アンテナコイルとその製造方法
【課題】薄型化を図り、全方位を考慮した受信感度の向上を目的としたアンテナコイルを提供する。
【解決手段】アンテナコイル1は、第1のコアのX軸に巻線されたX軸コイルと、第1のコアのZ軸に巻線されたZ軸コイルと、を有する第1のコイル4と、両端にフランジを備えた第2のコアに巻線されたY軸コイルを有する第2のコイル5と、各々が前記X軸コイルと前記Z軸コイルの対応する端部に接続される、前記第1のコアに付設された4つの外部端子3と、各々が前記Y軸コイルの対応する端部に接続される、前記第2のコアに付設された2つの外部端子3と、を有し、前記第1のコイル4と前記第2のコイル5とは、前記X軸コイルと前記Y軸コイルと前記Z軸コイルとの巻軸方向が互いに直交するように、近接して配置され、外部回路と接続される該外部端子3の一部を残して、該第1のコイル4と該第2のコイル5とは、外装樹脂2を用いて一体に成形されている。
【解決手段】アンテナコイル1は、第1のコアのX軸に巻線されたX軸コイルと、第1のコアのZ軸に巻線されたZ軸コイルと、を有する第1のコイル4と、両端にフランジを備えた第2のコアに巻線されたY軸コイルを有する第2のコイル5と、各々が前記X軸コイルと前記Z軸コイルの対応する端部に接続される、前記第1のコアに付設された4つの外部端子3と、各々が前記Y軸コイルの対応する端部に接続される、前記第2のコアに付設された2つの外部端子3と、を有し、前記第1のコイル4と前記第2のコイル5とは、前記X軸コイルと前記Y軸コイルと前記Z軸コイルとの巻軸方向が互いに直交するように、近接して配置され、外部回路と接続される該外部端子3の一部を残して、該第1のコイル4と該第2のコイル5とは、外装樹脂2を用いて一体に成形されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のキーレスエントリーシステムや防犯装置の受信システムに用いられるアンテナコイル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車載等に多用されているキーレスエントリーシステムや防犯装置の受信システムに用いられるアンテナコイルは、棒状のフェライトコアに巻線したアンテナコイルを複数個用いて、それぞれのアンテナコイルがそれぞれの方向の電波を受信するように配置した従来の技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。そして、小型で全方位の電波の受信を目的とした3軸コアを用いてアンテナコイルを形成した技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。3軸コアを用いたアンテナコイルを図8、図9に示す。
【0003】
図8は従来のアンテナコイルの斜視図であり、図9は図8を構成する3軸コイル20である。この3軸コイル20は、フェライト材料からなる扁平な柱状の3軸コア21に、
3軸コア21の上面と下面の中心を通る上面から下面にかける外周を二分するように設けられたY軸溝22に巻回され、Y方向を巻軸方向とするY軸コイル25と、
Y軸溝22に直交し、3軸コア21の上面と下面の中心を通る上面から下面にかける外周を二分するように設けられたX軸溝23に巻回され、X方向を巻軸方向とするX軸コイル26と、
3軸コア21の外周に設けられたZ軸溝24に巻回され、3軸コア21の厚み方向をZ方向としたときZ方向を巻軸方向とするZ軸コイル27とから構成されている。
【0004】
3軸コイル20は、図8に示すように、対向する側面に4つの外部端子29を設けた樹脂製のケース28に収納されている。そして、X軸コイル、Y軸コイル、Z軸コイルのそれぞれの巻線の端部を、所定の外部端子29に電気的に接続したものである。
【0005】
上記のような3軸コイル20は、Z軸方向の電波を受信するためのZ軸溝24の両端のフランジ部が、X軸溝23、Y軸溝22を形成するために4つに分割されている。すなわち、X軸溝23の幅およびY軸溝22の幅が、Z軸コイル27の両端のフランジ部の面積を小さくしている。そのために、Z軸コイル27の特性が、X軸コイル23およびY軸コイル25の特性に比べて低い。この問題を改善するには、Z軸コイル27の巻数を増加させるか、3軸コア21の厚みを厚くすればよいが、アンテナコイルの形状的に大きくなるとともに低背化の妨げとなる。
【0006】
また、X軸コイル26とY軸コイル25の巻軸方向が直交するようにX軸溝23とY軸溝22を設けているため、X軸コイルとY軸コイルのフランジとなる面積が小さくなり、特性が悪くなる。つまり、X軸溝26の両端のフランジは、Y軸溝22によって2分割されるとともに、Y軸溝22の幅により面積が小さくなる。すなわち、X軸コイルのフランジの面積が小さくなった分、X軸コイル26の特性が悪くなる。同様にY軸コイル25の特性も悪くなる。
【0007】
さらに、X軸コイル23の巻線の最上部(巻き終わり部)とY軸コイル22の巻線の最下部(巻き始め部)でそれぞれの巻線が近接または接触すると容量性結合が発生する。容量性結合の容量は、X軸コイル26、Y軸コイル25、Z軸コイル27の結線方法により変化し、アンテナコイルの特性が劣化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−217635号公報
【特許文献2】特開2003−92509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、薄型化を図り、全方位を考慮した受信感度の向上を目的としたアンテナコイルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施例によれば、上記の課題を解決するために、
第1のコアの厚み方向をZ軸とし、該Z軸と直交する軸をX軸とし、前記第1のコアの前記X軸に巻線されたX軸コイルと、前記第1のコアの前記Z軸に巻線されたZ軸コイルと、を有する第1のコイルと、
両端にフランジを備えた第2のコアに巻線されたY軸コイルを有する第2のコイルと、
各々が前記X軸コイルと前記Z軸コイルの対応する端部に接続される、前記第1のコアに付設された4つの外部端子と、
各々が前記Y軸コイルの対応する端部に接続される、前記第2のコアに付設された2つの外部端子と、を有し、
