説明

アンカーボルトの据付治具および該据付治具を用いた杭基礎の施工方法

【課題】杭と構造物柱脚との接合部を構築する杭基礎施工において、アンカーボルトを鋼管内に適切に据付ける際に用いるアンカーボルトの据付治具と、該据付治具を用いた杭基礎の施工方法を提供する。
【解決手段】杭頭部にアンカーボルト29を内蔵した鋼管コンクリートを形成して杭と構造物柱脚との接合部を構築する杭基礎施工において、前記アンカーボルト29を鋼管17内に据付ける際に用いるアンカーボルトの据付治具であって、一対の一次据付水平材1と一対の二次据付水平材6と高さ調整金物11と、アンカーポスト20およびテンプレート33からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭施工により地中に埋設した杭の杭頭部に、アンカーボルトを内蔵した鋼管コンクリートを形成して杭と構造物柱脚との接合部を構築するアンカーボルトの据付治具、および該据付治具を用いた杭基礎施工に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築・土木構造物の杭基礎工事において、杭と構造物柱脚との接合は、例えば鉄筋コンクリート造のフーチングを造成することなどによりなされている。しかし、フーチングを用いる場合には、フーチングおよび柱の鉄筋や型枠が現場施工となるため、多くの職種が必要で工期が長くなり工費も高くつくといった問題がある。
【0003】
そこで、フーチングを用いない施工方法が開発されてきている。例えば、特許文献1には、中空部を有する杭の杭頭部に捨て型枠としての杭頭型枠を設置して、現場打ちコンクリートによる上面が水平なアンカーフレーム支持部を形成し、そのアンカーフレーム支持部上面にアンカーフレームを据え付け、アンカーフレームにアンカーボルトを固定し、杭の杭頭部およびアンカーボルトを取り囲むように内面突起付き鋼管を配し、その内面突起付き鋼管の内部にコンクリートを充填し、アンカーボルトに鉄骨柱の脚部を接合するようにした杭と柱脚の接合部が開示されている。
【0004】
一方、地中に埋設された杭もしくは杭頭部と構造物からの柱等を接合するには、接合部材や支持部材の上下方向および水平方向の位置を調整しながら設置する必要があるため、種々の位置決め装置や位置決め方法が検討されてきている。
【0005】
例えば特許文献2には、溝形鋼材からなる一対の水平縦材等からなる水平枠と、溝形鋼材からなる一対の位置決め横材等からなる位置決め枠とを用いた柱と鋼管杭の位置決め装置が開示されている。
【0006】
この他、特許文献3には、L字状のアングル材による建方用フレームにより水平調節をした鉄骨柱と既成杭との接合方法が開示されている。
【0007】
特許文献4には、一対のアングル材により水平レベル出しを行いつつ、その上に載置される4本のアングル材からなる柱脚用アンカーフレームを定着する装置が開示されている。
【0008】
特許文献5には、一対の1次渡し部材と一対の2次渡し部材からなるアンカーボルトのセット装置が開示されている。
【0009】
また、特許文献6には、長孔のある一対のアングル材からなるレベル架台と、長孔のある一対のアングル材からなる位置決め用横材と、高さ調整可能な取付治具等からなる柱固定用部材設置装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第2964924号公報
【特許文献2】特開2008−31650号公報
【特許文献3】特開2007−255006号公報
【特許文献4】特開2002−250039号公報
【特許文献5】特公平7−18253号公報
【特許文献6】特開2006−291550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2〜6に示されるように、従来からアングル材等を用いた位置決め装置が種々開発されている。しかし、これらの位置決め装置は、杭と柱を直接接合する際に用いるものやアンカーボルトを杭等に直接固定する際に用いるものであり、構造物の柱脚と杭とを接合すべく杭頭上に設置された鋼管内にアンカーボルトを位置決めして据付けるようにしたものではない。
【0012】
