説明

アレーンの陽極クロス脱水素二量化法

本発明は、部分フッ化および/または過フッ化されたメディエータおよび導電性の塩の存在下に、置換されたフェノールをアレーンと陽極クロス脱水素二量化することにより行われるビアリールの製造方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分フッ化および/または過フッ化されたメディエータおよび導電性の塩の存在下に、置換されたフェノールをアレーンと共に陽極クロス脱水素二量化することにより行われるビアリールの製造方法に関する。
【0002】
アレーンの酸化クロスカップリングは、極めて重要な研究分野であり、(a)L.J.Goossen、G.Deng、Guojun、L.M.Levyにより、Science 2006、313、662に、D.R.Stuart、K.FagnouによりScience 2007、316、1172に、A.Jean、J.Cantat、D.Birard、D.Bouchu、S.CanesiによりOrg.Lett.2007、9、2553に、R.Li、L.Jiang、W.LuによりOrganometallics 2006、25、5973に、A.Timothy、N.R.Dwight、D.C.Dagmara、J.Ryan、D.BrentonによりOrg.Lett.2007、9、3137に、およびK.L.Hull、M.S.SanfordによりJ.Am.Chem.Soc.2007、129、11904に記載されている。しかし、この関連において、電気化学的な方法は多数の潜在的な利点にもかかわらず未だ記載されていない。
【0003】
アレーンの酸化クロスカップリングの一般的な戦略は、試薬と、カップリング相手(AおよびB)の成分(A)との反応性を利用して中間体(I)を形成するものである。その後の工程で、もう一方の成分(B)は、生じた中間体(I)により攻撃される。これまでは、反応カスケードへの第一の成分(A)の導入は、強力な酸化作用を有する金属イオン、たとえばPd2+のCH結合への挿入を可能にする、特殊な隣接基によるものであるかであった。その後のクロスカップリングは、多くの場合、ハロゲン置換された反応相手(B)を用いるものである。遷移金属に対するインドールおよびフッ化アレーンの特殊な反応性もまた、このような変換のために利用することができる。これに対して、超原子価ヨウ素化合物、たとえばPIFA(フェニルヨウ素ビス(トリフルオロアセテート))および誘導体は、T.Dohi、Motoki Ito、K.Morimoto、M.Iwata、Y.Kita、Angew.Chem.2008、120、1321、およびAngew.Chem.Int.Ed.2008、47、3787に記載されているように、ルイス酸を用いた活性化によりTT系に配位し、これにより電子伝達によって連続反応を引き起こすことができる。両アプローチの欠点は、それぞれ極めて限定された物質範囲を反応することができるにすぎず、かつ変換の際に比較的大量の、かつ多くの場合、毒性でもある廃棄物が生じることである。さらに、試薬が高価であることもその特徴である。
【0004】
フェノールとアニリンまたはその他の電子リッチな芳香族成分との酸化クロスカップリングは、若干のケースにおいて、G.Satori、R.Maggi、F.Bigi、A.Arienti、G.Casnatiにより、Tetrahedron、1992、43、9483に記載されているような、特定のルイス酸添加剤により、または先行する同時結晶化により達成することができる。後者の例では、M.Smrcina、S.Vyskocil、A.B.Abbott、P.KocovskyによりOrg.Chem.1994、59、2156に、K.Ding、Q.Xu.Wang、J.Liu、Z.Yu、B.Du、Y.Wu、H.Koshima、T.MatsuuraによりJ.Chem.Soc.、Chem.Commun.1997、693に、およびS.Vyskocil、M.Smrcina、B.Maca、M.Polasek、T.A.Claxto、A.B.Abbott、P.KocosvyによりJ.Chem.Soc.、Chem.Commun.1998、586に記載されているように、水素架橋による前構造化が行われる。
【0005】
ホウ素ドープされたダイヤモンド電極(BDD)を用いた、導電性の塩の使用下でのフェノールの対称カップリングは、A.Kirste、M.Nieger、I.M.Malkowsky、F.Stecker、A.Fischer、S.R.WaldvogelによりChem.Eur.J.2009、15、2273およびWO2006/077204に記載されたように実現可能であることが判明した。その他の炭素電極およびメディエータとしてのフッ化カルボン酸の使用下で、選択的かつ効率的に、たとえば2,4−ジメチルフェノールの効率的なビフェノールカップリングを達成することができる。溶剤不含の方法は、A.Fischer、I.M.Malkowsky、F.Stecker、A.Kirste、S.R.WaldvogelによりAnodic Preparation of Biphenols on BDD electrodesおよびEP08163356.2に記載されたように、分割されていない電解セルを必要とするのみである。
【0006】
本発明の課題は、高価な触媒を使用せず、かつ特殊な脱離基を有する化合物を使用する必要なしに、かつ毒性の廃棄物を生じることなく、置換されたアリールアルコールとアレーンとの陽極クロス脱水素二量化を可能にする方法を提供することである。
【0007】
前記課題は、置換されたアリールアルコールを、部分フッ化および/または過フッ化されたメディエータ、および少なくとも1の導電性の塩の存在下に、アレーンにより置換されたアリールアルコールを陽極で脱水素二量化してクロスカップリング生成物を形成するビアリールの製造方法によって解決される。
【0008】
本発明による方法は、使用されるアリールアルコールのOH基が、芳香族化合物に直接に結合している場合に有利である。
【0009】
本発明による方法は、使用される置換されたアリールアルコールが、単環式または二環式であってもよい場合に有利である。
【0010】
本発明による方法は、使用される置換されたアレーンが、単環式または二環式であってもよい場合に有利である。
【0011】
本発明による方法は、二量化が、アリールアルコールのアルコール基に対してオルト位で行われる場合に有利である。
【0012】
本発明による方法は、使用されるメディエータが、部分フッ化および/または過フッ化されたアルコールおよび/または酸である場合に有利である。
【0013】
本発明による方法は、メディエータとして、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノールおよび/またはトリフルオロ酢酸を使用する場合に有利である。
【0014】
本発明による方法は、導電性の塩として、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、テトラ(C1〜C6−アルキル)アンモニウム塩の群から選択されているものを使用する場合に有利である。
【0015】
本発明による方法は、導電性の塩の対イオンが、硫酸イオン、硫酸水素イオン、アルキル硫酸イオン、アリール硫酸イオン、ハロゲン化物イオン、リン酸イオン、炭酸イオン、アルキル硫酸イオン、アルキル炭酸イオン、硝酸イオン、アルコラート、テトラフルオロ硼酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオンおよび過塩素酸イオンの群から選択されている場合に有利である。
【0016】
本発明による方法は、電気分解のために他の溶剤を使用しない場合に有利である。
【0017】
本発明による方法は、ダイヤモンド陽極およびニッケル陰極を使用する場合に有利である。
【0018】
本発明による方法は、ダイヤモンド電極が、ホウ素ドープされたダイヤモンド電極である場合に有利である。
【0019】
本発明による方法は、電気分解のためにフローセルを使用する場合に有利である。
【0020】
本発明による方法は、1〜1000mA/cm2の電流密度を使用する場合に有利である。
【0021】
本発明による方法は、電気分解を−20〜100℃の範囲の温度および標準圧力で実施する場合に有利である。
【0022】
本発明による方法は、アリールアルコールとして、4−メチルグアヤコールを使用する場合に有利である。
【0023】
アリールアルコールとは、本発明の範囲では、ヒドロキシル基が、芳香族環に直接に結合している芳香族アルコールであると理解される。
【0024】
アリールアルコールの基礎となっている芳香族化合物は、単環式または二環式であってよい。有利には芳香族化合物は、式Iにより記載される単環式(フェノール誘導体)であるか、または式IIもしくはIIIにより記載される二環式(ナフトール誘導体)であるが、特に単環式である。アリールアルコールの基礎となっている芳香族化合物のsp2−ハイブリダイズされた環炭素原子はさらに、窒素原子により置換されていてもよい(ピリジン誘導体、キノリン誘導体もしくはイソキノリン誘導体)。
【0025】
【化1】