前記第1のコイルと前記第2のコイルとは、前記X軸コイルと前記Y軸コイルと前記Z軸コイルとの巻軸方向が互いに直交するように、近接して配置され、
外部回路と接続される該外部端子の一部を残して、該第1のコイルと該第2のコイルとは外装樹脂を用いて一体に成形された
アンテナコイルが提供される。
そして、前記第1のコイルの各外部端子は、
前記X軸コイルと前記Z軸コイルとの対応する端部に接続される接続片を備え、
該外部端子の一端部と、前記接続片を除く部分とに、樹脂成形された基台を設け、
該基台は前記第1のコアの一方の面に接着されて固定され、
前記第2のコイルの各外部端子は、
前記Y軸コイルの対応する端部に接続される接続片を備え、
前記第2のコアの各フランジは、該第2のコイルの対応する外部端子の端部に接着されて固定されても良い。
さらに、前記外部端子の非成形部分の端部は、
前記外装樹脂の外形に沿ってフォーミングされても良い。
さらにまた、前記第1のコイルのコア外周と前記第2のコイルのコア外周との距離は、0.5mm以上であっても良い。
【0011】
また、本発明の他の一実施形態によれば、
連続するフレームに、接続片を備えた外部端子を打ち抜くステップと、
該外部端子の対向する端部の一部に樹脂成形により基台を形成するステップと、
該基台に第1のコアの底面を接着して固定するステップと、
前記接着して固定するステップの後、該フレームから前記外部端子の端部を切断するステップと、
第1のコアの厚み方向をZ軸とし、該Z軸と直交する軸をX軸とし、該第1のコアの前記X軸に巻線してX軸コイルを形成し、前記第2のコアの前記Z軸に巻線してZ軸コイルを形成するステップと、
前記X軸コイルと前記Y軸コイルの各端部を対応する接続片に絡げ電気的に接続するステップと
を含む第1のコイルの製造するステップと、
連続するフレームに、接続片を備えた外部端子を打ち抜くステップと、
第2のコアの両端のフランジの底面に該外部端子の2つの対向する端部を接着して固定するステップと、
前記接着して固定するステップの後、該フレームから前記外部端子の端部を切断するステップと、
該第2のコアに巻線して、Y軸コイルを形成するステップと、
該Y軸コイルの各端部を対応する接続片に絡げ電気的に接続するステップと
を含む第2のコイルを製造するステップと、
該第1のコイルと該第2のコイルを、前記X軸コイルと前記Y軸コイルと前記Z軸コイルとの巻線方向が互いに直交するように、近接して配置するステップと、
該第1のコイルと該第2のコイルとを一体化するように、該第1のコイルと該第2のコイルとの周囲に外装樹脂をインサート成形するステップと
を含む、アンテナコイルの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るアンテナコイルによれば、第1のコイルである2軸コイルと、第2のコイルである1軸コイルを近接して配置することにより、2軸コイルの特性を充分に活用することができ、第1のコイルと第2のコイルの外周を外装樹脂を用いて一体化することにより小型化、薄型化を図り、全方位を考慮した受信感度の向上が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のアンテナコイルの外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示すアンテナコイルの内部を示す透過図である。
【図3】本発明のアンテナコイルである第1のコイルを示す斜視図である。
【図4】本発明のアンテナコイルである第2のコイルを示す斜視図である。
【図5】第1のコイルに用いた金属端子となるフレーム(a)と、フレームに設けた基台(b)と、第1のコアを基台に固定した平面図(c)と、を示す図である。
【図6】第1のコイルと第2のコイルの配置図を示す平面図である。
【図7】本発明のアンテナコイルの第1のコイルと従来の3軸コイルからなるアンテナコイルの特性比較図である。
【図8】従来のアンテナコイルの外観を示す概略図である。
【図9】従来のアンテナコイルの3軸コイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明する。
図1は本発明のアンテナコイルの外観を示す斜視図、図2は本発明のアンテナコイルの内部を示す透過図である。
【0015】
図1に示すように、アンテナコイル1は、外装樹脂2と、6本の外部端子3と、からなる。外装樹脂2は、例えば、エポキシ樹脂材料、シリコーン樹脂材料などの耐熱性の絶縁性樹脂材料を薄型で略立方体形状に形成したものであり、縦8.6mm、横11.5mm角の底面と、高さ2.9mmとを有する略立方体形状のものである。
アンテナコイル1は、外部端子3を対向する2つの側面にそれぞれ3本ずつ、計6つ(反対側の3つは見えず)備える。外部端子3は、外装樹脂2の側面から引き出され、底面に沿ってフォーミングした実装端子である。6つの外部端子3は、外装樹脂2の内部の2つのコイルから延出している。
【0016】
図2は、図1に示すアンテナコイルの外装樹脂2の内部に埋設される第1のコイルと第2のコイルとが配置された透過図を示す。図に示すように、外装樹脂2の内部は、第1のコイルである2軸コイル4と、第2のコイルである1軸コイル5とが、所定の間隔をもって近接して配置されている。
【0017】
図3は、図2の外装樹脂2の内部に埋設される第1のコイルである2軸コイル4を示す斜視図である。
2軸コイル4は、フェライト材料からなる扁平な円筒形の2軸コア6からなり、2軸コア6の厚み方向の外周に設けたZ軸溝6cと、2軸コア6の上面と下面の中心を通る上面から下面にかける外周を二分するように設けたX軸溝6bを形成している。そして、Z軸溝6cの両端にフランジ6a、6aを有し、フランジの底面には2組の対向して配置した4つの外部端子3を備えている。
【0018】
図3に示すように、2軸コイル4には、2軸コア6のX軸溝6bに巻線をしたX軸コイル7と、Z軸溝6cに巻線をしたZ軸コイル8とが形成されている。X軸コイル7とZ軸コイル8は、互いの巻線による磁束の影響を防止するために、互いの巻軸方向が直交するように形成されている。さらに、4つの外部端子3には、各巻線の端部を接続するための接続片3aが一体化して設けられている。各巻線の端部は所定の接続片3aに絡げられ、例えば、レーザービーム等により溶接され、電気的に接続される。
