説明

アロファネートの製造プロセス、アロファネート、及びアロファネートを含有する低粘度組成物

本発明は、アロファネートの製造プロセス及びアロファネートに関し、更にアロファネートを含有する、低粘度のポリイソシアネート組成物であって、2成分を有する、コーティング組成物、特にペンキを意図している。本発明は、特に、1(又はそれ以上)のイソシアネートと、エーテル又はポリエーテル基を含有するモノアルコールとの反応であって、ビスマス含有化合物により触媒される反応を介してアロファネートを製造するプロセスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アロファネートの製造プロセスに関し、更にアロファネートに関すると共に、二成分コーティング組成物、特にペンキ組成物用の、アロファネート含有低粘度ポリイソシアネート組成物に関する。
本発明は、特に、1(又はそれ以上)のイソシアネートと、エーテル又はポリエーテル基を含む少なくとも1のモノアルコールとの反応であって、ビスマス含有化合物により触媒される反応によるアロファネートの製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネートは、その多くの特性のため、コーティング産業、特にペンキ産業で広く使用されている。イソシアヌレート基を有するポリイソシアネートは、その架橋特性のために、硬化剤としての使用が特に知られている。
しかし、この種の組成物は、イソシアネートの三量体化により得られ、比較的高い粘度を有するため、相当な量の溶媒の使用を必要とする。
【0003】
現在、環境監視に関する新たな規制は、揮発性有機化合物の削減を求めている。
これら要求に合致する可能性の一つは、出発原料イソシアネート、特にジイソシアネートの変換率を制限して、三量体化媒体中に存在し、粘度上昇の原因となる重化合物(より高度の重合度での縮合物、特に1以上の三量体ユニットを含むもの)の形成を最小化することにある。このために、触媒量を設定反応時間に合わせて減少させるか、反応時間を設定触媒量に合わせて減少させ、真の環状三量体/重化合物割合を上昇させる。
出願人の会社は、既にこの種の製品を、HDT(ヘキサメチレンジイソシアネート三量体)及びHDB(ヘキサメチレンジイソシアネートビウレット)、商品名「低粘度」acronym LVとして市販している。
【0004】
これら手順の欠点は、第一に生産高の顕著な低下であり、第二に所定量のイソシアヌレートのために使用される触媒量による費用上昇である。
【0005】
欧州特許出願EP0524500及びEP0524501号においてなされた提案では、三量体化混合物のアロファネーション(allophanation)反応を実施するか、アルコールの存在下で三量体化を実施するかして、低粘度を示すと主張されたイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート混合物を生じる。このプロセスは、多官能性イソシアネートのアロファネートを形成し、このアロファネート化合物は、顕著で有害な態様で組成物の粘度を上昇させる。
【0006】
アロファネートをイソシアヌレート基を有するポリイソシアネートの組成物へ添加して、その粘度を低下させることも知られている。この場合、触媒的(環状)三量体化反応及びアロファネーション反応を別々に実施するので、顕著で有害な態様で組成物の粘度を上昇させる、多官能性イソシアネートのアロファネートを避けることができる。
【0007】
アロファネートは一般的に、アルコール基含有化合物をイソシアネートと反応させ、次に得られたカルバメート基を新しいイソシアネート分子と反応させて得られる。
アロファネート製造プロセスは公知であり、それらは一般的に触媒を使用する。
例えば、四級アンモニウムを触媒として使用し、アロファネートを製造することが公知である。その場合、アロファネートは形成されるが、好ましくない三量体も形成される。
スズベースの化合物を触媒として使用してアロファネートを製造することも知られている。この反応には多くの時間が必要であり、スズベースの化合物は有害である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0524500号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0524501号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上より、本発明は上記問題を生じないアロファネートの製造プロセスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明は、第一主題として、
1以上の同一又は異なるイソシアネートのアロファネートの製造プロセス、又は異なるアロファネートの混合物の製造プロセスであって、1(又はそれ以上)のイソシアネートを少なくとも1の、エーテル又はポリエーテル基含有モノアルコールと反応させて行われるプロセスであり;
この反応は触媒としてビスマス含有化合物及び共触媒として金属化合物の存在下で行われ、その金属化合物の含量はモノアルコール量に対して0.5〜100ppmである、製造プロセスを提供する。
本発明のプロセスは速く(fast)、非毒性触媒を使用し、一般的にアロファネートを選択的態様で得ることができる。この理由は、本発明のプロセスは、アロファネートの形成と平行して三量体が形成されることを一般的に回避するからである。
【0011】
本発明は又、第二主題として、上記本発明のプロセスによって得ることができるアロファネート又はアロファネートの混合物に関する。
本発明は又、第三主題として、低粘度であって、少なくとも1の真の三量縮合体多官能性イソシアネート及び上記アロファネートを含む、三量縮合体多官能性イソシアネートの組成物に関する。
本発明の組成物は、本発明のアロファネート基含有化合物を含まない以外は同一の組成物に対して、所定温度かつ溶媒の非存在下で、顕著に低粘度、好ましくは少なくとも1/4まで低く、有利には約1/3まで、更に有利には約2/5までの低粘度を示す。
最後に、本発明は、第四主題として、塗膜製造のための組成物の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のアロファネートの製造プロセスは、エーテル又はポリエーテル基を有するモノアルコールを使用する。
文言「モノアルコール」は、1のヒドロキシル基を有する炭化水素化合物を意味する。
環状脂肪族鎖を有するアルコールを含む、脂肪族鎖を有するアルコール、好ましくは直鎖状又は弱く分岐したアルキル鎖を有し、1のOH基のみを含むアルコールが、本発明で好適に使用できる。このアルコールは、オキセタン型の複素環式アルコールでもよい。
適切なアルコールは又、任意で1以上の二重結合を含むことができる。
【0013】
本発明のモノアルコールは、エーテル又はポリエーテル基を含み、それは有利には(ポリ)アルキレンオキシド基、好ましくは(ポリ)エチレンオキシド基(特にポリエチレンオキシドモノエーテルであり、有利には最大で10エチレンオキシドユニットを平均して含むもの)である。
【0014】
低粘度の観点から特に有利な他のアルコールは、式R−[O−CH(R1)−CH2n−OHの化合物である。但し、R1はH、若しくはアルキル基、好ましくはC1−C8アルキル基、特にメチル基、又はポリエーテル基、特に−CH2OR10基であり、R10は炭化水素鎖、特にポリオキシアルキレン鎖、好ましくはポリオキシエチレン鎖であり、nは有利には1〜10、好ましくは1〜5の整数であり、Rは直鎖状又は分岐状C1−C20アルキル基であるか、RはR2−CO−基でありR2は直鎖状又は分岐状C1−C20アルキル基である。
【0015】
上記のとおり、1のOH基を含む化合物の脂肪族鎖は、追加的に環状アルキル又は複素環基により置換されるかそれらが挿入されていてもよい。
OH基は、炭化水素環又は複素環の炭素原子へ直接結合していてもよい。
シラノール型誘導体も又、適切である。
【0016】
本発明のモノアルコールは、有利には平均5未満のアルキレンオキシドユニットを含み、好ましくは平均2又は3アルキレンオキシドユニットを含む。これは特に、本発明のプロセスによって得られたアロファネートのNCOの含量の上昇を可能とする。
【0017】
カルバメーション(carbamation)/アロファネーション反応の最中に、アルコール基を含む異なる化合物の混合物を添加することも可能である。有利には、モノアルコールのみがアルコールとして使用される。
【0018】
本発明の特別な態様における本発明のプロセスは、複数個の異なるモノアルコールを使用する。有利には、少なくとも3種の異なるモノアルコール、好ましくは少なくとも8種の異なるモノアルコールを使用する。
本発明のモノアルコールに追加して、異なる型の他のアルコールも使用できる。例えば直鎖状C1−C10鎖を有するアルキルアルコール、特にC4−C8アルコールが挙げられる。
【0019】
本発明のアロファネーションプロセスは、ビスマス含有化合物である触媒を使用する。ビスマス化合物は、毒性がないという利点を示す。
このビスマス化合物は、ビスマスへのリガンドとして働く少なくとも1の分子を含む有機金属化合物である。
【0020】
このビスマス化合物は、式Bi(R1、R2、R3)の化合物である。但し、R1、R2及びR3は同一又は異なる炭化水素分子であり、1〜50炭素原子、好ましくは1〜25炭素原子である複数の炭素を有し、ビスマス原子に結合可能な少なくとも1の官能基を有し、その水中でのpKaは1を超え、好ましくは2を超える。
ビスマス原子へ結合可能な官能基は一般的に、カルボン酸、アルコール又はフェノール、ヒロドキシカルボネート、チオール、アミン又はカルバモイル(−NH−C(=O))から選ばれる。好ましくは、これら官能基は、カルボン酸基である。
分子R1、R2及びR3は、脂肪族、環状脂肪族、芳香脂肪族、芳香族又は複素環式でもよく、直鎖状又は分岐状構造を有しても、任意でヘテロ原子(酸素、窒素等)が挿入されていてもよい。
(R1、R2、R3)の組み合わせは、1、2又は3分子を構成できる。
【0021】
ビスマス原子へ結合可能な官能基を有する分子の例として、酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、トリメチル酢酸、2−エチルヘキサン酸、イソデカン酸、イソステアリン酸、ゲルベ酸、安息香酸、ナフトエ酸、乳酸、クエン酸、サリチル酸、没食子酸、炭酸、カルバミン酸、フェノール又はジフェノールが挙げられる。
【0022】
触媒の例として、例えばトリ酢酸ビスマス、トリス(2−エチルヘキサン酸)ビスマス、トリス(デカン酸)ビスマス、トリス(パルミチン酸)ビスマス、次サリチル酸ビスマス、次没食子酸ビスマス又は乳酸ビスマスが挙げられる。
触媒の例として又、ビスマスオキシド誘導体も挙げられる。
又、触媒前駆体である化合物も使用できる。
【0023】
本発明の好ましいビスマスベースの触媒は、ビスマストリスカルボキシレートである。
ビスマストリスカルボキシレートは、単純なアルカノールから得られたアロファネートのための反応の良い触媒である。これらアルカノールは、直接アルキル鎖へ結合しているヒドロキシル基を有するアルキル鎖で形成されるモノアルコール又はポリアルコール分子である。例えば、n−プロパノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、2−ブチルエチルヘキサン−1,3−ジオール又は2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジオールが挙げられる。一般的に、これらアルカノール分子は、その構造中に金属化合物を含まない。
触媒量は、アルコールモル数に対する金属モル数として、有利には0.001%〜0.1%、特に0.001%〜0.05%である。
【0024】