前記特許文献1〜6も含め、杭頭部にアンカーボルトを内蔵した鋼管コンクリートを形成して杭と構造物柱脚との接合部を構築するアンカーボルトの据付治具を用いた杭基礎の施工については十分検討されてきていない。
【0013】
本願発明は、上述のような課題の解決を図ったものであり、その目的とするところは、杭頭部にアンカーボルトを内蔵した鋼管コンクリートを形成して杭と構造物柱脚との接合部を構築する杭基礎施工において、アンカーボルトを鋼管内に適切に据付けることができるアンカーボルトの据付治具、および該アンカーボルトの据付治具を用いた効率的な杭基礎の施工方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願の請求項1に係るアンカーボルトの据付治具は、杭頭部にアンカーボルトを内蔵した鋼管コンクリートを形成して杭と構造物柱脚との接合部を構築する杭基礎施工において、前記アンカーボルトを鋼管内に据付けるためのアンカーボルトの据付治具であって、互いに間隔をおいて設置される一対の一次据付水平材と、前記一対の一次据付水平材の両端部をそれぞれ前記鋼管の上端部に対し高さ調整可能に支持する合計4つの高さ調整金物と、前記一対の一次据付水平材上に互いに間隔をおいて設置される一対の二次据付水平材と、前記一対の二次据付水平材間に設置され、二次据付水平材に吊り支持されるアンカーポストと、前記アンカーポストの上端に取り付けられ前記アンカーボルトを所定位置に吊り支持するためのテンプレートとからなることを特徴とするものである。
【0015】
前記鋼管は、杭の上端部を含んだ杭頭部に(特許文献1の図1参照)、あるいは杭上端部上(図6(b)参照)に設置される。アンカーポストは、例えば中央に芯合せ孔のあるトッププレートと上部外側面に吊り孔とアンカーボルト用ブラケットとを備える形状のものなどが用いられ、これを前記鋼管内に設置することによって、直接的に芯合わせをすることが可能となる。
【0016】
本願発明の据付治具は、アンカーボルトを上述の鋼管内に適切に設置するための位置決めおよび水平レベル調整治具であり、一対の一次据付水平材と、一対の二次据付水平材と、高さ調整金物と、アンカーポストなどからなる。
【0017】
これらによる本発明の据付治具は、据付け前は一体的なものではなく、各部品あるいは部材としてバラバラに存在する。なお、一次据付水平材、二次据付水平材としては、いわゆる山形鋼などのアングル材が適するが、これに限定されるものではなく、各種、形鋼を含む棒状の鋼材を用いることができる。
【0018】
本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係るアンカーボルトの据付治具において、前記一次据付水平材および前記二次据付水平材はアングル材からなり、前記一次据付水平材の上面側に位置する水平片の中央部付近には前記二次据付水平材とボルト接合するためのルーズホールが形成され、該水平片の下方に位置する鉛直片の両端部付近にはそれぞれ前記高さ調整金物にボルト接合するためのルーズホールが形成されており、前記二次据付水平材の下面側に位置する水平片の両端部付近には一次据付水平材とボルト接合するためのルーズホールが形成され、該二次据付水平材の上方に位置する鉛直片の中央部付近には前記アンカーポストをボルト接合するためのボルト孔が形成されており、前記高さ調整金物は前記一次据付水平材の鉛直片とボルト接合するためのルーズホールを形成した支持板と高さ調整ボルトとを備えたものであることを特徴とするものである。
【0019】
この請求項2では、一次据付水平材および二次据付水平材は所定の位置にルーズホールが設けられた一対のアングル材からできている。それによって、水平方向に位置調整が容易となる。
【0020】
また、高さ調整金物(以下、「調整金物)という)は高さ調整ボルトとルーズホールのある支持板とからなる。支持板は前述の鋼管の開口部付近の外側面に取り付けられる。高さ調整ボルトはボルトとナットとからなり、一次据付水平材の高さを調整し水平レベルを出すためのものである。
【0021】
本発明の据付治具をこのような構造のものにすることによって水平レベルが得られやすくなり、アンカーボルトの適切な据付けが容易となる。
【0022】
本願の請求項3に係る杭基礎の施工方法は、杭頭部にアンカーボルトを内蔵した鋼管コンクリートを形成して杭と構造物柱脚との接合部を構築する請求項1または2記載のアンカーボルトの据付治具を用いた杭基礎の施工方法であって、次の工程を含むことを特徴とするものである。