実施例では2軸コアを扁平の円筒形で説明したが、平面が四角形、正多角形、楕円形を用いてもよい。また、X軸、Z軸の巻軸の断面形状は円形または四角形、多角形でもよい。
【0019】
図4は、図2の外装樹脂2の内部に埋設される第2のコイルである1軸コイル5を示す斜視図である。
図4に示すように、1軸コイル5は、両端に断面が四角形状のフランジ10aを設けたフェライト材料からなる棒状の1軸コア10にY軸コイル9を巻線をしたものである。1軸コア10の両端のフランジ10aの底面には対向する2つの外部端子3を備える。そして、外部端子3には巻線の端部を接続する接続片3aが一体化して設けられている。1軸コイル5の巻線の端部が所定の接続片3aに絡げられ、例えば、レーザービーム等により溶接され、電気的に接続される。
実施例では1軸コアの巻軸の断面形状は四角形を用いたが、円形または多角形でもよい。
【0020】
図2に示すように、2軸コイル4と1軸コイル5とが所定の間隔を設けて、2軸コイル4のX軸コイル7とZ軸コイル8と、1軸コイル5のY軸コイル9との3つの巻軸方向が直交するように近接して配置する。各外部端子3の一部を除く2軸コイル4と1軸コイル5を組合せた外周を、外装樹脂2により薄型で略立方体形状に一体化して形成する。ここで、2軸コイル4のX軸コイルの巻軸方向と、1軸コイル5のY軸コイルの巻軸方向とを直交して配置する。2軸コイル4のX軸コイルとZ軸コイルおよび1軸コイルのY軸コイルの3つのコイルは、互いに磁束が直交するので、それぞれのコイルの相互の磁束の影響が無い。
【0021】
以上のように、2軸コイルのX軸コイルとZ軸コイルおよび1軸コイルのY軸コイルの3つのコイルの巻軸方向を互いに直交して配置したので、他のコイルが受信する方向の磁界の影響を受けることがない。そして、従来の3軸コイルを用いたアンテナコイルのように、X軸コイルとY軸コイルが同じコアに巻線されていないため、X軸コイルの巻き始め部とY軸コイルの巻き終わり部が近接または接触することがない。そのため、容量性結合の発生により特性が劣化しない利点がある。
【0022】
次に、本発明のアンテナコイルの製造方法を図5、図6を用いて詳細を説明する。
【0023】
第1のコイルである2軸コイルの製造方法について説明する。
2軸コイル4を形成する2軸コア6は、予め、図5(a)に示すように、金属からなる薄板を打ち抜いて形成した連続するフレーム15に、巻線の端部を接続するための接続片3aを含む外部端子3が一体に形成されている。フレーム15には、2組の対向して配置した4つの外部端子3を設けられている。フレーム15には、例えば、リン青銅材等からなる0.1〜0.2mmの薄板を使用して、薄板をプレスで打ち抜いて製作する。
フレーム15には、ワークの位置決めを容易にするための複数のワークロケート孔p1、p2を設けてある。
【0024】
そして、図5(b)に示すように、フレーム15に、2組の対向する4つの外部端子3において、対向する2つの外部端子3の先端部を耐熱性の絶縁樹脂を用いて所定の形状にインサート成形した2つの基台3bを形成する。基台2bの内部の対向する2つの外部端子の端部は互いに離れている。基台2bのインサート成形時は、成形金型との位置決めおよび固定を容易にするためにワークロケート孔p1、p2を用いる。
【0025】
そして、図5(c)に示すように、フレーム15に設けた2つの基台3bと2軸コア6の略半円状の2つのフランジ6a、6aの底面とを接着剤を用いて強固に固定する。そして、フレーム15の基台3bに接着して固定した2軸コア6を、フレーム15の外枠とワークロケートの孔p2との間(図の破線部)を切断して、2軸コア6をフレーム15から切り離す。
なお、2軸コアのフランジに直接金属の外部端子を接着して固定すると、Z軸コイルのQ値は数%減小し、X軸コイルのQ値は数10%も減小する。外部端子に絶縁樹脂の基台を設けることにより、Q値の減少を防止するとともに2軸コアのフランジの破損防止および接着の強度を向上する効果がある。
【0026】
次に、図3に示すように、切り離した2軸コア6のX軸溝6bに巻線し、その巻線の端部を所定の接続片3aに絡げ、X軸コイル7を形成する。さらに、2軸コア6のZ軸溝6cに巻線し、その巻線端部を所定の接続片3aに絡げ、Z軸コイル8を形成する。各巻線をした後、巻線の端部を絡げた接続片3aを、例えばレーザービームを照射することにより、各接続片3aとこれに絡げた部分の巻線端部を溶接し電気的に接続する。
【0027】
次に第2のコイルである1軸コイルの製造方法を説明する。1軸コアを接着して固定するフレームは、2軸コアを接着して固定するフレームと同内容のため図を省略し、同じ部位は同符号を用いた。ただし、1軸コアは金属端子に絶縁樹脂の基台を設けない点が2軸コイルと異なる。
図4に示すように、1軸コイル5を形成する1軸コア10は両端に断面が四角形状のフランジ10aを設けた棒状のコアからなる。1軸コイル5の製造方法も2軸コイル4と同様に、予め金属からなる薄板を打ち抜いて形成した連続するフレーム15に、巻線の端部を接続するための接続片3aを含む外部端子3が一体に形成してあり、対向する2つの外部端子3を備えている。フレーム15には、ワークの位置決めを容易にするための複数のワークロケート孔p1、p2(図6参照)を設けてある。
【0028】
そして、互いに対向する2つの外部端子3の接続片3aを除く先端部を1軸コア10の両端のフランジ部の底面に合わせて接着して固定する。
接着して固定した後、2軸コア6と同様に、フレーム15の外枠とワークロケート孔p2との間を切断して、1軸コア10をフレームから切り離す。
切り離した1軸コア10の両端のフランジの間に挟まれた軸に巻線を行い、その巻線端部を所定の接続片3aに絡げ、2軸コイルと同様に、例えばレーザービームを照射することにより、各接続片3aとこれに絡げた部分の巻線端部を溶接し電気的に接続し、1軸コイル5を形成する。
また、実施例では、巻線端部の接続をレーザー溶接を用いて説明したが、はんだ付け等、他の接続方法を用いて接続してもよい。
【0029】
次に、第1のコイルと第2のコイルを組み合わせたアンテナコイルを形成する。
