アンテナ制御システム及びアンテナモデム
【課題】コアキシャルインターフェイス方式で伝送する電源電圧にかかわらず、所定の電圧の電源を使用することが可能なアンテナ制御システム及びアンテナモデムを提供する。
【解決手段】アンテナ10の制御を行うAISGデバイス17と、AISGデバイス17に制御信号と電源信号を送信する制御装置16と、制御装置16から入力された制御信号を変調して生成した変調信号と電源信号を給電信号に重畳して出力するBSモデム13と、BSモデム13から入力された給電信号から変調信号と電源信号を分離し、変調信号を復調した制御信号と電源信号をAISGデバイス17に出力するアンテナモデム2とを備え、アンテナモデム2は、正負両電源入力対応の第1DC/DCコンバータ3を備え、第1DC/DCコンバータ3により、入力された電源信号からAISG規格にて規定される所定の電圧の電源信号を生成して、AISGデバイス17に出力するように構成される。
【解決手段】アンテナ10の制御を行うAISGデバイス17と、AISGデバイス17に制御信号と電源信号を送信する制御装置16と、制御装置16から入力された制御信号を変調して生成した変調信号と電源信号を給電信号に重畳して出力するBSモデム13と、BSモデム13から入力された給電信号から変調信号と電源信号を分離し、変調信号を復調した制御信号と電源信号をAISGデバイス17に出力するアンテナモデム2とを備え、アンテナモデム2は、正負両電源入力対応の第1DC/DCコンバータ3を備え、第1DC/DCコンバータ3により、入力された電源信号からAISG規格にて規定される所定の電圧の電源信号を生成して、AISGデバイス17に出力するように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AISG(Antenna Interface Standards Group)規格に準拠してアンテナの制御を行うアンテナ制御システム及びアンテナモデムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動通信用の無線基地局では、一般に、アンテナのチルト制御を遠隔制御により行えるようになっている。当初は、アンテナの制御方式としてメーカーごとに独自の方式を用いていたが、近年のLTE(Long Term Evolution)無線基地局などでは、アンテナの制御をAISG規格で行うことが多くなっている。AISG規格は、アンテナの基本的な相互運用を確実にすべく標準化された規格である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
通常、無線基地局のアンテナや、アンテナの制御を行うRET(Remote Electrical Tilt)ユニットなどのAISGデバイス(AISG端末機器)は、鉄塔の上部やビルの屋上など高い位置に配置される。他方、アンテナに給電を行う無線機や、AISGデバイスを制御する制御装置(AISG制御装置)は、鉄塔の下部など低い位置に配置されるのが一般的である。ここで、制御装置は、AISGデバイスに制御信号(RS485規格信号)を送信し、AISGデバイスを制御してアンテナの制御を行うと共に、AISGデバイスに電源を供給するものである。
【0004】
アンテナと無線機とは同軸ケーブルからなる給電線(RF給電線)により接続され、AISGデバイスと制御装置とはAISG規格に準拠した制御ケーブル(AISG制御ケーブル)により接続されるので、例えばアンテナとAISGデバイスを鉄塔の上部に、無線機と制御装置を鉄塔の下部に配置する場合には、鉄塔の上部から下部にわたって、給電線と制御ケーブルの2本のケーブルが敷設されることになる。
【0005】
しかし、例えば数十mと高い鉄塔においては、鉄塔の上部から下部にわたってケーブルを敷設することは非常に手間がかかり、工事にかかるコストも高くなってしまう。この問題を解決するため、AISG規格では、コアキシャルインターフェイス(Coaxial Interface)またはモデムオプション(Modem Option)と呼ばれる方式(以下、コアキシャルインターフェイス方式と呼称する)が規定されている。
【0006】
図8に示すように、コアキシャルインターフェイス方式を用いたアンテナ制御システム81では、アンテナ10と無線機11とを接続する給電線12の途中に、BSモデム13とアンテナモデム14と呼ばれる2つのモデムを設け、これらBSモデム13とアンテナモデム14を使用して、給電線12を経由してAISGデバイス17用の制御信号や電源信号を伝送する。
【0007】
BSモデム13は、無線機11の近傍(例えば鉄塔の下部)に設けられ、制御ケーブル15を介して制御装置(AISG制御装置)16が接続される。アンテナモデム14は、アンテナ10の近傍(例えば鉄塔の上部)に設けられ、制御ケーブル15を介してAISGデバイス17が接続される。
【0008】
図9に示すように、BSモデム13では、制御装置16から入力AISGコネクタ21を介して入力された制御信号(RS485A,RS485B)を、モデム(モデム回路)22にて変調して変調信号を生成し、その変調信号と制御装置16から入力された電源信号とを合成回路23で合成し、その合成した信号(AISG信号という)をバイアスT回路(Bias Tee)24に出力する。バイアスT回路24は、直流遮断用のキャパシタ(容量素子)と交流遮断用のインダクタ(誘導素子)とを組み合わせて構成され、合成回路23から入力されたAISG信号を、無線機11から入力側RFコネクタ25を介して入力された給電信号(RF信号)に重畳して、出力側RFコネクタ26からアンテナ10側の給電線12に出力する。
【0009】
図10に示すように、従来のアンテナモデム14では、BSモデム13から入力側RFコネクタ31を介して入力された給電信号(AISG信号を重畳した給電信号)をバイアスT回路32に入力し、バイアスT回路32にて、給電信号からAISG信号を分離する。分離後の給電信号は、出力側RFコネクタ33から、アンテナ10側の給電線12に出力される。バイアスT回路32で分離されたAISG信号は、分離回路34にてさらに変調信号と電源信号とに分離され、分離された変調信号はモデム(モデム回路)35で復調されて制御信号に戻され、その復調された制御信号と、分離回路34で分離された電源信号とが、出力AISGコネクタ36を介してAISGデバイス17に出力される。
【0010】
BSモデム13のモデム22と、アンテナモデム14のモデム35としては、同じ構成のものを用いるのが一般的である。図11に示すように、モデム22,35は、RS485インターフェイス91に入力された制御信号(RS485規格信号)を、変調回路92で変調して変調信号を生成し、生成した変調信号を方向性結合器93から外部に出力するように構成されると共に、方向性結合器93に入力された変調信号を、復調回路94で復調して制御信号に戻し、RS485インターフェイス91から外部に出力するように構成されている。モデム22,35の電源回路95は、制御装置16から供給される電源を利用し、入力される電源電圧をモデム22,35用の電圧に変換して、RS485インターフェイス91、変調回路92、復調回路94に出力するように構成されている。
【0011】
このようなコアキシャルインターフェイス方式を採用することにより、鉄塔の上部から下部にわたって給電線12のみを敷設すればよいこととなり、工事費も含めたアンテナ制御システムのトータルコストを大幅に抑制することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2010−519804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、表1に示すように、AISG規格では、+12V(1番)、−48V(2番)、10〜30V(6番)の3種類の電源が用意されている。なお、表1は、AISG規格にて規定されているコネクタのピン端子の番号(Pin Number)、各ピン端子で伝搬する信号(Signal)、必須接続(Mandatory)であるか任意接続(Optional)であるかという要求(Requirement)を示したものであり、8番のNCは無接続(No Connection)を意味している。
【0014】
【表1】
【0015】
しかしながら、上述のコアキシャルインターフェイス方式のアンテナ制御システム81では、同軸ケーブルからなる給電線12を介して電源信号を伝送しており、同軸ケーブルは中心導体と外部導体の2つの導体しか備えていないので、1種類の電源しか伝送することができない。そのため、伝送する1種類の電源以外の電源を使用するAISGデバイス17を使用することができない。
【0016】
換言すれば、上述のコアキシャルインターフェイス方式のアンテナ制御システム81では、AISGデバイス17は、その使用する電源が、コアキシャルインターフェイス方式で伝送する電源(制御装置16が供給する電源)と一致する場合のみしか使用できない。
【0017】
したがって、上述のコアキシャルインターフェイス方式のアンテナ制御システム81では、コアキシャルインターフェイス方式で伝送する電源電圧、すなわち制御装置16が供給する電源電圧が未知である場合には、どのようなAISGデバイス17を使用できるか判断できず、不便であった。
【0018】