本発明のプロセスは又、共触媒として、アルカリ金属カルボキシレート又はアルカリ土類金属カルボキシレート等の金属化合物を使用する。この金属化合物の使用量は、モノアルコール量に対して0.5ppm〜100ppm、好ましくは1〜70ppm、有利には50ppm未満である。
【0025】
本発明のモノアルコール、即ち少なくとも1のエーテル又はポリエーテル基を有するモノアルコール、換言するとポリアルキレングリコール又はエトキシ化された脂肪族アルコールを使用する場合、ビスマス(ビスマストリスカルボキシレートをベースとする触媒から得られた)/ヒドロキシル基モル比が同一であるにも拘わらず、イソシアヌレート化合物の形成がアロファネート化合物の形成に付随して確認された。
【0026】
以上から、発明者は、これらポリアルキレングリコール又はエトキシ化された脂肪族アルコール中に存在する有機金属化合物の存在が、イソシアヌレート分子の副成の原因であることを明らかにした。これら有機金属化合物は、これらアルコールの合成から生じる不純物である。この理由は、ポリアルキレングリコール又はエトキシ化された脂肪族アルコールの合成は、一般的に「開始剤」分子が、塩基性触媒(例えば水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム)の存在下で、アルキレンオキシド分子と反応することにより開始されるからである。これらアルコール分子の合成が終了すると、反応は酸性化によりブロックされる。一般的に、塩基性触媒を中性化させるために使用される酸は、カルボン酸等の弱酸である。従って例えば、酢酸、プロピオン酸又は2−エチルヘキサン酸が挙げられる。
【0027】
以上より、ポリアルキレングリコール又はエトキシ化された脂肪族アルコールは、ある程度多量の金属化合物(特に金属カルボキシレート)、特に酢酸ナトリウム及び/又は酢酸カリウムを含む。
【0028】
従って、使用されるモノアルコール中の多量の(100ppmを超える)金属化合物(特にナトリウム及び/又はカリウム)の存在は、ビスマスベースの化合物により触媒されるアロファネート化合物合成中に、多量のイソシアヌレート三量体副成化合物の形成を引き起こす。この副反応は、高度に発熱性であって制御不能なために有害である。
【0029】
以上より、アロファネート合成に使用されるアルコール中に存在するナトリウム及び/又はカリウム等の金属化合物の量が100ppm未満、好ましくは70ppm未満の場合、エトキシ化された脂肪族アルコール、及び/又はポリアルキレングリコールの存在下で、それらとイソシアネートとから、ビスマスベースの化合物(特にビスマストリスカルボキシレート)により触媒されて、多量のイソシアヌレート三量体の副成無しに、一般的に5%未満で、アロファネートの合成が行われることが示された。その場合、発熱反応が制御され、アロファネートの合成が特に問題無く行われる。
【0030】
更に、イオン交換樹脂にアルコールを通過させてポリアルキレングリコール又はエトキシ化された脂肪族アルコール中に存在する金属化合物を除去するか、パラトルエンスルホン酸等の強酸で化学量論的中和をすることにより、ビスマストリスカルボキシレートにより触媒されるアロファネート形成の反応速度の減少を生じることも示された。従って金属化合物の存在は、本発明のプロセス状況では必須である。
【0031】
金属カルボキシレート、特にナトリウムカルボキシレート及びカリウムカルボキシレート等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属(元素の周期律表の1族及び2族)のカルボキシレートは、ビスマスカルボキシレートにより触媒されるアロファネートのための反応の有効な共触媒である。
以上より、アロファネートの合成を最適化するために、本発明のプロセスではモノアルコール量に対する金属化合物の量が0.5〜100ppm、好ましくは1〜70ppmである。
【0032】
上記金属化合物は特に、弱酸の塩の形状であり、これら弱酸はpKaが2を超え6未満の酸であり、好ましくはカルボン酸である。
特に有利な態様では、アロファネートの合成に使用される共触媒/触媒モル比(即ち、例えばナトリウム及び/又はカリウム/ビスマス割合)は、0.01〜10、好ましくは0.1〜5である。
以上より、これら条件は、イソシアヌレート三量体含量が5重量%未満であるアロファネートの組成物を得ることを可能とする。
【0033】
従って上記金属化合物は、本来、上記モノアルコールの製造プロセスを理由として、使用されるモノアルコール中に存在する。但し、上記金属化合物を反応媒体へ添加することも又可能である。
【0034】
本発明のプロセスの特別な態様では、出発原料イソシアネートはイソシアネートモノマーである。
本発明は、使用されるイソシアネートモノマーの特性を限定しない。従って、イソシアネートモノマーは、環状脂肪族及び芳香脂肪族を含む脂肪族であって、モノイソシアネート、有利にはジイソシアネート若しくはトリイソシアネートであってもよく、好ましくは下記ジイソシアネート等でもよく:
ポリメチレンジイソシアネート及び特にヘキサメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタメチレンジイソシアネート、4−(イソシアナトメチル)オクタメチレンジイソシアネート及び2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート;
イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(BIC)、H12−MDI及びシクロヘキシル1,4−ジイソシアネート;
アリーレンジアルキレンジイソシアネート(OCN−(CH2p−φ−(CH2q−NCO等)、但し、p及びqは1〜6、好ましくは2〜4の同一若しくは異なる整数である;
又はトリレンジイソシアネート等の芳香族でもよい。
芳香族イソシアネート及びイソシアネート基がネオペンチル炭素に結合しているイソシアネートは好ましくない。
【0035】
本発明により目的とされる好ましいイソシアネートは、下記条件の少なくとも1、有利には2、好ましくは3を充足するものである:
条件(1):少なくとも1個、有利には2個のNCO基が飽和(sp3)炭素を介して炭化水素主鎖へ結合している;
条件(2):少なくとも1個、有利には2個の上記飽和(sp3)炭素は、少なくとも1個、有利には2個の水素を有する。換言すれば、イソシアネート基を有する炭素が1個の水素、好ましくは2個の水素を有する場合に、最良の結果が得られることがわかった;更に、上記飽和(sp3)炭素の少なくとも1/3、有利には少なくとも1/2、好ましくは少なくとも2/3が、上記主鎖へ、それ自身少なくとも1個、更に好ましくは2個の水素を有する炭素原子を介して結合されていることが好ましい;
【0036】
条件(3):そこからイソシアネート基が炭化水素主鎖へ結合されている中間の炭素全ては飽和(sp3)炭素であり、それらの幾つか、好ましくは全ては、有利には1個の、好ましくは2個の水素を有する。更に、上記飽和(sp3)炭素の少なくとも1/3、有利には少なくとも1/2、好ましくは少なくとも2/3が、上記主鎖へ、それ自身少なくとも1個、更に好ましくは2個の水素を有する炭素原子を介して結合されていることが好ましい。
【0037】
一般的に、好ましい出発原料イソシアネート(モノマー)は、少なくとも1のポリメチレンシーケンス(2〜6メチレンユニットを含む)を有するものである。
好ましいイソシアネートは、特に脂肪族ジイソシアネート、特にそのアルキル鎖が直鎖状又は弱く分岐しているC1−C10アルキルイソシアネートである。文言「弱く分岐している」は、三級及びネオペンチル炭素の非存在を意味する。
HDI、IPDI、NBDI、H12−MDI及びMPDIが特に好ましい。
【0038】
一般的に、脂肪族イソシアネートは原則として環状脂肪族イソシアネートより低粘度を示す。そのため、目的とする効果が、脂肪族基を含むイソシアネートから得られたイソシアヌレート(ポリ)イソシアネートの粘度を低下させることである場合には、環状脂肪族基を有するイソシアネートアロファネートの使用は避けることが好ましい。
【0039】
本発明のプロセスで、出発原料イソシアネートがイソシアネートモノマーである特別な態様は、(同一又は異なる)モノマーをアルコールと反応させて触媒存在下でカルバメートを形成し、同時に又は次にそのカルバメートをモノマー(それらは互いに同一又は異なり、上記モノマーとも同一又は異なる)と反応させてアロファネート又はアロファネートの混合物を得ることからなる。
カルバメーション反応用及びアロファネーション反応用に同一の触媒を好適に使用できる。しかし、異なる触媒も使用できる。
【0040】
カルバメーション及びアロファネーション反応は、例えば反応媒体温度をカルバメーション反応が発生するまで上昇させ、その後温度をアロファネーション反応が発生するまで上昇させる、2段階ステップで行うことができる。
この2種の反応は又、反応温度を直ぐにアロファネーション温度まで上昇させることにより同時に行うこともできる。
【0041】
本発明のプロセスは、従来のカルバメーション反応と、それに続く従来のアロファネーション反応を含み、この2種の反応は1の同一触媒又は複数の触媒の組み合わせによって触媒されてもよく、この2種の反応は同時に単一の反応器中で行われても良い。
【0042】
第一ステップでは、アロファネーション反応に使用されるイソシアネートは、アロファネーション触媒の存在下で、1以上のモノアルコール化合物と反応する。反応は、カルバメーション及びアロファネーション反応が2段階ステップで行われる場合、有利には約80℃〜約100℃の温度で行われ、カルバメーション及びアロファネーション反応が同時に行われる場合は、直接的に100℃〜180℃程度の温度で行われる。
反応は、一般的に少なくとも80%、好ましくは99%を超えるアルコール基の消費に相当するNCOレベルまで継続される。
【0043】
カルバメーション反応が適切でアロファネーション反応が分割できる場合、カルバメーション後に、第二ステップで、アロファネーション反応を行うために反応媒体の温度を約100〜180℃まで、HDIのためには好ましくは140℃付近、に上昇させて、後者の反応をアロファネーション触媒の存在下で行うことができる。
少量の二量体も又採用される温度に応じて形成される。
反応時間は、有利には3時間未満である。
【0044】
アロファネーション反応は、モノアロファネートを主に得るために、下記の通り行われる。
アロファネーション反応では、カルバメーション反応で使用されるのとは異なるイソシアネートの使用が可能である。その場合、混合されたアロファネートが得られる。
採用されるイソシアネート(NCO)基/ヒドロキシル(OH)基割合は、好ましくは2を超え、更に好ましくは4を超える。主にモノアロファネートを得るためには、イソシアネート(NCO)基/ヒドロキシル(OH)基割合は高いことが好ましい。有利には4を超え、好ましくは8を超える。
【0045】
アロファネーション反応は、残存カルバメート量(不完全に変換された中間体)が少なくなるように(一般的に30重量%未満、有利には20重量%未満、好ましくは10重量%未満、更に好ましくは5重量%未満)行われる。この理由は、顕著な量のカルバメートの存在は、組成物粘度を上昇させて望ましくないからである。
【0046】
一般的に、(アロファネート合成のために使用されたアルコール分子から得られるカルバメート基)/(アロファネート合成のために使用されたアルコール分子から得られるアロファネート基)割合は、0.5未満、好ましくは0.2未満、有利には0.1未満である。
【0047】
反応は、NCO含量を測定することにより監視される。
有利には、残存モノマーは蒸留により回収されリサイクルされる。
本発明のプロセスは、連続式(例えば管状装置中で行われる)でもバッチ式でもよい。
【0048】

