説明

アンテナの取り付け構造とこれを用いた有軌道台車システム

【構成】 2線のアンテナ30を2種類のホルダ28,42で給電レールに取り付ける。ホルダ28は底板40でアンテナ30の底部を支持すると共に、突起38でアンテナ30が上移動するのを防止し、ホルダ42は天板44でアンテナ30が90°回るのを防止する。
【効果】 アンテナを容易に正しい高さにかつ正しい向きに取り付けることができ、さらにホルダでアンテナをシールドすることが少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は有軌道台車等に用いるアンテナの取り付けに関する。
【背景技術】
【0002】
有軌道台車システムでは、走行レールに2本の平行な導線を有するアンテナを取り付け、有軌道台車との間で近距離無線通信することが行われている。例えば特許文献1の場合、図示されていないものの、走行レールの下部にアンテナを取り付ける。そして従来例では、図5の右側に示すように、アンテナ30は2本の導線34,35の高さが異なるように取り付けられたりするので、通信装置32のアンテナとの間隔が一定にならず、通信感度が低くなる。また図6の右側のようにホルダ60により全面的に覆われるので、ホルダ60がプラスチック製の場合でも、一種のシールド効果を受け、通信感度が低下する。
【特許文献1】特開2005−195391号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の課題は、取り付けが容易でかつ通信感度が高い、アンテナの取り付け構造と、これを用いた有軌道台車システムとを提供することにある。
請求項2の発明での追加の課題は、アンテナの取り付けをさらに容易にし、かつアンテナの高さを一定に保持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、2本の平行な導線を備えたアンテナの取り付け構造であって、前記2本の導線を含む平面の向きを固定すると共に、前記2本の導線とアンテナの被取付部との間に隙間を設けるように、アンテナを前記被取付部に固定するためのホルダ手段を、間隔を開けて複数個、アンテナの被取り付け部に取り付けたことを特徴とする。
【0005】
好ましくは、前記ホルダ手段が、アンテナの下部を支持する第1のホルダと、アンテナの上部と接して回転を防止し、アンテナの向きを固定する第2のホルダ、との組からなる。
【0006】
またこの発明は、2本の平行な導線を備えたアンテナを走行レールに設けて、該走行レールに沿って有軌道台車を走行させるシステムであって、前記2本の導線を含む平面の向きを固定すると共に、前記2本の導線とアンテナの被取付部との間に隙間を設けるように、アンテナを前記被取付部に固定するためのホルダ手段を、間隔を開けて複数個、走行レールに取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
2本の平行な導線を含むアンテナでは、2本の導線を含む面の向きがアンテナの向きを定め、またこの向きにより通信感度が変化する。この発明では、アンテナの向きをホルダ手段で固定するので、通信感度が最大になる向きに揃えることができる。次に、ホルダ手段は、プラスチックなどの絶縁体の場合でも、アンテナと外部との微弱な電波のやりとりを妨げる。この発明では、ホルダ手段を間隔を置いて配置し、アンテナは大部分の位置で露出するので、通信感度を高くできる。さらに被取付部と2本の導線の間に隙間が無いと、被取付部が電波の障害となるので、やはり通信感度が低下する。そこでホルダ手段で、2本の導線とアンテナの被取付部との間に隙間を設けるので、通信感度をさらに向上させることができる。
【0008】
ホルダ手段を、アンテナの下部を支持する第1のホルダと、アンテナの上部と接して回転を防止し、アンテナの向きを固定する第2のホルダ、との組で構成すると、第2のホルダでアンテナの向きを固定し、第1のホルダと第2のホルダとでアンテナの高さを一定にできる。さらにホルダの孔にアンテナを挿通するような場合と異なり、アンテナやホルダの取付が容易である。
【0009】
この発明の有軌道台車システムでは、アンテナの向きを一定にして、有軌道台車の通信手段と2本の導線との間隔を一定にできるので、通信感度を最大にできる。またホルダ手段や被取付部による、アンテナへの電波の障害を最小にできる。これらのため有軌道台車と地上側との通信を良好に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0011】
図1〜図6に、天井走行車システム2を例に実施例を示す。図において、4は走行レールで、クリーンルームの天井部付近などに設けられ、6,7は左右一対の給電レールである。天井走行車8は走行部10を備え、12は駆動車輪、13は従動車輪で、14は走行モータ、15はブレーキである。走行部10にはさらにガイドローラ16,17を設けて、天井走行車8の分岐と直進とをガイドする。給電レール6,7の一方にリッツ線20を設け、天井走行車8の受電コア22により非接触給電を受ける。軸24は、走行部10と受電コア22並びに天井走行車本体26とを連結する。給電レール6,7の例えば一方に、特にその一方の下端にアンテナ30を設けて、ホルダ28,42により給電レールに取り付ける。
【0012】
アンテナ30は一対の平行な導線34,35を樹脂で被覆したもので、導線34,35を含む平面の向きを、アンテナ30の向きという。通信感度を良好にするには、ホルダ28,42によるアンテナ30へのシールドが少なく、かつ導線34,35の高さが揃って、前記の平面が水平で、天井走行車本体26の通信装置32から導線34,35までの距離が均一であることが好ましい。ホルダ28はその上部に左右一対の突起36,36を備え、給電レール6側に設けた凹部37,37で支持する。ホルダ28の底部に底板40を設けて、アンテナ30の底部を支持すると共に、アンテナ30の上部位置に左右一対の突起38,38を設けて、アンテナ30が上側に付け上げるのを防止する。なお突起38は設けなくても良い。
【0013】
ホルダ42は、ホルダ28と組として用い、例えばそれらの間隔を10mm程度として使用する。またホルダ28,42の、組と組との間隔は例えば100mm程度とし、アンテナ30がホルダ28,42で覆われない領域を充分にとる。ホルダ42はホルダ28と同様に樹脂製で、その上部に左右一対の突起36,36を備えて、給電レール6の凹部37,37で支持される。。ホルダ28でアンテナ30を支持する配線スペース39と、同じ高さを配線スペース46とし、その上側に天板44を設けて、アンテナ30が90°回るのを防止する。また突起38,38や天板44と、給電レール47側の被取付部47との間に、隙間45を設ける
【0014】
そして図3の下部に示すように、2種類のホルダ28,42を組にしてアンテナ30をセットすることにより、アンテナ30の上下を固定し、その高さを一定にすると共に、90°回るのを防止する。さらにアンテナ30を給電レールに取り付ける際には、予めホルダ42を給電レールにセットし、次いでアンテナ30とホルダ28とをセットすればよい。あるいはホルダ28,42を共にアンテナ30にセットした状態で、給電レールに取り付けると良い。
【0015】
図4に変形例のホルダ50を示すと、51は天板、52は底板で、この間にアンテナ30を収容する。この場合、アンテナ30を事前にホルダ50内に挿通した状態で、給電レールにセットする必要があり、取付が不便である。
【0016】
図5,図6に、実施例と従来例とでの特性上の相違を示す。アンテナ30は図示しない地上側制御装置と天井走行車との通信に用い、周囲への電磁ノイズを防止するため、通信にはごく微弱な電波を使用する。このため通信距離は数10mm以下である。天井走行車側の通信装置32に、図5のようにコイル54が設けられているものとする。この場合、図5の左側のように、導線34,35の高さが揃っている状態で通信感度が最大となり、図5の右側のように、導線34,35が上下に並んでいる状態で通信感度が最小となる。そこで実施例では、ホルダ42の天板44でアンテナ30が回転するのを防止する。なおホルダ28での突起38も、アンテナ30の回転を防止する効果がある。アンテナ30の高さは、底板40と天板44と突起38によって、規制されている。このためアンテナ30と通信装置32との間隔を一定にでき、通信が安定する。
【0017】
ホルダ42,28は樹脂製であるが、一種のシールドとして作用し、微弱な電波への障害となる。ここで図6の右側のホルダ60のように、アンテナ30を全面で覆うと通信感度が低下する。実施例ではこれに対して、例えば100mm程度の間隔毎に、幅数mm程度のホルダ28,42の組を使用するので、アンテナ30は大部分の区間で露出しており、通信感度を大きくできる。同様に、アンテナ30の上面が被取付部47に接すると、被取付部47が障害となり、通信感度が低下する。そこでアンテナ30と被取付部47との間に、いいかえると導線34,35と被取付部47との間に、隙間45を設けると、被取付部47による通信感度の低下も防止できる。
【0018】
実施例では天井走行車システムへの応用を示したが、これ以外に地上走行の有軌道台車と地上側制御部や、スタッカークレーンの昇降台とマストとの間の通信などにも使用できる。