本発明は、上記事情に鑑み為されたものであり、コアキシャルインターフェイス方式で伝送する電源電圧にかかわらず、所定の電圧の電源を使用することが可能なアンテナ制御システム及びアンテナモデムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、AISG規格に準拠してアンテナの制御を行うAISGデバイスと、前記AISGデバイスに制御信号を送信し、前記AISGデバイスを制御して前記アンテナの制御を行うと共に、前記AISGデバイスに電源信号を送信する制御装置と、前記アンテナと該アンテナに給電を行う無線機とを接続する給電線の途中に設けられると共に、前記制御装置が接続され、前記制御装置から入力された制御信号を変調して変調信号を生成し、その変調信号と前記制御装置から入力された電源信号とを、前記無線機から入力された給電信号に重畳して、前記アンテナ側の前記給電線に出力するBSモデムと、前記BSモデムよりも前記アンテナ側の前記給電線の途中に設けられると共に、前記AISGデバイスが接続され、前記BSモデムから入力された給電信号から変調信号と電源信号とを分離すると共に、変調信号を復調して制御信号に戻し、制御信号と電源信号を前記AISGデバイスに、分離後の給電信号を前記アンテナ側の前記給電線に出力するアンテナモデムと、を備えたアンテナ制御システムにおいて、前記アンテナモデムは、正電源と負電源のいずれが入力された場合であっても所定の電圧の電源信号を生成可能な正負両電源入力対応の第1DC/DCコンバータを備え、該第1DC/DCコンバータにより、前記BSモデムから入力され給電信号から分離した電源信号から、AISG規格にて規定される所定の電圧の電源信号を生成して、前記AISGデバイスに出力するように構成されるアンテナ制御システムである。
【0020】
前記第1DC/DCコンバータは、正電源あるいは負電源のいずれか一方のみに対応した片電源入力対応のDC/DCコンバータの前段に、当該片電源入力対応のDC/DCコンバータが対応しない極性の電源信号が入力されたときに、入力された電源信号の極性を反転して出力する入力切替回路を備えて構成されてもよい。
【0021】
前記アンテナモデムは、前記第1DC/DCコンバータが生成した電源信号から、AISG規格にて規定される他の電圧の電源信号を生成する第2DC/DCコンバータを備え、前記第1DC/DCコンバータが生成した電源信号と、前記第2DC/DCコンバータが生成した電源信号を、前記AISGデバイスに出力するように構成されてもよい。
【0022】
前記アンテナモデムは、前記第1DC/DCコンバータを複数備え、該複数の第1DC/DCコンバータにて、前記BSモデムから入力され給電信号から分離した電源信号から、AISG規格にて規定される電圧で、かつ異なる電圧の電源信号をそれぞれ生成して、前記AISGデバイスに出力するように構成されてもよい。
【0023】
前記アンテナモデムは、前記BSモデムから入力され給電信号から分離した電源信号の電圧が、前記第1DC/DCコンバータが生成する電圧と等しいとき、当該生成する電圧が等しい第1DC/DCコンバータをバイパスして、前記BSモデムから入力され給電信号から分離した電源信号を直接前記AISGデバイスに出力する出力切替回路を備えてもよい。
【0024】
また、本発明は、AISG規格に準拠してアンテナの制御を行うAISGデバイスと、前記AISGデバイスに制御信号を送信し、前記AISGデバイスを制御して前記アンテナの制御を行うと共に、前記AISGデバイスに電源信号を送信する制御装置と、前記アンテナと該アンテナに給電を行う無線機とを接続する給電線の途中に設けられると共に、前記制御装置が接続され、前記制御装置から入力された制御信号を変調して変調信号を生成し、その変調信号と前記制御装置から入力された電源信号とを、前記無線機から入力された給電信号に重畳して、前記アンテナ側の前記給電線に出力するBSモデムと、を備えたアンテナ制御システムに用いられ、前記BSモデムよりも前記アンテナ側の前記給電線の途中に設けられると共に、前記AISGデバイスが接続され、前記BSモデムから入力された給電信号から変調信号と電源信号とを分離すると共に、変調信号を復調して制御信号に戻し、制御信号と電源信号を前記AISGデバイスに、分離後の給電信号を前記アンテナ側の前記給電線に出力するアンテナモデムであって、正電源と負電源のいずれが入力された場合であっても所定の電圧の電源信号を生成可能な正負両電源入力対応の第1DC/DCコンバータを備え、該第1DC/DCコンバータにより、前記BSモデムから入力され給電信号から分離した電源信号から、AISG規格にて規定される所定の電圧の電源信号を生成して、前記AISGデバイスに出力するように構成されるアンテナモデムである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、コアキシャルインターフェイス方式で伝送する電源電圧にかかわらず、所定の電圧の電源を使用することが可能なアンテナ制御システム及びアンテナモデムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は、本発明の一実施の形態に係るアンテナ制御システムの概略構成図であり、(b)はアンテナモデムの概略構成図である。
【図2】図1のアンテナ制御システムに用いる制御ケーブルの一例を示す横断面図である。
【図3】図1(b)のアンテナモデムにおいて、第1DC/DCコンバータに片電源入力対応のDC/DCコンバータを用いる場合の回路構成図である。
【図4】(a),(b)は、図1(b)のアンテナモデムの変形例を示す概略構成図である。
【図5】(a)は、図1(b)のアンテナモデムの変形例を示す概略構成図であり、(b)は、第1DC/DCコンバータに片電源入力対応のDC/DCコンバータを用いる場合の回路構成図である。
【図6】(a)は、図1(b)のアンテナモデムの変形例を示す概略構成図であり、(b)は、出力切替回路の概略構成図である。
【図7】図1(b)のアンテナモデムの変形例を示す概略構成図である。
【図8】従来のアンテナ制御システムの概略構成図である。
【図9】図8の従来のアンテナ制御システムに用いるBSモデムの概略構成図である。
【図10】図8の従来のアンテナ制御システムに用いる従来のアンテナモデムの概略構成図である。
【図11】図9のBSモデム、図10のアンテナモデムに用いるモデム(モデム回路)の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0028】
図1(a)は、本実施の形態に係るアンテナ制御システムの概略構成図であり、図1(b)は、アンテナモデムの概略構成図である。
【0029】
図1(a)に示すように、アンテナ制御システム1は、AISG規格に準拠してアンテナ10の制御を行うAISGデバイス17と、AISGデバイス17に制御信号を送信し、AISGデバイス17を制御してアンテナ10の制御を行うと共に、AISGデバイス17に電源信号を送信する制御装置16と、アンテナ10とアンテナ10に給電を行う無線機11とを接続する給電線12の途中に設けられたBSモデム13と、BSモデム13よりもアンテナ10側の給電線12の途中に設けられた本発明のアンテナモデム2と、を備えている。
【0030】
ここでは、一例として、AISGデバイス17が、10〜30V電源を使用するものである場合を説明する。制御装置16が出力する電源は未知(10〜30V電源、+12V電源、−48V電源のいずれか)とする。
【0031】
BSモデム13は、制御装置16から入力AISGコネクタ(オスコネクタ)21を介して入力された制御信号を変調して変調信号を生成し、その変調信号と制御装置16から入力された電源信号とを合成した信号(AISG信号という)を、無線機11から入力側RFコネクタ25を介して入力された給電信号に重畳して、出力側RFコネクタ26から、アンテナ10側の給電線12に出力するものである。BSモデム13は、従来より用いられている一般的なBSモデムであり、図9で説明したものと同じものである。入力AISGコネクタ21は、AISG規格に準拠した一般的なコネクタ(AISGコネクタ)であり、RFコネクタ25,26は、一般的な同軸ケーブル用のコネクタである。
【0032】
アンテナモデム2は、BSモデム13から入力側RFコネクタ31を介して入力された給電信号からAISG信号を分離すると共に、AISG信号を変調信号と電源信号とに分離し、変調信号を復調して制御信号に戻し、制御信号と電源信号を出力AISGコネクタ36からAISGデバイス17に、分離後の給電信号を出力側RFコネクタ33からアンテナ10側の給電線12に出力するものである。アンテナモデム2の詳細については後述する。出力AISGコネクタ36は、AISG規格に準拠した一般的なコネクタ(AISGコネクタ)であり、RFコネクタ31,33は、一般的な同軸ケーブル用のコネクタである。
【0033】
BSモデム13は、無線機11の近傍(例えば鉄塔の下部)に設けられ、制御ケーブル15を介して制御装置16が接続される。アンテナモデム2は、アンテナ10の近傍(例えば鉄塔の上部)に設けられ、制御ケーブル15を介してAISGデバイス17が接続される。
【0034】
制御ケーブル15は、図2に示すように、制御信号を伝送する2本の制御信号線44と、電源を供給するための3本の電源線45とを備えている。2本の制御信号線44には、ドレインワイヤ46が縦添えされており、2本の制御信号線44とドレインワイヤ46の周囲には、これらを一括して取り囲むようにシールドテープ(金属テープ)47が設けられている。
【0035】
3本の電源線45は、異なる電圧が設定された2本の電源線45a,45cと、DCリターン用の電源線45bとからなる。ここでは、−48V電源を伝送する−48V線45aと10〜30V電源を伝送する10〜30V線45cを備える場合を示している。
【0036】
