説明

アンテナ装置及び角度調整機構

【課題】アンテナの方位角方向の調整を容易に行う。
【解決手段】アンテナ装置は、アンテナ2と、アンテナ2の方位角を調整する方位角調整ボルト5と、アンテナ2が固定されると共に、基台7に対して所定の位置Xを中心としてアンテナ2の方位角方向に、方位角調整ボルト5のねじ送り作用によって、又はねじ送り作用を解除した状態で回転可能に配設されるアンテナ取付金具3と、基台7に配設され、方位角調整ボルト5を、方位角調整ボルト5のねじ送り作用によってアンテナ取付金具3を回転させる第1の状態と、方位角調整ボルト5のねじ送り作用を解除した状態でアンテナ取付金具3を回転させる第2の状態との2つの状態を切換可能に支持する移動制御片44及び45が嵌合された支持金具4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナを固定するアンテナ装置及び角度調整機構に関し、特に、アンテナにおける方位角方向の調整が可能な装置及び機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アンテナを機器等の筐体に取り付ける場合には、アンテナを固定するだけでなく、アンテナが適切な方向を向くように向きを調整する必要があるため、アンテナの方向調整機構をアンテナ取付金具に設ける必要がある。
【0003】
この種のアンテナ取付金具を用いたアンテナ装置として、例えば、特許文献1には、図16に示すように、アンテナ101の方位角を調整する際の回転中心となる支柱102を挟んで対向して配設されると共に、支柱102の高さ方向の上下に分割され、各々が支柱102の高さ方向及び支柱回り方向に調整自在に固定される上クランプ103、104及び下クランプ105、106からなる本体固定部107と、上クランプ103の長孔108と下クランプ105のねじ孔109の間を螺動するねじ送り動作により、上クランプ103、104を押し引きする方位角調整ボルト110とを備えたアンテナ装置100が記載されている。
【0004】
このようなアンテナ装置100においては、上クランプ103、104及び下クランプ105、106の各々で支柱102を締め付けることで、上下のクランプ103〜106を支柱102に固定し、アンテナ101を強固に固定する。アンテナ101の方位角を調整する場合には、上クランプ103、104の締め付けを緩めた上で、方位角調整ボルト110のねじ送り動作により上クランプ103、104を支柱102の軸回りに回転させ、アンテナ101を方位角方向に回転させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−313204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたアンテナ装置では、アンテナ101を支柱102に固定しつつ方位角方向の調整を行うために、4つの支持部材である上クランプ103、104及び下クランプ105、106と、対向するクランプを締結するための締結部材とが必要となるため、アンテナ装置が高価になると共に構成が複雑化するという問題があった。
【0007】
また、このアンテナ装置では、ねじ送り動作によってアンテナの方向調整を行うが、アンテナの方向を大きく変えたい場合でも、所望の方向までねじ送り動作を行わなければならないため、作業性が悪いという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、簡素な構造で、アンテナにおける方位角方向の調整を容易に行うことが可能なアンテナ装置及び角度調整機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、アンテナと、該アンテナの方位角方向への角度を調整する角度調整機構とからなるアンテナ装置であって、前記角度調整機構は、前記アンテナの方位角を調整する方位角調整ボルトと、前記アンテナが固定されると共に、基台に対して所定の位置を中心として前記アンテナの方位角方向に、前記方位角調整ボルトのねじ送り作用によって、又は該ねじ送り作用を解除した状態で回転可能に配設されるアンテナ取付部と、前記基台に配設され、前記方位角調整ボルトを、該方位角調整ボルトのねじ送り作用によって前記アンテナ取付部を回転させる第1の状態と、該方位角調整ボルトのねじ送り作用を解除した状態で前記アンテナ取付部を回転させる第2の状態との2つの状態を切換可能に支持する支持部とを備えることを特徴とする。
