アンテナ共用システム
【課題】狭帯域内に多数の無線チャンネルを有する無線システムにおいて、狭い共用周波数間隔で多周波数の共用が可能となり、かつ低損失なアンテナ共用システムを提供する。
【解決手段】多数の無線送信機出力を合成してアンテナを共用する多チャンネル共用器において、各無線送信機からの信号が入力される入力端子311〜3110をアイソレータ321〜325、chBPF331〜335に接続し、これらを約λ/2の電気長で構成する接続ケーブル341〜344にて合成後、約λ/2の電気長で構成するケーブル351で接続された送信帯域BPF36aを介して送信を行う第1送信系統30Aと、この第1送信系統30Aと同様に構成される第2送信系統30Bを有し、これら2つの送信系統30A、30Bをハイブリッド回路からなる2混合2分配器38で合成し、アンテナ端子39へ出力する。
【解決手段】多数の無線送信機出力を合成してアンテナを共用する多チャンネル共用器において、各無線送信機からの信号が入力される入力端子311〜3110をアイソレータ321〜325、chBPF331〜335に接続し、これらを約λ/2の電気長で構成する接続ケーブル341〜344にて合成後、約λ/2の電気長で構成するケーブル351で接続された送信帯域BPF36aを介して送信を行う第1送信系統30Aと、この第1送信系統30Aと同様に構成される第2送信系統30Bを有し、これら2つの送信系統30A、30Bをハイブリッド回路からなる2混合2分配器38で合成し、アンテナ端子39へ出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信において、多数の無線機によりアンテナを共用するアンテナ共用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
VHF帯やUHF帯の電波を使用する自動車電話等の移動無線においては、多数の無線機によりアンテナを共用するアンテナ共用システムが従来から用いられている。
【0003】
上記アンテナ共用システムにおいては、従来、chBPF(チャンネル・バンドパスフィルタ)を使用したもの、あるいはハイブリッド回路からなる複数の2混合器と送信帯域BPFを使用したものがある。
【0004】
図13は従来のchBPFを使用した10チャンネル共用器のブロック構成を示したもので、第1送信系統10A及び第2送信系統10Bを備えている。
【0005】
第1送信系統10Aは、周波数が異なる例えば5台の無線送信機(Tx1〜Tx5)の出力を共用器の入力端子111〜115よりアイソレータ121〜125を介してchBPF131〜135に入力し、これらのchBPF131〜135の出力端子間をλ/2の電気長で構成される接続ケーブル141〜144により接続する。上記λは使用周波数における波長である。
【0006】
また、第2送信系統10Bは、上記第1送信系統10Aと同様に周波数が異なる例えば5台の無線送信機(Tx6〜Tx10)の出力を共用器の入力端子116〜1110よりアイソレータ126〜1210を介してchBPF136〜1310に入力し、これらのchBPF136〜1310の出力端子間をλ/2の電気長で構成される接続ケーブル146〜149により接続する。
【0007】
そして、上記第1送信系統10A及び第2送信系統10Bの出力をλ/2の電気長で構成される接続ケーブル151、152により合成し、送信帯域BPF16を介してアンテナ端子17へ出力する。
【0008】
上記の構成によれば、共用損失3〜4dBの低損失で共用が可能となるが、共用周波数間隔はchBPF131〜1310の減衰特性に左右されるため、最小で各無線送信機の周波数に対して「0.06%」程度と限界があり、更に狭い周波数間隔での共用は不可能となる。このため、狭帯域内に多数の無線チャンネルを有する無線システムでは使用できない。
【0009】
図14はハイブリッド回路からなる複数の2混合器と送信帯域BPFを利用した従来の10ch共用器のブロック構成を示したもので、第1送信系統20A及び第2送信系統20Bを備えている。
【0010】
第1送信系統20Aは、周波数が異なる例えば4台の無線送信機(Tx1〜Tx4)の出力を共用器の入力端子211〜214よりアイソレータ221〜224を介して2混合器231、232に入力し、これらの2混合器231、232を2混合器241に接続する。
【0011】
一方、第2送信系統20Bは、周波数が異なる例えば6台の無線送信機(Tx5〜Tx10)の出力を共用器の入力端子215〜2110よりアイソレータ225〜2210を介して2混合器233〜235に入力する。また、上記2混合器233、234は2混合器242を介して2混合器25の一方の入力端子に接続し、上記2混合器235の出力を2混合器25の他方の入力端子に接続する。
【0012】
そして、上記第1送信系統20Aの2混合器241と第2送信系統20Bの2混合器25の出力を2混合器26で混合した後、送信帯域BPF27を介してアンテナ端子28へ出力する。
【0013】
上記図14に示したアンテナ共用システムは、ハイブリッド回路の端子間結合減衰量を利用し、理論的には共用周波数間隔を限りなく狭くすることが可能であるが、共用損失は各2混合器出力の分配損失の加算が生じるため、合計15〜16dB程度と非常に大きくなり、効率が悪いため、特に大電力の無線局では実用にならない。
【0014】
また、本発明に関連する公知技術として、複数の送信機出力をそれぞれアイソレータ及びチャンネルフィルタを介して取り出し、パワー合成回路で合成する送信系統を2系統設け、この2系統の送信出力をハイブリッド回路で合成してアンテナへ出力するようにした送信共用装置(例えば、特許文献1参照。)や、複数の送信機出力をそれぞれアイソレータ及び帯域通過フィルタを介して取り出す2系統の送信系統を設け、この2系統の送信出力をパワーコンバイニングネットワーク及びTxフィルタを介してアンテナに接続するようにした空中線共用器(例えば、特許文献1参照。)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平3−185932号公報
【特許文献2】特開平5−55812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のように図13に示したchBPFを使用した従来のアンテナ共用システムは、共用損失3〜4dBの低損失で共用が可能となるが、共用周波数間隔はchBPF131〜1310の減衰特性に左右されるため、最小でも各無線送信機の周波数に対して「0.06%」程度であり、狭い周波数間隔での共用は不可能である。このため狭帯域内に多数の無線チャンネルを有する無線システムでは使用することができない。
【0017】
また、図14に示したハイブリッド回路からなる複数の2混合器と送信帯域BPFを利用した従来のアンテナ共用システムは、ハイブリッド回路の端子間結合減衰量を利用し、理論的には共用周波数間隔を狭くすることが可能であるが、共用損失は各2混合器出力の分配損失の加算が生じるため、合計15〜16dB程度と非常に大きくなり、効率が悪いため、特に大電力の無線局では実用にならない。
【0018】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、狭帯域内に多数の無線チャンネルを有する無線システムにおいて、狭い共用周波数間隔で多周波数の共用が可能となり、かつ低損失なアンテナ共用システムを提供することを目的とする。
【0019】
また、本発明は、狭帯域内に多数の無線チャンネルを有する無線システムにおいて、低損失かつ狭い共用周波数間隔で多周波数の送信周波数共用が可能であるとともに、送受信共用も兼ね備えたアンテナ共用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第1の発明に係るアンテナ共用システムは、多数の無線送信機出力を合成してアンテナを共用するアンテナ共用器において、第1系統の複数の信号入力端子をそれぞれアイソレータを介してチャンネルBPFに接続し、前記各チャンネルBPFの出力を約1/2波長の電気長で構成する接続ケーブルにて合成後、約1/2波長の電気長で構成するケーブルで接続された送信帯域BPFを介して送信を行う第1送信系統と、第2系統の複数の信機入力端子をそれぞれアイソレータを介してチャンネルBPFに接続し、前記各チャンネルBPFの出力を約1/2波長の電気長で構成する接続ケーブルにて合成後、約1/2波長の電気長で構成するケーブルで接続された送信帯域BPFを介して送信を行う第2送信系統と、前第1送信系統及び第2送信系統の出力を混合し第1及び第2のアンテナ端子に分配するハイブリッド回路からなる2混合2分配器と、前記第1及び第2のアンテナ端子にそれぞれ接続され、鉄塔の側部に水平面内で互いに約180°方向に設置される第1及び第2のアンテナとを具備し、前記第1及び第2のアンテナを2基合成アンテナとして動作させ、水平面無指向性としたことを特徴とする。
【0021】
第2の発明に係るアンテナ共用システムは、多数の無線送信機出力を合成してアンテナを共用するアンテナ共用器において、第1系統の複数の信号入力端子をそれぞれアイソレータを介してチャンネルBPFに接続し、前記各チャンネルBPFの出力を約1/2波長の電気長で構成する接続ケーブルにて合成後、約1/2波長の電気長で構成するケーブルで接続された送信帯域BPFを介して送信を行う第1送信系統と、第2系統の複数の信機入力端子をそれぞれアイソレータを介してチャンネルBPFに接続し、前記各チャンネルBPFの出力を約1/2波長の電気長で構成する接続ケーブルにて合成後、約1/2波長の電気長で構成するケーブルで接続された送受信共用器を介して送信を行う第2送信系統と、前第1送信系統及び第2送信系統の出力を混合し第1及び第2のアンテナ端子に分配するハイブリッド回路からなる2混合2分配器と、前記第1及び第2のアンテナ端子にそれぞれ接続され、鉄塔の側部に水平面内で互いに約180°方向に設置される第1及び第2のアンテナと、前記第1及び第2のアンテナで受信され、前記送受信共用器の受信端子より出力される受信信号を増幅器及び受信用分配器を介して複数の無線受信機に入力する受信系統とを具備し、前記第1及び第2のアンテナを2基合成アンテナとして動作させ、水平面無指向性とすると共に、送信用及び受信用として共用するように構成したことを特徴とする。
