説明

アンダーカバー装置付き車両

【課題】簡単な構成で車輪の接地荷重を好適に保つことができ、さらに耐久性を高めることができるアンダーカバー装置付き車両を提供する。
【解決手段】アンダーカバー装置付き車両10は、車体11の下方にアンダーカバー装置20が設けられている。アンダーカバー装置は、アンダーカバー21を車体に連結する左右のリンク機構27,28を備えている。左右のリンク機構は、車体に回動自在に連結された第1リンク41と、第1リンクに回動自在に連結されるとともにアンダーカバーに連結された第2リンク42と、第2リンクおよび第1リンクの連結軸44に回動自在に連結されるとともに支持部材に回動自在に連結された第3リンク46とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体にサスペンションアームを介して車輪が設けられるとともに車体の下方にアンダーカバーが設けられたアンダーカバー装置付き車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両は、通常、車体の床部にアンダーカバー装置を備え、このアンダーカバー装置で床部を保護するように構成されている。
アンダーカバー装置付き車両のなかには、アンダーカバーを油圧シリンダ(アクチュエータ)で昇降させることでアンダーカバーおよび路面間の距離を調整可能に構成されたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このアンダーカバー装置付き車両によれば、車両の走行状況を検知手段で検知し、検知した検知データに基づいて制御部で油圧シリンダを作動させることが可能である。
油圧シリンダを作動させることで、車両の走行状況に対応させてアンダーカバーおよび路面間の距離を調整することができる。
【0004】
アンダーカバーおよび路面間の距離を調整することで、アンダーカバーの下方に逆揚力(いわゆる、ダウンフォース)を発生させることができる。
アンダーカバーの下方に逆揚力を発生させることで、発生した逆揚力で車輪の接地荷重(車輪が路面を上方から押し付ける力)を好適に保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−160000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のアンダーカバー装置付き車両は、車輪の接地荷重を好適に保つために、検知手段、制御部や油圧シリンダ(アクチュエータ)などの部品を必要とし構成が複雑になる。
また、油圧シリンダが車体の床部下方に設けられているため、跳ね上げられた石などによる損傷(チッピング)や水跳ねにより油圧シリンダの動作に影響を受け、十分な耐久性を確保することが難しい。
【0007】
本発明は、簡単な構成で車輪の接地荷重を好適に保つことができ、さらに耐久性を高めることができるアンダーカバー装置付き車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体に設けられたサスペンションアームと、前記サスペンションアームに設けられて車輪を回転自在に支持する支持部材と、前記支持部材の下方に配置されるとともに前記車体の下方に配置されたアンダーカバー装置とを備えたアンダーカバー装置付き車両であって、前記アンダーカバー装置は、前記車体の床部下方に配置されたアンダーカバーと、前記アンダーカバーを前記車体に連結するリンク機構と、を備え、前記リンク機構は、前記車体に基端部が回動自在に連結された第1リンクと、前記第1リンクの先端部に回動自在に連結されるとともに前記アンダーカバーに向けて延出され、延出された端部が前記アンダーカバーに連結された第2リンクと、前記第2リンクおよび前記第1リンクの連結部に回動自在に連結されるとともに前記支持部材に向けて延出され、延出された端部が前記支持部材に回動自在に連結された第3リンクと、を備え、前記リンク機構が前記車体の左右側にそれぞれ設けられ、左右のリンク機構で前記アンダーカバーの左右の側部を支持することを特徴とする。
【0009】
請求項2は、前記アンダーカバーは、車体前後方向の一端側において、左右の側部が前記リンク機構で車体にそれぞれ連結され、車体前後方向の他端側において、車幅方向の中間部が前記車体にジョイント手段を介して回動自在に連結されたことを特徴とする。
【0010】
請求項3は、前記車体の床部および前記アンダーカバー間に介在された弾性変形可能なリーフスプリングを備え、前記リーフスプリングは、前記アンダーカバーに車幅方向を向いて配置されて左右の端部が前記アンダーカバーに設けられ、車幅方向の中央部が前記車体の床部に設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、アンダーカバーを第1リンク、第2リンクおよび第3リンクを備えたリンク機構で支えるようにした。