図6は、第1のコイルと第2のコイルの配置図を示す平面図を示す。
成形金型には所定の間隔で配置された6つのロケートピンが設けられており、2軸コイル4に設けた4つのワークロケート孔p2と、1軸コイル5に設けた2つのワークロケート孔p2とをロケートピンに挿着する。そして、外装樹脂2をインサート成形機により6つの外部端子3のワークロケート孔p2を含む端部を残して薄型で略立方体形状に形成する。このとき、2軸コイル4の外部端子3に設けた4つのワークロケート孔p2と1軸コイル5の外部端子3に設けた2つのワークロケート孔p2との間隔を予め設定することにより、2軸コイル4のコア外周と1軸コイル5のフランジ外周との距離を決めることができる。その間隔は外形形状が許す限りおよそ0.5mm以上が望ましい。
2軸コイルと1軸コイルが接触するような間隔(0.5mm未満)にすると、2軸コイルと1軸コイルの間のインダクタンス結合が大きくなり、各コイルの周波数波形に歪を生じて、通信機能に支障を来す。
【0030】
そして、図6に示すように、インサート成形後、外装樹脂2の非成形部分である6つの金属端子をワークロケート孔p2の近辺の破線部で切断する。残った外部端子3は、図1に示すように、外装樹脂2の側面の引き出し面から底面側に沿ってフォーミングして外部接続となる外部端子3を設け、図1の本発明のアンテナコイルを得る。
このように、本発明のアンテナコイルの製造方法は、フレームを用いることで2軸コアおよび1軸コアと金属端子との固定を容易にし、フレームに設けたワークロケート孔p2を用いることで、2軸コイルである第1のコイルと1軸コイルである第2のコイルとの配置を容易にし、外装樹脂2のインサート成形時の固定を確実にしてインサート成形時の位置の精度を増すことができる。
【0031】
上記で作成した2軸コイルと1軸コイルを用いたアンテナコイルと、従来の3軸コイルを用いたアンテナコイルの特性を比較した結果を図7に示す。2軸コアと3軸コアの外形寸法および巻溝、巻き数は同じものを用いた。
図7において、横軸にインダクタンス値(mH)、縦軸に感度(mV/μT)の感度データを示す。ここで、従来の3軸コイルの特性を3xy、3zとし、本発明で用いた2軸コイルの特性を2x、2yで示した。
図7に示すように、従来の3軸コイル3xy、3zと比較して、本発明の2軸コイル2x、2zを用いた方がインダクタンス値および感度が大きいことが読み取れる。このことから、従来の3軸コイルと同じ特性とするならば、本発明のアンテナコイルはさらに小型化或いは薄型化することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 アンテナコイル
2 外装樹脂
3 外部端子
3a 接続片
3b 基台
4 第1のコイル(2軸コイル)
5 第2のコイル(1軸コイル)
6 2軸コア
6a、10a フランジ
6b X軸溝
6c Z軸溝
7 X軸コイル
8 Z軸コイル
9 Y軸コイル
10 1軸コア
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のキーレスエントリーシステムや防犯装置の受信システムに用いられるアンテナコイル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車載等に多用されているキーレスエントリーシステムや防犯装置の受信システムに用いられるアンテナコイルは、棒状のフェライトコアに巻線したアンテナコイルを複数個用いて、それぞれのアンテナコイルがそれぞれの方向の電波を受信するように配置した従来の技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。そして、小型で全方位の電波の受信を目的とした3軸コアを用いてアンテナコイルを形成した技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。3軸コアを用いたアンテナコイルを図8、図9に示す。
【0003】
図8は従来のアンテナコイルの斜視図であり、図9は図8を構成する3軸コイル20である。この3軸コイル20は、フェライト材料からなる扁平な柱状の3軸コア21に、
3軸コア21の上面と下面の中心を通る上面から下面にかける外周を二分するように設けられたY軸溝22に巻回され、Y方向を巻軸方向とするY軸コイル25と、
Y軸溝22に直交し、3軸コア21の上面と下面の中心を通る上面から下面にかける外周を二分するように設けられたX軸溝23に巻回され、X方向を巻軸方向とするX軸コイル26と、
3軸コア21の外周に設けられたZ軸溝24に巻回され、3軸コア21の厚み方向をZ方向としたときZ方向を巻軸方向とするZ軸コイル27とから構成されている。
【0004】
3軸コイル20は、図8に示すように、対向する側面に4つの外部端子29を設けた樹脂製のケース28に収納されている。そして、X軸コイル、Y軸コイル、Z軸コイルのそれぞれの巻線の端部を、所定の外部端子29に電気的に接続したものである。
【0005】
上記のような3軸コイル20は、Z軸方向の電波を受信するためのZ軸溝24の両端のフランジ部が、X軸溝23、Y軸溝22を形成するために4つに分割されている。すなわち、X軸溝23の幅およびY軸溝22の幅が、Z軸コイル27の両端のフランジ部の面積を小さくしている。そのために、Z軸コイル27の特性が、X軸コイル23およびY軸コイル25の特性に比べて低い。この問題を改善するには、Z軸コイル27の巻数を増加させるか、3軸コア21の厚みを厚くすればよいが、アンテナコイルの形状的に大きくなるとともに低背化の妨げとなる。
【0006】
また、X軸コイル26とY軸コイル25の巻軸方向が直交するようにX軸溝23とY軸溝22を設けているため、X軸コイルとY軸コイルのフランジとなる面積が小さくなり、特性が悪くなる。つまり、X軸溝26の両端のフランジは、Y軸溝22によって2分割されるとともに、Y軸溝22の幅により面積が小さくなる。すなわち、X軸コイルのフランジの面積が小さくなった分、X軸コイル26の特性が悪くなる。同様にY軸コイル25の特性も悪くなる。
【0007】
