アレルゲン沈静化剤
【課題】優れたアレルゲン沈静化能力を有しながら、無臭且つ加工等による変色の無いアレルゲン沈静化剤を提供する事を課題とする。
【解決手段】（１）ジルコニウム化合物と非水溶性酸化チタンの複合微粒子を含有することを特徴とするアレルゲン沈静化剤、（２）ジルコニウム化合物で被覆された非水溶性酸化チタン微粒子を含有することを特徴とするアレルゲン沈静化剤、（３）前記（１）及び（２）に記載のアレルゲン沈静化剤もしくは、それとシリコン樹脂、シランカップリング剤のうち少なくとも１種類併用したものを繊維表面に付着または固着せしめるアレルゲン沈静化加工法ならびに該加工方法で付着又は固着してなる繊維または繊維製品。（４）前記（１）及び（２）に記載のアレルゲン沈静化剤をスプレー容器に充填してなるアレルゲン沈静化スプレー。
【解決手段】（１）ジルコニウム化合物と非水溶性酸化チタンの複合微粒子を含有することを特徴とするアレルゲン沈静化剤、（２）ジルコニウム化合物で被覆された非水溶性酸化チタン微粒子を含有することを特徴とするアレルゲン沈静化剤、（３）前記（１）及び（２）に記載のアレルゲン沈静化剤もしくは、それとシリコン樹脂、シランカップリング剤のうち少なくとも１種類併用したものを繊維表面に付着または固着せしめるアレルゲン沈静化加工法ならびに該加工方法で付着又は固着してなる繊維または繊維製品。（４）前記（１）及び（２）に記載のアレルゲン沈静化剤をスプレー容器に充填してなるアレルゲン沈静化スプレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ハウスダスト等に含まれるアレルゲンに作用するアレルゲン沈静化剤に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、室内にはスギ花粉等の植物性蛋白、ダニ虫体や排泄物、家畜の体毛等の動物性蛋白などさまざまなハウスダストが存在する。一般に掃除をする際、電気掃除機を使用するが、絨毯、カーペット、布団等に絡みついた細かいハウスダストなどは、電気掃除機を掛けるだけでは十分に除去することは出来ない。しかしながら、室内に存在するアレルゲンを継続的に吸入、接触もしくは摂取することにより発症する、アレルギー性疾患が問題となっている。また一度発症してしまうと、微量のアレルゲンの吸入、接触等による再接種で、皮膚炎、鼻炎、喘息等の重いアレルギー疾患を生じるため、問題は深刻化する。このようなアレルギー反応を抑制するためには、アレルゲンとの接触を避けることが重要であり、現在多くの研究がなされている。
【０００３】
現在、アレルゲン除去技術として、タンニン酸化合物の蛋白結合作用を利用した、抗アレルギー剤（特許文献１）やポリフェノールによる抗アレルギー剤（特許文献２）、茶カテキンによる抗アレルギー剤（特許文献３）、金属フタロシアニンによる抗アレルギー剤（特許文献４）が上げられる。
【特許文献１】特開平０６−２７９２７３
【特許文献２】特開２００４−５１０８４１
【特許文献３】特開２０００−５５３１
【特許文献４】特開２００５−０６８５９７しかしながら、特許文献１〜４の発明は加工着色、ＮＯｘによる経時変色、または、精製度の低い抽出物を使用した場合には臭気の発生など、何らかの欠点を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
本発明は、従来技術の課題をもとに、優れたアレルゲン沈静化能力を有しながら、無臭且つ加工等による変色の無いアレルゲン沈静化剤を提供する事を課題とする物である。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意に研究した結果、アレルゲン沈静化成分として、ジルコニウム化合物と非水溶性酸化チタン微粒子及びジルコニウム化合物被覆酸化チタン微粒子が有効である事を発見し、今回の発明に至った。
【０００６】
すなわち本発明は、（１）ジルコニウム化合物と非水溶性酸化チタンの複合微粒子を含有することを特徴とするアレルゲン沈静化剤に関する。
（２）ジルコニウム化合物で被覆された非水溶性酸化チタン微粒子を含有することを特徴とするアレルゲン沈静化剤に関する。
（３）（１）及び（２）に記載のアレルゲン沈静化剤もしくは、それとシリコン樹脂、シランカップリング剤のうち少なくとも１種類併用したものを繊維表面に付着または固着せしめるアレルゲン沈静化加工法ならびに該加工方法で付着又は固着してなる繊維またはその繊維製品である。
（４）（１）及び（２）に記載のアレルゲン沈静化剤をスプレー容器に充填してなるアレルゲン沈静化スプレーである。
【発明の効果】
【０００７】
本発明はジルコニウム化合物と非水溶性酸化チタン微粒子及びジルコニウム化合物被覆非水溶性酸化チタン微粒子を用いる事で、従来なしえなかった、無臭、無着色且つ高いアレルゲン沈静化効果の有るアレルゲン沈静化剤を提供する事が出来、さらに幅広い用途に使用することが可能となる利点を有する。
本発明によるアレルゲン沈静化剤で使用する非水溶性酸化チタン微粒子もしくはジルコニウム化合物被覆酸化チタン微粒子の含有量は０．１〜５０重量％が望ましい。０．１重量％未満であると、十分な性能が得られず、５０重量％を超えると、粒子の分散性の問題で再凝集が起こるためである。より望ましくは１〜３０重量％である。
【０００８】
本発明で使用する非水溶性酸化チタン微粒子もしくはジルコニウム化合物被覆酸化チタンの粒子径は５μｍ以下であることが望ましい。粒子径が５μｍを超えると粒子の分散性の問題で再凝集が起こるためである。より望ましくは５０ｎｍ以下であることが望ましい。
本発明で使用するジルコニウム化合物は、二酸化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、酸塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、水酸化ジルコニウム、アルカリ金属変性水酸化ジルコニウム等を用いることが出来、その使用量は非水溶性酸化チタン重量に対し１〜１００重量％が望ましい。ジルコニウム化合物が１重量％以下で行うと十分な性能が得られず、また１００重量％以上で行うと、粒子の分散性の問題で再凝集が起こるためである。より望ましくは１０〜５０重量％が望ましい。