【0010】
そして、本発明によれば、アンテナ取付部が方位角調整ボルトのねじ送り作用によって、又はねじ送り作用を解除した状態で回転すると共に、方位角調整ボルトが支持部により、ねじ送り作用によってアンテナ取付部を回転させる第1の状態と、ねじ送り作用を解除した状態でアンテナ取付部を回転させる第2の状態との2つの状態を切換可能に支持されるため、第1の状態においては、方位角調整ボルトのねじ送り作用によってアンテナの方位角方向への微調整が可能となり、第2の状態においては、ねじ送り作用によらない粗調整が可能となる。
【0011】
上記アンテナ装置において、前記方位角調整ボルトは、雄ねじ部を備え、前記支持部は、前記雄ねじ部に対応する半円筒状の雌ねじ部を有する第1の移動制御片と、半円筒状の第1の溝部を有する第2の移動制御片とからなり、前記第1及び第2の移動制御片を互いに対向するように組み合わせた際に、前記雌ねじ部及び前記第1の溝部により貫通孔が形成される一対の移動制御片を備え、前記第1の状態を、前記貫通孔に対して前記雄ねじ部を螺合させた状態とし、前記第2の状態を、前記第1の状態に対して前記第1の移動制御片を前記雄ねじ部から離間させた状態とすることができる。
【0012】
上記アンテナ装置において、前記支持部は、前記第1の移動制御片を前記第2の移動制御片の方向へ付勢する付勢手段をさらに備えることができる。これにより、第1の状態において、方位角調整ボルトの雄ねじ部と第1の移動制御片の雌ねじ部とを確実に螺合させることができる。
【0013】
上記アンテナ装置において、前記方位角調整ボルトは、周縁に沿って形成された円形状の第2の溝部をさらに備え、前記アンテナ取付部は、内径が前記第2の溝部の外径より小さい半円形状の切欠部を備え、前記第2の溝部と前記切欠部とが嵌合されることにより、前記方位角調整ボルトを回転可能とすることができる。これにより、方位角調整ボルトが移動した場合に、第2の溝部によって切欠部が押されるため、方位角調整ボルトの移動に連動してアンテナ取付金具を回転させることができる。
【0014】
上記アンテナ装置において、前記第2の溝部を、前記切欠部の厚みよりも広い幅に形成することができる。これにより、第2の溝部と切欠部との間にクリアランスが設定されるため、クリアランスの範囲内でアンテナ取付金具を回転させることができる。
【0015】
上記アンテナ装置において、前記アンテナ取付部を、固定された前記アンテナの開口方向の延長上の所定の位置を中心として回転可能に配設することができる。これにより、アンテナ取付金具が回転した場合に、アンテナの開口面が回転前の位置から大きくずれることを防ぐことができる。
【0016】
上記アンテナ装置において、前記支持部を、前記基台に対して所定の位置を中心として回転可能に配設することができる。これにより、アンテナ取付金具の回転に追従して回転しようとする方位角調整ボルトによる力に応じて支持部が回転し、方位角調整ボルトの軸方向をアンテナ取付金具の回転方向に調整することができる。
【0017】
上記アンテナ装置において、前記角度調整機構は、前記アンテナの調整角度を確認可能な角度表示部をさらに備えることができる。これにより、アンテナ取付金具を回転させた場合のアンテナの方位角方向を容易に確認することができる。
【0018】
また、本発明は、アンテナの方位角方向への角度を調整する角度調整機構であって、前記アンテナの方位角を調整する方位角調整ボルトと、前記アンテナが固定されると共に、基台に対して所定の位置を中心として前記アンテナの方位角方向に、前記方位角調整ボルトのねじ送り作用によって、又は該ねじ送り作用を解除した状態で回転可能に配設されるアンテナ取付部と、前記基台に配設され、前記方位角調整ボルトを、該方位角調整ボルトのねじ送り作用によって前記アンテナ取付部を回転させる第1の状態と、該方位角調整ボルトのねじ送り作用を解除した状態で前記アンテナ取付部を回転させる第2の状態との2つの状態を切換可能に支持する支持部とを備えることを特徴とする。