アンテナ用コイル部品
【課題】 真空吸着による面実装に対応出来て、アンテナ用コイル部材を構成する磁心を外力から保護して、その損傷を防ぎ、かつ、巻設によるコイルの断線が生じ難いアンテナ用コイル部材を提供する。
【解決手段】
収容ケースと磁心とコイルを備え、収容ケースの上面が開口し、前記開口から見える底部に前記磁心が固定され、前記開口側に現れる磁心は収容ケースの壁部よりも低く、もって収容ケースにコイルが前記磁心と非接触状態で巻設可能であり、前記収容ケースの開口側のコイル上に平坦面を形成する絶縁樹脂からなるコーティング部を設けた。
【解決手段】
収容ケースと磁心とコイルを備え、収容ケースの上面が開口し、前記開口から見える底部に前記磁心が固定され、前記開口側に現れる磁心は収容ケースの壁部よりも低く、もって収容ケースにコイルが前記磁心と非接触状態で巻設可能であり、前記収容ケースの開口側のコイル上に平坦面を形成する絶縁樹脂からなるコーティング部を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスポンダやキーレスエントリ、FM、AMラジオなどの小型の無線通信装置に用いられるアンテナ用コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信装置に用いられるアンテナ用コイル部品には、空芯コイル構造やコアやコイルボビン等のコイル支持体を有すものなど、種々のタイプのものが提案され、実用に供されている。
この様なアンテナ用コイル部品は大型化を防ぎながら電磁気特性を向上することが求められる。図14は特許文献1に記載されたアンテナ用コイル部品の斜視図であり、一部を破断面として示している。
【0003】
このアンテナ用コイル部品は、磁心として機能するコイル支持体111にコイル112が巻設されたコイル組立体101と、凹部を備える収納ケース102と、前記コイル支持体111の長さ方向の端部に設けられた金属端子131,132とを備える。金属端子131,132にはコイル112の両端が接続される。収納ケース102の開口側にコイル組立体101の一部が収容されて、前記端子部131,132が現れる。
【0004】
この様な構成により、特にはコイル支持体111を磁心として用いることで、アンテナ用コイル部品のインダクタンスが増加するとともに、Q値も増加することからアンテナ特性を向上させることが出来る。また、収納ケース102により、コイル組立体101のコイル112が、組立時等に損傷するのを保護し、更に、収納ケース102を真空吸着することができるので、回路基板等への実装において自動実装が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−111086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
収納ケース102とコイル組立体101は、収納ケース102の内面のほぼ全領域に接着剤によって固定される。コイル支持体111は両端に位置する鍔部211、212の間に巻線部213を備える構成で収納ケース102との接続面は平坦では無く、また前記巻線部213に巻回されたコイルの表面は凹凸でもある。収納ケース102とコイル組立体101は、接続面の状態は凹凸表面であって、接着剤の内部に気泡が残りやすい。更に収納ケース102はキャップ状に構成される点でも、接着時に巻き込んだ空気を排出し難い構造となっている。
【0007】
その対策として、接着剤流入阻止部(図示せず)を設けて、収納ケース102をコイル組立体101に被せて接着固定する際に、巻き込んだ空気を外部へ排気して、接着剤101の内部に気泡を滞留させず、よって接着剤の乾燥工程や、熱硬化処理などにおいて、気泡が熱膨張を起こし、収納ケース102を変形させるなどの問題を回避することが出来るとする。しかしながら、接着剤流入阻止部から離れた位置で巻き込まれた空気を排出するのは容易では無く、気泡の熱膨張の問題が残る。また接着剤流入阻止部を複数設けることは、収納ケース102の構造を複雑にし、また接着面積が減じられるための強度の低下を招くため好ましく無い。
【0008】
また収納ケース102をコイル組立体101に被せて接着固定する際に、気泡の熱膨張によって収納ケース102を変形させないまでも持ち上げてしまい、真空吸着を行なう面の平坦性が損なわれ、自動実装が出来なくなる場合もあった。
【0009】
また従来の構造では、回路基板に実装する為の金属端子131,132がコイル支持体111の両端の鍔部211,212に直接設けられている。金属端子131,132は形状が複雑であり、所定の接続強度を得ながらコイル支持体111と接合するのは難しく、多くの工数が必要となる。
さらにアンテナ用コイル部品が小型に構成されるに従って、コイル支持体111もまた小型、薄型化される。アンテナ用コイル部品が回路基板に直接実装されると、回路基板に生じた撓みや曲げによる外力の影響を受け易くなる。コイル支持体111をフェライトコア等の脆性材料で構成する場合には、割れたり、欠けたりして、磁気特性に影響を与える場合もあった。
また、この様に金属端子131,132をコイル支持体111へ直接設ける構造は、コイル支持体111に金属磁性材料を使用するには絶縁の問題がある。またその形態が薄帯を多層とした磁心であったり、粉をガラスや樹脂等の結着材で固めるなどして構成される磁心であったりする場合、フェライトコア等のセラミック材料と比べて強度が劣り、別途補強のための部材が必要となる。
【0010】
またコイル112はコイル支持体111に直接巻回される。コイル112は、ポリウレタン、ポリアミドイミド、エナメル等の絶縁被覆電線が用いられ、その線径は30μm〜200μmであるため、コイル支持体111の角部で被覆がはがれたり、断線したりする場合もあった。
【0011】
そこで本発明では、真空吸着による面実装に対応出来て、アンテナ用コイル部材を構成する磁心を外力から保護して、その損傷を防ぎ、かつ、巻設によるコイルの断線が生じ難いアンテナ用コイル部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、収容ケースと、磁心と、コイルを備えたアンテナ用コイル部品であって、