【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例での天井走行車のレールと天井走行車とを示す図
【図2】図1の要部拡大断面図
【図3】実施例で用いた2つのホルダによる、アンテナの保持を示す図
【図4】変形例でのアンテナとホルダとを示す図
【図5】実施例と従来例とでの、アンテナの向きによる差を模式的に説明する図
【図6】実施例と従来例とでの、ホルダによるアンテナのシールドの差を模式的に説明する図
【符号の説明】
【0020】
2 天井走行車システム
4 走行レール
6,7 給電レール
8 天井走行車
10 走行部
12 駆動車輪
13 従動車輪
14 走行モータ
15 ブレーキ
16,17 ガイドローラ
20 リッツ線
22 受電コア
24 軸
26 天井走行車本体
28,42 ホルダ
30 アンテナ
32 通信装置
34,35 導線
36 突起
37 凹部
38 突起
39,46 配線スペース
40 底板
44 天板
45 隙間
47 被取付部
50 ホルダ
51 天板
52 底板
54 コイル
60 ホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2本の平行な導線を備えたアンテナの取り付け構造であって、
前記2本の導線を含む平面の向きを固定すると共に、前記2本の導線とアンテナの被取付部との間に隙間を設けるように、アンテナを前記被取付部に固定するためのホルダ手段を、間隔を開けて複数個、アンテナの被取り付け部に取り付けたことを特徴とする、アンテナの取り付け構造。
【請求項2】
前記ホルダ手段が、アンテナの下部を支持する第1のホルダと、アンテナの上部と接して回転を防止し、アンテナの向きを固定する第2のホルダ、との組からなることを特徴とする、請求項1のアンテナの取り付け構造。
【請求項3】
2本の平行な導線を備えたアンテナを走行レールに設けて、該走行レールに沿って有軌道台車を走行させるシステムであって、
前記2本の導線を含む平面の向きを固定すると共に、前記2本の導線とアンテナの被取付部との間に隙間を設けるように、アンテナを前記被取付部に固定するためのホルダ手段を、間隔を開けて複数個、走行レールに取り付けたことを特徴とする、有軌道台車システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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