%、約50%〜約95%、約75%〜約95%、約85%〜約95%、約25%〜約80%、または約50%〜約80%)の低下であってよい。この低下は、ELISAにおいて検出可能なものであってよい。IgE受容体ポリペプチド配列をELISAにおいて用いることができる。前記哺乳動物への前記組成物の投与は、100を超える(例えば、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、または1500を超える)力価希釈50値を示す抗自己IgE抗体応答を生成し得る。
【0018】
本発明の別の実施形態は、自己IgEポリペプチド配列を含むポリペプチドと、MN51とを含む組成物を特徴とし、ここで哺乳動物への該組成物の投与は、該哺乳動物における検出可能な遊離IgEのレベルを低下させる。このポリペプチドは、キメラIgEポリペプチドであってもよい。このポリペプチドは、配列番号3、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載の配列を含んでもよい。この組成物は、約10μg〜約1 gの前記ポリペプチドを含んでもよい。この組成物は、約100μgの前記ポリペプチドを含んでもよい。この組成物は、約10μl〜約1 mlのMN51を含んでもよい。この組成物は、約50μlのMN51を含んでもよい。前記の低下は少なくとも約10%の低下(例えば、少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90または95%の低下)であってよい。この低下は、約10%〜約95%(例えば、約20%〜約95%、約25%〜約95%、約50%〜約95%、約75%〜約95%、約85%〜約95%、約25%〜約80%、または約50%〜約80%)の低下であってよい。この低下は、ELISAにおいて検出可能なものであってよい。IgE受容体ポリペプチド配列をELISAにおいて用いることができる。前記哺乳動物への前記組成物の投与は、100を超える(例えば、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、または1500を超える)力価希釈50値を示す抗自己IgE抗体応答を生成し得る。
【0019】
本発明の別の実施形態は、アルミニウム化合物と、約30〜300μgのキメラIgEポリペプチドとを含む組成物を特徴とする。
【0020】
本発明の別の実施形態は、MN51と、約30〜300μgのキメラIgEポリペプチドとを含む組成物を特徴とする。
【0021】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物における抗自己IgE抗体応答を誘導する方法を特徴とする。この方法は、前記哺乳動物が、該哺乳動物における検出可能な遊離IgEのレベルを低下させる条件下で、自己ポリペプチド配列を含むポリペプチドとアルミニウム化合物とを含む組成物を、該哺乳動物に投与することを含む。このポリペプチドは、配列番号3、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0022】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物における抗自己IgE抗体応答を誘導する方法を特徴とする。この方法は、前記哺乳動物における検出可能な遊離IgEのレベルを該哺乳動物が低下させる条件下で、自己ポリペプチド配列を含むポリペプチドとMN51とを含む組成物を、該哺乳動物に投与することを含む。このポリペプチドは、配列番号3、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0023】
本発明の別の実施形態は、霊長動物における可逆的な抗自己IgE応答を誘導する方法を特徴とする。この方法は、ピークに達した後に時間と共に低下する自己IgEに対する抗体応答を、前記霊長動物が開始する条件下で、自己IgE配列を有するポリペプチドを、該霊長動物に投与することを含む。この霊長動物はサルであってもよい。自己IgEに対する抗体応答は、時間と共に低下する一次応答であってもよい。自己IgEに対する抗体応答は、投与から9ヶ月以内に検出不能なレベルまで減少し得る。前記ポリペプチドは、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載の配列を含んでもよい。
【0024】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物が一次抗自己IgE応答を経験した後に該哺乳動物において抗自己IgE応答を誘導する方法を特徴とする。この方法は、二次抗体応答と一致するような様式で自己IgEに対する抗体応答を哺乳動物が開始する条件下で、自己IgE配列を有するポリペプチドを、該哺乳動物に投与することを含む。この哺乳動物は霊長動物であってよい。前記ポリペプチドは、配列番号3、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載の配列を含んでもよい。
【0025】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物において一連の抗自己IgE応答を誘導する方法を特徴とする。この方法は、哺乳動物が各投与の少なくとも1年以内にピークに達する検出可能な抗自己IgE応答を開始する条件下で、自己IgE配列を有するポリペプチドを、該哺乳動物に異なる時点で投与することを含む。この哺乳動物は、各投与の少なくとも3ヶ月以内にピークに達する検出可能な抗自己IgE応答を開始してもよい。
【0026】
特に定義しない限り、本明細書で用いる全ての技術および科学用語は、本発明が属する分野における通常の知識を有する者により一般的に理解されるものと同じ意味を有するものとする。本明細書に記載のものと類似または等価な方法および材料を用いて、本発明を実施することができるが、好適な方法および材料を以下に説明する。本明細書に記載の全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるものとする。利害が対立する場合、定義を含め、本明細書が支配するであろう。さらに、材料、方法、および実施例は単に例示的なものであり、限定することを意図するものではない。
【0027】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を、添付の図面および以下の記載で説明する。本発明の他の特徴、課題、および利点は、説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかであろう。
【0028】
詳細な説明
本発明は、自己ポリペプチドに対するワクチンに関する方法および材料を提供する。例えば、本発明は、ポリペプチドとアジュバントとを含む組成物を提供する。このポリペプチドは、典型的には、自己および非自己成分を含み、これは哺乳動物に投与した場合、抗自己および非自己免疫応答の両方をもたらし得る。アジュバントは、通常は、他のアジュバントを含む組成物と比較して、比較的高い抗自己応答を与えるように選択される。
【0029】
本明細書で用いる用語「ポリペプチド」は、長さまたは翻訳後修飾(例えば、リン酸化やグリコシル化)にかかわらず、アミノ酸の鎖を指す。例えば、いくつかの実施形態において、前記ポリペプチドを、それがリン酸化およびグリコシル化などの修飾を欠如するように非修飾にすることができる。このポリペプチドは、単一の天然ポリペプチドの一部もしくは全部を含んでもよく、または2種以上の天然ポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含むキメラポリペプチドであってもよい。「アジュバント」は、ポリペプチドなどの特定の抗原に対する免疫応答を増強することができる免疫学的化合物である。典型的には、本発明の組成物を哺乳動物に投与して、投与された組成物のポリペプチド成分に対する抗体を該哺乳動物が産生するようにする。この哺乳動物は、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、またはヒトもしくは非ヒト霊長動物(例えば、カニクイザル)などの霊長動物であってよい。
【0030】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、哺乳動物において抗自己ポリペプチド抗体応答を誘導することができる。例えば、ポリペプチドは、1種以上の非自己ポリペプチドセグメント(例えば、非自己ポリペプチド配列)をともに含むかまたは含まない、1種以上の自己ポリペプチドセグメント(例えば、自己ポリペプチド配列)を含んでもよい。ポリペプチド配列および特定の哺乳動物に関して本明細書で用いられる用語「自己」とは、その哺乳動物の免疫系の観点から自己として認められる配列を指す。典型的には、自己ポリペプチドセグメントは、前記組成物を投与すべき哺乳動物種にとって天然のものであるポリペプチドに由来する配列と同一であるか、または類似しているアミノ酸配列である。ポリペプチド配列および特定の哺乳動物に関して本明細書で用いられる用語「非自己」とは、その哺乳動物の免疫系の観点から外来のものとして認められる配列を指す。典型的には、非自己ポリペプチドセグメントは、前記組成物を投与すべき哺乳動物種にとって天然のものではないアミノ酸配列である。ポリペプチドは、例えば、ラットおよびオポッサムのIgE分子に由来する配列を含むOROポリペプチドであってよく、本明細書に記載のようにしてラットに投与することができる。
【0031】
本発明で提供されるポリペプチドは、1コピーを超える自己セグメントを含んでもよい(例えば、ラットIgEアミノ酸配列に由来する2コピーのセグメントを含むOROROポリペプチド)。任意のタイプの哺乳動物(例えば、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、カニクイザルなどの非ヒト霊長動物、またはヒト)のポリペプチドに由来するセグメントを、本発明で提供されるポリペプチド中に含有させることができる。例えば、PCT出願第PCT/SE99/01896号に記載のポリペプチドのいずれをも用いることができる。あるいは、前記ポリペプチドはタグ(例えば、Hisタグ、mycタグ、またはFLAG(登録商標)タグ)を含んでもよい。そのようなタグは、典型的には、前記ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に配置されるが、該ポリペプチド内のいずれの場所にも配置することができる。これらのタグは、前記ポリペプチドの検出および/または精製を助ける一方で、非自己成分として機能し得る。
【0032】
自己セグメント、ならびに非自己セグメントは、任意の長さを有してよいが、典型的には少なくとも5アミノ酸長(例えば、少なくとも約5、10、20、30、40、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、150、175、200、500、750、1000、2000、3000、4000、5000またはそれ以上のアミノ酸長)である。例えば、自己セグメント、ならびに非自己セグメントは、約20、30、40、50、60、70、または80アミノ酸から約90、100、110、120、130、140、150、200、250、または500アミノ酸の範囲におよぶ長さを有してもよい。典型的には、ポリペプチドの自己セグメントは、前記組成物を投与する哺乳動物にとって天然のものであるポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%(例えば、85、90、95、または99%)同一であるアミノ酸配列を有する。例えば、ヒトにワクチン接種する場合、キメラIgEポリペプチドの自己IgEセグメントは、ヒトIgE配列に対してその110アミノ酸長にわたり約95%の同一性を有する約110アミノ酸長であってよい。
【0033】
任意の核酸またはアミノ酸配列に関して、長さとその長さにわたる同一性%は、以下のように決定される。第1に、核酸またはアミノ酸配列を、BLASTNバージョン2.0.14およびBLASTPバージョン2.0.14を含むスタンドアローン型BLASTZに由来するBLAST2 Sequences(Bl2seq)プログラムを用いて、同定された核酸またはアミノ酸配列と比較する。このスタンドアローン型BLASTZは、Fish & Richardsonのウェブサイト(www.fr.com/blast;すなわち"fr"ドット"com"スラッシュ"blast"のワールド・ワイド・ウェブ)または米国政府による国立バイオテクノロジー情報センター・ウェブサイト(www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/executables;"ncbi"ドット"nlm"ドット"nih"ドット"gov"スラッシュ"blast"スラッシュ"executables"のワールド・ワイド・ウェブ)にて取得することができる。Bl2seqプログラムの使用方法を説明する説明書は、BLASTZに添付しているリードミーファイルに見出すことができる。
【0034】
Bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムのいずれかを用いて2つの配列間の比較を実行する。核酸配列を比較するにはBLASTNを用いるが、アミノ酸配列を比較するにはBLASTPを用いる。2つの核酸配列を比較するために、オプションを以下のように設定する: -iを、比較しようとする第1の核酸配列を含むファイルに設定する(例えば、
);-jを、比較しようとする第2の核酸配列を含むファイルに設定する(例えば、
);-pを、blastnに設定する;-oを任意の所望のファイル名に設定する(例えば、
); -qを-1に設定する;-rを、2に設定する;および他のオプションは全てそのデフォルト設定のままにする。例えば、以下のコマンドを用いて、2つの配列間の比較を含む出力ファイルを作製することができる:
2つのアミノ酸配列を比較するには、Bl2seqのオプションを以下のように設定する:-iを、比較しようとする第1のアミノ酸配列を含むファイルに設定する(例えば、
);-jを、比較しようとする第2のアミノ酸配列を含むファイルに設定する(例えば、
);-pを、blastpに設定する;-oを任意の所望のファイル名に設定する(例えば、
);および他のオプションは全てそのデフォルト設定のままにする。例えば、以下のコマンドを用いて、2つのアミノ酸配列間の比較を含む出力ファイルを作製することができる:
標的配列が、同定された配列の任意の部分との相同性を有する場合、指定された出力ファイルはアラインメントされた配列としてそれらの相同性領域を提示するであろう。標的配列が、同定された配列の任意の部分との相同性を有しない場合、指定された出力ファイルはアラインメントされた配列を提示しないであろう。一度アラインメントされたら、任意の一致した位置から開始し別の任意の一致した位置で終了する同定された配列に由来する配列とのアラインメントとして提示された標的配列から、連続したヌクレオチドまたはアミノ酸残基の数を計数することにより、長さを決定する。一致した位置は、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基が標的配列および同定された配列の両方に存在する任意の位置である。ギャップはヌクレオチドまたはアミノ酸残基ではないため、標的配列中に存在したギャップは計数されない。同様に、標的配列のヌクレオチドまたはアミノ酸残基は計数されるが、同定された配列に由来するヌクレオチドまたはアミノ酸残基は計数されないため、同定された配列中に存在したギャップは計数されない。
【0035】
決定された長さに渡る同一性%は、その長さにわたって一致した位置の数を計数し、その数を長さで割った後、得られる値に100を乗じることにより決定する。例えば、(1)1000アミノ酸の標的配列を200アミノ酸の試験配列と比較し、(2)Bl2seqプログラムが、その200ヌクレオチドの領域の最初と最後のヌクレオチドが一致する試験配列の領域とアラインメントされた標的配列に由来する200アミノ酸を提示し、そして(3)これらの200個のアラインメントされたヌクレオチドにわたる一致の数が180である場合、1000ヌクレオチドの標的配列は200の長さおよびその長さにわたる90%の同一性を含む(すなわち、180/200 * 100 = 90)。
【0036】
同定された配列とアラインする単一の核酸またはアミノ酸標的配列は、長さ毎にその個々の同一性%を示す多くの様々な長さを有し得ることは理解されるであろう。例えば、以下のような同定された配列とアラインする20ヌクレオチドの領域を含む標的配列は、表1に列挙されるものを含む多くの異なる長さを有する。
【0037】
【表1】
【0038】
同一性%の値は小数第2位を四捨五入したものであることに留意する。例えば、78.11、78.12、78.13、および78.14は78.1に切り下げられ、一方、78.15、78.16、78.17、78.18、および78.19は78.2に切り上げられる。また、長さの値は常に整数であることにも留意する。
【0039】
任意の方法を用いて、ポリペプチドを取得することができる。例えば、分子クローニング技術を用いて、自己および非自己セグメントを含むポリペプチド(例えば、ORO)をコードする核酸構築物を製造することができる。そのような構築物は、E. coliもしくはS. cerevisiaeなどの生物中で、または例えば細胞系で発現させた後、細胞抽出物から、または培養上清から、精製することができる。あるいは、ポリペプチドを化学的に合成することができる。
【0040】
特に、核酸ベクターをキメラIgEポリペプチドを発現するように設計することができる。そのような核酸ベクターの例としては、限定されるものではないが、図1、2、5および6に記載のものが挙げられる。さらに、核酸ベクターは挿入配列を含んでもよい。本明細書で用いる用語「挿入配列」とは、核酸ベクター中に挿入されてその挿入された核酸配列が発現され得るようにした核酸配列を指す。挿入配列は、図4、8、10、12、14、16、18、20、または23に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドなどのキメラIgEポリペプチドをコードする核酸配列であってよい。そのような核酸配列は、図3、7、9、11、13、15、17、19、22または24に記載のものであってよい。本明細書で用いる用語「キメラIgEポリペプチド」とは、異なる種に由来するIgE配列(例えば、完全ドメイン、半分のドメイン、または4分の1ドメイン)の組合せを有するポリペプチドを指す。キメラIgEポリペプチドは、典型的には、IgE定常重鎖(CH)ドメイン(例えば、CH1、CH2、CH3、またはCH4)を含む。例えば、配列番号2に記載の配列を有する挿入配列は、オポッサムCH2-ラットCH3-オポッサムCH4(ORO)キメラIgEポリペプチド(配列番号3)をコードし得る。挿入配列の他の例としては、限定されるものではないが、(1)オポッサムCH2-ヒトCH3-オポッサムCH4(OSO)キメラIgEポリペプチド(配列番号6)をコードする、配列番号5に記載の配列を有する挿入配列、(2)オポッサムCH2-ラットCH3-オポッサムCH2-ラットCH3-オポッサムCH4(ORORO)キメラIgEポリペプチド(配列番号8)をコードする、配列番号7に記載の配列を有する挿入配列、および(3)オポッサムCH2-ヒトCH3-オポッサムCH2-ヒトCH3-オポッサムCH4(OSOSO)キメラIgEポリペプチド(配列番号16)をコードする、配列番号15に記載の配列を有する挿入配列、が挙げられる。さらに、挿入配列は、国際特許出願第PCT/SE99/01896号に開示されたポリペプチドのいずれかをコードする配列を有してもよい。ラットおよびヒトに加えて、他の種に由来するIgE配列(例えば、ドメイン)を、キメラ挿入配列中で用いることができる。そのような種としては、限定されるも
のではないが、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシ、およびサルが挙げられる。例えば、オポッサムおよびサル(例えば、カニクイザル)に由来するIgEドメインを含む挿入配列は、オポッサムCH2-カニクイザルCH3-オポッサムCH4 (OCO)キメラIgEポリペプチドをコードし得る。オポッサムおよびサルに由来するIgE配列(例えば、ドメイン)を有する他の挿入配列としては、限定されるものではないが、C末端ヒスチジンタグを含むオポッサムCH2-カニクイザルCH3-オポッサムCH4 (OCO-H)をコードする配列;オポッサムCH2-カニクイザルCH3-オポッサムCH2-カニクイザルCH3-オポッサムCH4 (OCOCO)をコードする配列;およびC末端ヒスチジンタグを含むオポッサムCH2-カニクイザルCH3-オポッサムCH2-カニクイザルCH3-オポッサムCH4 (OCOCO-H)をコードする配列が挙げられる。
【0041】
挿入配列を改変することができる。そのような改変としては、限定されるものではないが、付加、欠失、置換、点突然変異、およびそれらの組合せが挙げられる。挿入配列を、該挿入配列によりコードされるポリペプチドの精製を助けるためにC末端ポリヒスチジン配列を含むように改変することができる。この目的で使用されるポリヒスチジン配列は、他の文献(Fordら、Protein Expr. Purif., 2(2-3):95-107, 1991)に記載されている。例えば、配列番号13に記載の配列を有する挿入配列は、C末端ポリヒスチジン配列を含むOSOキメラIgEポリペプチド(OSO-H;配列番号14)をコードし得る。挿入配列を、点突然変異を含むように改変することができる。例えば、配列番号11に記載の配列を有する挿入配列は、肥満細胞受容体結合を喪失させるヒトCH3ドメイン中の点突然変異を含むOSOSOキメラIgEポリペプチド(modOSOSO;配列番号12)をコードし得る。改変された挿入配列の他の例としては、限定されるものではないが、C末端ポリヒスチジン配列を含むOSOSOキメラIgEポリペプチド(OSOSO-H;配列番号18)をコードする配列番号17に記載の配列を有する挿入配列、およびC末端ポリヒスチジン配列を組み込み肥満細胞受容体結合を喪失させるヒトCH3ドメイン中に点突然変異を含むOSOSOキメラIgEポリペプチド(modOSOSO-H;配列番号10)をコードする配列番号9に記載の配列を有する挿入配列が挙げられる。
【0042】
核酸ベクターはまた、挿入配列の発現に影響を及ぼす構成要素を含んでもよい。そのような構成要素の例としては、限定されるものではないが、プロモーター、エンハンサー、リーダー、およびポリアデニル化配列が挙げられる。そのような構成要素を、前記挿入配列に機能し得る形で連結することができる。本明細書で用いられる用語「機能し得る形で連結した」とは、そのように記載された構成要素が、その通常の機能を果たすように構成された配置を指す。例えば、OSOSOキメラIgEポリペプチドをコードする挿入配列を含む核酸ベクターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列(例えば、Thomsonら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81(3):659-663, 1984を参照)、免疫グロブリン(Ig)リーダー配列(例えば、Neubergerら、EMBO J., 2(8):1373-1378, 1983を参照)、およびウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化配列(例えば、Goodwinら、J. Biol. Chem., 267:16330-16334, 1992を参照)をも含んでもよい。この場合には、前記構成要素を挿入配列に機能し得る形で連結させて、CMVプロモーターが、Igリーダー配列およびbGHポリアデニル化配列を含む挿入配列の発現を駆動することができ、Igリーダー配列が調製された小胞体の内腔中で発現された挿入配列が分泌されるようにすることができ、また、bGHポリアデニル化配列が挿入配列の転写物を安定化させることができる。
【0043】