本発明のアロファネートは、一般的に一般式(II)で表される:
但し:
4及びR6は同一又は異なる炭化水素基であり、特に脂肪族、環状脂肪族、複素環式又は芳香族炭化水素基であり、真の又は誘導されたイソシアネート基を有し、
5は、エーテル又はポリエーテル基含有モノアルコール化合物のOH基の水素の反応後の残基(residue)である。
【0049】
文言「誘導されたイソシアネート基」、この場合、カルバメート、尿素、ビウレット、ウレタン、ウレチジンジオン、アシル尿素、ブロックされたイソシアネート又はアロファネート基を意味すると理解され、イソシアヌレート基は除外される。
4がR6と同一の場合、ホモアロファネートに関するものであり、それは、式R4NCOのイソシアネートを式R5OHのアルコールと反応させて得られるカルバメートとの、式R6NCO(但し、R6はR4と同一である)の第二イソシアネートの縮合により得られる。
【0050】
アロファネートは又、カルバメートとの、第二イソシアネートR6NCO(但し、R6はR4とは異なる)の縮合により得られてもよく、その場合、混合されたアロファネートに関する。
有利には、本発明のアロファネートの混合物は、少なくとも約1/4、有利には少なくとも約1/3、更に好ましくは少なくとも約1/2(重量比)のモノアロファネートを含む。
【0051】
混合物は又、ビスアロファネート、トリスアロファネート及び重アロファネート、並びに、より狭い範囲での、イソシアネート(R4NCO及び/又はR6NCO)及びアルコール(R5OH)からなるカルバメートを含んでもよい。
混合物は、最大で1/2(重量比)、有利には最大で1/3及び好ましくは1/6の重アロファネート(3以上のアロファネート基を含む)を含むことが非常に望ましい。
【0052】
モノアロファネートは、アロファネート基へ変換される一級又は二級ヒドロキシル基を有するアルコール分子から得られる。
従って、モノアロファネートは、下記条件が確立される場合には存在する:(アロファネート基含有化合物分子当たりのアロファネート基総数)/(アロファネート基含有化合物分子内のアロファネート基中に含まれる同一又は異なるイソシアネート鎖数)=1/2。
【0053】
ビスアロファネートは、少なくとも部分的に炭化水素鎖である鎖により分離されている2個のアロファネート基を有することに特徴を有する分子である。
ビスアロファネート分子は、3イソシアネートモノマー及び2アルコール分子を含み、そのアルコール分子のヒドロキシル基は、アロファネート基へ変換されている。
トリスアロファネートは、ビスアロファネートと同様の方法で定義される。
【0054】
更に、本発明では、三量縮合体多官能性イソシアネートへの、異なるホモアロファネートの組み合わせ、異なる混合されたアロファネートの組み合わせ、若しくはこれら2種のカテゴリーの混合物、又はホモアロファネートの混合物及び/若しくは、異なるアルコールから得られた混合されたアロファネートの混合物の添加も可能である。
【0055】
文言「重アロファネート」は、上記カテゴリーのいずれにも該当しないアロファネート生成物を意味すると理解される。
特に、誘導されたイソシアネート基(ビウレット及び/又はイソシアヌレート基)及び少なくとも1のアロファネート基を含むアロファネート、並びに少なくとも4個のアロファネート基を含む化合物であり、文言三量縮合体アロファネートで表されるものも、重アロファネートのカテゴリーの範囲内である。
【0056】
本発明のプロセスの別の特別な態様では、出発原料イソシアネートはウレタンである。
アロファネート化合物の生成反応は、少なくとも1のイソシアネート基を有する分子を、通常はカルバメートとして知られ、式R−NH−C(=O)−O−により特徴付けられる少なくとも1のウレタン基を有する分子と反応させることに特徴を有する。
【0057】
NCO基/カルバメート基のモル比は、一般的に1〜50、有利には3〜25、好ましくは5〜20である。
反応温度は、20℃〜200℃、好ましくは100〜180℃である。
カルバメートモルに対する金属モルでの触媒量は、有利には0.001〜0.1%、特に0.001〜0.05%である。
【0058】
イソシアネート(NCO)基/カルバメート基割合は、高い方が有利である。好ましくは2を超え、更に好ましくは4を超え、特に好ましくは8程度の割合が使用できる。
【0059】
出発原料化合物として使用されるウレタン化合物は、調製用として当業者に公知の化合物である。
【0060】
カルバメート基が少なくとも1のイソシアネート(NCO)基を有する分子と少なくとも1のヒドロキシル(OH)基を有する分子との反応から生じる限り、イソシアネート基を有する分子をヒドロキシル基を有する分子と接触させる場合に、触媒は反応の最初から添加できる。
構成要素全てを混合しても、連続的反応を行っても良い。
【0061】
本発明のプロセスの特別な態様では、イソシアネートとモノアルコールとの反応は又、共触媒として酸化防止化合物の存在下で行ってもよい。これら酸化防止化合物として、特にヒンダードフェノール及び亜リン酸トリエステルを含む混合物の形状が挙げられる。
使用できる亜リン酸は、例えば式(R1O)3Pで表され、それぞれのR1は互いに独立して、1〜20炭素原子のアルキル基又は、1〜20炭素原子アルキル基により置換されていてもよいアリール基を表し、それらアルキル基は、適切な場合は塩素等のハロゲンにより置換されていてもよい。
【0062】
亜リン酸の中でも、好ましくは、トリエチル亜リン酸、トリブチル亜リン酸、トリス(2−エチルヘキシル)亜リン酸、トリデシル亜リン酸、トリラウリル亜リン酸、トリス(トリデシル)亜リン酸、トリステアリル亜リン酸、トリフェニル亜リン酸、トリス(ノニルフェニル)亜リン酸、トリス(2,4−ジ(t−ブチル)フェニル)亜リン酸、ジフェニルデシル亜リン酸及びジフェニルトリデシル亜リン酸等のモノ亜リン酸;ジステアリルペンタエリトリトールジ亜リン酸、ジ(トリデシル)ペンタエリトリトールジ亜リン酸、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリトリトールジ亜リン酸、テトラフェニルテトラトリデシルペンタエリトリトールテトラ亜リン酸、テトラフェニルジプロピレングリコールジ亜リン酸及びトリペンタエリトリトールトリ亜リン酸等のポリオール由来のジ−、トリ−又はテトラ亜リン酸;ジ(C1-20アルキル)ビスフェノール−Aジ亜リン酸及び4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−(t−ブチル)フェニルジ(トリデシル)亜リン酸)等のビスフェノール化合物由来のジ亜リン酸;並びに、水素化ビスフェノール−A亜リン酸ポリマー及びトリス(2,3−ジクロロプロピル)亜リン酸等のポリ亜リン酸が挙げられる。
更に特に、本発明のプロセスは、トリブチル亜リン酸の使用を含む。
【0063】
表現「ヒンダードフェノール」は、少なくともオルト位に1の置換基を有するフェノール化合物を表す。
更に特に、ヒンダードフェノール型酸化防止剤は、オルト位置が置換されたフェノール、2,6−ジアルキルフェノール、ビスフェノール、β−(3,5−ジ(t−ブチル)−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド、又はβ−(3,5−ジ(t−ブチル)−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸とモノ−又は多価アルコールとのエステルから選択できる。
【0064】
ヒンダードフェノール型酸化防止剤の例として、2,6−ジ(t−ブチル)−パラクレゾール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ(t−ブチル)−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ(t−ブチル)−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、ステアリルβ−(3,5−ジ(t−ブチル)−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート(propionate)、2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチルフェノール、ペンタエリスリチルテトラキス((3,5−ジ(t−ブチル)−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナート)、ビス(β−(3,5−ジ(t−ブチル)−4−ヒドロキシフェニル)エチル)スベラート(suberate)又はN,N’−ビス(3−(3’、5’−ジ(t−ブチル)−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオニル)ヘキサメチレンジアミンが挙げられる。更に特に、本発明のプロセスは、2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチルフェノールの使用を含む。
【0065】
従って、本発明の特に有利な態様は、2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチルフェノール及びトリブチル亜リン酸の存在下での、イソシアネートとモノアルコールとの反応を含む。
上記酸化防止化合物の存在は、反応媒体の着色を減少できることが示された。
【0066】
本発明は又、本発明のプロセスに従い得られることができるアロファネート又はアロファネートの混合物に関する。
本発明のアロファネートは、水性組成物及び、トルエン等の有機溶媒を含む組成物のいずれの状態のイソシアネート組成物も採用できる。
【0067】
本発明は又、少なくとも1の真の三量縮合体多官能性イソシアネート及び、本発明のプロセスに従い得られたアロファネート又はアロファネートの混合物を含み低粘度である、三量縮合体多官能性イソシアネートの組成物に関する。
【0068】
本発明の(環状)三量縮合体多官能性イソシアネートは下記一般式で表される:
【化1】