【０００９】
本発明のアレルゲン沈静化剤は、水を主成分とした溶媒中に溶解もしくは分散されていることが望ましく、最も望ましくは完全水溶媒である。但し必要に応じてアルコールなどの低沸点溶媒、防腐剤、抗菌剤、分散剤、界面活性剤、脱臭剤等を助剤として使用することが出来る。
本発明で使用するシリコン樹脂は、シリコン樹脂、シリコンアクリル共重合樹脂、シリコンウレタン共重合樹脂などシリコンを含有する樹脂のうち、少なくとも一種類併用することが望ましい。
【００１０】
本発明で使用するシランカップリング剤は、樹脂などの有機質材料と化学結合する反応基として、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基のうち少なくとも一種類を含有し、更に無機質材料と化学結合する反応基として、メトキシ基、エトキシ基のうち少なくとも一種類を含有し、それぞれの反応基の間に珪素を含有する物質である。例えばビニルトリメトキシシラン、２−（３，４−エポキシシクロヘキシル）エチルトリメトキシシラン、３−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ｐ−スチリルトリメトキシシラン、３−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、Ｎ−２−（アミノエチル）−３−アミノプロピルトリメトキシシラン３−アミノプロピルトリメトキシシラン、３−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどが上げられ、このうち少なくとも一種類併用することが望ましい。
【００１１】
本発明で使用するアレルゲン沈静化剤は、上記に記載のシリコン樹脂、シランカップリング剤のうち少なくとも一種類併用したものを繊維、繊維布帛表面に付着あるいは固着加工する。またシリコン樹脂もしくはシランカップリング剤を併用する際、本発明の目的の１つであるアレルゲン沈静化効果を高める為には、樹脂の使用量は非水溶性酸化チタン微粒子もしくは、ジルコニウム化合物被覆酸化チタン微粒子重量に対し１〜１００重量％が望ましい。樹脂の使用量が１重量％以下で行なうと、十分な耐久性が得られず、１００重量%以上で行なうと、樹脂で非水溶性酸化チタン微粒子及びジルコニウム化合物被覆酸化チタン微粒子が被覆されるためアレルゲン沈静化効果が得られず、１重量％以下であると繊維付着性が低下し、耐洗濯性が付与できない。さらに望ましくは２０〜５０重量％が望ましい。
【００１２】
本発明で使用するアレルゲン沈静化剤を加工する方法として、浸漬法、パッディング法、スプレー法、捺染法、コーティング法などがあるが、パディング法が最も望ましく、その加工方法は上記記載のアレルゲン沈静化剤を含浸させた後、マングルで７０〜１００重量％になるように絞った後、乾燥機にて１１０℃〜１３０℃で乾燥後、次いでベーキングマシンにて１５０℃〜１８０℃で熱処理を行なうことが望ましい
本発明のアレルゲン沈静化剤は通常の繊維布帛における仕上加工剤として用いるのが一般的であるが、エアゾールのスプレータイプにして、寝具類、布団、カーペット、カーシート類、エアコン・フィルターなどにしてからスプレーで付与しても良い。その際の水性分散液（サスペンジョン、エマルジョン等）、又は有機溶剤を含むエアゾール組成物の形態を採用することが出来る。すなわち本発明の加工剤は水性分散液として提供されても、また、前記水性分散液とともに有機溶剤及び／又は噴霧剤を含むスプレーやエアゾール組成物として提供されても良い。
【００１３】
本発明で使用するスプレーは、前記アレルゲン沈静化剤を公知のスプレー容器に充填してなるものであり、好ましい態様のアレルゲン沈静化剤を充填してなる物がより好適である。
スプレー容器の種類には特に限定はないが、使用時の簡便性の観点からトリガー式スプレー容器、ポンプ式スプレー容器、蓄圧式スプレー容器などが好ましい。スプレー容器の内容量は、使用性などの観点から、通常、１０〜１０００ｍｌ程度、より好ましくは５０〜５００ｍｌ程度である。
前記アレルゲン沈静化剤のスプレー容器への充填は、公知の方法に従って行なうことができる。
【００１４】
本発明のアレルゲン沈静化剤は、織布、不織布などの繊維製品、マスク・フィルターなどのろ過部材、既に汚染された環境、物品のみならず、床、壁面等の家屋構成部材にあらかじめ塗布、噴霧、担持しておくことも好適である。
本発明において適用可能なアレルゲンは沈静化効果が確認できるものであれば特に制限は無いが、イヌ、ネコ、鳥の体毛等の家畜由来、スギ、ブタクサ等の植物由来、ダニ、ゴキブリ本体もしくは排泄物などの動植物蛋白質を例示することが出来る。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。実施例で用いた評価法を以下に示す。
【００１５】
アレルゲン沈静化作用の評価
Ｄｆｂ抗原（ダニ虫体粗抗原）が、１５μｇ／ｍ２前後（マイティチェッカー表記：＋）になるように抽出液を調整し試験布２ｇを、個別の瓶にいれ抽出液１０ｍｌに浸す。３０分放置後マイティチェッカー（ダニアレルゲン検知用キット：住化エンビロサイエンス社製）により測定し、判定用色見本にて比較判定する。マイティチェッカーによるダニアレルゲン量の判定基準を以下の表１に示した。
【００１６】
臭気判定
臭気判定は加工上がりの生地及び、加工布をチャック付透明ビニール袋に入れ日光に1週間あてたものの、臭いをかいで、臭気の有無を判定した。
【００１７】
加工着色
加工着色は加工上がりの生地を、目視にて、着色の有無を判定した。
【００１８】
ＮＯｘによる変色
ＪＩＳ Ｌ−０８５５に準じて試験を行い、目視にて、変色の有無を判定した。
【００１９】
洗濯条件
ＪＩＳ Ｌ−０２１７ １０３法 に準じて洗濯５回後、つり干し乾燥を行った。
【００２０】