さらに、核酸ベクターは、該核酸ベクターを含む宿主細胞の増殖、維持、または分泌を助ける構成要素を含んでもよい。そのような構成要素としては、限定されるものではないが、複製起点および抗生物質選択マーカーが挙げられる。例えば、CMVプロモーター配列、Igリーダー配列、SV40後期ポリアデニル化配列、およびOSOSOキメラIgEポリペプチドをコードする挿入配列を含有する核酸ベクターは、f1複製起点配列、発現された場合に細菌宿主細胞に対してアンピシリン耐性を付与する配列、および発現された場合に哺乳動物宿主細胞に対してネオマイシン耐性を付与する配列をも含んでよい。抗生物質選択マーカーの他の例としては、限定されるものではないが、発現された場合に、宿主細胞に対して、ハイグロマイシンB、ピューロマイシン、カナマイシン、テトラサイクリン、ブラスチシジンS、ゲネチシン(登録商標)、およびゼオシンへの耐性を付与する配列が挙げられる。本明細書に記載の1種または2種以上の構成要素を含む核酸ベクターを、例えば、Invitrogen (Carlsbad, CA)およびPromega (Madison, WI)などから商業的に入手することができる。
【0044】
自己IgE配列を含むポリペプチドを、本発明で提供される挿入配列(例えば、ORO、OSO、ORORO、modORORO-H、modOSOSO、OSO-H、OSOSO、およびOSOSO-H)のうち少なくとも1種を含有する核酸ベクター(例えば、Promega社製pCI-neoベクター、カタログ番号E1841)を含む宿主細胞を用いて取得することができる。そのような細胞は、原核細胞(例えば、JM109もしくはDH5α細胞)であっても、真核細胞(例えば、NS0、HeLa、BHK-21、COS-7、Sf9、もしくはCHO細胞)であってもよい。前記核酸ベクターを含む宿主細胞は、コードされたポリペプチドを発現してもしなくてもよい。例えば、宿主細胞は、他の宿主細胞中での使用のために、前記核酸ベクターを単に増殖させるために機能してもよい。さらに、核酸ベクターを、宿主のゲノム中に組み込むか、またはエピソーム状態で維持させることができる。かくして、宿主細胞を、前記核酸ベクターを用いて安定的または一過性にトランスフェクトすることができる。
【0045】
宿主細胞は、キメラIgEポリペプチドをコードする挿入配列を含む核酸ベクターを含んでもよい。例えば、宿主細胞は、OSOキメラIgEポリペプチド、または本発明で提供されるキメラIgEポリペプチドのいずれか、をコードする挿入配列を含有する核酸ベクターを含んでもよい。さらに、宿主細胞は、該挿入配列によりコードされるポリペプチドを発現し得る。
【0046】
様々な方法を用いて、核酸ベクターをin vitroまたはin vivoで宿主細胞に導入することができる。例えば、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、熱ショック、リポフェクション、マイクロインジェクション、およびウイルス媒介性核酸導入は、核酸ベクターを宿主細胞中に導入するのに用いることができる一般的な方法である。さらに、裸のDNAを、他の文献(米国特許第5,580,859号および第5,589,466号)に記載のようにin vivoで細胞に直接送達することができる。さらに、核酸ベクターを細胞に導入して、トランスジェニック動物を作製することができる。
【0047】
トランスジェニック動物は、水生動物(魚、鮫、イルカなど)、家畜(ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ウサギなど)、げっ歯類(ラット、モルモット、およびマウスなど)、非ヒト霊長動物(ヒヒ、サル、およびチンパンジーなど)、ならびに家庭動物(イヌおよびネコなど)であってよい。当業界で公知のいくつかの技術を用いて核酸ベクターを動物に導入して、トランスジェニック動物の創始者系統を作製することができる。そのような技術としては、限定されるものではないが、前核マイクロインジェクション(米国特許第4,873,191号);生殖細胞系へのレトロウイルス媒介遺伝子導入(Van der Puttenら、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 82:6148(1985));胚性幹細胞中への遺伝子トランスフェクション(Gossler Aら、Proc Natl Acad Sci USA 83:9065-9069(1986));胚性幹細胞中への遺伝子ターゲティング(Thompsonら、Cell, 56:313(1989));体細胞核の核移植(Schnieke AEら、Science 278:2130-2133(1997));および胚のエレクトロポレーション(Lo CW, Mol. Cell. Biol., 3:1803-1814(1983))が挙げられる。一度取得されば、伝統的な繁殖法または動物クローニングを用いて、トランスジェニック動物を複製することができる。
【0048】
様々な方法を用いて、本発明で提供される核酸ベクターを含む宿主細胞を同定することができる。そのような方法としては、限定されるものではないが、PCR、ノーザンおよびサザン分析などの核酸ハイブリダイゼーション技術、ならびにin situ核酸ハイブリダイゼーションが挙げられる。いくつかの場合においては、免疫組織化学および生化学的技術を用いて、特定の挿入配列によりコードされるポリペプチドの発現を検出することにより、細胞が、その特定の挿入配列を有する核酸ベクターを含むかどうかを判定することができる。
【0049】
任意の方法を用いて、組換えキメラIgEポリペプチドを製造することができる。そのような方法は、キメラIgEポリペプチドを発現する宿主細胞を培養し、発現されたIgEポリペプチドを回収することを含む。組換えキメラIgEポリペプチドを回収するために、任意の方法を用いることができる。例えば、宿主細胞ホモジネート中に存在する組換えキメラIgEポリペプチドを、イオン交換クロマトグラフィーを用いて回収することができる。別の例においては、ポリヒスチジン配列を含有する組換えキメラIgEポリペプチドは、宿主細胞ホモジネートをニッケルカラムに通過させ、イミダゾールを用いてポリヒスチジン含有ポリペプチドを溶出させることにより、該ホモジネートから回収することができる。ポリペプチドの分泌を指令するリーダー配列を備えた特定の組換えキメラIgEポリペプチドを、そのポリペプチドを発現する宿主細胞の増殖培地から回収することができる。例えば、OROまたはOSOポリペプチドを発現し分泌する哺乳動物宿主細胞の培養物からの増殖培地を収集し、クロマトグラフィーを用いてOROまたはOSOポリペプチドを回収することができる。ポリペプチドの分泌を指令するリーダー配列は、典型的には、タンパク質分解により、
宿主細胞中のそのポリペプチドから除去されるものと理解される。かくして、回収された分泌ポリペプチドは、多くの場合、いかなる翻訳されたリーダー配列も含まない。
【0050】
一実施形態においては、OROまたはOSOポリペプチドを発現し、分泌するクローン化CHO細胞系からの細胞培地を回収し、遠心分離して細胞破片を除去する。遠心分離の後、上清を透析し、イオン交換カラムに通過させ、それによりOROまたはOSOポリペプチドを結合させる。結合したOROまたはOSOポリペプチドを、塩化ナトリウム/酢酸ナトリウム勾配を用いて溶出し、溶出した画分を、ELISA技術を用いて組換えOROまたはOSOポリペプチドについてスクリーニングする。高いELISA反応性を有する溶出画分をプールし、再度透析し、透析されプールされた画分を、疎水性相互作用カラムに通過させ、それによってOROまたはOSOポリペプチドを結合させる。結合したOROまたはOSOポリペプチドを、リン酸ナトリウム勾配を用いて溶出し、溶出した画分を、ELISA技術を用いて組換えOROまたはOSOポリペプチドについて再度スクリーニングする。高いELISA反応性を有する溶出画分を、銀染色されたSDS-PAGEによりさらに分析して、OROまたはOSOポリペプチドの純度を評価する。
【0051】
本明細書に記載のように、ミョウバンならびに他のアルミニウムに基づく化合物(例えば、Al2O3)を、自己ポリペプチドセグメント(例えば、自己IgE配列)を含むポリペプチドと組み合わせて、哺乳動物に投与した場合に抗自己応答を誘導する組成物を形成することができる。アルミニウムに基づく化合物を、様々な商業的供給業者から入手することができる。例えば、REHYDRAGEL(登録商標)アジュバントを、Reheis Inc. (Berkeley Heights, NJ)から入手することができる。REHYDRAGEL(登録商標)アジュバントは、結晶性オキシ水酸化アルミニウムに基づくものであり、大きな表面積(約525 m2/g)を有する結晶粒子を含む水和ゲルである。そのAl2O3含量は、典型的には、約2〜約10%の範囲である。Rehydragel LGは、例えば、約6%のAl2O3含量を有し、軽く攪拌すると容易に流動する。Rehydragel LGはまた、1.58のタンパク質結合能力(すなわち、1 mgのAl2O3あたり、1.58 mgのウシ血清アルブミンが結合する)、0.02%のナトリウム含量、0.28%の塩化物含量、検出不能な硫酸、3 ppm未満の砒素レベル、15 ppm未満の重金属含量、6.5のpH、および1090 cpの粘度を有する。Rehydragel LGを、ポリペプチド溶液(例えば、PBS中のポリペプチド)と組み合わせて、Al(OH)3を得ることができる。さらに、Brenntag Stinnes Logisticsから入手できるALHYDROGEL(商標)、すなわちアルミニウムヒドロキシゲルアジュバント (Alhydrogel 1.3%、Alhydrogel 2.0%、またはAlhydrogel「85」)を用いることができる。
【0052】
さらに、MN51を、自己ポリペプチドセグメント(例えば、自己IgE配列)を含むポリペプチドと組み合わせて、哺乳動物に投与した場合に抗自己応答を誘導する組成物を形成することができる。MN51(MONTANIDE(登録商標) Incomplete SEPPICアジュバント(ISA)51)ならびにMN720は、Seppic(Paris, France)から入手可能である。MN51は、ミネラルオイル溶液(Drakeol 6 VR)中のオレイン酸マンニド(MONTANIDE(登録商標)80、無水マンニトールオクタデセノエートとしても知られる)を含む。MONTANIDE(登録商標)80は、最大酸価1、164〜172の鹸化価、89〜100のヒドロキシル価、67〜75のヨウ素価、最大過酸化物価2、20 ppm未満の重金属値、最大水含量0.35%、最大明度9、および25℃で約300 mPasの粘度を有する透明な液体である。油(例えば、ミネラルオイル、植物油、スクアラン、スクアレン、またはエステル)と会合したモンタニド(MONTANIDE(登録商標))は、モンタニド(MONITANID(登録商標))ISAとして公知である。Drakeol 6 VRは、医薬品等級のミネラルオイルである。Drakeol 6 VRは、不飽和または芳香族炭化水素を含まず、36.2〜36.8のA.P.I.重量、25℃で0.834〜0.838の比重、100°Fで59〜61 SSUまたは10.0〜10.6センチストークの粘度、25℃で1.458〜1.463の屈折率を有し、最大酸度試験よりも良好であり、360 nmで蛍光について陰性であり、可視浮遊物質について陰性であり、0〜15°FのASTM流動試験値を有し、295°Fの最低ASTM発火点を有し、ならびにライトミネラルオイルおよび紫外線吸収について全てのRN要件を満たす。MN51は、約8〜12%の無水マンニトールオクタデセノエートと約88〜92%のミネラルオイルを含む。MN51は、最大酸価0.5、16〜20の鹸化価、9〜13のヒドロキシル価、最大過酸化物価2、5〜9のヨウ素価、最大水含量0.5%、25℃で1.455〜1.465の屈折率、20℃で約0.85の密度、および20℃で約50 mPaSの粘度を有する透明で黄色の液体である。MN51と生理食塩水の50:50混合物の伝導度は10μScm-1である。
【0053】
他のアジュバントとしては、コレステロールおよびサポニンなどの成分を含んでもよい免疫賦活複合体(ISCOM)が挙げられる。ISCOMマトリックスを調製し、本明細書に記載のものなどの方法を用いて、Cu2+とコンジュゲートさせることができる。FCA、FIA、MN51、MN720、およびAl(OH)3などのアジュバントが、Seppic, Difco Laboratories (Drtroit, MI)およびSuperfos Biosector A/S (Vedbeak, Demark)などの会社から商業的に入手可能である。
【0054】
いくつかの実施形態においては、組成物は1種以上のさらなる免疫賦活成分を含んでもよい。これらのものとしては、限定されるものではないが、ムラミルジペプチド(例えば、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン;MDP)、モノホスホリル-リピドA(MPL)、およびN-ホルミル-Met-Leu-Pheなどのトリペプチドを含むホルミル-メチオニンが挙げられる。そのような化合物は、例えば、Sigma Chemical Co. (St. Louis, MO)およびRIBI ImmunoChem Research, Inc. (Hamilton, MT)から商業的に入手可能である。
【0055】
組成物の「単回用量」とは、1回に哺乳動物に投与される組成物の量を指す。本明細書に提供される単回用量の組成物は、任意の量のポリペプチドを含んでもよい。例えば、単回用量の組成物は、約10μg〜約1 g(例えば、10μg、15μg、25μg、30μg、50μg、100μg、250μg、280μg、300μg、500μg、750μg、1 mg、10 mg、15 mg、25 mg、30 mg、50 mg、100 mg、250 mg、280 mg、300 mg、500 mg、750 mg、またはそれ以上)のポリペプチドを含んでもよい。いくつかの実施形態においては、該ポリペプチドを、例えば、水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH 7.0などの生理学的バッファー中に溶解するか、または懸濁してもよい。次いで、ポリペプチドの溶液をアジュバントおよび前記組成物の任意の他の成分と混合することができる。
【0056】
同様に、単回用量の組成物は、任意の量のアジュバントを含んでもよい。例えば、単回用量は、約10μL〜約1 mL(例えば、10μL、25μL、50μL、100μL、250μL、500μL、750μL、800μL、900μL、または1 mL)の1種以上のアジュバントを含んでもよい。さらに、単回用量の組成物は、任意の量の別の免疫賦活成分を含んでもよい。例えば、本発明で提供される組成物は、約10μg〜約1 g(例えば、10μg、15μg、25μg、30μg、50μg、100μg、250μg、280μg、300μg、500μg、750μg、1 mg、10 mg、15 mg、25 mg、30 mg、50 mg、100 mg、250 mg、280 mg、300 mg、500 mg、750 mg、またはそれ以上)の免疫賦活成分を含んでもよい。
【0057】
本発明で提供される組成物は、アジュバントとポリペプチドを任意の比で含んでもよい。アジュバント:抗原比は、例えば、50:50(vol:vol)であってよい。あるいは、アジュバント:抗原比は、限定されるものではないが、90:10、80:20、70:30、64:36、60:40、55:45、40:60、30:70、20:80、または90:10であってよい。
【0058】
本発明はまた、本発明で提供される組成物を製造する方法を提供する。そのような方法は、好適な量の生理学的バッファー(例えば、50μLのPBS pH 7.0)中に一定量のポリペプチド(例えば、100μgのORO)を懸濁し、そして懸濁または溶解した抗原を、好適な量のアジュバント(例えば、50μLのMN51または100μLのREHYDRAGEL(登録商標))と混合することを含む。混合工程を、例えば、攪拌、振とう、ボルテックス、またはシリンジに取り付けた針を通して前後に通過させることなどの任意の方法により達成することができる。前記組成物を、複数回注入用(例えば、複数の動物への注入または同じ動物への複数回の注入)に十分な単回用量が得られるように、バッチ式で製造することができる。
【0059】
本発明はまた、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、カニクイザルなどの非ヒト霊長動物、またはヒト)中での抗自己応答を誘導する方法を提供する。そのような方法は、自己ポリペプチドに由来するアミノ酸配列(例えば、特定生物種の哺乳動物において認められるIgEポリペプチドのCH3ドメインに由来するアミノ酸配列)を含むポリペプチドを含む本発明で提供される組成物を、哺乳動物に投与することを含む。このポリペプチドは、別の種に由来する少なくとも1種のアミノ酸配列(例えば、異なる種において認められるIgEポリペプチドに由来するCH2またはCH4ドメインに由来するアミノ酸配列)を含んでもよい。
【0060】
一般的には、本発明で提供されるポリペプチドを含む組成物を、循環IgEを排除することによりアレルギーカスケードを無効にするためのアレルギーワクチンとして用いることができる(図25〜28)。前記組成物は、レシピエントにおける自己IgEに対する抗体応答を誘導しうる。作用の特定の様式に限定されるものではないが、哺乳動物のIgEに対する寛容性を破壊させうる状況下でのポリペプチドと自己IgE配列とを含む組成物の投与は、抗自己IgE抗体の生成をもたらし、次いで循環する自己IgE抗体のレベルを低下させると考えられる。
【0061】
本発明で提供される組成物は、様々な方法により投与することができる。投与は、例えば、局所(例えば、経皮、点眼、または鼻内);経肺(例えば、粉末もしくはエアロゾルの吸入もしくは通気による);経口;または非経口(例えば、皮下、くも膜下、脳室内、筋肉内、もしくは腹腔内注入によるか、または点滴静注による)であってよい。投与は、迅速なもの(例えば、注入による)であってもよいし、一定の時間をかけて行ってもよい(例えば、ゆっくりした注入もしくは遅延放出製剤の投与による)。
【0062】
任意の用量を哺乳動物に投与することができる。用量は、個々の組成物の相対効力に依存して様々であってよく、一般的には、in vitroおよびin vivo動物モデルから得られるデータに基づいて算出することができる。典型的には、用量は約0.01μg〜100 g/kg体重であり、1日1回以上、週に1回以上、またはそれ以下の頻度で与えることができる。投与が成功した後、被験体にさらなる追加投与を受けさせて、好適なレベルの抗自己応答を維持するのが望ましい。
【0063】
哺乳動物における組成物に対する抗自己応答(例えば、抗自己IgE抗体応答)を、任意の方法を用いて評価することができる。例えば、抗自己IgE力価を測定することができる。あるいは、「力価希釈50値」を、ELISAを用いて、そして血清サンプルの希釈物(例えば、連続希釈物)の光学密度(OD)を測定することにより決定することができる。最大ODから50%の低下をもたらす希釈倍数を、力価希釈50値とみなす。この値は、例えば、Molecular Devices, Inc. (Sunnyvale, CA)から入手可能であるSOFTmax(登録商標)Pro 4.0ソフトウェアプログラムを用いて曲線当てはめをすることにより算出することができる。曲線当てはめのために4つのパラメーターの非線形回帰を用いてこのプログラムを使用して、データポイントを曲線に当てはめ、力価希釈50値を決定することができる。
【0064】
本発明はまた、1種以上の自己IgEセグメント(例えば、ORO)を含むポリペプチドで処理した被験体(例えば、哺乳動物)の血清における遊離IgEレベルを測定する方法を提供する。そのような方法は、例えば、OROで処理した被験体からの血清サンプルを提供し、ヒトIgE受容体α鎖などのIgE受容体ポリペプチド(例えば、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM 002001を有するポリペプチド)と共に該サンプルをインキュベートして、IgE/IgE受容体複合体を形成することを含む。任意のIgE受容体配列(またはその一部)を用いることができる。例えば、ヒトIgE受容体α鎖を用いて、ヒトまたはサルなどの他の霊長動物における遊離IgEを測定することができる。IgE受容体ポリペプチドを、遊離IgEを含むサンプルと共にインキュベートした後、形成されたIgE/IgE受容体複合体を測定することができる。任意の方法を用いて、IgE/IgE受容体複合体を測定することができる。例えば、ELISAおよびELISA様手法などの免疫学的アッセイを用いて、IgE/IgE受容体複合体を測定することができる。
【0065】
本発明はまた、抗自己IgEポリペプチド含有組成物で処理した哺乳動物中に存在する遊離IgEの量を評価するためのキットを提供する。そのようなキットは、IgE受容体配列およびIgE/IgE受容体複合体に結合し得る抗体を含んでもよい。本発明で提供されるキットはまた、ORO含有組成物などの本明細書に記載の組成物を含んでもよい。そのようなキットを用いて、哺乳動物における遊離IgEレベルを評価し、必要に応じて、自己ポリペプチド含有組成物のさらなる追加免疫を提供することができる。本発明で提供されるキットは、IgE標準品、陰性対照、酵素調製物、および酵素基質などの追加試薬を含んでもよい。
【0066】
本発明を、以下の実施例でさらに説明するが、これは特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0067】
実施例1 ワクチンアジュバントの評価
活性ワクチン成分、H-OROの製造
ワクチン中の活性成分、H-OROは、オポッサムε-重鎖のC2およびC4ドメイン(AveskoghおよびHellman, Eur. J. Immunol., 28:2738(1998))にフランキングしたラットε-重鎖のC3ドメイン(Hellmanら、Nucl. Acids Res., 10:6041(1982))に由来する1041 bpを含む組換え構築物によりコードされるものであった。この構築物(図29)を、以前に記載(Vernerssonら、FASEB J., 16:875(2002))のように、293-EBNA細胞中で発現させて、Ni-NTAアガロース(QIAGEN GmbH, Germany)上で精製した。H-ORO成分は、PBS pH 7.0中、1.5 mg/mlの濃度で得られた。
【0068】
試験1:
20匹の、8〜10週齢メスWistarラット(BentonおよびKingman, Sollentuna, Sweden)を、オボアルブミン(OVA)に対して感作した。この動物に、10μg OVA (Sigma Chemical Co., MO)を含むPBS pH 7.0を初回の腹腔内(i.p.)注入し、続いて初回ワクチン接種の前の5週間にわたって3μg OVAを含むPBS pH 7.0を毎週i.p.注入し、これを、ワクチン接種プログラムを通して継続した。
【0069】
4匹の動物からなる群の5群に、以下のアジュバント:FCA(Difco Laboratories, Detroit, MI)、Al(OH)3 (Superfos Biosector A/S, Vedbeak, Denmark)、またはCu2+-コンジュゲート化ISCOMマトリックス(Anderssonら(2001) J. Immunol. Methods 255:135)のうちのいずれかと混合したH-OROの初回のi.p.ワクチン接種を施した。動物1〜4には、FCAと50:50で混合した、50μL PBS pH 7.0中の100μg H-OROを投与した。動物5〜8には、100μg H-OROおよび100μL PBS pH 7.0中の10体積% Al(OH)3スラリーを投与した。動物9〜12には、Cu2+-コンジュゲート化ISCOMマトリックスと50:50で混合した、100μg H-OROを含む50μL PBS pH 7.0を投与した。動物13〜16には、Cu2+-コンジュゲート化ISCOMマトリックスと50:50で混合した、25μg H-OROを含む50μL PBS pH 7.0を投与した。追加免疫ワクチン接種は治療プログラムの第3週に行った。この追加免疫ワクチン接種は初回ワクチン接種と同一であったが、ただし、FIA(Difco Laboratories)を、動物1〜4中でFCAの代わりに用いた。
【0070】
1 mLの血液サンプルを、初回感作の前、ワクチン接種の3日前、および追加免疫ワクチン接種の2週間後に、尾静脈から採取した。血液を4℃にて一晩凝固させ、10,000 rpm(EBA12R, Hettich Zentrifugen, Germany)で10分間遠心分離した。血清をエッペンドルフチューブに移し、ELISAによる評価を行うまで凍結した。
【0071】