但し、Aは下記のいずれかの基である:
下式のイソシアヌレート基:
【0069】
【化2】

下式のイミノオキサジアジンジオン等の、イソシアヌレート基誘導体の一種:
【0070】
【化3】

下式のオキサジアジントリオン等の、イソシアヌレート基誘導体の一種:
【0071】
【化4】

下式のビウレット基:
【0072】
【化5】

但し、BはH又は、炭化水素基、即ち炭素及び水素を含有する基であり、任意で他の原子(O、S、Si等)を含み、好ましくは1〜20炭素原子を有する基である;
又は、下式の基:
【0073】
【化6】

但しnは3〜4の整数である;
更に、式(I)のR1、R2及びR3は同一又は異なり、真の又は誘導されたイソシアネート基を有する、炭化水素基、特に脂肪族、環状脂肪族、複素環式又は芳香族炭化水素基であり、Qは炭化水素基、好ましくはR1〜R3のために定義されたアルキル基であり、mは0〜2の整数である。
【0074】
文言「誘導されたイソシアネート基」は、カルバメート、尿素、ビウレット、ウレタン、ウレチジンジオン、イソシアヌレート、アシル尿素、イミノオキサジアジンジオン、オキサジアジントリオン及びブロックされたイソシアネート基を意味すると理解される。
【0075】
三量縮合体多官能性イソシアネートは、ホモ三量縮合体(R1、R2及びR3が同一の場合)又はヘテロ三量縮合体(R1、R2及びR3の少なくとも1個が他のものとは異なる)でもよい。
三量縮合体多官能性イソシアネートの混合物は、異なるホモ三量縮合体多官能性イソシアネートの組み合わせ、異なるヘテロ三量縮合体多官能性イソシアネートの組み合わせ、又はこの二種のカテゴリーの混合物である。
【0076】
真の三量縮合体多官能性イソシアネートとして、R1、R2及びR3が同一又は異なる−A−X基であって、Aが炭化水素鎖、即ち少なくとも炭素及び水素を有する鎖であり、Xが水素原子又はNCO基であるものが挙げられる。
好ましいXはNCO基である。
【0077】
換言すれば、文言「真の(true)三量縮合体多官能性イソシアネート」は、有利にはイソシアネート、好ましくはジイソシアネート、実際はトリイソシアネート(同一又は異なる)でもよい3モルのモノマーの縮合により得られる理論的(環化)縮合の生成物であって、4以上のモノマーの縮合から得られる化合物、及び/又はアロファネート基を含有する化合物、並びにイソシアヌレート(ポリ)イソシアネートのオリゴマー化により得られるイソシアヌレートオリゴマーを除外するもの、を意味すると理解される
【0078】
上記の、アロファネート又はアロファネートの混合物に関する、特にこれら化合物の性質に関する記載は全て、組成物へも同様に当てはまる。
【0079】
有利には、組成物は、少なくとも1の真のイソシアヌレートポリイソシアネートを含む。
有利には、組成物は、少なくとも5%、好ましくは少なくとも15%の本発明のアロファネート又はアロファネートの混合物を含む。
【0080】
本発明の三量縮合体多官能性イソシアネートの組成物は、低粘度であり、当業者に公知の組成物生成方法で製造できる。
【0081】
(環状)三量縮合体多官能性イソシアネートは、触媒の存在下で、1以上の同一又は異なる第一イソシアネートモノマーを、目的とする程度の変換が達成されるまで(環化)縮合することにより得られる。
(環化)縮合反応は、公知の(環状)三量体化触媒の存在下で行われる(環状)三量体化反応が有利である。
【0082】
(環状)三量縮合体多官能性イソシアネート及びアロファネートは当業者に公知の方法で混合されて、目的とする粘度を得る。
(環状)三量縮合体多官能性イソシアネートの調製に使用されるイソシアネートは、有利にはアロファネートの調製に使用されるイソシアネートと同一である。
【0083】
低級アルキル(最大で10炭素原子を含む)を含むポリイソシアネート基の粘度よりも高い粘度を有する、任意で分岐状、環状アルキル又は芳香族基でもよい、より高級なアルキル(10を超える炭素原子を含む)を含む三量縮合体多官能性イソシアネートの粘度を低下させるために、三量体化生成物へ、(環状)三量縮合体多官能性イソシアネートの調製に使用されるものとは異なる1以上のイソシアネートのアロファネートを添加して、(環状)三量縮合体多官能性イソシアネートの調製に使用されたものと同一の1以上のイソシアネートのアロファネートを使用して得られるだろう粘度より低い粘度を達成することができる。
【0084】
以上より、アロファネートが原料とするイソシアネートは、有利には直鎖状アルキル基からなる1以上のイソシアネート、特にHDIである。
【0085】
環化(縮合)は、イソシアネートの触媒的三量体化の通常の条件下で行われる。
例えばイソシアネート基を含有する三量縮合体のためには、アミノシリル化誘導体、特にシラン又はジシラザン、好ましくはEP57653等に記載されたヘキサメチルジシラザン(HMDZ)の存在下での、又は四級アンモニウム触媒の存在下での触媒作用による従来のHDI反応が挙げられる。
【0086】
反応条件には、特にHMDZにより触媒される反応では、HDI重量に対し1.2重量%程度の触媒量、約2時間30分の反応時間及び約120℃の温度が含まれる。
これら条件下で、イソシアネート基の変換率は32.7%であり、それは(単一のイソシアヌレート環を有する)HDIの真の三量体官能基のレベルが50重量%程度であるイソシアヌレート(ポリ)イソシアネート混合物に対応する。
水の存在下でカルボン酸により触媒され、ビウレットユニットを含む縮合体を得る反応も又挙げられる(フランス国特許FR8612524)。
【0087】
本発明で得られる組成物は、真の三量縮合体多官能性イソシアネート及び重縮合体を含み、それらは出発原料のイソシアネートモノマー、一級モノアロファネート及びジ−又はトリアロファネート又は重アロファネート等のアロファネート化合物、カルバメーション反応のために採用されるアルコール又はアルコールの混合物の触媒的(環化)縮合により得られる。
【0088】
本発明の組成物は、一般的に高い粘度を生じるビウレットユニットを含む三量縮合体に特に有利である。しかし、イソシアヌレートベースの三量縮合体が使用される場合、ビウレットユニット含有成分量は、高くない(50%未満、好ましくは25%未満、有利には10%未満)ことが好ましい。
しかし、ビウレットユニットの含量がイソシアヌレートユニットの0.5〜5重量%であっても、優れた結果はやはり得られる。
【0089】
本発明の組成物は、好ましくは三量縮合体ユニットを含むアロファネート、特に出発原料イソシアネートの環状三量体化により得られるイソシアヌレートを実質的に含まない。それらは、組成物の総重量に対し有利には15重量%未満、好ましくは5重量%未満、更に好ましくは1重量%未満でしか含まれない。
【0090】
従って本発明の別の主題は、低粘度であり、少なくとも1の真の三量縮合体多官能性イソシアネート及び少なくとも1のモノアロファネートを含む、三量縮合体多官能性イソシアネートの組成物である。
【0091】
本発明の別の主題は、顕著に低粘度であり、少なくとも1の真の三量縮合体多官能性イソシアネート及び少なくとも1のモノアロファネートを含む、三量縮合体多官能性イソシアネートの組成物であり、この組成物は少なくとも1の下記条件を充足する:
条件(1):モノアロファネート/(モノアロファネート及び真の三量体)重量比割合が2.5〜99%、有利には3〜60%、好ましくは3.5〜40%である。
条件(2):三量縮合体は三縮合反応から生じ、同一又は異なるイソシアネートモノマー又はモノマーから、組成物中に存在する三量縮合体多官能性ポリイソシアネートを生じるための変換率は8%を超え、好ましくは10%を超え、有利には15%を超える。
【0092】
低粘度で三量縮合体多官能性イソシアネートの組成物は、少なくとも1の真の三量縮合体多官能性イソシアネート及び少なくとも1のアロファネートを含み、有利には上記第一条件に該当し、更に上記両方の条件へ該当してもよい。
【0093】
環状脂肪族イソシアネートから得られた三量縮合体多官能性イソシアネートを含む低粘度の組成物を得るために、上記と同一の方法を行い、任意で少量の溶媒を(組成物の総重量に対する重量比で、一般的に1/3未満、有利には1/4未満、好ましくは1/10未満)添加することが可能である。
【0094】
本発明により得られた組成物は、パウダー形状でもよく、モノアロファネートを含まない生成物と比べると溶融状態への変化において低粘度を提供できる。
