説明

アンテナ特性制御方法

【課題】簡易に、かつ、低コストに、アンテナ特性を制御する方法を提供する。
【解決手段】アンテナ素子を通りアンテナ素子の指向方向と平行な軸を、アンテナ素子近傍において電波吸収体で取り囲むことでアンテナ特性の制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナの特性、特に、メインローブ幅の制御を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムにおいては、そのサービスエリア、サービス仕様に応じて基地局及び加入者局に設置するアンテナの、例えば、メインローブ幅といった、特性を決定し、決定に基づき使用するアンテナ素子の設計及び製造を行っている。なお、非特許文献1には、電気的に指向性を制御可能なアンテナが記載されている。
【0003】
【非特許文献1】後藤尚久、“図説・アンテナ”、社団法人 電子情報通信学会、平成13年6月1日、p.315
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載の電気的に指向性を制御可能なアンテナは、コストが高く、例えば、加入者無線システムの様に、低コストでシステム構築を行わなければならない場合に使用することはできない。しかしながら、サービスエリアの変更等により、設置後に、アンテナの特性を変更する必要が生じる場合もあり、その場合には、新たなアンテナ素子を設計、製造し、既存のアンテナ素子と交換しなければならず、変更に対して迅速に対応することができず、また、コストもかかることになる。
【0005】
したがって、本発明は、メインローブ幅、利得、サイドローブといったアンテナ特性を簡易に、かつ、低コストで制御する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における方法によれば、
アンテナ素子を通りアンテナ素子の指向方向と平行な軸を、アンテナ素子近傍において電波吸収体で取り囲むことでアンテナ特性を制御することを特徴とする。
【0007】
本発明の他の実施形態によれば、
前記電波吸収体の指向方向の長さにより、アンテナのメインローブ幅を制御することも好ましい。
【0008】
また、本発明の他の実施形態によれば、
アンテナ素子を覆うアンテナレドームに前記電波吸収体を装着することで、前記平行な軸を取り囲むことも好ましい。
【発明の効果】
【0009】
電波吸収体のみにより、簡易かつ低コストで、アンテナ特性を制御することが可能になる。特に、電波吸収体の長さの調整により、簡易にメインローブ幅が制御できる。更に、アンテナレドームが使用されている場合には、単にアンテナレドームに電波吸収体を装着することでメインローブ幅の制御を行うことが可能であり、電波吸収体を配置するための部材を必要とせず、更に、低コストに特性の制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の実施形態について、以下では図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
図1及び図2は、本発明によるアンテナ特性制御方法の説明に使用するアンテナを示す図であり、図1は、アンテナ設置状態において水平方向から、図2は、アンテナ設置状態において上方向から見た図である。
【0012】
図1及び2に示す様に、アンテナ素子3は、アンテナ基部2に取り付けられ、アンテナレドーム1は、アンテナ素子3を覆うように取り付けられている。なお、図1及び2において、符号4は、アンテナ素子3のアンテナ素子開口面である。
【0013】
図3は、本発明によるアンテナ特性制御方法を説明する図である。図3において、符号5は、電波吸収体であり、本発明は、アンテナ素子3近傍において、アンテナ素子3の指向方向と平行であり、アンテナ素子3を通る軸の周囲を電波吸収体5で取り囲むことでアンテナ特性の制御を行う。こここで、電波吸収体5による取り囲みは、アンテナレドーム1の内側又は外側に電波吸収体5を貼り付けることにより行う。なお、図3に示す電波吸収体5の貼り付け位置は、例示であり、アンテナ素子開口面4から、指向方向とは反対側の領域、つまり、アンテナ素子開口面4からアンテナ基部2への領域には必ずしも貼り付ける必要はない。
【0014】
図4は、本発明によるアンテナ特性制御方法による水平方向のアンテナパターンの変化を示す図である。本実験においては、アンテナ素子3として、アンテナ基部2からアンテナ素子開口面4までの長さが14cmであるセクトラルホーンアンテナを使用し、電波吸収体5を、アンテナ基部2から指向方向に渡り連続して貼り付けることにより行った。なお、装着長を、図3に示す様に、電波吸収体5の指向方向の長さと定義し、本実験においては、18cm、23cm、28cmの装着長と、電波吸収体5を貼り付けない場合の4つの値を計測した。なお、メインローブ幅は、相対利得−3dB以上である水平方向角度で定義される。
