説明

アンテナ装置及び電子機器

【課題】通信相手側のアンテナに比べて相対的に小型化しても、また、通信する2つのアンテナを同軸上に近接配置しても、安定した通信が行えるようにしたアンテナ装置を構成する。
【解決手段】導体開口部CA及び導体開口部CAと外縁との間を連接するスリット部SLを有した導体層2と、を備え、コイル導体31を平面視したとき、コイル導体31の開口部CWと導体層2の開口部CAとが重なっていて、導体層2の面積はコイル導体31の形成領域の面積より大きく、コイル導体31の開口部CW及び導体層2の開口部CAを覆うように磁性体シート39が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、相手側機器と電磁界信号を介して通信するRFIDシステムや短距離無線通信システムに用いられるアンテナ装置及びそれを備えた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、利用が拡大しているRFIDシステムや短距離無線通信システムにおいては、携帯電話等の携帯電子機器同士または携帯電子機器とリーダ・ライタとで通信を行うために、各々の機器に通信用のアンテナが搭載されている。これらのアンテナのうち携帯電子機器に搭載されるアンテナについて特許文献1が開示されている。
【0003】
図1は、特許文献1の携帯情報端末21とリーダ・ライタ間の近接時における通信の様子を示す図である。図1の例において、リーダ・ライタの送受信アンテナ部26から放射された電磁波のうち、一部の磁場Hが、端末本体22内のバッテリーパック25等の金属物による影響を受けて反射、吸収等による減衰作用を受ける。アンテナモジュール10の通信面CSよりも電磁波の入射側に金属層30が配置されている。この金属層30の表面に、外部磁場の印加で誘導電流(渦電流)が発生し、これに起因して生じた磁場H1が、アンテナモジュール10のアンテナコイル15に誘導電流を生じさせる。
【0004】
この例では、金属層30がアンテナコイル15の一部を覆うように、アンテナモジュール10に近接対向配置することにより、金属層30で発生した磁場成分H1を介してリーダ・ライタの送受信アンテナ部26とアンテナモジュール10のアンテナコイル15との間が誘導結合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−270681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1に示したアンテナ装置は、通信相手側のアンテナとの距離が極めて近接した時にアンテナ同士の中心間の位置ずれの大きさによって通信特性が大きく変動するという問題を解消しようとするものである。携帯情報端末21側のアンテナモジュール10のアンテナコイル15とリーダ・ライタ側の送受信アンテナ部26とに鎖交しようとする磁束が筐体内バッテリーパック25等の金属物で遮られるのを解消するために、その磁束を誘導するために金属層30が設けられている。そのため、前記バッテリーパック25等の遮蔽物の位置関係によっては大きな効果が得られるとは限らない。
【0007】
さらに、アンテナ装置と通信相手側のアンテナとが離れた状態で、前記金属層30が通信距離を拡大するために有効に作用するとは限らない。
【0008】
そこで、この発明の目的は、通信相手側のアンテナに比べて相対的に小型化しても、安定した通信が行えるようにし、さらに通信可能最大距離も大きくできるようにしたアンテナ装置及びそれを備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のアンテナ装置は、
電子機器の筐体の内面または外面に設けられるアンテナ装置であって、
巻回中心部をコイル開口部とするループ状または渦巻き状のコイル導体と、
導体開口部、及び前記導体開口部と外縁との間を連接するスリット部を有した導体層と、を備え、
前記コイル導体を平面視したとき、前記コイル開口部と前記導体開口部とが重なっていて、
前記導体層の面積は前記コイル導体の形成領域の面積より大きく、
前記導体層は前記電子機器内部の回路のグランドに接続されていることを特徴とする。
【0010】
この発明の電子機器は、