【0026】
アリールアルコールはさらにべつの置換基R1〜R7を有していてもよい。これらの置換基R1〜R7は、相互に無関係に、C1〜C10−アルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C10−アルコキシ基、酸素もしくは硫黄により中断されたアルキレン基もしくはアリーレン基、C1〜C10−アルコキシカルボキシル、アミノ、ニトリル、ニトロ、ならびにC1〜C10−アルコキシカルバモイルの群から選択されている。有利には置換基R1〜R7は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、トリフルオロメチル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ベンジリデン、アミノ、ニトリル、ニトロの群から選択されている。特に有利には、置換基R1〜R7は、メチル、メトキシ、メチレン、エチレン、トリフルオロメチル、フッ素およびホウ素の群から選択されている。とりわけ有利であるのは、4−アルキルならびに2.4−ジアルキル置換されたフェノールである。
【0027】
本発明による電気化学的二量化のための基質として、原則として全てのアレーンは、その立体構造および立体的な要求に基づいて、クロス脱水素二量化可能である限りにおいて適切である。アレーンとは、本発明の範囲では、芳香族の炭化水素化合物およびヘテロ芳香族化合物であると理解される。この場合、一般式IV〜VIIIの炭化水素化合物およびヘテロ芳香族化合物が有利である。アレーンの基礎となっている芳香族化合物は、単環式または多環式であってよい。有利であるのは、単環式の芳香族化合物(ベンゼン誘導体)または二環式の芳香族化合物(ナフタリン誘導体)であり、特に単環式のものである。アレーンは、さらに別の置換基を有していてもよい。有利なアレーンは、式IV〜VIIIのものである。さらに、式IVおよびVにより記載されるアレーンのsp2ハイブリダイズされた環炭素原子は、さらに窒素原子により置換されていてもよい(ピリジン誘導体、キノリン誘導体もしくはイソキノリン誘導体)。
【0028】
【化2】

