説明

アンテナの防雪装置およびそれを備えるアンテナ装置

【課題】ループ状に形成されたアンテナに用いられる、アンテナ特性の低下を抑制したアンテナの防雪装置を提供する。
【解決手段】防雪装置100は、ループ状に形成された給電素子230と、ループ状に形成された無給電素子220,240と、給電素子230および無給電素子220,240が距離を隔てて取付けられる管状のアーム部210とを含み、電波の送信または受信の少なくともいずれかを行なうためのアンテナ200の着雪を防止する。アンテナ200の給電素子230および無給電素子220,240は、ループの軸方向がアーム部210の軸方向と平行となるように一直線上に並列配置される。防雪装置100は、アンテナ10と組み合わされたときに、給電素子230を内部に収納するとともに無給電素子220,240が外部に配置されるように構成される中空円筒状の胴部111と、アーム部210を固定するための支持部140とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナの防雪装置およびそれを備えるアンテナ装置に関し、より特定的には、ループ状に形成された素子を含むアンテナの防雪装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビジョン電波などの電磁波の送信アンテナおよび受信アンテナは、一般的に屋外に設置されることが多い。これらのアンテナ素子に雪が付着すると、付着した雪の重みによってアンテナが破損したり、利得の低下や指向性の変化などアンテナ特性の低下を生じたりする可能性がある。
【0003】
特開2007−129551号公報(特許文献1)は、ループ状に形成された大きさの等しい2つの放射素子を有し、生産効率が高められたアンテナを開示する。
【0004】
また、特開平7−312516号公報(特許文献2)は、上記のようなループ状のアンテナ素子を発泡樹脂成形体で包囲するとともに、発泡樹脂成形体の周囲を膜状の防水カバーで覆ったアンテナの防雪装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−129551号公報
【特許文献2】特開平7−312516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開平7−312516号公報(特許文献2)に開示されたアンテナの防雪装置においては、既設のアンテナについても容易に装着が可能であり、かつアンテナ素子に雪が付着することが防止できる。
【0007】
このような防雪装置を用いた場合、アンテナ素子への雪の付着は防止できるが、防雪装置上には着雪する。この場合、防雪装置に付着した雪によってアンテナ特性に影響が及ぼされることが考えられるが、特開平7−312516号公報(特許文献2)においては、このような防雪装置上の着雪のアンテナ特性への影響については考慮されていなかった。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ループ状に形成されたアンテナに用いられる、アンテナ特性の低下を抑制したアンテナの防雪装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるアンテナの防雪装置は、ループ状に形成された給電素子と、ループ状に形成された無給電素子と、給電素子および無給電素子が距離を隔てて取付けられる管状のアーム部とを含み、電波の送信または受信の少なくともいずれかを行なうためのアンテナについての着雪を防止する。給電素子および無給電素子は、ループの軸方向がアーム部の軸方向と平行となるように一直線上に並列配置される。防雪装置は、アンテナと組み合わされたときに、給電素子を内部に収納するとともに無給電素子が外部に配置されるように構成される中空円筒状の胴部と、アーム部を固定するための支持部とを備える。
【0010】
好ましくは、給電素子は、第1の放射器と、第1の放射器から距離を隔てて並列配置される第2の放射器を含む。
【0011】
好ましくは、無給電素子は、導波器および反射器のうちの少なくとも1つを含む。
好ましくは、第2の放射器は、第1の放射器に対して位相差給電される。
【0012】
好ましくは、支持部は、アーム部を固定するために、胴部の内面に取付けられるとともに、胴部のアーム部を取付けた部分を補強するための固定部材を含む。アーム部は、締結部材によって固定部材に取付けられる。
【0013】
好ましくは、固定部材は、アーム部の外表面と面接触するように、アーム部の外面形状に対応した形状を有する凹部をさらに有する。
【0014】
好ましくは、防雪装置は、胴部の胴長方向の第1の端部を閉塞するための第1の閉塞部と胴部の胴長方向の前記第1の端部とは逆側の第2の端部を閉塞するための第2の閉塞部とをさらに備える。