3本の電源線45は、介在48と共に2本の制御信号線44の周囲(シールドテープ47の周囲)に配置され、これらを一括して取り囲むように、シールドテープ49、編組シールド50、シース51が順次設けられている。
【0037】
なお、図2の制御ケーブル15は、あくまで一例として示したものであり、制御ケーブル15は、図2の構成に限定されるものではない。例えば、図1(a)のアンテナ制御システム1では、アンテナモデム14とAISGデバイス17間に設けられる制御ケーブル15については、−48V線45aを使用しないので、−48V線45aを省略したものを用いることも可能である。
【0038】
図1(a)に戻り、制御ケーブル15の両端には、オスコネクタ15aとメスコネクタ15bがそれぞれ設けられている。また、制御装置16には出力コネクタ(メスコネクタ)16aが、AISGデバイス17には入力コネクタ(オスコネクタ)17aが設けられている。これらコネクタ15a,15b,16a,17aは、AISG規格に準拠した一般的なコネクタ(AISGコネクタ)である。なお、図示していないが、AISGデバイス17には、出力コネクタ(メスコネクタ)が設けられており、複数台のAISGデバイス17をデイジーチェーン接続できるようになっている。
【0039】
制御ケーブル15のオスコネクタ15aを制御装置16の出力コネクタ16aに接続し、その制御ケーブル15のメスコネクタ15bをBSモデム13の入力AISGコネクタ21に接続することで、制御装置16とBSモデム13とが制御ケーブル15を介して接続される。また、BSモデム13の入力側RFコネクタ25には、無線機11から延びる給電線12が接続され、これにより、無線機11とBSモデム13とが給電線12を介して接続される。
【0040】
さらに、制御ケーブル15のオスコネクタ15aをアンテナモデム2の出力AISGコネクタ36に接続し、その制御ケーブル15のメスコネクタ15bをAISGデバイス17の入力コネクタ17aに接続することで、アンテナモデム2とAISGデバイス17とが制御ケーブル15を介して接続される。また、アンテナモデム2の出力側RFコネクタ33には、アンテナ10に延びる給電線12が接続され、これにより、アンテナモデム2とアンテナ10とが給電線12を介して接続される。
【0041】
さらにまた、給電線12の一端をBSモデム13の出力側RFコネクタ26に接続し、その給電線12の他端をアンテナモデム2の入力側RFコネクタ31に接続することで、BSモデム13とアンテナモデム2とが給電線12を介して接続される。
【0042】
次に、アンテナモデム2について説明する。
【0043】
図1(b)に示すように、アンテナモデム2は、BSモデム13から入力側RFコネクタ31を介して入力された給電信号から変調信号と電源信号とを分離する(つまり給電信号からAISG信号を分離する)と共に、分離後の給電信号を、出力側RFコネクタ33からアンテナ10側の給電線12に出力するバイアスT回路32と、バイアスT回路32で分離された変調信号と電源信号を、さらに個別に分離する(つまりAISG信号を変調信号と電源信号とに分離する)分離回路34と、分離回路34にて分離した変調信号を復調して制御信号に戻し、その制御信号を出力AISGコネクタ36からAISGデバイス17に出力するモデム(モデム回路)35と、を備えている。
【0044】
分離回路34の変調信号の出力は、内部配線によりモデム35の変調信号の入出力部(方向性結合器)と電気的に接続され、モデム35の制御信号の入出力部(RS485インターフェイス)は、内部配線により出力AISGコネクタ36の3,5番(RS485A,RS485B)のピン端子に電気的に接続され、復調した制御信号を出力AISGコネクタ36から出力するようになっている。なお、モデム35は、図11で説明したものと同じものである。
【0045】
さて、本実施の形態に係るアンテナモデム2は、正電源と負電源のいずれが入力された場合であっても所定の電圧の電源信号を生成可能な正負両電源入力対応の第1DC/DCコンバータ3をさらに備え、第1DC/DCコンバータ3により、BSモデム13から入力され給電信号から分離した電源信号(制御装置16からBSモデム13を介して供給された未知の電圧の電源信号)から、AISG規格にて規定される所定の電圧の電源信号(ここでは10〜30V電源)を生成して、AISGデバイス17に出力するように構成されている。
【0046】
より具体的には、第1DC/DCコンバータ3は、分離回路34にて分離した電源信号から、AISG規格にて規定される所定の電圧の電源信号(ここでは10〜30V電源)を生成して、出力AISGコネクタ36からAISGデバイス17に出力するように構成されている。第1DC/DCコンバータ3としては、正負両電源入力対応であり、かつ入出力絶縁型のものを用いる。
【0047】
第1DC/DCコンバータ3の一方の入力端子(正負両電源入力対応であるため、入力端子に極性はない)は、内部配線により分離回路34の電源信号の出力と電気的に接続され、他方の入力端子は、図示していないが、出力AISGコネクタ36の7番(DC return)のピン端子、すなわちDCリターンラインと電気的に接続される。また、第1DC/DCコンバータ3の出力端子の正極は、内部配線により出力AISGコネクタ36の6番(10〜30V DC)のピン端子と電気的に接続され、出力端子の負極は、図示していないが、出力AISGコネクタ36の7番(DC return)のピン端子と電気的に接続される。さらに、第1DC/DCコンバータ3の出力端子の正極は、モデム35の電源回路に電気的に接続され、第1DC/DCコンバータ3が生成した電源をモデム35に供給するように構成されている。
【0048】
なお、ここでは、第1DC/DCコンバータ3として入出力絶縁型のものを用いているが、他方の入力端子と出力端子の負極とは共にDCリターンラインに電気的に接続されるので、これら両端子が内部で電気的に接続されているものを用いることも可能である。この場合、他方の入力端子と出力端子の負極のいずれか一方を、DCリターンラインに電気的に接続するように構成すればよい。
【0049】
本実施の形態では、制御装置16が給電する電源電圧が未知であるため、分離回路34で分離した電源信号を外部へ出力せず、第1DC/DCコンバータ3にて生成した電源信号(10〜30V電源)のみを、AISGデバイス17に出力するようにアンテナモデム2を構成している。なお、第1DC/DCコンバータ3にて生成する電源信号は10〜30V電源に限らず、AISGデバイス17が使用する電源に応じて、+12V電源や−48V電源としてもよい。
【0050】
本実施の形態では、第1DC/DCコンバータ3として正負両電源入力対応のものを用いたが、図3に示すように、正電源あるいは負電源のいずれか一方のみに対応した片電源入力対応のDC/DCコンバータ37を用い、その前段に、片電源入力対応のDC/DCコンバータ37が対応しない極性の電源信号が入力されたときに、入力された電源信号の極性を反転して出力する入力切替回路38を設けることで、正負両電源入力対応としてもよい。
【0051】
なお、片電源入力対応のDC/DCコンバータ37に入力される電圧は、入力切替回路38で整流されて10〜48V程度になるので、DC/DCコンバータ37としては、10〜48V程度の入力電圧の範囲に対応できるものを用いればよい。
【0052】
図3では、入力切替回路38を4つのダイオード39a〜39dからなるダイオードブリッジで構成した場合を示しているが、入力切替回路38の構成はこれに限定されるものではない。
【0053】
図3の例では、正電源(10〜30V電源あるいは+12V電源)が入力された場合には、ダイオード39a,39dが順方向バイアス、ダイオード39b,39cが逆方向バイアスされるので、分離回路34の電源信号の出力から延びる電源ラインがDC/DCコンバータ37の入力端子の正極(Vin(+))に、DCリターンラインがDC/DCコンバータ37の入力端子の負極(Vin(−))に電気的に接続されることになる。また、負電源(−48V電源)が入力された場合には、ダイオード39a,39dが逆方向バイアス、ダイオード39b,39cが順方向バイアスされるので、電源信号の極性は反転され、電源ラインがDC/DCコンバータ37の入力端子の負極(Vin(−))に、DCリターンラインがDC/DCコンバータ37の入力端子の正極(Vin(+))に電気的に接続されることになる。
【0054】
本実施の形態では、アンテナモデム2に1つの第1DC/DCコンバータ3を備え、1種類の電源(ここでは10〜30V電源)のみを出力する場合を説明したが、例えば、デイジーチェーン接続により+12V電源を使用するAISGデバイス17をさらに使用する可能性がある場合などは、図4(a)に示すように、第1DC/DCコンバータ3が生成した電源信号(ここでは10〜30V電源)から、AISG規格にて規定される他の電圧の電源信号(ここでは+12V電源)を生成する第2DC/DCコンバータ4をさらに備え、第1DC/DCコンバータ3が生成した電源信号(10〜30V電源)と、第2DC/DCコンバータ4が生成した電源信号(+12V電源)の両者を、AISGデバイス17に出力するように構成してもよい。
【0055】
図4(b)に示すように、さらに−48V電源を生成する第2DC/DCコンバータ4を備えれば、AISG規格にて規定する3種類全ての電源をAISGデバイス17に出力することが可能になる。
【0056】