巻回中心部をコイル開口部とするループ状または渦巻き状のコイル導体と、導体開口部、及び前記導体開口部と外縁との間を連接するスリット部を有した導体層と、を有し、前記コイル導体を平面視したとき、前記コイル開口部と前記導体開口部とが重なっているアンテナ装置を筐体の内面または外面に備えた電子機器であって、
前記導体層の面積は前記コイル導体の形成領域の面積より大きく、
前記導体層は前記回路グランドに接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、コイル導体に電流が流れることにより生じる磁界を遮るように、導体層に電流が流れる。そして、導体層の開口部周囲に流れる電流が、スリット部周辺を通り、縁端効果により導体層周囲に電流が流れる。これにより、導体層から磁界が生じ、通信距離を広げることができる。
【0012】
また、導体層が磁束を大きく周回させるので、アンテナ装置から通信相手側のアンテナまで、または通信相手側のアンテナからアンテナ装置まで磁束が届き、アンテナ装置と通信相手側アンテナとの通信可能最大距離が大きくなる。さらに、導体層が電子機器内部の回路のグランドに接続されていることにより、導体層を電子機器のシールド用の導体層と兼ねることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】特許文献1の携帯情報端末21とリーダ・ライタ間の近接時における通信の様子を示す図である。
【図2】図2(A)は第1の実施形態に係るアンテナ装置を備える電子機器の背面図である。図2(B)は背面側の下部筐体の内側の平面図である。
【図3】図3(A)はアンテナコイルモジュール3の平面図、図3(B)はその正面図である。
【図4】図4(A)はアンテナ装置101とリーダ・ライタ側アンテナとの磁気的結合状態を示す断面図である。図4(B)は比較例として、導体層2が存在しない状態を表す断面図である。
【図5】第2の実施形態に係るアンテナ装置に関する図である。図5(A)は電子機器の下部筐体1の内面側を見た平面図である。また図5(B)は下部筐体1の内面にアンテナコイルモジュール3を取り付けた状態での平面図である。
【図6】第3の実施形態に係るアンテナ装置103の平面図である。特に、図6(A)はコイル導体31に流れる電流、図6(B)は、導体層2に流れる電流Iをそれぞれ示している。
【図7】図7(A)は第4の実施形態に係るアンテナコイルモジュール13の平面図、図7(B)はその正面図である。
【図8】第5の実施形態に係るアンテナ装置104の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《第1の実施形態》
第1の実施形態に係るアンテナ装置及びそれを備えた電子機器について図2〜図4を参照して説明する。
図2(A)は第1の実施形態に係るアンテナ装置を備える電子機器の背面図である。電子機器の背面は通信相手側であるリーダ・ライタ側アンテナに向ける面である。図2(B)は前記背面側の下部筐体の内側の平面図である。但し、図2(A),図2(B)では主要部の構成のみを表している。
【0015】
図2(A)に示すように、下部筐体1の外面には導体層2が形成されている。導体層2は例えばアルミニウム等の金属蒸着膜である。この導体層2には導体開口部CAが形成されていて、さらにこの導体開口部CAと外縁との間を連接するスリットSLが形成されている。
図2(B)に示すように、下部筐体1の内面には前記導体開口部CAに部分的に重なるようにアンテナコイルモジュール3が配置されている。
【0016】
なお、この例では導体開口部CA部分にカメラモジュールが取り付けられる。カメラモジュールのレンズは筐体の開口部から外部へ露出させる必要があるので、導体開口部をこのように筐体に設けた開口部に合わせて配置することによって、導体層2を設けることによる特別な筐体の設計が不要となる。
【0017】
また、筐体の外面の一部を意匠上メタリックにするような場合に、筐体の外面に蒸着などによって金属膜が形成されるが、その金属膜を前記導体層として兼用してもよい。
【0018】
このように導体層2を電子機器の筐体の内面または外面に形成することによって、導体層2を配置するための特別なスペースを確保する必要がなく、且つ広面積の導体層2を配置できる。
【0019】