前記収容ケースは底部と、前記底部から立ち上がった壁部と、前記底部と対向する開口部と、長さ方向の両端部に端子電極を備えた鍔部とを備え、前記収容ケースの前記底部に前記磁心が固定され、前記コイルは前記収納ケースの両端部の鍔部間に巻設され、前記コイルの両端部は前記各端子電極に固着されてなり、前記収容ケースの開口部側に現れる前記磁心は前記壁部よりも低く、もって前記コイルが前記磁心と非接触状態で巻設され、
前記収容ケースの開口部側の前記コイル上に平坦面を形成する絶縁樹脂からなるコーティング部を設けたことを特徴とするアンテナ用コイル部品である。
【0013】
本発明においては、前記収容ケースの底部に凹部を備え、前記凹部に前記磁心が配置されて接着されるのが好ましい。前記凹部は磁心を配置する上での位置決めとして機能する。
【0014】
また前記収容ケースの長さ方向の両端が開口するのが好ましい。収容ケースの長さ方向の両端に壁を設け無いことで軽量化することが出来る。また鍔部には端子電極が一体形成される為、胴部の壁部よりも厚みをもって形成される。この為、収容ケースを構成する樹脂は、硬化時の体積変化量が大きくなり、収容ケースにひずみや変形を生じさせ易いが、両端が開口することでその影響を減じることができる。
【0015】
本発明においては、前記磁心としてソフトフェライト材料からなるコア、磁性金属磁性材料からなるコアの何れかを用いるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コイル上に設けられたコーティング部は平坦面を有するために、吸着時にコイルを傷つける事無く真空吸着による面実装が容易であり、磁心は収容ケースにより保護されるための、その損傷は低減され、かつ、磁心と非接触状態で、収容ケースにコイルを巻設することで、コイルの断線が生じ難いアンテナ用コイル部材を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材の外観斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材の平面図である。
【図3】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材の正面図である。
【図4】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材の底面図である。
【図5】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材の右側面図である。
【図6】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材のA−A断面図である。
【図7】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材に用いる収容ケースの外観斜視図である。
【図8】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材に用いる収容ケースの平面図である。
【図9】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材に用いる収容ケースの右側面図である。
【図10】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材に用いる収容ケースのA−A断面図である。
【図11】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材に用いる磁心(フェライトコア)の外観斜視図である。
【図12】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材のコーティング部形成前の外観斜視図である。
【図13】コーティング部の形成方法を説明する為の図である。
【図14】従来のアンテナ用コイル部材の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図を用いて本発明の構成を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材の外観斜視図である。図2は本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材の平面図である。図3は本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材の正面図である。図4は本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材の底面図である。図5は本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材の右側面図である。図6は本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材のA−A断面図である。
【0019】
本発明のアンテナ用コイル部材1は、絶縁樹脂で構成された収容ケース3と、磁心5と、コイル6を備え、収容ケース3の両端には端子電極4が設けられ、コイル上に絶縁樹脂からなるコーティング部7が形成されている。本実施態様では磁心5としてフェライトコアを用いている。
【0020】
図7は収容ケースの外観斜視図である。また図8は収容ケースの平面図である。
本発明のアンテナ用コイル部材に用いる収容ケース3は、底部50と、前記底部50から立ち上がり対向する2側面を構成する壁部60と、前記底部50と対向する開口部14とを備える。長さ方向(以下a方向と言う場合がある)の両端には壁が形成されて無く開口部17となり、前記開口部14は長さ方向の両端に至る。本実施態様では、収容ケース3の長さ方向と直交する方向(以下b方向と言う場合がある)で、その断面はどこでもアルファベットのU字状となる。
【0021】
収容ケース3は長さ方向の両端部に端子電極4を備えた鍔部13を備え、前記鍔部13間を胴部12とする。胴部12のb方向断面の領域は鍔部13より小さく、それらの間に現れる段差は、胴部12に巻設されるコイルの径、コーディング部7の厚みによるが、それらが鍔部13の断面領域と同じか、断面領域内に収まるように形成される。
端子電極4は、0.05mm〜0.2mm程度の薄いCuやリン青銅などの金属材料をベースに、前記金属材料の保護やはんだ濡れ性の向上のためにめっき処理されたものを用いる。本実施態様では、鍔部13の一方の壁部の上面から側面、底面、側面を経由して他方の壁部の上面に至る断面形状がアルファベットのC字状に形成されるが、一側面側と他側面側とで2つに分けるなど、任意の形状、数をとり得る。