【0015】
好ましくは、電波は、UHF(Ultrahigh Frequency)帯の電波である。
【0016】
本発明によるアンテナ装置は、アンテナと、防雪装置とを備え、電波の送信または受信の少なくともいずれかを行なう。アンテナは、ループ状に形成された給電素子と、ループ状に形成された無給電素子と、給電素子および無給電素子が距離を隔てて取付けられる管状のアーム部とを含む。給電素子および無給電素子は、ループの軸方向がアーム部の軸方向と平行となるように一直線上に並列配置される。防雪装置は、中空円筒状の胴部と、アーム部を固定するための支持部とを含み、給電素子を胴部の内部に収納するとともに無給電素子が胴部の外部に配置されるように構成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ループ状に形成されたアンテナに用いられる、アンテナ特性の低下を抑制したアンテナの防雪装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1に従う防雪装置が設置されたアンテナ装置の外観図である。
【図2】図1のアンテナ装置の三面図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は背面図を示す。
【図3】図2の(a)における、矢印A−Aで示された断面を示す断面図である。
【図4】実施の形態1に従う防雪装置が設置されたアンテナ装置の他の例の断面図である。
【図5】防雪装置における本体部の詳細な構成を説明するための図である。
【図6】シミュレーションで用いた比較例の構成を示す図である。
【図7】(a)実施の形態1の構成の防雪装置に着雪がない場合、(b)実施の形態1の構成の防雪装置上に着雪した場合、および(c)図6における比較例の構成の防雪装置上に着雪した場合の、それぞれのアンテナ装置の水平指向性,垂直指向性パターンのシミュレーション結果の一例である。
【図8】(a)実施の形態1において着雪がない場合、(b)実施の形態1において着雪がある場合、および(c)図6における比較例において着雪がある場合のそれぞれについて、使用周波数帯域での周波数を変化させた場合の利得の比較を説明するための図である。
【図9】着雪深さ10mmの場合において、雪の等価誘電率を変化させたときの、利得の変化のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【図10】等価誘電率が80の場合において、積雪深さを変化させたときの、利得の変化のシミュレーション結果の一例を示す図である。
【図11】実施の形態2に従う防雪装置が設置されたアンテナ装置の断面図である。
【図12】図11における本体部の斜視図である。
【図13】図11における導波器側の閉塞部の例を示す図である。
【図14】図11における反射器側の閉塞部の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態に従う防雪装置が設置されたループ状のアンテナ装置10の外観図である。図1を参照して、アンテナ装置10は、アンテナ200と、その一部のアンテナ素子を覆う防雪装置100とを備える。本実施の形態においては、アンテナ装置10は、UHF(Ultrahigh Frequency)帯の電波を送信、あるいは受信するためのアンテナを例として説明するが、電波の周波数帯はこれに限られず、たとえば、VHF(Very High Frequency)帯の電波であってもよい。
【0021】
図2は、図1のアンテナ装置10の三面図である。図2の(a),(b),(c)は、それぞれアンテナ装置10の上面図,側面図,背面図を示す。また、図3は、図2の(a)における、矢印A−Aで示された断面を示す断面図である。
【0022】
図2および図3を参照して、アンテナ200は、ループ状に形成されたアンテナ素子である導波器220、放射器230および反射器240とこれらのアンテナ素子が取付けられる管状のアーム部210とを含む。なお、本実施の形態においては、放射器230を給電素子とも称し、導波器220および反射器240を包含して無給電素子とも称する。
【0023】
放射器230は、第1の放射器231および第2の放射器232を含む。第1の放射器231および第2の放射器232は、円形のループの中心軸(図中のX軸方向)がアーム部210の長手方向(図中のX軸方向)と平行となるように、取付部236Aおよび236Bにより、アーム部210にそれぞれ取付けられる。取付部236Aおよび236Bは、第1の放射器231および第2の放射器232とアーム部210とを絶縁するように構成される。
【0024】