Al(OH)3を含むワクチン調製物は、ワクチン接種の1日前に、100μg H-OROタンパク質を含むPBS pH 7.0とともに10体積% Al(OH)3スラリーに混合し、4℃にて一晩保存した。ISCOMマトリックスを以下のように調製した:Cu2+を含むIDAマトリックスは1.7 mg/mLの推定QA含量および0.5 mg/mLの推定コレステロール含量を有していた(Prep. 990823 B)。Cu2+を含まないマトリックスは2.6 mg/mLのQA含量を有し、コレステロールは0.8 mg/mLであると算出された(Prep. 990320)。Cu2+を含むマトリックスを導入するために、水中の1 M CuSO4*5H2Oのストック溶液を調製した。この溶液をマトリックス調製物に添加して、最終濃度を0.1 M Cu2+にした。この混合物を室温にて30分間、振とう器上でインキュベートした後、4℃にて一晩、PBSに対して透析した。タンパク質抗原を、コレステロール含量に対して1:1の比で加え、4℃にて一晩インキュベートした。
【0072】
試験2:
4匹の動物からなる群の10群に分けた、合計40匹の8〜10週齢メスWistarラットに、アジュバントと共に、100μg H-OROを含むPBS pH 7.0の初回の200μL i.p.注入を施し、いくつかの群においては、アジュバントに加えてさらなる免疫賦活剤と共に投与した。動物1〜4には抗原と50:50の比で混合したFCAを投与した。動物5〜8には、抗原と50:50の比でMN51(Seppic, Paris Cedex 07, France)を投与した。動物9〜12には、MN51:抗原(50:50)および動物1匹あたり200μgのMDP(Sigma Chemical Co.)(25μgのMDPを滅菌PBSに溶解して、最終濃度10 mg/mLにした)を注入した。第4群の動物13〜16には、MN51:抗原(50:50)および200μgのMPLを投与した。メタノール/クロロホルム(1:4)中のMPL(RIBI ImmunoChem Research, Inc., Hamilton, MT)の10 mg/mL溶液を、動物1匹あたり0.2 mgおよび0.1 mg MPLの用量に対応する容量に分割し、蒸発させた。動物17〜20には、MN51:抗原(50:50)、200μg MDP、および100μg MPLを与えた。動物21〜24は、MN51:抗原(50:50)、200μg MDP、100μg MPL、および100μg fMLP(Sigma Chemical Co.)を投与した。10 mgのfMLPを、1 mLの滅菌PBSおよび1 mLの95%エタノールに溶解した。動物25〜28には、H-OROと共にそれと70:30の比でMN720(Seppic)を投与した。動物29〜32には、動物1匹あたりMN720:抗原(64:36)および200μg MDPを注入した。動物33〜36には、MN720:抗原(70:30)および200μg MPLを注入した。第10群の動物37〜40には、MN720:抗原(64:36)に加えて、200μg MDPおよび100μg MPLを投与した。
【0073】
追加免疫投与量は初回のワクチン接種で与えられるH-OROの半量(50μg)を含んでおり、FIAをFCAの代わりに用いた。血液を、ワクチン接種の10日前および追加免疫の2週間後に尾静脈から採血した。血液は、試験1に記載のようにして処理した。
【0074】
抗ラットIgE ELISA:
抗ラットIgE ELISAは、以前に記載されている(Vernerssonら、上掲)。サンプルを単体でアッセイし、ウマ血清をアッセイブランクとして用いた。値を補正するために、2つのサンプルの連続希釈物を各プレート上でアッセイした。
【0075】
抗オポッサムC2-C3-C4 ELISA:
被覆抗原以外は、上記と同じ手順(Vernerssonら、上掲)を用いた。この場合、被覆抗原は、炭酸バッファーpH 9.6中の5μg/mL濃度のオポッサムC2C3C4である。
【0076】
H-ORO成分:
自己および非自己成分に対する免疫応答における差異の問題を検討するために、自己および非自己領域の両方を含むハイブリッド分子を設計し、組換えタンパク質として産生させた。アメリカオポッサムIgE重鎖の第2および第4の定常ドメインにフランキングしたラットε-重鎖(標的種)に由来する第3の定常ドメイン(オポッサムCH2-ラットCH3-オポッサムCH4;H-ORO、図29)を含むワクチンを、293-EBNAヒト胚性腎細胞中で発現させた。平均収量は、馴化培地1リットルあたり、約1 mg H-OROタンパク質であった。SDS-PAGEに基づくと、H-OROの純度は少なくとも90%であると見積もられ、主要な夾雑物は、FBSを補給した細胞培養培地に由来するBSAであると同定された(Vernerssonら、上掲)。オポッサム配列は、ラットIgEと配列においてほぼ60%異なり、従って非自己成分として働いた。オポッサムドメインは2つのさらなる機能を有し、自己成分(C3ドメイン)のための構造的な支持体として、かつ外来T細胞エピトープを提供することにより、自己成分に対するT細胞寛容を破壊するように、その両方に作用した。
【0077】
ELISAによって抗オポッサム応答を測定するための試薬として、組換えオポッサムC2C3C4 IgEを、上記と同じ手順により製造した(OOO)。精製された全ラットIgEを、抗ラットIgE C3応答の測定に用いた。
【0078】
結果:
3種のアジュバントを試験した:フロイント・アジュバント、ミョウバン(Al(OH)3)、およびISCOMの調製物。種々のアジュバントを、H-OROワクチン成分と共にi.p.注入により投与した。その動物を4つの群に分割した:4匹の動物には、CFA中の100μgのH-OROを与え、4匹の動物には市販の調製物に由来するミョウバン(10体積%のAl(OH)3スラリー)に吸着された同じ量のタンパク質を投与し、4匹の動物には100μgのISCOMの表面に吸着された100μgのH-OROを投与し、最後の4匹の動物には、ISCOMは同じ量だが、H-OROは25μgのみを投与した。抗原レベルの低下の理論的根拠は、表面エピトープを認識する免疫系の利用可能性に影響し得る、ISCOMに対するより低い負荷密度の効果を試験するためであった。
【0079】
追加免疫ワクチン接種を、治療プログラムの第3週に投与した。追加免疫ワクチン接種は、動物1〜4においてIFAをFCAの代わりに用いた以外は、初回のワクチン接種と同一であった。1 mLの血液サンプルを、ワクチン接種の3日前および追加免疫ワクチン接種の2週間後に、尾静脈から採取した。
【0080】
比較ELISA分析を、治療プログラムの第5週からの血清について実施した。ELISAプレートを、抗ラットC3免疫応答(抗自己応答)を測定するために全ラットIgEでコーティングするか、または抗非自己応答を測定するためにオポッサムC2C3C4組換えタンパク質(OOO)でコーティングした。驚くべきことに、実質的な抗自己応答はフロイント・アジュバントを用いた場合にのみ検出された(図30A)。この実験では、ミョウバンを用いても応答は検出されず、ISCOM上に吸着された25μg用量のH-OROを投与した4匹の動物のうちの1匹のみで応答が観察された。しかしながら、抗非自己応答を測定する場合、ISCOMはフロイント・アジュバントと同程度であり、これらの2つのアジュバント間で規模の有意な差異は検出することができなかった。しかしながら、ミョウバンは効力の低いアジュバントであることが示された。ミョウバンにより、フロイント・アジュバントおよびISCOMについて認められるレベルの約20%の応答が得られた(図30B)。
【0081】
自己および非自己応答の間の相対的差異も、同じプレート上の異なるウェルをラットIgEまたはOOOでコーティングするELISAアッセイを実施することにより算出した。フロイント・アジュバントで処理した動物における抗非自己応答と抗自己応答の間の比は、4匹の動物について150、175、150および750であることが見出され、これらは、力価において平均値で約300倍の差異を与えた。抗自己抗体の相当量の誘導が観察されたが、これは、自己IgE配列に対する抗体の力価が、非自己IgE配列に対する抗体の力価よりかなり低かったことを示唆している。
【0082】
ISCOM調製物を用いた抗非自己免疫応答の誘導は、フロイント・アジュバントを与えた動物において得られたレベルと同程度の規模であったが、抗自己IgE力価は検出不能であるか、または非常に低かった。さらに、ミョウバン調製物については、検出可能な抗自己IgEは検出されなかった。かなりのレベルの抗自己IgE抗体をもたらした唯一のアジュバントは、ミネラルオイルに基づくアジュバントであるフロイント・アジュバントであった。
【0083】
実施例2 MN51とMN720の比較解析
1種の市販のミネラルオイルアジュバント(MN51)、および植物油に基づくがMN51と同じ乳化剤(モノオレイン酸マンニド)を有する1種のアジュバント(MN720)を試験して、それらの効果とフロイント・アジュバントの効果とを比較した。
【0084】
第1の実験と同様、各群4匹の動物を、抗自己および抗非自己応答の誘導について試験した。抗原およびアジュバントの量は、100μLのアジュバントおよび100μgのH-OROであった。比較ELISA分析を、治療プログラムの第5週に得られた血清を用いて行った。かなりの抗自己IgE応答が全ての動物において検出された。しかしながら、最も顕著な応答はMN51について認められ、実際、フロイント・アジュバントについて観察された応答よりも少し高かった(130%)(図31A)。MN720はフロイント・アジュバントについて認められた応答の約15%のみに相当する応答を生成した。しかしながら、抗自己応答についての観察とは対照的に、3種のアジュバントは全て、抗非自己応答を誘導するその能力においてはほぼ等価な効力を有していた(図31B)。
【0085】
抗非自己および抗自己応答の相対的規模も決定した。フロイント・アジュバントで処理した動物における抗非自己応答と抗自己応答の比は、4匹の動物のうちの3匹について50、65、および75であり、これは、力価において平均値で約63倍の差異を与えた。4匹目の動物から得られた血清の量は、この分析を行うのには不十分であった。MN51については、その比は4匹の動物について200、30、40、および26であり、これは力価において平均値で74倍の差異を与えた。
【0086】
実施例3 MDP、リピドA、およびホルミル-Metポリペプチドに関する潜在的相加効果の分析
2つの前記実験から得られた結果に基づき、ミネラルオイルに基づくアジュバントが抗自己IgE応答の誘導において最も有効であると結論付けられた。しかしながら、抗自己応答と非自己応答の差異は依然として非常に大きく、おそらくしばしば差が50倍を超える。そこで、細菌性免疫賦活物質について、相加効果が達成されるかどうかを決定するために試験した。ラットを、200μgのMDP、200μgのMPL、200μgのMDPおよび100μgのMPL;または、200μgのMDP、100μgのMPLおよび100μgのfMLP;のいずれかを添加した、100μgのH-OROを含むMN51またはMN720を用いて、4匹からなる群にて免疫する一連の実験を行った。
【0087】
比較ELISA分析を、治療プログラムの第5週から得られた血清について行った。吸光度を測定し、その値を、100%に設定したフロイント・アジュバントについての相対吸光度と比較した。MLP、MPL、fMLP、またはこれらのうちの2つもしくは3つの組合せの添加は、MN51と一緒に投与した場合、自己エピトープに対する応答についても非自己エピトープに対する応答についてもいかなる有意な陽性効果も有しなかった(図32AおよびB)。上記のいくつかを添加する場合、抗自己応答に対してはわずかに陰性の効果が観察された(図32A)。MN720を用いる実験においては、MPLについて、抗自己応答の増強が少しだけ認められた(図33A)。しかし、全てを添加する場合、抗非自己応答に対する陰性効果が少し示された(図33B)。
【0088】
実施例4 ミョウバンを含有するOROの分析
別の試験において、ミョウバンをRehydragel LGから調製し、該ミョウバンの有効性をさらに試験した。OVAによる感作の4週間後、9匹または10匹のメスWistarラットの群を、ミョウバンを加えたビヒクル(PBS)、MN51を加えた100μg H-ORO、またはミョウバンを加えた280μg H-OROを含む組成物を用いて、皮下的に免疫した。追加免疫を第3週および第7週に与えた。血清サンプルを、第-4、-1、9、12、および15週に取得した。第12週からのサンプルを力価希釈に関して分析し、一方、全サンプルを標準的な方法を用いて遊離IgE濃度について分析した。遊離IgEの濃度は、ビヒクル+ミョウバンまたはH-ORO+ミョウバンのいずれかを注入した動物の血清中で時間の経過と共に低下した(図34)。しかしながら、この低下は、H-ORO+ミョウバンで処理した動物においてより大きく、9週間後の遊離IgEの濃度は2群間で有意に異なっていた(p<0.01)。280μgのH-OROおよびミョウバンを用いた免疫化は、100μg H-OROおよびMN51で免疫した動物からの血清により示されるものと非常に類似した希釈曲線をもたらした(図35Aおよび35B)。実際、力価希釈50値は、ミョウバンを加えたOROについては400倍、MN51を加えたH-OROについては204倍であると算出された。これらの結果は、ミョウバンと組合せた100μgを超えるH-OROを含む組成物が、哺乳動物に投与した場合に大幅な抗自己IgE応答を誘導し得ることを示している。
【0089】
実施例5 ORO-HおよびORORO-Hの分析
同様の試験を行って、Hisタグに連結したOROおよびOROROを含む組成物の効果を評価した。ORORO-Hポリペプチドは、以下のIgEドメインを含む:オポッサムCH2-ラットCH3-オポッサムCH2-ラットCH3-オポッサムCH4。OVAによる感作の4週間後、6匹のオスWistar Fラットの群を、ビヒクル(PBS)、20μg ORO-H、または100μg ORO-Hを含む組成物で皮下的に免疫した。追加免疫を、第3週および第7週に行った。それぞれの場合において、モンタニドISA 51をアジュバントとして用いた。血清サンプルを第-4、-1、5、7、9、11、および14週に取得し、遊離IgE濃度について分析した。図36に示されるように、20μg ORO-Hまたは100μg ORO-Hのいずれかによる免疫化は、遊離IgEの濃度を低下させることにおいて等しく有効であったが、一方ビヒクルは遊離IgEレベルの増加をもたらした。
【0090】
別の実験において、6匹または7匹のオスWistarラットの群は、皮下注入により、PBSビヒクル、20μg ORORO-H、または100μg ORORO-Hを投与した。追加免疫を第3週および第7週に与え、血清サンプルを第-4、-1、5、7、9、11、および14週に取得した。それぞれの場合において、モンタニドISA 51をアジュバントとして用いた。直前のパラグラフに記載された実験と同様、20または100μgのいずれかのORORO-Hを用いた免疫化は遊離IgEの濃度を低下させることにおいて非常に有効であったが、ビヒクルは遊離IgEレベルの増加をもたらした(図37)。
【0091】
実施例6 ラットにおける用量および毒性試験
10匹のオスWistar Hanoverラットの群を、ビヒクル(PBS)、MN51を加えたビヒクル、MN51を加えた30μgのH-ORO、MN51を加えた100μgのH-ORO、またはMN51を加えた300μgのH-OROを用いて、皮下的に免疫した。MN51を含む混合物は全て1:1の比であった。追加免疫を第1週、第3週、および第5週に施し、血液サンプルを第0週、第4週、および第7週に取得した(図38A)。第7週での中央力価希釈50値は、H-OROの用量が増加するにつれて増加した(図38B)。かくして、MN51と共に投与したより高用量のH-OROは、より大きな抗自己IgE効果をもたらし得る。さらに、遊離IgE抗体レベルは、MN51中の100または300μgのH-OROを投与された動物において低下した(図38C)。
【0092】
これらの動物を用いて、毒性試験および全身健康試験も行った。血液サンプルを、アルブミン、ASATおよびALAT、ビリルビン、クレアチニン、Ca2+、K+、およびNa+などの電解質、乳酸デヒドロゲナーゼ、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ、およびグルコース、ならびにヘモグロビン、白血球、ヘマトクリット、および血小板の数について評価した。さらに、動物を、体重については週に2回、食物摂取における変化、全体的な身体活動、行動、および外観については1日1回モニターした。さらに、組織病理学試験を、脳、肺、回腸、肝臓、心臓、脾臓、腎臓、および精巣について行った。これらの実験の全てにおいて、毒性または望ましくない効果の徴候は観察されなかった。
【0093】
別の実験において、10匹のメスWistar Fラットの群を、ビヒクル(PBS)またはヒスチジンタグを欠くOROを用いて、皮下的に免疫した(図39)。アジュバントはMN51またはAlhydrogel(商標) 1.3%(水酸化アルミニウムゲルアジュバント;Brenntag Stinnes Logistics)であった。追加免疫を第3週、第5週、および第7週に与え、血液サンプルを第-1、3、5、7、10、および12週に取得した。OROポリペプチドを投与されたラットにおいて測定されたラットIgE抗体の量は、対照ラットにおいて測定された量と比較して有意に低下した(図40)。実際、ミョウバンまたはMN51と共にOROポリペプチドを投与したラットは、遊離ラットIgEの量において90〜100%の低下を示した(図41)。これらの結果は、ミョウバンまたはMN51と組合せたキメラIgEポリペプチドが哺乳動物内に存在する遊離IgEのレベルを低下させ得ることを示している。
【0094】
実施例7 カニクイザルにおける試験
本発明で提供される組成物が抗自己IgE抗体応答を誘発する能力も、カニクイザルにおいて試験した。本明細書に記載のOROおよびOROROポリペプチドと類似するH-OCO-HおよびH-OCOCO-Hポリペプチドを作製したが、この場合には、ラットIgEセグメントを、カニクイザル由来のIgEセグメントで置換した。5匹または6匹の動物からなる群を、ビヒクル(PBS) + MN51、500μg H-OCO-H + MN51、または500μg H-OCOCO-H + MN51を用いて皮下的に免疫した(図42)。追加免疫(300μg)を第3週および第7週に与える一方、再追加免疫(300μg)を第29週および第32週に与えた。血液サンプルを、第-1、5、9、12、15、18、21、24、27、32および35週に取得した。カニクイザルIgEの定常ドメイン(Cε2-Cε3-Cε4)の組換え部分に対する抗IgE応答を測定した(図43)。力価希釈50値を、サンプルを取得した週それぞれについて測定した。
【0095】
H-OCO-HまたはH-OCOCO-Hを用いた免疫化は、力価希釈50の上昇をもたらし、それは9または10週で最大レベルに到達した後、低下した(図44)。H-OCOCO-HはH-OCO-Hよりも少し高い効果を誘発したが、その差は有意ではなかった(図44)。H-OCOCO-H基を用いる試験は第18週に終了させた。
【0096】
H-OCO-Hに対する抗IgE応答は時間の経過と共に低下したが、これはその効果が可逆的であることを示している(図44)。抗IgE応答が再現性のあるものかどうかを判定するために、以前にワクチン接種された動物に、第29および32週にH-OCO-Hを用いてチャレンジした。以前に抗IgE応答を示している動物は、2回目の抗IgE応答を示した(図44)。H-OCO-HおよびH-OCOCO-Hワクチンは、血小板数(図45)または他の血液細胞(図46)に対する望ましくない血液学的効果をもたらさなかった。この実験は、H-OCO-HまたはH-OCOCO-Hなどのポリペプチドを含む組成物をMN51と組合わせて使用して、霊長動物における抗自己IgE抗体応答を刺激することができ、また類似の組成物をヒトにおける使用のために開発することができることを証明した。
【0097】
別の実験において、カニクイザルの群を、Alhydrogel(商標)1.3%(水酸化アルミニウムゲルアジュバント;Brenntag Stinnes Logistics)またはMN51と組合せたH-OCO-Hを用いて皮下的に免疫した(図47)。対照のサルを、Alhydrogel(商標)1.3%と組合わせた生理食塩水で免疫した。追加免疫を、第3、5および7週に与え、血液サンプルを第-1、3、5、7、9、12、15、および18週に取得した。H-OCO-Hポリペプチドを投与したサルにおいて測定されたサル抗IgE抗体の量は、対照のサルにおいて測定された量と比較して有意に増加していた(図48)。さらに、ミョウバンと組合せたH-OCO-Hポリペプチドを投与したサルは、MN51と組合せたH-OCO-Hポリペプチドで処理したサルにより生成された応答よりも強い抗IgE抗体応答を生成した(図48)。
【0098】
これらの結果は、ミョウバンまたはMN51と組合せたキメラIgEポリペプチドが、IgEに対する霊長動物の自己寛容を破壊し得ることを示している。これらの結果はまた、抗IgE応答が可逆的であり、再現性があることを示している。さらに、ミョウバンまたはMN51と共にキメラIgEポリペプチドを用いて処理した霊長動物は、血小板減少症または他の望ましくない血液学的作用の徴候を示さなかった。
【0099】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と共に記載してきたが、前記説明は例示を意図するものであり、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことは理解されるべきである。他の態様、利点、および改変は本発明の特許請求の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、pRES-OROと命名された核酸ベクターの図である。
【図2−1】図2は、pRES-OROベクターの核酸配列表である(配列番号1)。
【図2−2】図2は、pRES-OROベクターの核酸配列表である(配列番号1)。
【図3】図3は、OROポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号2)。OROポリペプチドは、オポッサムCH2 IgEドメイン、その後にラットCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH4 IgEドメインを含む。
【図4】図4は、OROポリペプチドのアミノ酸配列表である(配列番号3)。
【図5】図5は、pRES-OSOと命名された核酸ベクターの図である。
【図6−1】図6は、pRES-OSOベクターの核酸配列表である(配列番号4)。
【図6−2】図6は、pRES-OSOベクターの核酸配列表である(配列番号4)。
【図7】図7は、OSOポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号5)。OSOポリペプチドは、オポッサムCH2 IgEドメイン、その後にヒトCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH4 IgEドメインを含む。
【図8】図8は、OSOポリペプチドのアミノ酸配列表である(配列番号6)。
【図9】図9は、OROROポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号7)。OROROポリペプチドは、オポッサムCH2 IgEドメイン、その後にラットCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH2 IgEドメイン、その後にラットCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH4 IgEドメインを含む。
【図10】図10は、OROROポリペプチドのアミノ酸配列表である(配列番号8)。
【図11】図11は、modOSOSO-Hポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号9)。modOSOSO-Hポリペプチドは、オポッサムCH2 IgEドメイン、その後にヒトCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH2 IgEドメイン、その後にヒトCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH4 IgEドメインを含む。modOSOSO-Hポリペプチドはまた、肥満細胞受容体結合を喪失させるヒトCH3ドメイン中の点突然変異、およびC末端ポリヒスチジンタグも含む。
【図12】図12は、modOSOSO-Hポリペプチドのアミノ酸配列表である(配列番号10)。