すなわち、車体に第1リンクの基端部を回動自在に連結し、第1リンクの先端部に第2リンクを介してアンダーカバーを連結した。また、第1リンクの先端部を第3リンクを介して支持部材に連結した。
車体に第1リンクの基端部を回動自在に連結したので、走行中の「ローリング」などで車体が上下方向に移動した際に、第1リンクの基端部が上下方向に移動する。
【0012】
ここで、走行中の「ローリング」などの状態において、車輪は路面に接地した状態に保たれる。よって、車輪を支持する支持部材は路面に対して同じ高さ位置に保持できる。
この支持部材と第1リンクの先端部との間に第3リンクが介在されている。よって、第1リンクの先端部が車体に追従して上下方向に移動することを第3リンクで規制できる。
【0013】
第1リンクの先端部の上下方向の移動を規制することで、第1リンクの先端部に連結されたアンダーカバーを路面に対して同じ高さ位置に保持(調整)できる。
よって、車両の走行中に「ローリング」などが発生した場合でも、アンダーカバーの下方に好適な逆揚力(いわゆる、ダウンフォース)を発生させた状態を維持できる。
これにより、発生した逆揚力で車輪の接地荷重(車輪が路面を上方から押し付ける力)を好適に保つことができる。
【0014】
さらに、アンダーカバーを支えるリンク機構を、第1リンク、第2リンクおよび第3リンクで構成することで、従来技術で必要とされていた検知手段、制御部や油圧シリンダ(アクチュエータ)を不要にできる。
これにより、アンダーカバーを支えるリンク機構を簡単な構成にすることができる。
【0015】
加えて、リンク機構を用いてアンダーカバーを支えることで、跳ね上げられた石などによる損傷(チッピング)や水跳ねがリンク機構の作動に影響を与える虞がなく、リンク機構の耐久性を高めることができる。
【0016】
請求項2に係る発明では、アンダーカバーの一端側において左右の側部をリンク機構で車体に連結した。また、アンダーカバーの他端側において中間部のみをジョイント手段で車体に連結した。
アンダーカバーの他端側において中間部のみをジョイント手段で車体に連結することで、アンダーカバー装置を簡素化できるとともに軽量化できる。
【0017】
請求項3に係る発明では、弾性変形可能なリーフスプリングの左右の端部をアンダーカバーに設け、中央部を車体の床部に設けた。
よって、アンダーカバーが車体前後方向や車幅方向にズレる(移動する)ことをリーフスプリングで防ぐことができる。
これにより、車体が上下方向に移動した際に、アンダーカバーが車体に追従して上下方向に移動することを好適に規制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るアンダーカバー装置付き車両を示す斜視図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図2のアンダーカバー装置を示す分解斜視図である。
【図4】図2の4部拡大図である。
【図5】(a)は図1の5a−5a線断面図、(b)は本発明に係るジョイント手段を示す斜視図である。
【図6】本発明に係るアンダーカバー装置のリーフスプリングを示す断面図である。
【図7】本発明に係るアンダーカバー装置付き車両が「ローリング」状態の場合にアンダーカバーを路面に対して同じ高さ位置に保つ例を説明する図である。
【図8】本発明に係るアンダーカバー装置付き車両が「ローリング」状態の場合に接地荷重を好適に保つ例を説明する図である。
【図9】本発明に係るアンダーカバー装置付き車両が「ピッチング」状態の場合にアンダーカバーを路面に対して同じ高さ位置に保つ例を説明する図である。
【図10】本発明に係るアンダーカバー装置付き車両の変形例を示す斜視図である。
【図11】変形例のアンダーカバー装置付き車両が「ピッチング」状態の場合にアンダーカバーを路面に対して同じ高さ位置に保つ例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前(Fr)」、「後(Rr)」、「左(L)」、「右(R)」は運転者から見た方向にしたがう。
【実施例】
【0020】
実施例に係るアンダーカバー装置付き車両10について説明する。