本発明によれば、前記発明と同様に、アンテナの方位角方向への微調整及び粗調整が可能となる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明によれば、簡素な構造で、アンテナにおける方位角方向の調整を容易に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明にかかるアンテナ装置の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】図1のアンテナ装置を異なる方向から見た場合の斜視図である。
【図3】図1のアンテナ装置の平面図である。
【図4】アンテナ取付金具の形状の一例を示す斜視図である。
【図5】支持金具の形状の一例を示す斜視図である。
【図6】支持金具について説明するための斜視図である。
【図7】一方の移動制御片の形状の一例を示す斜視図である。
【図8】他方の移動制御片の形状の一例を示す斜視図である。
【図9】アンテナ取付金具及び支持金具の取付方法について説明するための分解図である。
【図10】図2におけるY部の拡大図である。
【図11】方位角調整ボルトについて説明するための斜視図である。
【図12】方位角調整ボルトの取付について説明するための分解図である。
【図13】図1におけるZ部の拡大図である。
【図14】方位角方向への角度調整について説明するための平面図である。
【図15】方位角方向への角度調整について説明するための平面図である。
【図16】従来のアンテナ装置の外観の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1〜図13は、本発明にかかるアンテナ装置の一実施の形態を示し、このアンテナ装置1は、大別して、アンテナ2と、アンテナ2を固定するアンテナ取付金具3と、アンテナ2の方位角方向を調整するための方位角調整ボルト5と、方位角調整ボルト5を支持する支持金具4と、アンテナ取付金具3を筐体等の基台7に固定する取付板6とから構成される。
【0023】
取付板6は、図1及び図3に示すように、板状部材によって山形に形成され、複数のねじ11、11、・・・により基台7に固定される。この例では、4つのねじ11を用いて取付板6が基台7に固定される。尚、取付板6を基台7に固定する際に用いられるねじ11の数は、この例に限られず、取付板6の大きさや強度等に応じて適宜変更してもよい。
【0024】
アンテナ取付金具3は、図4に示すように、アンテナ取付金具3を取付板6(図1)に固定するための固定部3aと、固定部3aから立設され、アンテナ2(図1)を取り付けるためのアンテナ取付部3bとにより形成される。
【0025】
固定部3aには、貫通孔31aと、貫通孔31aを中心とした円周に沿うように形成された長孔状の貫通孔31b及び31cとが穿設される。貫通孔31aには、図9に示すように、カラー13a及びワッシャ13bを介してねじ12aが挿通され、取付板6に設けられた図示しないねじ孔に螺入される。カラー13aとしては、外径が貫通孔31aの孔径より小さく、厚みが貫通孔31aの板厚よりも大きいものが用いられる。
【0026】
また、貫通孔31b及び31cには、ねじ12b及び12cが各々挿通され、取付板6に設けられた図示しないねじ孔に螺入される。このように、取付板6のねじ孔に螺入された各々のねじ12a〜12cを締め付けることにより、固定部3aと取付板6とが締結されてアンテナ取付金具3が固定される。
【0027】
アンテナ取付部3bには、アンテナ2が取り付けられて固定される。アンテナ2の背面側には、図2に示すように、このアンテナ2を導波管8と接続すると共にアンテナ取付金具3に取り付けるための接続部2aが付設される。この接続部2aは、例えば、円盤状に形成され、図1に示すように、ねじ14a及び14bを締め付けることにより、導波管8の一端に設けられた、接続部2aと同様の形状に形成されたフランジ8a(図2)と接続する。そして、導波管8が接続されたアンテナ2とアンテナ取付部3bとをねじ14c及び14dにより共締めすることにより、アンテナ2がアンテナ取付金具3に固定される。
【0028】
