説明

アンカー定着材及びそれを用いたアンカー定着方法

【課題】気温10℃以下の低温時における人力によるアンカー打設が可能となり、確実な強度発現性が得られるアンカー定着材の提供。
【解決手段】セメントとカルシウムアルミネートを含有してなる水硬性物質をヒートロン紙に封入してなるアンカー定着材。ヒートロン紙は紙目を有する。水硬性物質は、アルカリ金属炭酸塩、減水剤、保水性物質、細骨材を含有してもよい。該アンカー定着材は法面部の落石防護ネット固定用アンカーに使用する。該アンカー定着材は水に浸漬し、該アンカー定着材を穿孔内に充填し、アンカーを圧入し、該アンカー定着材を破壊する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンカー定着材及びそれを用いたアンカー定着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、法面部の補強・落石防止施工において、安全性や美観が重視されており、それに伴い落石防護ネットの使用が増えている。落石防護ネットを固定する方法として、エアー式打込機によるアンカー打設が行われている。又、設計強度が更に必要なところは躯体に穿孔し、無機性の水硬性物質や有機性樹脂が入ったカプセルを穿孔内に挿入し、アンカーを打設し、カプセルを破壊し、固定する方法がとられている。
【0003】
無機性の水硬性物質としてセメントが一般的である。法面のアンカー工法では、紙等の吸水材からなる容器にセメントと急結剤を収納したカプセル型定着材を水に浸し、穿孔に挿入し、ボルトを挿入する方法、カプセルを穿孔に挿入してから水を注入してボルトを挿入する方法、防水材からなる内容器と吸水材からなる外容器を具備したアンカー定着用カプセル内に急硬性セメントを封入する方法が提案された(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
アンカー定着用カプセルは、吸水時間を長く設計しても、ボルト定着が完了する前にカプセルから急硬性セメント材料が逸流しないことが求められるようになった。カプセル外殻に予め充分な水を吸収させることができるカプセルを使用する場合は、内殻部分を防水性材料で形成する必要があるため、急硬性セメント組成物自体に水を浸透しやすくし、硬化を均一にし、所望の定着力を得ることが求められるようになった。
【0005】
これに対して、作業性を向上させるために、吸水時間を10分まで設定でき、定着材の逸流がなく、かつ所定の定着力が得られるアンカー定着材用急硬性セメント組成物が提案された(特許文献3参照)。
【0006】
しかしながら、法面部では大型のアンカー打ち込み機等による作業ができないため、人力によるアンカー打設を行っている。人力によるアンカー打設においては、アンカー打設時のカプセルの破壊しやすさ、施工スピードの向上、確実な強度発現性が求められるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−225000号公報
【特許文献2】特開昭58−156698号公報
【特許文献3】特開2006−335586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、例えば、気温10℃以下のアンカー定着作業において、アンカー打設時の挿入抵抗を抑え、確実な強度発現性を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、セメントとカルシウムアルミネートを含有してなる水硬性物質をヒートロン紙に封入してなるアンカー定着材であり、ヒートロン紙が紙目を有する該アンカー定着材であり、紙目が幅方向と長さ方向からなり、幅方向に引張り強度1N/15mm以下の横目があり、長さ方向に引張り強度1.5N/15mm以上の縦目がある該アンカー定着材であり、ヒートロン紙の坪量が5〜100g/m2である該アンカー定着材であり、 寸法が、直径10〜60mm、長さ1200mm以下である該アンカー定着材であり、 