【0022】
第3の発明は、前記第2の発明に係るアンテナ共用システムを2系統設けると共にダイバーシティ受信機能を備えた複数の無線受信機を2系統に共通に設け、第1系統の受信用分配器の分配出力を各無線受信機の一方の入力端子に入力し、第2系統の受信用分配器の分配出力を各無線受信機の他方の入力端子に入力してダイバーシティ受信を行うように構成し、前記各系統の第1及び第2のアンテナを鉄塔の側部にそれぞれ水平面内で互いに約180°方向に設置すると共に、各系統間のアンテナを相互に約90°の位置関係を保って配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、狭帯域内に多数の無線チャンネルを有する無線システムにおいて、狭い共用周波数間隔で多周波数の共用が可能となり、かつ低損失なアンテナ共用システムを提供することができる。
【0024】
また、送受共用が可能であると共に、鉄塔頂部にアンテナの設置スペースがない状況においても、鉄塔側面を利用し良好な指向性を得られ、かつダイバーシティ機能を兼ね備えたアンテナ共用システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1に係る10ch共用器の構成を示すブロック図である。
【図2】同実施例1に係る10ch共用器の送信側通過損失特性例を示す図である。
【図3】同実施例1に係る10ch共用器の同一送信系統内の共用周波数間隔での端子間結合減衰量を示す図である。
【図4】同実施例1に係る10ch共用器の2つの送信系統間の共用周波数間隔での端子間結合減衰量を示す図である。
【図5】本発明の実施例2に係る10ch共用器の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施例3に係る10ch共用器の構成を示すブロック図である。
【図7】同実施例3に係る10ch共用器のアンテナを鉄塔の側面を利用し水平面内で互いに180°方向に設置した場合の配置例を示す図である。
【図8】図7のアンテナ配置例における水平面指向性を示す図である。
【図9】本発明の実施例4に係る10ch共用器の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施例5に係る10ch共用器の構成を示すブロック図である。
【図11】同実施例5に係る10ch共用器において、鉄塔側面を利用して2系統のアンテナを設置した場合の配置例を示す上面図である。
【図12】図11に示すアンテナ配置例における第1のアンテナ共用器に接続されるアンテナ及び第2のアンテナ共用器に接続されるアンテナの水平面指向性を示す図である。
【図13】従来のチャンネルBPFを使用した10ch共用器の構成を示すブロック図である。
【図14】従来の複数の2混合器と送信帯域BPFを利用した10ch共用器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
図1は本発明の実施例1に係る10ch共用器100Aのブロック構成例を示したもので、第1送信系統30A及び第2送信系統30Bを備えている。
【0028】
第1送信系統30Aは、周波数が異なる例えば5台の無線送信機(Tx1〜Tx5)の出力を共用器の入力端子311〜315よりアイソレータ321〜325を介してchBPF(チャンネル・バンドパスフィルタ)331〜335に入力し、これらのchBPF331〜335の出力端子間を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル341〜344により接続する。上記λは使用周波数における波長である。更に上記chBPF331〜335の合成出力を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル351により送信帯域BPF36aに入力し、この送信帯域BPF36aの出力を任意長さの接続ケーブル37aを介して混合器、例えばハイブリッド回路で構成される2混合2分配器38の一方の入力端子に入力する。上記送信帯域BPF36aは、第1送信系統30Aの送信帯域に合わせて通過帯域幅が設定される。
【0029】
また、第2送信系統30Bは、上記第1送信系統30Aと同様に周波数が異なる例えば5台の無線送信機(Tx6〜Tx10)の出力を共用器の入力端子316〜3110よりアイソレータ326〜3210を介してchBPF336〜3310に入力し、これらのchBPF336〜3310の出力端子間を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル346〜349により接続する。更に上記chBPF335〜3310の合成出力を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル352により送信帯域BPF36bに入力し、この送信帯域BPF36bの出力を任意長さの接続ケーブル37bを介して上記2混合2分配器38の他方の入力端子に入力する。上記送信帯域BPF36bは、第2送信系統30Bの送信帯域に合わせて通過帯域幅が設定される。
【0030】
上記2混合2分配器38は、一方の出力端子をアンテナ端子39としてアンテナ40に接続し、他方の出力端子と接地間に疑似負荷抵抗Rを接続する。すなわち、上記2混合2分配器38は、第1送信系統30A及び第2送信系統30Bから出力される多周波数の送信機出力を合成してアンテナ端子39よりアンテナ40へ出力する。
【0031】
上記の構成において、第1送信系統30Aにおける無線送信機Tx1〜Tx5の周波数f1〜f5の共用周波数間隔は、例えば無線送信機Tx1の送信周波数を第1周波数f1とすると、この第1周波数f1に対して例えば「+0.06%」に設定する。
【0032】
すなわち、
f2=f1+(f1×0.06%)
f3=f2+(f1×0.06%)
f4=f3+(f1×0.06%)
f5=f4+(f1×0.06%)
に設定する。
【0033】
そして、第2送信系統30Bにおける無線送信機Tx6〜Tx10の周波数f6〜f10の共用周波数間隔は、第1送信系統30Aにおける無線送信機Tx1〜Tx5の各周波数f1〜f5に対してそれぞれ例えば「+0.006%」に設定する。
【0034】
すなわち、
f6=f1+(f1×0.006%)
f7=f2+(f2×0.006%)
f8=f3+(f3×0.006%)
f9=f4+(f4×0.006%)
f10=f5+(f5×0.006%)
に設定する。
【0035】
図2は、上記実施例1に示した10ch共用器100Aにおける各入力端子311〜315、316〜3110とアンテナ端子39間の通過損失特性を示したもので、各無線送信機Tx1〜Tx10の周波数fN(N=1〜10)にて約5dBの低損失特性が得られている。上記図2は、横軸に周波数をとり、縦軸に通過損失(dB)をとって示した。
【0036】
図3は第1送信系統30A内での入力端子311〜315間、及び第2送信系統30B内での入力端子316〜3110間での結合減衰量特性を示したもので、各無線送信機の周波数fN(N=1〜10)に対し、「+0.06%」の周波数間隔にて共用器の端子間結合減衰量の一般的な要求性能の35dB以上を満足する40dB以上の減衰量が得られている。
【0037】
図4は送信系統1と送信系統2の間での共用器入力端子間の結合減衰量特性を示したもので、各無線送信機の周波数fN に対し、「0.006%」の周波数間隔にて40dB以上の減衰量が得られている。
【0038】
従って、共用周波数間隔が各無線送信機の周波数fN に対し「0.06%」以上の場合には、上記実施例1で示したように同一送信系統内にて共用し、更に共用周波数間隔が狭い「0.006%」以上の場合は、第1送信系統30Aと第2送信系統30Bとに共用周波数を分けることにより共用が可能となり、低損失かつ狭い共用周波数間隔での共用が可能となる。
【0039】
すなわち、第1送信系統30A及び第2送信系統30Bから出力される多周波数の送信機出力をハイブリッド回路で構成される2混合2分配器38にて接続合成し、アンテナ端子39に出力する。このとき、第1送信系統30Aと第2送信系統30Bの間では、chBPFの減衰特性の不足分を2混合2分配器38の端子間結合減衰量で補うことにより、第1送信系統30Aと第2送信系統30B間の共用周波数間隔は最小で対応周波数fN に対して「0.006%」程度が可能となり、また共用損失については、chBPF方式の利用により5〜6dBの低損失での共用が可能となる。
【0040】
なお、実施例1では、各無線送信機の周波数間隔を周波数fN に対して「+側」に設定した場合について示したが、各無線送信機の周波数fN に対して「−側」に設定しても良く、この場合においても上実施例1と同様の結果を得ることができる。
【実施例2】
【0041】
次に本発明の実施例2に係るアンテナ共用システムについて説明する。
【0042】
図5は本発明の実施例2に係る10ch共用器100Bのブロック構成図である。この実施例2は、上記実施例1に示した10ch共用器100Aにおいて、更に受信系統50を設け、上記アンテナ40を送信用としてだけでなく受信用アンテナとして共用できるように構成したものである。なお、図1に示した実施例1と同一部分には同一号を付して詳細な説明は省略する。
【0043】