図3(A)は前記アンテナコイルモジュール3の平面図、図3(B)はその正面図である。アンテナコイルモジュール3は、矩形板状のフレキシブル基板33と、同じく矩形板状の磁性体シート39とを備えている。フレキシブル基板33には巻回中心部をコイル開口部CWとする渦巻き状のコイル導体31及び外部の回路との接続のために用いられる接続部32が形成されている。磁性体シート39は例えばシート状に成形したフェライトである。
【0020】
なお、コイル導体31の巻回数(ターン数)は必要なインダクタンスによって定める。ワンターンであれば単にループ状のコイル導体となる。
【0021】
前記アンテナコイルモジュール3は、図2(B)に示したように電子機器の下部筐体1の内面に取り付けられ、上部筐体と重ねられた際に、上部筐体側に取り付けられている回路基板の所定のピンと前記接続部32が接するように配置されている。
【0022】
回路基板側には前記接続部32に対して並列接続されるキャパシタが備えられている。そして、アンテナコイルモジュール3のコイル導体31及び磁性体シート39によって定まるインダクタンスと前記キャパシタのキャパシタンスとによって共振周波数が定められる。例えば中心周波数13.56MHzのHF帯を利用する場合には、前記共振周波数を13.56MHzに定める。
【0023】
図4(A)は前記アンテナ装置101とリーダ・ライタ側アンテナとの磁気的結合状態を示す断面図である。また、図4(B)は比較例として、前記導体層2が存在しない状態を表す断面図である。但し、電子機器の筐体部分については図示を省略している。
【0024】
アンテナコイルモジュール3のコイル導体31と導体層2とは少なくとも一部で重なっているので、コイル導体に電流が流れることにより生じる磁界を遮るように、導体層に電流が流れる。そして、導体層の開口部周囲に流れる電流がスリット部周辺を通り、縁端効果により導体層周囲に流れる。なお、電流は導体層平面部にも流れる。これにより、導体層2に磁界が生じるが、導体層2には磁束が透過しないので、導体層2の導体開口部CAを内側、導体層2の外縁を外側とする経路で磁束MFが迂回しようとする。その結果、磁束MFは相対的に大きなループを描き、リーダ・ライタ側アンテナ4のコイル導体41の内外を鎖交することになる。すなわちアンテナ装置101とリーダ・ライタ側アンテナ4とは磁気的に結合する。
【0025】
また、コイル導体31を平面視したとき、コイル開口部CWと導体開口部CAとが少なくとも一部で重なっていることにより、コイル導体31と相手側アンテナとに鎖交しようとする磁束がコイル開口部CW及び導体開口部CAを通り周回できる。特に、コイル導体31を平面視したときに、コイル開口部CWと導体開口部CAとが全周にわたってほぼ重なっていれば、コイル導体31による磁界を効率よく放射させることができる。
【0026】
また、導体層2の面積がコイル導体31の形成領域の面積より大きいことにより、大きな磁界ループを生じさせることができる。
その上、フレキシブル基板33の、通信相手側のアンテナより遠い側の面に磁性体シート39を積層することによって、アンテナの指向性を通信相手側のアンテナ方向により広げることができる。
【0027】
このように磁束は導体層2が広がる方向を指向することになるので、アンテナ装置101の(アンテナコイルモジュール3の)中心とリーダ・ライタ側アンテナ4の中心を同軸上に配置したまま両者を近接させても安定した通信が可能となる。
【0028】
また、スリットSLを導体層2に設けたことによって、導体層2に導体ループが形成されないので、図4(A)に示したように磁束MFが導体層2の導体開口部CAと外縁とを周回した際、導体層2に渦電流が生じるのを阻止でき、渦電流による損失が抑えられる。その結果、アンテナ装置101とリーダ・ライタ側アンテナ4との通信可能最大距離を確保することができる。
【0029】
これに対して、図4(B)に示すように、前記導体層2が存在しないと、コイル開口部CWを通過する磁束MFは、図4(B)に示した向きで左右方向(アンテナコイルモジュール3の平面視状態で広がり方向)に広がることがなく、リーダ・ライタ側アンテナ4との結合量は小さい。したがって接近するほどむしろ通信が不安定になるといった現象が生じる。
【0030】