組成物は、様々な溶媒ベース、水性若しくは水性/有機的配合物、又はパウダー形状でもよく、同一又は異なるイソシアネート基のための保護基を有してもよい。イソシアネート基は、部分的に又は完全に保護されていてもよい。ブロックされたイソシアネート基に対するフリーイソシアネート基の割合は、目的とする用途に応じて当業者により選択される。
本発明の組成物は、低粘度の現在知られた組成物に比べ、使用される溶媒量を更に制限することができる。
【0095】
本発明で得られる組成物は、水性配合物として、任意でイオン性又は非イオン性界面活性剤等の配合助剤を追加したり、ポリエチレングリコール誘導体又はポリオキシエチレン化アミン等の様々なポリオキシアルキレン化合物のイソシアネート基への可逆的又は非可逆的グラフト化を行って使用できる。
【0096】
任意で部分的に又は完全にブロックされたイソシアネート基を含むポリイソシアネートの組成物は又、フランス国特許FR2703357及び欧州特許EP0691993等に記載されたエマルジョン又は懸濁液を生じることもできる。
【0097】
更にポリオールは、これらポリイソシアネート組成物の配合助剤として作用し、水溶液を調製し、エマルジョンを調製し又は分散体を調製できる。
同様に、これら組成物は、一時的及び/又は恒久的ブロッキング剤により任意でブロックされていてもよい、パウダー若しくは溶媒ベースのポリウレタン組成物、又は水性若しくは水性/有機的溶液の形態でのポリウレタン組成物の製造に使用できる。次にポリオールは、目的とする用途に応じて選択される。
【0098】
本発明の主題である組成物は、従来のコーティング用添加剤、即ち湿潤剤、顔料、レベリング剤、耐スクラッチ剤、耐擦傷剤及び上記用途で当業者に公知の他の化合物と共に使用できる。
【0099】
本発明の組成物の製造プロセスにより示される多数の利点中でも、本発明のプロセスは、低粘度の他に、混合物の1又は他の成分(三量縮合体多官能性イソシアネート又はアロファネート)の量を調整することにより、出発モノマー及びアルコールからの完全合成によらずに粘度の素早く容易な調整を可能とする事実が挙げられる。
【0100】
最後に、本発明は、上記コーティング調製用の組成物、特にペンキの使用に関する。
【0101】
下記実施例により本発明を示す。
NCO含量は、混合物100gに対するNCOの%か、混合物100gに対するNCOのモルのいずれかで表される。
【実施例】
【0102】
使用された製品は下記の通りである:
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
商品名Tolonate HDT:HDIベースのイソシアヌレートポリイソシアネート、Perstorp社販売、イソシアネート基の含量は22重量%であり、粘度は、25℃で約2400mPa.s。
商品名Tolonate HDT LV2:HDIベースのイソシアヌレートポリイソシアネート、Perstorp社販売、イソシアネート基の含量は23重量%であり、粘度は、25℃で約600mPa.s。
商品名LR 9046:HDIベースのイソシアヌレートポリイソシアネート、BASF社販売、イソシアネート基の含量は23.3重量%であり、粘度は25℃で約1033mPa.s。
【0103】
商品名Rhodasurf LA30:エトキシ化C12−C14アルコール、CAS番号:68439−50−9、Rhodia社販売製品。
商品名Rhodasurf ISA2:エトキシ化C16−C18アルコール
商品名Rhodasurf L3:エトキシ化C10−C16アルコール、CAS番号:68002−97−1、Rhodia社販売製品。平均分子量は321。
商品名Rhodasurf L2:エトキシ化C10−C16アルコール、CAS番号:68002−97−1、Rhodia社販売製品。平均分子量は280。
【0104】
商品名K KAT XC 8203:ビスマスカルボキシレート、King Industry社販売;ビスマス含量は12重量%。
ポリエチレン/ポリプロピレングリコールコポリマー、重量2500:CAS RN:9003−11−6。
エチレングリコール:CAS RN107−21−1。
商品名Rhodocoat X−EZM502:ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)ベースの水−分散性ポリイソシアネートであって、イソシアヌレート環の存在並びに、より少ない程度のビウレット基及び二量体(ジアゼチジンジオン)環により本質的に特徴付けられる。NCO含量は約18.4%であり、粘度は25℃で約3600mPa.sである。
DMCHA:N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、CAS番号98−94−2、BASF社製。
エトキシ化されたリン酸エステルの混合物であり、平均モル質量710g/mol、第一酸性度は90mgKOH/g。
【0105】
使用した分析方法を下記に記載する。
イソシアネート基分析方法:
この方法は当業者に公知であり、過剰に添加されたジブチルアミン既知量との反応により行われるイソシアネート基の分析である。未反応のジブチルアミンは、既知濃度のHCl溶液で滴定して分析される。未反応のジブチルアミン及び最初に添加したジブチルアミン間の差違は、イソシアネート基と反応したジブチルアミン量を表す。従って、反応媒体中に存在するイソシアネート基の含量が測定可能である。
【0106】
オリゴマー分散性の分析方法:
分析方法として、赤外線検出と組み合わせたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)が使用できる。赤外線分析器により、オリゴマーそれぞれの異なる官能基を区別できる。分析用の既知量のサンプルを、2個の直列PL GELカラムの組み合わせへ注入する。溶離液は、アミレンで安定化されたジクロロメタンである。ベンゾニトリルを内標準(ジクロロメタン10ml当たり100μl)として使用する。
【0107】
粘度測定方法
これは当業者に公知の方法である。
この方法は、Lamy社製、商品名RheomatRM300レオメーターを使用する。測定される生成物を容器中に導入する。粘度を所定のせん断速度で測定する撹拌モジュールを開始する。装置は、所定温度で1分間にわたる生成物の粘度測定値を示す。撹拌モジュールは、目標とする粘度範囲に応じて選択される。
測定温度は25℃である。一般的に、測定はせん断勾配100s-1で行われる。
【0108】
実施例1:HDI及びRhodasurf LA30アロファネート化合物の合成
この試験は、NCO/OHモル比32及びビスマス/Rhodasurf LA30モル比0.02%で行われた。
726gのHDI(4.32mol)、次に96.6gのRhodasurf LA30(0.28mol)及び0.09gの商品名K KAT XC 8203を、窒素流下撹拌器を備えた三つ首反応器へ投入した。反応媒体を加熱して温度140℃とした。反応媒体をこの温度で約1時間維持した。反応媒体のNCO含量を、定期的にジブチルアミン分析方法により測定した。反応は、反応媒体のNCO含量が予測される理論的含量となった時に0.03gのパラトルエンスルホン酸添加により停止した。30分後、反応媒体の温度を周囲温度へ戻した。
出発反応媒体のNCO含量は、100g当たり1.031molである。最終反応媒体のNCO含量は100g当たりNCO0.956molであった。反応終了時の理論的NCO含量は0.984であった。
その後2回の連続的薄膜式蒸留を真空下(約1mmHg未満)で温度160℃で行い、未反応のモノマーの大部分を除去した。
【0109】
蒸留後に得られた量は162gであり、収率約20%に相当する。
最終生成物のデータは下記の通りである:
NCO含量:100g当たりNCO0.261mol、即ち10.96重量%。
赤外線:
3240cm-1:アロファネートNHに対応する吸光度。
1719cm-1:アロファネートC=Oに対応する吸光度。
1535cm-1:アロファネートCONH基に対応する吸光度。
1765cm-1:ウレチジンジオン基に対応する吸光度。
残存カルバメート、ビウレット及びイソシアヌレート基の僅かな存在。
【0110】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー及び赤外線分析による分離後に得られたオリゴマーの分散性を下記に示す。
【表1】