【図13】図13は、modOSOSOポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号11)。modOSOSOポリペプチドは、オポッサムCH2 IgEドメイン、その後にヒトCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH2 IgEドメイン、その後にヒトCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH4 IgEドメインを含む。modOSOSOポリペプチドはまた、肥満細胞受容体結合を喪失させるヒトCH3ドメイン中の点突然変異も含む。
【図14】図14は、modOSOSOポリペプチドのアミノ酸配列表である(配列番号12)。
【図15】図15は、OSO-Hポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号13)。OSO-Hポリペプチドは、オポッサムCH2 IgEドメイン、その後にヒトCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH4 IgEドメインを含む。OSO-Hポリペプチドはまた、C末端ポリヒスチジンタグも含む。
【図16】図16は、OSO-Hポリペプチドのアミノ酸配列表である(配列番号14)。
【図17】図17は、OSOSOポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号15)。OSOSOポリペプチドは、オポッサムCH2 IgEドメイン、その後にヒトCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH2 IgEドメイン、その後にヒトCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH4 IgEドメインを含む。
【図18】図18は、OSOSOポリペプチドのアミノ酸配列表である(配列番号16)。
【図19】図19は、OSOSO-Hポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号17)。OSOSO-Hポリペプチドは、オポッサムCH2 IgEドメイン、その後にヒトCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH2 IgEドメイン、その後にヒトCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH4 IgEドメインを含む。OSOSO-Hポリペプチドはまた、C末端ポリヒスチジンタグも含む。
【図20】図20は、OSOSO-Hポリペプチドのアミノ酸配列表である(配列番号18)。
【図21】図21は、CCC-Hポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号19)。CCC-Hポリペプチドは、サルCH2 IgEドメイン、その後にサルCH3 IgEドメイン、その後にサルCH4 IgEドメイン、その後にポリヒスチジンタグを含む。
【図22】図22は、H-OCO-Hポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号20)。H-OCO-Hポリペプチドは、オポッサムCH2 IgEドメイン、その後にサルCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH4 IgEドメインを含む。H-OCO-Hポリペプチドはまた、N-およびC-末端ポリヒスチジンタグを含む。
【図23】図23は、H-OCO-Hポリペプチドのアミノ酸配列表である(配列番号21)。
【図24】図24は、H-OCOCO-Hポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号22)。H-OCOCO-Hポリペプチドは、オポッサムCH2 IgEドメイン、その後にサルCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH2 IgEドメイン、その後にサルCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH4 IgEドメインを含む。H-OCOCO-Hポリペプチドはまた、N-およびC-末端ポリヒスチジンタグを含む。
【図25】図25は、免疫応答の概略図である。
【図26】図26は、IgE分子の模式図である。
【図27】図27は、ヒトおよびオポッサムIgE配列を有するワクチンの模式図である。
【図28】図28は、IgEクリアランスの概略図である。
【図29】図29Aは、ラットおよびオポッサムIgEコード配列の位置を示したH-ORO DNA構築物の模式図である。図29Bは、組換えH-OROポリペプチドの構造を示す模式図である。
【図30】図30Aは、フロイント・アジュバント、ミョウバン、またはISCOMと混合したH-OROでワクチン接種したラットにおける相対抗ラットIgE抗体力価(抗自己IgE)を示す棒グラフである。図30Bは、同じラットにおける相対抗オポッサム抗体力価(抗非自己)を示す棒グラフである。
【図31】図31Aは、フロイント・アジュバント、モンタニド(MONTANIDE(登録商標))ISA 51(MN51)、またはモンタニド(MONTANIDE(登録商標))ISA 720(MN720)と混合したH-OROでワクチン接種したラットにおける相対抗ラットIgE抗体力価を示す棒グラフである。図31Bは、同じラットにおける相対抗オポッサム抗体力価を示す棒グラフである。
【図32】図32Aは、ムラミルジペプチド(MDP)、モノホスホリルリピドA(MPL)、および/もしくはホルミル-メチオニン含有トリペプチド(FM)を添加し、または添加せずに、MN51と混合したH-OROで、ワクチン接種したラットにおける相対抗ラットIgE抗体力価を示す棒グラフである。図32Bは、同じラットにおける相対抗オポッサム抗体力価を示す棒グラフである。
【図33】図33Aは、ムラミルジペプチド(MDP)および/もしくはモノホスホリルリピドA(MPL)を添加し、または添加せずに、MN720と混合したH-OROで、ワクチン接種したラットにおける相対抗ラットIgE抗体力価を示す棒グラフである。図33Bは、同じラットにおける相対抗オポッサム抗体力価を示す棒グラフである。
【図34】図34は、ミョウバンと混合したビヒクルまたはミョウバンと混合したH-OROで免疫したラットから得た血清における遊離IgEレベルを示す線グラフである。
【図35】図35Aは、MN51と混合したH-OROで免疫したラットから得た血清サンプル中のラット抗IgE抗体に関する力価希釈曲線を示す線グラフである。図35Bは、ミョウバンと混合したH-OROで免疫したラットから得た血清サンプル中のラット抗IgE抗体に関する力価希釈曲線を示す線グラフである。破線は抗IgE応答の95%信頼区間(n = 9-10)を示す。
【図36】図36は、ビヒクルまたはモンタニド(Montanide) ISA 51と混合したORO-Hで免疫したラットから得た血清における遊離IgEレベルを示す線グラフである。
【図37】図37は、ビヒクルまたはモンタニド(Montanide) ISA 51と混合したORORO-Hで免疫したラットから得た血清における遊離IgEレベルを示す線グラフである。
【図38A】図38A〜Cは、ビヒクル、MN51と混合したビヒクル、または漸増量の、MN51と混合したH-ORO、で免疫したラットから得た血清における、試験設計(A)、抗IgE力価(B)、および遊離循環IgEレベル(C)の概略を示す。
【図38B】図38A〜Cは、ビヒクル、MN51と混合したビヒクル、または漸増量の、MN51と混合したH-ORO、で免疫したラットから得た血清における、試験設計(A)、抗IgE力価(B)、および遊離循環IgEレベル(C)の概略を示す。
【図38C】図38A〜Cは、ビヒクル、MN51と混合したビヒクル、または漸増量の、MN51と混合したH-ORO、で免疫したラットから得た血清における、試験設計(A)、抗IgE力価(B)、および遊離循環IgEレベル(C)の概略を示す。
【図39】図39は、高度に精製された(>98%純度)非ヒスチジンタグ付加OROポリペプチドに関するラットのワクチン接種プロトコルを示す表である。
【図40】図40は、指定された治療を受けるラットにおいて測定されたラットIgE(ng/mL)の量をプロットするグラフである。
【図41】図41は、指定された治療を受けるラットにおいて測定された遊離循環IgEの減少率をプロットするグラフである。
【図42】図42は、サルのワクチン接種プロトコルの概略図である。
【図43】図43は、サル抗IgE抗体を検出するのに用いたELISAの概略図である。
【図44】図44は、MN51と混合したビヒクル、MN51と混合したH-OCO-H、またはMN5と混合したH-OCOCO-Hで免疫したカニクイザルから得た血清サンプルにおける力価希釈50値を示す線グラフである。
【図45】図45は、指定された時点についての血小板数をプロットする棒グラフである。
【図46】図46は、正常であることが判明した血液学的測定値の表である。
【図47】図47は、アジュバントとしてAlhydrogel(商標)を用いるサルのワクチン接種プロトコルの概略図である。
【図48】図48は、Alhydrogel(商標)と混合したH-OCO-Hを様々な用量で用いた所定の時点についてのサル抗IgE抗体の力価をプロットするグラフである。
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2002年9月5日に出願された米国仮出願第60/408,648号の利益を請求するものである。
【0002】
背景
1. 技術分野
本発明は、ポリペプチド(例えば、キメラIgEポリペプチド)とアジュバントとを含むワクチンの使用に関する方法および材料に関する。そのようなワクチンを用いて、抗自己応答(例えば、抗自己IgE応答)を誘導することができる。
【背景技術】
【0003】
2. 背景情報
過去数十年の間、免疫系の機能不全により引き起こされる様々な疾患が現代医学の主要な課題になってきている。2つのそのような領域は、アレルギー性疾患および自己免疫疾患である。アレルギーは、過去20〜30年間、ほとんど蔓延状態になってきた。概算で総人口の20〜30%が罹患している。アトピー性アレルギー、またはIgE媒介性アレルギーが、優勢な形態である。
【0004】
一般的な型のアトピー性アレルギーとしては、花粉症、毛皮アレルギー、塵ダニアレルギー、昆虫毒アレルギー、外因性喘息、および多くの型の食物アレルギーが挙げられる。興味深い問題は、これらの型の疾患に対するワクチンを開発できるかどうかである。20世紀の始め以来、減感作療法を用いてアレルギーが治療されてきた(Noon, Lancet, 1:1572(1911);およびFreeman, Lancet, 1:1178(1914))。これは、アレルゲン依存的治療戦略であり、注入によって患者を治療するためのアレルゲン抽出物の使用を含む。減感作療法は、しかしながら、しばしば効力が低いことおよび時には重篤な副作用があることから、疑問が投げかけられてきた。さらに、個々のアレルギー形態のそれぞれについて、異なる抽出物を用いなければならない。かくして、アレルギーを治療するための新しい戦略が現在、評価されている。
【0005】
ワクチンは、典型的には、ミョウバンなどのアジュバントと共に投与する。しかしミョウバンは、細胞媒介性免疫応答の比較的弱い増強物質である(KrishnanらInfect. Immun., 68:54-63(2000)ならびにGuptaら、Adjuvant properties of aluminium and calcium compounds, p. 229-248. M.F. PowellおよびM.J. Newman(編), Vaccine design: the subunit and adjuvant approach. Plenum Press, New York, NY(1995))。さらに、水酸化アルミニウムは、注入部位に好酸球を誘引し、IgE媒介性アレルギー反応を促進し得る抗原特異的な総IgE抗体のレベルを増加させることが報告されている(Baylorら、Vaccine, 20:S18-S23 (2002); Walls, Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 156:431-435 (1977);およびNagelら、J.Immunol., 118:334-341(1977))。
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、自己ポリペプチドに対するワクチンに関する材料および方法を提供する。例えば、本発明は、ポリペプチド(例えば、キメラIgEポリペプチド)とアジュバントとを含む組成物を提供する。このポリペプチドは、典型的には、自己および非自己成分を含み、これは哺乳動物に投与した場合、抗自己および抗非自己免疫応答の両方をもたらし得る。例えば、哺乳動物に投与した場合、本発明で提供されるキメラIgEポリペプチドは、喘息、アレルギー、および湿疹などのIgE関連疾患のIgE抗体作用を低減させることができる。アジュバントは、典型的には、他のアジュバントを含む組成物と比較して、比較的高い抗自己応答を与えるように選択される。
【0007】
本発明は、アジュバントと組合せたキメラIgEポリペプチドを用いて、哺乳動物における検出可能な遊離IgE抗体のレベルを低下させることができるという発見に基づくものである。例えば、アルミニウム化合物と組合せたキメラIgEポリペプチドの投与は、予想外にも、アルミニウム化合物が総IgEレベルを増加させるという以前の報告と違って、検出可能な遊離IgE抗体のレベルの低下をもたらした。
【0008】
一般的には、本発明の一態様は、ポリペプチド(例えば、OROポリペプチドまたはOSOポリペプチド)およびミョウバンを含む組成物を特徴とし、ここで該ポリペプチドは自己IgEポリペプチド配列を含むものであり、かつ、哺乳動物への該組成物の投与は100を超える力価希釈50値を示す抗自己IgE抗体応答を生成する。この組成物は、約10μg〜約1 gの前記ポリペプチドを含んでもよい。この組成物は、約280μgの前記ポリペプチドを含んでもよい。この組成物は、約10μl〜約1 mlのミョウバンを含んでもよい。この組成物は、約50μlのミョウバンを含んでもよい。力価希釈50値は、150、200、または400を超えるものであってよい。
【0009】
別の実施形態においては、本発明は、ポリペプチド(例えば、OROポリペプチドまたはOSOポリペプチド)およびMN51を含む組成物を特徴とし、ここで該ポリペプチドは自己IgEポリペプチドを含むものであり、かつ、哺乳動物への該組成物の投与は100を超える力価希釈50値を示す抗自己IgE抗体応答を生成する。この組成物は、約10μg〜約1 gの前記ポリペプチドを含んでもよい。この組成物は、約100μgの前記ポリペプチドを含んでもよい。この組成物は、約10μl〜約1 mlのMN51を含んでもよい。この組成物は、約50μlのMN51を含んでもよい。力価希釈50値は150、200、または400を超えるものであってよい。
【0010】
本発明の別の実施形態は、ミョウバンと、約280μgのポリペプチド(例えば、OROポリペプチドまたはOSOポリペプチド)とを含む組成物を特徴とする。
【0011】
別の実施形態においては、本発明は、MN51と、少なくとも約100μgのポリペプチド(例えば、OROポリペプチドまたはOSOポリペプチド)とを含む組成物を特徴とする。
【0012】
別の態様においては、本発明は、哺乳動物が100を超える力価希釈50値を示す抗自己IgE抗体応答を生成する条件下で、IgEポリペプチドに由来する自己ポリペプチド配列を含むポリペプチドとミョウバンとを含む組成物を、該哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物において抗自己IgE抗体応答を誘導する方法を特徴とする。
【0013】
別の実施形態においては、本発明は、哺乳動物が100を超える力価希釈50値を示す抗自己IgE抗体応答を生成する条件下で、IgEポリペプチドに由来する自己IgEポリペプチド配列を含むポリペプチドとMN51とを含む組成物を、該哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物において抗自己IgE抗体応答を誘導する方法を特徴とする。
【0014】
別の実施形態においては、本発明は、哺乳動物(例えば、サルまたはヒトなどの霊長動物)における可逆的な抗自己IgE応答を誘導する方法を特徴とする。そのような方法は、前記哺乳動物が、応答がピークに達した後に時間と共に低下するような様式で自己IgEに対する抗体応答を開始する条件下で、自己IgE配列を有するポリペプチドを、該哺乳動物に投与することを含む。例えば、この抗自己IgE応答は、時間と共に低下する(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月またはそれ以上の月数以内に検出不能なレベルまで減少する)一次応答であってよい。
【0015】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物(例えば、サルまたはヒトなどの霊長動物)が一次抗自己IgE応答を経験した後に、前記哺乳動物における抗自己IgE応答を誘導する方法を特徴とする。そのような方法は、前記哺乳動物が、二次抗体応答と一致するような様式で自己IgEに対する抗体応答を開始する条件下で、自己IgE配列を有するポリペプチドを、該哺乳動物に投与することを含む。
【0016】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物(例えば、サルまたはヒトなどの霊長動物)における一連の抗自己IgE応答を誘導する方法を特徴とする。そのような方法は、前記哺乳動物が各投与の少なくとも1年(例えば、少なくとも11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1ヶ月以内)以内にピークに達する検出可能な抗自己IgE応答を開始する条件下で、自己IgE配列を有するポリペプチドを、該哺乳動物に異なる時点で投与することを含む。
【0017】
本発明の別の実施形態は、自己IgEポリペプチド配列を含むポリペプチドと、アルミニウム化合物とを含む組成物を特徴とし、ここで哺乳動物への該組成物の投与は、該哺乳動物における検出可能な遊離IgEのレベルを低下させる。このポリペプチドは、キメラIgEポリペプチドであってもよい。このポリペプチドは、配列番号3、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載の配列を含みうる。この組成物は、約10μg〜約1 gの前記ポリペプチドを含んでもよい。この組成物は、約280μgの前記ポリペプチドを含んでもよい。前記アルミニウム化合物は、アルミニウムヒドロゲル化合物であってもよい。前記アルミニウム化合物は、ミョウバンであってもよい。この組成物は、約10μl〜約1 mlのミョウバンを含んでもよい。この組成物は、約50μlのミョウバンを含んでもよい。前記の低下は少なくとも約10%の低下(例えば、少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90または95%の低下)であってよい。この低下は、約10%〜約95%(例えば、約20%〜約95%、約25%〜約95%、約50%〜約95%、約75%〜約95%、約85%〜約95%、約25%〜約80%、または約50%〜約80%)の低下であってよい。この低下は、ELISAにおいて検出可能なものであってよい。IgE受容体ポリペプチド配列をELISAにおいて用いることができる。前記哺乳動物への前記組成物の投与は、100を超える(例えば、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、または1500を超える)力価希釈50値を示す抗自己IgE抗体応答を生成し得る。
【0018】
本発明の別の実施形態は、自己IgEポリペプチド配列を含むポリペプチドと、MN51とを含む組成物を特徴とし、ここで哺乳動物への該組成物の投与は、該哺乳動物における検出可能な遊離IgEのレベルを低下させる。このポリペプチドは、キメラIgEポリペプチドであってもよい。このポリペプチドは、配列番号3、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載の配列を含んでもよい。この組成物は、約10μg〜約1 gの前記ポリペプチドを含んでもよい。この組成物は、約100μgの前記ポリペプチドを含んでもよい。この組成物は、約10μl〜約1 mlのMN51を含んでもよい。この組成物は、約50μlのMN51を含んでもよい。前記の低下は少なくとも約10%の低下(例えば、少なくとも約20、30、40、50、60、70、80、90または95%の低下)であってよい。この低下は、約10%〜約95%(例えば、約20%〜約95%、約25%〜約95%、約50%〜約95%、約75%〜約95%、約85%〜約95%、約25%〜約80%、または約50%〜約80%)の低下であってよい。この低下は、ELISAにおいて検出可能なものであってよい。IgE受容体ポリペプチド配列をELISAにおいて用いることができる。前記哺乳動物への前記組成物の投与は、100を超える(例えば、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、または1500を超える)力価希釈50値を示す抗自己IgE抗体応答を生成し得る。
【0019】
本発明の別の実施形態は、アルミニウム化合物と、約30〜300μgのキメラIgEポリペプチドとを含む組成物を特徴とする。
【0020】
本発明の別の実施形態は、MN51と、約30〜300μgのキメラIgEポリペプチドとを含む組成物を特徴とする。
【0021】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物における抗自己IgE抗体応答を誘導する方法を特徴とする。この方法は、前記哺乳動物が、該哺乳動物における検出可能な遊離IgEのレベルを低下させる条件下で、自己ポリペプチド配列を含むポリペプチドとアルミニウム化合物とを含む組成物を、該哺乳動物に投与することを含む。このポリペプチドは、配列番号3、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0022】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物における抗自己IgE抗体応答を誘導する方法を特徴とする。この方法は、前記哺乳動物における検出可能な遊離IgEのレベルを該哺乳動物が低下させる条件下で、自己ポリペプチド配列を含むポリペプチドとMN51とを含む組成物を、該哺乳動物に投与することを含む。このポリペプチドは、配列番号3、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0023】
本発明の別の実施形態は、霊長動物における可逆的な抗自己IgE応答を誘導する方法を特徴とする。この方法は、ピークに達した後に時間と共に低下する自己IgEに対する抗体応答を、前記霊長動物が開始する条件下で、自己IgE配列を有するポリペプチドを、該霊長動物に投与することを含む。この霊長動物はサルであってもよい。自己IgEに対する抗体応答は、時間と共に低下する一次応答であってもよい。自己IgEに対する抗体応答は、投与から9ヶ月以内に検出不能なレベルまで減少し得る。前記ポリペプチドは、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載の配列を含んでもよい。
【0024】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物が一次抗自己IgE応答を経験した後に該哺乳動物において抗自己IgE応答を誘導する方法を特徴とする。この方法は、二次抗体応答と一致するような様式で自己IgEに対する抗体応答を哺乳動物が開始する条件下で、自己IgE配列を有するポリペプチドを、該哺乳動物に投与することを含む。この哺乳動物は霊長動物であってよい。前記ポリペプチドは、配列番号3、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載の配列を含んでもよい。
【0025】