以下詳細は実施例により説明する。なお実施例中で用いて％は重量％を意味する。
【実施例１】
【００２１】
分散容器に粒子径１５ｎｍ酸化チタン２０％、炭酸ジルコニウムアンモニウム３％，分散剤（信越化学工業社製：ＰＳＡ−２０４）０．５％、予め熱湯で溶解した１０％キサンタンガム水溶液を３５％入れ、残りを水で希釈し、ホモミキサーにて乳化分散を行い、試験液１を得た。試験液１を１０％、残りを水で希釈した加工液にポリエステル１００％布を含浸し、マングルでピックアップが１００％になるように絞った後、ピンテンター乾燥機にて１１０℃で２分間乾燥後、次いで該布帛をピンテンターベーキングマシンにて１６０℃で２分間、熱処理を施し、加工製品とした。この加工製品の初期及び洗濯５回後のアレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、初期はマイナス（−）でアレルゲンが沈静化されていたが、洗濯５回後はプラス（+）でアレルゲン沈静化されていなかった。臭気判定の結果初期及び経時での異臭の発生はなく、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった
【実施例２】
【００２２】
分散容器に粒子径１５ｎｍジルコニア被覆酸化チタン２０％、分散剤(信越化学工業社製：ＰＳＡ−２０４)０．５％、予め熱湯で溶解した１０％キサンタンガムを３５％入れ、残りを水で希釈し、ホモミキサーにて乳化分散を行い、試験液２を得た。この試験液２を１０％、残りを水で希釈した加工液にポリエステル１００％布を含浸し、マングルでピックアップが１００％になるように絞った後、ピンテンター乾燥機にて１１０℃で２分間乾燥後、次いで該布帛をピンテンターベーキングマシンにて１６０℃で２分間、熱処理を施し、加工製品とした。この加工製品の初期及び洗濯５回後のアレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、初期はマイナス（−）でアレルゲンが沈静化されていたが、洗濯５回後はプラス（+）でアレルゲン沈静化効果されていなかった。臭気判定の結果初期及び経時での異臭の発生はなく、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった。
【実施例３】
【００２３】
試験液１を１０％と、シリコン樹脂（大原パラヂウム化学社製：ＰＳ−２００、固形分２０％、水分散液）を３％、残りを水で希釈した加工液にポリエステル１００％布を含浸し、マングルでピックアップが１００％になるように絞った後、ピンテンター乾燥機にて１１０℃で２分間乾燥後、次いで該布帛をピンテンターベーキングマシンにて１６０℃で２分間、熱処理を施し、加工製品とした。この加工製品の初期及び洗濯５回後のアレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、初期及び洗濯５回後、共にマイナス（−）でアレルゲンが沈静化され、臭気判定の結果初期及び経時での異臭の発生はなく、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった。
【実施例４】
【００２４】
試験液２を１０％、シリコン樹脂（大原パラヂウム化学社製：パラレヂンＰＳ−２００、固形分２０％、水分散液）３％、残りを水で希釈した加工液にポリエステル１００％布を含浸し、マングルでピックアップが１００％になるように絞った後、ピンテンター乾燥機にて１１０℃で２分間乾燥後、次いで該布帛をピンテンターベーキングマシンにて１６０℃で２分間、熱処理を施し、加工製品とした。この加工製品の初期及び洗濯５回後のアレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、初期及び洗濯５回後、共にマイナス（−）でアレルゲンが沈静化され、臭気判定の結果初期及び経時での異臭の発生はなく、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった。
【実施例５】
【００２５】
試験液２を１０％、シリコン樹脂（大原パラヂウム化学社製：パラレヂンＰＳ−２００、固形分２０％、水分散液）３％、シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製：ＫＢＭ−６０３)０．１％、残りを水で希釈した加工液にポリエステル１００％布を含浸し、マングルでピックアップが１００％になるように絞った後、ピンテンター乾燥機にて１１０℃で２分間乾燥後、次いで該布帛をピンテンターベーキングマシンにて１６０℃で２分間、熱処理を施し、加工製品とした。この加工製品の初期及び洗濯５回後のアレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、初期及び洗濯５回後共にマイナス（−）でアレルゲンが沈静化され、臭気判定の結果初期及び経時での異臭の発生はなく、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった。
【実施例６】
【００２６】
試験液２を１０％、シリコンアクリル樹脂（大原パラヂウム化学社製：パラゾールＧＨ−Ｓ、固形分２７％、水分散液）３％、残りを水で希釈した加工液にポリエステル１００％布を含浸し、マングルでピックアップが１００％になるように絞った後、ピンテンター乾燥機にて１１０℃で２分間乾燥後、次いで該布帛をピンテンターベーキングマシンにて１６０℃で２分間、熱処理を施し、加工製品とした。この加工製品の初期及び洗濯５回後のアレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、初期及び洗濯５回後、共にマイナス（−）でアレルゲンが沈静化され、臭気判定の結果初期及び経時での異臭の発生はなく、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった。
【実施例７】
【００２７】
