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アレルゲンの検出方法及び検出キット
説明

アレルゲンの検出方法及び検出キット

【課題】アレルゲンを安価で簡便に検出できるアレルゲン検出キット及びアレルゲン検出方法を提供する
【解決手段】下記工程(1)〜(3)を含む、検体中のプロテアーゼ含有アレルゲンの検出方法:
(1)当該プロテアーゼの基質となりうるポリペプチドを含むゲル(A)上に、当該検体を接触させる工程;
(2)当該プロテアーゼによる当該ポリペプチドの加水分解反応をゲル(A)上で行わせる工程;及び
(3)当該加水分解反応によりゲル(A)上に形成された凹部または孔部を検出する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルゲンの検出方法及び検出キットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、及び花粉症等のアレルギー疾患の患者数が増加しており、社会問題となっている。さらに、これらのアレルギー疾患の罹患率が若年層で特に顕著であることから、今後一層の増加が危惧されている。このため、これらのアレルギー疾患への有効な対策が望まれている。
【0003】
アレルギーの感作及び発症は、アレルゲンへの曝露により惹起されるため、アレルギーの発症予防及び症状の緩和のためには、生活環境中からアレルゲンを除去することが重要であるとされる。そして、生活環境から効率的にアレルゲンを除去し、かつアレルゲンが少ない状態を維持するためには、その前提として、アレルゲンを測定する手段が必要不可欠である。
【0004】
ところが、アレルギー疾患を引き起こすアレルゲンの多くは粒子直径10μm以下の微粒子状アレルゲンである。微粒子状アレルゲンはより大きな粒子のアレルゲンよりもアレルゲン性が高いとされる。例えば、微粒子状アレルゲンは呼吸時に体内に侵入することができるため、気管支喘息等を誘発するおそれもある。微粒子状アレルゲンは室内空気中に通常多く含まれている。例えば、微粒子状アレルゲンは掃除機の使用等によって床から舞い上がり、その後、長時間に渡って大気中に浮遊するとされる。
【0005】
このように、生活環境におけるアレルゲンを検出するためには、微粒子状アレルゲンを検出することが必要になる。ところが、微粒子状アレルゲンは肉眼では観察できない。そこで、微粒子状アレルゲンについても検出できるようなアレルゲン測定法として、これまでに種々のものが開発されてきた。
【0006】
例えば、アレルゲンに対する抗体を用いた免疫測定法(特許文献1〜5、及び非特許文献1)が提案されている。しかしながら、抗体が高価であること、及び定量に専用の高価な測定装置が必要となるという問題があった。
【0007】
また、アレルゲンとなるダニの測定方法として、ジアゾカップリング法によりダニ糞中に存在するグアニンを呈色させる検出法(特許文献6)が提案されている。しかしながら、この方法でも、定量のために専用の高価な測定装置が必要となるという問題があった。
【0008】
ダニ、花粉、カビ、及び昆虫等に由来する環境中アレルゲンにはプロテアーゼ活性があることが知られている(特許文献11および非特許文献2〜7)。このため、検体中のプロテアーゼ活性を測定し、それを指標としてアレルゲンを検出する方法(特許文献7〜10)が提案されている。プロテアーゼ活性を指標としてアレルゲンを検出することで、幅広い環境中のアレルゲンを検出することができるといえる。ところで、プロテアーゼ活性を指標とする従来のアレルゲン検出法は、プロテアーゼの基質となる物質とプロテアーゼ活性を有するアレルゲンを溶液中で反応させ、基質の分解の度合いを検出することを原理としている。例えば、基質が分解されることによって蛍光を発したり、吸光度が変化したり、あるいは変色するような特殊な基質を用いて検出を行うものである。このため、定量のためには専用の高価な測定装置が必要となるという問題があった。また、これらの方法では、アレルゲンを水溶液中に懸濁する必要がある。この場合、アレルゲンに由来するプロテアーゼの濃度が水溶液中で著しく希釈されてしまうことになるため、かかる方法では微量のアレルゲンしか含まない検体は、アレルゲンが検出できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−207892号公報
【特許文献2】特開平9−87298号公報
【特許文献3】特開平6−34518号公報
【特許文献4】特開2000−35428号公報
【特許文献5】特開平11−14511号公報
【特許文献6】特開平8−285841号公報
【特許文献7】国際公開番号WO2005/059166
【特許文献8】特開2006−166830号公報
【特許文献9】特開2006−345801号公報
【特許文献10】特開2008−29337号公報
【特許文献11】特開2005−312448号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Enomoto T, Onishi S, Yasueda H, Dake Y, Sakoda T, Saitoh Y, Sogo H, Fujimura S, Fujiki Y, Seno S, Ide T. Jpn. J. Palynol. 2000; 46(1): 9-16.The evaluation and application of high sensitive Cry j1bassay.
【非特許文献2】Takai T, Kato T, Sakata Y, Yasueda H, Izuhara K, Okumura K, Ogawa H. Biochem Biophys Res Commun. 2005; 328(4):944-952. Recombinant Der p 1 and Der f 1 exhibit cysteine protease activity but no serine protease activity.
【非特許文献3】Smith WA, Thomas WR. Int Arch Allergy Immunol. 1996; 109(2):133-140. Comparative analysis of the genes encoding group 3 allergens from Dermatophagoides pteronyssinus and Dermatophagoides farinae.
【非特許文献4】Bennett BJ, Thomas WR. Clin Exp Allergy. 1996; 26(10):1150-1154. Cloning and sequencing of the group 6 allergen of Dermatophagoides pteronyssinus.
【非特許文献5】Sun G, Stacey MA, Schmidt M, Mori L, Mattoli S. J Immunol. 2001; 167(2):1014-21. Interaction of mite allergens Der p3 and Der p9 with protease-activated receptor-2 expressed by lung epithelial cells.
【非特許文献6】Shen HD, Tam MF, Tang RB, Chou H. Curr Allergy Asthma Rep. 2007; 7(5):351-6. Aspergillus and Penicillium allergens: focus on proteases.
【非特許文献7】Sudha VT, Srivastava D, Arora N, Gaur SN, Singh BP. J Clin Immunol. 2007; 27(3):294-301. Stability of protease-rich periplaneta Americana allergen extract during storage: formulating preservatives to enhance shelf life.
【非特許文献8】Kikuchi Y, Takai T, Kuhara T, Ota M, Kato T, Hatanaka H, Ichikawa S, Tokura T, Akiba H, Mitsuishi K, Ikeda S, Okumura K, Ogawa H. J Immunol.2006; 177(3):1609-17. Crucial commitment of proteolytic activity of a purified recombinant major house dust mite allergen Der p1 to sensitization toward IgE and IgG responses.