水硬性物質が、アルカリ金属炭酸塩を含有する該アンカー定着材であり、水硬性物質が、減水剤を含有する該アンカー定着材であり、保水性物質を含有する該アンカー定着材であり、水硬性物質が、細骨材を含有する該アンカー定着材であり、該アンカー定着材を法面部の落石防護ネット固定用アンカーに使用することを特徴とするアンカー定着材の使用方法であり、該アンカー定着材を水に浸漬し、該アンカー定着材を穿孔内に充填し、アンカーを圧入し、該アンカー定着材を破壊することを特徴とするアンカー定着方法であり、該アンカー定着材を1.0〜40分間水に浸漬し、該アンカー定着材を穿孔内に充填し、アンカーを圧入し、該アンカー定着材を破壊することを特徴とするアンカー定着方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアンカー定着方法により、例えば、気温10℃以下の低温時における人力によるアンカー打設が可能となり、確実な強度発現性が得られるために安全性も向上するといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。又、本発明における部や%は、特に規定のない限り質量基準である。
【0012】
本発明で使用する水硬性物質は、セメントとカルシウムアルミネートを含有する。
【0013】
本発明で使用するセメントとしては、通常市販されている普通、早強、中庸熱及び超早強等の各種ポルトランドセメント、これらのポルトランドセメントにフライアッシュや高炉スラグ等を混合した各種混合セメント、超速硬セメント並びにアルミナセメント等が使用可能である。超速硬セメントとしては、フッ素含有カルシウムアルミネート等が挙げられる。低発熱セメント、耐硫酸塩セメントも使用できる。これらの中では、効果が大きい点で、普通ポルトランドセメント及び/又は早強ポルトランドセメントが好ましく、早強ポルトランドセメントがより好ましい。セメントのブレーン比表面積(以下、ブレーン値という)は、1,000〜6,000cm2/gが好ましく、4,000〜5,000cm2/gがより好ましい。
【0014】
本発明で使用するカルシウムアルミネートは、例えば、カルシアを含む原料と、アルミナを含む原料等を混合して、キルンでの焼成や、電気炉での溶融等の熱処理をして得られるものである。カルシウムアルミネートは、例えば、CaOとAl23とを主たる成分とし、水和活性を有する物質の総称であり、CaOやAl23の一部が、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ金属硫酸塩、及びアルカリ土類金属硫酸塩等と置換した化合物、或いは、CaOとAl23とを主成分とするものに、これらが少量固溶した物質である。鉱物形態としては、12CaO・7Al23(以下、C127という)組成に対応する熱処理物を急冷したものを使用する。カルシウムアルミネート類の粒度は、初期強度発現性の面で、ブレーン値3,000cm2/g以上が好ましく、5,000cm2/g以上がより好ましい。3,000cm2/g未満では、アンカー定着材の初期強度発現性が促進されず、アンカー定着までに時間がかかる点から好ましくない。
【0015】
本発明は、セメントとカルシウムアルミネートの他に、アルカリ金属炭酸塩、減水剤、保水性物質及び細骨材を含有するセメント組成物がより好ましい。
【0016】
本発明で使用するアルカリ金属炭酸塩は、アンカー定着材の初期凝結を促進する。アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウム等が挙げられる。これらの中では、アンカー定着力を得ることができる点で、炭酸ナトリウムが好ましい。アルカリ金属炭酸塩のブレーン値は、1,000〜5,000cm2/gが好ましく、2,000〜4,000cm2/gがより好ましい。この範囲外だと、アンカー定着材の初期凝結が促進されず、アンカー定着までに時間がかかり、好ましくない場合がある。
【0017】
本発明で使用する減水剤は、アンカー定着材の流動性や分散安定性を改善するために使用する。減水剤としては、アルキルアリルスルホン酸塩のホルマリン縮合物系減水剤、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物系減水剤、メラミンスルホン酸塩のホルマリン縮合物系減水剤及びポリカルボン酸系減水剤が使用でき、これらの一種又は二種以上を使用してもよい。減水剤の形態としては、アンカー定着材中に混合できる点で、粉体が好ましい。これらの中では、効果が大きい点で、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物系減水剤、メラミンスルホン酸塩のホルマリン縮合物系減水剤及びポリカルボン酸系減水剤からなる群のうちの一種又は二種以上が好ましい。
【0018】