本発明の別の実施形態は、哺乳動物において一連の抗自己IgE応答を誘導する方法を特徴とする。この方法は、哺乳動物が各投与の少なくとも1年以内にピークに達する検出可能な抗自己IgE応答を開始する条件下で、自己IgE配列を有するポリペプチドを、該哺乳動物に異なる時点で投与することを含む。この哺乳動物は、各投与の少なくとも3ヶ月以内にピークに達する検出可能な抗自己IgE応答を開始してもよい。
【0026】
特に定義しない限り、本明細書で用いる全ての技術および科学用語は、本発明が属する分野における通常の知識を有する者により一般的に理解されるものと同じ意味を有するものとする。本明細書に記載のものと類似または等価な方法および材料を用いて、本発明を実施することができるが、好適な方法および材料を以下に説明する。本明細書に記載の全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられるものとする。利害が対立する場合、定義を含め、本明細書が支配するであろう。さらに、材料、方法、および実施例は単に例示的なものであり、限定することを意図するものではない。
【0027】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細を、添付の図面および以下の記載で説明する。本発明の他の特徴、課題、および利点は、説明および図面、ならびに特許請求の範囲から明らかであろう。
【0028】
詳細な説明
本発明は、自己ポリペプチドに対するワクチンに関する方法および材料を提供する。例えば、本発明は、ポリペプチドとアジュバントとを含む組成物を提供する。このポリペプチドは、典型的には、自己および非自己成分を含み、これは哺乳動物に投与した場合、抗自己および非自己免疫応答の両方をもたらし得る。アジュバントは、通常は、他のアジュバントを含む組成物と比較して、比較的高い抗自己応答を与えるように選択される。
【0029】
本明細書で用いる用語「ポリペプチド」は、長さまたは翻訳後修飾(例えば、リン酸化やグリコシル化)にかかわらず、アミノ酸の鎖を指す。例えば、いくつかの実施形態において、前記ポリペプチドを、それがリン酸化およびグリコシル化などの修飾を欠如するように非修飾にすることができる。このポリペプチドは、単一の天然ポリペプチドの一部もしくは全部を含んでもよく、または2種以上の天然ポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含むキメラポリペプチドであってもよい。「アジュバント」は、ポリペプチドなどの特定の抗原に対する免疫応答を増強することができる免疫学的化合物である。典型的には、本発明の組成物を哺乳動物に投与して、投与された組成物のポリペプチド成分に対する抗体を該哺乳動物が産生するようにする。この哺乳動物は、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、またはヒトもしくは非ヒト霊長動物(例えば、カニクイザル)などの霊長動物であってよい。
【0030】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、哺乳動物において抗自己ポリペプチド抗体応答を誘導することができる。例えば、ポリペプチドは、1種以上の非自己ポリペプチドセグメント(例えば、非自己ポリペプチド配列)をともに含むかまたは含まない、1種以上の自己ポリペプチドセグメント(例えば、自己ポリペプチド配列)を含んでもよい。ポリペプチド配列および特定の哺乳動物に関して本明細書で用いられる用語「自己」とは、その哺乳動物の免疫系の観点から自己として認められる配列を指す。典型的には、自己ポリペプチドセグメントは、前記組成物を投与すべき哺乳動物種にとって天然のものであるポリペプチドに由来する配列と同一であるか、または類似しているアミノ酸配列である。ポリペプチド配列および特定の哺乳動物に関して本明細書で用いられる用語「非自己」とは、その哺乳動物の免疫系の観点から外来のものとして認められる配列を指す。典型的には、非自己ポリペプチドセグメントは、前記組成物を投与すべき哺乳動物種にとって天然のものではないアミノ酸配列である。ポリペプチドは、例えば、ラットおよびオポッサムのIgE分子に由来する配列を含むOROポリペプチドであってよく、本明細書に記載のようにしてラットに投与することができる。
【0031】
本発明で提供されるポリペプチドは、1コピーを超える自己セグメントを含んでもよい(例えば、ラットIgEアミノ酸配列に由来する2コピーのセグメントを含むOROROポリペプチド)。任意のタイプの哺乳動物(例えば、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、カニクイザルなどの非ヒト霊長動物、またはヒト)のポリペプチドに由来するセグメントを、本発明で提供されるポリペプチド中に含有させることができる。例えば、PCT出願第PCT/SE99/01896号に記載のポリペプチドのいずれをも用いることができる。あるいは、前記ポリペプチドはタグ(例えば、Hisタグ、mycタグ、またはFLAG(登録商標)タグ)を含んでもよい。そのようなタグは、典型的には、前記ポリペプチドのアミノ末端またはカルボキシル末端に配置されるが、該ポリペプチド内のいずれの場所にも配置することができる。これらのタグは、前記ポリペプチドの検出および/または精製を助ける一方で、非自己成分として機能し得る。
【0032】
自己セグメント、ならびに非自己セグメントは、任意の長さを有してよいが、典型的には少なくとも5アミノ酸長(例えば、少なくとも約5、10、20、30、40、50、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、150、175、200、500、750、1000、2000、3000、4000、5000またはそれ以上のアミノ酸長)である。例えば、自己セグメント、ならびに非自己セグメントは、約20、30、40、50、60、70、または80アミノ酸から約90、100、110、120、130、140、150、200、250、または500アミノ酸の範囲におよぶ長さを有してもよい。典型的には、ポリペプチドの自己セグメントは、前記組成物を投与する哺乳動物にとって天然のものであるポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも80%(例えば、85、90、95、または99%)同一であるアミノ酸配列を有する。例えば、ヒトにワクチン接種する場合、キメラIgEポリペプチドの自己IgEセグメントは、ヒトIgE配列に対してその110アミノ酸長にわたり約95%の同一性を有する約110アミノ酸長であってよい。
【0033】
任意の核酸またはアミノ酸配列に関して、長さとその長さにわたる同一性%は、以下のように決定される。第1に、核酸またはアミノ酸配列を、BLASTNバージョン2.0.14およびBLASTPバージョン2.0.14を含むスタンドアローン型BLASTZに由来するBLAST2 Sequences(Bl2seq)プログラムを用いて、同定された核酸またはアミノ酸配列と比較する。このスタンドアローン型BLASTZは、Fish & Richardsonのウェブサイト(www.fr.com/blast;すなわち"fr"ドット"com"スラッシュ"blast"のワールド・ワイド・ウェブ)または米国政府による国立バイオテクノロジー情報センター・ウェブサイト(www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/executables;"ncbi"ドット"nlm"ドット"nih"ドット"gov"スラッシュ"blast"スラッシュ"executables"のワールド・ワイド・ウェブ)にて取得することができる。Bl2seqプログラムの使用方法を説明する説明書は、BLASTZに添付しているリードミーファイルに見出すことができる。
【0034】
Bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPアルゴリズムのいずれかを用いて2つの配列間の比較を実行する。核酸配列を比較するにはBLASTNを用いるが、アミノ酸配列を比較するにはBLASTPを用いる。2つの核酸配列を比較するために、オプションを以下のように設定する: -iを、比較しようとする第1の核酸配列を含むファイルに設定する(例えば、
);-jを、比較しようとする第2の核酸配列を含むファイルに設定する(例えば、
);-pを、blastnに設定する;-oを任意の所望のファイル名に設定する(例えば、
); -qを-1に設定する;-rを、2に設定する;および他のオプションは全てそのデフォルト設定のままにする。例えば、以下のコマンドを用いて、2つの配列間の比較を含む出力ファイルを作製することができる:
2つのアミノ酸配列を比較するには、Bl2seqのオプションを以下のように設定する:-iを、比較しようとする第1のアミノ酸配列を含むファイルに設定する(例えば、
);-jを、比較しようとする第2のアミノ酸配列を含むファイルに設定する(例えば、
);-pを、blastpに設定する;-oを任意の所望のファイル名に設定する(例えば、
);および他のオプションは全てそのデフォルト設定のままにする。例えば、以下のコマンドを用いて、2つのアミノ酸配列間の比較を含む出力ファイルを作製することができる:
標的配列が、同定された配列の任意の部分との相同性を有する場合、指定された出力ファイルはアラインメントされた配列としてそれらの相同性領域を提示するであろう。標的配列が、同定された配列の任意の部分との相同性を有しない場合、指定された出力ファイルはアラインメントされた配列を提示しないであろう。一度アラインメントされたら、任意の一致した位置から開始し別の任意の一致した位置で終了する同定された配列に由来する配列とのアラインメントとして提示された標的配列から、連続したヌクレオチドまたはアミノ酸残基の数を計数することにより、長さを決定する。一致した位置は、同一のヌクレオチドまたはアミノ酸残基が標的配列および同定された配列の両方に存在する任意の位置である。ギャップはヌクレオチドまたはアミノ酸残基ではないため、標的配列中に存在したギャップは計数されない。同様に、標的配列のヌクレオチドまたはアミノ酸残基は計数されるが、同定された配列に由来するヌクレオチドまたはアミノ酸残基は計数されないため、同定された配列中に存在したギャップは計数されない。
【0035】
決定された長さに渡る同一性%は、その長さにわたって一致した位置の数を計数し、その数を長さで割った後、得られる値に100を乗じることにより決定する。例えば、(1)1000アミノ酸の標的配列を200アミノ酸の試験配列と比較し、(2)Bl2seqプログラムが、その200ヌクレオチドの領域の最初と最後のヌクレオチドが一致する試験配列の領域とアラインメントされた標的配列に由来する200アミノ酸を提示し、そして(3)これらの200個のアラインメントされたヌクレオチドにわたる一致の数が180である場合、1000ヌクレオチドの標的配列は200の長さおよびその長さにわたる90%の同一性を含む(すなわち、180/200 * 100 = 90)。
【0036】
同定された配列とアラインする単一の核酸またはアミノ酸標的配列は、長さ毎にその個々の同一性%を示す多くの様々な長さを有し得ることは理解されるであろう。例えば、以下のような同定された配列とアラインする20ヌクレオチドの領域を含む標的配列は、表1に列挙されるものを含む多くの異なる長さを有する。
【0037】
【表1】
【0038】
同一性%の値は小数第2位を四捨五入したものであることに留意する。例えば、78.11、78.12、78.13、および78.14は78.1に切り下げられ、一方、78.15、78.16、78.17、78.18、および78.19は78.2に切り上げられる。また、長さの値は常に整数であることにも留意する。
【0039】
任意の方法を用いて、ポリペプチドを取得することができる。例えば、分子クローニング技術を用いて、自己および非自己セグメントを含むポリペプチド(例えば、ORO)をコードする核酸構築物を製造することができる。そのような構築物は、E. coliもしくはS. cerevisiaeなどの生物中で、または例えば細胞系で発現させた後、細胞抽出物から、または培養上清から、精製することができる。あるいは、ポリペプチドを化学的に合成することができる。
【0040】
特に、核酸ベクターをキメラIgEポリペプチドを発現するように設計することができる。そのような核酸ベクターの例としては、限定されるものではないが、図1、2、5および6に記載のものが挙げられる。さらに、核酸ベクターは挿入配列を含んでもよい。本明細書で用いる用語「挿入配列」とは、核酸ベクター中に挿入されてその挿入された核酸配列が発現され得るようにした核酸配列を指す。挿入配列は、図4、8、10、12、14、16、18、20、または23に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドなどのキメラIgEポリペプチドをコードする核酸配列であってよい。そのような核酸配列は、図3、7、9、11、13、15、17、19、22または24に記載のものであってよい。本明細書で用いる用語「キメラIgEポリペプチド」とは、異なる種に由来するIgE配列(例えば、完全ドメイン、半分のドメイン、または4分の1ドメイン)の組合せを有するポリペプチドを指す。キメラIgEポリペプチドは、典型的には、IgE定常重鎖(CH)ドメイン(例えば、CH1、CH2、CH3、またはCH4)を含む。例えば、配列番号2に記載の配列を有する挿入配列は、オポッサムCH2-ラットCH3-オポッサムCH4(ORO)キメラIgEポリペプチド(配列番号3)をコードし得る。挿入配列の他の例としては、限定されるものではないが、(1)オポッサムCH2-ヒトCH3-オポッサムCH4(OSO)キメラIgEポリペプチド(配列番号6)をコードする、配列番号5に記載の配列を有する挿入配列、(2)オポッサムCH2-ラットCH3-オポッサムCH2-ラットCH3-オポッサムCH4(ORORO)キメラIgEポリペプチド(配列番号8)をコードする、配列番号7に記載の配列を有する挿入配列、および(3)オポッサムCH2-ヒトCH3-オポッサムCH2-ヒトCH3-オポッサムCH4(OSOSO)キメラIgEポリペプチド(配列番号16)をコードする、配列番号15に記載の配列を有する挿入配列、が挙げられる。さらに、挿入配列は、国際特許出願第PCT/SE99/01896号に開示されたポリペプチドのいずれかをコードする配列を有してもよい。ラットおよびヒトに加えて、他の種に由来するIgE配列(例えば、ドメイン)を、キメラ挿入配列中で用いることができる。そのような種としては、限定されるも
のではないが、イヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ウシ、およびサルが挙げられる。例えば、オポッサムおよびサル(例えば、カニクイザル)に由来するIgEドメインを含む挿入配列は、オポッサムCH2-カニクイザルCH3-オポッサムCH4 (OCO)キメラIgEポリペプチドをコードし得る。オポッサムおよびサルに由来するIgE配列(例えば、ドメイン)を有する他の挿入配列としては、限定されるものではないが、C末端ヒスチジンタグを含むオポッサムCH2-カニクイザルCH3-オポッサムCH4 (OCO-H)をコードする配列;オポッサムCH2-カニクイザルCH3-オポッサムCH2-カニクイザルCH3-オポッサムCH4 (OCOCO)をコードする配列;およびC末端ヒスチジンタグを含むオポッサムCH2-カニクイザルCH3-オポッサムCH2-カニクイザルCH3-オポッサムCH4 (OCOCO-H)をコードする配列が挙げられる。
【0041】
挿入配列を改変することができる。そのような改変としては、限定されるものではないが、付加、欠失、置換、点突然変異、およびそれらの組合せが挙げられる。挿入配列を、該挿入配列によりコードされるポリペプチドの精製を助けるためにC末端ポリヒスチジン配列を含むように改変することができる。この目的で使用されるポリヒスチジン配列は、他の文献(Fordら、Protein Expr. Purif., 2(2-3):95-107, 1991)に記載されている。例えば、配列番号13に記載の配列を有する挿入配列は、C末端ポリヒスチジン配列を含むOSOキメラIgEポリペプチド(OSO-H;配列番号14)をコードし得る。挿入配列を、点突然変異を含むように改変することができる。例えば、配列番号11に記載の配列を有する挿入配列は、肥満細胞受容体結合を喪失させるヒトCH3ドメイン中の点突然変異を含むOSOSOキメラIgEポリペプチド(modOSOSO;配列番号12)をコードし得る。改変された挿入配列の他の例としては、限定されるものではないが、C末端ポリヒスチジン配列を含むOSOSOキメラIgEポリペプチド(OSOSO-H;配列番号18)をコードする配列番号17に記載の配列を有する挿入配列、およびC末端ポリヒスチジン配列を組み込み肥満細胞受容体結合を喪失させるヒトCH3ドメイン中に点突然変異を含むOSOSOキメラIgEポリペプチド(modOSOSO-H;配列番号10)をコードする配列番号9に記載の配列を有する挿入配列が挙げられる。
【0042】
核酸ベクターはまた、挿入配列の発現に影響を及ぼす構成要素を含んでもよい。そのような構成要素の例としては、限定されるものではないが、プロモーター、エンハンサー、リーダー、およびポリアデニル化配列が挙げられる。そのような構成要素を、前記挿入配列に機能し得る形で連結することができる。本明細書で用いられる用語「機能し得る形で連結した」とは、そのように記載された構成要素が、その通常の機能を果たすように構成された配置を指す。例えば、OSOSOキメラIgEポリペプチドをコードする挿入配列を含む核酸ベクターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列(例えば、Thomsonら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81(3):659-663, 1984を参照)、免疫グロブリン(Ig)リーダー配列(例えば、Neubergerら、EMBO J., 2(8):1373-1378, 1983を参照)、およびウシ成長ホルモン(bGH)ポリアデニル化配列(例えば、Goodwinら、J. Biol. Chem., 267:16330-16334, 1992を参照)をも含んでもよい。この場合には、前記構成要素を挿入配列に機能し得る形で連結させて、CMVプロモーターが、Igリーダー配列およびbGHポリアデニル化配列を含む挿入配列の発現を駆動することができ、Igリーダー配列が調製された小胞体の内腔中で発現された挿入配列が分泌されるようにすることができ、また、bGHポリアデニル化配列が挿入配列の転写物を安定化させることができる。
【0043】
さらに、核酸ベクターは、該核酸ベクターを含む宿主細胞の増殖、維持、または分泌を助ける構成要素を含んでもよい。そのような構成要素としては、限定されるものではないが、複製起点および抗生物質選択マーカーが挙げられる。例えば、CMVプロモーター配列、Igリーダー配列、SV40後期ポリアデニル化配列、およびOSOSOキメラIgEポリペプチドをコードする挿入配列を含有する核酸ベクターは、f1複製起点配列、発現された場合に細菌宿主細胞に対してアンピシリン耐性を付与する配列、および発現された場合に哺乳動物宿主細胞に対してネオマイシン耐性を付与する配列をも含んでよい。抗生物質選択マーカーの他の例としては、限定されるものではないが、発現された場合に、宿主細胞に対して、ハイグロマイシンB、ピューロマイシン、カナマイシン、テトラサイクリン、ブラスチシジンS、ゲネチシン(登録商標)、およびゼオシンへの耐性を付与する配列が挙げられる。本明細書に記載の1種または2種以上の構成要素を含む核酸ベクターを、例えば、Invitrogen (Carlsbad, CA)およびPromega (Madison, WI)などから商業的に入手することができる。
【0044】
自己IgE配列を含むポリペプチドを、本発明で提供される挿入配列(例えば、ORO、OSO、ORORO、modORORO-H、modOSOSO、OSO-H、OSOSO、およびOSOSO-H)のうち少なくとも1種を含有する核酸ベクター(例えば、Promega社製pCI-neoベクター、カタログ番号E1841)を含む宿主細胞を用いて取得することができる。そのような細胞は、原核細胞(例えば、JM109もしくはDH5α細胞)であっても、真核細胞(例えば、NS0、HeLa、BHK-21、COS-7、Sf9、もしくはCHO細胞)であってもよい。前記核酸ベクターを含む宿主細胞は、コードされたポリペプチドを発現してもしなくてもよい。例えば、宿主細胞は、他の宿主細胞中での使用のために、前記核酸ベクターを単に増殖させるために機能してもよい。さらに、核酸ベクターを、宿主のゲノム中に組み込むか、またはエピソーム状態で維持させることができる。かくして、宿主細胞を、前記核酸ベクターを用いて安定的または一過性にトランスフェクトすることができる。
【0045】
宿主細胞は、キメラIgEポリペプチドをコードする挿入配列を含む核酸ベクターを含んでもよい。例えば、宿主細胞は、OSOキメラIgEポリペプチド、または本発明で提供されるキメラIgEポリペプチドのいずれか、をコードする挿入配列を含有する核酸ベクターを含んでもよい。さらに、宿主細胞は、該挿入配列によりコードされるポリペプチドを発現し得る。
【0046】
様々な方法を用いて、核酸ベクターをin vitroまたはin vivoで宿主細胞に導入することができる。例えば、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、熱ショック、リポフェクション、マイクロインジェクション、およびウイルス媒介性核酸導入は、核酸ベクターを宿主細胞中に導入するのに用いることができる一般的な方法である。さらに、裸のDNAを、他の文献(米国特許第5,580,859号および第5,589,466号)に記載のようにin vivoで細胞に直接送達することができる。さらに、核酸ベクターを細胞に導入して、トランスジェニック動物を作製することができる。
【0047】
トランスジェニック動物は、水生動物(魚、鮫、イルカなど)、家畜(ブタ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ウサギなど)、げっ歯類(ラット、モルモット、およびマウスなど)、非ヒト霊長動物(ヒヒ、サル、およびチンパンジーなど)、ならびに家庭動物(イヌおよびネコなど)であってよい。当業界で公知のいくつかの技術を用いて核酸ベクターを動物に導入して、トランスジェニック動物の創始者系統を作製することができる。そのような技術としては、限定されるものではないが、前核マイクロインジェクション(米国特許第4,873,191号);生殖細胞系へのレトロウイルス媒介遺伝子導入(Van der Puttenら、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 82:6148(1985));胚性幹細胞中への遺伝子トランスフェクション(Gossler Aら、Proc Natl Acad Sci USA 83:9065-9069(1986));胚性幹細胞中への遺伝子ターゲティング(Thompsonら、Cell, 56:313(1989));体細胞核の核移植(Schnieke AEら、Science 278:2130-2133(1997));および胚のエレクトロポレーション(Lo CW, Mol. Cell. Biol., 3:1803-1814(1983))が挙げられる。一度取得されば、伝統的な繁殖法または動物クローニングを用いて、トランスジェニック動物を複製することができる。
【0048】
様々な方法を用いて、本発明で提供される核酸ベクターを含む宿主細胞を同定することができる。そのような方法としては、限定されるものではないが、PCR、ノーザンおよびサザン分析などの核酸ハイブリダイゼーション技術、ならびにin situ核酸ハイブリダイゼーションが挙げられる。いくつかの場合においては、免疫組織化学および生化学的技術を用いて、特定の挿入配列によりコードされるポリペプチドの発現を検出することにより、細胞が、その特定の挿入配列を有する核酸ベクターを含むかどうかを判定することができる。
【0049】
任意の方法を用いて、組換えキメラIgEポリペプチドを製造することができる。そのような方法は、キメラIgEポリペプチドを発現する宿主細胞を培養し、発現されたIgEポリペプチドを回収することを含む。組換えキメラIgEポリペプチドを回収するために、任意の方法を用いることができる。例えば、宿主細胞ホモジネート中に存在する組換えキメラIgEポリペプチドを、イオン交換クロマトグラフィーを用いて回収することができる。別の例においては、ポリヒスチジン配列を含有する組換えキメラIgEポリペプチドは、宿主細胞ホモジネートをニッケルカラムに通過させ、イミダゾールを用いてポリヒスチジン含有ポリペプチドを溶出させることにより、該ホモジネートから回収することができる。ポリペプチドの分泌を指令するリーダー配列を備えた特定の組換えキメラIgEポリペプチドを、そのポリペプチドを発現する宿主細胞の増殖培地から回収することができる。例えば、OROまたはOSOポリペプチドを発現し分泌する哺乳動物宿主細胞の培養物からの増殖培地を収集し、クロマトグラフィーを用いてOROまたはOSOポリペプチドを回収することができる。ポリペプチドの分泌を指令するリーダー配列は、典型的には、タンパク質分解により、