【非特許文献9】Wan H, Winton HL, Soeller C, Gruenert DC, Thompson PJ, Cannell MB, Stewart GA, Garrod DR, Robinson C. Clin Exp Allergy. 2000; 30(5):685-98. Quantitative structural and biochemical analyses of tight junction dynamics following exposure of epithelial cells to house dust mite allergen Der p 1.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、アレルゲン、好ましくは粒子直径10μm以下の微粒子状アレルゲンを、安価に、且つ簡便に検出するため方法、及び当該方法に用いるアレルゲン検出キットを提供することを課題とする。さらに好ましくは上記アレルゲンを高感度に検出するための方法、及び当該方法に用いるアレルゲン検出キットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、アレルゲン由来のプロテアーゼの基質となる物質を含むゲルにアレルゲンを接触反応させることにより、アレルゲンのプロテアーゼ活性により基質が分解すること、またその分解度合いに応じてゲルに凹部または孔部が形成されること、さらに当該ゲルに形成される凹部孔部の有無によりアレルゲンを目視により簡便に検出することができることを見出した。
【0013】
より詳細には次の通りである。本発明者らは、アレルゲン由来のプロテアーゼの基質となる物質を、(i)水分を含み、かつ(ii) 成形された状態、すなわち、ゲル化された状態とし、この表面にアレルゲンを接触反応させることにより、アレルゲンに由来するプロテアーゼの作用により加水分解反応が起こり、基質を含むゲルの表面に肉眼で観察できる程度の凹部または孔部が形成されることを見出した。上記プロテーアーゼ作用は微粒子状アレルゲンの表面付近に存在するプロテアーゼによるものと思われる。微粒子状アレルゲン自体は肉眼では観察できない大きさであることを考えると、その表面付近に存在するプロテアーゼの作用だけで、目視可能な凹部または孔部が形成されたことは驚くべき結果であった。さらに本発明者らは、この凹部または孔部を指標とすることにより、基質を含むゲル上のアレルゲン量を測定できることを見出した。
【0014】
本発明は、かかる知見を元になされたものである。さらに、本発明者らは検討を重ね、本発明を完成させた。
【0015】
すなわち、本発明は次の通りである:
1.アレルゲン検出方法
[1-1].下記工程(1)〜(3)を含む、検体中に含まれるプロテアーゼ含有アレルゲンの検出方法:
(1)当該プロテアーゼの基質となりうるポリペプチドを含むゲル(A)上に、当該検体を接触させる工程;
(2)当該プロテアーゼによる当該ポリペプチドの加水分解反応をゲル(A)上で行わせる工程;及び
(3)当該加水分解反応によりゲル(A)上に形成された凹部または孔部を検出する工程。
[1-2].上記ゲル(A)が、前記ポリペプチドが互いに架橋されてなるものである、[1-1]に記載の方法。
[1-3].上記ゲル(A)が、ゼラチン、コラーゲン、ケラチン、カゼイン、又はアルブミンを含むものである、[1-1]又は[1-2]に記載の方法。
[1-4].上記ゲル(A)の厚みが1μm〜3mmである、[1-1]〜[1-3]のいずれか一項に記載の方法。
[1-5].上記ゲル(A)、水分供給源(B)が接して設けられ、当該水分供給源によりゲルに水分が供給されるように調製されてなる、[1-1]〜[1-4]のいずれか一項に記載の方法。
[1-6].上記水分供給源(B)が、水、又は含水多孔質体である、[1-5]に記載の方法。
[1-7].ゲル(A)が、第一層を構成し、かつ
第一層の下層側に、含水多孔質体からなる水分供給源(B)が第二層として積層されてなる、[1-5]に記載の方法。
[1-8].前記含水多孔質体の含水率が70〜99重量%である、[1-7]に記載の方法。
[1-9].ゲル(A)及び水分供給源(B)が互いに異なる色を呈するものであり、
工程(3)が、工程(2)の加水分解反応でゲル(A)に凹部または孔部が形成されることによって露出した水分供給源(B)の色を検出する工程である、[1-7]又は[1-8]に記載の方法。
[1-10].工程(3)が、
(i)ゲル(A)上に形成された各凹部及び各孔部の底面面積の合計面積;及び
(ii)ゲル(A)上に形成された各凹部または各孔部の合計数
のいずれか一方又は両方に基づいて検体中のアレルゲン量を評価する工程である、[1-1]〜[1-9]のいずれか一項に記載の方法。
【0016】
2.アレルゲン検出キット
[2-1].下記(A)若しくは(C)、または(D)及び(E)を含有する、検体中に存在する、プロテアーゼを含有するアレルゲンを検出するためのキット:
(A)当該プロテアーゼの基質となりうるポリペプチドを含むゲル、
(C)当該プロテアーゼの基質となりうるポリペプチドを含む乾燥ゲル、
(D)当該プロテアーゼの基質となりうるポリペプチド、
(E)架橋剤。
[2-2].ゲル(A)が、ゲル(A)内でプロテアーゼの基質となりうるポリペプチドが互いに架橋されてなるものである、[2-1]に記載のアレルゲン検出キット。
[2-3].ゲル(A)または乾燥ゲル(B)が、ゼラチン、コラーゲン、ケラチン、カゼイン、及びアルブミンからなる群から選択される少なくとも1種を含む、[2-1]又は[2-2]に記載するアレルゲン検出キット。
[2-4].ゲル(A)の厚みが1μm〜3mmである、[2-1]〜[2-3]のいずれかに記載するアレルゲン検出キット。
[2-5].水分供給源(B)をさらに含む、[2-1]〜[2-4]のいずれかに記載するアレルゲン検出キット。
[2-6].水分供給源(B)が、
水、若しくは水を入れるための容器、又は
含水多孔質体、若しくは含水能を有する乾燥多孔質体
である、[2-5]に記載するアレルゲン検出キット。
[2-7].前記含水多孔質体の含水率が70〜99重量%であるか、または乾燥多孔質体の含水能が、含水多孔質体中の含水率に換算して70〜99重量%である、[2-6]に記載するアレルゲン検出キット。
[2-8].半透膜をさらに含む、[2-5]乃至[2-7]のいずれかに記載のキット。
[2-9].ゲル(A)と水分供給源(B)、またはゲル(A)と半透膜が互いに異なる色を有するものである、[2-5]乃至[2-8]のいずれかに記載のキット。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アレルゲン、特に粒子直径10μm以下の微粒子状アレルゲンを、安価に、且つ簡便に検出し、評価することができる。さらに、本発明によれば、より好適には上記のアレルゲンを安価に、簡便に、かつ高感度に検出し評価することができる。
【0018】
より詳細には、本発明によれば、基質を含むゲル上にアレルゲンを接触反応させることによって、アレルゲン由来プロテアーゼの作用によって形成される凹部または孔部を指標として、アレルゲンを検出することができる。この凹部または孔部は、通常肉眼でも観察可能な大きさであるため、検出に際して大がかりな装置を必要としない。このため、従来よりも安価に、かつ簡便にアレルゲンを検出することができる。
【0019】
また本発明の方法は、アレルゲンのプロテアーゼ作用に基づいてアレルゲンを検出する方法であるため、アレルゲンを高感度に検出することができ、このため、低濃度のアレルゲンしか含まない検体であっても、アレルゲンを検出することができる。
【0020】
本発明を利用することによって、日常生活においてアレルゲンをモニタリングすることによって効率的にアレルゲンを除去したり、また清浄度を維持することが可能となる。このため、本発明は、近年推奨されている、アレルギー患者やその家族によるセルフケアに資するものとなりうる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1において、ブタ膵臓由来トリプシンのプロテアーゼ活性をゼラチンを含むゲルを用いて検出(可視化評価)した結果を示す、図面に代わる写真画像である。図中、▲印はゼラチン薄膜が加水分解されて形成された凹部または孔部(染色液に染まらない円形の瘢痕)を示す。