また、アンテナ取付部3bには、図4に示すように、半円形状に形成された切欠部32が設けられ、この切欠部32に後述する方位角調整ボルト5(図1)が載置される。
【0029】
固定部3aには、図2のY部を拡大表示した図10に示すように、例えば、長辺及び短辺を有する矩形状に貫通した窓部33が設けられると共に、この窓部33の長辺に沿うようにして、所定の間隔で目盛りが印刷されたシート状の目盛部34が貼着される。また、取付板6には、窓部33から目視可能な位置に角度確認線61が設けられる。
【0030】
窓部33は、図3に示すように、アンテナ取付部3b(図2)に取り付けられたアンテナ2の開口方向を基準として長辺が垂直となるように設けられると共に、取付板6に設けられた角度確認線61(図10)が目視可能な位置に設けられる。
【0031】
尚、目盛部34(図10)は、上述したシート状に限られず、例えば、固定部3aに目盛りを直接印刷又は刻印することによって設けるようにしてもよい。また、窓部33は、矩形状に限られず、例えば、ねじ12aを中心とした円周に沿うような扇形状としてもよい。
【0032】
ここで、ねじ12aは、図9に示すように、カラー13aを介して貫通孔31aに挿通されているため、ねじ12b及び12cの締め付けを緩めた際には、図2の点線Xで示すねじ12aを中心として、矢印A及びBで示す方向にアンテナ取付金具3を回転させることができる。すなわち、アンテナ取付金具3を回転させることにより、アンテナ取付金具3に固定されたアンテナ2を方位角方向に回転させることができる。
【0033】
アンテナ取付金具3を回転させた際のアンテナ2における方位角方向の角度は、図10に示すように、アンテナ取付部3bに設けられた目盛部34と、取付板6に設けられた角度確認線61との関係に基づき、操作者が容易に確認することができる。具体的には、アンテナ取付金具3(図2)を回転させた場合、アンテナ取付金具3の回転量に応じて窓部33も回転するが、取付板6に設けられた角度確認線61は固定されている。そのため、アンテナ取付金具3の回転により角度確認線61が指し示す目盛部34の目盛りが変化するので、この変化量から調整角度を確認することができる。
【0034】
尚、アンテナ取付金具3の回転中心であるねじ12aは、図3に示すように、アンテナ2の中心を通過する開口方向の延長上に配置すると好ましく、接続部2aの真下近傍に位置するようにするとより好ましい。これは、アンテナ取付金具3を回転させた際に、アンテナ2の開口面が回転前の位置から大きくずれることを防ぐためである。
【0035】
支持金具4は、図5に示すように、支持金具4を取付板6(図1)に固定するための固定部4aと、固定部4aから立設され、後述する方位角調整ボルト5(図1)を支持するための支持部4bとにより形成される。固定部4aには、貫通孔41が穿設される。貫通孔41には、図9に示すように、カラー16a及びワッシャ16bを介してねじ15が挿通され、取付板6に設けられた図示しないねじ孔に螺入される。カラー16aとしては、外径が貫通孔41の孔径より小さく、厚みが貫通孔41の板厚よりも大きいものが用いられる。
【0036】
支持金具4は、取付板6のねじ孔に螺入されたねじ15を締め付けることにより、固定部4aと取付板6とが締結されて取付板6に固定される。尚、支持金具4は、ねじ15がカラー16aを介して貫通孔41に挿通されているため、ねじ15を中心として回転可能なように固定される。
【0037】
支持部4bには、図5に示すように、矩形状に形成された切欠部42と、切欠部42の上部側に位置し、切欠部42の方向に向かって突出する突起部43が設けられる。切欠部42には、図6に示すように、方位角調整ボルト5(図1)の移動量を制御するための移動制御片44及び45が嵌合される。
【0038】
移動制御片44及び45は、例えばナットを軸方向に対して平行な面で分割したような形状とされる。図7に示すように、移動制御片44の底面には、断面が半円形状であり、雌ねじが切られた溝部である雌ねじ部44aが設けられる。また、移動制御片44の互いに対向する両側面には、矩形状の嵌合溝44bが設けられる。この嵌合溝44bは、移動制御片44を支持金具4(図6)に取り付ける際に、支持金具4の支持部4bに設けられた切欠部42に嵌合される。嵌合溝44bの幅は、支持部4bの板厚よりもやや広くなるように形成され、図6に示す矢印E又はF方向にスライド可能とされる。