実施例2に係る10ch共用器100Bは、図5に示すように実施例1における第2送信系統30Bの送信帯域BPF36bに代えて送受信共用器51を設けている。この送受信共用器51は、第2送信系統30Bの送信帯域に合わせて通過帯域幅が設定された送信用BPF、及び受信系統50の受信帯域(10チャンネル)に合わせて通過帯域幅が設定された受信用BPFにより構成され、送信信号を入力する送信端子、受信信号を出力する受信端子、2混合2分配器38に接続する送受信端子を備えている。
【0044】
上記送受信共用器51の受信端子から取り出される受信信号は、増幅器52で増幅されて受信用10分配器53に入力される。この受信用10分配器53は、アンテナ40により受信された信号を出力端子546〜5410より無線受信機(Rx6〜Rx10)に分配する。
【0045】
上記の構成において、第2送信系統30BのchBPF336〜3310から出力される送信信号は、送受信共用器51を介して2混合2分配器38へ送られ、第1送信系統30Aの送信信号と合成されてアンテナ40より送信される。
【0046】
また、アンテナ40で受信された信号は、2混合2分配器38及び送受信共用器51の受信用BPFを介して取り出され、増幅器52で増幅された後、受信用10分配器53により出力端子546〜5410を介して各無線受信機(Rx6〜Rx10)に分配される。
【0047】
上記実施例2によれば、実施例1と同様に第1送信系統30Aと第2送信系統30B間の共用周波数間隔は最小で各無線送信機の周波数fN に対して「0.006%」程度が可能となり、また共用損失についてはchBPF方式の利用により5〜6dBの低損失での共用が可能で、且つ送受共用を兼ね備えることができる。
【実施例3】
【0048】
次に本発明の実施例3に係るアンテナ共用システムについて説明する。
【0049】
図6は本発明の実施例3に係る10ch共用器100Cのブロック構成図である。この実施例3は上記実施例1に示した10ch共用器100Aにおいて、2混合2分配器38に疑似抵抗Rを接続せず、2つの出力端子をアンテナ端子39a、39bとして2基のアンテナ40a、40bに接続したものである。その他の構成は、図1に示した実施例1と同様の構成であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0050】
上記アンテナ40a、40bは、例えば指向性アンテナを使用し、鉄塔の側面等を利用して設置し、2基合成アンテナとして動作させる。ここでアンテナ単体の指向性と、これらの配置を選ぶことにより様々な指向性を得ることができる。
【0051】
図7は、アンテナ40a、40bを180°ビームアンテナとして、鉄塔46の側面を利用し水平面内で互いに180°方向に設置した場合の配置例を示している。
【0052】
図8は、図7のアンテナ配置例においてアンテナ40a、40bを180°ビームアンテナとし、アンテナ間隔Dを約12λとした場合の平面指向性を示したもので、ほぼ全方向に指向性レベルが得られ、鉄塔頂部を利用できない場合でも略無指向性が得られている。
【0053】
上記実施例3は、例えば鉄塔46にアンテナを増設する際、鉄塔46の頂部に余裕がなくて増設できない場合でも、鉄塔46の側面を利用してアンテナ40a、40bを設置でき、初期の目的を達成することができる。また、2混合2分配器38の分配出力を2つのアンテナ40a、40bに出力することにより、2混合2分配器38の分配出力を無駄にすることなく、アンテナの出力効率を向上することができる。
【0054】
また、上記実施例3においても、実施例1と同様に第1送信系統30Aと第2送信系統30B間の共用周波数間隔は最小で各無線送信機の周波数fN に対して「0.006%」程度が可能となり、また共用損失については、chBPF方式の利用により5〜6dBの低損失での共用が可能である。
【実施例4】
【0055】
次に本発明の実施例4に係るアンテナ共用システムについて説明する。
【0056】
図9は本発明の実施例4に係る10ch共用器100Dのブロック構成図である。この実施例4は、実施例3において、実施例2と同様に受信系統50を設け、アンテナ40を送信用としてだけでなく受信用アンテナとして共用できるように構成したものである。この受信系統50は、実施例2と同様の構成であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0057】
上記実施例4によれば、実施例2と同様に送信機能と共に受信機能を備え、且つ鉄塔46にアンテナを増設する際、鉄塔46の頂部に余裕がなくて増設できない場合でも、鉄塔46の側面を利用してアンテナ40a、40bを設置することができる。
【0058】
また、上記実施例4においても、実施例1と同様に第1送信系統30Aと第2送信系統30B間の共用周波数間隔は最小で各無線送信機の周波数fN に対して「0.006%」程度が可能となり、また共用損失については、chBPF方式の利用により5〜6dBの低損失での共用が可能で、且つ送受共用を兼ね備えることができる。
【実施例5】
【0059】
次に本発明の実施例5に係るアンテナ共用システムについて説明する。
【0060】
図10は本発明の実施例5に係る10ch共用器100Eのブロック構成図である。この実施例5は、実施例4に示したものと同様構成の第1のアンテナ共用器100D1と第2のアンテナ共用器100D2を組み合わせて合計10chのダイバーシティ機能を有する送受共用器を構成したものである。
【0061】
第1のアンテナ共用器100D1における第1送信系統30Aは、例えば3台の無線送信機(Tx1〜Tx3)を使用し、その出力を共用器の入力端子311〜313よりアイソレータ321〜323を介してchBPF331〜333に入力し、これらのchBPF331〜333の出力端子間を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル341、342により接続する。更に上記chBPF331〜333の合成出力を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル351により送信帯域BPF36a1に接続し、この送信帯域BPF36a1の出力を任意長さの接続ケーブル37aを介して2混合2分配器38aの一方の入力端子に接続する。
【0062】
また、第2送信系統30Bは、3台の無線送信機(Tx4〜Tx6)の出力を共用器の入力端子314〜316よりアイソレータ324〜326を介してchBPF334〜336に入力し、これらのchBPF334〜336の出力端子間を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル344、345により接続する。更に上記chBPF334〜336の合成出力を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル352により送受信共用器51aの送信端子に入力する。この送受信共用器51aは、送受信共用端子を任意長さの接続ケーブル37bを介して上記2混合2分配器38aの他方の入力端子に接続し、この2混合2分配器38aの2つの出力端子をアンテナ端子39a、39bとして2つのアンテナ40a、40bに接続する。
【0063】
上記アンテナ40a、40bは、例えば図11に示すように指向性アンテナを使用し、鉄塔46の側面を利用して水平面内で互いに180°方向に設置し、第1送信系統30A、第2送信系統30B、及び第1受信系統50Aの2基合成アンテナとして動作させる。
【0064】
また、図10において、上記送受信共用器51aの受信端子は、増幅器52aを介して受信用10分配器53aに接続し、この受信用10分配器53aの各分配端子を出力端子54a1〜54a10を介して10台のダイバーシティ機能を有する無線受信機(Rx1〜Rx10)の一方の入力端子に接続し、第1受信系統50Aを構成する。
【0065】
また、第2のアンテナ共用器100D2における第3送信系統30Cは、2台の無線送信機(Tx7、Tx8)を使用し、その出力を共用器の入力端子317、318よりアイソレータ327、328を介してchBPF337、338に入力し、これらのchBPF337、338の出力端子間を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル347により接続する。更に上記chBPF337、338の合成出力を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル353により送信帯域BPF36a2に接続し、この送信帯域BPF36a2の出力を任意長さの接続ケーブル37cを介して2混合2分配器38bの一方の入力端子に接続する。
【0066】
また、第4送信系統30Dは、2台の無線送信機(Tx9、Tx10)の出力を共用器の入力端子319、3110よりアイソレータ329、3210を介してchBPF339、3310に入力し、これらのchBPF339、3310の出力端子間を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル349により接続する。更に上記chBPF339、3310の合成出力を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル354により送受信共用器51bの送信端子に入力する。この送受信共用器51bは、送受信共用端子を任意長さの接続ケーブル37dを介して上記2混合2分配器38bの他方の入力端子に接続し、この2混合2分配器38bの2つの出力端子をアンテナ端子39c、39dとして2基のアンテナ40c、40dに接続する。
【0067】
上記アンテナ40c、40dは、指向性アンテナを使用し、図11に示すように鉄塔46の側面を利用して水平面内で互いに180°方向に設置し、第3送信系統30C、第4送信系統30D及び第2受信系統50Bの2基合成アンテナとして動作させる。この場合、第2のアンテナ共用器100D2のアンテナ40c、40dは、第1のアンテナ共用器100D1のアンテナ40a、40bと相互に90°の位置関係を保って配置する。