試験液２を１０％、シリコンアクリル樹脂（大原パラヂウム化学社製：パラゾールＧＨ−Ｓ、固形分２７％、水分散液）３％、シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製：ＫＢＭ−６０３)０．１％、残りを水で希釈した加工液にポリエステル１００％布を含浸し、マングルでピックアップが１００％になるように絞った後、ピンテンター乾燥機にて１１０℃で２分間乾燥後、次いで該布帛をピンテンターベーキングマシンにて１６０℃で２分間、熱処理を施し、加工製品とした。この加工製品の初期及び洗濯５回後のアレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、初期及び洗濯５回後共にマイナス（−）でアレルゲンが沈静化され、臭気判定の結果初期及び経時での異臭の発生はなく、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった。
【００２８】
（比較例１）
ポリエステル１００％布を水で含浸し、マングルでピックアップが１００％になるように絞った後、ピンテンター乾燥機にて１１０℃で２分間乾燥後、次いで該布帛をピンテンターベーキングマシンにて１６０℃で２分間、熱処理を施し、加工製品とした。この加工製品のアレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、測定結果はプラス（＋）でアレルゲンが沈静化されていなかった、また臭気判定の結果初期及び経時での異臭の発生はなく、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった。
【００２９】
（比較例２）
茶抽出物（株式会社伊藤園社製：テアフラン３０Ａ）５％水溶液を比較試験液１とした。この比較試験液１０％溶液にポリエステル１００％布を含浸し、マングルでピックアップが１００％になるように絞った後、ピンテンター乾燥機にて１１０℃で２分間乾燥後、次いで該布帛をピンテンターベーキングマシンにて１６０℃で２分間、熱処理を施し、加工製品とした。この加工製品の初期及び洗濯５回後アレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、初期はマイナス（−）でアレルゲンが沈静化されていたが、洗濯５回後はプラス（＋）でアレルゲン沈静化効果が低下していた。また臭気判定の結果初期及び経時で茶独特の臭気がし、加工着色及びＮＯｘによる変色が見られた。
【００３０】
（比較例３）
実施例２で得た試験液２を１０％、アクリル酸エステル樹脂(大原パラヂウム化学社製：ＧＨ−３５Ｅ、固形分４５％、水分散液)２％、残りを水で希釈した加工液にポリエステル１００％布を含浸し、マングルでピックアップが１００％になるように絞った後、ピンテンター乾燥機にて１１０℃で２分間乾燥後、次いで該布帛をピンテンターベーキングマシンにて１６０℃で２分間、熱処理を施し、加工製品とした。この加工製品のアレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、測定結果はマイナス（−）でアレルゲンが沈静化されていたが、臭気判定の結果初期は無臭であったが経時での異臭が発生した、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった。
実施例１、２、３、４、５、６、７、比較例１、２、３の試験結果を表２に示した。
【実施例８】
【００３１】
下記成分を噴射用耐圧ガラス容器に入れ、エアゾール組成物を製造した。
実施例２で得た試験液２ ５％
エタノール ２５％
精製水 バランス
ジメチルエーテル／ＬＰＧ（混合ガス５／５） ８％
このエアゾール組成物をポリエステル１００％布にスプレー加工し、得られた製品について、アレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、測定結果はマイナス（−）でアレルゲンが沈静化され、臭気判定の結果初期及び経時での異臭の発生はなく、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった。
【００３２】
（比較例４）
下記成分を噴射用耐圧ガラス容器に入れ、エアゾール組成物を製造した。
エタノール ２５％
精製水 バランス
ジメチルエーテル／ＬＰＧ（混合ガス５／５） ８％
このエアゾール組成物をポリエステル１００％布にスプレー加工し、得られた製品について、アレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、測定結果はプラス（＋）でアレルゲンが沈静化されていなかった、また臭気判定の結果初期及び経時での異臭の発生はなく、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった。
実施例８と比較例４の結果を表３に示した。
【００３３】
【表１】
【００３４】
【表２】
【００３５】
【表３】
【産業上の利用可能性】
【００３６】
本発明によると、臭気ならびに着色が無く、効果的なアレルゲン沈静化剤を提供でき、衣類、寝具類、布団中綿類など織布、また使い捨てマスク類、カーペット、カーシート類エアコン・フィルターなどの不織布などの繊維製品、およびスプレー、エアゾール品、床、壁面等の家屋構成部材、臭気や、着色が問題となる分野においても広く利用することができ、産業界に寄与すること大である。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ハウスダスト等に含まれるアレルゲンに作用するアレルゲン沈静化剤に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、室内にはスギ花粉等の植物性蛋白、ダニ虫体や排泄物、家畜の体毛等の動物性蛋白などさまざまなハウスダストが存在する。一般に掃除をする際、電気掃除機を使用するが、絨毯、カーペット、布団等に絡みついた細かいハウスダストなどは、電気掃除機を掛けるだけでは十分に除去することは出来ない。しかしながら、室内に存在するアレルゲンを継続的に吸入、接触もしくは摂取することにより発症する、アレルギー性疾患が問題となっている。また一度発症してしまうと、微量のアレルゲンの吸入、接触等による再接種で、皮膚炎、鼻炎、喘息等の重いアレルギー疾患を生じるため、問題は深刻化する。このようなアレルギー反応を抑制するためには、アレルゲンとの接触を避けることが重要であり、現在多くの研究がなされている。