また、図5(a)に示すように、第1DC/DCコンバータ3を複数(ここでは2つ)備え、複数の第1DC/DCコンバータ3にて、BSモデム13から入力され給電信号から分離した未知の電源信号から、AISG規格にて規定される電圧で、かつ異なる電圧の電源信号(ここでは10〜30V電源と+12V電源)をそれぞれ生成して、AISGデバイス17に出力するように構成することも可能である。
【0057】
このとき、第1DC/DCコンバータ3として、図3で説明したような片電源入力対応のDC/DCコンバータ37の前段に入力切替回路38を設けたものを用いる場合は、図5(b)に示すように、入力切替回路38を共通として、入力切替回路38の後段に、2つの片電源入力対応のDC/DCコンバータ37を並列接続するように構成すればよい。
【0058】
図5(a)のアンテナモデム2に、さらに−48V電源を生成する第1DC/DCコンバータ3を備えれば、図4(b)に示したアンテナモデム2と同様に、AISG規格にて規定する3種類全ての電源をAISGデバイス17に出力することが可能になる。また、図5(a)のアンテナモデム2において、いずれかの第1DC/DCコンバータ3の後段に、当該第1DC/DCコンバータ3が生成した電源信号から−48V電源を生成する第2DC/DCコンバータ4をさらに備えても、3種類全ての電源をAISGデバイス17に出力することが可能になる。
【0059】
さらには、図6(a)に示すように、BSモデム13から入力され給電信号から分離した電源信号の電圧が、第1DC/DCコンバータ3が生成する電圧と略等しいとき、当該生成する電圧が等しい第1DC/DCコンバータ3をバイパスして、BSモデム13から入力され給電信号から分離した電源信号を直接AISGデバイス17に出力する出力切替回路5を備えるようにしてもよい。
【0060】
図6(a),(b)に示すように、出力切替回路5は、分離回路34の電源信号の出力が電気的に接続される第1入力端子52と、第1DC/DCコンバータ3の出力端子(出力端子の正極)が電気的に接続される第2入力端子53と、出力AISGコネクタ36(6番のピン端子)と電気的に接続される出力端子54と、第1入力端子52と出力端子54とを電気的に接続するか、あるいは第2入力端子53と出力端子54とを電気的に接続するかを切り替える継電器などの出力切替スイッチ55と、第1入力端子52から入力された電圧の値に応じて出力切替スイッチ55を制御する入力電圧検知回路56と、を備えている。
【0061】
入力電圧検知回路56は、第2入力端子53から供給される電源(第1DC/DCコンバータ3が生成する電源)により動作するように構成され、第1入力端子52から入力された電圧の値が、予め設定した所定の範囲内(第1DC/DCコンバータ3が生成する電圧の近傍の値)であれば、第1入力端子52と出力端子54とを電気的に接続するように出力切替スイッチ55を制御するように構成される。入力された電圧の値が所定の範囲内であるか否かの判定は、ウインドコンパレータにより行うようにすればよい。
【0062】
出力切替回路5を備えることで、制御装置16からBSモデム13を介して入力された電源電圧が、第1DC/DCコンバータ3で生成する電圧と略等しいときには、第1DC/DCコンバータ3をバイパスして入力された電源を直接出力することが可能になり、第1DC/DCコンバータ3での無駄な電力損失を抑制することが可能になる。なお、図5(a)のように第1DC/DCコンバータ3を複数備える場合には、各第1DC/DCコンバータ3ごとに出力切替回路5を備えるとよい。
【0063】
さらに、図7に示すように、出力AISGコネクタ36の近傍にサージ保護回路6を備え、雷サージなどのサージ電圧から内部回路(第1DC/DCコンバータ3やモデム35など)を保護するように構成してもよい。
【0064】
本実施の形態の作用を説明する。
【0065】
本実施の形態に係るアンテナ制御システム1では、アンテナモデム2に、正負両電源入力対応の第1DC/DCコンバータ3を備え、第1DC/DCコンバータ3により、BSモデム13から入力され給電信号から分離した電源信号から、AISG規格にて規定される所定の電圧の電源信号を生成して、AISGデバイス17に出力するように構成している。
【0066】
従来、コアキシャルインターフェイス方式のアンテナ制御システムでは、1種類の電源しか伝送することができないため、コアキシャルインターフェイス方式で伝送する電源電圧、すなわち制御装置16が供給する電源電圧が未知である場合には、どのような電源を使用できるのか、つまりどのようなAISGデバイス17を使用できるかを判断することができなかったが、本発明によれば、アンテナモデム2内に正負両電源入力対応のDC/DCコンバータ3を設けることにより、コアキシャルインターフェイス方式で伝送する電源電圧にかかわらず、アンテナモデム2にて所定の電圧の電源を生成することが可能となり、アンテナモデム2の下流側(制御装置16と反対側)において、常に所定の電圧の電源を使用することが可能となる。
【0067】
つまり、本発明によれば、コアキシャルインターフェイス方式により給電される電源電圧にかかわらず、任意の電源電圧を使用するAISGデバイス17を接続して使用することが可能となる。
【0068】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
1 アンテナ制御システム
2 アンテナモデム
3 第1DC/DCコンバータ
4 第2DC/DCコンバータ
5 出力切替回路
10 アンテナ
11 無線機
12 給電線
13 BSモデム
15 制御ケーブル
16 制御装置
17 AISGデバイス
38 入力切替回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、AISG(Antenna Interface Standards Group)規格に準拠してアンテナの制御を行うアンテナ制御システム及びアンテナモデムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動通信用の無線基地局では、一般に、アンテナのチルト制御を遠隔制御により行えるようになっている。当初は、アンテナの制御方式としてメーカーごとに独自の方式を用いていたが、近年のLTE(Long Term Evolution)無線基地局などでは、アンテナの制御をAISG規格で行うことが多くなっている。AISG規格は、アンテナの基本的な相互運用を確実にすべく標準化された規格である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
通常、無線基地局のアンテナや、アンテナの制御を行うRET(Remote Electrical Tilt)ユニットなどのAISGデバイス(AISG端末機器)は、鉄塔の上部やビルの屋上など高い位置に配置される。他方、アンテナに給電を行う無線機や、AISGデバイスを制御する制御装置(AISG制御装置)は、鉄塔の下部など低い位置に配置されるのが一般的である。ここで、制御装置は、AISGデバイスに制御信号(RS485規格信号)を送信し、AISGデバイスを制御してアンテナの制御を行うと共に、AISGデバイスに電源を供給するものである。
【0004】
アンテナと無線機とは同軸ケーブルからなる給電線(RF給電線)により接続され、AISGデバイスと制御装置とはAISG規格に準拠した制御ケーブル(AISG制御ケーブル)により接続されるので、例えばアンテナとAISGデバイスを鉄塔の上部に、無線機と制御装置を鉄塔の下部に配置する場合には、鉄塔の上部から下部にわたって、給電線と制御ケーブルの2本のケーブルが敷設されることになる。
【0005】
しかし、例えば数十mと高い鉄塔においては、鉄塔の上部から下部にわたってケーブルを敷設することは非常に手間がかかり、工事にかかるコストも高くなってしまう。この問題を解決するため、AISG規格では、コアキシャルインターフェイス(Coaxial Interface)またはモデムオプション(Modem Option)と呼ばれる方式(以下、コアキシャルインターフェイス方式と呼称する)が規定されている。
【0006】
図8に示すように、コアキシャルインターフェイス方式を用いたアンテナ制御システム81では、アンテナ10と無線機11とを接続する給電線12の途中に、BSモデム13とアンテナモデム14と呼ばれる2つのモデムを設け、これらBSモデム13とアンテナモデム14を使用して、給電線12を経由してAISGデバイス17用の制御信号や電源信号を伝送する。
【0007】
BSモデム13は、無線機11の近傍(例えば鉄塔の下部)に設けられ、制御ケーブル15を介して制御装置(AISG制御装置)16が接続される。アンテナモデム14は、アンテナ10の近傍(例えば鉄塔の上部)に設けられ、制御ケーブル15を介してAISGデバイス17が接続される。
【0008】
図9に示すように、BSモデム13では、制御装置16から入力AISGコネクタ21を介して入力された制御信号(RS485A,RS485B)を、モデム(モデム回路)22にて変調して変調信号を生成し、その変調信号と制御装置16から入力された電源信号とを合成回路23で合成し、その合成した信号(AISG信号という)をバイアスT回路(Bias Tee)24に出力する。バイアスT回路24は、直流遮断用のキャパシタ(容量素子)と交流遮断用のインダクタ(誘導素子)とを組み合わせて構成され、合成回路23から入力されたAISG信号を、無線機11から入力側RFコネクタ25を介して入力された給電信号(RF信号)に重畳して、出力側RFコネクタ26からアンテナ10側の給電線12に出力する。
【0009】