端子電極4は収容ケース3にインサートモールド法等の周知の手法にて一体的に形成される。一体モールドによる形成は容易であるし、収容ケース3との接続強度も大きい。また端子電極4を接着剤等で収容ケース3に固着することも可能である。
図9は樹脂ケースの側面図である。磁心を収容する作業が容易な様に、鍔部13の底部側は対向する壁60の間隔が狭まる様にテーパー32が設けられる。
【0022】
図10は収容ケースのA−A断面図である。収容ケース3の底部50は、胴部12と各鍔部13とに亘り、段差をもって更に一段低く形成される。低く形成された凹部51に接着剤を塗布して開口部14側から磁心5を挿入して固定する。前記凹部51は磁心5の位置決めとして機能するとともに、上面側におけるコイル6との間隔30を確保するのに役立つ。なお位置決めに用いるのであれば、凹部51に代えて、磁心5の両端側に位置する様に収容ケース3の底部や壁部に突起を設けても良い。
また磁心5の表面は平坦であるので、接着の際の気泡の巻き込みを減じることが出来、また固定のための接着剤は少量であっても表面を濡らすことが出来るため、所望の接着強度を得ながら固着することが出来る。さらに接着剤と磁心5との線膨張係数の差による応力も少なくて済み、磁気特性に与える影響を小さく出来る。接着剤は柔軟性に富み、衝撃吸収可能なエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。
【0023】
収容ケース3を構成する樹脂材料は適宜選定し得るが、アンテナ用コイル部品1はリフロー等のはんだ付けに供せられる為、収容ケース3として強度は基より、耐熱性に優れることが必要であり、アンテナ用途ではkHz〜GHz帯の周波数で用いられるため、誘電特性も重要となる。得にMHz以上の高周波用途であれば、耐熱性ABS樹脂、エポキシ樹脂、ガラスエポキシ樹脂、アクリル樹脂を用いるのが好ましい。
【0024】
図11は磁心(フェライトコア)の外観斜視図である。磁心5はコイル6と接触しないため、比抵抗が大きいNi系フェライト等に限定されず、Mn系フェライトや鉄系やコバルト系のアモルファス合金、ナノ結晶合金、鉄アルミ珪素合金、鉄ニッケル合金などの金属磁性材料を用いることが出来る。形状は実装が容易な様に、薄厚で棒状であるのが好ましいが、小型の磁心を複数並べて長尺状に構成することも可能であり、任意の形状、数をとり得る。
なお、磁心5を複数の個片に分けて構成すれば、収容ケース3に曲げ等の外力が作用しても、磁心5への応力が分散されるため、割れ、欠け等の損傷を減じることが出来る。
【0025】
磁心5の端部がコイル6内に位置する場合、Q値が小さくなり、アンテナ性能を減じてしまう場合がある。磁心5の外形は当然収容ケース3に収まる寸法に形成されるが、コイル6の端部から磁心5の両端部が現れる様に、その長さは少なくとも胴部12よりも長く形成されるのが好ましい。なお、収容ケース3との接着固定時に位置ずれして、一方の端部がコイル6内に位置する場合もあり得るため、磁心5の長さは工程上のばらつきも考慮して設定される。
【0026】
図12は収容ケースにコイルを巻設した外観状態を示す斜視図である。磁心5が収容された収容ケース3の胴部12にコイル6を単層で密巻となる様に巻設した。コイル6を複数層で巻くと線間容量が増加しQ値が低下するため、単層で巻き回すのが好ましい。また真空吸着の為のコーティング部は樹脂が線間より漏れ出さない様に密巻とするのが好ましい。
図4はアンテナ用コイル部品の底面図である。コイル6の両端部6a、6bは収容ケース3の底面側で端子電極4の面上に延ばされて、溶接や熱圧着、あるいは超音波振動等の接続手段により接合される。熱圧着では、加熱されたヘッドでコイル6の端部6a、6bを加圧して端子電極4に拡散接合する。超音波振動では、接合のためのヘッド部の振動と加熱によって、コイル6の端部6a、6bを端子電極4に加圧接合する。
なお接続位置は底面に限定されず、必要に応じて端子電極4の面状であれば適宜選択することが出来る。
【0027】
図13(a)〜(e)は、コイル上のコーティング部の形成工程を説明するための図である。
図13(a)に示す様に、コーティング部が未形成のアンテナ用コイル部品(以下未コーティング部品と呼ぶ)を治具22に配置する。治具22にはアンテナ用コイル部品の移動を規制する窪みや突起が形成されるが、図中省略している。未コーティング部品の上面(収容ケース3の開口部13側)であって、収容ケース3のa方向中央部を含む胴部12の領域に密巻されたコイル6の面上に、ディスペンサ40によって適温に調整された液状コーティング部材7’が滴下される。液状コーティング部材の塗布はスクリーン印刷によって行なっても良い。液状コーティング部材は、半田耐熱性に優れ、低線膨張係数であり、接着強さに優れ、容易に液流れしない程度の粘度を備えるものである。
【0028】
次に図13(b)示すように、液状コーティング部材7’の滴下は、コイル6の面上において、ディスペンサ40を未コーティング部品の長さ方向の一端側から他端側へ一定方向に移動させることで、適量で均一な液状コーティング部材7’の滴下が行なわれる。
これによって、図13(c)に示すようにコイル6の面上には未硬化の液状コーティング部材7’が塗布された状態となる。この時、液状コーティング部材7’の厚みは、収容ケース3の鍔部13の上面よりも僅かに突き出る厚みであって、鍔部13の上面から液状コーティング部材7’の上面までの距離hは0.1〜1mmとするのが好ましい。距離hが0.1mm未満であると、硬化後のコーティング部7の上面における真空吸着可能な程度の平坦性が得られない。また距離hが1mm超であると、液状コーティング部材7’がコイル6の側面側に回り込んだり、磁心5側へこぼれたりする場合があり、外観上の問題がある。また、硬化後のコーティング部が収容ケース3の鍔部13よりもはみ出し、アンテナ用コイル部品の規格寸法を満足できない場合もある。
なお、ここで言う平坦性は、例えば面粗さ計でのうねり測定で評価することが出来る。例えば収容ケース3のa方向中央部など、真空吸着される部位にて、測定長を3mmとして計測した場合の面のうねりは 80μm以下(a方向、b方向ともに)であるのが好ましい。測定可能領域が小さく測定長が取れない場合は、測定可能な最大長さで評価する。なお測定長は真空吸着のためのノズル径によって適宜設定され得る。
【0029】