【０００３】
現在、アレルゲン除去技術として、タンニン酸化合物の蛋白結合作用を利用した、抗アレルギー剤（特許文献１）やポリフェノールによる抗アレルギー剤（特許文献２）、茶カテキンによる抗アレルギー剤（特許文献３）、金属フタロシアニンによる抗アレルギー剤（特許文献４）が上げられる。
【特許文献１】特開平０６−２７９２７３
【特許文献２】特開２００４−５１０８４１
【特許文献３】特開２０００−５５３１
【特許文献４】特開２００５−０６８５９７しかしながら、特許文献１〜４の発明は加工着色、ＮＯｘによる経時変色、または、精製度の低い抽出物を使用した場合には臭気の発生など、何らかの欠点を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
本発明は、従来技術の課題をもとに、優れたアレルゲン沈静化能力を有しながら、無臭且つ加工等による変色の無いアレルゲン沈静化剤を提供する事を課題とする物である。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意に研究した結果、アレルゲン沈静化成分として、ジルコニウム化合物と非水溶性酸化チタン微粒子及びジルコニウム化合物被覆酸化チタン微粒子が有効である事を発見し、今回の発明に至った。
【０００６】
すなわち本発明は、（１）ジルコニウム化合物と非水溶性酸化チタンの複合微粒子を含有することを特徴とするアレルゲン沈静化剤に関する。
（２）ジルコニウム化合物で被覆された非水溶性酸化チタン微粒子を含有することを特徴とするアレルゲン沈静化剤に関する。
（３）（１）及び（２）に記載のアレルゲン沈静化剤もしくは、それとシリコン樹脂、シランカップリング剤のうち少なくとも１種類併用したものを繊維表面に付着または固着せしめるアレルゲン沈静化加工法ならびに該加工方法で付着又は固着してなる繊維またはその繊維製品である。
（４）（１）及び（２）に記載のアレルゲン沈静化剤をスプレー容器に充填してなるアレルゲン沈静化スプレーである。
【発明の効果】
【０００７】
本発明はジルコニウム化合物と非水溶性酸化チタン微粒子及びジルコニウム化合物被覆非水溶性酸化チタン微粒子を用いる事で、従来なしえなかった、無臭、無着色且つ高いアレルゲン沈静化効果の有るアレルゲン沈静化剤を提供する事が出来、さらに幅広い用途に使用することが可能となる利点を有する。
本発明によるアレルゲン沈静化剤で使用する非水溶性酸化チタン微粒子もしくはジルコニウム化合物被覆酸化チタン微粒子の含有量は０．１〜５０重量％が望ましい。０．１重量％未満であると、十分な性能が得られず、５０重量％を超えると、粒子の分散性の問題で再凝集が起こるためである。より望ましくは１〜３０重量％である。
【０００８】
本発明で使用する非水溶性酸化チタン微粒子もしくはジルコニウム化合物被覆酸化チタンの粒子径は５μｍ以下であることが望ましい。粒子径が５μｍを超えると粒子の分散性の問題で再凝集が起こるためである。より望ましくは５０ｎｍ以下であることが望ましい。
本発明で使用するジルコニウム化合物は、二酸化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、酸塩化ジルコニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、水酸化ジルコニウム、アルカリ金属変性水酸化ジルコニウム等を用いることが出来、その使用量は非水溶性酸化チタン重量に対し１〜１００重量％が望ましい。ジルコニウム化合物が１重量％以下で行うと十分な性能が得られず、また１００重量％以上で行うと、粒子の分散性の問題で再凝集が起こるためである。より望ましくは１０〜５０重量％が望ましい。
【０００９】
本発明のアレルゲン沈静化剤は、水を主成分とした溶媒中に溶解もしくは分散されていることが望ましく、最も望ましくは完全水溶媒である。但し必要に応じてアルコールなどの低沸点溶媒、防腐剤、抗菌剤、分散剤、界面活性剤、脱臭剤等を助剤として使用することが出来る。
本発明で使用するシリコン樹脂は、シリコン樹脂、シリコンアクリル共重合樹脂、シリコンウレタン共重合樹脂などシリコンを含有する樹脂のうち、少なくとも一種類併用することが望ましい。
【００１０】
本発明で使用するシランカップリング剤は、樹脂などの有機質材料と化学結合する反応基として、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリロキシ基、アクリロキシ基、アミノ基、ウレイド基、クロロプロピル基、メルカプト基、スルフィド基、イソシアネート基のうち少なくとも一種類を含有し、更に無機質材料と化学結合する反応基として、メトキシ基、エトキシ基のうち少なくとも一種類を含有し、それぞれの反応基の間に珪素を含有する物質である。例えばビニルトリメトキシシラン、２−（３，４−エポキシシクロヘキシル）エチルトリメトキシシラン、３−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ｐ−スチリルトリメトキシシラン、３−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、Ｎ−２−（アミノエチル）−３−アミノプロピルトリメトキシシラン３−アミノプロピルトリメトキシシラン、３−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどが上げられ、このうち少なくとも一種類併用することが望ましい。
【００１１】