本発明で使用する保水性物質は、アンカー定着材を水に漬浸、吸水する際、吸水時間による水量の上昇を防止し、セメントモルタルを調製する際に発生するダマ等の不完全な状態を改善するために使用する。
【0019】
保水性物質としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース等のセルロース類、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、β−1,3グルカン、ブルラン、グアガム、カゼイン及びウエランガム等の多糖顛、酢酸ビニル、エチレン、塩化ビニル、メタクリル酸、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム及び不飽和カルボン酸等のビニル重合体やこれらの共重合体、並びに、酢酸ビニル重合体やその共重合体をケン化しポリピニルアルコール骨格に変性したもの等のエマルジョン等が挙げられる。又、ベントナイト及びシリカゲル等の無機物、水ガラスと塩化ナトリウム等の水ガラスのゲル化剤、更には、デン粉、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアマイド、ビニルアルコール−アクリル酸塩共重合体、ポリアクリロニトリル加水分解物及び一般式RO(AO)nH(式中Rはアルキル基、Aは一種又は二種以上のアルキル基、nは整数)で示される高分子物質等が挙げられる。これらの中では、充分な効果を発揮する点で、メチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール−アクリル酸塩共重合体、ポリアクリロ二トリル加水分解物及び一般式RO(AO)nH(式中Rはアルキル基、Aは一種又は二種以上のアルキル基、nは整数)で示される高分子物質からなる群のうちの一種又は二種以上が好ましい。
【0020】
カルシウムアルミネート、アルカリ金属炭酸塩、減水剤、保水性物質の使用量は、セメント100部に対して、カルシウムアルミネート0.1〜10部、アルカリ金属炭酸塩0.1〜10部、減水剤0.01〜2部、保水性物質0.001〜0.2部が好ましく、カルシウムアルミネート0.5〜3部、アルカリ金属炭酸塩0.5〜3部、減水剤0.1〜0.5部、保水性物質0.01〜0.05部がより好ましい。
【0021】
本発明で使用する細骨材は特に限定するものではなく、川砂、山砂、海砂、砕砂、石灰砂、スラグ砂及び珪砂等、いずれも使用できる。細骨材の粒径としては、3mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましい。3mmを超えると、アンカー定着時の作業性が低下する場合がある。
【0022】
細骨材の使用量は、セメント100部に対して200部以下が好ましく、10〜100部がより好ましく、30〜70部が最も好ましい。200部を超えるとアンカー定着時の作業性が低下する場合がある。
【0023】
本発明で使用する水硬性物質を封入する容器として、紙目のあるヒートロン紙を使用する。紙目とは、例えば、繊維の目ができた紙のことである。紙目は、紙を製造する際に、液状パルプから仕上げの紙を製造するまでに幾つかのローラーを通過して仕上げるため、繊維がそろい、繊維の目ができるものである。
【0024】
本発明で使用するヒートロン紙は、濾過紙のことをいい、通水性に優れるものが好ましい。他に通水性に優れる紙として和紙や不織紙等があるが、紙目がなく、破れにくいことから、人力でのアンカー挿入を行うのが困難であり、好ましくない場合がある。
【0025】
本発明で使用するアンカー定着材の寸法は、直径(幅)10〜60mm、長さ1200mm以下が好ましく、直径(幅)20〜40mm、長さ100〜1100mmがより好ましい。寸法が範囲外であると、品質が変動する場合があり、アンカー定着作業が困難な場合があるため、好ましくない。
【0026】
本発明で使用するアンカー定着材用のヒートロン紙では、幅方向に引張り強度1N/15mm以下の横目があることが好ましく、長さ方向に引張り強度1.5N/15mm以上の縦目があることが好ましい。幅方向に引張り強度0.5N/15mm以下の横目があることがより好ましく、長さ方向に引張り強度2N/15mm以上の縦目があることが最も好ましい。ヒートロン紙寸法の幅方向に引張り強度1N/mmを超える横目があると、アンカーを穿孔内へ挿入しにくく、人力によるアンカー打設が容易に行えない場合がある。ヒートロン紙寸法の長さ方向に引張り強度1.5N/mm未満の縦目があると、アンカー定着材を穿孔内に挿入する際、ヒートロン紙が破れてしまい、施工性が劣る場合がある。