図13(d)に示す様に、未コーティング部品に塗布された液状コーティング部材7’に重ねて、厚みが80μm〜300μmの樹脂フィルム20を配置し、さらにその上から平面板21で加圧する。前記樹脂フィルム20は、硬化後の液状コーティング部材7’との剥離が容易であって、また良好な濡れ性が得られる様に、少なくとも液状コーティング部材7’と当接する面がシリコンコートにより離型処理されたPETフィルムを用いるのが好ましい。また平面板21は、柔軟性に富む樹脂部材が好ましく、厚みが数mm程度のシリコンゴム板を用いるのがより好ましい。
この状態で、液状コーティング部材7’をその標準硬化条件で硬化する。液状コーティング部材7’は、その流動性と加圧によりコイル上で流動する。液状コーティング部材7’を滴下時に空気を巻き込んだとしても、樹脂フィルム20が配置される上面側を除いて空気の排出は阻害されないため、コーティング部7内における気泡の残存を低減することが出来る。また気泡が残存したとしても小さく、熱膨張によってアンテナ用コイル部品に損傷を与えるものでは無い。
【0030】
図13(e)に示すように、液状コーティング部材7’を硬化処理した後、平面板21、樹脂フィルム20を取り除いた。これによりコーティング部7の上面が均一(平坦)な平面が形成された状態のアンテナ用コイル部品を得た。
【実施例】
【0031】
以下本発明に係るアンテナ用コイル部品について具体的に説明するが、その構成は図1〜6に示したアンテナ用コイル部品と同じであるので、重複する説明は省略する。本発明は周波数88MHz〜108MHzに対応するものである。
【0032】
アンテナ用コイル部品1は、収容ケース3と、磁心5と、コイル6と、前記コイル上に平坦面を形成するコーティング部7とを備える。
ガラスエポキシ樹脂を用いて、リン青銅からなる端子電極4をインサート成形してなる収容ケース3は、全長が10mmで胴部12の長さが7mmであり、両端の鍔部13の端子電極4を含む幅が2mm、高さが1.3mmである。その上面は幅1mm、深さ0.7mmで開口している。収容ケース3の開口部14側から見た底部50には更に長さ8.5mで深さ0.1mmの凹部51が形成されている。端子電極4はリン青銅の表面にNiめっき、Snめっきが施されている。
【0033】
収容ケース3の前記凹部51には磁心5として焼結フェライトコアが固着される。固着には半田耐熱性に優れたエポキシ樹脂系接着剤を用い、凹部51に塗布して、そこに焼結フェライトコアを配置して、120℃×30分で硬化処理して固着した。
焼結フェライトコアは酸化第二鉄(Fe2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニッケル(NiO)及び酸化銅(CuO)を主成分とし、副成分として酸化ビスマス(Bi2O3)、酸化ケイ素(SiO2)とし、仮焼粉を粉末成形し、焼結して得られるものであり、初透磁率μiが10(周波数100kHz)の磁気特性を有するものである。
【0034】
焼結フェライトコアを固着した収容ケース3の胴部12に、線径が80μmのエナメル線を60ターン巻回して密巻きしたコイル6とし、その両端部を収容ケース3下面側の端子電極4に熱圧着した。
【0035】
更に、収容ケース3の開口部14側のコイル面上に液状コーティング部材を滴下し、図13(a)〜(e)で示した手順で、コイル6上面のほぼ全面にコーティング部7を形成して本発明のアンテナ用コイル部品を得た。 コーティング部7の厚みは、約0.2mmであり、鍔部13と上面と略同じ高さと成っている。
液状コーティング部材として、一液性加熱硬化型エポキシ樹脂を用いた。その特性は、線膨張係数が3.5×10−5/℃であり、粘度が65Pa・sで、硬化温度は100℃である。効果条件は120℃×20分とした。
【0036】
得られたアンテナ用コイル部品1のコーティング部7のうねりについて、評価数を100個として評価した。測定長はa方向で3mm、b方向で1.5mmである。いずれの試料もうねりが2方向で10μm以下であった。
【0037】
次いで、うねりを評価した100個を含む試料1000個を、エンボステープでチップマウンター(自動実装機)に供給し、自動実装機の吸着ノズルを平坦面に形成されたコーティング部7にて吸着しクリーム半田が実装部に塗布された回路基板上に移送配置した。実装において、チップマウンターでの自動吸着で失敗する事は無く、回路基板への実装も適正な位置範囲で行われ、実装ずれ等の問題も無かった。
【0038】
アンテナ用コイル部品1を実装した回路基板を最大255℃×10分の温度条件でリフロー半田付けを行った。半田付け後のアンテナ用コイル部品の外観について拡大鏡を用いて確認したが、コーティング部7に気泡の発生は無く、収容ケース3の変形や焼結フェライトコア5の割れや、欠け、コイル6の断線等の発生も無かった。
【0039】
テストボードに実装されたアンテナ用コイル部品1を100個使用し、受信感度を評価した。何れのアンテナ用コイル部品1も周波数88MHz〜108MHzにおいて受信感度は高く良好な性能を示した。
【符号の説明】
【0040】
1 アンテナ用コイル部品
3 収容ケース
4 端子電極
5 磁心
6 コイル
7 コーティング部
12 胴部
13 鍔部
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスポンダやキーレスエントリ、FM、AMラジオなどの小型の無線通信装置に用いられるアンテナ用コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信装置に用いられるアンテナ用コイル部品には、空芯コイル構造やコアやコイルボビン等のコイル支持体を有すものなど、種々のタイプのものが提案され、実用に供されている。
この様なアンテナ用コイル部品は大型化を防ぎながら電磁気特性を向上することが求められる。図14は特許文献1に記載されたアンテナ用コイル部品の斜視図であり、一部を破断面として示している。
【0003】
このアンテナ用コイル部品は、磁心として機能するコイル支持体111にコイル112が巻設されたコイル組立体101と、凹部を備える収納ケース102と、前記コイル支持体111の長さ方向の端部に設けられた金属端子131,132とを備える。金属端子131,132にはコイル112の両端が接続される。収納ケース102の開口側にコイル組立体101の一部が収容されて、前記端子部131,132が現れる。