また、第1の放射器231は、第2の放射器232から、送信アンテナでは電波の進行方向に、受信アンテナでは電波の進行方向とは逆の向き(すなわち、いずれも図中の+X方向)に沿って、電波の中心波長λの約1/4(λ/4)の距離を隔てて並列配置されるとともに、平行線路235によって第2の放射器232と電気的に接続される。第2の放射器232には、取付部236Bにおいて、電力を給電するための給電ケーブル250が接続される。このような構成とし、平行線路235のインピーダンスを適切に設定することにより、第1の放射器231には、第2の放射器232とは給電電力の位相がずれた位相差給電を行なうことができ、使用周波数帯域の全域でVSWR(Voltage Standing Wave Ratio:電圧定在波比)を良好にすることが可能になる。
【0025】
反射器240は、電波の進行方向に沿って第2の放射器232の後方のアーム部210上に、第2の放射器232から所定の距離を隔てて並列配置される。
【0026】
導波器220は、第1の導波器221および第2の導波器222を含む。第1の導波器221および第2の導波器222は、ループの軸方向に互いに所定の距離を隔てて、アーム部210に、第1の放射器231に対して並列配置される。
【0027】
防雪装置100は、本体部110と、閉塞部120とを含む。防雪装置100は、アンテナ素子のうちの、給電素子である放射器230が内部に収納されるように、アンテナ200に取付けられる。すなわち、無給電素子である導波器220および反射器240は防雪装置100の外部に配置される。
【0028】
本体部110は、内部が中空円筒状で、かつ図3に示されるように断面が略凹型形状に形成される。本体部110は、たとえば、FRPなどのプラスチック材料を用いて作られる。
【0029】
閉塞部120は、本体部110の開口部分の周囲に形成されたフランジ部114に、たとえばボルトのような締結部材130を用いて、その開口部分を閉塞するように取付けられる。また、閉塞部120には、アーム部210および給電ケーブル250を通すための穴部が設けられる。
【0030】
支持部140は、本体部110の内面に設けられ、アンテナ200のアーム部210を防雪装置100に固定するためのものである。本体部110に含まれる支持部140には、本体部110の外表面まで貫通した貫通孔が設けられる。そして、この貫通孔とアーム部210に設けられた貫通孔とを通して、締結部材150によって防雪装置100をアンテナ200へ固定する。なお、アーム部210の支持部140への固定方法は、上述のように貫通孔を用いて固定する方法に限らず、たとえば、図示しない別個の取付部材を用いて、取付部材と支持部140との間にアーム部210を挟み込むようにして固定してもよい。
【0031】
上述の各図においては、無給電素子として、導波器220および反射器240の両方を含む構成を例として説明したが、この構成に限られることはなく、導波器220および反射器240のいずれか一方を含む構成であってもよい。たとえば、図4のように、無給電素子として反射器240のみを有し、導波器220を有しない構成としてもよい。
【0032】
また、上述の説明においては、導波器220が第1の導波器221および第2の導波器222を含み、放射器230が第1の放射器231および第2の放射器232を含む構成を例としたが、導波器220および反射器240の各々に含まれる素子の数はこれに限られず、1つの素子を含む構成であってもよいし、2つより多くの素子を含む構成であってもよい。
【0033】
次に、図5を用いて、防雪装置100における本体部110の詳細な構成について説明する。図5は、本体部110を、開口部側から内面を見たときの概略図である。
【0034】
図5を参照して、本体部110は、円筒状の胴部111と、胴部111の一方端(第1の端部)を閉塞するための底部112(第1の閉塞部)と、底部112と反対の他方端(第2の端部)に設けられた、上述の閉塞部120(第2の閉塞部)を取付けるためのフランジ部114と、支持部140とを含む。
【0035】
底部112には、アーム部210を通すための穴部113が設けられる。
支持部140は、上述のように胴部111の内面に設けられる。支持部140は、アーム部210を取付けて固定するとともに、アーム部210との取付箇所を補強するための固定部材141を含んで構成される。
【0036】
アンテナ200が振動したり、風圧によって防雪装置100に力が加えられたりした場合、あるいは、支持部140が胴部111の側面(たとえば、図5の位置から胴部111の円筒軸周りに90°回転した位置)に配置された状態でアンテナ200が取付けられるような場合には、この支持部140のアーム部210との接続部分に大きな力が集中しやすく破損につながる可能性が高い。そのため、胴部111の厚みよりも十分に大きな厚みを有する固定部材141を用いてアーム部210を固定することによって、このような外力による破損を防止する。