図10に示すように、従来のアンテナモデム14では、BSモデム13から入力側RFコネクタ31を介して入力された給電信号(AISG信号を重畳した給電信号)をバイアスT回路32に入力し、バイアスT回路32にて、給電信号からAISG信号を分離する。分離後の給電信号は、出力側RFコネクタ33から、アンテナ10側の給電線12に出力される。バイアスT回路32で分離されたAISG信号は、分離回路34にてさらに変調信号と電源信号とに分離され、分離された変調信号はモデム(モデム回路)35で復調されて制御信号に戻され、その復調された制御信号と、分離回路34で分離された電源信号とが、出力AISGコネクタ36を介してAISGデバイス17に出力される。
【0010】
BSモデム13のモデム22と、アンテナモデム14のモデム35としては、同じ構成のものを用いるのが一般的である。図11に示すように、モデム22,35は、RS485インターフェイス91に入力された制御信号(RS485規格信号)を、変調回路92で変調して変調信号を生成し、生成した変調信号を方向性結合器93から外部に出力するように構成されると共に、方向性結合器93に入力された変調信号を、復調回路94で復調して制御信号に戻し、RS485インターフェイス91から外部に出力するように構成されている。モデム22,35の電源回路95は、制御装置16から供給される電源を利用し、入力される電源電圧をモデム22,35用の電圧に変換して、RS485インターフェイス91、変調回路92、復調回路94に出力するように構成されている。
【0011】
このようなコアキシャルインターフェイス方式を採用することにより、鉄塔の上部から下部にわたって給電線12のみを敷設すればよいこととなり、工事費も含めたアンテナ制御システムのトータルコストを大幅に抑制することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2010−519804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、表1に示すように、AISG規格では、+12V(1番)、−48V(2番)、10〜30V(6番)の3種類の電源が用意されている。なお、表1は、AISG規格にて規定されているコネクタのピン端子の番号(Pin Number)、各ピン端子で伝搬する信号(Signal)、必須接続(Mandatory)であるか任意接続(Optional)であるかという要求(Requirement)を示したものであり、8番のNCは無接続(No Connection)を意味している。
【0014】
【表1】
【0015】
しかしながら、上述のコアキシャルインターフェイス方式のアンテナ制御システム81では、同軸ケーブルからなる給電線12を介して電源信号を伝送しており、同軸ケーブルは中心導体と外部導体の2つの導体しか備えていないので、1種類の電源しか伝送することができない。そのため、伝送する1種類の電源以外の電源を使用するAISGデバイス17を使用することができない。
【0016】
換言すれば、上述のコアキシャルインターフェイス方式のアンテナ制御システム81では、AISGデバイス17は、その使用する電源が、コアキシャルインターフェイス方式で伝送する電源(制御装置16が供給する電源)と一致する場合のみしか使用できない。
【0017】
したがって、上述のコアキシャルインターフェイス方式のアンテナ制御システム81では、コアキシャルインターフェイス方式で伝送する電源電圧、すなわち制御装置16が供給する電源電圧が未知である場合には、どのようなAISGデバイス17を使用できるか判断できず、不便であった。
【0018】
本発明は、上記事情に鑑み為されたものであり、コアキシャルインターフェイス方式で伝送する電源電圧にかかわらず、所定の電圧の電源を使用することが可能なアンテナ制御システム及びアンテナモデムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、AISG規格に準拠してアンテナの制御を行うAISGデバイスと、前記AISGデバイスに制御信号を送信し、前記AISGデバイスを制御して前記アンテナの制御を行うと共に、前記AISGデバイスに電源信号を送信する制御装置と、前記アンテナと該アンテナに給電を行う無線機とを接続する給電線の途中に設けられると共に、前記制御装置が接続され、前記制御装置から入力された制御信号を変調して変調信号を生成し、その変調信号と前記制御装置から入力された電源信号とを、前記無線機から入力された給電信号に重畳して、前記アンテナ側の前記給電線に出力するBSモデムと、前記BSモデムよりも前記アンテナ側の前記給電線の途中に設けられると共に、前記AISGデバイスが接続され、前記BSモデムから入力された給電信号から変調信号と電源信号とを分離すると共に、変調信号を復調して制御信号に戻し、制御信号と電源信号を前記AISGデバイスに、分離後の給電信号を前記アンテナ側の前記給電線に出力するアンテナモデムと、を備えたアンテナ制御システムにおいて、前記アンテナモデムは、正電源と負電源のいずれが入力された場合であっても所定の電圧の電源信号を生成可能な正負両電源入力対応の第1DC/DCコンバータを備え、該第1DC/DCコンバータにより、前記BSモデムから入力され給電信号から分離した電源信号から、AISG規格にて規定される所定の電圧の電源信号を生成して、前記AISGデバイスに出力するように構成されるアンテナ制御システムである。
【0020】
前記第1DC/DCコンバータは、正電源あるいは負電源のいずれか一方のみに対応した片電源入力対応のDC/DCコンバータの前段に、当該片電源入力対応のDC/DCコンバータが対応しない極性の電源信号が入力されたときに、入力された電源信号の極性を反転して出力する入力切替回路を備えて構成されてもよい。
【0021】
前記アンテナモデムは、前記第1DC/DCコンバータが生成した電源信号から、AISG規格にて規定される他の電圧の電源信号を生成する第2DC/DCコンバータを備え、前記第1DC/DCコンバータが生成した電源信号と、前記第2DC/DCコンバータが生成した電源信号を、前記AISGデバイスに出力するように構成されてもよい。
【0022】
前記アンテナモデムは、前記第1DC/DCコンバータを複数備え、該複数の第1DC/DCコンバータにて、前記BSモデムから入力され給電信号から分離した電源信号から、AISG規格にて規定される電圧で、かつ異なる電圧の電源信号をそれぞれ生成して、前記AISGデバイスに出力するように構成されてもよい。
【0023】
前記アンテナモデムは、前記BSモデムから入力され給電信号から分離した電源信号の電圧が、前記第1DC/DCコンバータが生成する電圧と等しいとき、当該生成する電圧が等しい第1DC/DCコンバータをバイパスして、前記BSモデムから入力され給電信号から分離した電源信号を直接前記AISGデバイスに出力する出力切替回路を備えてもよい。
【0024】
また、本発明は、AISG規格に準拠してアンテナの制御を行うAISGデバイスと、前記AISGデバイスに制御信号を送信し、前記AISGデバイスを制御して前記アンテナの制御を行うと共に、前記AISGデバイスに電源信号を送信する制御装置と、前記アンテナと該アンテナに給電を行う無線機とを接続する給電線の途中に設けられると共に、前記制御装置が接続され、前記制御装置から入力された制御信号を変調して変調信号を生成し、その変調信号と前記制御装置から入力された電源信号とを、前記無線機から入力された給電信号に重畳して、前記アンテナ側の前記給電線に出力するBSモデムと、を備えたアンテナ制御システムに用いられ、前記BSモデムよりも前記アンテナ側の前記給電線の途中に設けられると共に、前記AISGデバイスが接続され、前記BSモデムから入力された給電信号から変調信号と電源信号とを分離すると共に、変調信号を復調して制御信号に戻し、制御信号と電源信号を前記AISGデバイスに、分離後の給電信号を前記アンテナ側の前記給電線に出力するアンテナモデムであって、正電源と負電源のいずれが入力された場合であっても所定の電圧の電源信号を生成可能な正負両電源入力対応の第1DC/DCコンバータを備え、該第1DC/DCコンバータにより、前記BSモデムから入力され給電信号から分離した電源信号から、AISG規格にて規定される所定の電圧の電源信号を生成して、前記AISGデバイスに出力するように構成されるアンテナモデムである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、コアキシャルインターフェイス方式で伝送する電源電圧にかかわらず、所定の電圧の電源を使用することが可能なアンテナ制御システム及びアンテナモデムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は、本発明の一実施の形態に係るアンテナ制御システムの概略構成図であり、(b)はアンテナモデムの概略構成図である。
【図2】図1のアンテナ制御システムに用いる制御ケーブルの一例を示す横断面図である。
【図3】図1(b)のアンテナモデムにおいて、第1DC/DCコンバータに片電源入力対応のDC/DCコンバータを用いる場合の回路構成図である。
【図4】(a),(b)は、図1(b)のアンテナモデムの変形例を示す概略構成図である。
【図5】(a)は、図1(b)のアンテナモデムの変形例を示す概略構成図であり、(b)は、第1DC/DCコンバータに片電源入力対応のDC/DCコンバータを用いる場合の回路構成図である。
【図6】(a)は、図1(b)のアンテナモデムの変形例を示す概略構成図であり、(b)は、出力切替回路の概略構成図である。
【図7】図1(b)のアンテナモデムの変形例を示す概略構成図である。
【図8】従来のアンテナ制御システムの概略構成図である。