図1、図2に示すように、アンダーカバー装置付き車両10は、車体(車体側)11の左右の側部(左右側)11a,11bに設けられた左右の前サスペンションアーム(サスペンションアーム)12,13と、左右の前サスペンションアーム12,13に設けられた左右の前支持部材(支持部材)14,15と、左右の前支持部材14,15に回転自在に支持された左右の前輪(車輪)16と、左右の前輪16の車体後方に設けられた左右の後輪(車輪)17と、左右の前支持部材の下方に配置されたアンダーカバー装置20とを備えている。
【0021】
左右の後輪17は、左右の前輪16と同様に、左右の後サスペンションアーム(図示せず)を介して車体11の左右の側部11a,11bに設けられている。
ここで、左右の後サスペンションアームは、一例として、左右の前サスペンションアーム12,13と同様の構成なので詳しい説明を省略する。
【0022】
図2、図3に示すように、アンダーカバー装置20は、車体11の床部(底部)11c下方に配置されたアンダーカバー21と、アンダーカバー21の前部(車体前後方向の一端側)22を車体11に連結するリンク機構ユニット26と、アンダーカバー21の後部(車体前後方向の他端側)24を車体11に連結するジョイント手段31と、アンダーカバー21の中央部23を車体11に連結するリーフスプリング35とを備えている。
【0023】
図1、図3に示すように、アンダーカバー21は、車体11の床部11c下方に配置されて、床部11cを覆う板状の部材である。
このアンダーカバー21は、左右の前輪16間に配置された前部22と、左右のサイドシル11d間に配置された中央部23と、左右の後輪17間に配置された後部24とを有する。
【0024】
アンダーカバー21の前部22がリンク機構ユニット26を介して車体11に連結されている。
また、アンダーカバー21の中央部23のうち前部位23aがリーフスプリング35を介して車体11に連結されている。
さらに、アンダーカバー21の後部24がジョイント手段31を介して車体11に連結されている。
【0025】
図2、図3に示すように、リンク機構ユニット26は、アンダーカバー21(前部22)の左側部位(左側部)22aを車体11の左側部11aに連結する左リンク機構(リンク機構)27と、アンダーカバー21(前部22)の右側部位(右側部)22bを車体11の右側部11bに連結する右リンク機構(リンク機構)28とを備えている。
【0026】
図3、図4に示すように、左リンク機構27は、車体11の左側部11aに基端部41aが回動自在に連結された第1リンク41と、第1リンク41の先端部41bに回動自在に連結された第2リンク42と、第2リンク42および第1リンク41の連結軸(連結部)44に回動自在に連結された第3リンク46とを備えている。
【0027】
第1リンク41は、車体11の左側部11aに基端部41aが支持軸48を介して車幅方向に回動自在に連結されるとともに左下方に向けて下り勾配に延出されている。
第1リンク41の先端部41bに連結軸44が車体前後方向に向けて設けられている。
【0028】
第2リンク42は、連結軸44に上端部42aが回動自在に連結されるとともにアンダーカバー21に向けて延出されている。
第2リンク42の下端部(延出された端部)42bが支え部51に支持軸52を介して回動自在に連結されている。
支え部51は、アンダーカバー21の前部22において左側部位22aに設けられている。
よって、前部22の左側部位22aは、第2リンク42および第1リンク41を介して車体11の左側部11aに連結されている。
【0029】
第3リンク46は、第2リンク42および第1リンク41に連結軸44を介して内端部46aが回動自在に連結されるとともに左前支持部材14に向けて延出されている。
第3リンク46の外端部(延出された端部)46bが左前支持部材14に支持軸53を介して回動自在に連結されている。
よって、第1リンク41の先端部41bは第3リンク46を介して左前支持部材14に連結されている。
【0030】
図2、図3に示すように、右リンク機構28は、左リンク機構27と左右対称の機構であり、各構成部材に左リンク機構27と同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
この右リンク機構28によれば、左リンク機構27と同様に、第2リンク42および第1リンク41がアンダーカバー21(前部22)の右側部位22bを車体11の右側部11bに連結するように構成されている。
また、第1リンク41の先端部41bが第3リンク46を介して右前支持部材15に連結するように構成されている。
【0031】
このように、リンク機構ユニット26によれば、左リンク機構27でアンダーカバー21(前部22)の左側部位22aを車体11の左側部11aに連結し、かつ、右リンク機構28でアンダーカバー21(前部22)の右側部位22bを車体11の右側部11bに連結できる。