【図2】実施例2において、プロテアーゼ活性に基づいてダニアレルゲンをゼラチンを含むゲルを用いて検出(可視化評価)した結果を示す、図面に代わる写真画像である。
【図3】実施例3において、プロテアーゼ活性に基づいてスギ花粉アレルゲンをゼラチンを含むゲルを用いて検出(可視化評価)した結果を示す、図面に代わる写真画像である。
【図4】(A)実施例4において、プロテアーゼ活性に基づいてハウスダスト中のアレルゲンを、ゼラチンを含むゲルを用いて検出(可視化評価)した結果を示す、図面に代わる写真画像である。(B)および(C)は、任意のハウスダストの部分を拡大した図面に代わる写真画像である。
【図5】(A)実施例4において、プロテアーゼ活性に基づいてハウスダスト中のアレルゲンを、ゼラチンを含むゲルを用いて検出(可視化評価)した結果を示す、図面に代わる写真画像である。(B)は、任意のハウスダストの部分を拡大した図面に代わる写真画像である。
【図6】実施例5において、予め染色したゼラチンを用いて、ハウスダスト中のアレルゲンを検出(可視化評価)した結果を示す、図面に代わる写真画像である。
【図7】実施例6において、タルク入り寒天層(下層)と染色ゼラチン層(上層)からなる二層構造のゲルを用いてハウスダスト中のアレルゲンを検出(可視化評価)した結果を示す、図面に代わる写真画像である。
【図8】実施例7において、予め染色したゼラチンをフィルターペーパー上に積層し含水させたものを用いて、ハウスダスト中のアレルゲンを検出(可視化評価)した結果を示す、図面に代わる写真画像である。
【図9】実施例8において、subtilisin Aの重量(ng)とプロテアーゼによる分解痕の大きさとの関係を評価した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.アレルゲン検出方法
本発明のアレルゲン検出方法は、検体中に存在する、プロテアーゼを含有するアレルゲンを検出する方法であって、
(1)当該プロテアーゼの基質となりうるポリペプチドを含むゲル(A)(以下、これを単に「ゲル(A)」という)上に、当該検体を接触させる工程;
(2)当該プロテアーゼによる当該ポリペプチドの加水分解反応をゲル(A)上で行わせる工程;及び
(3)当該加水分解反応によりゲル(A)上に形成された凹部または孔部を検出する工程
を含む方法である。
【0023】
1−1.検体
本発明のアレルゲン検出方法が対象とする検体としては、プロテアーゼを含有するアレルゲン(プロテアーゼ含有アレルゲン)を含む検体、又は、プロテアーゼ含有アレルゲンを含むことが疑われる検体が挙げられる。
【0024】
プロテアーゼ含有アレルゲンは、プロテアーゼを含有するアレルゲンであればよく、特に限定されない。なお、アレルゲンが有しているプロテアーゼとしては、例えば、トリプシン様プロテアーゼ、キモトリプシン様プロテアーゼ、パパイン様プロテアーゼ、エラスターゼ様プロテアーゼ、ペプチダーゼ様プロテアーゼ、コラゲナーゼ様プロテアーゼ等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
【0025】
プロテアーゼ含有アレルゲンには、例えば、虫、虫の糞、及び虫の死骸;並びにそれらの破片が含まれる。ここで、虫には例えば、ダニ、ゴキブリ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
虫、虫の糞、及び虫の死骸;並びにそれらの破片は、ダニの場合はDer f1/p1、Der f3/p3、Der f6/p6、又はDer f9/p9を、ゴキブリの場合はBla g2を含有している。
【0027】
また、プロテアーゼ含有アレルゲンには、例えば、真菌(カビ)及び細菌等も含まれる。ここで、細菌には、例えば、枯草菌、黄色ブドウ球菌等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
真菌(カビ)及び細菌は、プロテアーゼとして、Tritirachium album の場合はProteinase Kを、Bacillus subtilisの場合はsubtilisinを含有している。
【0029】
さらに、プロテアーゼ含有アレルゲンには、例えば、花粉等も含まれる。ここで、花粉が由来する植物には、例えば、スギ、ヒノキ科植物、ブタクサ、マツ、イネ科植物、ヨモギ、シラカバ(シラカンバ)、ハンノキ、ヤシャブシ、及びオバヤシャブシ等が含まれるが、これらに限定されない。
【0030】
花粉は、スギ花粉の場合はAct c1相同タンパク質、及びCuc m1相同タンパク質など、他の植物の花粉アレルゲンと相同性の高いタンパク質を多数含有している。
【0031】
さらにまたプロテアーゼ含有アレルゲンには、例えば、ハウスダスト等も含まれる。なお、ハウスダストは、種々のアレルゲンの混合物であり、ヒト及びヒト以外の動物に由来する皮屑及び毛等に加えて、上記した各種アレルゲン(虫、虫の糞、及び虫の死骸、並びにそれらの破片;真菌(カビ)及び細菌等;花粉等)が混ざったものである。
【0032】
ハウスダストのうちヒト及びヒト以外の動物に由来する皮屑及び毛は、ダニやカビ、真菌由来のセリンプロテアーゼおよびシステインプロテアーゼが表面に付着している。
【0033】
なお、本発明で対象とするプロテアーゼ含有アレルゲンはその大きさは特に制限されないが、粒子直径10μm以下の微粒子アレルゲンを対象とすることができる。なお、粒子直径が10μm以下であるか否かは顕微鏡観察で測定することができる。
【0034】
検体の具体例としては、上記アレルゲンを含有するか又は含みえる、気体、粉塵、掃除機の排気、エアーサンプラーで収集した浮遊粉塵等が挙げられるが、特に限定されない。粉塵としては、床材や寝具等の表面に付着している粉塵が挙げられる。これらの粉塵は、日常生活の中で振動や空気が送り込まれることによって大気中に飛散し、アレルギー反応を誘発するおそれがあることが指摘されている。このようなアレルギー誘発性を評価する目的で、床材や寝具等の表面から大気中に飛散した粉塵をそのまま、あるいはいったん回収した上で検体として使用してもよい。その際には、必要に応じて粉塵を篩い分けした上で篩下産物を検体として用いてもよい。篩い分けする篩目としては、特に限定されないが、例えばファインダストの定義に従って75メッシュとすることができる。
【0035】
1−2.工程(1)
(1-2-1)ゲル(A)
本発明の方法で使用するゲル(A)は、測定しようとするアレルゲンが有しているプロテアーゼの基質となりうるポリペプチド(基質ポリペプチド)を含む含水ゲルである。
【0036】
アレルゲンが有しているプロテアーゼとしては、制限はされないが、前述するように、例えば、トリプシン様プロテアーゼ、キモトリプシン様プロテアーゼ、パパイン様プロテアーゼ、エラスターゼ様プロテアーゼ、ペプチダーゼ様プロテアーゼ、コラゲナーゼ様プロテアーゼ等が挙げられる。
【0037】
基質ポリペプチドとしては、測定しようとするアレルゲンが有しているプロテアーゼの種類に応じて適切なものを適宜選択することができる。具体的には、当該プロテアーゼが基質とするアミノ酸配列を分子内に有するポリペプチドを使用することができる。
【0038】
例えば、アレルゲンがプロテアーゼとしてトリプシン様プロテアーゼを有している場合は、基質ポリペプチドとして、下記(I)及び/又は(II)に示すアミノ酸配列を分子内に有するポリペプチド、又はアルギニン残基を分子内に有するポリペプチドを使用することができる。
【0039】
Gln-Ala-Arg (I)
【0040】
Phe-Ser-Arg (II)
【0041】
また例えば、アレルゲンがプロテアーゼとしてキモトリプシン様プロテアーゼを有している場合は、基質ポリペプチドとして、下記(III)〜(V)のいずれか少なくとも一つのアミノ酸配列を分子内に有するポリペプチドを使用することができる。
【0042】
Ala-Ala-Phe (III)
【0043】
Ala-Ala-Pro-Phe(配列番号1) (IV)
【0044】
Leu-Leu-Val-Tyr(配列番号2) (V)
【0045】
また例えば、アレルゲンがプロテアーゼとしてパパイン様プロテアーゼを有している場合は、基質ポリペプチドとして、下記(VI)に示すアミノ酸配列を分子内に有するポリペプチドを使用することができる。
【0046】
Lys-Phe-Gly-Gly-Ala-Ala (配列番号3) (VI)
【0047】