【0027】
ヒートロン紙の坪量は、5〜100g/m2が好ましく、10〜60g/m2がより好ましい。
【0028】
本発明で使用するアンカー定着材は、法面部の落石防護ネット固定用アンカーの定着に使用することが好ましい。
【0029】
本発明で使用するアンカー定着材は、気温10℃以下で使用することが好ましい。気温10℃を超える環境下で使用した場合、アンカー定着材の硬化が早まり、アンカー定着が困難になり、十分な定着が得られない場合がある。
【0030】
本発明で使用するアンカー定着材に事前に水を浸漬する時間は、1.0〜40分が好ましく、2.0〜30分がより好ましく、3.0〜15分が最も好ましい。1.0分未満ではアンカーを空洞内に挿入する作業時間を充分にとることができない場合がある。40分を超えると、定着材の凝結が始まってしまい、アンカーを空洞内に挿入する作業時間を充分にとることができない場合がある。
【0031】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。尚、実験と測定は5℃、湿度10%で行った。
【実施例1】
【0032】
セメント100部、カルシウムアルミネート1.0部、炭酸ナトリウム1.0部、減水剤0.35部、保水性物質0.03部及び細骨材50部を予め混合し、セメント組成物を調製した。セメント組成物を、表1に示す容器に封入し、アンカー定着材を調製した。このアンカー定着材を水に表1に示す時間漬浸した。ヒートロン紙を破り、中の水硬性物質の凝結試験、圧縮強度試験、混合性評価を行った。結果を表1に併記した。
【0033】
<使用材料>
セメント:早強ポルトランドセメント、市販品、ブレーン値4,500cm2/g、比重
3.14
カルシウムアルミネート:C127組成に対応するもの、非晶質、ブレーン値6,500cm2/g
アルカリ金属炭酸塩:炭酸ナトリウム、市販品、ブレーン値3,000cm2/g
減水剤:メラミンスルホン酸塩のホルマリン縮合物系減水剤、粉末状
保水性物質:ポリビニルアルコール、市販品、粉末状
細骨材:石灰砂、比重2.68、粒径0.6mm
容器A:幅(直径)40mm×長さ700mm、ヒートロン紙、坪量30g/m2、紙目がある、ヒートロン紙の幅方向に引張り強度0.5N/15mmの横目があり、ヒートロン紙の長さ方向に引張り強度4N/15mmの縦目があるもの
容器B:幅(直径)40mm×長さ700mm、和紙、坪量30g/m2、紙目がない
【0034】
<測定方法>
凝結試験(凝結時間):JIS R5201の付属書1に準拠した。凝結の始発を測定した。
圧縮強度試験(圧縮強度):JIS R5201の付属書2に準拠した。材齢を1日、28日とした。
混合性評価:水硬性物質を100g計量し、0.6mmふるいにかけ、ふるい通過量から、ふるい上に残った混合不良物「ダマ」の量を%で算出し、水との混合性を評価した。「ダマ」の量が少ない程、水との混合性は良好である。
試験環境:10℃とした。
【0035】
【表1】


【0036】
表1の結果から、紙目のない和紙を使ったアンカー定着材は漬浸時間に伴う凝結時間の調整がきかず、始発がほぼ10分で見られ、アンカー挿入時の施工性悪化が考えられる。又、圧縮強度もセメント組成物自体がうまく混ざっていないため、1日、28日ともに実施例と比べると低い結果となった。このため、漬浸時間を15分と長く設定し、セメント組成物をうまく混ぜようとしたが、始発が13分と大幅な改善とはならず、圧縮強度も低い結果となった。紙目のあるヒートロン紙の場合、凝結時間が安定し、作業性が十分に取れる結果となり、物性も高く良好な結果が得られた。
【実施例2】
【0037】
実施例1で予め調製した水硬性物質を表2に示す容器に封入し、アンカー定着材を調製した。この定着材を表2に示す時間、水に浸漬した。アンカー定着材が30kgになるよう重りを付け、直径40mm×長さ800mmの円筒型の型枠にアンカー定着材を、アンカーの自重だけで挿入した。重りは容器とほぼ同一直径のものを用いた。アンカー打ち込み時作業性確認、型枠内からの逸流、アンカー引き抜き試験を行った。結果を表2に併記した。
【0038】
<使用材料>