宿主細胞中のそのポリペプチドから除去されるものと理解される。かくして、回収された分泌ポリペプチドは、多くの場合、いかなる翻訳されたリーダー配列も含まない。
【0050】
一実施形態においては、OROまたはOSOポリペプチドを発現し、分泌するクローン化CHO細胞系からの細胞培地を回収し、遠心分離して細胞破片を除去する。遠心分離の後、上清を透析し、イオン交換カラムに通過させ、それによりOROまたはOSOポリペプチドを結合させる。結合したOROまたはOSOポリペプチドを、塩化ナトリウム/酢酸ナトリウム勾配を用いて溶出し、溶出した画分を、ELISA技術を用いて組換えOROまたはOSOポリペプチドについてスクリーニングする。高いELISA反応性を有する溶出画分をプールし、再度透析し、透析されプールされた画分を、疎水性相互作用カラムに通過させ、それによってOROまたはOSOポリペプチドを結合させる。結合したOROまたはOSOポリペプチドを、リン酸ナトリウム勾配を用いて溶出し、溶出した画分を、ELISA技術を用いて組換えOROまたはOSOポリペプチドについて再度スクリーニングする。高いELISA反応性を有する溶出画分を、銀染色されたSDS-PAGEによりさらに分析して、OROまたはOSOポリペプチドの純度を評価する。
【0051】
本明細書に記載のように、ミョウバンならびに他のアルミニウムに基づく化合物(例えば、Al2O3)を、自己ポリペプチドセグメント(例えば、自己IgE配列)を含むポリペプチドと組み合わせて、哺乳動物に投与した場合に抗自己応答を誘導する組成物を形成することができる。アルミニウムに基づく化合物を、様々な商業的供給業者から入手することができる。例えば、REHYDRAGEL(登録商標)アジュバントを、Reheis Inc. (Berkeley Heights, NJ)から入手することができる。REHYDRAGEL(登録商標)アジュバントは、結晶性オキシ水酸化アルミニウムに基づくものであり、大きな表面積(約525 m2/g)を有する結晶粒子を含む水和ゲルである。そのAl2O3含量は、典型的には、約2〜約10%の範囲である。Rehydragel LGは、例えば、約6%のAl2O3含量を有し、軽く攪拌すると容易に流動する。Rehydragel LGはまた、1.58のタンパク質結合能力(すなわち、1 mgのAl2O3あたり、1.58 mgのウシ血清アルブミンが結合する)、0.02%のナトリウム含量、0.28%の塩化物含量、検出不能な硫酸、3 ppm未満の砒素レベル、15 ppm未満の重金属含量、6.5のpH、および1090 cpの粘度を有する。Rehydragel LGを、ポリペプチド溶液(例えば、PBS中のポリペプチド)と組み合わせて、Al(OH)3を得ることができる。さらに、Brenntag Stinnes Logisticsから入手できるALHYDROGEL(商標)、すなわちアルミニウムヒドロキシゲルアジュバント (Alhydrogel 1.3%、Alhydrogel 2.0%、またはAlhydrogel「85」)を用いることができる。
【0052】
さらに、MN51を、自己ポリペプチドセグメント(例えば、自己IgE配列)を含むポリペプチドと組み合わせて、哺乳動物に投与した場合に抗自己応答を誘導する組成物を形成することができる。MN51(MONTANIDE(登録商標) Incomplete SEPPICアジュバント(ISA)51)ならびにMN720は、Seppic(Paris, France)から入手可能である。MN51は、ミネラルオイル溶液(Drakeol 6 VR)中のオレイン酸マンニド(MONTANIDE(登録商標)80、無水マンニトールオクタデセノエートとしても知られる)を含む。MONTANIDE(登録商標)80は、最大酸価1、164〜172の鹸化価、89〜100のヒドロキシル価、67〜75のヨウ素価、最大過酸化物価2、20 ppm未満の重金属値、最大水含量0.35%、最大明度9、および25℃で約300 mPasの粘度を有する透明な液体である。油(例えば、ミネラルオイル、植物油、スクアラン、スクアレン、またはエステル)と会合したモンタニド(MONTANIDE(登録商標))は、モンタニド(MONITANID(登録商標))ISAとして公知である。Drakeol 6 VRは、医薬品等級のミネラルオイルである。Drakeol 6 VRは、不飽和または芳香族炭化水素を含まず、36.2〜36.8のA.P.I.重量、25℃で0.834〜0.838の比重、100°Fで59〜61 SSUまたは10.0〜10.6センチストークの粘度、25℃で1.458〜1.463の屈折率を有し、最大酸度試験よりも良好であり、360 nmで蛍光について陰性であり、可視浮遊物質について陰性であり、0〜15°FのASTM流動試験値を有し、295°Fの最低ASTM発火点を有し、ならびにライトミネラルオイルおよび紫外線吸収について全てのRN要件を満たす。MN51は、約8〜12%の無水マンニトールオクタデセノエートと約88〜92%のミネラルオイルを含む。MN51は、最大酸価0.5、16〜20の鹸化価、9〜13のヒドロキシル価、最大過酸化物価2、5〜9のヨウ素価、最大水含量0.5%、25℃で1.455〜1.465の屈折率、20℃で約0.85の密度、および20℃で約50 mPaSの粘度を有する透明で黄色の液体である。MN51と生理食塩水の50:50混合物の伝導度は10μScm-1である。
【0053】
他のアジュバントとしては、コレステロールおよびサポニンなどの成分を含んでもよい免疫賦活複合体(ISCOM)が挙げられる。ISCOMマトリックスを調製し、本明細書に記載のものなどの方法を用いて、Cu2+とコンジュゲートさせることができる。FCA、FIA、MN51、MN720、およびAl(OH)3などのアジュバントが、Seppic, Difco Laboratories (Drtroit, MI)およびSuperfos Biosector A/S (Vedbeak, Demark)などの会社から商業的に入手可能である。
【0054】
いくつかの実施形態においては、組成物は1種以上のさらなる免疫賦活成分を含んでもよい。これらのものとしては、限定されるものではないが、ムラミルジペプチド(例えば、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン;MDP)、モノホスホリル-リピドA(MPL)、およびN-ホルミル-Met-Leu-Pheなどのトリペプチドを含むホルミル-メチオニンが挙げられる。そのような化合物は、例えば、Sigma Chemical Co. (St. Louis, MO)およびRIBI ImmunoChem Research, Inc. (Hamilton, MT)から商業的に入手可能である。
【0055】
組成物の「単回用量」とは、1回に哺乳動物に投与される組成物の量を指す。本明細書に提供される単回用量の組成物は、任意の量のポリペプチドを含んでもよい。例えば、単回用量の組成物は、約10μg〜約1 g(例えば、10μg、15μg、25μg、30μg、50μg、100μg、250μg、280μg、300μg、500μg、750μg、1 mg、10 mg、15 mg、25 mg、30 mg、50 mg、100 mg、250 mg、280 mg、300 mg、500 mg、750 mg、またはそれ以上)のポリペプチドを含んでもよい。いくつかの実施形態においては、該ポリペプチドを、例えば、水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH 7.0などの生理学的バッファー中に溶解するか、または懸濁してもよい。次いで、ポリペプチドの溶液をアジュバントおよび前記組成物の任意の他の成分と混合することができる。
【0056】
同様に、単回用量の組成物は、任意の量のアジュバントを含んでもよい。例えば、単回用量は、約10μL〜約1 mL(例えば、10μL、25μL、50μL、100μL、250μL、500μL、750μL、800μL、900μL、または1 mL)の1種以上のアジュバントを含んでもよい。さらに、単回用量の組成物は、任意の量の別の免疫賦活成分を含んでもよい。例えば、本発明で提供される組成物は、約10μg〜約1 g(例えば、10μg、15μg、25μg、30μg、50μg、100μg、250μg、280μg、300μg、500μg、750μg、1 mg、10 mg、15 mg、25 mg、30 mg、50 mg、100 mg、250 mg、280 mg、300 mg、500 mg、750 mg、またはそれ以上)の免疫賦活成分を含んでもよい。
【0057】
本発明で提供される組成物は、アジュバントとポリペプチドを任意の比で含んでもよい。アジュバント:抗原比は、例えば、50:50(vol:vol)であってよい。あるいは、アジュバント:抗原比は、限定されるものではないが、90:10、80:20、70:30、64:36、60:40、55:45、40:60、30:70、20:80、または90:10であってよい。
【0058】
本発明はまた、本発明で提供される組成物を製造する方法を提供する。そのような方法は、好適な量の生理学的バッファー(例えば、50μLのPBS pH 7.0)中に一定量のポリペプチド(例えば、100μgのORO)を懸濁し、そして懸濁または溶解した抗原を、好適な量のアジュバント(例えば、50μLのMN51または100μLのREHYDRAGEL(登録商標))と混合することを含む。混合工程を、例えば、攪拌、振とう、ボルテックス、またはシリンジに取り付けた針を通して前後に通過させることなどの任意の方法により達成することができる。前記組成物を、複数回注入用(例えば、複数の動物への注入または同じ動物への複数回の注入)に十分な単回用量が得られるように、バッチ式で製造することができる。
【0059】
本発明はまた、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、カニクイザルなどの非ヒト霊長動物、またはヒト)中での抗自己応答を誘導する方法を提供する。そのような方法は、自己ポリペプチドに由来するアミノ酸配列(例えば、特定生物種の哺乳動物において認められるIgEポリペプチドのCH3ドメインに由来するアミノ酸配列)を含むポリペプチドを含む本発明で提供される組成物を、哺乳動物に投与することを含む。このポリペプチドは、別の種に由来する少なくとも1種のアミノ酸配列(例えば、異なる種において認められるIgEポリペプチドに由来するCH2またはCH4ドメインに由来するアミノ酸配列)を含んでもよい。
【0060】
一般的には、本発明で提供されるポリペプチドを含む組成物を、循環IgEを排除することによりアレルギーカスケードを無効にするためのアレルギーワクチンとして用いることができる(図25〜28)。前記組成物は、レシピエントにおける自己IgEに対する抗体応答を誘導しうる。作用の特定の様式に限定されるものではないが、哺乳動物のIgEに対する寛容性を破壊させうる状況下でのポリペプチドと自己IgE配列とを含む組成物の投与は、抗自己IgE抗体の生成をもたらし、次いで循環する自己IgE抗体のレベルを低下させると考えられる。
【0061】
本発明で提供される組成物は、様々な方法により投与することができる。投与は、例えば、局所(例えば、経皮、点眼、または鼻内);経肺(例えば、粉末もしくはエアロゾルの吸入もしくは通気による);経口;または非経口(例えば、皮下、くも膜下、脳室内、筋肉内、もしくは腹腔内注入によるか、または点滴静注による)であってよい。投与は、迅速なもの(例えば、注入による)であってもよいし、一定の時間をかけて行ってもよい(例えば、ゆっくりした注入もしくは遅延放出製剤の投与による)。
【0062】
任意の用量を哺乳動物に投与することができる。用量は、個々の組成物の相対効力に依存して様々であってよく、一般的には、in vitroおよびin vivo動物モデルから得られるデータに基づいて算出することができる。典型的には、用量は約0.01μg〜100 g/kg体重であり、1日1回以上、週に1回以上、またはそれ以下の頻度で与えることができる。投与が成功した後、被験体にさらなる追加投与を受けさせて、好適なレベルの抗自己応答を維持するのが望ましい。
【0063】
哺乳動物における組成物に対する抗自己応答(例えば、抗自己IgE抗体応答)を、任意の方法を用いて評価することができる。例えば、抗自己IgE力価を測定することができる。あるいは、「力価希釈50値」を、ELISAを用いて、そして血清サンプルの希釈物(例えば、連続希釈物)の光学密度(OD)を測定することにより決定することができる。最大ODから50%の低下をもたらす希釈倍数を、力価希釈50値とみなす。この値は、例えば、Molecular Devices, Inc. (Sunnyvale, CA)から入手可能であるSOFTmax(登録商標)Pro 4.0ソフトウェアプログラムを用いて曲線当てはめをすることにより算出することができる。曲線当てはめのために4つのパラメーターの非線形回帰を用いてこのプログラムを使用して、データポイントを曲線に当てはめ、力価希釈50値を決定することができる。
【0064】
本発明はまた、1種以上の自己IgEセグメント(例えば、ORO)を含むポリペプチドで処理した被験体(例えば、哺乳動物)の血清における遊離IgEレベルを測定する方法を提供する。そのような方法は、例えば、OROで処理した被験体からの血清サンプルを提供し、ヒトIgE受容体α鎖などのIgE受容体ポリペプチド(例えば、GenBank(登録商標)アクセッション番号NM 002001を有するポリペプチド)と共に該サンプルをインキュベートして、IgE/IgE受容体複合体を形成することを含む。任意のIgE受容体配列(またはその一部)を用いることができる。例えば、ヒトIgE受容体α鎖を用いて、ヒトまたはサルなどの他の霊長動物における遊離IgEを測定することができる。IgE受容体ポリペプチドを、遊離IgEを含むサンプルと共にインキュベートした後、形成されたIgE/IgE受容体複合体を測定することができる。任意の方法を用いて、IgE/IgE受容体複合体を測定することができる。例えば、ELISAおよびELISA様手法などの免疫学的アッセイを用いて、IgE/IgE受容体複合体を測定することができる。
【0065】
本発明はまた、抗自己IgEポリペプチド含有組成物で処理した哺乳動物中に存在する遊離IgEの量を評価するためのキットを提供する。そのようなキットは、IgE受容体配列およびIgE/IgE受容体複合体に結合し得る抗体を含んでもよい。本発明で提供されるキットはまた、ORO含有組成物などの本明細書に記載の組成物を含んでもよい。そのようなキットを用いて、哺乳動物における遊離IgEレベルを評価し、必要に応じて、自己ポリペプチド含有組成物のさらなる追加免疫を提供することができる。本発明で提供されるキットは、IgE標準品、陰性対照、酵素調製物、および酵素基質などの追加試薬を含んでもよい。
【0066】
本発明を、以下の実施例でさらに説明するが、これは特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0067】
実施例1 ワクチンアジュバントの評価
活性ワクチン成分、H-OROの製造
ワクチン中の活性成分、H-OROは、オポッサムε-重鎖のC2およびC4ドメイン(AveskoghおよびHellman, Eur. J. Immunol., 28:2738(1998))にフランキングしたラットε-重鎖のC3ドメイン(Hellmanら、Nucl. Acids Res., 10:6041(1982))に由来する1041 bpを含む組換え構築物によりコードされるものであった。この構築物(図29)を、以前に記載(Vernerssonら、FASEB J., 16:875(2002))のように、293-EBNA細胞中で発現させて、Ni-NTAアガロース(QIAGEN GmbH, Germany)上で精製した。H-ORO成分は、PBS pH 7.0中、1.5 mg/mlの濃度で得られた。
【0068】
試験1:
20匹の、8〜10週齢メスWistarラット(BentonおよびKingman, Sollentuna, Sweden)を、オボアルブミン(OVA)に対して感作した。この動物に、10μg OVA (Sigma Chemical Co., MO)を含むPBS pH 7.0を初回の腹腔内(i.p.)注入し、続いて初回ワクチン接種の前の5週間にわたって3μg OVAを含むPBS pH 7.0を毎週i.p.注入し、これを、ワクチン接種プログラムを通して継続した。
【0069】
4匹の動物からなる群の5群に、以下のアジュバント:FCA(Difco Laboratories, Detroit, MI)、Al(OH)3 (Superfos Biosector A/S, Vedbeak, Denmark)、またはCu2+-コンジュゲート化ISCOMマトリックス(Anderssonら(2001) J. Immunol. Methods 255:135)のうちのいずれかと混合したH-OROの初回のi.p.ワクチン接種を施した。動物1〜4には、FCAと50:50で混合した、50μL PBS pH 7.0中の100μg H-OROを投与した。動物5〜8には、100μg H-OROおよび100μL PBS pH 7.0中の10体積% Al(OH)3スラリーを投与した。動物9〜12には、Cu2+-コンジュゲート化ISCOMマトリックスと50:50で混合した、100μg H-OROを含む50μL PBS pH 7.0を投与した。動物13〜16には、Cu2+-コンジュゲート化ISCOMマトリックスと50:50で混合した、25μg H-OROを含む50μL PBS pH 7.0を投与した。追加免疫ワクチン接種は治療プログラムの第3週に行った。この追加免疫ワクチン接種は初回ワクチン接種と同一であったが、ただし、FIA(Difco Laboratories)を、動物1〜4中でFCAの代わりに用いた。
【0070】
1 mLの血液サンプルを、初回感作の前、ワクチン接種の3日前、および追加免疫ワクチン接種の2週間後に、尾静脈から採取した。血液を4℃にて一晩凝固させ、10,000 rpm(EBA12R, Hettich Zentrifugen, Germany)で10分間遠心分離した。血清をエッペンドルフチューブに移し、ELISAによる評価を行うまで凍結した。
【0071】
Al(OH)3を含むワクチン調製物は、ワクチン接種の1日前に、100μg H-OROタンパク質を含むPBS pH 7.0とともに10体積% Al(OH)3スラリーに混合し、4℃にて一晩保存した。ISCOMマトリックスを以下のように調製した:Cu2+を含むIDAマトリックスは1.7 mg/mLの推定QA含量および0.5 mg/mLの推定コレステロール含量を有していた(Prep. 990823 B)。Cu2+を含まないマトリックスは2.6 mg/mLのQA含量を有し、コレステロールは0.8 mg/mLであると算出された(Prep. 990320)。Cu2+を含むマトリックスを導入するために、水中の1 M CuSO4*5H2Oのストック溶液を調製した。この溶液をマトリックス調製物に添加して、最終濃度を0.1 M Cu2+にした。この混合物を室温にて30分間、振とう器上でインキュベートした後、4℃にて一晩、PBSに対して透析した。タンパク質抗原を、コレステロール含量に対して1:1の比で加え、4℃にて一晩インキュベートした。
【0072】
試験2:
4匹の動物からなる群の10群に分けた、合計40匹の8〜10週齢メスWistarラットに、アジュバントと共に、100μg H-OROを含むPBS pH 7.0の初回の200μL i.p.注入を施し、いくつかの群においては、アジュバントに加えてさらなる免疫賦活剤と共に投与した。動物1〜4には抗原と50:50の比で混合したFCAを投与した。動物5〜8には、抗原と50:50の比でMN51(Seppic, Paris Cedex 07, France)を投与した。動物9〜12には、MN51:抗原(50:50)および動物1匹あたり200μgのMDP(Sigma Chemical Co.)(25μgのMDPを滅菌PBSに溶解して、最終濃度10 mg/mLにした)を注入した。第4群の動物13〜16には、MN51:抗原(50:50)および200μgのMPLを投与した。メタノール/クロロホルム(1:4)中のMPL(RIBI ImmunoChem Research, Inc., Hamilton, MT)の10 mg/mL溶液を、動物1匹あたり0.2 mgおよび0.1 mg MPLの用量に対応する容量に分割し、蒸発させた。動物17〜20には、MN51:抗原(50:50)、200μg MDP、および100μg MPLを与えた。動物21〜24は、MN51:抗原(50:50)、200μg MDP、100μg MPL、および100μg fMLP(Sigma Chemical Co.)を投与した。10 mgのfMLPを、1 mLの滅菌PBSおよび1 mLの95%エタノールに溶解した。動物25〜28には、H-OROと共にそれと70:30の比でMN720(Seppic)を投与した。動物29〜32には、動物1匹あたりMN720:抗原(64:36)および200μg MDPを注入した。動物33〜36には、MN720:抗原(70:30)および200μg MPLを注入した。第10群の動物37〜40には、MN720:抗原(64:36)に加えて、200μg MDPおよび100μg MPLを投与した。
【0073】
追加免疫投与量は初回のワクチン接種で与えられるH-OROの半量(50μg)を含んでおり、FIAをFCAの代わりに用いた。血液を、ワクチン接種の10日前および追加免疫の2週間後に尾静脈から採血した。血液は、試験1に記載のようにして処理した。
【0074】
抗ラットIgE ELISA:
抗ラットIgE ELISAは、以前に記載されている(Vernerssonら、上掲)。サンプルを単体でアッセイし、ウマ血清をアッセイブランクとして用いた。値を補正するために、2つのサンプルの連続希釈物を各プレート上でアッセイした。
【0075】
抗オポッサムC2-C3-C4 ELISA:
被覆抗原以外は、上記と同じ手順(Vernerssonら、上掲)を用いた。この場合、被覆抗原は、炭酸バッファーpH 9.6中の5μg/mL濃度のオポッサムC2C3C4である。
【0076】
H-ORO成分:
自己および非自己成分に対する免疫応答における差異の問題を検討するために、自己および非自己領域の両方を含むハイブリッド分子を設計し、組換えタンパク質として産生させた。アメリカオポッサムIgE重鎖の第2および第4の定常ドメインにフランキングしたラットε-重鎖(標的種)に由来する第3の定常ドメイン(オポッサムCH2-ラットCH3-オポッサムCH4;H-ORO、図29)を含むワクチンを、293-EBNAヒト胚性腎細胞中で発現させた。平均収量は、馴化培地1リットルあたり、約1 mg H-OROタンパク質であった。SDS-PAGEに基づくと、H-OROの純度は少なくとも90%であると見積もられ、主要な夾雑物は、FBSを補給した細胞培養培地に由来するBSAであると同定された(Vernerssonら、上掲)。オポッサム配列は、ラットIgEと配列においてほぼ60%異なり、従って非自己成分として働いた。オポッサムドメインは2つのさらなる機能を有し、自己成分(C3ドメイン)のための構造的な支持体として、かつ外来T細胞エピトープを提供することにより、自己成分に対するT細胞寛容を破壊するように、その両方に作用した。
【0077】
ELISAによって抗オポッサム応答を測定するための試薬として、組換えオポッサムC2C3C4 IgEを、上記と同じ手順により製造した(OOO)。精製された全ラットIgEを、抗ラットIgE C3応答の測定に用いた。
【0078】
結果:
3種のアジュバントを試験した:フロイント・アジュバント、ミョウバン(Al(OH)3)、およびISCOMの調製物。種々のアジュバントを、H-OROワクチン成分と共にi.p.注入により投与した。その動物を4つの群に分割した:4匹の動物には、CFA中の100μgのH-OROを与え、4匹の動物には市販の調製物に由来するミョウバン(10体積%のAl(OH)3スラリー)に吸着された同じ量のタンパク質を投与し、4匹の動物には100μgのISCOMの表面に吸着された100μgのH-OROを投与し、最後の4匹の動物には、ISCOMは同じ量だが、H-OROは25μgのみを投与した。抗原レベルの低下の理論的根拠は、表面エピトープを認識する免疫系の利用可能性に影響し得る、ISCOMに対するより低い負荷密度の効果を試験するためであった。