本発明で使用するアレルゲン沈静化剤は、上記に記載のシリコン樹脂、シランカップリング剤のうち少なくとも一種類併用したものを繊維、繊維布帛表面に付着あるいは固着加工する。またシリコン樹脂もしくはシランカップリング剤を併用する際、本発明の目的の１つであるアレルゲン沈静化効果を高める為には、樹脂の使用量は非水溶性酸化チタン微粒子もしくは、ジルコニウム化合物被覆酸化チタン微粒子重量に対し１〜１００重量％が望ましい。樹脂の使用量が１重量％以下で行なうと、十分な耐久性が得られず、１００重量%以上で行なうと、樹脂で非水溶性酸化チタン微粒子及びジルコニウム化合物被覆酸化チタン微粒子が被覆されるためアレルゲン沈静化効果が得られず、１重量％以下であると繊維付着性が低下し、耐洗濯性が付与できない。さらに望ましくは２０〜５０重量％が望ましい。
【００１２】
本発明で使用するアレルゲン沈静化剤を加工する方法として、浸漬法、パッディング法、スプレー法、捺染法、コーティング法などがあるが、パディング法が最も望ましく、その加工方法は上記記載のアレルゲン沈静化剤を含浸させた後、マングルで７０〜１００重量％になるように絞った後、乾燥機にて１１０℃〜１３０℃で乾燥後、次いでベーキングマシンにて１５０℃〜１８０℃で熱処理を行なうことが望ましい
本発明のアレルゲン沈静化剤は通常の繊維布帛における仕上加工剤として用いるのが一般的であるが、エアゾールのスプレータイプにして、寝具類、布団、カーペット、カーシート類、エアコン・フィルターなどにしてからスプレーで付与しても良い。その際の水性分散液（サスペンジョン、エマルジョン等）、又は有機溶剤を含むエアゾール組成物の形態を採用することが出来る。すなわち本発明の加工剤は水性分散液として提供されても、また、前記水性分散液とともに有機溶剤及び／又は噴霧剤を含むスプレーやエアゾール組成物として提供されても良い。
【００１３】
本発明で使用するスプレーは、前記アレルゲン沈静化剤を公知のスプレー容器に充填してなるものであり、好ましい態様のアレルゲン沈静化剤を充填してなる物がより好適である。
スプレー容器の種類には特に限定はないが、使用時の簡便性の観点からトリガー式スプレー容器、ポンプ式スプレー容器、蓄圧式スプレー容器などが好ましい。スプレー容器の内容量は、使用性などの観点から、通常、１０〜１０００ｍｌ程度、より好ましくは５０〜５００ｍｌ程度である。
前記アレルゲン沈静化剤のスプレー容器への充填は、公知の方法に従って行なうことができる。
【００１４】
本発明のアレルゲン沈静化剤は、織布、不織布などの繊維製品、マスク・フィルターなどのろ過部材、既に汚染された環境、物品のみならず、床、壁面等の家屋構成部材にあらかじめ塗布、噴霧、担持しておくことも好適である。
本発明において適用可能なアレルゲンは沈静化効果が確認できるものであれば特に制限は無いが、イヌ、ネコ、鳥の体毛等の家畜由来、スギ、ブタクサ等の植物由来、ダニ、ゴキブリ本体もしくは排泄物などの動植物蛋白質を例示することが出来る。
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。実施例で用いた評価法を以下に示す。
【００１５】
アレルゲン沈静化作用の評価
Ｄｆｂ抗原（ダニ虫体粗抗原）が、１５μｇ／ｍ２前後（マイティチェッカー表記：＋）になるように抽出液を調整し試験布２ｇを、個別の瓶にいれ抽出液１０ｍｌに浸す。３０分放置後マイティチェッカー（ダニアレルゲン検知用キット：住化エンビロサイエンス社製）により測定し、判定用色見本にて比較判定する。マイティチェッカーによるダニアレルゲン量の判定基準を以下の表１に示した。
【００１６】
臭気判定
臭気判定は加工上がりの生地及び、加工布をチャック付透明ビニール袋に入れ日光に1週間あてたものの、臭いをかいで、臭気の有無を判定した。
【００１７】
加工着色
加工着色は加工上がりの生地を、目視にて、着色の有無を判定した。
【００１８】
ＮＯｘによる変色
ＪＩＳ Ｌ−０８５５に準じて試験を行い、目視にて、変色の有無を判定した。
【００１９】
洗濯条件
ＪＩＳ Ｌ−０２１７ １０３法 に準じて洗濯５回後、つり干し乾燥を行った。
【００２０】
以下詳細は実施例により説明する。なお実施例中で用いて％は重量％を意味する。
【実施例１】
【００２１】
分散容器に粒子径１５ｎｍ酸化チタン２０％、炭酸ジルコニウムアンモニウム３％，分散剤（信越化学工業社製：ＰＳＡ−２０４）０．５％、予め熱湯で溶解した１０％キサンタンガム水溶液を３５％入れ、残りを水で希釈し、ホモミキサーにて乳化分散を行い、試験液１を得た。試験液１を１０％、残りを水で希釈した加工液にポリエステル１００％布を含浸し、マングルでピックアップが１００％になるように絞った後、ピンテンター乾燥機にて１１０℃で２分間乾燥後、次いで該布帛をピンテンターベーキングマシンにて１６０℃で２分間、熱処理を施し、加工製品とした。この加工製品の初期及び洗濯５回後のアレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、初期はマイナス（−）でアレルゲンが沈静化されていたが、洗濯５回後はプラス（+）でアレルゲン沈静化されていなかった。臭気判定の結果初期及び経時での異臭の発生はなく、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった
【実施例２】
【００２２】
分散容器に粒子径１５ｎｍジルコニア被覆酸化チタン２０％、分散剤(信越化学工業社製：ＰＳＡ−２０４)０．５％、予め熱湯で溶解した１０％キサンタンガムを３５％入れ、残りを水で希釈し、ホモミキサーにて乳化分散を行い、試験液２を得た。この試験液２を１０％、残りを水で希釈した加工液にポリエステル１００％布を含浸し、マングルでピックアップが１００％になるように絞った後、ピンテンター乾燥機にて１１０℃で２分間乾燥後、次いで該布帛をピンテンターベーキングマシンにて１６０℃で２分間、熱処理を施し、加工製品とした。この加工製品の初期及び洗濯５回後のアレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、初期はマイナス（−）でアレルゲンが沈静化されていたが、洗濯５回後はプラス（+）でアレルゲン沈静化効果されていなかった。臭気判定の結果初期及び経時での異臭の発生はなく、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった。