【0023】
(1) 杭頭部に上面が略水平な支持部材を形成する。
【0024】
(2) 上端部外面に前記高さ調整金物を取り付けた鋼管を、前記支持部上面に、軸芯、鉛直度を調整してセットする。
【0025】
(3) 前記鋼管の開口上端部に前記一対の一次据付水平材を、前記高さ調整金物により水平を保ちながら略平行に仮セットする。
【0026】
(4) 前記一次据付水平材上に、前記アンカーポストの幅に合わせて略平行に一対の二次据付水平材を仮セットする。
【0027】
(5) 上面中央に芯合せ孔のあるトッププレートを備えたアンカーポストを、前記鋼管の上方から所定の位置に吊り込み、該アンカーポストの外側面上部に形成した貫通ボルト用孔を前記二次据付水平材の鉛直片に形成した前記ボルト孔に合わせて貫通ボルトを通し、前記二次据付水平材に吊り支持させる。
【0028】
(6) 前記トッププレート上に、中央に芯合せ孔を有し、周辺部に複数のアンカー孔を形成したテンプレートを取り付ける。
【0029】
(7) 前記芯合せ孔と前記複数のアンカー孔の一つに各々下げ振りを挿入し、2つの下げ振りを通り墨に合せ、前記二次据付水平材を前記一次据付水平材に固定する。
【0030】
(8) 前記高さ調整金物の高さ調整ボルトにより、間接的に前記テンプレートの水平レベルを調整し、前記一次据付水平材を前記鋼管の開口上端部に本セットする。
【0031】
(1)の支持部は、例えば、いわゆる捨てコン等によって、略水平に形成する。また、(5)に示すように、本発明の施工では、アンカーポストは中央に芯合せ孔のあるトッププレートを上面に有し、軸部は中空断面形状のものを用いる。このようなアンカーポストを用いることによって、直接的な芯合わせが可能となる。
【0032】
(6)のテンプレートは、鋼板等の剛性の高い板材が好ましく、アンカーボルトの据付精度を高めるために用いる。
【0033】
この杭基礎の施工方法の特徴は、鋼管とアンカーポストとを併用して杭と構造物柱脚との接合部を構築すること、この構築を適切になすために本発明の据付治具を用いアンカーポストを吊り上げた状態で位置決めをしてセットすることにある。このような施工方法を行うことによって、杭と構造物柱脚の接合が確実かつ強固となる。
【0034】
本願の請求項4に係る杭基礎の施工方法において、前記アンカーポストの外周位置に設置される鉄筋籠も、前記二次据付水平材に吊り支持させることを特徴とするものである。
【0035】
前述の通り、本発明の杭基礎の施工方法は、アンカーボルトの施工精度を高めるとともに接合部を強固にするために鋼管とアンカーポストを組み合わせて用いるが、これらに打設するコンクリートを耐久性のあるものとするには鉄筋コンクリートが好ましく、そのためには杭からのパイルスタッド(杭頭せん断補強筋)とアンカーポストとの間に鉄筋籠を設けることが好ましい。
【0036】
パイルスタッドとの干渉を避けるためには、鋼管の開口部上方から設置されるアンカーポストや鉄筋籠は、落とし込んで下部で固定するのではなく吊るした状態で設置されるのが好ましいが、本発明の据付治具を用いることにより、鉄筋籠も容易に吊るした状態で設置できる。
【発明の効果】
【0037】
本発明のアンカーボルトの据付治具(位置決め治具)を用いれば、杭頭部にアンカーボルトを内蔵した鋼管コンクリートを形成して杭と構造物柱脚との接合部を構築する杭基礎施工において、アンカーボルトを鋼管内に適切に据付けることができる。
【0038】
すなわち、アンカーボルトを吊るした状態で設置できるので、先行施工の杭頭鉄筋であるパイルスタッドの干渉を避けることができる。また、アンカーボルトの位置決めが容易である。
【0039】
したがって、アンカーボルトの施工精度を高めることができる。また、鉄筋籠を用いた場合は、鉄筋籠を容易に吊るした状態で設置できるので、打設するコンクリートを効果的に補強できる。
【0040】
一方、本発明の杭基礎の施工方法によれば、杭頭部にアンカーボルトを内蔵した鋼管コンクリートを形成して杭と構造物柱脚との接合部を強固かつ容易に構築することができる。この方法は、鉄筋コンクリート造のフーチング等が不要なので面倒な工事が不要で経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のアンカーボルトの据付治具を示したものであり、(a)は一次据付水平材の図、(b)は二次据付水平材の図、(c)は高さ調整金物の図である。