【0079】
追加免疫ワクチン接種を、治療プログラムの第3週に投与した。追加免疫ワクチン接種は、動物1〜4においてIFAをFCAの代わりに用いた以外は、初回のワクチン接種と同一であった。1 mLの血液サンプルを、ワクチン接種の3日前および追加免疫ワクチン接種の2週間後に、尾静脈から採取した。
【0080】
比較ELISA分析を、治療プログラムの第5週からの血清について実施した。ELISAプレートを、抗ラットC3免疫応答(抗自己応答)を測定するために全ラットIgEでコーティングするか、または抗非自己応答を測定するためにオポッサムC2C3C4組換えタンパク質(OOO)でコーティングした。驚くべきことに、実質的な抗自己応答はフロイント・アジュバントを用いた場合にのみ検出された(図30A)。この実験では、ミョウバンを用いても応答は検出されず、ISCOM上に吸着された25μg用量のH-OROを投与した4匹の動物のうちの1匹のみで応答が観察された。しかしながら、抗非自己応答を測定する場合、ISCOMはフロイント・アジュバントと同程度であり、これらの2つのアジュバント間で規模の有意な差異は検出することができなかった。しかしながら、ミョウバンは効力の低いアジュバントであることが示された。ミョウバンにより、フロイント・アジュバントおよびISCOMについて認められるレベルの約20%の応答が得られた(図30B)。
【0081】
自己および非自己応答の間の相対的差異も、同じプレート上の異なるウェルをラットIgEまたはOOOでコーティングするELISAアッセイを実施することにより算出した。フロイント・アジュバントで処理した動物における抗非自己応答と抗自己応答の間の比は、4匹の動物について150、175、150および750であることが見出され、これらは、力価において平均値で約300倍の差異を与えた。抗自己抗体の相当量の誘導が観察されたが、これは、自己IgE配列に対する抗体の力価が、非自己IgE配列に対する抗体の力価よりかなり低かったことを示唆している。
【0082】
ISCOM調製物を用いた抗非自己免疫応答の誘導は、フロイント・アジュバントを与えた動物において得られたレベルと同程度の規模であったが、抗自己IgE力価は検出不能であるか、または非常に低かった。さらに、ミョウバン調製物については、検出可能な抗自己IgEは検出されなかった。かなりのレベルの抗自己IgE抗体をもたらした唯一のアジュバントは、ミネラルオイルに基づくアジュバントであるフロイント・アジュバントであった。
【0083】
実施例2 MN51とMN720の比較解析
1種の市販のミネラルオイルアジュバント(MN51)、および植物油に基づくがMN51と同じ乳化剤(モノオレイン酸マンニド)を有する1種のアジュバント(MN720)を試験して、それらの効果とフロイント・アジュバントの効果とを比較した。
【0084】
第1の実験と同様、各群4匹の動物を、抗自己および抗非自己応答の誘導について試験した。抗原およびアジュバントの量は、100μLのアジュバントおよび100μgのH-OROであった。比較ELISA分析を、治療プログラムの第5週に得られた血清を用いて行った。かなりの抗自己IgE応答が全ての動物において検出された。しかしながら、最も顕著な応答はMN51について認められ、実際、フロイント・アジュバントについて観察された応答よりも少し高かった(130%)(図31A)。MN720はフロイント・アジュバントについて認められた応答の約15%のみに相当する応答を生成した。しかしながら、抗自己応答についての観察とは対照的に、3種のアジュバントは全て、抗非自己応答を誘導するその能力においてはほぼ等価な効力を有していた(図31B)。
【0085】
抗非自己および抗自己応答の相対的規模も決定した。フロイント・アジュバントで処理した動物における抗非自己応答と抗自己応答の比は、4匹の動物のうちの3匹について50、65、および75であり、これは、力価において平均値で約63倍の差異を与えた。4匹目の動物から得られた血清の量は、この分析を行うのには不十分であった。MN51については、その比は4匹の動物について200、30、40、および26であり、これは力価において平均値で74倍の差異を与えた。
【0086】
実施例3 MDP、リピドA、およびホルミル-Metポリペプチドに関する潜在的相加効果の分析
2つの前記実験から得られた結果に基づき、ミネラルオイルに基づくアジュバントが抗自己IgE応答の誘導において最も有効であると結論付けられた。しかしながら、抗自己応答と非自己応答の差異は依然として非常に大きく、おそらくしばしば差が50倍を超える。そこで、細菌性免疫賦活物質について、相加効果が達成されるかどうかを決定するために試験した。ラットを、200μgのMDP、200μgのMPL、200μgのMDPおよび100μgのMPL;または、200μgのMDP、100μgのMPLおよび100μgのfMLP;のいずれかを添加した、100μgのH-OROを含むMN51またはMN720を用いて、4匹からなる群にて免疫する一連の実験を行った。
【0087】
比較ELISA分析を、治療プログラムの第5週から得られた血清について行った。吸光度を測定し、その値を、100%に設定したフロイント・アジュバントについての相対吸光度と比較した。MLP、MPL、fMLP、またはこれらのうちの2つもしくは3つの組合せの添加は、MN51と一緒に投与した場合、自己エピトープに対する応答についても非自己エピトープに対する応答についてもいかなる有意な陽性効果も有しなかった(図32AおよびB)。上記のいくつかを添加する場合、抗自己応答に対してはわずかに陰性の効果が観察された(図32A)。MN720を用いる実験においては、MPLについて、抗自己応答の増強が少しだけ認められた(図33A)。しかし、全てを添加する場合、抗非自己応答に対する陰性効果が少し示された(図33B)。
【0088】
実施例4 ミョウバンを含有するOROの分析
別の試験において、ミョウバンをRehydragel LGから調製し、該ミョウバンの有効性をさらに試験した。OVAによる感作の4週間後、9匹または10匹のメスWistarラットの群を、ミョウバンを加えたビヒクル(PBS)、MN51を加えた100μg H-ORO、またはミョウバンを加えた280μg H-OROを含む組成物を用いて、皮下的に免疫した。追加免疫を第3週および第7週に与えた。血清サンプルを、第-4、-1、9、12、および15週に取得した。第12週からのサンプルを力価希釈に関して分析し、一方、全サンプルを標準的な方法を用いて遊離IgE濃度について分析した。遊離IgEの濃度は、ビヒクル+ミョウバンまたはH-ORO+ミョウバンのいずれかを注入した動物の血清中で時間の経過と共に低下した(図34)。しかしながら、この低下は、H-ORO+ミョウバンで処理した動物においてより大きく、9週間後の遊離IgEの濃度は2群間で有意に異なっていた(p<0.01)。280μgのH-OROおよびミョウバンを用いた免疫化は、100μg H-OROおよびMN51で免疫した動物からの血清により示されるものと非常に類似した希釈曲線をもたらした(図35Aおよび35B)。実際、力価希釈50値は、ミョウバンを加えたOROについては400倍、MN51を加えたH-OROについては204倍であると算出された。これらの結果は、ミョウバンと組合せた100μgを超えるH-OROを含む組成物が、哺乳動物に投与した場合に大幅な抗自己IgE応答を誘導し得ることを示している。
【0089】
実施例5 ORO-HおよびORORO-Hの分析
同様の試験を行って、Hisタグに連結したOROおよびOROROを含む組成物の効果を評価した。ORORO-Hポリペプチドは、以下のIgEドメインを含む:オポッサムCH2-ラットCH3-オポッサムCH2-ラットCH3-オポッサムCH4。OVAによる感作の4週間後、6匹のオスWistar Fラットの群を、ビヒクル(PBS)、20μg ORO-H、または100μg ORO-Hを含む組成物で皮下的に免疫した。追加免疫を、第3週および第7週に行った。それぞれの場合において、モンタニドISA 51をアジュバントとして用いた。血清サンプルを第-4、-1、5、7、9、11、および14週に取得し、遊離IgE濃度について分析した。図36に示されるように、20μg ORO-Hまたは100μg ORO-Hのいずれかによる免疫化は、遊離IgEの濃度を低下させることにおいて等しく有効であったが、一方ビヒクルは遊離IgEレベルの増加をもたらした。
【0090】
別の実験において、6匹または7匹のオスWistarラットの群は、皮下注入により、PBSビヒクル、20μg ORORO-H、または100μg ORORO-Hを投与した。追加免疫を第3週および第7週に与え、血清サンプルを第-4、-1、5、7、9、11、および14週に取得した。それぞれの場合において、モンタニドISA 51をアジュバントとして用いた。直前のパラグラフに記載された実験と同様、20または100μgのいずれかのORORO-Hを用いた免疫化は遊離IgEの濃度を低下させることにおいて非常に有効であったが、ビヒクルは遊離IgEレベルの増加をもたらした(図37)。
【0091】
実施例6 ラットにおける用量および毒性試験
10匹のオスWistar Hanoverラットの群を、ビヒクル(PBS)、MN51を加えたビヒクル、MN51を加えた30μgのH-ORO、MN51を加えた100μgのH-ORO、またはMN51を加えた300μgのH-OROを用いて、皮下的に免疫した。MN51を含む混合物は全て1:1の比であった。追加免疫を第1週、第3週、および第5週に施し、血液サンプルを第0週、第4週、および第7週に取得した(図38A)。第7週での中央力価希釈50値は、H-OROの用量が増加するにつれて増加した(図38B)。かくして、MN51と共に投与したより高用量のH-OROは、より大きな抗自己IgE効果をもたらし得る。さらに、遊離IgE抗体レベルは、MN51中の100または300μgのH-OROを投与された動物において低下した(図38C)。
【0092】
これらの動物を用いて、毒性試験および全身健康試験も行った。血液サンプルを、アルブミン、ASATおよびALAT、ビリルビン、クレアチニン、Ca2+、K+、およびNa+などの電解質、乳酸デヒドロゲナーゼ、γ-グルタミルトランスペプチダーゼ、およびグルコース、ならびにヘモグロビン、白血球、ヘマトクリット、および血小板の数について評価した。さらに、動物を、体重については週に2回、食物摂取における変化、全体的な身体活動、行動、および外観については1日1回モニターした。さらに、組織病理学試験を、脳、肺、回腸、肝臓、心臓、脾臓、腎臓、および精巣について行った。これらの実験の全てにおいて、毒性または望ましくない効果の徴候は観察されなかった。
【0093】
別の実験において、10匹のメスWistar Fラットの群を、ビヒクル(PBS)またはヒスチジンタグを欠くOROを用いて、皮下的に免疫した(図39)。アジュバントはMN51またはAlhydrogel(商標) 1.3%(水酸化アルミニウムゲルアジュバント;Brenntag Stinnes Logistics)であった。追加免疫を第3週、第5週、および第7週に与え、血液サンプルを第-1、3、5、7、10、および12週に取得した。OROポリペプチドを投与されたラットにおいて測定されたラットIgE抗体の量は、対照ラットにおいて測定された量と比較して有意に低下した(図40)。実際、ミョウバンまたはMN51と共にOROポリペプチドを投与したラットは、遊離ラットIgEの量において90〜100%の低下を示した(図41)。これらの結果は、ミョウバンまたはMN51と組合せたキメラIgEポリペプチドが哺乳動物内に存在する遊離IgEのレベルを低下させ得ることを示している。
【0094】
実施例7 カニクイザルにおける試験
本発明で提供される組成物が抗自己IgE抗体応答を誘発する能力も、カニクイザルにおいて試験した。本明細書に記載のOROおよびOROROポリペプチドと類似するH-OCO-HおよびH-OCOCO-Hポリペプチドを作製したが、この場合には、ラットIgEセグメントを、カニクイザル由来のIgEセグメントで置換した。5匹または6匹の動物からなる群を、ビヒクル(PBS) + MN51、500μg H-OCO-H + MN51、または500μg H-OCOCO-H + MN51を用いて皮下的に免疫した(図42)。追加免疫(300μg)を第3週および第7週に与える一方、再追加免疫(300μg)を第29週および第32週に与えた。血液サンプルを、第-1、5、9、12、15、18、21、24、27、32および35週に取得した。カニクイザルIgEの定常ドメイン(Cε2-Cε3-Cε4)の組換え部分に対する抗IgE応答を測定した(図43)。力価希釈50値を、サンプルを取得した週それぞれについて測定した。
【0095】
H-OCO-HまたはH-OCOCO-Hを用いた免疫化は、力価希釈50の上昇をもたらし、それは9または10週で最大レベルに到達した後、低下した(図44)。H-OCOCO-HはH-OCO-Hよりも少し高い効果を誘発したが、その差は有意ではなかった(図44)。H-OCOCO-H基を用いる試験は第18週に終了させた。
【0096】
H-OCO-Hに対する抗IgE応答は時間の経過と共に低下したが、これはその効果が可逆的であることを示している(図44)。抗IgE応答が再現性のあるものかどうかを判定するために、以前にワクチン接種された動物に、第29および32週にH-OCO-Hを用いてチャレンジした。以前に抗IgE応答を示している動物は、2回目の抗IgE応答を示した(図44)。H-OCO-HおよびH-OCOCO-Hワクチンは、血小板数(図45)または他の血液細胞(図46)に対する望ましくない血液学的効果をもたらさなかった。この実験は、H-OCO-HまたはH-OCOCO-Hなどのポリペプチドを含む組成物をMN51と組合わせて使用して、霊長動物における抗自己IgE抗体応答を刺激することができ、また類似の組成物をヒトにおける使用のために開発することができることを証明した。
【0097】
別の実験において、カニクイザルの群を、Alhydrogel(商標)1.3%(水酸化アルミニウムゲルアジュバント;Brenntag Stinnes Logistics)またはMN51と組合せたH-OCO-Hを用いて皮下的に免疫した(図47)。対照のサルを、Alhydrogel(商標)1.3%と組合わせた生理食塩水で免疫した。追加免疫を、第3、5および7週に与え、血液サンプルを第-1、3、5、7、9、12、15、および18週に取得した。H-OCO-Hポリペプチドを投与したサルにおいて測定されたサル抗IgE抗体の量は、対照のサルにおいて測定された量と比較して有意に増加していた(図48)。さらに、ミョウバンと組合せたH-OCO-Hポリペプチドを投与したサルは、MN51と組合せたH-OCO-Hポリペプチドで処理したサルにより生成された応答よりも強い抗IgE抗体応答を生成した(図48)。
【0098】
これらの結果は、ミョウバンまたはMN51と組合せたキメラIgEポリペプチドが、IgEに対する霊長動物の自己寛容を破壊し得ることを示している。これらの結果はまた、抗IgE応答が可逆的であり、再現性があることを示している。さらに、ミョウバンまたはMN51と共にキメラIgEポリペプチドを用いて処理した霊長動物は、血小板減少症または他の望ましくない血液学的作用の徴候を示さなかった。
【0099】
他の実施形態
本発明をその詳細な説明と共に記載してきたが、前記説明は例示を意図するものであり、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことは理解されるべきである。他の態様、利点、および改変は本発明の特許請求の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、pRES-OROと命名された核酸ベクターの図である。
【図2−1】図2は、pRES-OROベクターの核酸配列表である(配列番号1)。
【図2−2】図2は、pRES-OROベクターの核酸配列表である(配列番号1)。
【図3】図3は、OROポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号2)。OROポリペプチドは、オポッサムCH2 IgEドメイン、その後にラットCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH4 IgEドメインを含む。
【図4】図4は、OROポリペプチドのアミノ酸配列表である(配列番号3)。
【図5】図5は、pRES-OSOと命名された核酸ベクターの図である。
【図6−1】図6は、pRES-OSOベクターの核酸配列表である(配列番号4)。
【図6−2】図6は、pRES-OSOベクターの核酸配列表である(配列番号4)。
【図7】図7は、OSOポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号5)。OSOポリペプチドは、オポッサムCH2 IgEドメイン、その後にヒトCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH4 IgEドメインを含む。
【図8】図8は、OSOポリペプチドのアミノ酸配列表である(配列番号6)。
【図9】図9は、OROROポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号7)。OROROポリペプチドは、オポッサムCH2 IgEドメイン、その後にラットCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH2 IgEドメイン、その後にラットCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH4 IgEドメインを含む。
【図10】図10は、OROROポリペプチドのアミノ酸配列表である(配列番号8)。
【図11】図11は、modOSOSO-Hポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号9)。modOSOSO-Hポリペプチドは、オポッサムCH2 IgEドメイン、その後にヒトCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH2 IgEドメイン、その後にヒトCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH4 IgEドメインを含む。modOSOSO-Hポリペプチドはまた、肥満細胞受容体結合を喪失させるヒトCH3ドメイン中の点突然変異、およびC末端ポリヒスチジンタグも含む。
【図12】図12は、modOSOSO-Hポリペプチドのアミノ酸配列表である(配列番号10)。
【図13】図13は、modOSOSOポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号11)。modOSOSOポリペプチドは、オポッサムCH2 IgEドメイン、その後にヒトCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH2 IgEドメイン、その後にヒトCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH4 IgEドメインを含む。modOSOSOポリペプチドはまた、肥満細胞受容体結合を喪失させるヒトCH3ドメイン中の点突然変異も含む。
【図14】図14は、modOSOSOポリペプチドのアミノ酸配列表である(配列番号12)。
【図15】図15は、OSO-Hポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号13)。OSO-Hポリペプチドは、オポッサムCH2 IgEドメイン、その後にヒトCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH4 IgEドメインを含む。OSO-Hポリペプチドはまた、C末端ポリヒスチジンタグも含む。
【図16】図16は、OSO-Hポリペプチドのアミノ酸配列表である(配列番号14)。
【図17】図17は、OSOSOポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号15)。OSOSOポリペプチドは、オポッサムCH2 IgEドメイン、その後にヒトCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH2 IgEドメイン、その後にヒトCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH4 IgEドメインを含む。
【図18】図18は、OSOSOポリペプチドのアミノ酸配列表である(配列番号16)。
【図19】図19は、OSOSO-Hポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号17)。OSOSO-Hポリペプチドは、オポッサムCH2 IgEドメイン、その後にヒトCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH2 IgEドメイン、その後にヒトCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH4 IgEドメインを含む。OSOSO-Hポリペプチドはまた、C末端ポリヒスチジンタグも含む。
【図20】図20は、OSOSO-Hポリペプチドのアミノ酸配列表である(配列番号18)。
【図21】図21は、CCC-Hポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号19)。CCC-Hポリペプチドは、サルCH2 IgEドメイン、その後にサルCH3 IgEドメイン、その後にサルCH4 IgEドメイン、その後にポリヒスチジンタグを含む。
【図22】図22は、H-OCO-Hポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号20)。H-OCO-Hポリペプチドは、オポッサムCH2 IgEドメイン、その後にサルCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH4 IgEドメインを含む。H-OCO-Hポリペプチドはまた、N-およびC-末端ポリヒスチジンタグを含む。
【図23】図23は、H-OCO-Hポリペプチドのアミノ酸配列表である(配列番号21)。
【図24】図24は、H-OCOCO-Hポリペプチドをコードする挿入配列の核酸配列表である(配列番号22)。H-OCOCO-Hポリペプチドは、オポッサムCH2 IgEドメイン、その後にサルCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH2 IgEドメイン、その後にサルCH3 IgEドメイン、その後にオポッサムCH4 IgEドメインを含む。H-OCOCO-Hポリペプチドはまた、N-およびC-末端ポリヒスチジンタグを含む。
【図25】図25は、免疫応答の概略図である。
【図26】図26は、IgE分子の模式図である。
【図27】図27は、ヒトおよびオポッサムIgE配列を有するワクチンの模式図である。
【図28】図28は、IgEクリアランスの概略図である。
【図29】図29Aは、ラットおよびオポッサムIgEコード配列の位置を示したH-ORO DNA構築物の模式図である。図29Bは、組換えH-OROポリペプチドの構造を示す模式図である。
【図30】図30Aは、フロイント・アジュバント、ミョウバン、またはISCOMと混合したH-OROでワクチン接種したラットにおける相対抗ラットIgE抗体力価(抗自己IgE)を示す棒グラフである。図30Bは、同じラットにおける相対抗オポッサム抗体力価(抗非自己)を示す棒グラフである。
【図31】図31Aは、フロイント・アジュバント、モンタニド(MONTANIDE(登録商標))ISA 51(MN51)、またはモンタニド(MONTANIDE(登録商標))ISA 720(MN720)と混合したH-OROでワクチン接種したラットにおける相対抗ラットIgE抗体力価を示す棒グラフである。図31Bは、同じラットにおける相対抗オポッサム抗体力価を示す棒グラフである。
【図32】図32Aは、ムラミルジペプチド(MDP)、モノホスホリルリピドA(MPL)、および/もしくはホルミル-メチオニン含有トリペプチド(FM)を添加し、または添加せずに、MN51と混合したH-OROで、ワクチン接種したラットにおける相対抗ラットIgE抗体力価を示す棒グラフである。図32Bは、同じラットにおける相対抗オポッサム抗体力価を示す棒グラフである。