【図9】図8の従来のアンテナ制御システムに用いるBSモデムの概略構成図である。
【図10】図8の従来のアンテナ制御システムに用いる従来のアンテナモデムの概略構成図である。
【図11】図9のBSモデム、図10のアンテナモデムに用いるモデム(モデム回路)の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0028】
図1(a)は、本実施の形態に係るアンテナ制御システムの概略構成図であり、図1(b)は、アンテナモデムの概略構成図である。
【0029】
図1(a)に示すように、アンテナ制御システム1は、AISG規格に準拠してアンテナ10の制御を行うAISGデバイス17と、AISGデバイス17に制御信号を送信し、AISGデバイス17を制御してアンテナ10の制御を行うと共に、AISGデバイス17に電源信号を送信する制御装置16と、アンテナ10とアンテナ10に給電を行う無線機11とを接続する給電線12の途中に設けられたBSモデム13と、BSモデム13よりもアンテナ10側の給電線12の途中に設けられた本発明のアンテナモデム2と、を備えている。
【0030】
ここでは、一例として、AISGデバイス17が、10〜30V電源を使用するものである場合を説明する。制御装置16が出力する電源は未知(10〜30V電源、+12V電源、−48V電源のいずれか)とする。
【0031】
BSモデム13は、制御装置16から入力AISGコネクタ(オスコネクタ)21を介して入力された制御信号を変調して変調信号を生成し、その変調信号と制御装置16から入力された電源信号とを合成した信号(AISG信号という)を、無線機11から入力側RFコネクタ25を介して入力された給電信号に重畳して、出力側RFコネクタ26から、アンテナ10側の給電線12に出力するものである。BSモデム13は、従来より用いられている一般的なBSモデムであり、図9で説明したものと同じものである。入力AISGコネクタ21は、AISG規格に準拠した一般的なコネクタ(AISGコネクタ)であり、RFコネクタ25,26は、一般的な同軸ケーブル用のコネクタである。
【0032】
アンテナモデム2は、BSモデム13から入力側RFコネクタ31を介して入力された給電信号からAISG信号を分離すると共に、AISG信号を変調信号と電源信号とに分離し、変調信号を復調して制御信号に戻し、制御信号と電源信号を出力AISGコネクタ36からAISGデバイス17に、分離後の給電信号を出力側RFコネクタ33からアンテナ10側の給電線12に出力するものである。アンテナモデム2の詳細については後述する。出力AISGコネクタ36は、AISG規格に準拠した一般的なコネクタ(AISGコネクタ)であり、RFコネクタ31,33は、一般的な同軸ケーブル用のコネクタである。
【0033】
BSモデム13は、無線機11の近傍(例えば鉄塔の下部)に設けられ、制御ケーブル15を介して制御装置16が接続される。アンテナモデム2は、アンテナ10の近傍(例えば鉄塔の上部)に設けられ、制御ケーブル15を介してAISGデバイス17が接続される。
【0034】
制御ケーブル15は、図2に示すように、制御信号を伝送する2本の制御信号線44と、電源を供給するための3本の電源線45とを備えている。2本の制御信号線44には、ドレインワイヤ46が縦添えされており、2本の制御信号線44とドレインワイヤ46の周囲には、これらを一括して取り囲むようにシールドテープ(金属テープ)47が設けられている。
【0035】
3本の電源線45は、異なる電圧が設定された2本の電源線45a,45cと、DCリターン用の電源線45bとからなる。ここでは、−48V電源を伝送する−48V線45aと10〜30V電源を伝送する10〜30V線45cを備える場合を示している。
【0036】
3本の電源線45は、介在48と共に2本の制御信号線44の周囲(シールドテープ47の周囲)に配置され、これらを一括して取り囲むように、シールドテープ49、編組シールド50、シース51が順次設けられている。
【0037】
なお、図2の制御ケーブル15は、あくまで一例として示したものであり、制御ケーブル15は、図2の構成に限定されるものではない。例えば、図1(a)のアンテナ制御システム1では、アンテナモデム14とAISGデバイス17間に設けられる制御ケーブル15については、−48V線45aを使用しないので、−48V線45aを省略したものを用いることも可能である。
【0038】
図1(a)に戻り、制御ケーブル15の両端には、オスコネクタ15aとメスコネクタ15bがそれぞれ設けられている。また、制御装置16には出力コネクタ(メスコネクタ)16aが、AISGデバイス17には入力コネクタ(オスコネクタ)17aが設けられている。これらコネクタ15a,15b,16a,17aは、AISG規格に準拠した一般的なコネクタ(AISGコネクタ)である。なお、図示していないが、AISGデバイス17には、出力コネクタ(メスコネクタ)が設けられており、複数台のAISGデバイス17をデイジーチェーン接続できるようになっている。
【0039】
制御ケーブル15のオスコネクタ15aを制御装置16の出力コネクタ16aに接続し、その制御ケーブル15のメスコネクタ15bをBSモデム13の入力AISGコネクタ21に接続することで、制御装置16とBSモデム13とが制御ケーブル15を介して接続される。また、BSモデム13の入力側RFコネクタ25には、無線機11から延びる給電線12が接続され、これにより、無線機11とBSモデム13とが給電線12を介して接続される。
【0040】
さらに、制御ケーブル15のオスコネクタ15aをアンテナモデム2の出力AISGコネクタ36に接続し、その制御ケーブル15のメスコネクタ15bをAISGデバイス17の入力コネクタ17aに接続することで、アンテナモデム2とAISGデバイス17とが制御ケーブル15を介して接続される。また、アンテナモデム2の出力側RFコネクタ33には、アンテナ10に延びる給電線12が接続され、これにより、アンテナモデム2とアンテナ10とが給電線12を介して接続される。
【0041】
さらにまた、給電線12の一端をBSモデム13の出力側RFコネクタ26に接続し、その給電線12の他端をアンテナモデム2の入力側RFコネクタ31に接続することで、BSモデム13とアンテナモデム2とが給電線12を介して接続される。
【0042】
次に、アンテナモデム2について説明する。
【0043】
図1(b)に示すように、アンテナモデム2は、BSモデム13から入力側RFコネクタ31を介して入力された給電信号から変調信号と電源信号とを分離する(つまり給電信号からAISG信号を分離する)と共に、分離後の給電信号を、出力側RFコネクタ33からアンテナ10側の給電線12に出力するバイアスT回路32と、バイアスT回路32で分離された変調信号と電源信号を、さらに個別に分離する(つまりAISG信号を変調信号と電源信号とに分離する)分離回路34と、分離回路34にて分離した変調信号を復調して制御信号に戻し、その制御信号を出力AISGコネクタ36からAISGデバイス17に出力するモデム(モデム回路)35と、を備えている。
【0044】
分離回路34の変調信号の出力は、内部配線によりモデム35の変調信号の入出力部(方向性結合器)と電気的に接続され、モデム35の制御信号の入出力部(RS485インターフェイス)は、内部配線により出力AISGコネクタ36の3,5番(RS485A,RS485B)のピン端子に電気的に接続され、復調した制御信号を出力AISGコネクタ36から出力するようになっている。なお、モデム35は、図11で説明したものと同じものである。
【0045】
さて、本実施の形態に係るアンテナモデム2は、正電源と負電源のいずれが入力された場合であっても所定の電圧の電源信号を生成可能な正負両電源入力対応の第1DC/DCコンバータ3をさらに備え、第1DC/DCコンバータ3により、BSモデム13から入力され給電信号から分離した電源信号(制御装置16からBSモデム13を介して供給された未知の電圧の電源信号)から、AISG規格にて規定される所定の電圧の電源信号(ここでは10〜30V電源)を生成して、AISGデバイス17に出力するように構成されている。
【0046】
より具体的には、第1DC/DCコンバータ3は、分離回路34にて分離した電源信号から、AISG規格にて規定される所定の電圧の電源信号(ここでは10〜30V電源)を生成して、出力AISGコネクタ36からAISGデバイス17に出力するように構成されている。第1DC/DCコンバータ3としては、正負両電源入力対応であり、かつ入出力絶縁型のものを用いる。
【0047】
第1DC/DCコンバータ3の一方の入力端子(正負両電源入力対応であるため、入力端子に極性はない)は、内部配線により分離回路34の電源信号の出力と電気的に接続され、他方の入力端子は、図示していないが、出力AISGコネクタ36の7番(DC return)のピン端子、すなわちDCリターンラインと電気的に接続される。また、第1DC/DCコンバータ3の出力端子の正極は、内部配線により出力AISGコネクタ36の6番(10〜30V DC)のピン端子と電気的に接続され、出力端子の負極は、図示していないが、出力AISGコネクタ36の7番(DC return)のピン端子と電気的に接続される。さらに、第1DC/DCコンバータ3の出力端子の正極は、モデム35の電源回路に電気的に接続され、第1DC/DCコンバータ3が生成した電源をモデム35に供給するように構成されている。
【0048】