また例えば、アレルゲンがプロテアーゼとしてエラスターゼ様プロテアーゼを有している場合は、基質ポリペプチドとして、下記(VII)及び/又は(VIII)に示すアミノ酸配列を分子内に有するものを使用することができる。
【0048】
Ala-Ala-Ala (VII)
【0049】
Ala-Pro-Ala (VIII)
【0050】
また例えば、アレルゲンがプロテアーゼとしてペプチダーゼ様プロテアーゼを有している場合は、基質ポリペプチドとして、下記(IX)〜(XI)のいずれか少なくとも一つのアミノ酸配列を分子内に有するポリペプチドを使用することができる。
【0051】
Ala-Ala-Phe (IX)
【0052】
Gly-Pro (X)
【0053】
Gly-Pro-Leu-Gly-Pro(配列番号4) (XI)
【0054】
また例えば、アレルゲンがプロテアーゼとしてコラゲナーゼ様プロテアーゼを有している場合は、基質ポリペプチドとして、下記(XII)及び/又は(XIII)に示すアミノ酸配列を分子内に有するポリペプチドを使用することができる。
【0055】
Gly-Pro-Gly-Gly-Pro-Ala(配列番号5) (XII)
【0056】
Gly-Pro-Gln-Gly-Ile-Ala-Gly-Gln-Gln(配列番号6) (XIII)
【0057】
なお、上記(I)〜(XIII)からなる群から選択されるいずれか少なくとも一つのアミノ酸配列を分子内に有するポリペプチドは、特に制限されないが、分子量が200以上であるポリペプチドであることが好ましい。より好ましくは分子量が200〜1000万、さらに好ましくは分子量が1000〜100万であるポリペプチドである。
【0058】
さらに、例えば、ダニ、花粉、及びハウスダスト等に由来するアレルゲンを測定しようとする場合、前記ポリペプチドとしては、ゼラチン、コラーゲン、ケラチン、カゼイン、若しくはアルブミン等、又はこれらの少なくとも一部分と類似した構造を有するポリペプチド等を用いることができる。そのようなポリペプチドは人工的に製造することもできる。なお、これらのポリペプチドも、上記と同様に分子量200以上、好ましくは200〜1000万、より好ましくは1000〜100万を有する。
【0059】
これらのゼラチン、コラーゲン、ケラチン、カゼイン、またはアルブミン等の天然由来ポリペプチド、及びこれらのポリペプチドと一部類似したアミノ酸配列を有するポリペプチドは、前述するプロテアーゼ(例えば、トリプシン様プロテアーゼ、キモトリプシン様プロテアーゼ、パパイン様プロテアーゼ、エラスターゼ様プロテアーゼ、ペプチダーゼ様プロテアーゼ、コラゲナーゼ様プロテアーゼ等)のいずれか少なくともひとつが認識し得るアミノ酸配列を有しているため、上記プロテアーゼによって分解されうる。したがって、ゼラチン、コラーゲン、ケラチン、カゼイン、及びアルブミンからなる群から選択される少なくとも1つのポリペプチドを基質ポリペプチドとして用いることによって、ほぼ全てのアレルゲンのプロテアーゼ活性を測定することができ、その結果、ほぼ全てのアレルゲンを検出することができる。
【0060】
このような各種プロテアーゼの基質となりえるポリペプチドを使用することによって、検体中にアレルゲンが有する特定のプロテアーゼが存在するか否かを確かめることができ、ひいては当該プロテアーゼを含有するアレルゲンを検出することができる。
【0061】
また、アレルゲンに含まれる各種プロテアーゼに対して、特異的に作用するプロテアーゼ活性化剤又はプロテアーゼ阻害剤を利用することによって、検体中に特定のプロテアーゼが存在するか否かを確かめることができ、ひいてはアレルゲンを特定することができる。例えば、プロテアーゼ活性化剤としては、DTT等を挙げることができる。プロテアーゼ阻害剤としては、セリンプロテアーゼ阻害剤であるAEBSF、又はシステインプロテアーゼであるE-64等を挙げることができる。
【0062】
上記ポリペプチドを含有するゲル(A)は、ある程度以上の形態保持力を有していることが好ましい。ゲル(A)の形態保持力が強ければ、プロテアーゼの加水分解反応によってゲル上に凹部または孔部が形成される際に、次のような問題が生じないため好ましい。すなわち、ゲル(A)の形態保持力が弱すぎる場合、加水分解反応によって侵食されたゲル部分に凹部または孔部が形成されるだけでなく、その部分が侵食され陥没若しくは欠失することで周辺を含めたより広い領域に渡ってゲル構造の変化が生じ、結果としてより広い領域に渡って凹部または孔部が形成されてしまう。ゲル(A)の形態保持力が強ければ、加水分解反応によって侵食されたゲル部分とそれに近い領域だけが凹部または孔部として観察されることになるため、プロテアーゼ活性、ひいてはアレルゲンの量をより正確に定量評価することが可能となる。
【0063】
ゼラチンのように、ポリペプチドが水に溶解し水を含むことによってゲル化し、形態保持力を有する含水ゲルを形成する場合、当該ポリペプチドはプロテアーゼの基質となると同時に、単独でゲルを作製するための基材として使用することができる。また、ポリペプチドとしてそれ自体では水を含んでも含水ゲルを形成しないポリペプチドを用いる場合、好ましい形態保持力を担保するため、ゲル(A)は、プロテアーゼの基質になるポリペプチドの他に、適当な架橋剤を用いて作製されることが好ましい。なお、ここで架橋剤としては、ペプチド同士を架橋することのできるものであればよく、例えばグルタルアルデヒド、グルタルアルデヒドオロゴマー、スクシンアルデヒド、ホルムアルデヒド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
なお、架橋の方法は、特に限定されない。例えば、上記架橋剤を用いる化学架橋方法、γ線や電子線を用いた放射線架橋方法、及び加熱によって架橋する加熱架橋方法等が挙げられる。
【0065】
ゲル(A)中に含まれる基質ポリペプチドの割合は、調製したゲル(A)が上記所望の機能を備えるものであればよく、その限りにおいて特に制限はされない。例えば、乾燥物換算で、ゲル(A)100重量%中の基質ポリペプチドの割合として70〜100重量%、好ましくは80〜90重量%を挙げることができる。
【0066】
なお、ゲル(A)は染料などを含有することで、予め染色されているものであってもよい。染料としては、特に制限されないが、ナイロサン・レッド、ナイロサン・ブルー、ラナシン・ブラック、及びビーブリッヒスカーレット等が挙げられる。
【0067】
ゲル(A)は薄膜状であってもよい。薄膜状であれば、工程(2)においてアレルゲンのプロテアーゼにより加水分解されることによってゲル上に形成される凹部がゲルの薄膜を短時間で貫通し、孔を形成することになる。孔を形成すればアレルゲンの検出がより容易になる。この場合、ゲル(A)の厚みとしては、1μm〜3mmが好ましく、3μm〜20μmがより好ましい。
【0068】
(1-2-2)水分供給源
前述するゲル(A)において、少なくともその一面(表面)は、工程(1)においてアレルゲンを含む検体が接触する面である。またこの面は、工程(2)の加水分解反応の際も空気に晒されているため、その面から経時的に水分が蒸散される。ところが、本発明者らの知見によると、この面が乾燥してしまうと、工程(2)において加水分解反応の速度が低下し、工程(3)で凹部または孔部が検出できる程度に凹部または孔部が大きくなるまでに時間を要する。そこで、当該ゲル(A)に対して水分を供給できるように水分供給源(B)が設けられていることが好ましく、こうすることによって、加水分解反応が行われるゲル(A)表面の乾燥が防止されて、早期にアレルゲンを検出することができる。
つまり、前述するゲル(A)には、任意の構成として、水分を供給できるように水分供給源(B)が別途設けられていることが好ましい。
【0069】
水分供給源(B)は、ゲル(A)に水分を供給することができるものであればよく、特に限定されない。例えば、水そのもの、含水多孔質体が挙げられるが、好ましくは含水多孔質体である。
【0070】
また、水分供給源(B)とゲル(A)との間に半透膜または水透過性シートが設けられていてもよい。水分供給源(B)とゲル(A)との間に半透膜または水透過性シートが設けられていることによって、水分供給源(B)から水が毛細管現象によって半透膜または水透過性シートを介してゲル(A)に効率的に供給される。
【0071】