【0039】
さらに、移動制御片44の上面には、突起部44cが設けられ、スプリング46の一端が挿入されて取り付けられる。突起部44cは、移動制御片44を支持金具4に嵌合させた際に、突起部43と対向する位置となるように設けられる。
【0040】
移動制御片44及び45を互いに組み合わせて切欠部42に嵌合させた際には、図6に示すように、移動制御片44の雌ねじ部44aと移動制御片45の溝部45aにより貫通孔が形成され、この貫通孔に後述する方位角調整ボルト5の雄ねじ部5bが螺合される。これにより、方位角調整ボルト5のねじ送り動作が制御される。
【0041】
図8に示すように、移動制御片45の上面には、断面が半円形状の溝部45aが設けられる。溝部45aは、図7に示す移動制御片44の雌ねじ部44aと異なり、雌ねじが切られていない。また、移動制御片45の互いに対向する両側面には、矩形状の嵌合溝45bが設けられる。この嵌合溝45bは、嵌合溝44b(図7)と同様に、移動制御片45を支持金具4(図6)に取り付ける際に、支持部4bに設けられた切欠部42に嵌合される。嵌合溝45bの幅は、嵌合溝44bと同様に、支持部4bの板厚よりもやや広くなるように形成され、図6に示す矢印E又はF方向にスライド可能とされる。
【0042】
スプリング46は、移動制御片44のスライドを規制するためのものであり、図6に示すように、一端が移動制御片44に設けられた突起部44cに挿入されると共に、他端が突起部43に挿入される。スプリング46は、付勢力により移動制御片44を矢印E方向に加圧し、移動制御片44のスライドを規制する。
【0043】
方位角調整ボルト5は、アンテナ2の方位角方向を調整する際に操作されるものであり、図11に示すように、溝部5a及び雄ねじ部5bが形成される。溝部5aは、周縁に沿って形成された断面が円形状の溝であり、外径が雄ねじ部5b及び切欠部32(図4)の径よりも大きく、内径が切欠部32の径よりも小さく形成される。溝部5aは、上述したアンテナ取付金具3のアンテナ取付部3bに設けられた切欠部32に嵌合される。方位角調整ボルト5を切欠部32に嵌合させた場合には、切欠部32が半円形状であるため、方位角調整ボルト5を図1に示す矢印C及びDの方向へ回転させることができる。
【0044】
溝部5aの幅は、アンテナ取付部3b(図4)の板厚よりも広く形成され、例えば、方位角方向への角度調整の調整量に応じてクリアランスを設定することができる。具体的には、例えば、角度調整量を多くする場合には、溝部5aの幅を広くしてクリアランスを多く設定する。また、調整量を少なくする場合には、溝部5aの幅を狭くしてクリアランスを少なく設定する。また、雄ねじ部5bは、移動制御片44及び45を互いに組み合わせることにより形成される貫通孔(図6)に螺合される。
【0045】
方位角調整ボルト5をアンテナ取付金具3及び支持金具4に取り付ける場合には、図12及び図13に示すように、方位角調整ボルト5の雄ねじ部5bに移動制御片44及び45を組み合わせて螺合させる。また、移動制御片44に設けられた突起部44c(図7)にスプリング46の一端を挿入する。
【0046】
そして、このように組み合わせた方位角調整ボルト5における方位角調整ボルト5の溝部5aをアンテナ取付部3bの切欠部32に嵌合させると共に、移動制御片44及び45の嵌合溝44b(図7)及び45b(図8)を支持部4bの切欠部42に嵌合させる。また、一端が突起部44cに挿入されたスプリング46の他端を支持部4bの突起部43に挿入する。
【0047】
この場合、切欠部32の形状が半円形状であり、溝部5aの断面が円形状であるため、上述したように方位角調整ボルト5が回転可能とされる。また、嵌合溝44b及び45bの幅が支持部4bの板厚よりもやや広く形成されるため、移動制御片44及び45は、図13に示す矢印E又はF方向にスライド可能とされる。尚、突起部44c及び突起部43の間にスプリング46が配設されるため、通常時には、スプリング46の付勢力により移動制御片44のスライドが規制されるので、雄ねじ部5bと移動制御片44及び45とが確実に螺号する。
【0048】