【実施例３】
【００２３】
試験液１を１０％と、シリコン樹脂（大原パラヂウム化学社製：ＰＳ−２００、固形分２０％、水分散液）を３％、残りを水で希釈した加工液にポリエステル１００％布を含浸し、マングルでピックアップが１００％になるように絞った後、ピンテンター乾燥機にて１１０℃で２分間乾燥後、次いで該布帛をピンテンターベーキングマシンにて１６０℃で２分間、熱処理を施し、加工製品とした。この加工製品の初期及び洗濯５回後のアレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、初期及び洗濯５回後、共にマイナス（−）でアレルゲンが沈静化され、臭気判定の結果初期及び経時での異臭の発生はなく、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった。
【実施例４】
【００２４】
試験液２を１０％、シリコン樹脂（大原パラヂウム化学社製：パラレヂンＰＳ−２００、固形分２０％、水分散液）３％、残りを水で希釈した加工液にポリエステル１００％布を含浸し、マングルでピックアップが１００％になるように絞った後、ピンテンター乾燥機にて１１０℃で２分間乾燥後、次いで該布帛をピンテンターベーキングマシンにて１６０℃で２分間、熱処理を施し、加工製品とした。この加工製品の初期及び洗濯５回後のアレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、初期及び洗濯５回後、共にマイナス（−）でアレルゲンが沈静化され、臭気判定の結果初期及び経時での異臭の発生はなく、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった。
【実施例５】
【００２５】
試験液２を１０％、シリコン樹脂（大原パラヂウム化学社製：パラレヂンＰＳ−２００、固形分２０％、水分散液）３％、シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製：ＫＢＭ−６０３)０．１％、残りを水で希釈した加工液にポリエステル１００％布を含浸し、マングルでピックアップが１００％になるように絞った後、ピンテンター乾燥機にて１１０℃で２分間乾燥後、次いで該布帛をピンテンターベーキングマシンにて１６０℃で２分間、熱処理を施し、加工製品とした。この加工製品の初期及び洗濯５回後のアレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、初期及び洗濯５回後共にマイナス（−）でアレルゲンが沈静化され、臭気判定の結果初期及び経時での異臭の発生はなく、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった。
【実施例６】
【００２６】
試験液２を１０％、シリコンアクリル樹脂（大原パラヂウム化学社製：パラゾールＧＨ−Ｓ、固形分２７％、水分散液）３％、残りを水で希釈した加工液にポリエステル１００％布を含浸し、マングルでピックアップが１００％になるように絞った後、ピンテンター乾燥機にて１１０℃で２分間乾燥後、次いで該布帛をピンテンターベーキングマシンにて１６０℃で２分間、熱処理を施し、加工製品とした。この加工製品の初期及び洗濯５回後のアレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、初期及び洗濯５回後、共にマイナス（−）でアレルゲンが沈静化され、臭気判定の結果初期及び経時での異臭の発生はなく、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった。
【実施例７】
【００２７】
試験液２を１０％、シリコンアクリル樹脂（大原パラヂウム化学社製：パラゾールＧＨ−Ｓ、固形分２７％、水分散液）３％、シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製：ＫＢＭ−６０３)０．１％、残りを水で希釈した加工液にポリエステル１００％布を含浸し、マングルでピックアップが１００％になるように絞った後、ピンテンター乾燥機にて１１０℃で２分間乾燥後、次いで該布帛をピンテンターベーキングマシンにて１６０℃で２分間、熱処理を施し、加工製品とした。この加工製品の初期及び洗濯５回後のアレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、初期及び洗濯５回後共にマイナス（−）でアレルゲンが沈静化され、臭気判定の結果初期及び経時での異臭の発生はなく、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった。
【００２８】
（比較例１）
ポリエステル１００％布を水で含浸し、マングルでピックアップが１００％になるように絞った後、ピンテンター乾燥機にて１１０℃で２分間乾燥後、次いで該布帛をピンテンターベーキングマシンにて１６０℃で２分間、熱処理を施し、加工製品とした。この加工製品のアレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、測定結果はプラス（＋）でアレルゲンが沈静化されていなかった、また臭気判定の結果初期及び経時での異臭の発生はなく、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった。
【００２９】
（比較例２）