よって、左右のリンク機構27,28でアンダーカバー21(前部22)の左右の側部位22a,22bを支持することができる。
【0032】
図3、図5に示すように、ジョイント手段31は、アンダーカバー21の後部24において車幅方向の中間部24aを車体11の床部11cに回動自在に連結する手段である。
このジョイント手段31は、アンダーカバー21に設けられた雌型ジョイント部32と、車体11の床部11cに設けられた雄型ジョイント部(ボールジョイント部)33とを備えている。
雌型ジョイント部32に雄型ジョイント部33の球体33aが回動自在に連結されている。
【0033】
よって、アンダーカバー21が車幅方向や車体前後方向に移動する(ズレる)ことをジョイント手段31で防ぐことができる。
さらに、図5(b)に示すように、アンダーカバー21の後部24(中間部24a)を球体33aを支点として矢印A,B方向(車幅方向)に回動自在に、かつ、矢印C,D方向に(車体前後方向)に回動自在に連結できる。
【0034】
図3、図6に示すように、リーフスプリング35は、車体11の床部11cおよびアンダーカバー21間に介在され、中央部35aが上方に向けて湾曲状に形成された弾性変形可能な板ばねである。
このリーフスプリング35は、アンダーカバー21の中央部23のうち前部位23aに車幅方向を向いて配置されている。
【0035】
リーフスプリング35の、左右の端部35b,35cが前部位23aの左右の側部位23b,23cに下リベット(締結部材)56で設けられるとともに、中央頂部35dが車体11の床部11cに上リベット(締結部材)57で設けられている。
【0036】
すなわち、アンダーカバー21(中央部23の前部位23a)が車体11の床部11cにリーフスプリング35を介して支持されている。
中央部23の前部位23aをリーフスプリング35で支持することで、アンダーカバー21が車幅方向や車体前後方向に移動する(ズレる)ことをリーフスプリング35で防ぐことができる。
【0037】
また、アンダーカバー21の中央部23を弾性変形可能なリーフスプリング35で支持することで、アンダーカバー21を上リベット57を軸にして矢印A方向や矢印B方向に傾斜させることができる。
さらに、アンダーカバー21の中央部23を弾性変形可能なリーフスプリング35で支持することで、アンダーカバー21を矢印E方向や矢印F方向に昇降させることができる。
【0038】
以上説明したように、アンダーカバー21を支える左右のリンク機構27,28を、第1リンク41、第2リンク42および第3リンク46で構成することで、従来技術で必要とされていた検知手段、制御部や油圧シリンダ(アクチュエータ)を不要にできる。
これにより、アンダーカバー21を支える左右のリンク機構27,28(リンク機構ユニット26)を簡単な構成にすることができる。
【0039】
さらに、左右のリンク機構27,28を用いてアンダーカバー21を支えることで、跳ね上げられた石などによる損傷(チッピング)や水跳ねがリンク機構の作動に影響を与える虞がなく、左右のリンク機構27,28の耐久性を高めることができる。
【0040】
加えて、アンダーカバー21の前部22において左右の側部位22a,22bを左右のリンク機構27,28で車体11に連結した。また、アンダーカバー21の後部24において中間部24aのみをジョイント手段31で車体に連結した。
このように、アンダーカバー21の後部24において中間部24aのみをジョイント手段31で車体11に連結することで、アンダーカバー装置20を簡素化できるとともに軽量化できる。
【0041】
つぎに、アンダーカバー装置付き車両10が「ローリング」状態の場合にアンダーカバー21を路面65に対して同じ高さ位置に保つ(調整する)例を図7、図8に基づいて説明する。
図7(a)に示すように、アンダーカバー装置付き車両10の走行中に右旋回することにより、車体11の重心位置Grに遠心力F1が旋回方向の外側に向けて矢印の如く作用する。
車体11の重心位置Grに遠心力F1が作用することで、車体11に「ローリング」が発生する。
【0042】
車体11に「ローリング」が発生することで、車体11(床部11c)の左側部11aが矢印Gの如く下方に移動するとともに右側部11bが矢印Hの如く上方に移動する。
床部11cの左側部11aが矢印Gの如く下方に移動することで、第1リンク41を支える支持軸48が矢印Gの如く下方に移動する。
よって、第1リンク41および連結軸44を経て第3リンク46に引張荷重F2が作用する。
これにより、アンダーカバー21の左側部位23bが上方に移動する。