さらに、X軸コイル23の巻線の最上部(巻き終わり部)とY軸コイル22の巻線の最下部(巻き始め部)でそれぞれの巻線が近接または接触すると容量性結合が発生する。容量性結合の容量は、X軸コイル26、Y軸コイル25、Z軸コイル27の結線方法により変化し、アンテナコイルの特性が劣化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−217635号公報
【特許文献2】特開2003−92509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、薄型化を図り、全方位を考慮した受信感度の向上を目的としたアンテナコイルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施例によれば、上記の課題を解決するために、
第1のコアの厚み方向をZ軸とし、該Z軸と直交する軸をX軸とし、前記第1のコアの前記X軸に巻線されたX軸コイルと、前記第1のコアの前記Z軸に巻線されたZ軸コイルと、を有する第1のコイルと、
両端にフランジを備えた第2のコアに巻線されたY軸コイルを有する第2のコイルと、
各々が前記X軸コイルと前記Z軸コイルの対応する端部に接続される、前記第1のコアに付設された4つの外部端子と、
各々が前記Y軸コイルの対応する端部に接続される、前記第2のコアに付設された2つの外部端子と、を有し、
前記第1のコイルと前記第2のコイルとは、前記X軸コイルと前記Y軸コイルと前記Z軸コイルとの巻軸方向が互いに直交するように、近接して配置され、
外部回路と接続される該外部端子の一部を残して、該第1のコイルと該第2のコイルとは外装樹脂を用いて一体に成形された
アンテナコイルが提供される。
そして、前記第1のコイルの各外部端子は、
前記X軸コイルと前記Z軸コイルとの対応する端部に接続される接続片を備え、
該外部端子の一端部と、前記接続片を除く部分とに、樹脂成形された基台を設け、
該基台は前記第1のコアの一方の面に接着されて固定され、
前記第2のコイルの各外部端子は、
前記Y軸コイルの対応する端部に接続される接続片を備え、
前記第2のコアの各フランジは、該第2のコイルの対応する外部端子の端部に接着されて固定されても良い。
さらに、前記外部端子の非成形部分の端部は、
前記外装樹脂の外形に沿ってフォーミングされても良い。
さらにまた、前記第1のコイルのコア外周と前記第2のコイルのコア外周との距離は、0.5mm以上であっても良い。
【0011】
また、本発明の他の一実施形態によれば、
連続するフレームに、接続片を備えた外部端子を打ち抜くステップと、
該外部端子の対向する端部の一部に樹脂成形により基台を形成するステップと、
該基台に第1のコアの底面を接着して固定するステップと、
前記接着して固定するステップの後、該フレームから前記外部端子の端部を切断するステップと、
第1のコアの厚み方向をZ軸とし、該Z軸と直交する軸をX軸とし、該第1のコアの前記X軸に巻線してX軸コイルを形成し、前記第2のコアの前記Z軸に巻線してZ軸コイルを形成するステップと、
前記X軸コイルと前記Y軸コイルの各端部を対応する接続片に絡げ電気的に接続するステップと
を含む第1のコイルの製造するステップと、
連続するフレームに、接続片を備えた外部端子を打ち抜くステップと、
第2のコアの両端のフランジの底面に該外部端子の2つの対向する端部を接着して固定するステップと、
前記接着して固定するステップの後、該フレームから前記外部端子の端部を切断するステップと、
該第2のコアに巻線して、Y軸コイルを形成するステップと、
該Y軸コイルの各端部を対応する接続片に絡げ電気的に接続するステップと
を含む第2のコイルを製造するステップと、
該第1のコイルと該第2のコイルを、前記X軸コイルと前記Y軸コイルと前記Z軸コイルとの巻線方向が互いに直交するように、近接して配置するステップと、
該第1のコイルと該第2のコイルとを一体化するように、該第1のコイルと該第2のコイルとの周囲に外装樹脂をインサート成形するステップと
を含む、アンテナコイルの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るアンテナコイルによれば、第1のコイルである2軸コイルと、第2のコイルである1軸コイルを近接して配置することにより、2軸コイルの特性を充分に活用することができ、第1のコイルと第2のコイルの外周を外装樹脂を用いて一体化することにより小型化、薄型化を図り、全方位を考慮した受信感度の向上が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のアンテナコイルの外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示すアンテナコイルの内部を示す透過図である。
【図3】本発明のアンテナコイルである第1のコイルを示す斜視図である。
【図4】本発明のアンテナコイルである第2のコイルを示す斜視図である。
【図5】第1のコイルに用いた金属端子となるフレーム(a)と、フレームに設けた基台(b)と、第1のコアを基台に固定した平面図(c)と、を示す図である。
【図6】第1のコイルと第2のコイルの配置図を示す平面図である。
【図7】本発明のアンテナコイルの第1のコイルと従来の3軸コイルからなるアンテナコイルの特性比較図である。
【図8】従来のアンテナコイルの外観を示す概略図である。
【図9】従来のアンテナコイルの3軸コイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について実施例を用いて説明する。
図1は本発明のアンテナコイルの外観を示す斜視図、図2は本発明のアンテナコイルの内部を示す透過図である。
【0015】
図1に示すように、アンテナコイル1は、外装樹脂2と、6本の外部端子3と、からなる。外装樹脂2は、例えば、エポキシ樹脂材料、シリコーン樹脂材料などの耐熱性の絶縁性樹脂材料を薄型で略立方体形状に形成したものであり、縦8.6mm、横11.5mm角の底面と、高さ2.9mmとを有する略立方体形状のものである。
アンテナコイル1は、外部端子3を対向する2つの側面にそれぞれ3本ずつ、計6つ(反対側の3つは見えず)備える。外部端子3は、外装樹脂2の側面から引き出され、底面に沿ってフォーミングした実装端子である。6つの外部端子3は、外装樹脂2の内部の2つのコイルから延出している。