【0068】
また、上記送受信共用器51bの受信端子は、増幅器52bを介して受信用10分配器53bに接続し、この受信用10分配器53bの各分配端子を出力端子54b1〜54b10を介して上記ダイバーシティ機能を有する10台の無線受信機(Rx1〜Rx10)の他方の入力端子に接続し、第2受信系統50Bを構成する。
【0069】
上記の構成において、第1のアンテナ共用器100D1における第1送信系統30Aは、無線送信機(Tx1〜Tx3)から出力される送信信号が共用器の入力端子311〜313、アイソレータ321〜323及び送信帯域BPF36a1を経由して2混合2分配器38aへ送られる。
【0070】
また、第2送信系統30Bは、無線送信機(Tx4〜Tx6)から出力される送信信号が共用器の入力端子314〜316、アイソレータ324〜326、chBPF334〜336及び送受信共用器51aを経由して2混合2分配器38aへ送られる。2混合2分配器38aは、第1送信系統30Aからの3チャネルの送信信号と第2送信系統30Bからの3チャネルの送信信号とを混合し、アンテナ40a、40bへ出力する。
【0071】
上記アンテナ40a、40bは、2混合2分配器38aで混合された信号を移動無線機に向けて送信すると共に移動無線機から送られてくる信号を受信する。アンテナ40a、40bで受信された信号は、2混合2分配器38a及び送受信共用器51aを介して取り出され、増幅器52aで増幅されて受信用10分配器53aに入力される。この受信用10分配器53aは、増幅器52aで増幅された受信信号を出力端子54a1〜54a10より無線受信機(Rx1〜Rx10)の一方の入力端子に分配する。
【0072】
一方、第2のアンテナ共用器100D2における第3送信系統30Cは、無線送信機(Tx7、Tx8)から出力される送信信号が、共用器の入力端子317、318、アイソレータ327、328、chBPF337、338及び送信帯域BPF36a2を経由して2混合2分配器38bへ送られる。
【0073】
また、第4送信系統30Dは、無線送信機(Tx9、Tx10)から出力される送信信号が共用器の入力端子319、3110、アイソレータ327、328、chBPF339、3310及び送受信共用器51bを経由して2混合2分配器38bへ送られる。
【0074】
2混合2分配器38bは、第3送信系統30Cからの2チャネルの送信信号と第4送信系統30Dからの2チャネルの送信信号とを混合し、アンテナ40c、40dから移動無線機に向けて送信する。
【0075】
上記アンテナ40c、40dは、2混合2分配器38bで混合された信号を移動無線機に向けて送信すると共に移動無線機から送られてくる信号を受信する。アンテナ40c、40dで受信された信号は、2混合2分配器38b及び送受信共用器51bを介して取り出され、増幅器52bで増幅されて受信用10分配器53bに入力される。この受信用10分配器53aは、増幅器52bで増幅された受信信号を出力端子54b1〜54b10より無線受信機(Rx1〜Rx10)の他方の入力端子に分配する。
【0076】
ダイバーシティ機能を有する無線受信機(Rx1〜Rx10)は、第1受信系統50Aで受信された信号と第2受信系統50Bで受信された信号とを比較し、品質の良い方の信号を選択して出力する。
【0077】
図12(a)は、図11に示したように第1のアンテナ共用器100D1のアンテナ40a、40bを180°ビームアンテナとして鉄塔46の側面を利用して水平面内で互いに180°方向に配置した場合の水平面指向性を示したもので、略全方向に指向性レベルが得られている。
【0078】
また、図12(b)は、第2のアンテナ共用器100D2のアンテナ40c、40dを180°ビームアンテナとして鉄塔46の側面を利用して水平面内で互いに180°方向で、且つ第1のアンテナ共用器100D1のアンテナ40a、40bと90°の位置関係を保って配置した場合の水平面指向性を示したもので、略全方向に指向性レベルが得られている。
【0079】
従って、第1のアンテナ共用器100D1のアンテナ40a、40bと、第2のアンテナ共用器100D2のアンテナ40c、40dを図11に示したように鉄塔46の同一地上高の水平面内に配置することにより、図12(a)と図12(b)の指向性による指向性ダイバーシティに対応するアンテナ共用システムを構成することができる。
【0080】
上記実施例5によれば、実施例1と同様に送信側共用損失は3〜4dBの低損失で共用が可能となり、多チャンネル送受共用器として良好に動作すると共に、第1のアンテナ共用器100D1のアンテナ40a、40bと、第2のアンテナ共用器100D2のアンテナ40c、40dによるダイバーシティ受信機能を伴って良好な動作を行わせることができる。
【0081】
また、第1のアンテナ共用器100D1と第2のアンテナ共用器100D2とに共用周波数を分けることにより共用が可能となり、低損失且つ狭い周波数間隔での共用が可能となる。
【0082】
更に、第1のアンテナ共用器100D1と第2のアンテナ共用器100D2との間の送信周波数間隔は、各共用器間のアンテナ同士の空間結合減衰量を考慮すると、理論的に限りなく狭くすることが可能となる。
【0083】
また、鉄塔46にアンテナを増設する際、鉄塔46の頂部に余裕がなくて増設できない場合でも、鉄塔46の側面を利用してアンテナを設置でき、初期の目的を達成することができる。
【0084】
なお、上記各実施例では、10チャンネル共用器に実施した場合について示したが、無線送信機あるいは無線受信機のチャンネル数は10チャンネルに限定されるものではなく、任意のチャンネル数に設定することが可能である。
【0085】
また、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【符号の説明】
【0086】
30A…第1送信系統、30B…第2送信系統、30C…第3送信系統、30D…第4送信系統、311〜3110…共用器の入力端子、321〜3210…アイソレータ、331〜3310…chBPF、341〜344、346〜349…接続ケーブル、351〜354…接続ケーブル、36a、36a1、36a2…送信帯域BPF、36b…送信帯域BPF、37a〜37d…接続ケーブル、38、38a、38b…2混合2分配器、39、39a〜39d…アンテナ端子、40、40a〜40d…アンテナ、46…鉄塔、50…受信系統、50A…第1受信系統、50B…第2受信系統、51、51a、51b…送受信共用器、52、52a、52b…増幅器、53、53a、53b…受信用10分配器、541〜5410…受信系統の信号出力端子、54a1〜54a10…第1受信系統の信号出力端子、第2受信系統の信号出力端子、100A…実施例1に係る10ch共用器、100B…実施例2に係る10ch共用器、100C…実施例3に係る10ch共用器、100D…実施例4に係る10ch共用器、100E…実施例5に係る10ch共用器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信において、多数の無線機によりアンテナを共用するアンテナ共用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
VHF帯やUHF帯の電波を使用する自動車電話等の移動無線においては、多数の無線機によりアンテナを共用するアンテナ共用システムが従来から用いられている。
【0003】
上記アンテナ共用システムにおいては、従来、chBPF(チャンネル・バンドパスフィルタ)を使用したもの、あるいはハイブリッド回路からなる複数の2混合器と送信帯域BPFを使用したものがある。
【0004】
図13は従来のchBPFを使用した10チャンネル共用器のブロック構成を示したもので、第1送信系統10A及び第2送信系統10Bを備えている。
【0005】
第1送信系統10Aは、周波数が異なる例えば5台の無線送信機(Tx1〜Tx5)の出力を共用器の入力端子111〜115よりアイソレータ121〜125を介してchBPF131〜135に入力し、これらのchBPF131〜135の出力端子間をλ/2の電気長で構成される接続ケーブル141〜144により接続する。上記λは使用周波数における波長である。
【0006】
また、第2送信系統10Bは、上記第1送信系統10Aと同様に周波数が異なる例えば5台の無線送信機(Tx6〜Tx10)の出力を共用器の入力端子116〜1110よりアイソレータ126〜1210を介してchBPF136〜1310に入力し、これらのchBPF136〜1310の出力端子間をλ/2の電気長で構成される接続ケーブル146〜149により接続する。
【0007】
そして、上記第1送信系統10A及び第2送信系統10Bの出力をλ/2の電気長で構成される接続ケーブル151、152により合成し、送信帯域BPF16を介してアンテナ端子17へ出力する。
【0008】
上記の構成によれば、共用損失3〜4dBの低損失で共用が可能となるが、共用周波数間隔はchBPF131〜1310の減衰特性に左右されるため、最小で各無線送信機の周波数に対して「0.06%」程度と限界があり、更に狭い周波数間隔での共用は不可能となる。このため、狭帯域内に多数の無線チャンネルを有する無線システムでは使用できない。
【0009】
図14はハイブリッド回路からなる複数の2混合器と送信帯域BPFを利用した従来の10ch共用器のブロック構成を示したもので、第1送信系統20A及び第2送信系統20Bを備えている。
【0010】
第1送信系統20Aは、周波数が異なる例えば4台の無線送信機(Tx1〜Tx4)の出力を共用器の入力端子211〜214よりアイソレータ221〜224を介して2混合器231、232に入力し、これらの2混合器231、232を2混合器241に接続する。