【0043】
一方、床部11cの右側部11bが矢印Hの如く上方に移動することで、第1リンク41を支える支持軸48が矢印Hの如く上方に移動する。
よって、第1リンク41および連結軸44を経て第3リンク46に圧縮荷重F3が作用する。
これにより、アンダーカバー21の右側部位23cが下方に移動する。
【0044】
ここで、アンダーカバー21は、リーフスプリング35やジョイント手段31(図5(a)参照)で車幅方向(矢印方向)に移動しないように支持されている。
これにより、車体11が上下方向に移動した際に、アンダーカバー21が車体11に追従して上下方向に移動することを好適に規制することができる。
【0045】
具体的には、左リンク機構27の連結軸44は、第3リンク46や第2リンク42で上下方向に移動することが規制される。
同様に、右リンク機構28の連結軸44は、第3リンク46や第2リンク42で上下方向に移動することが規制される。
【0046】
図7(b)に示すように、車体11の重心位置Grが旋回方向の外側に向けて移動して車体11がθだけ傾斜する。
この状態で、左リンク機構27の第1リンク41が連結軸44を軸にして矢印Gの如く下方に向けて移動する。
同時に、右リンク機構28の第1リンク41が連結軸44を軸にして矢印Hの如く上方に向けて移動する。
【0047】
左右のリンク機構27,28の連結軸44が同じ高さの位置に保持されることで、左右の第1リンク41に連結されたアンダーカバー21を路面65に対して同じ高さ位置H1に保持(調整)できる。
【0048】
図8に示すように、アンダーカバー21を高さ位置H1に保持することで、アンダーカバー21および路面65間の空間66を流れる空気流67の速度(流速)が変化することを抑えることができる。
よって、空間66を流れる空気流67の速度(流速)と車体上面11eを流れる空気流68の速度(流速)との差を好適に保つことができる。
【0049】
これにより、走行中の車体11に「ローリング」などが発生した場合でも、アンダーカバー21の下方に好適な逆揚力(いわゆる、ダウンフォース)F4を発生させた状態を維持することができる。
このように、アンダーカバー21の下方に逆揚力F4を発生させることで、左右の前輪16や、左右の後輪17が路面65に押し付けられる。
したがって、車輪の接地荷重(車輪が路面を上方から押し付ける力)を好適に保つことができ、スタビリティ(走行安定性)の向上を図ることができる。
【0050】
つぎに、アンダーカバー装置付き車両10が「ピッチング」状態の場合にアンダーカバー21を路面65に対して同じ高さ位置に保つ(調整する)例を図9に基づいて説明する。
図9(a)に示すように、アンダーカバー装置付き車両10の走行中にブレーキ操作(制動操作)することにより、車体11の重心位置Grに慣性力F5が車体前方に向けて矢印の如く作用する。
車体11の重心位置Grに慣性力F5が作用することで、車体11に「ピッチング」が発生して車体11が矢印Cの如く前傾する。
【0051】
図9(b)に示すように、車体11に「ピッチング」が発生することで、車体11の床部11cにおいて左側部11aが矢印Iの如く下方に移動するとともに右側部11bが矢印Iの如く下方に移動する。
床部11cの左側部11aが下方に移動することで、左リンク機構27の第1リンク41を支える支持軸48が矢印Iの如く下方に移動する。
【0052】
第1リンク41を支える支持軸48が下方に移動することで、連結軸44が車体外側に向けて矢印Jの如く移動する。
連結軸44が車体外側に向けて移動することで、連結軸44とともに第2リンク42の上端部42a(図3参照)が車体外側に向けて矢印Jの如く移動する。
【0053】
第2リンク42の上端部42aが車体外側に向けて移動することで第2リンク42が鉛直状態から斜めに傾斜する。
第2リンク42が斜めに傾斜することで、アンダーカバー21の前部22において左側部位22aが矢印Kの如く上昇する。
【0054】
一方、床部11cの右側部11bが矢印Iの如く下方に移動することで、右リンク機構28の第1リンク41を支える支持軸48が矢印Iの如く下方に移動する。
第1リンク41を支える支持軸48が下方に移動することで、連結軸44が車体外側に向けて矢印Lの如く移動する。
【0055】
連結軸44が車体外側に向けて移動することで、連結軸44とともに第2リンク42の上端部42a(図3参照)が車体外側に向けて矢印Lの如く移動する。
第2リンク42の上端部42aが車体外側に向けて移動することで第2リンク42が鉛直状態から斜めに傾斜する。
第2リンク42が斜めに傾斜することで、アンダーカバー21の前部22において右側部位22bが矢印Kの如く上昇する。