【0016】
図2は、図1に示すアンテナコイルの外装樹脂2の内部に埋設される第1のコイルと第2のコイルとが配置された透過図を示す。図に示すように、外装樹脂2の内部は、第1のコイルである2軸コイル4と、第2のコイルである1軸コイル5とが、所定の間隔をもって近接して配置されている。
【0017】
図3は、図2の外装樹脂2の内部に埋設される第1のコイルである2軸コイル4を示す斜視図である。
2軸コイル4は、フェライト材料からなる扁平な円筒形の2軸コア6からなり、2軸コア6の厚み方向の外周に設けたZ軸溝6cと、2軸コア6の上面と下面の中心を通る上面から下面にかける外周を二分するように設けたX軸溝6bを形成している。そして、Z軸溝6cの両端にフランジ6a、6aを有し、フランジの底面には2組の対向して配置した4つの外部端子3を備えている。
【0018】
図3に示すように、2軸コイル4には、2軸コア6のX軸溝6bに巻線をしたX軸コイル7と、Z軸溝6cに巻線をしたZ軸コイル8とが形成されている。X軸コイル7とZ軸コイル8は、互いの巻線による磁束の影響を防止するために、互いの巻軸方向が直交するように形成されている。さらに、4つの外部端子3には、各巻線の端部を接続するための接続片3aが一体化して設けられている。各巻線の端部は所定の接続片3aに絡げられ、例えば、レーザービーム等により溶接され、電気的に接続される。
実施例では2軸コアを扁平の円筒形で説明したが、平面が四角形、正多角形、楕円形を用いてもよい。また、X軸、Z軸の巻軸の断面形状は円形または四角形、多角形でもよい。
【0019】
図4は、図2の外装樹脂2の内部に埋設される第2のコイルである1軸コイル5を示す斜視図である。
図4に示すように、1軸コイル5は、両端に断面が四角形状のフランジ10aを設けたフェライト材料からなる棒状の1軸コア10にY軸コイル9を巻線をしたものである。1軸コア10の両端のフランジ10aの底面には対向する2つの外部端子3を備える。そして、外部端子3には巻線の端部を接続する接続片3aが一体化して設けられている。1軸コイル5の巻線の端部が所定の接続片3aに絡げられ、例えば、レーザービーム等により溶接され、電気的に接続される。
実施例では1軸コアの巻軸の断面形状は四角形を用いたが、円形または多角形でもよい。
【0020】
図2に示すように、2軸コイル4と1軸コイル5とが所定の間隔を設けて、2軸コイル4のX軸コイル7とZ軸コイル8と、1軸コイル5のY軸コイル9との3つの巻軸方向が直交するように近接して配置する。各外部端子3の一部を除く2軸コイル4と1軸コイル5を組合せた外周を、外装樹脂2により薄型で略立方体形状に一体化して形成する。ここで、2軸コイル4のX軸コイルの巻軸方向と、1軸コイル5のY軸コイルの巻軸方向とを直交して配置する。2軸コイル4のX軸コイルとZ軸コイルおよび1軸コイルのY軸コイルの3つのコイルは、互いに磁束が直交するので、それぞれのコイルの相互の磁束の影響が無い。
【0021】
以上のように、2軸コイルのX軸コイルとZ軸コイルおよび1軸コイルのY軸コイルの3つのコイルの巻軸方向を互いに直交して配置したので、他のコイルが受信する方向の磁界の影響を受けることがない。そして、従来の3軸コイルを用いたアンテナコイルのように、X軸コイルとY軸コイルが同じコアに巻線されていないため、X軸コイルの巻き始め部とY軸コイルの巻き終わり部が近接または接触することがない。そのため、容量性結合の発生により特性が劣化しない利点がある。
【0022】
次に、本発明のアンテナコイルの製造方法を図5、図6を用いて詳細を説明する。
【0023】
第1のコイルである2軸コイルの製造方法について説明する。
2軸コイル4を形成する2軸コア6は、予め、図5(a)に示すように、金属からなる薄板を打ち抜いて形成した連続するフレーム15に、巻線の端部を接続するための接続片3aを含む外部端子3が一体に形成されている。フレーム15には、2組の対向して配置した4つの外部端子3を設けられている。フレーム15には、例えば、リン青銅材等からなる0.1〜0.2mmの薄板を使用して、薄板をプレスで打ち抜いて製作する。
フレーム15には、ワークの位置決めを容易にするための複数のワークロケート孔p1、p2を設けてある。
【0024】
そして、図5(b)に示すように、フレーム15に、2組の対向する4つの外部端子3において、対向する2つの外部端子3の先端部を耐熱性の絶縁樹脂を用いて所定の形状にインサート成形した2つの基台3bを形成する。基台2bの内部の対向する2つの外部端子の端部は互いに離れている。基台2bのインサート成形時は、成形金型との位置決めおよび固定を容易にするためにワークロケート孔p1、p2を用いる。
【0025】
そして、図5(c)に示すように、フレーム15に設けた2つの基台3bと2軸コア6の略半円状の2つのフランジ6a、6aの底面とを接着剤を用いて強固に固定する。そして、フレーム15の基台3bに接着して固定した2軸コア6を、フレーム15の外枠とワークロケートの孔p2との間(図の破線部)を切断して、2軸コア6をフレーム15から切り離す。
なお、2軸コアのフランジに直接金属の外部端子を接着して固定すると、Z軸コイルのQ値は数%減小し、X軸コイルのQ値は数10%も減小する。外部端子に絶縁樹脂の基台を設けることにより、Q値の減少を防止するとともに2軸コアのフランジの破損防止および接着の強度を向上する効果がある。
【0026】
次に、図3に示すように、切り離した2軸コア6のX軸溝6bに巻線し、その巻線の端部を所定の接続片3aに絡げ、X軸コイル7を形成する。さらに、2軸コア6のZ軸溝6cに巻線し、その巻線端部を所定の接続片3aに絡げ、Z軸コイル8を形成する。各巻線をした後、巻線の端部を絡げた接続片3aを、例えばレーザービームを照射することにより、各接続片3aとこれに絡げた部分の巻線端部を溶接し電気的に接続する。
【0027】
次に第2のコイルである1軸コイルの製造方法を説明する。1軸コアを接着して固定するフレームは、2軸コアを接着して固定するフレームと同内容のため図を省略し、同じ部位は同符号を用いた。ただし、1軸コアは金属端子に絶縁樹脂の基台を設けない点が2軸コイルと異なる。