【0111】
実施例2〜6:HDI及びRhodasurf LA30アロファネート化合物の合成
Rhodasurf LA30(表中ALC 1として表す。)をアルコールとして使用し、所定のパラメータの改変、異なるNCO/OH割合、ジオールの存在又はポリオールの存在、及び反応時間、を行う以外は実施例1と同様に行った。使用されたポリオールは、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールコポリマーである。
【0112】
【表2】

ポリオール=ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)
【0113】
得られた化合物の特性
【0114】
【表3】

コメント:生成物中に存在する残存HDI量は常に0.3%未満であった。
【0115】
実施例7〜9:HDI及びRhodasurf ISA2アロファネート化合物の合成
手順は、Rhodasurf ISA2をエトキシ化された脂肪族アルコールとして使用した以外は上記実施例と同じである。使用された他のアルコールはエチレングリコールである。
【0116】
【表4】

ポリオール=ポリ(エチレングリコール−ran−プロピレングリコール)
【0117】
得られた化合物の特性
【表5】

【0118】
実施例10:HDI及びRhodasurf L3アロファネート化合物の合成
Rhodasurf L3をエトキシ化されたアルコールとして使用した以外は実施例1と同様に行った。実施例2〜6では、他の幾つかのパラメータ、NCO/OH割合、ジオールの存在又はポリオールの存在、及び反応時間等を改変した。
使用されたポリオールは、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールコポリマーである。
【0119】
【表6】

【0120】
得られた化合物の特性
【表7】

【0121】
実施例11〜13:本発明の組成物の調製
実施例7〜9の生成物を24時間ポットローラで、下記特性を示すTolonate HDT型ポリイソシアネートと混合した。
粘度=25℃で2184mPa.s、%NCO=21.4%、100%固体含量
様々なバルク組成物の特性を下記表に示す。
【0122】
【表8】

【0123】
実施例14〜16(比較用):市販組成物
これらは下記特性を有する市販製品である。
【表9】

【0124】
用途の実施例17〜22
アクリルワニス配合物の調製
これは自動車修理用の二成分ワニス配合物である。
A部:化合物を下記表の順番で撹拌した(商品名Dispermat撹拌装置)。
【表10】

【0125】
B部:実施例11〜16の製品を下記割合で単純混合して希釈し、B部用に同一の固体含量を得た。
【表11】

希釈溶媒は、重量比割合52/48の酢酸ブチル及びメチルアミルケトン混合物からなる。
【0126】
使用前のカップ粘度の調整
A及びB部は、NCO/OH割合を1.1で適用され、DIN4カップを使用して23℃で測定されて20〜22秒の粘度へ戻されるように意図された。カップ粘度の調整は、下記組成物を含む混合物を希釈して行われた。
【0127】
【表12】

【0128】
A及びB部を表中に記載された割合で混合し、DIN4カップで23℃での粘度を測定した。その後、粘度を上記溶媒の混合物で調整した。
使用される量は下記の通りであった。
【表13】

【0129】
比較例に対し、本発明の実施例では同一の適用粘度を得るために溶媒追加が不要であった。このことは、本発明の使用可能状態の組成物は、揮発性有機化合物類(VOCs)をより少なく含むことを意味する。
【0130】
ポットライフの測定
ポットライフ(品質維持期間)として、粘度が二倍になるのに必要な時間を測定した。
この値は粘度=f(時間)曲線から外挿される。非常に短いポットライフは、A及びB部がポット内で架橋する前に、使用者が使用可能な充分な時間が無いので、不確かである(problematic)。
【0131】
【表14】

本発明の実施例は、比較例の製品に匹敵するポットライフを示した。
【0132】
フィルム特性/ガラスシートへのワニス配合物の適用の測定
組成物をガラスシートへ適用し(濡れ厚み=200μm)、溶媒を周囲温度で20分蒸発させ、次に60℃で30分架橋した。7日後、下記特性を評価した。
光沢
コーティングの光沢は、最も有用で測定可能な特性の一つである。原則は、光線を、20°、60°又は85°の角度で測定表面上に照射した。反射された光線は光電子セルにより収集される。測定装置は検流計によって、光沢に比例する0〜100の値を示す。セラミック標準を、比較対象として最大値を示すものとした。光沢は、%(又は光沢単位)で表される。光沢は、7日間23℃、50%相対湿度で乾燥後に、グロスメータ装置(BYK社製)を使用して測定される。
【0133】
【表15】

全てのフィルムは、光沢外観を示し、ヘイズが非存在である特徴を有した。
【0134】
耐薬品性
多数の攻撃的(aggressive)薬品に関する耐薬品性を評価した。フィルムを様々な攻撃的薬品をしみ込ませた綿パッドに暴露した。一定時間経過後、フィルムの視覚的評価を、攻撃的薬品に応じて0〜5又は6(0=フィルム変化無し、5又は6=フィルム破壊)のグレード分けで行った。下記実施例では、接触時間は、水(16時間)以外は全化合物とも1時間である。
60℃、30分での乾燥
【0135】
【表16】

本発明の実施例19は、比較用製品のそれと同様の耐薬品性特性を得ることを可能にした。
【0136】
用途の実施例23〜27
フィルム特性/金属板へのワニス配合物の適用の測定
エアガンでのプライマ−塗布を、予め脱脂されたR46型スチール板(Q−Panel社により販売)へ行った。
プライマ−は、使用前に混合され、C部(溶媒)で希釈されたA部及びB部から構成された。
プライマ−の組成重量比は下記の通りである。
【0137】
【表17】

A部:Glasurit社製、商品名285−60VOCグレイプライマ−
B部:下記組成を有する硬化剤
【0138】
【表18】

【0139】
C部:下記組成を有する溶媒の混合物
【表19】

【0140】
板のコーティングを60℃で30分間架橋した。その後、エアガンにより下記組成重量比を有するベースコートを適用した。
【表20】

【0141】
ベースを23℃で3時間乾燥し、次に実施例7〜11の組成物のワニスコートをエアガンで行った。
次に板のコーティングを、7日間制御雰囲気下で架橋した(23℃、50%相対湿度)。
この7日間終了後、下記評価を実施した。
【0142】
ボール落下による耐衝撃強さ試験
クラック又は部分剥離の外観を評価することにより、スチール板上のペンキ又はワニスフィルムの耐衝撃性を評価した。
この試験は、コーティングへ特定寸法及び重量の部材を衝突させることからなり、その落下高さは調整できる。そして、ペンキのフィルムが衝撃により損傷される最大高さを決定した。
2種のボール落下試験装置(Erichsen社製)を使用でき、一方はISO6272に準じるAFNOR衝撃用設備(重量1000g)を備え、もう一方はD2794に準じるASTM衝撃用設備(重量910.3g)を備える。
得られた結果は、クラックが発生する直前に得られた最大高さを示す。
【0143】
【表21】