【図2】本発明に用いるアンカーポストを示したものであり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は(b)のB−B断面図、(e)は(b)のC−C断面図である。
【図3】本発明に用いるテンプレートを示す図である。
【図4】杭と柱脚との接合に用いる鋼管の図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は下部の断面図((d)のA−A断面図)、(d)は側面図である。
【図5】本発明に用いるアンカーボルトを示す図である。
【図6】本発明における据付治具と各種部材による接合部の組立構造例を示したもので、(a)は平断面図((b)のE−E断面図)、(b)は立断面図((a)のD−D断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0043】
A.アンカーボルトの据付治具
まず、本発明のアンカーボルトの据付治具について説明する。
【0044】
本発明のアンカーボルトの据付治具は、前述の通り、別々に存在する一対の一次据付水平材と、一対の二次据付水平材(本実施形態では、何れもアングル材)と、高さ調整金物と、アンカーポストと、テンプレートとからなるが、図1(a)に一次据付水平材を、図1(b)に二次据付水平材を、図1(c)に高さ調整金物を、図2にアンカーポスト、図3にテンプレートを示す。
【0045】
一次据付水平材1はアングル材(L字状鋼材)であり、各面にルーズホールが設けられている。図1(a)の上図は水平にセットされる面2の図であり、面2の中央には二次据付水平材6と接続するためのルーズホール3が設けられている。下図は立設してセットされる面4の図であり、面4の両端部付近には高さ調整金物により鋼管と接続するためのルーズホール5が設けられている。この一次据付水平材は、図1(a)のものを2本1組(一対)で用いる。
【0046】
二次据付水平材6もアングル材であり、図1(b)の上図に示すように、水平にセットされる面7の両端には一次据付水平材1と接続するためのルーズホール8が設けられている。下図は立設してセットされる面9の図であり、中央付近にはアンカーポストを取り付けるためのボルトを挿入するボルト孔10が一対設けられている。この二次据付水平材6も図1(b)のものを2本1組(一対)で用いる。
【0047】
図1(c)は高さ調整金物11を示す図である。図に示すように、高さ調整金物11は高さ調整ボルト12とルーズホール16のあるL字状の支持板15からなり、ナット13も備わっている。支持板15はルーズホール16の開口部を上向きにして予め鋼管開口部付近の外側面に溶接等で固定されている。ルーズホール16は高さ調整金物11を一次据付水平材に接続するために設けられている。
【0048】
高さ調整ボルト12は一次据付水平材1の水平高さを調整するためのものであり、これで各位置での高さを調整し、ルーズホール16と一次据付水平材1のルーズホール5とをボルトで固定することにより、一次据付水平材1の水平レベルの位置決めがなされる。
【0049】
図2は本願発明で用いるアンカーポスト20の一例を示したものである。アンカーポスト20は、上端にトッププレート21が設けられている。トッププレート21の中心には芯合せ孔26とテンプレート固定孔27が形成されている。芯合せ孔26は、アンカーポスト20の位置合わせのためにあり設けられている。
【0050】
トッププレート21は、柱の軸力を受けるために設けられており、テンプレート支持材を兼ねている。また、上部外側面の各面にはブラケット22が設けられている。
【0051】
ブラケット22の中央にはアンカーボルトを挿通するためのアンカー孔23がある。また、ブラケット22の上にはアンカーポスト20をレッカー等で吊り上げるための吊り孔25が備わっている。さらに、鋼管側面の中央より少し上の位置には、二次据付水平材6をアンカーポスト20に接続するための貫通ボルト用孔28がある。
【0052】