【0037】
また、固定部材141には、アーム部210の取付部分に凹部145が形成される。この凹部145は、アーム部210の外表面形状に対応した形状に形成される。たとえば、アーム部210の軸方向に直角な断面が円形状である場合には、凹部145の表面がアーム部210の断面円周の曲率と略同一となるように凹部145が形成される。これにより、アーム部210と凹部145との接触部分を面接触とすることができ、固定部材141の一部に力が集中することを抑制できる。
【0038】
このような防雪装置においては、覆われるアンテナ素子については着雪が防止できる観点からは、できるだけ多くのアンテナ素子が覆われるような構成とすることが望ましいとも考えられる。しかし、その一方で、アンテナ素子を覆う防雪装置の上部に着雪することによって、この防雪装置への着雪がかえってアンテナの特性に悪影響を及ぼすことも考えられる。特に、防雪装置に付着した雪が溶けかけて水分含有率が多くなったいわゆるベタ雪の場合には、雪の誘電率が著しく高くなるので、アンテナ特性への影響が懸念される。
【0039】
そこで、本実施の形態においては、上述のような略円筒形状の防雪装置を用いて、アンテナ素子のうちの給電素子である放射器のみを覆った場合のアンテナ装置の特性をシミュレーションによって評価した。本シミュレーションにおいては、図6に示されるような、放射器230に加えて、反射器240および第2の導波器222が防雪装置内に収納される場合を比較例として比較を行なった。
【0040】
図7は、(a)防雪装置に着雪がない場合、(b)本実施の形態の構成の防雪装置上に着雪した場合、および(c)比較例の構成の防雪装置上に着雪した場合の、それぞれのアンテナの水平指向性,垂直指向性パターンのシミュレーション結果の一例を示す図である。なお、図7においては、等価誘電率が約8のベタ雪の着雪がある状態における、周波数が515MHzの場合についてのシミュレーション結果の例である。
【0041】
図7を参照して、防雪装置に着雪のない場合には、図7の(a)に示される指向性パターンのように、前方方向(図7中の0°の方向)に最大利得を有する単葉型指向性のパターンが形成される。
【0042】
本実施の形態のような、放射器のみを防雪装置に収納する構成において、防雪装置上に着雪した場合には、水平指向性および垂直指向性のいずれにおいても、(a)の場合と比較して、ややバックローブが大きくなっているものの、アンテナビーム幅およびアンテナビームの放射角は着雪のない場合と大差がない。
【0043】
一方、比較例のように放射器、反射器および導波器を防雪装置に収納する構成の場合には、水平指向性については、(a)、(b)の場合と比較して、ビーム幅が大きくなっていることがわかる。また、垂直指向性については、サイドローブ,バックローブが大きくなり、さらに、ビームの放射角が約20°程度上方に変化していることがわかる。
【0044】
したがって、上記のシミュレーションの結果から、比較例のように放射器、反射器および導波器を防雪装置内に収納する場合よりも、放射器のみを防雪装置内に収納する場合のほうが、指向性については良好な結果となった。
【0045】
次に、図8には、図7同様に、(a)着雪がない場合、(b)本実施の形態において着雪がある場合、および(c)比較例において着雪がある場合のそれぞれについて、使用周波数帯域での周波数を変化させた場合の利得(dBi)を比較したものである。図8は、着雪状態は雪の誘電率がほぼ水と等価の80であり、着雪深さが10mmの場合の、周波数が656,713,770MHzにおけるシミュレーション結果の例である。
【0046】
図8を参照して、着雪がない(a)の場合は、周波数全域において約10dBiの利得が得られている。
【0047】
本実施の形態(b)の場合は、(a)の場合と比較して、いずれの周波数においても、やや利得が低下しているものの、周波数全域にわたって、8.3〜8.6dBi程度の安定した利得が得られている。
【0048】
一方、比較例(c)の場合においては、713,770MHzの比較的高周波数帯域においては、(a)の場合とほぼ同じレベルの利得が得られているものの、656MHzの低周波数領域においては、4.8dBiとほぼ1/2程度まで利得が低下している。
【0049】
アンテナの特性としては、使用周波数帯域において利得の変動が大きいと、送信側あるいは受信側において、周波数の変化に応じた利得調整が必要となるため、調整制御の観点からは、たとえ利得の大きさがやや低くても、使用周波数帯域にわたって安定した利得が得られるほうが好ましいことが多い。
【0050】