【0011】
一方、第2送信系統20Bは、周波数が異なる例えば6台の無線送信機(Tx5〜Tx10)の出力を共用器の入力端子215〜2110よりアイソレータ225〜2210を介して2混合器233〜235に入力する。また、上記2混合器233、234は2混合器242を介して2混合器25の一方の入力端子に接続し、上記2混合器235の出力を2混合器25の他方の入力端子に接続する。
【0012】
そして、上記第1送信系統20Aの2混合器241と第2送信系統20Bの2混合器25の出力を2混合器26で混合した後、送信帯域BPF27を介してアンテナ端子28へ出力する。
【0013】
上記図14に示したアンテナ共用システムは、ハイブリッド回路の端子間結合減衰量を利用し、理論的には共用周波数間隔を限りなく狭くすることが可能であるが、共用損失は各2混合器出力の分配損失の加算が生じるため、合計15〜16dB程度と非常に大きくなり、効率が悪いため、特に大電力の無線局では実用にならない。
【0014】
また、本発明に関連する公知技術として、複数の送信機出力をそれぞれアイソレータ及びチャンネルフィルタを介して取り出し、パワー合成回路で合成する送信系統を2系統設け、この2系統の送信出力をハイブリッド回路で合成してアンテナへ出力するようにした送信共用装置(例えば、特許文献1参照。)や、複数の送信機出力をそれぞれアイソレータ及び帯域通過フィルタを介して取り出す2系統の送信系統を設け、この2系統の送信出力をパワーコンバイニングネットワーク及びTxフィルタを介してアンテナに接続するようにした空中線共用器(例えば、特許文献1参照。)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平3−185932号公報
【特許文献2】特開平5−55812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のように図13に示したchBPFを使用した従来のアンテナ共用システムは、共用損失3〜4dBの低損失で共用が可能となるが、共用周波数間隔はchBPF131〜1310の減衰特性に左右されるため、最小でも各無線送信機の周波数に対して「0.06%」程度であり、狭い周波数間隔での共用は不可能である。このため狭帯域内に多数の無線チャンネルを有する無線システムでは使用することができない。
【0017】
また、図14に示したハイブリッド回路からなる複数の2混合器と送信帯域BPFを利用した従来のアンテナ共用システムは、ハイブリッド回路の端子間結合減衰量を利用し、理論的には共用周波数間隔を狭くすることが可能であるが、共用損失は各2混合器出力の分配損失の加算が生じるため、合計15〜16dB程度と非常に大きくなり、効率が悪いため、特に大電力の無線局では実用にならない。
【0018】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、狭帯域内に多数の無線チャンネルを有する無線システムにおいて、狭い共用周波数間隔で多周波数の共用が可能となり、かつ低損失なアンテナ共用システムを提供することを目的とする。
【0019】
また、本発明は、狭帯域内に多数の無線チャンネルを有する無線システムにおいて、低損失かつ狭い共用周波数間隔で多周波数の送信周波数共用が可能であるとともに、送受信共用も兼ね備えたアンテナ共用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
第1の発明に係るアンテナ共用システムは、多数の無線送信機出力を合成してアンテナを共用するアンテナ共用器において、第1系統の複数の信号入力端子をそれぞれアイソレータを介してチャンネルBPFに接続し、前記各チャンネルBPFの出力を約1/2波長の電気長で構成する接続ケーブルにて合成後、約1/2波長の電気長で構成するケーブルで接続された送信帯域BPFを介して送信を行う第1送信系統と、第2系統の複数の信機入力端子をそれぞれアイソレータを介してチャンネルBPFに接続し、前記各チャンネルBPFの出力を約1/2波長の電気長で構成する接続ケーブルにて合成後、約1/2波長の電気長で構成するケーブルで接続された送信帯域BPFを介して送信を行う第2送信系統と、前第1送信系統及び第2送信系統の出力を混合し第1及び第2のアンテナ端子に分配するハイブリッド回路からなる2混合2分配器と、前記第1及び第2のアンテナ端子にそれぞれ接続され、鉄塔の側部に水平面内で互いに約180°方向に設置される第1及び第2のアンテナとを具備し、前記第1及び第2のアンテナを2基合成アンテナとして動作させ、水平面無指向性としたことを特徴とする。
【0021】
第2の発明に係るアンテナ共用システムは、多数の無線送信機出力を合成してアンテナを共用するアンテナ共用器において、第1系統の複数の信号入力端子をそれぞれアイソレータを介してチャンネルBPFに接続し、前記各チャンネルBPFの出力を約1/2波長の電気長で構成する接続ケーブルにて合成後、約1/2波長の電気長で構成するケーブルで接続された送信帯域BPFを介して送信を行う第1送信系統と、第2系統の複数の信機入力端子をそれぞれアイソレータを介してチャンネルBPFに接続し、前記各チャンネルBPFの出力を約1/2波長の電気長で構成する接続ケーブルにて合成後、約1/2波長の電気長で構成するケーブルで接続された送受信共用器を介して送信を行う第2送信系統と、前第1送信系統及び第2送信系統の出力を混合し第1及び第2のアンテナ端子に分配するハイブリッド回路からなる2混合2分配器と、前記第1及び第2のアンテナ端子にそれぞれ接続され、鉄塔の側部に水平面内で互いに約180°方向に設置される第1及び第2のアンテナと、前記第1及び第2のアンテナで受信され、前記送受信共用器の受信端子より出力される受信信号を増幅器及び受信用分配器を介して複数の無線受信機に入力する受信系統とを具備し、前記第1及び第2のアンテナを2基合成アンテナとして動作させ、水平面無指向性とすると共に、送信用及び受信用として共用するように構成したことを特徴とする。
【0022】
第3の発明は、前記第2の発明に係るアンテナ共用システムを2系統設けると共にダイバーシティ受信機能を備えた複数の無線受信機を2系統に共通に設け、第1系統の受信用分配器の分配出力を各無線受信機の一方の入力端子に入力し、第2系統の受信用分配器の分配出力を各無線受信機の他方の入力端子に入力してダイバーシティ受信を行うように構成し、前記各系統の第1及び第2のアンテナを鉄塔の側部にそれぞれ水平面内で互いに約180°方向に設置すると共に、各系統間のアンテナを相互に約90°の位置関係を保って配置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、狭帯域内に多数の無線チャンネルを有する無線システムにおいて、狭い共用周波数間隔で多周波数の共用が可能となり、かつ低損失なアンテナ共用システムを提供することができる。
【0024】
また、送受共用が可能であると共に、鉄塔頂部にアンテナの設置スペースがない状況においても、鉄塔側面を利用し良好な指向性を得られ、かつダイバーシティ機能を兼ね備えたアンテナ共用システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1に係る10ch共用器の構成を示すブロック図である。
【図2】同実施例1に係る10ch共用器の送信側通過損失特性例を示す図である。
【図3】同実施例1に係る10ch共用器の同一送信系統内の共用周波数間隔での端子間結合減衰量を示す図である。
【図4】同実施例1に係る10ch共用器の2つの送信系統間の共用周波数間隔での端子間結合減衰量を示す図である。
【図5】本発明の実施例2に係る10ch共用器の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施例3に係る10ch共用器の構成を示すブロック図である。
【図7】同実施例3に係る10ch共用器のアンテナを鉄塔の側面を利用し水平面内で互いに180°方向に設置した場合の配置例を示す図である。
【図8】図7のアンテナ配置例における水平面指向性を示す図である。
【図9】本発明の実施例4に係る10ch共用器の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施例5に係る10ch共用器の構成を示すブロック図である。
【図11】同実施例5に係る10ch共用器において、鉄塔側面を利用して2系統のアンテナを設置した場合の配置例を示す上面図である。
【図12】図11に示すアンテナ配置例における第1のアンテナ共用器に接続されるアンテナ及び第2のアンテナ共用器に接続されるアンテナの水平面指向性を示す図である。
【図13】従来のチャンネルBPFを使用した10ch共用器の構成を示すブロック図である。
【図14】従来の複数の2混合器と送信帯域BPFを利用した10ch共用器の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
図1は本発明の実施例1に係る10ch共用器100Aのブロック構成例を示したもので、第1送信系統30A及び第2送信系統30Bを備えている。
【0028】
第1送信系統30Aは、周波数が異なる例えば5台の無線送信機(Tx1〜Tx5)の出力を共用器の入力端子311〜315よりアイソレータ321〜325を介してchBPF(チャンネル・バンドパスフィルタ)331〜335に入力し、これらのchBPF331〜335の出力端子間を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル341〜344により接続する。上記λは使用周波数における波長である。更に上記chBPF331〜335の合成出力を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル351により送信帯域BPF36aに入力し、この送信帯域BPF36aの出力を任意長さの接続ケーブル37aを介して混合器、例えばハイブリッド回路で構成される2混合2分配器38の一方の入力端子に入力する。上記送信帯域BPF36aは、第1送信系統30Aの送信帯域に合わせて通過帯域幅が設定される。