このアンカーポスト20が、一次据付水平材1および二次据付水平材6を介して吊った状態で支持されることにより、パイルスタッドとの干渉を避けて精度の高いアンカーボルトの施工ができる。
【0053】
図3は、前記アンカーポスト20のトッププレート21の上に設置されるテンプレート33の一例を示したものである。テンプレート33はアンカーボルト保持のために用いられる。テンプレート33の中心にも芯合せ孔34があり、外周部にアンカー孔35が設けられている。
【0054】
B.杭基礎施工に用いる各種部材
次に、本願発明の杭基礎施工に用いる各種部材について説明する。
【0055】
〔鋼管〕
図4は本願発明に用いる鋼管の一例を示したものであり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は下部の断面図((d)のA−A断面図)、(d)は側面図である。
【0056】
本発明の鋼管17は、杭と柱脚との接合部に杭からのパイルスタッドやアンカーポストを覆う形で設置される。鋼管17開口部付近の外側面には4箇所に前記高さ調整金物11が取り付けられている。また、別の外側面には一対の吊りピース18が設けられている。
【0057】
また、底部外側面の4箇所には高さ調整が可能な鋼管調整金物19と鋼管を支持部材に固定するための鋼管固定金具40があり、この鋼管調整金物19で鋼管17の水平レベル出しを行い、鋼管固定金具40で鋼管17を支持部材(杭頭部に打設したコンクリートもしくは杭の杭頭部)に固定する。鋼管調整金物19は前記高さ調整金物11と同様の形状のものである(詳細は省略)。
【0058】
〔アンカーボルト〕
図5は本願発明に用いるアンカーボルト29の一例を示したものである。アンカーボルト29は、一例として、直径24mm程度の鋼棒32からなる。鋼棒32の両端部はネジが切ってあり、上端部には上部ダブルナット30が、下端部には座金2枚付きの下部ダブルナット31が設けられている。
【0059】
このアンカーボルト29は、4本がテンプレートから鋼管17内に垂らされ、鋼管17内に打設される充填コンクリートによって固定される。
【0060】
C.接合部の組立構造例
図6は本願発明における据付治具と各種部材による接合部の組立構造の一例を示したもので、(a)は平断面図、(b)は立断面図である。
【0061】
PHC杭36からはパイルスタッド38が上方に向かって立設しており、それを取り囲む形でPHC杭36の径より大きな内径の鋼管17が鋼管固定金具40により支持部材37上に固定されている。
【0062】
鋼管は17は鋼管調整金具により水平レベル出しが行われ、鋼管17の開口部が水平になるように位置決めされている。鋼管17の開口部の上には一対の一次据付水平材1が高さ調整金物11により位置決めされ、鋼管17に接続されている。
【0063】
一次据付水平材1の上には、一対の二次据付水平材6が水平になるように高さ調整金物11により位置決めされ、一次据付水平材1に接続されている。パイルスタッド38の内側には鉄筋籠39が二次据付水平材6によって吊られた状態で配置され、その内側にはアンカーポスト20が二次据付水平材6に水平かつ鉛直に位置決めされ、固定され吊られた状態で配置されている。
【0064】
アンカーポスト20の上にはテンプレート33が設置され、このテンプレート33のアンカー孔とアンカーポスト20のブラケット22に設けられているアンカー孔を挿通させて、アンカーボルト29が鉄筋籠39とアンカーポスト20の間に4本立設されている。
【0065】
本発明のアンカーポスト据付治具や前記各種部材を用い、この例のような組立構造の接合部にすれば、杭と柱脚との強固な接合を効率良く構築できる。
【0066】
D.杭基礎の施工方法例
次に、図6に示す接合部の組立構造を構築する本発明の杭基礎の施工方法について説明する。
【0067】
(1) 支持部の形成
杭体からパイルスタッド38が立設されており、杭体の周囲が打設コンクリートにより平面となった支持部材37(鋼管17支持部)を形成する。
【0068】
(2) 鉄筋籠の仮設
複数のパイルスタッド38が環状に立設されている内側に鉄筋籠39を最上段のフープ筋をはずした状態で仮置きし、干渉するまたは干渉しそうなパイルスタッド38の位置を、適宜、長いパイプ等で矯正・補正する。
【0069】
(3)鋼管の設置