したがって、上記のシミュレーションの結果から、放射器のみを防雪装置内に収納する場合のほうが、放射器、反射器および導波器を防雪装置内に収納する場合よりも、使用周波数帯全域において安定した利得が得られ、良好な結果となった。
【0051】
図9および図10では、着雪状態の変化による、使用周波数帯域における利得の影響についてシミュレーションを行なった結果を示す。図9は、着雪深さ10mmの場合において、雪の等価誘電率を変化させたときのシミュレーション結果の一例である。また、図10は、等価誘電率が80の場合において、積雪深さを変化させたときのシミュレーション結果の一例である。
【0052】
なお、図9および図10においては、(a)本実施の形態のような放射器のみを防雪装置に収納する構成の場合、(b)放射器および反射器を防雪装置に収納する構成の場合(比較例1)、(c)放射器,反射器,導波器を防雪装置に収納する構成の場合(比較例2)についてのシミュレーション結果を示す。
【0053】
図9においては、本実施の形態である(a)の場合については、誘電率を変更させたときに、全体的に利得が低下するものの、使用周波数全域にわたって、利得が大きく変動しているところがほとんどなく、比較的安定した利得変化を示している。
【0054】
しかしながら、(b)の比較例1および(c)の比較例2においては、誘電率40の場合のグラフにおいて、(b)ではおよそ700MHz付近、(c)ではおよそ675MHz付近の周波数において、利得が大きく低下していることがわかる。
【0055】
また、図10においても同様に、比較例の(b)および(c)の場合には、着雪深さが5mmの場合に、(b)ではおよそ700MHz付近、(c)ではおよそ675MHz付近の周波数において利得が大きく低下している。さらに、(c)の場合には、770MHz付近の高周波数域のおいて、逆に利得が大きくなっている。
【0056】
このように、比較例の場合においては、着雪状態の変化によって使用周波数帯域における利得の変動が大きく、本実施の形態の構成においては、使用周波数帯域にわたって比較的安定した利得が得られる結果となった。
【0057】
以上の結果より、本実施の形態のように、ループ状アンテナ装置の防雪装置において、アンテナの給電素子である放射器を防雪装置内に収納し、無給電素子である反射器および導波器については防雪装置の外側に配置する構成とすることによって、アンテナ特性の低下を抑制しつつ、アンテナ素子への着雪を防止することが可能になる。
【0058】
[実施の形態2]
実施の形態1においては、防雪装置の本体部の断面が略凹型形状、すなわち本体部の一方端のみが開口され他方は胴部と一体となった底部を有する構成について説明した。
【0059】
実施の形態2においては、本体部の両端が開口され、両端とも個別の閉塞部によって閉塞される構成について説明する。
【0060】
図11は、実施の形態2に従う防雪装置100Aが設置されたアンテナ装置の断面図である。図11において、アンテナ200は実施の形態1と同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0061】
図11を参照して、防雪装置100Aは、中空円筒状の本体部110Aと、閉塞部120A,120Bと、アンテナ200を固定するための支持部140Aとを含む。
【0062】
本体部110Aは、両端にフランジ部114A,114Bを有する。そして、本体部110Aの両方の開放端には、閉塞部120A、120Bがそれぞれ取付けられ、給電素子である放射器230への着雪を防止する。
【0063】
図12は、本体部110Aの斜視図である。図12を参照して、本体部110Aは、胴部111Aと、胴部111Aの両端に設けられたフランジ部114A,114Bとを含む。フランジ部114A,114Bには、実施の形態1のフランジ部114と同様に、締結部材130を用いて閉塞部120A,120Bが取付けられる。
【0064】
また、胴部111Aの内面には、アンテナ200のアーム部210を固定するための支持部140Aが取付けられる。支持部140Aは、実施の形態1の支持部140と同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0065】
図13および図14は、それぞれフランジ部114A,114Bに取付けられる閉塞部120A,120Bの概略図である。閉塞部120Aは本体部110Aの導波器側のフランジ部114Aに取付けられ、閉塞部120Bは本体部110Aの反射器側のフランジ部114Bに取付けられる。閉塞部120A,120Bにおいても、実施の形態1の図5における底部112と同様に、アーム部210を通すための穴部が形成されるが、この穴部については、開口部分が閉塞部120A,120Bの外周面まで切り欠かれた形状(図13,14の穴部113A,113B)とすることがより好ましい。このようにすることによって、本防雪装置100Aをアンテナ200に取付ける際に、放射器や導波器などのアンテナ素子を取り外す必要がないので、取付作業を容易にすることが可能となる。なお、閉塞部120Bの穴部113Bについては、アーム部210に加えて給電ケーブル250を通すことが必要なので、閉塞部120Aの穴部113Aと比較して切欠き部分がやや大きく形成されている。