【0004】
この様な構成により、特にはコイル支持体111を磁心として用いることで、アンテナ用コイル部品のインダクタンスが増加するとともに、Q値も増加することからアンテナ特性を向上させることが出来る。また、収納ケース102により、コイル組立体101のコイル112が、組立時等に損傷するのを保護し、更に、収納ケース102を真空吸着することができるので、回路基板等への実装において自動実装が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−111086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
収納ケース102とコイル組立体101は、収納ケース102の内面のほぼ全領域に接着剤によって固定される。コイル支持体111は両端に位置する鍔部211、212の間に巻線部213を備える構成で収納ケース102との接続面は平坦では無く、また前記巻線部213に巻回されたコイルの表面は凹凸でもある。収納ケース102とコイル組立体101は、接続面の状態は凹凸表面であって、接着剤の内部に気泡が残りやすい。更に収納ケース102はキャップ状に構成される点でも、接着時に巻き込んだ空気を排出し難い構造となっている。
【0007】
その対策として、接着剤流入阻止部(図示せず)を設けて、収納ケース102をコイル組立体101に被せて接着固定する際に、巻き込んだ空気を外部へ排気して、接着剤101の内部に気泡を滞留させず、よって接着剤の乾燥工程や、熱硬化処理などにおいて、気泡が熱膨張を起こし、収納ケース102を変形させるなどの問題を回避することが出来るとする。しかしながら、接着剤流入阻止部から離れた位置で巻き込まれた空気を排出するのは容易では無く、気泡の熱膨張の問題が残る。また接着剤流入阻止部を複数設けることは、収納ケース102の構造を複雑にし、また接着面積が減じられるための強度の低下を招くため好ましく無い。
【0008】
また収納ケース102をコイル組立体101に被せて接着固定する際に、気泡の熱膨張によって収納ケース102を変形させないまでも持ち上げてしまい、真空吸着を行なう面の平坦性が損なわれ、自動実装が出来なくなる場合もあった。
【0009】
また従来の構造では、回路基板に実装する為の金属端子131,132がコイル支持体111の両端の鍔部211,212に直接設けられている。金属端子131,132は形状が複雑であり、所定の接続強度を得ながらコイル支持体111と接合するのは難しく、多くの工数が必要となる。
さらにアンテナ用コイル部品が小型に構成されるに従って、コイル支持体111もまた小型、薄型化される。アンテナ用コイル部品が回路基板に直接実装されると、回路基板に生じた撓みや曲げによる外力の影響を受け易くなる。コイル支持体111をフェライトコア等の脆性材料で構成する場合には、割れたり、欠けたりして、磁気特性に影響を与える場合もあった。
また、この様に金属端子131,132をコイル支持体111へ直接設ける構造は、コイル支持体111に金属磁性材料を使用するには絶縁の問題がある。またその形態が薄帯を多層とした磁心であったり、粉をガラスや樹脂等の結着材で固めるなどして構成される磁心であったりする場合、フェライトコア等のセラミック材料と比べて強度が劣り、別途補強のための部材が必要となる。
【0010】
またコイル112はコイル支持体111に直接巻回される。コイル112は、ポリウレタン、ポリアミドイミド、エナメル等の絶縁被覆電線が用いられ、その線径は30μm〜200μmであるため、コイル支持体111の角部で被覆がはがれたり、断線したりする場合もあった。
【0011】
そこで本発明では、真空吸着による面実装に対応出来て、アンテナ用コイル部材を構成する磁心を外力から保護して、その損傷を防ぎ、かつ、巻設によるコイルの断線が生じ難いアンテナ用コイル部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、収容ケースと、磁心と、コイルを備えたアンテナ用コイル部品であって、
前記収容ケースは底部と、前記底部から立ち上がった壁部と、前記底部と対向する開口部と、長さ方向の両端部に端子電極を備えた鍔部とを備え、前記収容ケースの前記底部に前記磁心が固定され、前記コイルは前記収納ケースの両端部の鍔部間に巻設され、前記コイルの両端部は前記各端子電極に固着されてなり、前記収容ケースの開口部側に現れる前記磁心は前記壁部よりも低く、もって前記コイルが前記磁心と非接触状態で巻設され、
前記収容ケースの開口部側の前記コイル上に平坦面を形成する絶縁樹脂からなるコーティング部を設けたことを特徴とするアンテナ用コイル部品である。
【0013】
本発明においては、前記収容ケースの底部に凹部を備え、前記凹部に前記磁心が配置されて接着されるのが好ましい。前記凹部は磁心を配置する上での位置決めとして機能する。
【0014】
また前記収容ケースの長さ方向の両端が開口するのが好ましい。収容ケースの長さ方向の両端に壁を設け無いことで軽量化することが出来る。また鍔部には端子電極が一体形成される為、胴部の壁部よりも厚みをもって形成される。この為、収容ケースを構成する樹脂は、硬化時の体積変化量が大きくなり、収容ケースにひずみや変形を生じさせ易いが、両端が開口することでその影響を減じることができる。
【0015】
本発明においては、前記磁心としてソフトフェライト材料からなるコア、磁性金属磁性材料からなるコアの何れかを用いるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、コイル上に設けられたコーティング部は平坦面を有するために、吸着時にコイルを傷つける事無く真空吸着による面実装が容易であり、磁心は収容ケースにより保護されるための、その損傷は低減され、かつ、磁心と非接触状態で、収容ケースにコイルを巻設することで、コイルの断線が生じ難いアンテナ用コイル部材を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材の外観斜視図である。
【図2】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材の平面図である。
【図3】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材の正面図である。
【図4】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材の底面図である。