予め、高さ調整金物11や鋼管調整金物19等を取り付けた鋼管17をレッカーで吊上げ、杭芯墨に合せてパイルスタッド38の周囲にセットする。
【0070】
鋼管調整金物19の高さ調整ボルトは鋼管底部小口面から引っ込めておき、水平方向の微調整を人力で行い所定の位置に鋼管17をセットする。鋼管固定金具40を所定の位置にセットし、コンクリートドリル等で支持部材37にホールインアンカー用の孔を穿ける。ホールインアンカーと鋼管固定金具40で鋼管17を支持部材37に仮固定する。鋼管調整金物19の高さ調整ボルトを回して鋼管17の鉛直度を調整した後、鋼管固定金具40で鋼管17を完全に固定する。
【0071】
(4) 一次据付水平材の仮設置
水準器を用い、高さ調整金物11の高さ調整ボルトにより水平を保ちながら、一対の一次据付水平材1を人力で鋼管17の開口部縁上に所定の高さでセットする。なお、この時、一次据付水平材1の鋼管17への固定は取付ボルトを仮締めし仮固定としておく。
【0072】
(5) 二次据付水平材の仮設置
一対の二次据付水平材6を人力で一対の一次据付水平材1上にセットし仮固定する。
【0073】
(6) アンカーポストの設置
アンカーポスト20をレッカーで吊上げ、仮固定した一対の二次据付水平材6の間の所定位置に上方から落とし込み、レッカーで吊上げた状態で貫通ボルトを二次据付アングル6のアンカーポスト用のボルト孔とアンカーポスト20の貫通ボルト用孔に通し、アンカーポスト20と二次据付水平材6とを一体化する。
【0074】
(7) テンプレートの取付
罫書線に合せてアンカーポスト20のトッププレート上にテンプレート33をセットし2本のボルトで本締めして固定する。
【0075】
(8) アンカーボルトの取付
アンカーボルト29をテンプレート33のアンカー孔からアンカーポスト20のブラケット22に設けられたアンカー孔23に挿通し、下端の所定の位置に定着板をセットし、上端の余長に注意してアンカーボルト29を3本テンプレート33上に取付ける。
【0076】
(9) 芯出し
テンプレート33の中央の芯合せ孔34から下げ振りを挿入し、芯出し用定規をガムテープでテンプレート33に固定する。そして、アンカーボルト29を挿入していないアンカー孔35,23を利用してもう一つの下げ振りをセットする。
【0077】
(10) 鉄筋籠の仮設置
先に落とし込んでいた鉄筋籠39を引き上げ、鉄筋籠二段目のフープ筋を二次据付水平材6に仮番線で留め、あずける。あらかじめはずしておいた最上段のフープ筋を番線で取付け、前記仮番線を外し、鉄筋籠39を二次据付水平材6から吊るす。
【0078】
(11) 二次据付水平材、鉄筋籠の固定
前記2つの下げ振りを通り墨に合せ、二次据付水平材6の両端の中ボルトを本締めして二次据付水平材6を一次据付水平材1に固定する。この時、鉄筋籠39の位置も正規の位置に調整し、鉄筋籠固定バーを番線で留め付け、固定する。
【0079】
(12) 一次据付水平材の固定
4本目のアンカーボルトを取付け、テンプレート33の水平レベルを高さ調整金物11の高さ調整ボルトで調整後、高さ調整金物11の中ボルトを本締めして一次据付水平材1を鋼管17の開口部外周縁上に固定する。
【0080】
(13) 後処置
下げ振りを取り外し、ボルトのネジ山の養生を行って作業を終了する。
【0081】
以上の通り、本発明の杭基礎の施工方法(接合部の構造材の組立方法)によれば、各段階で各構造材の水平レベル出しや位置の微調整ができるので、アンカーポストやアンカーボルトの施工精度を高くすることができるとともに、構造材として鋼管、鉄筋籠、アンカーボルトを併用するので強固な接合部が得られる。また、テンプレートの水平レベルおよび水平位置出しも精度良く行っているので柱脚との接合も確実に行える。
【符号の説明】
【0082】