【0066】
このように、本体部の両端が個別の閉塞部を用いて閉塞される構成としても、実質的には実施の形態1と同様の効果を奏することが可能である。
【0067】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
10 アンテナ装置、100,100A 防雪装置、110,110A 本体部、111,111A 胴部、112 底部、113,113A,113B 穴部、114,114A,114B フランジ部、120,120A,120B 閉塞部、130,150 締結部材、140,140A 支持部、141 固定部材、145 凹部、200 アンテナ、210 アーム部、220,221,222 導波器、230,231,232 放射器、235 平行線路、236A,236B 取付部、240 反射器、250 給電ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループ状に形成された給電素子と、ループ状に形成された無給電素子と、前記給電素子および前記無給電素子が距離を隔てて取付けられる管状のアーム部とを含み、電波の送信または受信の少なくともいずれかを行なうためのアンテナの防雪装置であって、
前記給電素子および前記無給電素子は、ループの軸方向が前記アーム部の軸方向と平行となるように一直線上に並列配置され、
前記防雪装置は、
前記アンテナと組み合わされたときに、前記給電素子を内部に収納するとともに前記無給電素子が外部に配置されるように構成される、中空円筒状の胴部と、
前記アーム部を固定するための支持部とを備える、アンテナの防雪装置。
【請求項2】
前記給電素子は、
第1の放射器と、
前記第1の放射器から距離を隔てて並列配置される第2の放射器を含む、請求項1に記載のアンテナの防雪装置。
【請求項3】
前記無給電素子は、
導波器および反射器のうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載のアンテナの防雪装置。
【請求項4】
前記第2の放射器は、前記第1の放射器に対して位相差給電される、請求項2に記載のアンテナの防雪装置。
【請求項5】
前記支持部は、
前記アーム部を固定するために、前記胴部の内面に取付けられるとともに、前記胴部の前記アーム部を取付けた部分を補強するための固定部材を含み、
前記アーム部は、締結部材によって前記固定部材に取付けられる、請求項1に記載のアンテナの防雪装置。
【請求項6】
前記固定部材は、
前記アーム部の外表面と面接触するように、前記アーム部の外面形状に対応した形状を有する凹部をさらに有する、請求項5に記載のアンテナの防雪装置。
【請求項7】
前記防雪装置は、
前記胴部の胴長方向の第1の端部を閉塞するための第1の閉塞部と
前記胴部の胴長方向の前記第1の端部とは逆側の第2の端部を閉塞するための第2の閉塞部とをさらに備える、請求項1に記載のアンテナの防雪装置。
【請求項8】
前記電波は、UHF(Ultrahigh Frequency)帯の電波である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアンテナの防雪装置。
【請求項9】
電波の送信または受信の少なくともいずれかを行なうためのアンテナ装置であって、
ループ状に形成された給電素子と、ループ状に形成された無給電素子と、前記給電素子および前記無給電素子が距離を隔てて取付けられる管状のアーム部とを含み、前記給電素子および前記無給電素子が、ループの軸方向が前記アーム部の軸方向と平行となるように一直線上に並列配置されたアンテナと、
中空円筒状の胴部と、前記アーム部を固定するための支持部とを含み、前記給電素子を前記胴部の内部に収納するとともに、前記無給電素子が前記胴部の外部に配置されるように構成される防雪装置とを備える、アンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−34105(P2012−34105A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170806(P2010−170806)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】