半透膜としては、特に限定されないが、例えば、再生セルロース膜、PVDF膜、及び多孔性樹脂等が挙げられる。多孔性樹脂としては、特に限定されないが、ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリメタクリル酸メチル等を原材料とするものが挙げられる。ゴムは、合成ゴムであってもよいし、天然ゴムであってもよい。
【0072】
半透膜の具体的な例としては、透析膜等を挙げることができる。
【0073】
水透過性シートは、水を透過させる性質があればよく、例えばろ紙や不織布等を例示することができる。
【0074】
含水多孔質体とは、水分を含有した状態の多孔質体である。多孔質体としては、特に限定されないが、ゲル、スポンジ、不織布、及びろ紙等が挙げられる。含水多孔質体の素材としては、特に限定されないが、例えば、寒天ゲル、含水セルロース、含水セルローススポンジ、含水多孔性樹脂等が挙げられる。
【0075】
含水多孔質体の含水率は、特に限定されないが、70〜99重量%であれば好ましく、80〜99重量%であればより好ましい。
【0076】
水分供給源(B)は、ゲル(A)に接して設けられている。なお、ここでいう「接して」又は「接触」には、半透膜を介して接触することも含まれる。ゲル(A)に水分を供給できればよく、検体が接触する面以外であれば、ゲル(A)のいずれの面に接していてもよい。例えば、ゲル(A)が、第一層を構成し、その第一層の下層側に、含水多孔質体からなる水分供給源(B)が第二層として積層されていてもよい。この場合、第一層と第二層は、少なくとも互いに一部の面で接していればよく、また全面で接していてもよい。
【0077】
なお、水分供給源(B)をゲル(A)と接触させるタイミングは、ゲル(A)に検体を接触させる前であってもよいし、ゲル(A)に検体を接触させた後であってもよい。
【0078】
(1-2-3)ゲル上に検体を接触させる工程
前述するポリペプチドを含有するゲル(A)の表面に検体を接触させる方法としては、ゲルの表面に検体が接触する方法であればよく、特に限定されない。
【0079】
例えば、空間内の気体(大気)中のアレルゲンを検出する場合は、その空間中に、前述するゲル(A)を設置するだけでよい。
【0080】
また、粉塵中のアレルゲンを検出する場合は、いったんその粉塵を回収した上で、それをゲル(A)上に飛散させるか、またはゲル(A)上に散布してもよい。この際には、必要に応じて篩い分けした上で篩下産物をゲル(A)上に飛散させるか、またはゲル(A)上に散布してもよい。篩目としては、特に限定されないが、例えば75メッシュが挙げられる。
【0081】
さらに、前述するポリペプチドを含有するゲル(A)を、例えば水を含ませたろ紙や不織布等の含水多孔質体(水供給源(B))の表面に積層させたものを、ゲル表面を外側にして、例えば掃除機の吸い口にセットし、掃除機を始動することで、粉塵を回収すると同時に粉塵をゲル(A)上に接触させることもできる。こうすることで、大気中のアレルゲンや、カーペットや布団等の生活環境下に存在するアレルゲンを簡単に検出し、評価することができる。
【0082】
1−3.工程(2)
当該工程(2)において、ゲル(A)に接触させたアレルゲンによりゲル(A)に含まれるポリペプチドを加水分解させる条件は、特に限定されない。
【0083】
かかる条件は、例えば、アレルゲンに含まれるプロテアーゼの種類に応じて適宜設定することができる。温度条件を、プロテアーゼの最適温度に設定することにより、加水分解反応が迅速に進行するため、アレルゲンの検出も迅速に行うことができる。
【0084】
ただし、水が凍結しない程度の温度であり、かつ極端な高温でなければ、通常は加水分解反応が進行する。したがって、ある場所の気体中のアレルゲンを、その場所の本来の環境で検出しようとする場合であっても、多くの場合は加水分解反応が進行するため、問題なく検出を行うことができる。好ましい温度条件としては、4〜60℃、好ましくは15〜40℃である。
【0085】
加水分解反応を行わせる時間は、加水分解反応によってゲル(A)上に測定可能な大きさにまで凹部が形成される時間であればよく、特に限定されない。ゲル(A)の組成、プロテアーゼの種類、及び温度条件等によっても変わってくるが、一つの目安としては、例えば数時間〜24時間が挙げられる。
【0086】
1−4.工程(3)
凹部の検出方法は、通常、肉眼で行われるが、これに特に限定されない。当該工程において、ゲル(A)上に凹部または孔部が検出されれば、検体中にアレルゲンが含まれていることが分かる。
【0087】
より凹部または孔部を検出しやすくするためには、上記肉眼観察に加えて、または肉眼観察に代えて、天眼鏡、オーバーヘッドプロジェクター、又はスキャナー等の手段を用いて凹部または孔部を拡大して観察してもよい。なお、拡大のための手段はこれに限定されない。
【0088】
なお、凹部または孔部の検出に際して、ゲル(A)上に形成された凹部または孔部が肉眼で容易に目視観察できるように、ゲル(A)を染色することもできる。なお、ゲル(A)の染色は、工程(2)後、凹部または孔部が形成されたゲル(A)の表面を染色液で染色してもよいし(実施例1〜4参照)、また予めゲル(A)を染色しておき、当該染色ゲル(A)を用いて、本発明の方法(工程(1)〜(3))を実施してもよい。なお、ゲルの染色に使用する染料としては、特に限定されないが、例えば、ナイロサン・レッド、ナイロサン・ブルー、ラナシン・ブラック、及びビーブリッヒスカーレット等が挙げられる。
【0089】
またゲル(A)が、水分供給源(B)からなる第二層の上に積層されてなる二層構造を有する場合、ゲル(A)と水分供給源(B)とを、それぞれ互いに異なる色に染色しておいてもよい。また、ゲル(A)と水分供給源(B)との間に半透膜を有する場合、ゲル(A)と半透膜(さらに水分供給源(B))とを、それぞれ互いに異なる色に染色しておいてもよい。これらの場合、ゲル(A)に凹部または孔部が形成されると、ゲル(A)とは異なる色の水分供給源(B)または半透膜が露出し、凹部または孔部をより明確に識別し、検出することができる。この場合も、染料として、特に限定されないが、前述するナイロサン・レッド、ナイロサン・ブルー、ラナシン・ブラック、及びビーブリッヒスカーレット等を用いることができる。特に限定されないが、例えば、水分供給源(B)には、白色を呈するようにタルクを混入してもよい。
【0090】
本発明の方法によれば、ゲル上に形成された各凹部及び各孔部の底面面積を合計することにより検体中のアレルゲン量を定量的に評価することもできる。また、ゲル上に形成された各凹部及び各孔部の数を合計することにより検体中のアレルゲン量を定量的に評価することもできる。あるいは、各凹部及び各孔部の底面面積の合計、及び各凹部及び各孔部の合計数の両方に基づいて検体中のアレルゲン量を定量的に評価することができる。
【0091】
各凹部の底面側面積は、例えば、ゲル表面を撮影した画像をコンピュータ処理にて2値化し、凹部または孔部の底面に相当する領域の面積をピクセル数で測定してもよい。なお、底面面積の測定方法はこれに限定されない。
【0092】
2.アレルゲン検出キット
本発明のアレルゲン検出キットは、前述の本発明のアレルゲン検出方法を簡便に実施するために、好適に使用することができるアレルゲン検出道具のセットである。
【0093】
詳細には、本発明のアレルゲン検出キットは、検体中に存在する、プロテアーゼを含有するアレルゲンを検出するための道具であって、少なくとも下記の(A)または(C)を含むか、または(D)と(E)を組み合わせて含むものである。
(A)当該プロテアーゼの基質となりうるポリペプチドを含むゲル、
(C)当該プロテアーゼの基質となりうるポリペプチドを含む乾燥ゲル、
(D)当該プロテアーゼの基質となりうるポリペプチド、
(E)架橋剤。
【0094】
また、本発明のアレルゲン検出キットは、さらに水分供給源(B)を有するものであってもよい。
【0095】
ゲル(A)、水分供給源(B)、プロテアーゼの基質となりえるポリペプチド(D)、及び架橋剤(E)、並びにこれらの使用方法については前述の本発明のアレルゲン検出方法で説明した通りである。上記乾燥ゲル(B)は、プロテアーゼの基質となりえるポリペプチド及び必要に応じて染料やゲル化剤を含み、水に溶解させることによって含水しゲル状態になる、乾燥状態にある吸水性ゲルである。含水ゲルであるゲル(A)を乾燥させたものであってもよい。
【0096】