1…一次据付水平材、2…一次据付水平材の水平セット面、3…ルーズホール、4…一次据付水平材の立設セット面、5…ルーズホール、6…二次据付水平材、7…二次据付水平材の水平セット面、8…ルーズホール、9…二次据付水平材の立設セット面、10…アンカーポスト用ボルト孔、11…高さ調整金物、12…高さ調整ボルト、13…ナット、14…溶着金属、15…支持板、16…ルーズホール、17…鋼管、18…吊りピース、19…鋼管調整金物、20…アンカーポスト、21…トッププレート、22…ブラケット、23…アンカー孔、25…吊り孔、26…芯合せ孔、27…テンプレート固定孔、28…貫通ボルト用孔、29…アンカーボルト、30…上部ダブルナット、31…座金2枚付きの下部ダブルナット、32…鋼棒、33…テンプレート、34…芯合せ孔、35…アンカー孔、36…PHC杭、37…支持部材、38…パイルスタッド、39…鉄筋籠、40…鋼管固定金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭頭部にアンカーボルトを内蔵した鋼管コンクリートを形成して杭と構造物柱脚との接合部を構築する杭基礎施工において、前記アンカーボルトを鋼管内に据付けるためのアンカーボルトの据付治具であって、互いに間隔をおいて設置される一対の一次据付水平材と、前記一対の一次据付水平材の両端部をそれぞれ前記鋼管の上端部に対し高さ調整可能に支持する合計4つの高さ調整金物と、前記一対の一次据付水平材上に互いに間隔をおいて設置される一対の二次据付水平材と、前記一対の二次据付水平材間に設置され、二次据付水平材に吊り支持されるアンカーポストと、前記アンカーポストの上端に取り付けられ前記アンカーボルトを所定位置に吊り支持するためのテンプレートとからなることを特徴とするアンカーボルトの据付治具。
【請求項2】
前記一次据付水平材および前記二次据付水平材はアングル材からなり、前記一次据付水平材の上面側に位置する水平片の中央部付近には前記二次据付水平材とボルト接合するためのルーズホールが形成され、該水平片の下方に位置する鉛直片の両端部付近にはそれぞれ前記高さ調整金物にボルト接合するためのルーズホールが形成されており、前記二次据付水平材の下面側に位置する水平片の両端部付近には一次据付水平材とボルト接合するためのルーズホールが形成され、該二次据付水平材の上方に位置する鉛直片の中央部付近には前記アンカーポストをボルト接合するためのボルト孔が形成されており、前記高さ調整金物は前記一次据付水平材の鉛直片とボルト接合するためのルーズホールを形成した支持板と高さ調整ボルトとを備えたものであることを特徴とする請求項1記載のアンカーボルトの据付治具。
【請求項3】
杭頭部にアンカーボルトを内蔵した鋼管コンクリートを形成して杭と構造物柱脚との接合部を構築する請求項1または2記載のアンカーボルトの据付治具を用いた杭基礎の施工方法であって、次の工程を含むことを特徴とする杭基礎の施工方法。
(1) 杭頭部に上面が略水平な支持部材を形成する。
(2) 上端部外面に前記高さ調整金物を取り付けた鋼管を、前記支持部上面に、軸芯、鉛直度を調整してセットする。
(3) 前記鋼管の開口上端部に前記一対の一次据付水平材を、前記高さ調整金物により水平を保ちながら略平行に仮セットする。
(4) 前記一次据付水平材上に、前記アンカーポストの幅に合わせて略平行に一対の二次据付水平材を仮セットする。
(5) 上面中央に芯合せ孔のあるトッププレートを備えたアンカーポストを、前記鋼管の上方から所定の位置に吊り込み、該アンカーポストの外側面上部に形成した貫通ボルト用孔を前記二次据付水平材の鉛直片に形成した前記ボルト孔に合わせて貫通ボルトを通し、前記二次据付水平材に吊り支持させる。
(6) 前記トッププレート上に、中央に芯合せ孔を有し、周辺部に複数のアンカー孔を形成したテンプレートを取り付ける。
(7) 前記芯合せ孔と前記複数のアンカー孔の一つに各々下げ振りを挿入し、2つの下げ振りを通り墨に合せ、前記二次据付水平材を前記一次据付水平材に固定する。
(8) 前記高さ調整金物の高さ調整ボルトにより前記テンプレートの水平レベルを調整し、前記一次据付水平材を前記鋼管の開口上端部に本セットする。
【請求項4】
前記アンカーポストの外周位置に設置される鉄筋籠も、前記二次据付水平材に吊り支持させることを特徴とする請求項3記載の杭基礎の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−52389(P2012−52389A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197569(P2010−197569)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(507327730)株式会社住金システム建築 (8)
【Fターム(参考)】