また、本発明のアンテナ装置は、導体層が磁束を大きく周回させるので、アンテナ装置から通信相手側のアンテナまで、または通信相手側のアンテナからアンテナ装置まで磁束が届き、アンテナ装置と通信相手側アンテナとの通信可能最大距離が大きくなる。
【0031】
次の表は、アンテナコイルモジュール3の大きさを変化させたとき、各アンテナコイルモジュール3を備えるアンテナ装置101と通信相手側アンテナとの間で通信可能な距離範囲を測定した結果である。
【0032】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
アンテナコイルモジュールの大きさ 導体層無し 導体層有り
―――――――――――――――――――――――――――――――――
22.5mm×20mm 0〜24mm 0〜44mm
22.5mm×19mm 0〜23mm 0〜43mm
22.5mm×18mm 0〜19mm 0〜41mm
22.5mm×17mm − 0〜39mm
22.5mm×16mm − 0〜38mm
―――――――――――――――――――――――――――――――――
例えば、大きさ22.5mm×18mmのアンテナコイルモジュール3を備えたアンテナ装置である場合、導体層が無いと通信可能最大距離は19mmであるのに対し、導体層が有ると通信可能最大距離は41mmにまで拡大される。また、例えば大きさ22.5mm×17mm以下のアンテナコイルモジュール3を備えたアンテナ装置である場合、導体層が無いと、どのような距離でも通信不能である。これに対し、導体層が有ると、例えば大きさ22.5mm×16mmという非常に小型のアンテナコイルモジュール3を備えたアンテナ装置を構成しても、0mmから38mmまでの広範囲にわたって通信可能となる。
【0033】
前記アンテナ装置101の中心周波数の設定は次のように行う。
図2(B)に示したアンテナコイルモジュール3を導体層2に近接しない状態、すなわち下部筐体1に取り付けない単体状態での(但し、共振用キャパシタを並列接続した状態)での共振周波数を予め利用周波数帯域の中心周波数より低く設定しておく。アンテナコイルモジュール3を図2(B)及び図4(A)に示したように、導体層2の導体開口部CAに近接させると、アンテナコイルモジュール3のインダクタンス値が小さくなるので、アンテナ装置101の共振周波数が上昇する。そのため、アンテナコイルモジュール3を電子機器の筐体内に組み込み、アンテナ装置101を構成した状態で、そのアンテナ装置101の共振周波数が利用周波数帯域の中心周波数とほぼ一致するように、前記アンテナコイルモジュール3単体でのインダクタンス値を定める。
【0034】
また、スリットSLの長さや幅によってもアンテナ装置のインダクタンスが変わる。例えばスリットSLを大きくすると、アンテナコイルモジュール3に導体層2を近接させたときのインダクタンス値の減少(共振周波数の上昇)程度が抑えられる。そのため、所望のインダクタンス値を得るように、スリットSLの長さ及び幅を設定する。
【0035】
さらに、アンテナコイルモジュール3と導体層2との位置関係、導体層2の導体開口部CAの形状・大きさによってもアンテナ装置のインダクタンスが変わるので、所望のインダクタンス値を得るように、アンテナコイルモジュール3と導体層2との位置関係、及び導体層2の導体開口部CAの形状・大きさを設定する。
【0036】
このように導体層によって磁束ループが広がるので、コイル導体31のコイル開口部CWを小さくしてもよく、アンテナコイルモジュールは小型化できる。また、コイル開口部CWを小さくすることに伴い、コイルのターン数を多くでき、アンテナコイルモジュールのインダクタンスの採り得る値を多くできる。その結果、共振周波数の設定が容易となる。
【0037】
以上に述べたように、本発明は、導体層に磁界が進入することができないという特性を利用して、使用周波数で磁界の放射パターンを導体層によって変更させている。
本発明のアンテナ装置101によれば、アンテナ装置101とリーダ・ライタ側アンテナ4の大きさが様々であっても安定した通信が行える。すなわち、リーダ・ライタ側アンテナ4が大きい場合は、導体層2の存在により磁束が大きく周回し、アンテナ装置101からの磁束がリーダ・ライタ側アンテナ101に届くし、リーダ・ライタ側アンテナ4が小さい場合には、導体層2の存在より磁束が届く距離が延びる。
【0038】
《第2の実施形態》