【0015】
図4に示す様に、電波吸収体5を貼り付けない場合には、メインローブ幅は、約±45°である。装着長18cmの場合、メインローブ幅は、電波吸収体5を貼り付けない場合と同じく約±45°であるが、サイドローブの相対利得は減少している。よって、サイドローブに入射又はサイドローブから発射する不要電波を抑圧することが可能となる。
【0016】
また、装着長23cmの場合、メインローブ幅が、約±25°となり、電波吸収体5を貼り付けない場合と比較し、メインローブ幅の両端が約20°小さくなっている。なお、メインローブ幅の一部で利得が約3dB向上しているが、これは、電波吸収体5の指向方向側の装着端から回りこんでくる回折波が主波と同相にて合成されているためと想定される。回折により、メインローブ幅において同相にて合成される部分と、逆相で合成される部分が発生し、アンテナパターンにリップルが生じているが、利得の落ち込む部分においても、電波吸収体5を貼り付けない場合の利得とそれほど差がないため、電波吸収体5の装着によるメインローブ特性の悪化はない。
【0017】
更に、装着長28cmの場合、メインローブ幅が、約±5°となり、電波吸収体5を貼り付けない場合と比較し、メインローブ幅の両端が約40°小さくなっている。また、メインローブ幅で利得が約3dB向上し、かつ、リップルの発生もない。つまり、電波吸収体5の長さにより、メインローブをシャープにし、かつ、アンテナ利得を向上させることが可能であることが分かる。
【0018】
なお、実験においては、アンテナ基部2から連続して電波吸収体5を貼り付けたが、装着長18cm、すなわち、アンテナ素子開口面4から指向方向に4cmだけ突き出た形においては、メインローブ幅にあまり影響が無かった様に、主に、メインローブ幅は、アンテナ素子開口面4から指向方向側の長さに影響を受けることが分かる。
【0019】
このように、電波吸収体5を、アンテナ素子3の開口面の様に電波を送受する部位を通り、指向方向と平行な軸を取り囲む様に、アンテナ素子3の近傍、好ましくは、開口面の様に電波を送受する部位から指向方向側に貼り付け、その指向方向の長さを調整することで、サイドローブ、メインローブ幅及び利得の制御、特に、メインローブ幅の制御が可能であり、簡易に、かつ、低価格で、アンテナ特性の変更を行うことができる。
【0020】
なお、アンテナレドーム1に電波吸収体5を貼り付ける実施形態で説明を行ったが、指向方向と平行な軸を取り囲む電波吸収体5の周囲が、少なくともアンテナ素子3を取り囲むことができる長さであれば、つまり、アンテナ素子3に比べて電波吸収体の周囲の長さが短いものでなければ、電波吸収体5を貼り付け又は配置する対象はアンテナレドーム1に限定されるものではない。更に、本発明によるアンテナ特性制御方法は、アンテナ形状、電波吸収体の種別や形状に係りなく適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】設置状態において、水平方向から見たアンテナを示す図である。
【図2】設置状態において、上平方向から見たアンテナを示す図である。
【図3】本発明によるアンテナ特性制御方法を説明する図である。
【図4】本発明によるアンテナ特性制御方法による水平方向のアンテナパターンの変化を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1 アンテナレドーム
2 アンテナ基部
3 アンテナ素子
4 アンテナ素子開口面
5 電波吸収体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ素子を通りアンテナ素子の指向方向と平行な軸を、アンテナ素子近傍において電波吸収体で取り囲むことで、
アンテナ特性を制御する方法。
【請求項2】
前記電波吸収体の指向方向の長さにより、
アンテナのメインローブ幅を制御する請求項1に記載の方法
【請求項3】
アンテナ素子を覆うアンテナレドームに前記電波吸収体を装着することで、前記平行な軸を取り囲む請求項1又は2に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−205787(P2008−205787A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39200(P2007−39200)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】