【図5】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材の右側面図である。
【図6】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材のA−A断面図である。
【図7】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材に用いる収容ケースの外観斜視図である。
【図8】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材に用いる収容ケースの平面図である。
【図9】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材に用いる収容ケースの右側面図である。
【図10】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材に用いる収容ケースのA−A断面図である。
【図11】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材に用いる磁心(フェライトコア)の外観斜視図である。
【図12】本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材のコーティング部形成前の外観斜視図である。
【図13】コーティング部の形成方法を説明する為の図である。
【図14】従来のアンテナ用コイル部材の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図を用いて本発明の構成を詳細に説明する。
図1は本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材の外観斜視図である。図2は本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材の平面図である。図3は本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材の正面図である。図4は本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材の底面図である。図5は本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材の右側面図である。図6は本発明の一実施例に係るアンテナ用コイル部材のA−A断面図である。
【0019】
本発明のアンテナ用コイル部材1は、絶縁樹脂で構成された収容ケース3と、磁心5と、コイル6を備え、収容ケース3の両端には端子電極4が設けられ、コイル上に絶縁樹脂からなるコーティング部7が形成されている。本実施態様では磁心5としてフェライトコアを用いている。
【0020】
図7は収容ケースの外観斜視図である。また図8は収容ケースの平面図である。
本発明のアンテナ用コイル部材に用いる収容ケース3は、底部50と、前記底部50から立ち上がり対向する2側面を構成する壁部60と、前記底部50と対向する開口部14とを備える。長さ方向(以下a方向と言う場合がある)の両端には壁が形成されて無く開口部17となり、前記開口部14は長さ方向の両端に至る。本実施態様では、収容ケース3の長さ方向と直交する方向(以下b方向と言う場合がある)で、その断面はどこでもアルファベットのU字状となる。
【0021】
収容ケース3は長さ方向の両端部に端子電極4を備えた鍔部13を備え、前記鍔部13間を胴部12とする。胴部12のb方向断面の領域は鍔部13より小さく、それらの間に現れる段差は、胴部12に巻設されるコイルの径、コーディング部7の厚みによるが、それらが鍔部13の断面領域と同じか、断面領域内に収まるように形成される。
端子電極4は、0.05mm〜0.2mm程度の薄いCuやリン青銅などの金属材料をベースに、前記金属材料の保護やはんだ濡れ性の向上のためにめっき処理されたものを用いる。本実施態様では、鍔部13の一方の壁部の上面から側面、底面、側面を経由して他方の壁部の上面に至る断面形状がアルファベットのC字状に形成されるが、一側面側と他側面側とで2つに分けるなど、任意の形状、数をとり得る。
端子電極4は収容ケース3にインサートモールド法等の周知の手法にて一体的に形成される。一体モールドによる形成は容易であるし、収容ケース3との接続強度も大きい。また端子電極4を接着剤等で収容ケース3に固着することも可能である。
図9は樹脂ケースの側面図である。磁心を収容する作業が容易な様に、鍔部13の底部側は対向する壁60の間隔が狭まる様にテーパー32が設けられる。
【0022】
図10は収容ケースのA−A断面図である。収容ケース3の底部50は、胴部12と各鍔部13とに亘り、段差をもって更に一段低く形成される。低く形成された凹部51に接着剤を塗布して開口部14側から磁心5を挿入して固定する。前記凹部51は磁心5の位置決めとして機能するとともに、上面側におけるコイル6との間隔30を確保するのに役立つ。なお位置決めに用いるのであれば、凹部51に代えて、磁心5の両端側に位置する様に収容ケース3の底部や壁部に突起を設けても良い。
また磁心5の表面は平坦であるので、接着の際の気泡の巻き込みを減じることが出来、また固定のための接着剤は少量であっても表面を濡らすことが出来るため、所望の接着強度を得ながら固着することが出来る。さらに接着剤と磁心5との線膨張係数の差による応力も少なくて済み、磁気特性に与える影響を小さく出来る。接着剤は柔軟性に富み、衝撃吸収可能なエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。
【0023】
収容ケース3を構成する樹脂材料は適宜選定し得るが、アンテナ用コイル部品1はリフロー等のはんだ付けに供せられる為、収容ケース3として強度は基より、耐熱性に優れることが必要であり、アンテナ用途ではkHz〜GHz帯の周波数で用いられるため、誘電特性も重要となる。得にMHz以上の高周波用途であれば、耐熱性ABS樹脂、エポキシ樹脂、ガラスエポキシ樹脂、アクリル樹脂を用いるのが好ましい。
【0024】