このような状態で方位角調整ボルト5を回転させると、雄ねじ部5bが移動制御片44及び45に対して螺入又は螺出する。このとき、切欠部42、嵌合溝44b及び45bが各々矩形状であるため、方位角調整ボルト5を回転させても移動制御片44及び45が連れ回ることなく雄ねじ部5bを螺入又は螺出させることができる。そして、雄ねじ部5bを螺入又は螺出させることにより、方位角調整ボルト5の回転に応じて溝部5aによって切欠部32が押され、アンテナ取付金具3全体が図2に示す点線Xを中心として回転する。
【0049】
ここで、移動制御片44を矢印F方向にスライドさせると、雄ねじ部5bと移動制御片44との螺合が解除される。このとき、雄ねじ部5bは、溝部45aと接触しているが、溝部45aには雌ねじが切られていないため、方位角調整ボルト5を自由に移動させることができる。
【0050】
次に、上記構成を有するアンテナ装置1による方位角方向への角度調整方法について説明する。本実施の形態では、角度調整として、例えば、アンテナ2の方位角方向への角度を微小に調整する微調整と、角度を大きく調整する粗調整とを行うことができる。
【0051】
まず、微調整による角度調整について説明する。アンテナ2の方位角方向への角度の微調整を行う場合には、図2に示すねじ12b及び12cの締め付けを緩め、アンテナ取付金具3と取付板6との締結を解除する。これにより、アンテナ取付金具3は、点線Xを中心として回転可能な状態となる。このような状態で、方位角調整ボルト5を図1に示す矢印C方向に回転させてねじ送り動作を行うと、雄ねじ部5bが移動制御片44(図7)及び45(図8)に対して螺入し、方位角調整ボルト5が軸方向に沿った方向である矢印G方向に移動する。
【0052】
このとき、移動制御片44及び45が支持金具4に固定されており、また、溝部5a(図11)の外径が切欠部32(図4)の内径より大きく形成されているため、方位角調整ボルト5の移動によって切欠部32が押される。これにより、アンテナ取付金具3が図2に示す点線Xを中心として矢印A方向に回転する。従って、アンテナ2の方位角方向は、図14に示すように、調整前の方向に対して角度「+θ」だけ変化する。
【0053】
尚、アンテナ取付金具3が点線X(図2)を中心として回転した場合、アンテナ取付金具3の回転に追従して方位角調整ボルト5も点線Xを中心として回転する方向に移動しようとするが、方位角調整ボルト5は、支持金具4に嵌合された移動制御片44及び45との螺合によって軸方向が固定されるため、アンテナ取付金具3の回転に追従して回転することができない。
【0054】
しかしながら、方位角調整ボルト5における溝部5aの幅をアンテナ取付金具3の板厚よりも広くすることにより、溝部5aと切欠部32との間にクリアランスが設定されているため、方位角調整ボルト5の軸方向が固定されたままクリアランスの範囲内でアンテナ取付金具3を回転させることができる。
【0055】
また、支持金具4は、回転可能な状態で取付板6に固定されるため、アンテナ取付金具3の回転に追従して回転しようとする方位角調整ボルト5による力に応じて僅かながら回転し、方位角調整ボルト5の軸方向をアンテナ取付金具3の回転方向に調整することができる。
【0056】
一方、ねじ12b及び12cの締め付けを緩め、アンテナ取付金具3と取付板6との締結を解除した状態で、方位角調整ボルト5を図1に示す矢印D方向に回転させてねじ送り動作を行うと、雄ねじ部5bが移動制御片44(図7)及び45(図8)に対して螺出し、方位角調整ボルト5が軸方向に沿った方向である矢印H方向に移動する。
【0057】
このとき、方位角調整ボルト5の移動によって切欠部32(図4)が押され、アンテナ取付金具3が図2に示す点線Xを中心として矢印B方向に回転する。従って、アンテナ2の方位角方向は、図15に示すように、初期状態に対して角度「−θ」だけ変化する。
【0058】
次に、粗調整による角度調整について説明する。粗調整では、微調整時と同様に、図2に示すねじ12b及び12cの締め付けを緩めてアンテナ取付金具3と取付板6との締結を解除し、アンテナ取付金具3が点線Xを中心として回転可能な状態とする。この状態で、移動制御片44を図13に示す矢印F方向にスライドさせ、移動制御片44と方位角調整ボルト5の雄ねじ部5bとの螺合を解除する。