図4に示すように、1軸コイル5を形成する1軸コア10は両端に断面が四角形状のフランジ10aを設けた棒状のコアからなる。1軸コイル5の製造方法も2軸コイル4と同様に、予め金属からなる薄板を打ち抜いて形成した連続するフレーム15に、巻線の端部を接続するための接続片3aを含む外部端子3が一体に形成してあり、対向する2つの外部端子3を備えている。フレーム15には、ワークの位置決めを容易にするための複数のワークロケート孔p1、p2(図6参照)を設けてある。
【0028】
そして、互いに対向する2つの外部端子3の接続片3aを除く先端部を1軸コア10の両端のフランジ部の底面に合わせて接着して固定する。
接着して固定した後、2軸コア6と同様に、フレーム15の外枠とワークロケート孔p2との間を切断して、1軸コア10をフレームから切り離す。
切り離した1軸コア10の両端のフランジの間に挟まれた軸に巻線を行い、その巻線端部を所定の接続片3aに絡げ、2軸コイルと同様に、例えばレーザービームを照射することにより、各接続片3aとこれに絡げた部分の巻線端部を溶接し電気的に接続し、1軸コイル5を形成する。
また、実施例では、巻線端部の接続をレーザー溶接を用いて説明したが、はんだ付け等、他の接続方法を用いて接続してもよい。
【0029】
次に、第1のコイルと第2のコイルを組み合わせたアンテナコイルを形成する。
図6は、第1のコイルと第2のコイルの配置図を示す平面図を示す。
成形金型には所定の間隔で配置された6つのロケートピンが設けられており、2軸コイル4に設けた4つのワークロケート孔p2と、1軸コイル5に設けた2つのワークロケート孔p2とをロケートピンに挿着する。そして、外装樹脂2をインサート成形機により6つの外部端子3のワークロケート孔p2を含む端部を残して薄型で略立方体形状に形成する。このとき、2軸コイル4の外部端子3に設けた4つのワークロケート孔p2と1軸コイル5の外部端子3に設けた2つのワークロケート孔p2との間隔を予め設定することにより、2軸コイル4のコア外周と1軸コイル5のフランジ外周との距離を決めることができる。その間隔は外形形状が許す限りおよそ0.5mm以上が望ましい。
2軸コイルと1軸コイルが接触するような間隔(0.5mm未満)にすると、2軸コイルと1軸コイルの間のインダクタンス結合が大きくなり、各コイルの周波数波形に歪を生じて、通信機能に支障を来す。
【0030】
そして、図6に示すように、インサート成形後、外装樹脂2の非成形部分である6つの金属端子をワークロケート孔p2の近辺の破線部で切断する。残った外部端子3は、図1に示すように、外装樹脂2の側面の引き出し面から底面側に沿ってフォーミングして外部接続となる外部端子3を設け、図1の本発明のアンテナコイルを得る。
このように、本発明のアンテナコイルの製造方法は、フレームを用いることで2軸コアおよび1軸コアと金属端子との固定を容易にし、フレームに設けたワークロケート孔p2を用いることで、2軸コイルである第1のコイルと1軸コイルである第2のコイルとの配置を容易にし、外装樹脂2のインサート成形時の固定を確実にしてインサート成形時の位置の精度を増すことができる。
【0031】
上記で作成した2軸コイルと1軸コイルを用いたアンテナコイルと、従来の3軸コイルを用いたアンテナコイルの特性を比較した結果を図7に示す。2軸コアと3軸コアの外形寸法および巻溝、巻き数は同じものを用いた。
図7において、横軸にインダクタンス値(mH)、縦軸に感度(mV/μT)の感度データを示す。ここで、従来の3軸コイルの特性を3xy、3zとし、本発明で用いた2軸コイルの特性を2x、2yで示した。
図7に示すように、従来の3軸コイル3xy、3zと比較して、本発明の2軸コイル2x、2zを用いた方がインダクタンス値および感度が大きいことが読み取れる。このことから、従来の3軸コイルと同じ特性とするならば、本発明のアンテナコイルはさらに小型化或いは薄型化することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 アンテナコイル
2 外装樹脂
3 外部端子
3a 接続片
3b 基台
4 第1のコイル(2軸コイル)
5 第2のコイル(1軸コイル)
6 2軸コア
6a、10a フランジ
6b X軸溝
6c Z軸溝
7 X軸コイル
8 Z軸コイル
9 Y軸コイル
10 1軸コア
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコアの厚み方向をZ軸とし、該Z軸と直交する軸をX軸とし、前記第1のコアの前記X軸に巻線されたX軸コイルと、前記第1のコアの前記Z軸に巻線されたZ軸コイルと、を有する第1のコイルと、
両端にフランジを備えた第2のコアに巻線されたY軸コイルを有する第2のコイルと、
各々が前記X軸コイルと前記Z軸コイルの対応する端部に接続される、前記第1のコアに付設された4つの外部端子と、
各々が前記Y軸コイルの対応する端部に接続される、前記第2のコアに付設された2つの外部端子と、を有し、
前記第1のコイルと前記第2のコイルとは、前記X軸コイルと前記Y軸コイルと前記Z軸コイルとの巻軸方向が互いに直交するように、近接して配置され、
外部回路と接続される該外部端子の一部を残して、該第1のコイルと該第2のコイルとは外装樹脂を用いて一体に成形されたことを特徴とする
アンテナコイル。
【請求項2】
前記第1のコイルの各外部端子は、
前記X軸コイルと前記Z軸コイルとの対応する端部に接続される接続片を備え、
該外部端子の一端部と、前記接続片を除く部分と、に樹脂成形された基台を設け、
該基台は前記第1のコアの一方の面に接着されて固定され、
前記第2のコイルの各外部端子は、
前記Y軸コイルの対応する端部に接続される接続片を備え、
前記第2のコアの各フランジは、該第2のコイルの対応する外部端子の端部に接着されて固定されたことを特徴とする
請求項1記載のアンテナコイル。
【請求項3】
前記第1のコアは、
フェライトからなり、扁平であり、
前記第1のコアの平面は、丸形、四角形、多角形の何れかであることを特徴とする
請求項1記載のアンテナコイル。
【請求項4】
前記外部端子の非成形部分の端部は、
前記外装樹脂の外形に沿ってフォーミングされたことを特徴とする
請求項1記載のアンテナコイル。
【請求項5】
前記第1のコイルのコア外周と前記第2のコイルのコア外周との距離は、