図11は磁心(フェライトコア)の外観斜視図である。磁心5はコイル6と接触しないため、比抵抗が大きいNi系フェライト等に限定されず、Mn系フェライトや鉄系やコバルト系のアモルファス合金、ナノ結晶合金、鉄アルミ珪素合金、鉄ニッケル合金などの金属磁性材料を用いることが出来る。形状は実装が容易な様に、薄厚で棒状であるのが好ましいが、小型の磁心を複数並べて長尺状に構成することも可能であり、任意の形状、数をとり得る。
なお、磁心5を複数の個片に分けて構成すれば、収容ケース3に曲げ等の外力が作用しても、磁心5への応力が分散されるため、割れ、欠け等の損傷を減じることが出来る。
【0025】
磁心5の端部がコイル6内に位置する場合、Q値が小さくなり、アンテナ性能を減じてしまう場合がある。磁心5の外形は当然収容ケース3に収まる寸法に形成されるが、コイル6の端部から磁心5の両端部が現れる様に、その長さは少なくとも胴部12よりも長く形成されるのが好ましい。なお、収容ケース3との接着固定時に位置ずれして、一方の端部がコイル6内に位置する場合もあり得るため、磁心5の長さは工程上のばらつきも考慮して設定される。
【0026】
図12は収容ケースにコイルを巻設した外観状態を示す斜視図である。磁心5が収容された収容ケース3の胴部12にコイル6を単層で密巻となる様に巻設した。コイル6を複数層で巻くと線間容量が増加しQ値が低下するため、単層で巻き回すのが好ましい。また真空吸着の為のコーティング部は樹脂が線間より漏れ出さない様に密巻とするのが好ましい。
図4はアンテナ用コイル部品の底面図である。コイル6の両端部6a、6bは収容ケース3の底面側で端子電極4の面上に延ばされて、溶接や熱圧着、あるいは超音波振動等の接続手段により接合される。熱圧着では、加熱されたヘッドでコイル6の端部6a、6bを加圧して端子電極4に拡散接合する。超音波振動では、接合のためのヘッド部の振動と加熱によって、コイル6の端部6a、6bを端子電極4に加圧接合する。
なお接続位置は底面に限定されず、必要に応じて端子電極4の面状であれば適宜選択することが出来る。
【0027】
図13(a)〜(e)は、コイル上のコーティング部の形成工程を説明するための図である。
図13(a)に示す様に、コーティング部が未形成のアンテナ用コイル部品(以下未コーティング部品と呼ぶ)を治具22に配置する。治具22にはアンテナ用コイル部品の移動を規制する窪みや突起が形成されるが、図中省略している。未コーティング部品の上面(収容ケース3の開口部13側)であって、収容ケース3のa方向中央部を含む胴部12の領域に密巻されたコイル6の面上に、ディスペンサ40によって適温に調整された液状コーティング部材7’が滴下される。液状コーティング部材の塗布はスクリーン印刷によって行なっても良い。液状コーティング部材は、半田耐熱性に優れ、低線膨張係数であり、接着強さに優れ、容易に液流れしない程度の粘度を備えるものである。
【0028】
次に図13(b)示すように、液状コーティング部材7’の滴下は、コイル6の面上において、ディスペンサ40を未コーティング部品の長さ方向の一端側から他端側へ一定方向に移動させることで、適量で均一な液状コーティング部材7’の滴下が行なわれる。
これによって、図13(c)に示すようにコイル6の面上には未硬化の液状コーティング部材7’が塗布された状態となる。この時、液状コーティング部材7’の厚みは、収容ケース3の鍔部13の上面よりも僅かに突き出る厚みであって、鍔部13の上面から液状コーティング部材7’の上面までの距離hは0.1〜1mmとするのが好ましい。距離hが0.1mm未満であると、硬化後のコーティング部7の上面における真空吸着可能な程度の平坦性が得られない。また距離hが1mm超であると、液状コーティング部材7’がコイル6の側面側に回り込んだり、磁心5側へこぼれたりする場合があり、外観上の問題がある。また、硬化後のコーティング部が収容ケース3の鍔部13よりもはみ出し、アンテナ用コイル部品の規格寸法を満足できない場合もある。
なお、ここで言う平坦性は、例えば面粗さ計でのうねり測定で評価することが出来る。例えば収容ケース3のa方向中央部など、真空吸着される部位にて、測定長を3mmとして計測した場合の面のうねりは 80μm以下(a方向、b方向ともに)であるのが好ましい。測定可能領域が小さく測定長が取れない場合は、測定可能な最大長さで評価する。なお測定長は真空吸着のためのノズル径によって適宜設定され得る。
【0029】
図13(d)に示す様に、未コーティング部品に塗布された液状コーティング部材7’に重ねて、厚みが80μm〜300μmの樹脂フィルム20を配置し、さらにその上から平面板21で加圧する。前記樹脂フィルム20は、硬化後の液状コーティング部材7’との剥離が容易であって、また良好な濡れ性が得られる様に、少なくとも液状コーティング部材7’と当接する面がシリコンコートにより離型処理されたPETフィルムを用いるのが好ましい。また平面板21は、柔軟性に富む樹脂部材が好ましく、厚みが数mm程度のシリコンゴム板を用いるのがより好ましい。
この状態で、液状コーティング部材7’をその標準硬化条件で硬化する。液状コーティング部材7’は、その流動性と加圧によりコイル上で流動する。液状コーティング部材7’を滴下時に空気を巻き込んだとしても、樹脂フィルム20が配置される上面側を除いて空気の排出は阻害されないため、コーティング部7内における気泡の残存を低減することが出来る。また気泡が残存したとしても小さく、熱膨張によってアンテナ用コイル部品に損傷を与えるものでは無い。
【0030】
図13(e)に示すように、液状コーティング部材7’を硬化処理した後、平面板21、樹脂フィルム20を取り除いた。これによりコーティング部7の上面が均一(平坦)な平面が形成された状態のアンテナ用コイル部品を得た。
【実施例】
【0031】
以下本発明に係るアンテナ用コイル部品について具体的に説明するが、その構成は図1〜6に示したアンテナ用コイル部品と同じであるので、重複する説明は省略する。本発明は周波数88MHz〜108MHzに対応するものである。
【0032】
アンテナ用コイル部品1は、収容ケース3と、磁心5と、コイル6と、前記コイル上に平坦面を形成するコーティング部7とを備える。
ガラスエポキシ樹脂を用いて、リン青銅からなる端子電極4をインサート成形してなる収容ケース3は、全長が10mmで胴部12の長さが7mmであり、両端の鍔部13の端子電極4を含む幅が2mm、高さが1.3mmである。その上面は幅1mm、深さ0.7mmで開口している。収容ケース3の開口部14側から見た底部50には更に長さ8.5mで深さ0.1mmの凹部51が形成されている。端子電極4はリン青銅の表面にNiめっき、Snめっきが施されている。