なお、本発明のアレルゲン検出キットにおいて、水分供給源(B)には、使用前には水分供給能を有さないが、使用時に水を外部から与えることによって水分供給能を獲得するようなものも含まれる。例えば、水を入れるための容器、又は含水能を有する乾燥多孔質体等が挙げられる。水を入れるための容器を水分供給源(B)として用いる場合は、使用時に当該容器に水を入れ、水面上にゲル(A)を浮かべることによってゲル(A)へと水分を供給することができる。また、含水能を有する乾燥多孔質体を水分供給源(B)として用いる場合は、使用時に当該乾燥多孔質体に水を加えて含水多孔質体とした上で、これにゲル(A)を接触させることによってゲル(A)へと水分を供給することができる。なお、本発明のアレルゲン検出キットは、前述の本発明のアレルゲン検出方法で説明したのと同様に半透膜やを含んでいてもよい。
【0097】
ゲル(A)は、シャーレ等のように、上面に開口部を有するか、あるいは上面が開放可能になっている容器内に設置してもよい。斯くして開口部を通して検体をゲル(A)に接触させることができる。容器の材質は、特に限定されないが、例えば、プラスチック、ガラス、樹脂等が挙げられる。本発明のアレルゲン検出キットには、かかるゲル(A)を配置するシャーレ等の容器を含むものであってもよい。
【0098】
本発明のアレルゲン検出キットは、使用前に、ゲル(A)及び水分供給源(B)を、互いに接触しない状態で別々に保管・輸送してもよい。この場合、使用時にゲル(A)及び水分供給源(B)を互いに接した状態とする。この場合、使用前はゲル(A)を乾燥状態としておき、使用時に水分供給源(B)と接触させることによって水分をゲル(A)に供給してもよい。
【0099】
本発明のアレルゲン検出キットは、さらに使用方法等を記載した指示書を含んでいてもよい。
【実施例】
【0100】
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に特に限定されるものではない。
【0101】
実施例1 プロテアーゼ活性の可視化評価
(1)材料
ブタ膵臓由来トリプシン(SIGMA 4799-5G, Lot 039K7013)
豚皮ゼラチン(新田ゼラチンAPH-200, Lot 08825)
ジチオトレイトール(SIGMA -D0632-5G, Lot 116K1804)
25%グルタルアルデヒド水溶液(WAKO 073-00536, Lot TSK0754)
25mM Tris-HCl (pH6.8)緩衝液
ビーブリッヒスカーレット染色液(WAKO 021-14861, Lot JLK9305)
プラスチック製シャーレ(FALCON 353001)。
【0102】
(2)方法および結果
ゼラチン1.0gを25mM Tris-HCl (pH6.8)緩衝液50mlに加え、加温装置内(60℃)にて溶解し、2%ゼラチン水溶液を作製した。50℃以下に温度が下がった2%ゼラチン水溶液30mlにジチオトレイトール300μlを添加し撹拌し、さらに25%グルタルアルデヒド溶液30μlを添加して撹拌した。クリーンベンチ内にて、上記で得られた溶液2ml(ジチオトレイトール及びグルタルアルデヒド含有ゼラチン水溶液)を直径35mmのプラスチック製シャーレに添加し、溶液がシャーレ底面を均質に覆った後、直ちに余分な溶液を吸引して、シャーレ底面に残った溶液を乾燥させて、厚みが10μm以下のゼラチン薄膜シャーレを作製した。
【0103】
ブタ膵臓由来トリプシン微粉末を、上記で調製したゼラチン薄膜シャーレ上に飛散させ、これをシャーレ内に水が入らないように、水を張った密閉容器(湿潤箱)内に静置、これを37℃の恒温槽内にて24時間静置した。シャーレを入れた密閉容器を、引き続き、4℃の冷蔵庫内で30分間静置した後、ゼラチン薄膜シャーレ内にビーブリッヒスカーレット染色液2mlを添加し、染色時間5分放置した後に余分な染色液を吸引した。次いで、これを冷却した25mM Tris-HCl (pH6.8)緩衝液2mlで染色液を洗浄した後、自然乾燥した。結果を図1に示す。トリプシンのプロテアーゼ活性によりシャーレ内のゼラチン薄膜が加水分解されて形成された凹部または孔部(染色液に染まらない円形の瘢痕、つまりプロテアーゼによる分解痕)が、ゼラチン薄膜上に観察された。
【0104】
以上に示すように、本発明の方法により、簡便にプロテアーゼ活性が可視化検出できることが判明した。
【0105】
実施例2 ダニアレルゲンの可視化評価
(1)材料
コナヒョウヒダニ排泄物由来アレルゲン凍結乾燥品(Dff)(ビオスタ Lot ffA)
豚皮ゼラチン(新田ゼラチンAPH-200, Lot 08825)
ジチオトレイトール(SIGMA -D0632-5G, Lot 116K1804)
25%グルタルアルデヒド水溶液(WAKO 073-00536, Lot TSK0754)
25mM Tris-HCl (pH6.8)緩衝液
ビーブリッヒスカーレット染色液(WAKO 021-14861, Lot JLK9305)
プラスチック製シャーレ(FALCON 353001)。
【0106】
(2)方法および結果
ゼラチン1.0gを25mM Tris-HCl (pH6.8)緩衝液50mlに加え、加温装置内(60℃)にて溶解し、2%ゼラチン水溶液を作製した。50℃以下に温度が下がった2%ゼラチン水溶液30mlにジチオトレイトール300μlを添加して撹拌し、さらに25%グルタルアルデヒド溶液30μlを添加して撹拌した。クリーンベンチ内にて、得られた溶液2ml(ジチオトレイトール及びグルタルアルデヒド含有ゼラチン水溶液)を直径35mmのプラスチック製シャーレに添加し、溶液がシャーレ底面を均質に覆った後、直ちに余分な溶液を吸引して、シャーレ底面に残った溶液を乾燥させて、厚みが10μm以下のゼラチン薄膜シャーレを作製した。
【0107】
上記で作製したゼラチン薄膜シャーレ上に、コナヒョウヒダニ排泄物由来アレルゲン凍結乾燥品(以下、「ダニアレルゲン」という)を飛散させ、これをシャーレ内に水が入らないように、水を張った密閉容器(湿潤箱)内に静置、これを37℃の恒温槽内にて24時間静置した。ゼラチン薄膜シャーレを入れた密閉容器を、引き続き、4℃の冷蔵庫内で30分間静置した後、ビーブリッヒスカーレット染色液2mlを添加し、染色時間5分放置した後に余分な染色液を吸引した。次いで、これを冷却した25mM Tris-HCl (pH6.8)緩衝液2mlで洗浄した後、自然乾燥した。結果を図2に示す。プロテアーゼ活性を有するダニアレルゲンを中心とした凹部または孔部(染色液に染まらない円形の瘢痕[プロテアーゼによる分解痕])がゼラチン薄膜に多数観察された。
【0108】
以上の通り、本発明の方法によりダニ由来プロテアーゼ活性を可視化することができ、その結果、プロテアーゼを有するダニアレルゲンの存在を簡便に肉眼で確認できることが示された。
【0109】
実施例3 スギ花粉アレルゲンの可視化評価
(1)材料
スギ花粉(直径粒子:30〜50μm程度)
豚皮ゼラチン(新田ゼラチンAPH-200, Lot 08825)
ジチオトレイトール(SIGMA -D0632-5G, Lot 116K1804)
25%グルタルアルデヒド水溶液(WAKO 073-00536, Lot TSK0754)
25mM Tris-HCl (pH6.8)緩衝液
ビーブリッヒスカーレット染色液(WAKO 021-14861, Lot JLK9305)
プラスチック製シャーレ(FALCON 353001)。
【0110】
(2)方法および結果
ゼラチン1.0gを25mM Tris-HCl (pH6.8)緩衝液50mlに加え、加温装置内(60℃)にて溶解し、2%ゼラチン水溶液を作製した。50℃以下に温度が下がった2%ゼラチン水溶液30mlにジチオトレイトール300μlを添加し撹拌、さらに25%グルタルアルデヒド溶液30μlを添加し撹拌した。クリーンベンチ内にて、得られた溶液2ml(ジチオトレイトール及びグルタルアルデヒド含有ゼラチン水溶液)を直径35mmのプラスチック製シャーレに添加、溶液がシャーレ底面に均質覆った後、直ちに余分な溶液を吸引し、シャーレ底面に残った溶液を乾燥させて、厚みが10μm以下のゼラチン薄膜シャーレを作製した。
【0111】
上記で作製したゼラチン薄膜シャーレ上に乾燥させたスギ花粉を飛散させ、これをシャーレ内に水が入らないように、水を張った密閉容器(湿潤箱)内に静置、これを37℃の恒温槽内にて24時間静置した。ゼラチン薄膜シャーレを入れた密閉容器を、引き続き、4℃の冷蔵庫内で30分間静置した後、ビーブリッヒスカーレット染色液2mlを添加、染色時間5分放置した後に余分な染色液を吸引した。次いで、これを冷却した25mM Tris-HCl (pH6.8)緩衝液2mlで洗浄した後、自然乾燥した。結果を図3に示す。スギ花粉を中心に凹部または孔部(染色液に染まらない円形の瘢痕[プロテアーゼによる分解痕])を形成していることがわかる。