【0056】
このように、アンダーカバー21の前部22において左右の側部位22a,22bを上昇させることができる。
よって、アンダーカバー21の路面65に対する高さ位置H2を、「ピッチング」が発生する前と同じ高さ位置に保持(調整)できる。
【0057】
図9(a)に示すように、アンダーカバー21を路面65に対して同じ高さ位置H2に保持(調整)することで、アンダーカバー21および路面65間の空間66を流れる空気流の速度(流速)が変化することを防ぐことができる。
よって、空間66を流れる空気流67の速度(流速)と車体上面11eを流れる空気流68の速度(流速)との差を好適に保つことができる。
【0058】
これにより、走行中の車体11に「ピッチング」などが発生した場合でも、アンダーカバー21の下方に好適な逆揚力(いわゆる、ダウンフォース)F6を発生させた状態を維持することができる。
このように、アンダーカバー21の下方に逆揚力F6を発生させることで、左右の前輪16や、左右の後輪17が路面65に押し付けられる。
したがって、車輪の接地荷重を好適に保つことができ、スタビリティの向上を図ることができる。
【0059】
(変形例)
アンダーカバー装置付き車両80の変形例を図10に基づいて説明する。
変形例のアンダーカバー装置付き車両80は、実施例のリンク機構ユニット26をアンダーカバー21の後部24に設け、実施例のジョイント手段31をアンダーカバー21の前部22に設けたもので、その他の構成は実施例のアンダーカバー装置付き車両10と同様である。
【0060】
このアンダーカバー装置付き車両80が「ピッチング」状態の場合にアンダーカバー21を路面65に対して同じ高さ位置に保つ(調整する)例を図11に基づいて説明する。
図11(a)に示すように、アンダーカバー装置付き車両80の走行中にブレーキ操作(制動操作)することにより、車体11の重心位置Grに慣性力F7が車体前方に向けて矢印の如く作用する。
車体11の重心位置Grに慣性力F7が作用することで、車体11に「ピッチング」が発生して車体11が矢印Cの如く前傾する。
【0061】
図11(b)に示すように、車体11に「ピッチング」が発生することで、車体11の床部11cにおいて左側部11aが矢印Mの如く上方に移動するとともに右側部11bが矢印Mの如く上方に移動する。
床部11cの左側部11aが上方に移動することで、左リンク機構27の第1リンク41を支える支持軸48が矢印Mの如く上方に移動する。
【0062】
第1リンク41を支える支持軸48が上方に移動することで、連結軸44が車体内側に向けて矢印Nの如く移動する。
連結軸44が車体内側に向けて移動することで、支持軸48に対して連結軸44が下降する。すなわち、第1リンク41が支持軸48を軸にして鉛直方向に向けて回動する。
よって、アンダーカバー21の後部24において左側部位24bが矢印Oの如く下降する。
【0063】
一方、床部11cの右側部11bが矢印Mの如く上方に移動することで、第1リンク41を支える支持軸48が矢印Mの如く上方に移動する。
第1リンク41を支える支持軸48が上方に移動することで、右リンク機構28の連結軸44が車体内側に向けて矢印Pの如く移動する。
【0064】
連結軸44が車体内側に向けて移動することで、支持軸48に対して連結軸44が下降する。
すなわち、第1リンク41が支持軸48を軸にして鉛直方向に向けて回動する。
よって、アンダーカバー21の後部24において右側部位24cが矢印Oの如く下降する。
【0065】
このように、アンダーカバー21の後部24において左右の側部位24b,24cを下降させることができる。
よって、アンダーカバー21の路面65に対する高さ位置H3を、「ピッチング」が発生する前と同じ高さ位置に保持(調整)できる。
【0066】
図11(a)に示すように、アンダーカバー21を路面65に対して同じ高さ位置H3に保持(調整)することで、アンダーカバー21および路面65間の空間66を流れる空気流67の速度(流速)が変化することを防ぐことができる。
よって、空間66を流れる空気流67の速度(流速)と車体上面11eを流れる空気流68の速度(流速)との差を好適に保つことができる。
【0067】
これにより、走行中の車体11に「ピッチング」などが発生した場合でも、アンダーカバー21の下方に好適な逆揚力(いわゆる、ダウンフォース)F8を発生させた状態を維持することができる。
このように、アンダーカバー21の下方に逆揚力F8を発生させることで、左右の前輪16や、左右の後輪17が路面65に押し付けられる。
したがって、車輪の接地荷重を好適に保つことができ、スタビリティの向上を図ることができる。