全ての生成物は上記試験に合格した。
【0144】
摩擦試験(溶媒存在下での摩擦耐性試験)
ペンキ又はワニスのフィルムを、溶媒(メチルエチルケトン)をしみ込ませた綿パッドで繰り返し摩擦動作にかけ、その後試験した部分を評価した。フィルムがべとつくT/F値(〜+/−10)、又はフィルムが破壊され始めるT/F値(〜+/−10)を記録した。
フィルムが試験中に溶解しなかった場合を「>200」とし、光沢が肉眼で識別できなくなった場合(LG:光沢消滅)を「>200LG」と記録した。
【0145】
【表22】

【0146】
用途の実施例28〜35
実施例11〜13から得られる生成物を、下記割合の自己エマルジョン可能組成物を調製するために使用した。
実施例31及び35は、市販のTolonate HDT LV2を使用した比較用実施例である。
【0147】
【表23】

【0148】
第一ステップでは、リン酸エステルをジメチルシクロヘキシルアミンにより、2種の製品を撹拌で混合して中和した。他の成分を、中和により形成された塩へ添加し、ポットローラを使用して1時間混合した。
【0149】
アクリルワニス配合物の調製
ここでは、一般的産業用途用二成分ワニス配合物に関する。
添加剤の混合物を、下記組成物重量比で最初に調製した。
【表24】

【0150】
次に、A部を調製した。
A部の調製:
化合物を下記表の順に攪拌しながら(商品名Dispermat撹拌装置)投入した。
【表25】

【0151】
B部の調製:
実施例28〜35の生成物を、下記割合で商品名ProglydeDMM(Dow社製)と共に単純混合して、希釈した。
【表26】

【0152】
その後A部及びB部を下記割合で手動撹拌混合し、NCO/OH割合を全ての調製物で一定にした。
【表27】

【0153】
混合の品質を下記評価基準により評価した:
均一な混合物を得るために必要な時間。この時間は秒で評価した。
フィラメント又は粒子の存在(不存在0から多量存在の5まで区分けした)
30分間静置後の沈殿物の発生(不存在0から多量沈殿の5まで区分けした)
【0154】
【表28】

【0155】
組成物は、非常に容易に手動で分散可能であり、安定して存在した。本発明で得られる生成物は、特に問題なく自己乳化可能組成物の調製を可能とする。
更に、表23に記載された配合物において、本発明の生成物の割合を上昇させると、フィルムの光沢及びヘイズを改良でき、これは適合性(compatibility)改良の指標である。
【0156】
【表29】

【0157】
実施例36:イソシアヌレート三量体5%未満の量でのアロファネートの合成に対するカルボキシレート中のナトリウムの影響(impact)
546gのHDI(3.25mol)、次に193gのRhodasurf LA30(0.54mol)及び0.19gのビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)(触媒)(1.06×10-4mol)(n−ブタノール中にビスマス12%を含有する溶液)を、窒素流下撹拌器を備えた三つ首反応器へ投入した。Rhodasurf LA30中に存在する酢酸塩の形でのナトリウム量は、66ppmである。反応媒体を96分間加熱して温度140℃とした。反応媒体をこの温度で約1時間維持した。反応媒体のNCO含量を、定期的にジブチルアミン分析方法により測定した。反応は、反応媒体のNCO含量が予測される理論的含量となった時に、2−エチルヘキサノール中に配合された0.68gのパラトルエンスルホン酸添加により停止した。30分後、反応媒体の温度を周囲温度へ戻した。
出発反応媒体のNCO含量は、100g当たり0.884molであった。最終反応媒体のNCO含量は100g当たりNCO0.762molであった。
その後2回の連続的薄膜式蒸留を真空下(約1mmHg未満)で温度160℃で行い、未反応のモノマーの大部分を除去した。
蒸留後に回収された生成物量は381gであった。NCO含量は100g当たり0.267mol、即ち11.21重量%であった。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー及び赤外線分析による分離後に得られたオリゴマーの分散性を下記に示す。
【0158】
【表30】

以上より、イソシアヌレート三量体含量は実際に、5重量%未満であることが確認された。
【0159】
実施例37(比較用)
ナトリウムを酢酸塩の形で400ppm含有するRhodasurf LA30を使用した以外は、実施例36と同じ手順で行った。
540gのHDI(3.2mol)、次に200gのRhodasurf LA30(0.55mol)及び0.2gのビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)(1.06×10-4mol)を、n−ブタノール中にビスマス12%を含有する溶液と共に、窒素流下撹拌器を備えた三つ首反応器へ投入した。反応媒体の温度を上昇させた。10分後、反応媒体の温度は70℃に達した。驚くべきことに、温度は急激に指数的に上昇し、1分間で温度195℃に達した。そして反応媒体は固体化した。反応媒体の分析は、HDI及びn−ブチルアロファネートとは別に、主成分としてイソシアヌレート三量体及びイソシアヌレートポリ三量体の形成を示した。
従って、生成物は、目的とする生成物には該当しない。
【0160】
実施例38(比較用)
ナトリウムを酢酸塩の形で250ppm含有するRhodasurf LA30を使用した以外は、実施例36と同じ手順で行った。
530gのHDI(3.2mol)、次に205gのRhodasurf LA30(0.55mol)及び0.2gのビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)(1.06×10-4mol)を、n−ブタノール中にビスマス12%を含有する溶液と共に、窒素流下撹拌器を備えた三つ首反応器へ投入した。反応媒体の温度を上昇させた。15分後、反応媒体の温度は80℃に達した。驚くべきことに、反応媒体に制御不能な発熱反応が観察され、固体化した。反応媒体の分析は、HDI及びn−ブチルアロファネートとは別に、主成分としてイソシアヌレート三量体及びイソシアヌレートポリ三量体の形成を示した。
従って、生成物は、目的とする生成物には該当しない。
【0161】
実施例39(比較用)
200gのRhodasurf LA30、その酢酸塩形態にあるナトリウム濃度は400ppmである、をペンダントSO3H基を有するイオン交換樹脂に通過させた。樹脂通過後のナトリウム含量は0ppmであった。
合成を実施例36と同様に行った。
反応速度は、非常に低下し、パラトルエンスルホン酸の追加を、反応5時間後に行った。
反応媒体中の酢酸塩の形でのナトリウム不存在は、反応時間の増大を招くことが示された。
【0162】
実施例40(酸化防止化合物を使用したプロセス)
2416gのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(14.37mol)、次に480gのRhodasurf LA30(1.34mol)及び33.2gのビスマストリス(2−エチル−ヘキサノエート)(4.32×10-4mol)のn−ブタノール溶液(濃度:0.831重量%)を、窒素流下撹拌器を備えた三つ首反応器へ投入した。
Rhodasurf LA30中に存在する酢酸塩の形でのナトリウム量は、18ppmである。
トリブチル亜リン酸及び2,6−ジ(tert−ブチル)−4−メチルフェノール(それぞれ66.6/33.4重量%)からなる酸化防止剤の混合物0.89gを、反応媒体へ添加した。反応媒体の加熱を温度140℃まで114分間行った。反応媒体のNCO含量を、定期的に測定した。114分後、反応媒体のNCO含量がNCO100g当たり0.914molとなった。2.8gのパラトルエンスルホン酸の2−エチルヘキサノールの10%溶液(パラトルエンスルホン酸/ビスマス金属モル比は3.4)を添加して反応を停止した。162分後、NCO含量は100g当たり0.907molであった。30分後、反応媒体の温度を周囲温度へ戻した。反応媒体の着色は35hazenであった。
その後、反応媒体を蒸留し、HDIモノマーを除去した。回収された生成物の重量は1159gであった。反応媒体のNCO含量は、100g当たり0.311mol、即ち13.062%であった。ビスマスは最終生成物中に95%を超える量であった。反応媒体中に存在するイオウ濃度は16ppmであった。反応媒体の粘度は、25℃で128mPa.sであった。
蒸留されたHDIは、その後リサイクルされ、そのHDI中に存在するイオウ濃度は2.8ppmであった。
反応媒体の組成は下記に示される。
【0163】
【表31】