【0033】
収容ケース3の前記凹部51には磁心5として焼結フェライトコアが固着される。固着には半田耐熱性に優れたエポキシ樹脂系接着剤を用い、凹部51に塗布して、そこに焼結フェライトコアを配置して、120℃×30分で硬化処理して固着した。
焼結フェライトコアは酸化第二鉄(Fe2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニッケル(NiO)及び酸化銅(CuO)を主成分とし、副成分として酸化ビスマス(Bi2O3)、酸化ケイ素(SiO2)とし、仮焼粉を粉末成形し、焼結して得られるものであり、初透磁率μiが10(周波数100kHz)の磁気特性を有するものである。
【0034】
焼結フェライトコアを固着した収容ケース3の胴部12に、線径が80μmのエナメル線を60ターン巻回して密巻きしたコイル6とし、その両端部を収容ケース3下面側の端子電極4に熱圧着した。
【0035】
更に、収容ケース3の開口部14側のコイル面上に液状コーティング部材を滴下し、図13(a)〜(e)で示した手順で、コイル6上面のほぼ全面にコーティング部7を形成して本発明のアンテナ用コイル部品を得た。 コーティング部7の厚みは、約0.2mmであり、鍔部13と上面と略同じ高さと成っている。
液状コーティング部材として、一液性加熱硬化型エポキシ樹脂を用いた。その特性は、線膨張係数が3.5×10−5/℃であり、粘度が65Pa・sで、硬化温度は100℃である。効果条件は120℃×20分とした。
【0036】
得られたアンテナ用コイル部品1のコーティング部7のうねりについて、評価数を100個として評価した。測定長はa方向で3mm、b方向で1.5mmである。いずれの試料もうねりが2方向で10μm以下であった。
【0037】
次いで、うねりを評価した100個を含む試料1000個を、エンボステープでチップマウンター(自動実装機)に供給し、自動実装機の吸着ノズルを平坦面に形成されたコーティング部7にて吸着しクリーム半田が実装部に塗布された回路基板上に移送配置した。実装において、チップマウンターでの自動吸着で失敗する事は無く、回路基板への実装も適正な位置範囲で行われ、実装ずれ等の問題も無かった。
【0038】
アンテナ用コイル部品1を実装した回路基板を最大255℃×10分の温度条件でリフロー半田付けを行った。半田付け後のアンテナ用コイル部品の外観について拡大鏡を用いて確認したが、コーティング部7に気泡の発生は無く、収容ケース3の変形や焼結フェライトコア5の割れや、欠け、コイル6の断線等の発生も無かった。
【0039】
テストボードに実装されたアンテナ用コイル部品1を100個使用し、受信感度を評価した。何れのアンテナ用コイル部品1も周波数88MHz〜108MHzにおいて受信感度は高く良好な性能を示した。
【符号の説明】
【0040】
1 アンテナ用コイル部品
3 収容ケース
4 端子電極
5 磁心
6 コイル
7 コーティング部
12 胴部
13 鍔部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容ケースと、磁心と、コイルを備えたアンテナ用コイル部品であって、
前記収容ケースは底部と、前記底部から立ち上がった壁部と、前記底部と対向する開口部と、長さ方向の両端部に端子電極を備えた鍔部とを備え、
前記収容ケースの前記底部に前記磁心が固定され、
前記コイルは前記収納ケースの両端部の鍔部間に巻設され、前記コイルの両端部は前記各端子電極に固着されてなり、
前記収容ケースの開口部側に現れる前記磁心は前記壁部よりも低く、もって前記コイルが前記磁心と非接触状態で巻設され、
前記収容ケースの開口部側の前記コイル上に平坦面を形成する絶縁樹脂からなるコーティング部を設けたことを特徴とするアンテナ用コイル部品。
【請求項2】
前記収容ケースの底部に凹部を備え、前記凹部に前記磁心が配置されて接着されることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ用コイル部品。
【請求項3】
前記収容ケースの長さ方向の両端が開口することを特徴とする請求項1又は2に記載のアンテナ用コイル部品。
【請求項4】
前記磁心がソフトフェライト材料からなるコア、磁性金属磁性材料からなるコアの何れかであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のアンテナ用コイル部品。
【請求項1】
収容ケースと、磁心と、コイルを備えたアンテナ用コイル部品であって、
前記収容ケースは底部と、前記底部から立ち上がった壁部と、前記底部と対向する開口部と、長さ方向の両端部に端子電極を備えた鍔部とを備え、
前記収容ケースの前記底部に前記磁心が固定され、
前記コイルは前記収納ケースの両端部の鍔部間に巻設され、前記コイルの両端部は前記各端子電極に固着されてなり、
前記収容ケースの開口部側に現れる前記磁心は前記壁部よりも低く、もって前記コイルが前記磁心と非接触状態で巻設され、
前記収容ケースの開口部側の前記コイル上に平坦面を形成する絶縁樹脂からなるコーティング部を設けたことを特徴とするアンテナ用コイル部品。
【請求項2】
前記収容ケースの底部に凹部を備え、前記凹部に前記磁心が配置されて接着されることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ用コイル部品。
【請求項3】
前記収容ケースの長さ方向の両端が開口することを特徴とする請求項1又は2に記載のアンテナ用コイル部品。
【請求項4】
前記磁心がソフトフェライト材料からなるコア、磁性金属磁性材料からなるコアの何れかであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のアンテナ用コイル部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−84652(P2013−84652A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221673(P2011−221673)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【Fターム(参考)】
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