【0059】
このとき、雄ねじ部5bは、移動制御片45の溝部45a(図8)と接触しているが、溝部45aには雌ねじが切られていないため、ねじ送り動作を行うことなく方位角調整ボルト5を軸方向に自由に移動させることができる。従って、方位角調整ボルト5を移動させてアンテナ取付金具3を回転させることにより、アンテナ2の方位角方向を大きく調整できる。尚、この場合には、アンテナ取付金具3の回転に追従して方位角調整ボルト5が点線X(図2)を中心として回転するため、この方位角調整ボルト5の回転に応じて支持金具4も回転する。
【0060】
また、移動制御片44を図13に示す矢印E方向にスライドさせると、スプリング46の付勢力によって移動制御片44と雄ねじ部5bとが接触して雌ねじ部44aと螺合し、方位角調整ボルト5の移動が規制される。この状態で方位角調整ボルト5を図1に示す矢印C又はD方向に回転させることにより、上述した微調整を行うことができる。
【0061】
このように、アンテナ取付金具3と取付板6との締結を解除した状態で方位角調整ボルト5を回転させることにより、方位角調整ボルト5の回転によるねじ送り動作に連動してアンテナ取付金具3が回転するため、アンテナ2の方位角方向を微調整することができる。また、移動制御片44をスライドさせて雄ねじ部5bと雌ねじ部44aとの螺合を解除した状態で方位角調整ボルト5を移動させることにより、方位角調整ボルト5の移動に連動してアンテナ取付金具3が回転するため、アンテナ2の方位角方向を粗調整することができる。そして、アンテナ2の方位角方向への調整量は、図10に示す目盛部34及び角度確認線61の関係から確認することができるため、必要に応じた調整を行うことができる。
【0062】
以上のように、本実施の形態によれば、角度調整にかかる部品点数を削減できるため、構造を簡素化することができる。また、方位角調整ボルト5を用いることにより、アンテナの方位角方向への角度の微調整及び粗調整が可能となるため、角度調整を容易に行うことができる。さらに、アンテナ取付金具3に窓部33及び目盛部34を設けるため、アンテナ2の調整角度を容易に確認することができる。
【0063】
また、本実施の形態によれば、アンテナ2と方位角調整ボルト5とが別体で構成されているため、アンテナ2を容易に交換することができる。
【0064】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は、上述した本発明の一実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、上述の例では、基台7に固定された取付板6にアンテナ取付金具3及び支持金具4を固定するように説明したが、これに限られず、アンテナ取付金具3及び支持金具4を基台7に直接固定するようにしてもよい。尚、この場合には、角度確認線61を基台7に設けるとよい。
【0065】
また、このアンテナ装置1では、アンテナ2の角度調整が完了した場合には、支持金具4や方位角調整ボルト5を取り外すことも可能である。こうすることにより、角度調整が完了したアンテナ装置1の構成を簡素化することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 アンテナ装置
2 アンテナ
2a 接続部
3 アンテナ取付金具
3a 固定部
3b アンテナ取付部
4 支持金具
4a 固定部
4b 支持部
5 方位角調整ボルト
5a 溝部
5b 雄ねじ部
6 取付板
7 基台
8 導波管
8a フランジ
11 ねじ
12(12a、12b、12c) ねじ
13a カラー
13b ワッシャ
14(14a、14b、14c、14d) ねじ
15 ねじ
16a カラー
16b ワッシャ
31(31a、31b、31c) 貫通孔
32 切欠部
33 窓部
34 目盛部
41 貫通孔
42 切欠部
43 突起部
44 移動制御片
44a 雌ねじ部
44b 嵌合溝
44c 突起部
45 移動制御片
45a 溝部
45b 嵌合溝
46 スプリング
61 角度確認線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナと、該アンテナの方位角方向への角度を調整する角度調整機構とからなるアンテナ装置であって、