【0164】
実施例41(酸化防止化合物を使用したプロセス)
反応を85℃で行った以外は実施例40と同様の手順で行った。
2402gのヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(14.28mol)、次に481gのRhodasurf LA30(1.34mol)及び33.3gのビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)(8.28×10-4mol)のn−ブタノール溶液(濃度:1.589重量%)を、窒素流下撹拌器を備えた三つ首反応器へ投入した。Rhodasurf LA30中に存在する酢酸塩の形でのナトリウム量は、30ppmである。トリブチル亜リン酸及び2,6−ジ(tert−ブチル)−4−メチルフェノール(それぞれ66.6/33.4重量%)からなる酸化防止剤の混合物2.2gを、反応媒体へ添加した。反応媒体の加熱を温度85℃まで55分間行った。反応媒体のNCO含量を、定期的に測定した。136分後、反応媒体のNCO含量がNCO100g当たり0.84molとなり、142分後、2.8gのパラトルエンスルホン酸の2−エチルヘキサノールの10%溶液(パラトルエンスルホン酸/ビスマス金属モル比は3.4)を添加して反応を停止した。停止剤添加の30分後、NCO含量は100g当たり0.83molであった。30分後、反応媒体の温度を周囲温度へ戻した。反応媒体の着色は15hazenであった。
その後、反応媒体を蒸留し、HDIモノマーを除去した。回収された生成物の重量は1141gであった。反応媒体のNCO含量は、100g当たり0.296mol、即ち12.43%であった。反応媒体の粘度は、25℃で148mPa.sであった。
蒸留されたHDIは、その後リサイクルされ、そのHDI中に存在するイオウ濃度は2.8ppmであった。
蒸留前の反応媒体の組成は下記に示される。
【0165】
【表32】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の同一又は異なるイソシアネートのアロファネートの製造プロセス、又は異なるアロファネートの混合物の製造プロセスであって、1(又はそれ以上)のイソシアネートを少なくとも1の、エーテル又はポリエーテル基含有モノアルコールと反応させて行われるプロセスであり;
この反応は触媒としてビスマス含有化合物及び共触媒として金属化合物の存在下で行われ、その金属化合物の含量はモノアルコール量に対して0.5〜100ppmであることに特徴を有する製造プロセス。
【請求項2】
上記金属化合物はアルカリ金属又はアルカリ土類金属のカルボキシレートから選ばれる、請求項1記載の製造プロセス。
【請求項3】
上記モノアルコールは、(ポリ)アルキレンオキシド基、好ましくは(ポリ)エチレンオキシド基を含む、請求項1又は2記載の製造プロセス。
【請求項4】
上記モノアルコールは、式R−[O−CH(R1)−CH2n−OHの化合物であり、但し、R1はH、若しくはアルキル基、好ましくはC1−C8アルキル基、特にメチル基、又はポリエーテル基、特に−CH2OR10基であり、R10は炭化水素鎖、特にポリオキシアルキレン鎖、好ましくはポリオキシエチレン鎖であり、nは有利には1〜10、好ましくは1〜5の整数であり、Rは直鎖状又は分岐状C1−C20アルキル基であるか、RはR2−CO−基でありR2は直鎖状又は分岐状C1−C20アルキル基である、請求項1〜3いずれか1項記載の製造プロセス。
【請求項5】
上記ビスマス含有化合物は、式Bi(R1、R2、R3)の化合物であり、但し、R1、R2及びR3は同一又は異なる炭化水素分子であり、1〜50炭素原子、好ましくは1〜25炭素原子である複数の炭素を有し、ビスマス原子に結合可能な少なくとも1の官能基を有し、その水中でのpKaは1を超え、好ましくは2を超えるものである、請求項1〜4いずれか1項記載の製造プロセス。
【請求項6】
上記ビスマス含有化合物は、カルボン酸、アルコール、ヒロドキシカルボネート、チオール、アミン及びカルバモイル(−NH−C=O)から選ばれる少なくとも1の官能基を含む、請求項1〜5いずれか1項記載の製造プロセス。
【請求項7】
上記ビスマス含有化合物は、ビスマストリアセテート、ビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)、ビスマストリス(デカノエート)、ビスマストリス(パルミテート)、ビスマスサブサリシレート、次没食子酸ビスマス及び乳酸ビスマスから選ばれる、請求項1〜6いずれか1項記載の製造プロセス。
【請求項8】
上記イソシアネートはイソシアネートモノマーである、請求項1〜7いずれか1項記載の製造プロセス。
【請求項9】
上記イソシアネートモノマーは、下記条件の少なくとも1、有利には2、好ましくは3を充足する、請求項8記載の製造プロセス:
条件(1):少なくとも1個、有利には2個のNCO基が飽和(sp3)炭素を介して炭化水素主鎖へ結合している、
条件(2):少なくとも1個、有利には2個の上記飽和(sp3)炭素は、少なくとも1個、有利には2個の水素を有する、及び
条件(3):そこからイソシアネート基が炭化水素主鎖へ結合されている中間の炭素全ては飽和(sp3)炭素であり、それらの幾つか、好ましくは全ては、有利には1個の水素、好ましくは2個の水素を有する。
【請求項10】
上記NCO/OH割合は2を超え、好ましくは4を超える、請求項1〜9いずれか1項記載の製造プロセス。
【請求項11】
上記アロファネートは一般式(II)で表される請求項1〜10いずれか1項記載の製造プロセス:
【化1】

但し:
4及びR6は同一又は異なる炭化水素基であり、特に脂肪族、環状脂肪族、複素環式又は芳香族炭化水素基であり、真の又は誘導されたイソシアネート基を有し、
5は、エーテル又はポリエーテル基含有モノアルコール化合物のOH基の水素の反応後の残基である。
【請求項12】
上記アロファネートの混合物は、モノアロファネート、好ましくは約1/4、有利には約1/3、更に好ましくは約1/2(重量比)のモノアロファネートを含む、請求項1〜11いずれか1項記載の製造プロセス。
【請求項13】
上記イソシアネートはウレタンである請求項1〜7いずれか1項記載の製造プロセス。
【請求項14】
イソシアネートとモノアルコールとの反応は、更に酸化防止化合物の存在下で行われる請求項1〜11いずれか1項記載の製造プロセス。
【請求項15】
請求項1〜14いずれか1項記載の製造プロセスにより得ることのできる、アロファネート又はアロファネートの混合物。
【請求項16】
請求項15記載の、又は請求項1〜14いずれか1項記載の製造プロセスにより得られるアロファネートの、低粘度ポリウレタン製造のための使用。
【請求項17】
少なくとも1の真の三量縮合体多官能性イソシアネート及び請求項15記載のアロファネート又はアロファネートの混合物を含む、低粘度の、三量縮合体多官能性イソシアネートの組成物。
【請求項18】
上記三量縮合体多官能性イソシアネートは下記一般式で表される、請求項17記載の組成物:
【化2】


但しAは下記のいずれかの基である:
下式のイソシアヌレート基:
【化3】


下式のイミノオキサジアジンジオン等の、イソシアヌレート基誘導体の一種:
【化4】


下式のオキサジアジントリオン等の、イソシアヌレート基誘導体の一種:
【化5】

下式のビウレット基:
【化6】

但し、BはH又は、炭化水素基、即ち、炭素及び水素を含有する基であり、任意で他の原子(O、S、Si等)を含み、好ましくは1〜20炭素原子を有する基である;
又は下式の基:
【化7】

但しnは3〜4の整数である:
更に、式(I)のR1、R2及びR3は同一又は異なり、真の又は誘導されたイソシアネート基を有する、炭化水素基、特に脂肪族、環状脂肪族、複素環式又は芳香族炭化水素基であり、Qは炭化水素基、好ましくはR1〜R3のために定義されたアルキル基であり、mは0〜2の整数である。
【請求項19】
少なくとも1の真のイソシアヌレートポリイソシアネートを含む請求項17又は18記載の組成物。
【請求項20】
少なくとも5%、好ましくは少なくとも15%の、請求項14記載のアロファネート又はアロファネートの混合物を含む、請求項17〜19いずれか1項記載の組成物。
【請求項21】
少なくとも1の真の三量縮合体多官能性イソシアネート及び少なくとも1のモノアロファネートを含む、請求項17〜20いずれか1項記載の組成物であって、上記組成物は、組成物総重量に対し15%未満、有利には5%未満、好ましくは1%未満の三量縮合体で形成されたアロファネートを含む組成物。
【請求項22】
少なくとも1の真の三量縮合体多官能性イソシアネート及び少なくとも1のアロファネートを含む請求項17〜21いずれか1項記載の組成物であって、下記条件の少なくとも1、有利には2、好ましくは3を充足する組成物:
条件(1):アロファネート/(アロファネート+真の三量体)重量比割合が2.5〜99%、有利には3〜60%、好ましくは3.5〜40%である、
条件(2):三量縮合体は三縮合反応から生じ、同一又は異なるイソシアネートモノマー又はモノマーから、組成物中に存在する三量縮合体多官能性ポリイソシアネートを生じるための変換率は8%を超え、好ましくは10%を超え、有利には15%を超える。
条件(3):ビウレットが少なくとも1重量%かつ最大で99重量%、好ましくは少なくとも2重量%かつ最大で75重量%存在する。
【請求項23】
請求項17〜22いずれか1項記載の組成物の、塗膜製造のための使用。

【公表番号】特表2012−511042(P2012−511042A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540160(P2011−540160)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052443
【国際公開番号】WO2010/067005
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(509026057)ペルストープ・フランス (3)
【氏名又は名称原語表記】PERSTORP FRANCE
【住所又は居所原語表記】196 Allee Alexandre Borodine,F−69800 Saint−Priest,FRANCE
【Fターム(参考)】