【0029】
また、第2送信系統30Bは、上記第1送信系統30Aと同様に周波数が異なる例えば5台の無線送信機(Tx6〜Tx10)の出力を共用器の入力端子316〜3110よりアイソレータ326〜3210を介してchBPF336〜3310に入力し、これらのchBPF336〜3310の出力端子間を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル346〜349により接続する。更に上記chBPF335〜3310の合成出力を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル352により送信帯域BPF36bに入力し、この送信帯域BPF36bの出力を任意長さの接続ケーブル37bを介して上記2混合2分配器38の他方の入力端子に入力する。上記送信帯域BPF36bは、第2送信系統30Bの送信帯域に合わせて通過帯域幅が設定される。
【0030】
上記2混合2分配器38は、一方の出力端子をアンテナ端子39としてアンテナ40に接続し、他方の出力端子と接地間に疑似負荷抵抗Rを接続する。すなわち、上記2混合2分配器38は、第1送信系統30A及び第2送信系統30Bから出力される多周波数の送信機出力を合成してアンテナ端子39よりアンテナ40へ出力する。
【0031】
上記の構成において、第1送信系統30Aにおける無線送信機Tx1〜Tx5の周波数f1〜f5の共用周波数間隔は、例えば無線送信機Tx1の送信周波数を第1周波数f1とすると、この第1周波数f1に対して例えば「+0.06%」に設定する。
【0032】
すなわち、
f2=f1+(f1×0.06%)
f3=f2+(f1×0.06%)
f4=f3+(f1×0.06%)
f5=f4+(f1×0.06%)
に設定する。
【0033】
そして、第2送信系統30Bにおける無線送信機Tx6〜Tx10の周波数f6〜f10の共用周波数間隔は、第1送信系統30Aにおける無線送信機Tx1〜Tx5の各周波数f1〜f5に対してそれぞれ例えば「+0.006%」に設定する。
【0034】
すなわち、
f6=f1+(f1×0.006%)
f7=f2+(f2×0.006%)
f8=f3+(f3×0.006%)
f9=f4+(f4×0.006%)
f10=f5+(f5×0.006%)
に設定する。
【0035】
図2は、上記実施例1に示した10ch共用器100Aにおける各入力端子311〜315、316〜3110とアンテナ端子39間の通過損失特性を示したもので、各無線送信機Tx1〜Tx10の周波数fN(N=1〜10)にて約5dBの低損失特性が得られている。上記図2は、横軸に周波数をとり、縦軸に通過損失(dB)をとって示した。
【0036】
図3は第1送信系統30A内での入力端子311〜315間、及び第2送信系統30B内での入力端子316〜3110間での結合減衰量特性を示したもので、各無線送信機の周波数fN(N=1〜10)に対し、「+0.06%」の周波数間隔にて共用器の端子間結合減衰量の一般的な要求性能の35dB以上を満足する40dB以上の減衰量が得られている。
【0037】
図4は送信系統1と送信系統2の間での共用器入力端子間の結合減衰量特性を示したもので、各無線送信機の周波数fN に対し、「0.006%」の周波数間隔にて40dB以上の減衰量が得られている。
【0038】
従って、共用周波数間隔が各無線送信機の周波数fN に対し「0.06%」以上の場合には、上記実施例1で示したように同一送信系統内にて共用し、更に共用周波数間隔が狭い「0.006%」以上の場合は、第1送信系統30Aと第2送信系統30Bとに共用周波数を分けることにより共用が可能となり、低損失かつ狭い共用周波数間隔での共用が可能となる。
【0039】
すなわち、第1送信系統30A及び第2送信系統30Bから出力される多周波数の送信機出力をハイブリッド回路で構成される2混合2分配器38にて接続合成し、アンテナ端子39に出力する。このとき、第1送信系統30Aと第2送信系統30Bの間では、chBPFの減衰特性の不足分を2混合2分配器38の端子間結合減衰量で補うことにより、第1送信系統30Aと第2送信系統30B間の共用周波数間隔は最小で対応周波数fN に対して「0.006%」程度が可能となり、また共用損失については、chBPF方式の利用により5〜6dBの低損失での共用が可能となる。
【0040】
なお、実施例1では、各無線送信機の周波数間隔を周波数fN に対して「+側」に設定した場合について示したが、各無線送信機の周波数fN に対して「−側」に設定しても良く、この場合においても上実施例1と同様の結果を得ることができる。
【実施例2】
【0041】
次に本発明の実施例2に係るアンテナ共用システムについて説明する。
【0042】
図5は本発明の実施例2に係る10ch共用器100Bのブロック構成図である。この実施例2は、上記実施例1に示した10ch共用器100Aにおいて、更に受信系統50を設け、上記アンテナ40を送信用としてだけでなく受信用アンテナとして共用できるように構成したものである。なお、図1に示した実施例1と同一部分には同一号を付して詳細な説明は省略する。
【0043】
実施例2に係る10ch共用器100Bは、図5に示すように実施例1における第2送信系統30Bの送信帯域BPF36bに代えて送受信共用器51を設けている。この送受信共用器51は、第2送信系統30Bの送信帯域に合わせて通過帯域幅が設定された送信用BPF、及び受信系統50の受信帯域(10チャンネル)に合わせて通過帯域幅が設定された受信用BPFにより構成され、送信信号を入力する送信端子、受信信号を出力する受信端子、2混合2分配器38に接続する送受信端子を備えている。
【0044】
上記送受信共用器51の受信端子から取り出される受信信号は、増幅器52で増幅されて受信用10分配器53に入力される。この受信用10分配器53は、アンテナ40により受信された信号を出力端子546〜5410より無線受信機(Rx6〜Rx10)に分配する。
【0045】
上記の構成において、第2送信系統30BのchBPF336〜3310から出力される送信信号は、送受信共用器51を介して2混合2分配器38へ送られ、第1送信系統30Aの送信信号と合成されてアンテナ40より送信される。
【0046】
また、アンテナ40で受信された信号は、2混合2分配器38及び送受信共用器51の受信用BPFを介して取り出され、増幅器52で増幅された後、受信用10分配器53により出力端子546〜5410を介して各無線受信機(Rx6〜Rx10)に分配される。
【0047】
上記実施例2によれば、実施例1と同様に第1送信系統30Aと第2送信系統30B間の共用周波数間隔は最小で各無線送信機の周波数fN に対して「0.006%」程度が可能となり、また共用損失についてはchBPF方式の利用により5〜6dBの低損失での共用が可能で、且つ送受共用を兼ね備えることができる。
【実施例3】
【0048】
次に本発明の実施例3に係るアンテナ共用システムについて説明する。
【0049】
図6は本発明の実施例3に係る10ch共用器100Cのブロック構成図である。この実施例3は上記実施例1に示した10ch共用器100Aにおいて、2混合2分配器38に疑似抵抗Rを接続せず、2つの出力端子をアンテナ端子39a、39bとして2基のアンテナ40a、40bに接続したものである。その他の構成は、図1に示した実施例1と同様の構成であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0050】
上記アンテナ40a、40bは、例えば指向性アンテナを使用し、鉄塔の側面等を利用して設置し、2基合成アンテナとして動作させる。ここでアンテナ単体の指向性と、これらの配置を選ぶことにより様々な指向性を得ることができる。
【0051】
図7は、アンテナ40a、40bを180°ビームアンテナとして、鉄塔46の側面を利用し水平面内で互いに180°方向に設置した場合の配置例を示している。
【0052】
図8は、図7のアンテナ配置例においてアンテナ40a、40bを180°ビームアンテナとし、アンテナ間隔Dを約12λとした場合の平面指向性を示したもので、ほぼ全方向に指向性レベルが得られ、鉄塔頂部を利用できない場合でも略無指向性が得られている。
【0053】
上記実施例3は、例えば鉄塔46にアンテナを増設する際、鉄塔46の頂部に余裕がなくて増設できない場合でも、鉄塔46の側面を利用してアンテナ40a、40bを設置でき、初期の目的を達成することができる。また、2混合2分配器38の分配出力を2つのアンテナ40a、40bに出力することにより、2混合2分配器38の分配出力を無駄にすることなく、アンテナの出力効率を向上することができる。
【0054】
また、上記実施例3においても、実施例1と同様に第1送信系統30Aと第2送信系統30B間の共用周波数間隔は最小で各無線送信機の周波数fN に対して「0.006%」程度が可能となり、また共用損失については、chBPF方式の利用により5〜6dBの低損失での共用が可能である。
【実施例4】
【0055】
次に本発明の実施例4に係るアンテナ共用システムについて説明する。
【0056】
図9は本発明の実施例4に係る10ch共用器100Dのブロック構成図である。この実施例4は、実施例3において、実施例2と同様に受信系統50を設け、アンテナ40を送信用としてだけでなく受信用アンテナとして共用できるように構成したものである。この受信系統50は、実施例2と同様の構成であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0057】