なお、ここでは、第1DC/DCコンバータ3として入出力絶縁型のものを用いているが、他方の入力端子と出力端子の負極とは共にDCリターンラインに電気的に接続されるので、これら両端子が内部で電気的に接続されているものを用いることも可能である。この場合、他方の入力端子と出力端子の負極のいずれか一方を、DCリターンラインに電気的に接続するように構成すればよい。
【0049】
本実施の形態では、制御装置16が給電する電源電圧が未知であるため、分離回路34で分離した電源信号を外部へ出力せず、第1DC/DCコンバータ3にて生成した電源信号(10〜30V電源)のみを、AISGデバイス17に出力するようにアンテナモデム2を構成している。なお、第1DC/DCコンバータ3にて生成する電源信号は10〜30V電源に限らず、AISGデバイス17が使用する電源に応じて、+12V電源や−48V電源としてもよい。
【0050】
本実施の形態では、第1DC/DCコンバータ3として正負両電源入力対応のものを用いたが、図3に示すように、正電源あるいは負電源のいずれか一方のみに対応した片電源入力対応のDC/DCコンバータ37を用い、その前段に、片電源入力対応のDC/DCコンバータ37が対応しない極性の電源信号が入力されたときに、入力された電源信号の極性を反転して出力する入力切替回路38を設けることで、正負両電源入力対応としてもよい。
【0051】
なお、片電源入力対応のDC/DCコンバータ37に入力される電圧は、入力切替回路38で整流されて10〜48V程度になるので、DC/DCコンバータ37としては、10〜48V程度の入力電圧の範囲に対応できるものを用いればよい。
【0052】
図3では、入力切替回路38を4つのダイオード39a〜39dからなるダイオードブリッジで構成した場合を示しているが、入力切替回路38の構成はこれに限定されるものではない。
【0053】
図3の例では、正電源(10〜30V電源あるいは+12V電源)が入力された場合には、ダイオード39a,39dが順方向バイアス、ダイオード39b,39cが逆方向バイアスされるので、分離回路34の電源信号の出力から延びる電源ラインがDC/DCコンバータ37の入力端子の正極(Vin(+))に、DCリターンラインがDC/DCコンバータ37の入力端子の負極(Vin(−))に電気的に接続されることになる。また、負電源(−48V電源)が入力された場合には、ダイオード39a,39dが逆方向バイアス、ダイオード39b,39cが順方向バイアスされるので、電源信号の極性は反転され、電源ラインがDC/DCコンバータ37の入力端子の負極(Vin(−))に、DCリターンラインがDC/DCコンバータ37の入力端子の正極(Vin(+))に電気的に接続されることになる。
【0054】
本実施の形態では、アンテナモデム2に1つの第1DC/DCコンバータ3を備え、1種類の電源(ここでは10〜30V電源)のみを出力する場合を説明したが、例えば、デイジーチェーン接続により+12V電源を使用するAISGデバイス17をさらに使用する可能性がある場合などは、図4(a)に示すように、第1DC/DCコンバータ3が生成した電源信号(ここでは10〜30V電源)から、AISG規格にて規定される他の電圧の電源信号(ここでは+12V電源)を生成する第2DC/DCコンバータ4をさらに備え、第1DC/DCコンバータ3が生成した電源信号(10〜30V電源)と、第2DC/DCコンバータ4が生成した電源信号(+12V電源)の両者を、AISGデバイス17に出力するように構成してもよい。
【0055】
図4(b)に示すように、さらに−48V電源を生成する第2DC/DCコンバータ4を備えれば、AISG規格にて規定する3種類全ての電源をAISGデバイス17に出力することが可能になる。
【0056】
また、図5(a)に示すように、第1DC/DCコンバータ3を複数(ここでは2つ)備え、複数の第1DC/DCコンバータ3にて、BSモデム13から入力され給電信号から分離した未知の電源信号から、AISG規格にて規定される電圧で、かつ異なる電圧の電源信号(ここでは10〜30V電源と+12V電源)をそれぞれ生成して、AISGデバイス17に出力するように構成することも可能である。
【0057】
このとき、第1DC/DCコンバータ3として、図3で説明したような片電源入力対応のDC/DCコンバータ37の前段に入力切替回路38を設けたものを用いる場合は、図5(b)に示すように、入力切替回路38を共通として、入力切替回路38の後段に、2つの片電源入力対応のDC/DCコンバータ37を並列接続するように構成すればよい。
【0058】
図5(a)のアンテナモデム2に、さらに−48V電源を生成する第1DC/DCコンバータ3を備えれば、図4(b)に示したアンテナモデム2と同様に、AISG規格にて規定する3種類全ての電源をAISGデバイス17に出力することが可能になる。また、図5(a)のアンテナモデム2において、いずれかの第1DC/DCコンバータ3の後段に、当該第1DC/DCコンバータ3が生成した電源信号から−48V電源を生成する第2DC/DCコンバータ4をさらに備えても、3種類全ての電源をAISGデバイス17に出力することが可能になる。
【0059】
さらには、図6(a)に示すように、BSモデム13から入力され給電信号から分離した電源信号の電圧が、第1DC/DCコンバータ3が生成する電圧と略等しいとき、当該生成する電圧が等しい第1DC/DCコンバータ3をバイパスして、BSモデム13から入力され給電信号から分離した電源信号を直接AISGデバイス17に出力する出力切替回路5を備えるようにしてもよい。
【0060】
図6(a),(b)に示すように、出力切替回路5は、分離回路34の電源信号の出力が電気的に接続される第1入力端子52と、第1DC/DCコンバータ3の出力端子(出力端子の正極)が電気的に接続される第2入力端子53と、出力AISGコネクタ36(6番のピン端子)と電気的に接続される出力端子54と、第1入力端子52と出力端子54とを電気的に接続するか、あるいは第2入力端子53と出力端子54とを電気的に接続するかを切り替える継電器などの出力切替スイッチ55と、第1入力端子52から入力された電圧の値に応じて出力切替スイッチ55を制御する入力電圧検知回路56と、を備えている。
【0061】
入力電圧検知回路56は、第2入力端子53から供給される電源(第1DC/DCコンバータ3が生成する電源)により動作するように構成され、第1入力端子52から入力された電圧の値が、予め設定した所定の範囲内(第1DC/DCコンバータ3が生成する電圧の近傍の値)であれば、第1入力端子52と出力端子54とを電気的に接続するように出力切替スイッチ55を制御するように構成される。入力された電圧の値が所定の範囲内であるか否かの判定は、ウインドコンパレータにより行うようにすればよい。
【0062】
出力切替回路5を備えることで、制御装置16からBSモデム13を介して入力された電源電圧が、第1DC/DCコンバータ3で生成する電圧と略等しいときには、第1DC/DCコンバータ3をバイパスして入力された電源を直接出力することが可能になり、第1DC/DCコンバータ3での無駄な電力損失を抑制することが可能になる。なお、図5(a)のように第1DC/DCコンバータ3を複数備える場合には、各第1DC/DCコンバータ3ごとに出力切替回路5を備えるとよい。
【0063】
さらに、図7に示すように、出力AISGコネクタ36の近傍にサージ保護回路6を備え、雷サージなどのサージ電圧から内部回路(第1DC/DCコンバータ3やモデム35など)を保護するように構成してもよい。
【0064】
本実施の形態の作用を説明する。
【0065】
本実施の形態に係るアンテナ制御システム1では、アンテナモデム2に、正負両電源入力対応の第1DC/DCコンバータ3を備え、第1DC/DCコンバータ3により、BSモデム13から入力され給電信号から分離した電源信号から、AISG規格にて規定される所定の電圧の電源信号を生成して、AISGデバイス17に出力するように構成している。
【0066】
従来、コアキシャルインターフェイス方式のアンテナ制御システムでは、1種類の電源しか伝送することができないため、コアキシャルインターフェイス方式で伝送する電源電圧、すなわち制御装置16が供給する電源電圧が未知である場合には、どのような電源を使用できるのか、つまりどのようなAISGデバイス17を使用できるかを判断することができなかったが、本発明によれば、アンテナモデム2内に正負両電源入力対応のDC/DCコンバータ3を設けることにより、コアキシャルインターフェイス方式で伝送する電源電圧にかかわらず、アンテナモデム2にて所定の電圧の電源を生成することが可能となり、アンテナモデム2の下流側(制御装置16と反対側)において、常に所定の電圧の電源を使用することが可能となる。
【0067】
つまり、本発明によれば、コアキシャルインターフェイス方式により給電される電源電圧にかかわらず、任意の電源電圧を使用するAISGデバイス17を接続して使用することが可能となる。
【0068】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
1 アンテナ制御システム
2 アンテナモデム
3 第1DC/DCコンバータ
4 第2DC/DCコンバータ
5 出力切替回路
10 アンテナ
11 無線機
12 給電線
13 BSモデム
15 制御ケーブル
16 制御装置
17 AISGデバイス
38 入力切替回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AISG規格に準拠してアンテナの制御を行うAISGデバイスと、
前記AISGデバイスに制御信号を送信し、前記AISGデバイスを制御して前記アンテナの制御を行うと共に、前記AISGデバイスに電源信号を送信する制御装置と、