【0029】
これらは、置換基R8〜R37を有しており、これらは相互に無関係に、C1〜C10−アルキル基、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜C10−アルコキシ基、酸素もしくは硫黄により中断されているアルキレン基もしくはアリーレン基、C1〜C10−アルコキシカルボキシル基、アミノ基、ニトリル基、ニトロ基、ならびにC1〜C10−アルコキシカルバモイル基の群から選択される。有利には置換基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、トリフルオロメチル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、ベンジリデン、アミノ、ニトリル、ニトロの群から選択されている。置換基は特に有利には、メチル、メトキシ、メチレン、エチレン、トリフルオロメチル、フッ素および臭素の群から選択されている。とりわけ有利にはアレーンは、1回もしくは複数回置換されたベンゼン誘導体、1回もしくは複数回置換されたナフタリン誘導体、1回もしくは複数回置換されたベンゾジオキソール誘導体、1回もしくは複数回置換されたフラン誘導体、1回もしくは複数回置換されたインドール誘導体の群から選択されている。
【0030】
ビアリールの製造は、電気化学的に行い、その際、相応するアリールアルコールを陽極酸化する。本発明による方法を以下では電気化学的二量化(Elektrodimerisierung)と呼ぶ。意外なことに、本発明による方法によりメディエータの使用下で、ビアリールが選択的に、かつ高い収率で生じることが判明した。さらに、本発明による方法により、分割されていないセル構造ならびに溶剤不含の方法を適用することができることが判明した。所望のビアリールの後処理および取得は、極めて簡単な構成となっている。反応が終了した後で、電解液を一般的な分離法により後処理する。このために、電解液は一般にまず蒸留され、かつ個々の化合物は異なった留分の形で分離されて取得される。さらなる精製は、たとえば結晶化、蒸留、昇華またはクロマトグラフィーにより行うことができる。
【0031】
本発明による方法のために、ダイヤモンド電極を使用することができる。このダイヤモンド電極は、担体材料上に、1もしくは複数のダイヤモンド層を施与することにより生じる。可能な担体材料として、ニオブ、ケイ素、タングステン、チタン、炭化ケイ素、タンタル、グラファイト、またはセラミックの担体、たとえば亜酸化チタンが適切である。しかし本発明による方法にとって有利であるのは、ニオブ、チタン、またはケイ素からなる担体であり、とりわけ有利であるのは、ニオブからなる担体である。
【0032】
本発明による方法のために、電極は、鉄、鋼、ステンレス鋼、ニッケル、貴金属、たとえば白金、グラファイト、炭素材料、たとえばダイヤモンド電極の群から選択されている。陽極材料として、たとえば貴金属、たとえば白金、または金属酸化物、たとえばルテニウムまたは酸化クロム、またはRuOxTiOxのタイプの混合酸化物、ならびにダイヤモンド電極が適切である。有利であるのは、グラファイト電極、炭素電極、ガラス炭素電極、またはダイヤモンド電極であり、特に有利であるのはダイヤモンド電極である。陽極のために有利であるのは、別の元素によりドープされているダイヤモンド電極である。ドーピング元素として、ホウ素および窒素が有利である。本発明による方法では、ホウ素ドープされたダイヤモンド電極(BDD電極)が、陽極として特に有利である。
【0033】
この場合、陰極材料は、鉄、鋼、ステンレス鋼、ニッケル、貴金属、たとえば白金、グラファイト、炭素、ガラス炭素材料およびダイヤモンド電極の群から選択されている。陰極は有利にはニッケル、鋼およびステンレス鋼の群から選択されている。特に有利には陰極はニッケルからなる。
【0034】
メディエータとして、本発明による方法では、部分フッ化および/または過フッ化されたアルコールおよび/または酸、有利には過フッ化されたアルコール、ならびにカルボン酸、とりわけ有利には、1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノールまたはトリフルオロ酢酸を使用する。
【0035】
電解質中でその他の溶剤は不要である。
【0036】
電気分解は、当業者に公知の慣用の電解セル中で実施する。適切な電解セルは、当業者に公知である。有利には分割されていないフローセル中で連続的に、またはビーカーガラスセル中で不連続的に実施する。
【0037】
とりわけ適切であるのは、バイポーラー接続されたキャピラリー分解セルまたはプレート積層型分解セルであり、これらの場合、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、Electrochemistry、1999電子版、第6版、Wiley−VCH Weinheim(doi:10.1002/143560077.a09_183.pub2)およびElectrochemistry、第3.5章、special cell designsならびに第5章、Organic Electrochemisry、第5.4.3.2節、Cell Designに記載されているように、電極は、平行に配置されたプレートとして構成されている。
【0038】
方法を実施する電流密度は、一般に1〜1000mA/cm2、有利には5〜100mA/cm2である。温度は通常、−20〜100℃、有利には10〜60℃である。一般に標準圧力で作業する。これより高い圧力は、高温で作業する場合に、出発化合物もしくは補助溶剤もしくはメディエータの沸騰を回避するために有利に適用される。
【0039】
電気分解を実施するために、アリールアルコール化合物およびアレーンを適切な溶剤中に溶解する。当業者に公知の慣用の溶剤が適切であり、極性のプロトン性、および極性の非プロトン性溶剤の群からの溶剤が有利である。特に有利には、アリールアルコール化合物自体が、溶剤および試薬として役立つことである。極性のプロトン性溶剤の例は、ニトリル、アミド、カーボネート、エーテル、尿素、塩化炭化水素を含む。特に有利な極性の非プロトン性溶剤の例は、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、プロピレンカーボネート、およびジクロロメタンを含む。極性の非プロトン性溶剤の例は、アルコール、カルボン酸、およびアミドを含む。特に有利な極性のプロトン性溶剤の例は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールおよびヘキサノールを含む。これらは部分的に、または完全にハロゲン化されていてもよく、たとえば1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)またはトリフルオロ酢酸(TFA)である。
【0040】
場合により電解液に慣用の補助溶剤を添加する。これは、有機化学において慣用の、高い酸化電位を有する不活性溶剤である。たとえばジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、アセトニトリルまたはジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0041】
電解液中に含有されている導電性の塩としては、一般にアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、テトラ(C1〜C6−アルキル)アンモニウム塩、有利にはトリ(C1〜C6−アルキル)メチルアンモニウム塩である。対イオンとして、硫酸イオン、硫酸水素イオン、アルキル硫酸イオン、アリール硫酸イオン、ハロゲン化物イオン、リン酸イオン、炭酸イオン、アルキル硫酸イオン、アルキル炭酸イオン、硝酸イオン、アルコラート、テトラフルオロ硼酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオンおよび過塩素酸イオンが考えられる。さらに、前記のアニオンから誘導される酸が、導電性の塩として考えられる。とりわけ有利であるのは、メチルトリブチルアンモニウムメチルスルフェート(MTBS)、メチルトリエチルアンモニウムメチルスルフェート(MTES)、メチルトリプロピルメチルアンモニウムメチルスルフェート、またはテトラブチルアンモニウム、テトラフルオロボレート(TBABF)である。
【0042】
実施例
例1:BDDアノードを用いた、ヘキサフルオロイソプロパノールによる4−メチルグアヤコールおよび置換されたベンゼンの陽極酸化
【化3】