【0112】
以上の通り、本発明によりスギ花粉由来プロテアーゼ活性を可視化することができ、その結果、プロテアーゼを含有するスギ花粉アレルゲンの存在を肉眼で確認できることが示された。
【0113】
実施例4 採取したハウスダスト中のアレルゲンの可視化評価
(1)材料
ハウスダスト(掃除機にて回収し75メッシュの篩を通過したもの)
豚皮ゼラチン(新田ゼラチンAPH-200, Lot 08825)
ジチオトレイトール(SIGMA -D0632-5G, Lot 116K1804)
25%グルタルアルデヒド水溶液(WAKO 073-00536, Lot TSK0754)
25mM Tris-HCl (pH6.8)緩衝液
ビーブリッヒスカーレット染色液(WAKO 021-14861, Lot JLK9305)
プラスチック製シャーレ(FALCON 353001)。
【0114】
(2)方法および結果
ゼラチン1.0gを25mM Tris-HCl (pH6.8)緩衝液50mlに加え、加温装置内(60℃)にて溶解し、2%ゼラチン水溶液を作製した。50℃以下に温度が下がった2%ゼラチン水溶液30mlにジチオトレイトール300μlを添加し撹拌、さらに25%グルタルアルデヒド溶液30μlを添加し撹拌した。クリーンベンチ内にて、得られた溶液2ml(ジチオトレイトール及びグルタルアルデヒド含有ゼラチン水溶液)を直径35mmのプラスチック製シャーレに添加し、溶液がシャーレ底面を均質に覆った後、直ちに余分な溶液を吸引し、シャーレ底面に残った溶液を乾燥させて、厚みが10μm以下のゼラチン薄膜シャーレを作製した。
【0115】
掃除機にて回収し75メッシュの篩を通過した微量のハウスダストを、上記で作製したゼラチン薄膜シャーレ上に飛散させ、これをシャーレ内に水が入らないように、水を張った密閉容器(湿潤箱)内に静置、これを37℃の恒温槽内にて24時間静置した。ゼラチン薄膜シャーレを入れた密閉容器を、引き続き、4℃の冷蔵庫で30分間静置後、ビーブリッヒスカーレット染色液2mlを添加し、染色時間5分放置した後に余分な染色液を吸引した。次いで、これを冷却した25mM Tris-HCl (pH6.8)緩衝液2mlで洗浄した後、自然乾燥した。
【0116】
結果を図4および図5に示す。いずれもプロテアーゼ活性を有するハウスダストを中心とした凹部または孔部(染色液に染まらない円)がゼラチン薄膜に多数観察された。図5中、顕微鏡による拡大図(B)から、ゼラチン薄膜上に存在するハウスダストのうち、「染色液に染まらない円形の瘢痕[プロテアーゼによる分解痕]」を持つのは一部のハウスダストであることがわかる。また、ハウスダストの破片のプロテアーゼ活性を持つ微粒子が付着して、全体として大きな「染色液に染まらない円形の瘢痕[プロテアーゼによる分解痕]」ができあがっている場合もある。かかる顕微鏡観察から、ハウスダストの中には、ゼラチン薄膜を加水分解するものとしないもの、つまりプロテアーゼ活性を有するアレルゲンとそうでないものが混在することがわかる。ハウスダストには様々なものが含まれているため、この結果は妥当であると考えられる。また、図5から、直径10μm以下の微粒子がプロテアーゼによる分解痕を形成していることがわかる。これから、本発明の方法によれば、プロテアーゼ活性を有する直径10μm以下のアレルゲンを検出することができることを意味する。
【0117】
実施例5 予め染色したゼラチンを用いたアレルゲンの可視化評価
(1)材料
ハウスダスト(掃除機にて回収し75メッシュの篩を通過したもの)
豚皮ゼラチン(新田ゼラチンAPH-200, Lot 08825)
ジチオトレイトール(SIGMA -D0632-5G, Lot 116K1804)
25%グルタルアルデヒド水溶液(WAKO 073-00536, Lot TSK0754)
1.0x10-4N HCl
ナイロサン・レッド
プラスチック製シャーレ(FALCON 353001)。
【0118】
(2)方法および結果
ゼラチン0.6gを1.0x10-4N HCl水溶液20mlに加え、加温装置内(60℃)にて溶解、3%ゼラチン水溶液を作製した。この水溶液に酸性染料ナイロサン・レッドを添加、60℃で30分間反応させ、ゼラチン水溶液を染色した。液温が50℃以下に低下したところで、このゼラチン水溶液にジチオトレイトール200μlを添加して撹拌し、さらに25%グルタルアルデヒド溶液20μlを添加して撹拌した。クリーンベンチ内にて、得られた溶液2ml(染料及びジチオトレイトール及びグルタルアルデヒド含有ゼラチン水溶液)を直径35mmのプラスチック製シャーレに添加、溶液がシャーレ底面を均質に覆った後、直ちに余分な溶液を吸引し、シャーレ底面に残った溶液を乾燥させて、厚みが10μm以下のゼラチン薄膜シャーレを作製した。
【0119】
掃除機にて回収し75メッシュの篩を通過した微量のハウスダストを、上記で作製したゼラチン薄膜シャーレ上に飛散させ、これをシャーレ内に水が入らないように、水を張った密閉容器(湿潤箱)内に静置、これを37℃の恒温槽内にて24時間静置した。結果を図6に示す。予め染料で染色しておいたゼラチン薄膜を用いた場合でも、ハウスダストを中心とした凹部または孔部(円形の瘢痕)が観察された。このことから、当該手法によってもハウスダスト中のプロテアーゼを含有するアレルゲンが目視により簡便に検出できることが確認できた。
【0120】
実施例6 室温で可能なアレルゲンの可視化評価
(1)材料
ハウスダスト(掃除機にて回収し75メッシュの篩を通過したもの)
豚皮ゼラチン(新田ゼラチンAPH-200, Lot 08825)
ジチオトレイトール(SIGMA -D0632-5G, Lot 116K1804)
25%グルタルアルデヒド水溶液(WAKO 073-00536, Lot TSK0754)
25mM Tris-HCl (pH6.8)緩衝液
ナイロサン・レッド
寒天(WAKO 018-15811, Lot ALK3464)
タルク(関東科学 400000-02, Lot 004X1294)
プラスチック製シャーレ(FALCON 353002)。
【0121】
(2)方法および結果
粉末状の寒天1.5gを25mM Tris-HCl (pH6.8)緩衝液50mlに加え、加温装置内(90℃)にし、2%寒天水溶液を作製した。これにタルク1.0gを添加して撹拌し、できあがった懸濁液3mlを直径60mmのプラスチック製シャーレに流し込み、冷却した後、白色不透明なタルク入り寒天ゲル薄膜シャーレを得た。次に、ゼラチン0.6gを1.0x10-4N HCl水溶液20mlに加えて加温装置内(60℃)にて溶解し、3%ゼラチン水溶液を作製した。このゼラチン水溶液に酸性染料ナイロサン・レッドを添加し、60℃で30分間反応させ、ゼラチン水溶液を染色した。液温が50℃以下に低下したところで、ジチオトレイトール200μlを添加し撹拌、さらに25%グルタルアルデヒド溶液20μlを添加して撹拌した。上記で作製した白色不透明なタルク入り寒天ゲル薄膜シャーレの寒天ゲル上に、染色したゼラチン水溶液750μlを添加し、寒天ゲル上を均質に覆った状態で冷却し、下層がタルク入り寒天ゲル(水分供給源)(厚み:8mm)、上層が染色ゼラチンゲル(厚み:100μmm)からなる二層構造のゲル薄膜シャーレを得た。
【0122】
掃除機にて回収し75メッシュの篩を通過した微量のハウスダストを、上記で作製したゲル薄膜シャーレの二層ゲルの染色ゼラチンゲル上に飛散させ、室温(15℃)にて2時間静置した。結果を図7に示す。二層ゲルタイプにおいて、ハウスダストを中心としてゼラチンゲル層に凹部または孔が形成され、下層のタルク入り寒天ゲル層が円形の瘢痕として観察された。これより、当該手法では、室温で、かつ短時間で、ハウスダスト中のプロテアーゼを含有するアレルゲンが検出できることが示された。
【0123】
実施例7 予め染色したゼラチンを用いたアレルゲンの可視化評価
(1)材料
ハウスダスト(掃除機にて回収し75メッシュの篩を通過したもの)
豚皮ゼラチン(新田ゼラチンAPH-200, Lot 08825)
ジチオトレイトール(SIGMA -D0632-5G, Lot 116K1804)