【図33】図33Aは、ムラミルジペプチド(MDP)および/もしくはモノホスホリルリピドA(MPL)を添加し、または添加せずに、MN720と混合したH-OROで、ワクチン接種したラットにおける相対抗ラットIgE抗体力価を示す棒グラフである。図33Bは、同じラットにおける相対抗オポッサム抗体力価を示す棒グラフである。
【図34】図34は、ミョウバンと混合したビヒクルまたはミョウバンと混合したH-OROで免疫したラットから得た血清における遊離IgEレベルを示す線グラフである。
【図35】図35Aは、MN51と混合したH-OROで免疫したラットから得た血清サンプル中のラット抗IgE抗体に関する力価希釈曲線を示す線グラフである。図35Bは、ミョウバンと混合したH-OROで免疫したラットから得た血清サンプル中のラット抗IgE抗体に関する力価希釈曲線を示す線グラフである。破線は抗IgE応答の95%信頼区間(n = 9-10)を示す。
【図36】図36は、ビヒクルまたはモンタニド(Montanide) ISA 51と混合したORO-Hで免疫したラットから得た血清における遊離IgEレベルを示す線グラフである。
【図37】図37は、ビヒクルまたはモンタニド(Montanide) ISA 51と混合したORORO-Hで免疫したラットから得た血清における遊離IgEレベルを示す線グラフである。
【図38A】図38A〜Cは、ビヒクル、MN51と混合したビヒクル、または漸増量の、MN51と混合したH-ORO、で免疫したラットから得た血清における、試験設計(A)、抗IgE力価(B)、および遊離循環IgEレベル(C)の概略を示す。
【図38B】図38A〜Cは、ビヒクル、MN51と混合したビヒクル、または漸増量の、MN51と混合したH-ORO、で免疫したラットから得た血清における、試験設計(A)、抗IgE力価(B)、および遊離循環IgEレベル(C)の概略を示す。
【図38C】図38A〜Cは、ビヒクル、MN51と混合したビヒクル、または漸増量の、MN51と混合したH-ORO、で免疫したラットから得た血清における、試験設計(A)、抗IgE力価(B)、および遊離循環IgEレベル(C)の概略を示す。
【図39】図39は、高度に精製された(>98%純度)非ヒスチジンタグ付加OROポリペプチドに関するラットのワクチン接種プロトコルを示す表である。
【図40】図40は、指定された治療を受けるラットにおいて測定されたラットIgE(ng/mL)の量をプロットするグラフである。
【図41】図41は、指定された治療を受けるラットにおいて測定された遊離循環IgEの減少率をプロットするグラフである。
【図42】図42は、サルのワクチン接種プロトコルの概略図である。
【図43】図43は、サル抗IgE抗体を検出するのに用いたELISAの概略図である。
【図44】図44は、MN51と混合したビヒクル、MN51と混合したH-OCO-H、またはMN5と混合したH-OCOCO-Hで免疫したカニクイザルから得た血清サンプルにおける力価希釈50値を示す線グラフである。
【図45】図45は、指定された時点についての血小板数をプロットする棒グラフである。
【図46】図46は、正常であることが判明した血液学的測定値の表である。
【図47】図47は、アジュバントとしてAlhydrogel(商標)を用いるサルのワクチン接種プロトコルの概略図である。
【図48】図48は、Alhydrogel(商標)と混合したH-OCO-Hを様々な用量で用いた所定の時点についてのサル抗IgE抗体の力価をプロットするグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己IgEポリペプチド配列を含むポリペプチドとアルミニウム化合物とを含む組成物であって、哺乳動物への該組成物の投与が、該哺乳動物における検出可能な遊離IgEのレベルを低下させる、前記組成物。
【請求項2】
前記ポリペプチドがキメラIgEポリペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、配列番号3、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載の配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が約10μg〜約1 gの前記ポリペプチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が約280μgの前記ポリペプチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記アルミニウム化合物がアルミニウムヒドロゲル化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記アルミニウム化合物がミョウバンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
約10μl〜約1 mlのミョウバンを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
約50μlのミョウバンを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記低下が少なくとも約10%の低下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記低下が少なくとも約30%の低下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記低下が約10%〜約95%の低下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記低下が約20%〜約95%の低下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記低下がELISAにおいて検出可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
IgE受容体ポリペプチド配列を前記ELISAにおいて用いる、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
哺乳動物への組成物の前記投与が、100を超える力価希釈50値を示す抗自己IgE抗体応答を生成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記力価希釈50値が200を超える、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記力価希釈50値が400を超える、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
自己IgEポリペプチド配列を含むポリペプチドとMN51とを含む組成物であって、哺乳動物への該組成物の投与が該哺乳動物における検出可能な遊離IgEのレベルを低下させる、前記組成物。
【請求項20】
前記ポリペプチドがキメラIgEポリペプチドである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記ポリペプチドが配列番号3、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載の配列を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
約10μg〜約1 gの前記ポリペプチドを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
約100μgの前記ポリペプチドを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
約10μl〜約1 mlの前記MN51を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項25】
約50μlの前記MN51を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項26】
前記低下が少なくとも約10%の低下である、請求項19に記載の組成物。
【請求項27】
前記低下が少なくとも約30%の低下である、請求項19に記載の組成物。
【請求項28】
前記低下が少なくとも約10%〜約95%の低下である、請求項19に記載の組成物。
【請求項29】
前記低下が少なくとも約20%〜約95%の低下である、請求項19に記載の組成物。
【請求項30】
前記低下がELISAにおいて検出可能である、請求項19に記載の組成物。
【請求項31】
IgE受容体ポリペプチド配列を前記ELISAにおいて用いる、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
哺乳動物への組成物の前記投与が、100を超える力価希釈50値を示す抗自己IgE抗体応答を生成する、請求項19に記載の組成物。
【請求項33】
前記力価希釈50値が200を超える、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記力価希釈50値が400を超える、請求項32に記載の組成物。
【請求項35】
アルミニウム化合物と、約30〜300μgのキメラIgEポリペプチドとを含む組成物。
【請求項36】
MN51と、約30〜300μgのキメラIgEポリペプチドとを含む組成物。
【請求項37】
哺乳動物において抗自己IgE抗体応答を誘導する方法であって、該哺乳動物が該哺乳動物における検出可能な遊離IgEのレベルを低下させる条件下で、自己ポリペプチド配列を含むポリペプチドとアルミニウム化合物とを含む組成物を、該哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項38】
前記ポリペプチドが配列番号3、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載のアミノ酸配列を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
哺乳動物において抗自己IgE抗体応答を誘導する方法であって、該哺乳動物が該哺乳動物における検出可能な遊離IgEのレベルを低下させる条件下で、自己ポリペプチド配列を含むポリペプチドとMN51とを含む組成物を、該哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項40】
前記ポリペプチドが配列番号3、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載のアミノ酸配列を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
霊長動物において可逆的な抗自己IgE応答を誘導する方法であって、該霊長動物が、ピークに達した後に時間と共に低下する、自己IgEに対する抗体応答を開始する条件下で、該霊長動物に自己IgE配列を有するポリペプチドを投与することを含む、前記方法。
【請求項42】
前記霊長動物がサルである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
自己IgEに対する抗体応答が、時間と共に低下する一次応答である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
自己IgEに対する抗体応答が、前記投与の9ヶ月以内に検出不能なレベルまで低下する、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記ポリペプチドが、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載の配列を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
哺乳動物が一次抗自己IgE応答を経験した後に該哺乳動物において抗自己IgE応答を誘導する方法であって、該哺乳動物が二次抗体応答と一致する様式で自己IgEに対する抗体応答を開始する条件下で、該哺乳動物に自己IgE配列を有するポリペプチドを投与することを含む、前記方法。
【請求項47】
前記哺乳動物が霊長動物である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ポリペプチドが、配列番号3、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載の配列を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
哺乳動物において一連の抗自己IgE応答を誘導する方法であって、該哺乳動物が各投与の少なくとも1年以内にピークに達する検出可能な抗自己IgE応答を開始する条件下で、該哺乳動物に異なる時点で自己IgE配列を有するポリペプチドを投与することを含む、前記方法。
【請求項50】
前記哺乳動物が、各投与の少なくとも3ヶ月以内にピークに達する検出可能な抗自己IgE応答を開始する、請求項49に記載の方法。
【請求項1】
自己IgEポリペプチド配列を含むポリペプチドとアルミニウム化合物とを含む組成物であって、哺乳動物への該組成物の投与が、該哺乳動物における検出可能な遊離IgEのレベルを低下させる、前記組成物。
【請求項2】
前記ポリペプチドがキメラIgEポリペプチドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリペプチドが、配列番号3、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載の配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が約10μg〜約1 gの前記ポリペプチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が約280μgの前記ポリペプチドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記アルミニウム化合物がアルミニウムヒドロゲル化合物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記アルミニウム化合物がミョウバンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
約10μl〜約1 mlのミョウバンを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
約50μlのミョウバンを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記低下が少なくとも約10%の低下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記低下が少なくとも約30%の低下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記低下が約10%〜約95%の低下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記低下が約20%〜約95%の低下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記低下がELISAにおいて検出可能である、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
IgE受容体ポリペプチド配列を前記ELISAにおいて用いる、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
哺乳動物への組成物の前記投与が、100を超える力価希釈50値を示す抗自己IgE抗体応答を生成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記力価希釈50値が200を超える、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記力価希釈50値が400を超える、請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
自己IgEポリペプチド配列を含むポリペプチドとMN51とを含む組成物であって、哺乳動物への該組成物の投与が該哺乳動物における検出可能な遊離IgEのレベルを低下させる、前記組成物。
【請求項20】
前記ポリペプチドがキメラIgEポリペプチドである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記ポリペプチドが配列番号3、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載の配列を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
約10μg〜約1 gの前記ポリペプチドを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
約100μgの前記ポリペプチドを含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項24】
約10μl〜約1 mlの前記MN51を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項25】
約50μlの前記MN51を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項26】
前記低下が少なくとも約10%の低下である、請求項19に記載の組成物。
【請求項27】
前記低下が少なくとも約30%の低下である、請求項19に記載の組成物。
【請求項28】
前記低下が少なくとも約10%〜約95%の低下である、請求項19に記載の組成物。
【請求項29】
前記低下が少なくとも約20%〜約95%の低下である、請求項19に記載の組成物。
【請求項30】
前記低下がELISAにおいて検出可能である、請求項19に記載の組成物。
【請求項31】
IgE受容体ポリペプチド配列を前記ELISAにおいて用いる、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
哺乳動物への組成物の前記投与が、100を超える力価希釈50値を示す抗自己IgE抗体応答を生成する、請求項19に記載の組成物。
【請求項33】
前記力価希釈50値が200を超える、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記力価希釈50値が400を超える、請求項32に記載の組成物。
【請求項35】
アルミニウム化合物と、約30〜300μgのキメラIgEポリペプチドとを含む組成物。
【請求項36】
MN51と、約30〜300μgのキメラIgEポリペプチドとを含む組成物。
【請求項37】
哺乳動物において抗自己IgE抗体応答を誘導する方法であって、該哺乳動物が該哺乳動物における検出可能な遊離IgEのレベルを低下させる条件下で、自己ポリペプチド配列を含むポリペプチドとアルミニウム化合物とを含む組成物を、該哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項38】
前記ポリペプチドが配列番号3、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載のアミノ酸配列を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
哺乳動物において抗自己IgE抗体応答を誘導する方法であって、該哺乳動物が該哺乳動物における検出可能な遊離IgEのレベルを低下させる条件下で、自己ポリペプチド配列を含むポリペプチドとMN51とを含む組成物を、該哺乳動物に投与することを含む、前記方法。
【請求項40】
前記ポリペプチドが配列番号3、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載のアミノ酸配列を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
霊長動物において可逆的な抗自己IgE応答を誘導する方法であって、該霊長動物が、ピークに達した後に時間と共に低下する、自己IgEに対する抗体応答を開始する条件下で、該霊長動物に自己IgE配列を有するポリペプチドを投与することを含む、前記方法。
【請求項42】
前記霊長動物がサルである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
自己IgEに対する抗体応答が、時間と共に低下する一次応答である、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
自己IgEに対する抗体応答が、前記投与の9ヶ月以内に検出不能なレベルまで低下する、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記ポリペプチドが、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載の配列を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
哺乳動物が一次抗自己IgE応答を経験した後に該哺乳動物において抗自己IgE応答を誘導する方法であって、該哺乳動物が二次抗体応答と一致する様式で自己IgEに対する抗体応答を開始する条件下で、該哺乳動物に自己IgE配列を有するポリペプチドを投与することを含む、前記方法。
【請求項47】
前記哺乳動物が霊長動物である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記ポリペプチドが、配列番号3、配列番号6、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、または配列番号21に記載の配列を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
哺乳動物において一連の抗自己IgE応答を誘導する方法であって、該哺乳動物が各投与の少なくとも1年以内にピークに達する検出可能な抗自己IgE応答を開始する条件下で、該哺乳動物に異なる時点で自己IgE配列を有するポリペプチドを投与することを含む、前記方法。
【請求項50】
前記哺乳動物が、各投与の少なくとも3ヶ月以内にピークに達する検出可能な抗自己IgE応答を開始する、請求項49に記載の方法。
【図1】
【図2−1】
【図2−2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6−1】
【図6−2】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38A】
【図38B】
【図38C】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図2−1】
【図2−2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6−1】
【図6−2】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38A】
【図38B】
【図38C】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【公表番号】特表2006−510588(P2006−510588A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−533694(P2004−533694)
【出願日】平成15年6月2日(2003.6.2)
【国際出願番号】PCT/IB2003/003075
【国際公開番号】WO2004/022094
【国際公開日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(505078788)レジステンシア ファーマシューティカルズ アーベー (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年6月2日(2003.6.2)
【国際出願番号】PCT/IB2003/003075
【国際公開番号】WO2004/022094
【国際公開日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(505078788)レジステンシア ファーマシューティカルズ アーベー (1)
【Fターム(参考)】
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