上記実施例4によれば、実施例2と同様に送信機能と共に受信機能を備え、且つ鉄塔46にアンテナを増設する際、鉄塔46の頂部に余裕がなくて増設できない場合でも、鉄塔46の側面を利用してアンテナ40a、40bを設置することができる。
【0058】
また、上記実施例4においても、実施例1と同様に第1送信系統30Aと第2送信系統30B間の共用周波数間隔は最小で各無線送信機の周波数fN に対して「0.006%」程度が可能となり、また共用損失については、chBPF方式の利用により5〜6dBの低損失での共用が可能で、且つ送受共用を兼ね備えることができる。
【実施例5】
【0059】
次に本発明の実施例5に係るアンテナ共用システムについて説明する。
【0060】
図10は本発明の実施例5に係る10ch共用器100Eのブロック構成図である。この実施例5は、実施例4に示したものと同様構成の第1のアンテナ共用器100D1と第2のアンテナ共用器100D2を組み合わせて合計10chのダイバーシティ機能を有する送受共用器を構成したものである。
【0061】
第1のアンテナ共用器100D1における第1送信系統30Aは、例えば3台の無線送信機(Tx1〜Tx3)を使用し、その出力を共用器の入力端子311〜313よりアイソレータ321〜323を介してchBPF331〜333に入力し、これらのchBPF331〜333の出力端子間を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル341、342により接続する。更に上記chBPF331〜333の合成出力を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル351により送信帯域BPF36a1に接続し、この送信帯域BPF36a1の出力を任意長さの接続ケーブル37aを介して2混合2分配器38aの一方の入力端子に接続する。
【0062】
また、第2送信系統30Bは、3台の無線送信機(Tx4〜Tx6)の出力を共用器の入力端子314〜316よりアイソレータ324〜326を介してchBPF334〜336に入力し、これらのchBPF334〜336の出力端子間を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル344、345により接続する。更に上記chBPF334〜336の合成出力を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル352により送受信共用器51aの送信端子に入力する。この送受信共用器51aは、送受信共用端子を任意長さの接続ケーブル37bを介して上記2混合2分配器38aの他方の入力端子に接続し、この2混合2分配器38aの2つの出力端子をアンテナ端子39a、39bとして2つのアンテナ40a、40bに接続する。
【0063】
上記アンテナ40a、40bは、例えば図11に示すように指向性アンテナを使用し、鉄塔46の側面を利用して水平面内で互いに180°方向に設置し、第1送信系統30A、第2送信系統30B、及び第1受信系統50Aの2基合成アンテナとして動作させる。
【0064】
また、図10において、上記送受信共用器51aの受信端子は、増幅器52aを介して受信用10分配器53aに接続し、この受信用10分配器53aの各分配端子を出力端子54a1〜54a10を介して10台のダイバーシティ機能を有する無線受信機(Rx1〜Rx10)の一方の入力端子に接続し、第1受信系統50Aを構成する。
【0065】
また、第2のアンテナ共用器100D2における第3送信系統30Cは、2台の無線送信機(Tx7、Tx8)を使用し、その出力を共用器の入力端子317、318よりアイソレータ327、328を介してchBPF337、338に入力し、これらのchBPF337、338の出力端子間を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル347により接続する。更に上記chBPF337、338の合成出力を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル353により送信帯域BPF36a2に接続し、この送信帯域BPF36a2の出力を任意長さの接続ケーブル37cを介して2混合2分配器38bの一方の入力端子に接続する。
【0066】
また、第4送信系統30Dは、2台の無線送信機(Tx9、Tx10)の出力を共用器の入力端子319、3110よりアイソレータ329、3210を介してchBPF339、3310に入力し、これらのchBPF339、3310の出力端子間を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル349により接続する。更に上記chBPF339、3310の合成出力を約λ/2の電気長で構成される接続ケーブル354により送受信共用器51bの送信端子に入力する。この送受信共用器51bは、送受信共用端子を任意長さの接続ケーブル37dを介して上記2混合2分配器38bの他方の入力端子に接続し、この2混合2分配器38bの2つの出力端子をアンテナ端子39c、39dとして2基のアンテナ40c、40dに接続する。
【0067】
上記アンテナ40c、40dは、指向性アンテナを使用し、図11に示すように鉄塔46の側面を利用して水平面内で互いに180°方向に設置し、第3送信系統30C、第4送信系統30D及び第2受信系統50Bの2基合成アンテナとして動作させる。この場合、第2のアンテナ共用器100D2のアンテナ40c、40dは、第1のアンテナ共用器100D1のアンテナ40a、40bと相互に90°の位置関係を保って配置する。
【0068】
また、上記送受信共用器51bの受信端子は、増幅器52bを介して受信用10分配器53bに接続し、この受信用10分配器53bの各分配端子を出力端子54b1〜54b10を介して上記ダイバーシティ機能を有する10台の無線受信機(Rx1〜Rx10)の他方の入力端子に接続し、第2受信系統50Bを構成する。
【0069】
上記の構成において、第1のアンテナ共用器100D1における第1送信系統30Aは、無線送信機(Tx1〜Tx3)から出力される送信信号が共用器の入力端子311〜313、アイソレータ321〜323及び送信帯域BPF36a1を経由して2混合2分配器38aへ送られる。
【0070】
また、第2送信系統30Bは、無線送信機(Tx4〜Tx6)から出力される送信信号が共用器の入力端子314〜316、アイソレータ324〜326、chBPF334〜336及び送受信共用器51aを経由して2混合2分配器38aへ送られる。2混合2分配器38aは、第1送信系統30Aからの3チャネルの送信信号と第2送信系統30Bからの3チャネルの送信信号とを混合し、アンテナ40a、40bへ出力する。
【0071】
上記アンテナ40a、40bは、2混合2分配器38aで混合された信号を移動無線機に向けて送信すると共に移動無線機から送られてくる信号を受信する。アンテナ40a、40bで受信された信号は、2混合2分配器38a及び送受信共用器51aを介して取り出され、増幅器52aで増幅されて受信用10分配器53aに入力される。この受信用10分配器53aは、増幅器52aで増幅された受信信号を出力端子54a1〜54a10より無線受信機(Rx1〜Rx10)の一方の入力端子に分配する。
【0072】
一方、第2のアンテナ共用器100D2における第3送信系統30Cは、無線送信機(Tx7、Tx8)から出力される送信信号が、共用器の入力端子317、318、アイソレータ327、328、chBPF337、338及び送信帯域BPF36a2を経由して2混合2分配器38bへ送られる。
【0073】
また、第4送信系統30Dは、無線送信機(Tx9、Tx10)から出力される送信信号が共用器の入力端子319、3110、アイソレータ327、328、chBPF339、3310及び送受信共用器51bを経由して2混合2分配器38bへ送られる。
【0074】
2混合2分配器38bは、第3送信系統30Cからの2チャネルの送信信号と第4送信系統30Dからの2チャネルの送信信号とを混合し、アンテナ40c、40dから移動無線機に向けて送信する。
【0075】
上記アンテナ40c、40dは、2混合2分配器38bで混合された信号を移動無線機に向けて送信すると共に移動無線機から送られてくる信号を受信する。アンテナ40c、40dで受信された信号は、2混合2分配器38b及び送受信共用器51bを介して取り出され、増幅器52bで増幅されて受信用10分配器53bに入力される。この受信用10分配器53aは、増幅器52bで増幅された受信信号を出力端子54b1〜54b10より無線受信機(Rx1〜Rx10)の他方の入力端子に分配する。
【0076】
ダイバーシティ機能を有する無線受信機(Rx1〜Rx10)は、第1受信系統50Aで受信された信号と第2受信系統50Bで受信された信号とを比較し、品質の良い方の信号を選択して出力する。
【0077】
図12(a)は、図11に示したように第1のアンテナ共用器100D1のアンテナ40a、40bを180°ビームアンテナとして鉄塔46の側面を利用して水平面内で互いに180°方向に配置した場合の水平面指向性を示したもので、略全方向に指向性レベルが得られている。
【0078】
また、図12(b)は、第2のアンテナ共用器100D2のアンテナ40c、40dを180°ビームアンテナとして鉄塔46の側面を利用して水平面内で互いに180°方向で、且つ第1のアンテナ共用器100D1のアンテナ40a、40bと90°の位置関係を保って配置した場合の水平面指向性を示したもので、略全方向に指向性レベルが得られている。
【0079】
従って、第1のアンテナ共用器100D1のアンテナ40a、40bと、第2のアンテナ共用器100D2のアンテナ40c、40dを図11に示したように鉄塔46の同一地上高の水平面内に配置することにより、図12(a)と図12(b)の指向性による指向性ダイバーシティに対応するアンテナ共用システムを構成することができる。