25%グルタルアルデヒド水溶液(WAKO 073-00536, Lot TSK0754)
25mM Tris-HCl (pH6.8)緩衝液
ナイロサン・レッド
ろ紙(フィルターペーパー、アドバンテック タイプ2)
25mM Tris-HCl (pH6.8)緩衝液
【0124】
(2)方法および結果
ゼラチン0.6gを1.0x10-4N HCl水溶液20mlに加え、加温装置内(60℃)にて溶解、3%ゼラチン水溶液を作成した。この水溶液に酸性染料ナイロサン・レッドを添加、60℃で30分間反応させ、ゼラチンを染色した。液温が50℃以下に低下したところで、ジチオトレイトール200μlを添加し撹拌、さらに25%グルタルアルデヒド溶液20μlを添加し撹拌した。この液をろ紙に塗布もしくはディップし、乾燥することにより、ろ紙表層に染色ゼラチンゲル(乾燥物)を形成した。
【0125】
染色ゼラチンゲルを表面に形成したろ紙を、ろ紙側を下面にして25mM Tris-HCl (pH6.8)緩衝液に浸して含水した後、掃除機にて回収し75メッシュの篩を通過した微量のハウスダストを、染色ゼラチンゲル表面に飛散させ、37℃にて2時間静置した。結果を図8に示す。染色ゼラチンゲルがハウスダスト中のプロテアーゼにより加水分解され、ゲル上に多数形成された孔部に基づいて白色の痕跡が観察された。
【0126】
この結果から、シャーレ等の容器ではなく、ろ紙を、ゲルを担持する基材とした場合でも、ゲル表面に、ハウスダストを中心とし円形の瘢痕(凹部または孔部)が観察されたことより、当該手法でも、短時間でハウスダスト中のアレルゲンが検出できることが示された。
【0127】
実施例8 アレルゲンの量とプロテアーゼによる分解痕の大きさとの関係
(1)材料
subtilisin A(プロテアーゼ活性を有するアレルゲン)
豚皮ゼラチン(新田ゼラチンAPH-200, Lot 08825)
ジチオトレイトール(SIGMA -D0632-5G, Lot 116K1804)
25%グルタルアルデヒド水溶液(WAKO 073-00536, Lot TSK0754)
25mM Tris-HCl (pH6.8)緩衝液
ビーブリッヒスカーレット染色液(WAKO 021-14861, Lot JLK9305)
プラスチック製シャーレ(FALCON 353001)。
【0128】
(2)方法および結果
ゼラチン1.0gを25mM Tris-HCl (pH6.8)緩衝液50mlに加え、加温装置内(60℃)にて溶解し、2%ゼラチン水溶液を作製した。50℃以下に温度が下がった2%ゼラチン水溶液30mlにジチオトレイトール300μlを添加し撹拌、さらに25%グルタルアルデヒド溶液30μlを添加し撹拌した。クリーンベンチ内にて、得られた溶液2ml(ジチオトレイトール及びグルタルアルデヒド含有ゼラチン水溶液)を直径35mmのプラスチック製シャーレに添加し、溶液がシャーレ底面を均質に覆った後、直ちに余分な溶液を吸引し、シャーレ底面に残った溶液を乾燥させて、厚みが10μm以下のゼラチン薄膜シャーレを作製した。
【0129】
subtilisin Aを1ng、10ng、100ngおよび1,000ngの割合で、上記で作製したゼラチン薄膜シャーレ上に播き、これをシャーレ内に水が入らないように、水を張った密閉容器(湿潤箱)内に静置、これを37℃の恒温槽内にて24時間静置した。ゼラチン薄膜シャーレを入れた密閉容器を、引き続き、4℃の冷蔵庫で30分間静置後、ビーブリッヒスカーレット染色液2mlを添加し、染色時間5分放置した後に余分な染色液を吸引した。次いで、これを冷却した25mM Tris-HCl (pH6.8)緩衝液2mlで洗浄した後、自然乾燥した。
【0130】
図9にsubtilisin Aの重量(ng)とプロテアーゼによる分解痕の大きさとの関係を示す。この結果から、プロテアーゼによる分解痕、つまりゲル上に形成される凹部または孔部の大きさからプロテアーゼ活性を有するアレルゲンの量を測定(定量)することができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の応用例として、室内環境中でのアレルゲン汚染度の評価、掃除機の排気による室内汚染の評価、床材や布団からの舞い上がり試験など挙げられる。また、本発明は、アレルギー患者を対象とした各種製品の開発における評価方法としても利用することができる。本発明によれば簡便にアレルゲンを検出できるため、製品開発が促進されることも期待される。そのような製品としては、排気がクリーンな掃除機、ホコリが舞い上がりにくい床材・カーペット、防塵寝具、及び防塵カバー等が挙げられる。
【配列表フリーテキスト】
【0132】
配列番号1及び2はキモトリプシン様プロテアーゼの基質になるアミノ酸配列、配列番号3はパパインン様プロテアーゼの基質になるアミノ酸配列、配列番号4はペプチダーゼ様プロテアーゼの基質になるアミノ酸配列、配列番号5及び6はコラゲナーゼ様プロテアーゼの基質になるアミノ酸配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体中に存在する、プロテアーゼを含有するアレルゲンを検出する方法であって、下記工程(1)〜(3)を含む方法:
(1)当該プロテアーゼの基質となりうるポリペプチドを含むゲル(A)上に、当該検体を接触させる工程;
(2)当該プロテアーゼによる当該ポリペプチドの加水分解反応をゲル(A)上で行わせる工程;及び
(3)当該加水分解反応によりゲル(A)上に形成された凹部または孔部を検出する工程。
【請求項2】
ゲル(A)が、前記ポリペプチドが互いに架橋されてなるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ゲル(A)が、ゼラチン、コラーゲン、ケラチン、カゼイン、及びアルブミンからなる群から選択される少なくとも1種のポリペプチドを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ゲル(A)の厚みが1μm〜3mmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ゲル(A)に、水分供給源(B)から水が供給されるように、水分供給源(B)が接して設けられてなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
水分供給源(B)が、水、又は含水多孔質体である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ゲル(A)が、第一層を構成し、かつ
第一層の下層側に、含水多孔質体からなる水分供給源(B)が第二層として積層されてなる、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
ゲル(A)及び水分供給源(B)が互いに異なる色を呈するものであり、
工程(3)が、工程(2)の加水分解反応でゲル(A)に凹部または孔部が形成されることによって露出した水分供給源(B)の色を検出する工程である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
下記(A)若しくは(C)、または(D)及び(E)を含有する、検体中に存在する、プロテアーゼを含有するアレルゲンを検出するためのキット:
(A)当該プロテアーゼの基質となりうるポリペプチドを含むゲル
(C)当該プロテアーゼの基質となりうるポリペプチドを含む乾燥ゲル、
(D)当該プロテアーゼの基質となりうるポリペプチド、
(E)架橋剤。
【請求項10】
さらに、水分供給源(B)を含む、請求項9に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−21980(P2012−21980A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135280(P2011−135280)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人科学技術振興機構、産学共同シーズイノベーション化事業、顕在化ステージにおける委託研究、「プロテアーゼ活性を指標とした新規アレルギー因子の探索と測定技術の開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(507126487)公立大学法人奈良県立医科大学 (12)
【Fターム(参考)】