0.5mm以上であることを特徴とする
請求項1記載のアンテナコイル。
【請求項6】
連続するフレームに、接続片を備えた外部端子を打ち抜くステップと、
該外部端子の対向する端部の一部に樹脂成形により基台を形成するステップと、
該基台に第1のコアの底面を接着して固定するステップと、
前記接着して固定するステップの後、該フレームから前記外部端子の端部を切断するステップと、
第1のコアの厚み方向をZ軸とし、該Z軸と直交する軸をX軸とし、該第1のコアの前記X軸に巻線してX軸コイルを形成し、前記第2のコアの前記Z軸に巻線してZ軸コイルを形成するステップと、
前記X軸コイルと前記Y軸コイルの各端部を対応する接続片に絡げ電気的に接続するステップと
を含む第1のコイルを製造するステップと、
連続するフレームに、接続片を備えた外部端子を打ち抜くステップと、
第2のコアの両端のフランジの底面に該外部端子の2つの対向する端部を接着して固定するステップと、
前記接着して固定するステップの後、該フレームから前記外部端子の端部を切断するステップと、
該第2のコアに巻線して、Y軸コイルを形成するステップと、
該Y軸コイルの各端部を対応する接続片に絡げ電気的に接続するステップと
を含む第2のコイルを製造するステップと、
該第1のコイルと該第2のコイルを、前記X軸コイルと前記Y軸コイルと前記Z軸コイルとの巻線方向が互いに直交するように、近接して配置するステップと、
該第1のコイルと該第2のコイルとを一体化するように、該第1のコイルと該第2のコイルとの周囲に外装樹脂をインサート成形するステップと
を含むことを特徴とする、アンテナコイルの製造方法。
【請求項7】
前記インサート成形するステップの後、
前記外部端子の非成形部分の端部を、
前記外装樹脂の形状に沿ってフォーミングするステップをさらに含むことを特徴とする
請求項6記載のアンテナコイルの製造方法。
【請求項1】
第1のコアの厚み方向をZ軸とし、該Z軸と直交する軸をX軸とし、前記第1のコアの前記X軸に巻線されたX軸コイルと、前記第1のコアの前記Z軸に巻線されたZ軸コイルと、を有する第1のコイルと、
両端にフランジを備えた第2のコアに巻線されたY軸コイルを有する第2のコイルと、
各々が前記X軸コイルと前記Z軸コイルの対応する端部に接続される、前記第1のコアに付設された4つの外部端子と、
各々が前記Y軸コイルの対応する端部に接続される、前記第2のコアに付設された2つの外部端子と、を有し、
前記第1のコイルと前記第2のコイルとは、前記X軸コイルと前記Y軸コイルと前記Z軸コイルとの巻軸方向が互いに直交するように、近接して配置され、
外部回路と接続される該外部端子の一部を残して、該第1のコイルと該第2のコイルとは外装樹脂を用いて一体に成形されたことを特徴とする
アンテナコイル。
【請求項2】
前記第1のコイルの各外部端子は、
前記X軸コイルと前記Z軸コイルとの対応する端部に接続される接続片を備え、
該外部端子の一端部と、前記接続片を除く部分と、に樹脂成形された基台を設け、
該基台は前記第1のコアの一方の面に接着されて固定され、
前記第2のコイルの各外部端子は、
前記Y軸コイルの対応する端部に接続される接続片を備え、
前記第2のコアの各フランジは、該第2のコイルの対応する外部端子の端部に接着されて固定されたことを特徴とする
請求項1記載のアンテナコイル。
【請求項3】
前記第1のコアは、
フェライトからなり、扁平であり、
前記第1のコアの平面は、丸形、四角形、多角形の何れかであることを特徴とする
請求項1記載のアンテナコイル。
【請求項4】
前記外部端子の非成形部分の端部は、
前記外装樹脂の外形に沿ってフォーミングされたことを特徴とする
請求項1記載のアンテナコイル。
【請求項5】
前記第1のコイルのコア外周と前記第2のコイルのコア外周との距離は、
0.5mm以上であることを特徴とする
請求項1記載のアンテナコイル。
【請求項6】
連続するフレームに、接続片を備えた外部端子を打ち抜くステップと、
該外部端子の対向する端部の一部に樹脂成形により基台を形成するステップと、
該基台に第1のコアの底面を接着して固定するステップと、
前記接着して固定するステップの後、該フレームから前記外部端子の端部を切断するステップと、
第1のコアの厚み方向をZ軸とし、該Z軸と直交する軸をX軸とし、該第1のコアの前記X軸に巻線してX軸コイルを形成し、前記第2のコアの前記Z軸に巻線してZ軸コイルを形成するステップと、
前記X軸コイルと前記Y軸コイルの各端部を対応する接続片に絡げ電気的に接続するステップと
を含む第1のコイルを製造するステップと、
連続するフレームに、接続片を備えた外部端子を打ち抜くステップと、
第2のコアの両端のフランジの底面に該外部端子の2つの対向する端部を接着して固定するステップと、
前記接着して固定するステップの後、該フレームから前記外部端子の端部を切断するステップと、
該第2のコアに巻線して、Y軸コイルを形成するステップと、
該Y軸コイルの各端部を対応する接続片に絡げ電気的に接続するステップと
を含む第2のコイルを製造するステップと、
該第1のコイルと該第2のコイルを、前記X軸コイルと前記Y軸コイルと前記Z軸コイルとの巻線方向が互いに直交するように、近接して配置するステップと、
該第1のコイルと該第2のコイルとを一体化するように、該第1のコイルと該第2のコイルとの周囲に外装樹脂をインサート成形するステップと
を含むことを特徴とする、アンテナコイルの製造方法。
【請求項7】
前記インサート成形するステップの後、
前記外部端子の非成形部分の端部を、
前記外装樹脂の形状に沿ってフォーミングするステップをさらに含むことを特徴とする
請求項6記載のアンテナコイルの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−135560(P2011−135560A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223570(P2010−223570)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】
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