【0068】
なお、本発明に係るアンダーカバー装置付き車両は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、リンク機構ユニット26をアンダーカバー21の前部22および後部24の一方に設けた例について説明したが、これに限らないで、リンク機構ユニット26を前部22および後部24の両方に設けることも可能である。
リンク機構ユニット26を前部22および後部24の両方に設けることで、アンダーカバー装置付き車両が「ピッチング」状態の場合にアンダーカバー21を路面65に対して同じ高さ位置に一層確実に保つ(調整する)ことが可能である。
【0069】
また、前記実施例で示したアンダーカバー装置付き車両10,80、車体11、左右の前サスペンションアーム12,13、左右の前支持部材14,15、アンダーカバー装置20、アンダーカバー21、左右のリンク機構27,28、ジョイント手段31、リーフスプリング35、第1リンク41、第2リンク42、連結軸44および第3リンク46などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、車体にサスペンションアームを介して車輪を備えるとともに車体の下方にアンダーカバー装置を備えた自動車への適用に好適である。
【符号の説明】
【0071】
10…アンダーカバー装置付き車両、11…車体、11a,11b…車体の左右の側部(車体の左右側)、11c…床部、12,13…左右の前サスペンションアーム(サスペンションアーム)、14,15…左右の前支持部材(支持部材)、16…左右の前輪(車輪)、17…左右の後輪(車輪)、20…アンダーカバー装置、21…アンダーカバー、22…アンダーカバーの前部(車体前後方向の一端側)、22a,22b…前部の左右の側部位(左右の側部)、24…アンダーカバーの後部(車体前後方向の他端側)、24a…中間部、24b,24c…後部の左右の側部位(左右の側部)、26…リンク機構ユニット、27…左リンク機構(リンク機構)、28…右リンク機構(リンク機構)、31…ジョイント手段、35…リーフスプリング、35a…中央部、35b,35c…左右の端部、35d…中央頂部、41…第1リンク、42…第2リンク、42b…第2リンク42の下端部(延出された端部)、44…連結軸(連結部)、46…第3リンク、46b…第3リンク46の外端部(延出された端部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられたサスペンションアームと、
前記サスペンションアームに設けられて車輪を回転自在に支持する支持部材と、
前記支持部材の下方に配置されるとともに前記車体の下方に配置されたアンダーカバー装置とを備えたアンダーカバー装置付き車両であって、
前記アンダーカバー装置は、
前記車体の床部下方に配置されたアンダーカバーと、
前記アンダーカバーを前記車体に連結するリンク機構と、を備え、
前記リンク機構は、
前記車体に基端部が回動自在に連結された第1リンクと、
前記第1リンクの先端部に回動自在に連結されるとともに前記アンダーカバーに向けて延出され、延出された端部が前記アンダーカバーに連結された第2リンクと、
前記第2リンクおよび前記第1リンクの連結部に回動自在に連結されるとともに前記支持部材に向けて延出され、延出された端部が前記支持部材に回動自在に連結された第3リンクと、を備え、
前記リンク機構が前記車体の左右側にそれぞれ設けられ、左右のリンク機構で前記アンダーカバーの左右の側部を支持することを特徴とするアンダーカバー装置付き車両。
【請求項2】
前記アンダーカバーは、
車体前後方向の一端側において、左右の側部が前記リンク機構で車体にそれぞれ連結され、
車体前後方向の他端側において、車幅方向の中間部が前記車体にジョイント手段を介して回動自在に連結されたことを特徴とする請求項1記載のアンダーカバー装置付き車両。
【請求項3】
前記車体の床部および前記アンダーカバー間に介在された弾性変形可能なリーフスプリングを備え、
前記リーフスプリングは、
前記アンダーカバーに車幅方向を向いて配置されて左右の端部が前記アンダーカバーに設けられ、
車幅方向の中央部が前記車体の床部に設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のアンダーカバー装置付き車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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