【0080】
上記実施例5によれば、実施例1と同様に送信側共用損失は3〜4dBの低損失で共用が可能となり、多チャンネル送受共用器として良好に動作すると共に、第1のアンテナ共用器100D1のアンテナ40a、40bと、第2のアンテナ共用器100D2のアンテナ40c、40dによるダイバーシティ受信機能を伴って良好な動作を行わせることができる。
【0081】
また、第1のアンテナ共用器100D1と第2のアンテナ共用器100D2とに共用周波数を分けることにより共用が可能となり、低損失且つ狭い周波数間隔での共用が可能となる。
【0082】
更に、第1のアンテナ共用器100D1と第2のアンテナ共用器100D2との間の送信周波数間隔は、各共用器間のアンテナ同士の空間結合減衰量を考慮すると、理論的に限りなく狭くすることが可能となる。
【0083】
また、鉄塔46にアンテナを増設する際、鉄塔46の頂部に余裕がなくて増設できない場合でも、鉄塔46の側面を利用してアンテナを設置でき、初期の目的を達成することができる。
【0084】
なお、上記各実施例では、10チャンネル共用器に実施した場合について示したが、無線送信機あるいは無線受信機のチャンネル数は10チャンネルに限定されるものではなく、任意のチャンネル数に設定することが可能である。
【0085】
また、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【符号の説明】
【0086】
30A…第1送信系統、30B…第2送信系統、30C…第3送信系統、30D…第4送信系統、311〜3110…共用器の入力端子、321〜3210…アイソレータ、331〜3310…chBPF、341〜344、346〜349…接続ケーブル、351〜354…接続ケーブル、36a、36a1、36a2…送信帯域BPF、36b…送信帯域BPF、37a〜37d…接続ケーブル、38、38a、38b…2混合2分配器、39、39a〜39d…アンテナ端子、40、40a〜40d…アンテナ、46…鉄塔、50…受信系統、50A…第1受信系統、50B…第2受信系統、51、51a、51b…送受信共用器、52、52a、52b…増幅器、53、53a、53b…受信用10分配器、541〜5410…受信系統の信号出力端子、54a1〜54a10…第1受信系統の信号出力端子、第2受信系統の信号出力端子、100A…実施例1に係る10ch共用器、100B…実施例2に係る10ch共用器、100C…実施例3に係る10ch共用器、100D…実施例4に係る10ch共用器、100E…実施例5に係る10ch共用器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の無線送信機出力を合成してアンテナを共用するアンテナ共用器において、
第1系統の複数の信号入力端子をそれぞれアイソレータを介してチャンネルBPFに接続し、前記各チャンネルBPFの出力を約1/2波長の電気長で構成する接続ケーブルにて合成後、約1/2波長の電気長で構成するケーブルで接続された送信帯域BPFを介して送信を行う第1送信系統と、
第2系統の複数の信機入力端子をそれぞれアイソレータを介してチャンネルBPFに接続し、前記各チャンネルBPFの出力を約1/2波長の電気長で構成する接続ケーブルにて合成後、約1/2波長の電気長で構成するケーブルで接続された送信帯域BPFを介して送信を行う第2送信系統と、
前第1送信系統及び第2送信系統の出力を混合し第1及び第2のアンテナ端子に分配するハイブリッド回路からなる2混合2分配器と、
前記第1及び第2のアンテナ端子にそれぞれ接続され、鉄塔の側部に水平面内で互いに約180°方向に設置される第1及び第2のアンテナとを具備し、
前記第1及び第2のアンテナを2基合成アンテナとして動作させ、水平面無指向性としたことを特徴とするアンテナ共用システム。
【請求項2】
多数の無線送信機出力を合成してアンテナを共用するアンテナ共用器において、
第1系統の複数の信号入力端子をそれぞれアイソレータを介してチャンネルBPFに接続し、前記各チャンネルBPFの出力を約1/2波長の電気長で構成する接続ケーブルにて合成後、約1/2波長の電気長で構成するケーブルで接続された送信帯域BPFを介して送信を行う第1送信系統と、
第2系統の複数の信機入力端子をそれぞれアイソレータを介してチャンネルBPFに接続し、前記各チャンネルBPFの出力を約1/2波長の電気長で構成する接続ケーブルにて合成後、約1/2波長の電気長で構成するケーブルで接続された送受信共用器を介して送信を行う第2送信系統と、
前第1送信系統及び第2送信系統の出力を混合し第1及び第2のアンテナ端子に分配するハイブリッド回路からなる2混合2分配器と、
前記第1及び第2のアンテナ端子にそれぞれ接続され、鉄塔の側部に水平面内で互いに約180°方向に設置される第1及び第2のアンテナと、
前記第1及び第2のアンテナで受信され、前記送受信共用器の受信端子より出力される受信信号を増幅器及び受信用分配器を介して複数の無線受信機に入力する受信系統とを具備し、
前記第1及び第2のアンテナを2基合成アンテナとして動作させ、水平面無指向性とすると共に、送信用及び受信用として共用するように構成したことを特徴とするアンテナ共用システム。
【請求項3】
請求項2に記載のアンテナ共用システムを2系統設けると共にダイバーシティ受信機能を備えた複数の無線受信機を2系統に共通に設け、第1系統の受信用分配器の分配出力を各無線受信機の一方の入力端子に入力し、第2系統の受信用分配器の分配出力を各無線受信機の他方の入力端子に入力してダイバーシティ受信を行うように構成し、前記各系統の第1及び第2のアンテナを鉄塔の側部にそれぞれ水平面内で互いに約180°方向に設置すると共に、各系統間のアンテナを相互に約90°の位置関係を保って配置することを特徴とするアンテナ共用システム。
【請求項1】
多数の無線送信機出力を合成してアンテナを共用するアンテナ共用器において、
第1系統の複数の信号入力端子をそれぞれアイソレータを介してチャンネルBPFに接続し、前記各チャンネルBPFの出力を約1/2波長の電気長で構成する接続ケーブルにて合成後、約1/2波長の電気長で構成するケーブルで接続された送信帯域BPFを介して送信を行う第1送信系統と、
第2系統の複数の信機入力端子をそれぞれアイソレータを介してチャンネルBPFに接続し、前記各チャンネルBPFの出力を約1/2波長の電気長で構成する接続ケーブルにて合成後、約1/2波長の電気長で構成するケーブルで接続された送信帯域BPFを介して送信を行う第2送信系統と、
前第1送信系統及び第2送信系統の出力を混合し第1及び第2のアンテナ端子に分配するハイブリッド回路からなる2混合2分配器と、
前記第1及び第2のアンテナ端子にそれぞれ接続され、鉄塔の側部に水平面内で互いに約180°方向に設置される第1及び第2のアンテナとを具備し、
前記第1及び第2のアンテナを2基合成アンテナとして動作させ、水平面無指向性としたことを特徴とするアンテナ共用システム。
【請求項2】
多数の無線送信機出力を合成してアンテナを共用するアンテナ共用器において、
第1系統の複数の信号入力端子をそれぞれアイソレータを介してチャンネルBPFに接続し、前記各チャンネルBPFの出力を約1/2波長の電気長で構成する接続ケーブルにて合成後、約1/2波長の電気長で構成するケーブルで接続された送信帯域BPFを介して送信を行う第1送信系統と、
第2系統の複数の信機入力端子をそれぞれアイソレータを介してチャンネルBPFに接続し、前記各チャンネルBPFの出力を約1/2波長の電気長で構成する接続ケーブルにて合成後、約1/2波長の電気長で構成するケーブルで接続された送受信共用器を介して送信を行う第2送信系統と、
前第1送信系統及び第2送信系統の出力を混合し第1及び第2のアンテナ端子に分配するハイブリッド回路からなる2混合2分配器と、
前記第1及び第2のアンテナ端子にそれぞれ接続され、鉄塔の側部に水平面内で互いに約180°方向に設置される第1及び第2のアンテナと、
前記第1及び第2のアンテナで受信され、前記送受信共用器の受信端子より出力される受信信号を増幅器及び受信用分配器を介して複数の無線受信機に入力する受信系統とを具備し、
前記第1及び第2のアンテナを2基合成アンテナとして動作させ、水平面無指向性とすると共に、送信用及び受信用として共用するように構成したことを特徴とするアンテナ共用システム。
【請求項3】
請求項2に記載のアンテナ共用システムを2系統設けると共にダイバーシティ受信機能を備えた複数の無線受信機を2系統に共通に設け、第1系統の受信用分配器の分配出力を各無線受信機の一方の入力端子に入力し、第2系統の受信用分配器の分配出力を各無線受信機の他方の入力端子に入力してダイバーシティ受信を行うように構成し、前記各系統の第1及び第2のアンテナを鉄塔の側部にそれぞれ水平面内で互いに約180°方向に設置すると共に、各系統間のアンテナを相互に約90°の位置関係を保って配置することを特徴とするアンテナ共用システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−209720(P2012−209720A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73231(P2011−73231)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(504378814)八木アンテナ株式会社 (190)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(504378814)八木アンテナ株式会社 (190)
【Fターム(参考)】
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