前記角度調整機構は、
前記アンテナの方位角を調整する方位角調整ボルトと、
前記アンテナが固定されると共に、基台に対して所定の位置を中心として前記アンテナの方位角方向に、前記方位角調整ボルトのねじ送り作用によって、又は該ねじ送り作用を解除した状態で回転可能に配設されるアンテナ取付部と、
前記基台に配設され、前記方位角調整ボルトを、該方位角調整ボルトのねじ送り作用によって前記アンテナ取付部を回転させる第1の状態と、該方位角調整ボルトのねじ送り作用を解除した状態で前記アンテナ取付部を回転させる第2の状態との2つの状態を切換可能に支持する支持部とを備えることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記方位角調整ボルトは、雄ねじ部を備え、
前記支持部は、前記雄ねじ部に対応する半円筒状の雌ねじ部を有する第1の移動制御片と、半円筒状の第1の溝部を有する第2の移動制御片とからなり、前記第1及び第2の移動制御片を互いに対向するように組み合わせた際に、前記雌ねじ部及び前記第1の溝部により貫通孔が形成される一対の移動制御片を備え、
前記第1の状態は、前記貫通孔に対して前記雄ねじ部を螺合させた状態であり、
前記第2の状態は、前記第1の状態に対して前記第1の移動制御片を前記雄ねじ部から離間させた状態であることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記支持部は、前記第1の移動制御片を前記第2の移動制御片の方向へ付勢する付勢手段をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記方位角調整ボルトは、周縁に沿って形成された円形状の第2の溝部をさらに備え、
前記アンテナ取付部は、内径が前記第2の溝部の外径より小さい半円形状の切欠部を備え、
前記第2の溝部と前記切欠部とが嵌合されることにより、前記方位角調整ボルトが回転可能とされることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第2の溝部は、前記切欠部の厚みよりも広い幅に形成されることを特徴とする請求項4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記アンテナ取付部は、固定された前記アンテナの開口方向の延長上の所定の位置を中心として回転可能に配設されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記支持部は、前記基台に対して所定の位置を中心として回転可能に配設されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記角度調整機構は、前記アンテナの調整角度を確認可能な角度表示部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項9】
アンテナの方位角方向への角度を調整する角度調整機構であって、
前記アンテナの方位角を調整する方位角調整ボルトと、
前記アンテナが固定されると共に、基台に対して所定の位置を中心として前記アンテナの方位角方向に、前記方位角調整ボルトのねじ送り作用によって、又は該ねじ送り作用を解除した状態で回転可能に配設されるアンテナ取付部と、
前記基台に配設され、前記方位角調整ボルトを、該方位角調整ボルトのねじ送り作用によって前記アンテナ取付部を回転させる第1の状態と、該方位角調整ボルトのねじ送り作用を解除した状態で前記アンテナ取付部を回転させる第2の状態との2つの状態を切換可能に支持する支持部とを備えることを特徴とする角度調整機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−244505(P2012−244505A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114315(P2011−114315)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【Fターム(参考)】