茶抽出物（株式会社伊藤園社製：テアフラン３０Ａ）５％水溶液を比較試験液１とした。この比較試験液１０％溶液にポリエステル１００％布を含浸し、マングルでピックアップが１００％になるように絞った後、ピンテンター乾燥機にて１１０℃で２分間乾燥後、次いで該布帛をピンテンターベーキングマシンにて１６０℃で２分間、熱処理を施し、加工製品とした。この加工製品の初期及び洗濯５回後アレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、初期はマイナス（−）でアレルゲンが沈静化されていたが、洗濯５回後はプラス（＋）でアレルゲン沈静化効果が低下していた。また臭気判定の結果初期及び経時で茶独特の臭気がし、加工着色及びＮＯｘによる変色が見られた。
【００３０】
（比較例３）
実施例２で得た試験液２を１０％、アクリル酸エステル樹脂(大原パラヂウム化学社製：ＧＨ−３５Ｅ、固形分４５％、水分散液)２％、残りを水で希釈した加工液にポリエステル１００％布を含浸し、マングルでピックアップが１００％になるように絞った後、ピンテンター乾燥機にて１１０℃で２分間乾燥後、次いで該布帛をピンテンターベーキングマシンにて１６０℃で２分間、熱処理を施し、加工製品とした。この加工製品のアレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、測定結果はマイナス（−）でアレルゲンが沈静化されていたが、臭気判定の結果初期は無臭であったが経時での異臭が発生した、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった。
実施例１、２、３、４、５、６、７、比較例１、２、３の試験結果を表２に示した。
【実施例８】
【００３１】
下記成分を噴射用耐圧ガラス容器に入れ、エアゾール組成物を製造した。
実施例２で得た試験液２ ５％
エタノール ２５％
精製水 バランス
ジメチルエーテル／ＬＰＧ（混合ガス５／５） ８％
このエアゾール組成物をポリエステル１００％布にスプレー加工し、得られた製品について、アレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、測定結果はマイナス（−）でアレルゲンが沈静化され、臭気判定の結果初期及び経時での異臭の発生はなく、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった。
【００３２】
（比較例４）
下記成分を噴射用耐圧ガラス容器に入れ、エアゾール組成物を製造した。
エタノール ２５％
精製水 バランス
ジメチルエーテル／ＬＰＧ（混合ガス５／５） ８％
このエアゾール組成物をポリエステル１００％布にスプレー加工し、得られた製品について、アレルゲン沈静化効果をマイティチェッカーにより測定したところ、測定結果はプラス（＋）でアレルゲンが沈静化されていなかった、また臭気判定の結果初期及び経時での異臭の発生はなく、加工着色及びＮＯｘによる変色は見られなかった。
実施例８と比較例４の結果を表３に示した。
【００３３】
【表１】
【００３４】
【表２】
【００３５】
【表３】
【産業上の利用可能性】
【００３６】
本発明によると、臭気ならびに着色が無く、効果的なアレルゲン沈静化剤を提供でき、衣類、寝具類、布団中綿類など織布、また使い捨てマスク類、カーペット、カーシート類エアコン・フィルターなどの不織布などの繊維製品、およびスプレー、エアゾール品、床、壁面等の家屋構成部材、臭気や、着色が問題となる分野においても広く利用することができ、産業界に寄与すること大である。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
ジルコニウム化合物と非水溶性酸化チタンの複合微粒子を含有することを特徴とするアレルゲン沈静化剤。
【請求項２】
ジルコニウム化合物で被覆された非水溶性酸化チタン微粒子を含有することを特徴とするアレルゲン沈静化剤。
【請求項３】
請求項１又は請求項２に記載のアレルゲン沈静化剤、もしくはそれとシリコン樹脂、シランカップリング剤のうち少なくともいずれか１種類を併用したものを繊維表面に付着または固着することを特徴としたアレルゲン沈静化加工法。
【請求項４】
請求項１又は請求項２に記載のアレルゲン沈静化剤、もしくはそれとシリコン樹脂、シランカップリング剤のうち少なくともいずれか１種類を併用したものを表面に付着または固着した繊維。
【請求項５】
請求項１又は請求項２に記載のアレルゲン沈静化剤をスプレー容器に充填してなるアレルゲン沈静化スプレー。
【請求項１】
ジルコニウム化合物と非水溶性酸化チタンの複合微粒子を含有することを特徴とするアレルゲン沈静化剤。
【請求項２】
ジルコニウム化合物で被覆された非水溶性酸化チタン微粒子を含有することを特徴とするアレルゲン沈静化剤。
【請求項３】
請求項１又は請求項２に記載のアレルゲン沈静化剤、もしくはそれとシリコン樹脂、シランカップリング剤のうち少なくともいずれか１種類を併用したものを繊維表面に付着または固着することを特徴としたアレルゲン沈静化加工法。
【請求項４】
請求項１又は請求項２に記載のアレルゲン沈静化剤、もしくはそれとシリコン樹脂、シランカップリング剤のうち少なくともいずれか１種類を併用したものを表面に付着または固着した繊維。
【請求項５】
請求項１又は請求項２に記載のアレルゲン沈静化剤をスプレー容器に充填してなるアレルゲン沈静化スプレー。
【公開番号】特開２０１０−６５１１４（Ｐ２０１０−６５１１４Ａ）
【公開日】平成２２年３月２５日（２０１０．３．２５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−２３１９６６（Ｐ２００８−２３１９６６）
【出願日】平成２０年９月１０日（２００８．９．１０）
【出願人】（３９１０３４９３８）大原パラヂウム化学株式会社 (19)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２２年３月２５日（２０１０．３．２５）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年９月１０日（２００８．９．１０）
【出願人】（３９１０３４９３８）大原パラヂウム化学株式会社 (19)
【Ｆターム（参考）】
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