前記アンテナと該アンテナに給電を行う無線機とを接続する給電線の途中に設けられると共に、前記制御装置が接続され、前記制御装置から入力された制御信号を変調して変調信号を生成し、その変調信号と前記制御装置から入力された電源信号とを、前記無線機から入力された給電信号に重畳して、前記アンテナ側の前記給電線に出力するBSモデムと、
前記BSモデムよりも前記アンテナ側の前記給電線の途中に設けられると共に、前記AISGデバイスが接続され、前記BSモデムから入力された給電信号から変調信号と電源信号とを分離すると共に、変調信号を復調して制御信号に戻し、制御信号と電源信号を前記AISGデバイスに、分離後の給電信号を前記アンテナ側の前記給電線に出力するアンテナモデムと、
を備えたアンテナ制御システムにおいて、
前記アンテナモデムは、
正電源と負電源のいずれが入力された場合であっても所定の電圧の電源信号を生成可能な正負両電源入力対応の第1DC/DCコンバータを備え、
該第1DC/DCコンバータにより、前記BSモデムから入力され給電信号から分離した電源信号から、AISG規格にて規定される所定の電圧の電源信号を生成して、前記AISGデバイスに出力するように構成される
ことを特徴とするアンテナ制御システム。
【請求項2】
前記第1DC/DCコンバータは、
正電源あるいは負電源のいずれか一方のみに対応した片電源入力対応のDC/DCコンバータの前段に、当該片電源入力対応のDC/DCコンバータが対応しない極性の電源信号が入力されたときに、入力された電源信号の極性を反転して出力する入力切替回路を備えて構成される
請求項1記載のアンテナ制御システム。
【請求項3】
前記アンテナモデムは、
前記第1DC/DCコンバータが生成した電源信号から、AISG規格にて規定される他の電圧の電源信号を生成する第2DC/DCコンバータを備え、
前記第1DC/DCコンバータが生成した電源信号と、前記第2DC/DCコンバータが生成した電源信号を、前記AISGデバイスに出力するように構成される
請求項1または2記載のアンテナ制御システム。
【請求項4】
前記アンテナモデムは、
前記第1DC/DCコンバータを複数備え、該複数の第1DC/DCコンバータにて、前記BSモデムから入力され給電信号から分離した電源信号から、AISG規格にて規定される電圧で、かつ異なる電圧の電源信号をそれぞれ生成して、前記AISGデバイスに出力するように構成される
請求項1〜3いずれかに記載のアンテナ制御システム。
【請求項5】
前記アンテナモデムは、
前記BSモデムから入力され給電信号から分離した電源信号の電圧が、前記第1DC/DCコンバータが生成する電圧と等しいとき、当該生成する電圧が等しい第1DC/DCコンバータをバイパスして、前記BSモデムから入力され給電信号から分離した電源信号を直接前記AISGデバイスに出力する出力切替回路を備える
請求項1〜4いずれかに記載のアンテナ制御システム。
【請求項6】
AISG規格に準拠してアンテナの制御を行うAISGデバイスと、
前記AISGデバイスに制御信号を送信し、前記AISGデバイスを制御して前記アンテナの制御を行うと共に、前記AISGデバイスに電源信号を送信する制御装置と、
前記アンテナと該アンテナに給電を行う無線機とを接続する給電線の途中に設けられると共に、前記制御装置が接続され、前記制御装置から入力された制御信号を変調して変調信号を生成し、その変調信号と前記制御装置から入力された電源信号とを、前記無線機から入力された給電信号に重畳して、前記アンテナ側の前記給電線に出力するBSモデムと、を備えたアンテナ制御システムに用いられ、
前記BSモデムよりも前記アンテナ側の前記給電線の途中に設けられると共に、前記AISGデバイスが接続され、前記BSモデムから入力された給電信号から変調信号と電源信号とを分離すると共に、変調信号を復調して制御信号に戻し、制御信号と電源信号を前記AISGデバイスに、分離後の給電信号を前記アンテナ側の前記給電線に出力するアンテナモデムであって、
正電源と負電源のいずれが入力された場合であっても所定の電圧の電源信号を生成可能な正負両電源入力対応の第1DC/DCコンバータを備え、
該第1DC/DCコンバータにより、前記BSモデムから入力され給電信号から分離した電源信号から、AISG規格にて規定される所定の電圧の電源信号を生成して、前記AISGデバイスに出力するように構成される
ことを特徴とするアンテナモデム。
【請求項1】
AISG規格に準拠してアンテナの制御を行うAISGデバイスと、
前記AISGデバイスに制御信号を送信し、前記AISGデバイスを制御して前記アンテナの制御を行うと共に、前記AISGデバイスに電源信号を送信する制御装置と、
前記アンテナと該アンテナに給電を行う無線機とを接続する給電線の途中に設けられると共に、前記制御装置が接続され、前記制御装置から入力された制御信号を変調して変調信号を生成し、その変調信号と前記制御装置から入力された電源信号とを、前記無線機から入力された給電信号に重畳して、前記アンテナ側の前記給電線に出力するBSモデムと、
前記BSモデムよりも前記アンテナ側の前記給電線の途中に設けられると共に、前記AISGデバイスが接続され、前記BSモデムから入力された給電信号から変調信号と電源信号とを分離すると共に、変調信号を復調して制御信号に戻し、制御信号と電源信号を前記AISGデバイスに、分離後の給電信号を前記アンテナ側の前記給電線に出力するアンテナモデムと、
を備えたアンテナ制御システムにおいて、
前記アンテナモデムは、
正電源と負電源のいずれが入力された場合であっても所定の電圧の電源信号を生成可能な正負両電源入力対応の第1DC/DCコンバータを備え、
該第1DC/DCコンバータにより、前記BSモデムから入力され給電信号から分離した電源信号から、AISG規格にて規定される所定の電圧の電源信号を生成して、前記AISGデバイスに出力するように構成される
ことを特徴とするアンテナ制御システム。
【請求項2】
前記第1DC/DCコンバータは、
正電源あるいは負電源のいずれか一方のみに対応した片電源入力対応のDC/DCコンバータの前段に、当該片電源入力対応のDC/DCコンバータが対応しない極性の電源信号が入力されたときに、入力された電源信号の極性を反転して出力する入力切替回路を備えて構成される
請求項1記載のアンテナ制御システム。
【請求項3】
前記アンテナモデムは、
前記第1DC/DCコンバータが生成した電源信号から、AISG規格にて規定される他の電圧の電源信号を生成する第2DC/DCコンバータを備え、
前記第1DC/DCコンバータが生成した電源信号と、前記第2DC/DCコンバータが生成した電源信号を、前記AISGデバイスに出力するように構成される
請求項1または2記載のアンテナ制御システム。
【請求項4】
前記アンテナモデムは、
前記第1DC/DCコンバータを複数備え、該複数の第1DC/DCコンバータにて、前記BSモデムから入力され給電信号から分離した電源信号から、AISG規格にて規定される電圧で、かつ異なる電圧の電源信号をそれぞれ生成して、前記AISGデバイスに出力するように構成される
請求項1〜3いずれかに記載のアンテナ制御システム。
【請求項5】
前記アンテナモデムは、
前記BSモデムから入力され給電信号から分離した電源信号の電圧が、前記第1DC/DCコンバータが生成する電圧と等しいとき、当該生成する電圧が等しい第1DC/DCコンバータをバイパスして、前記BSモデムから入力され給電信号から分離した電源信号を直接前記AISGデバイスに出力する出力切替回路を備える
請求項1〜4いずれかに記載のアンテナ制御システム。
【請求項6】
AISG規格に準拠してアンテナの制御を行うAISGデバイスと、
前記AISGデバイスに制御信号を送信し、前記AISGデバイスを制御して前記アンテナの制御を行うと共に、前記AISGデバイスに電源信号を送信する制御装置と、
前記アンテナと該アンテナに給電を行う無線機とを接続する給電線の途中に設けられると共に、前記制御装置が接続され、前記制御装置から入力された制御信号を変調して変調信号を生成し、その変調信号と前記制御装置から入力された電源信号とを、前記無線機から入力された給電信号に重畳して、前記アンテナ側の前記給電線に出力するBSモデムと、を備えたアンテナ制御システムに用いられ、
前記BSモデムよりも前記アンテナ側の前記給電線の途中に設けられると共に、前記AISGデバイスが接続され、前記BSモデムから入力された給電信号から変調信号と電源信号とを分離すると共に、変調信号を復調して制御信号に戻し、制御信号と電源信号を前記AISGデバイスに、分離後の給電信号を前記アンテナ側の前記給電線に出力するアンテナモデムであって、
正電源と負電源のいずれが入力された場合であっても所定の電圧の電源信号を生成可能な正負両電源入力対応の第1DC/DCコンバータを備え、
該第1DC/DCコンバータにより、前記BSモデムから入力され給電信号から分離した電源信号から、AISG規格にて規定される所定の電圧の電源信号を生成して、前記AISGデバイスに出力するように構成される
ことを特徴とするアンテナモデム。
【図3】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−26895(P2013−26895A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160897(P2011−160897)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
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