【0043】
フランジを介して、BDD被覆したシリコンプレートに取り付けられ、陽極として接続されている電解セルに、第1表に記載の10:1の物質量比での置換されたベンゼンおよび4−メチルグアヤコールからなる電解質、メチルトリエチルアンモニウムメチルスルフェート(MTES)0.68gおよびヘキサフルオロイソプロパノール30mLを装入する。その際、陽極表面は完全に電解質で被覆されている。陰極として、ニッケル金網を使用し、これは電解質中に、BDD陽極から1cmの距離をおいて浸漬されている。セルを砂浴中で温度処理する(50℃)。電気分解の実施は、定電流電解を制御しながら4.7mA/cm2の電流密度で行う。反応は、設定された電荷限界(4−メチルグアヤコール1モルあたり1F)に達成した後に中断する。冷却した反応混合物を約20mLのトルエンと共にフラスコに移し、ここから回転蒸発器を用いてトルエンおよび使用されたフッ化溶剤をほぼ完全に除去する。過剰の原料は、減圧下でのフラッシュ蒸留により回収することができる。蒸留の残留物をシリカゲル60を用いたカラムクロマトグラフィーにより後処理し、かつ引き続き、少量の冷n−ヘプタンを用いて洗浄することにより、生成物が、無色の結晶質固体として単離される。
【0044】
クロスカップリング生成物の分析データ
2−ヒドロキシ2′,3−ジメトキシ−5,5′−ジメチルビフェニル:

2−ヒドロキシ−2′,3,5′−トリメトキシ−5−メチルビフェニル:

2−ヒドロキシ−3,4′−ジメトキシ−3′,5−ジメチルビフェニル:

2−ヒドロキシ−2′,3,4′,6′−テトラメトキシ−5−メチルビフェニル:

2−ヒドロキシ−2′,3,4′,5′−テトラメトキシ−5−メチルビフェニル:

2−ヒドロキシ−2′,3,3′,4′−テトラメトキシ−5,6′−ジメチルビフェニル:

5′−ブロモ−2−ヒドロキシ−2′,3,4′−トリメトキシ−5−メチルビフェニル:

【0045】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビアリールの製造方法であって、置換されたアリールアルコールを、部分フッ化および/または過フッ化されたメディエータおよび少なくとも1の導電性の塩の存在下に、アレーンと共に陽極脱水素二量化してクロスカップリング生成物を形成する、ビアリールの製造方法。
【請求項2】
使用されるアリールアルコールのOH基が、芳香族化合物に直接に結合している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
使用される置換されたアリールアルコールが、単環式または二環式であってよい、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
使用される置換されたアレーンが、単環式または二環式であってよい、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
二量化を、アリールアルコールのアルコール基に対してオルト位で行う、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
使用されるメディエータが、部分フッ化および/または過フッ化されたアルコールおよび/または酸である、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
メディエータとして、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノールおよび/またはトリフルオロ酢酸を使用する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
導電性の塩として、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、テトラ(C1〜C6−アルキル)アンモニウム塩の群から選択されるものを使用する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
導電性の塩の対イオンが、硫酸イオン、硫酸水素イオン、アルキル硫酸イオン、アリール硫酸イオン、ハロゲン化物イオン、リン酸イオン、炭酸イオン、アルキル硫酸イオン、アルキル炭酸イオン、硝酸イオン、アルコラート、テトラフルオロ硼酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオンおよび過塩素酸イオンの群から選択されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
電気分解のために、他の溶剤を使用しない、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
ダイヤモンド陽極と、ニッケル陰極とを使用する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
ダイヤモンド電極が、ホウ素ドープされたダイヤモンド電極である、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
電気分解のために、フローセルを使用する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
1〜1000mA/cm2の電流密度を使用する、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
電気分解を、−20〜100℃の範囲の温度および標準圧力で実施する、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
アリールアルコールとして、4−メチルグアヤコールを使用する、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2012−528938(P2012−528938A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513594(P2012−513594)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/057617
【国際公開番号】WO2010/139685
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】