容器C:幅(直径)40mm×長さ700mm、ヒートロン紙、坪量30g/m2、紙目がある、ヒートロン紙の幅方向に引張り強度4N/15mmの縦目があり、ヒートロン紙の長さ方向に引張り強度1N/15mmの横目があるもの
【0039】
<測定方法>
アンカー打ち込み作業性:アンカー定着材の自重でアンカー定着材が、円筒型の型枠中700mmまで入る時間を測定した。
型枠内からの逸流:アンカー打ち込み作業性の測定を終了してから、40分経過後に円筒型の型枠を上下180°回転させて、1分間保持した。容器からこぼれ落ちたアンカー定着材の質量と、アンカー打ち込み作業性の測定前のアンカー定着材の質量との質量比を求め、逸流の量を算出した。容器からこぼれ落ちたアンカー定着材の量が多い場合、型枠内からアンカー定着材が逸流しやすい。
【0040】
【表2】


【0041】
表2の結果から、容器Cの場合、自重によるアンカー打設では、アンカー打ち込み時間が長くなり、アンカー打ち込み時の作業性が良好とは言い難かった。このため、円筒型型枠の全体にセメントペーストがうまく入らず、アンカー引き抜き強度が低くなる。容器Aの場合、実施例の実験No.1−4、実験No.1−5、実験No.1−7は、アンカー引き抜き強度が20N/mm2を超えてしまい、アンカー自体が伸びてしまう可能性があるため、測定を中止した。この結果から、アンカー打ち込み時の作業性が非常に良好で、穿孔内全てにセメントペーストが充填されて、引き抜き強度を満足する結果が得られることを確認した。
【実施例3】
【0042】
早強セメント100部、表3に示す量のカルシウムアルミネートを予め混合し、セメント組成物を調製した。セメント組成物を、容器Aに封入し、アンカー定着材を調製した。このアンカー定着材を水に5分間漬浸した。ヒートロン紙を破り、中の水硬性物質の凝結試験、圧縮強度試験、混合性評価を行った。結果を表3に併記した。
【0043】
【表3】


【0044】
表3の結果から、カルシウムアルミネートを使用した場合、凝結時間が短く、圧縮強度が大きいといった結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のアンカー定着材を用いることで、冬場など低温時の法面部の落石防護ネット固定用アンカーの定着作業が早く行え、アンカー定着力が確実に確保できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントとカルシウムアルミネートを含有してなる水硬性物質をヒートロン紙に封入してなるアンカー定着材。
【請求項2】
ヒートロン紙が紙目を有する請求項1記載のアンカー定着材。
【請求項3】
紙目が幅方向と長さ方向からなり、幅方向に引張り強度1N/15mm以下の横目があり、長さ方向に引張り強度1.5N/15mm以上の縦目がある請求項1又は2記載のアンカー定着材。
【請求項4】
ヒートロン紙の坪量が5〜100g/m2である請求項1〜3のうちの1項記載のアンカー定着材。
【請求項5】
寸法が、直径10〜60mm、長さ1200mm以下である請求項1〜4のうちの1項記載のアンカー定着材。
【請求項6】
水硬性物質が、アルカリ金属炭酸塩を含有する請求項1〜5のうちの1項記載のアンカー定着材。
【請求項7】
水硬性物質が、減水剤を含有する請求項1〜6のうちの1項記載のアンカー定着材。
【請求項8】
水硬性物質が、保水性物質を含有する請求項1〜7のうちの1項記載のアンカー定着材。
【請求項9】
水硬性物質が、細骨材を含有する請求項1〜8のうちの1項記載のアンカー定着材。
【請求項10】
請求項1〜9のうちの1項記載のアンカー定着材を法面部の落石防護ネット固定用アンカーに使用することを特徴とするアンカー定着材の使用方法。
【請求項11】
請求項1〜9のうちの1項記載のアンカー定着材を水に浸漬し、該アンカー定着材を穿孔内に充填し、アンカーを圧入し、該アンカー定着材を破壊することを特徴とするアンカー定着方法。
【請求項12】
請求項1〜9のうちの1項記載のアンカー定着材を1.0〜40分間水に浸漬し、該アンカー定着材を穿孔内に充填し、アンカーを圧入し、該アンカー定着材を破壊することを特徴とするアンカー定着方法。

【公開番号】特開2011−79708(P2011−79708A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233923(P2009−233923)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】