図5は第2の実施形態に係るアンテナ装置102に関する図である。図5(A)は電子機器の下部筐体1の内面側を見た平面図である。また図5(B)は下部筐体1の内面にアンテナコイルモジュール3を取り付けた状態での平面図である。
【0039】
この第2の実施形態では、下部筐体1の内面に導体層2を設けている。導体層2はアルミニウム等の金属膜の蒸着や金属箔の貼着によって構成される。このように導体層は筐体の内面に設けてもよい。
【0040】
なお、図5に示した例では、導体層2のスリットSLを導体開口部CAから外縁までの距離の短い部分に設けている。
前記導体層2は電子機器内部の回路のグランドに接続してもよい。そのことにより、前記導体層2を電子機器のシールド用の導体層と兼ねることもできる。
【0041】
《第3の実施形態》
図6(A),図6(B)は何れも第3の実施形態に係るアンテナ装置103の平面図である。図6(A)はコイル導体31に流れる電流、図6(B)は、導体層2に流れる電流Iをそれぞれ示している。このアンテナ装置103はアンテナコイルモジュール3と導体層2を備えている。アンテナコイルモジュール3は、渦巻き状のコイル導体31が形成されたフレキシブル基板と磁性体シートとが積層されて構成されている。基本的には図3に示したものと同様である。但し、この例ではフレキシブル基板からコイル導体の両端を引き出し、コイル導体31から離れた位置に接続部を設けている。
【0042】
導体層2は導体開口部CA及び導体開口部CAと外縁との間を連接するスリットSLを備えている。
コイル導体31及び導体層2を平面視したとき、コイル開口部CWと導体開口部CAとが同軸で全周にわたってほぼ重なっている。このような構成により、コイル導体31を平面視したときに、コイル導体31の全部を導体層2と重ならせることができる。これによって、コイル導体31から生じる磁束が全て導体層2に鎖交しようとするので、その磁束を遮るように導体層2に、コイル導体31に流れる電流の向きとは反対方向の大きな電流が生じる。導体開口部CAの周囲に流れる大きな電流Iは、スリット部SLの周囲を通り、導体層平面、及び、縁端効果により導体層周囲に沿うように流れる。これにより、導体層2から強い磁界が生じ、通信距離をさらに広げることができる。また、導体開口部CA及びコイル開口部CWを通過し、導体層2を周回する磁束のループがより効果的に広がる。そのため、アンテナ装置103を備える電子機器をリーダ・ライタ側アンテナの面に対して面内方向のどの向きでかざしても安定した通信が可能となる。
【0043】
《第4の実施形態》
図7(A)は第4の実施形態に係るアンテナコイルモジュール13の平面図、図7(B)はその正面図である。このアンテナコイルモジュール13は、第1の実施形態の場合と同様に、図2に示したような導体層に対して近接配置される。このように近接配置されることで、導体層2に大きな電流が生じ、強い磁界が生じる。
【0044】
アンテナコイルモジュール13は、矩形板状のフレキシブル基板34と、同じく矩形板状の磁性体シート39とを備えている。フレキシブル基板34には巻回中心部をコイル開口部CWとする渦巻き状のコイル導体31及び外部の回路との接続のために用いられる接続部32が形成されている。前記コイル導体31はフレキシブル基板34の二層にわたって形成されている。層間はビア導体で接続されている。磁性体シート39は例えばシート状に成形したフェライトである。
【0045】
このように、コイル導体31が複数層にわたって巻回されることによって、コイル導体から強い磁界が生じ、その結果、導体層に大きな電流を流すことができる。また、コイル導体を導体開口部の内縁に沿った位置に集中させることができる。そのため、コイル導体31に生じる集中した磁束が導体層に鎖交しようとするので、導体層に大きな電流を流すことができる。
【0046】
《第5の実施形態》
図8は第5の実施形態に係るアンテナ装置104の平面図である。このアンテナ装置104はアンテナコイルモジュール3と導体層2を備えている。アンテナコイルモジュール3は、渦巻き状のコイル導体31が形成されたフレキシブル基板と磁性体シートとが積層されている。この構造は図6に示したものと同様である。但し、この例では導体開口部CAよりコイル開口部CWが僅かに小さく形成されている。
【0047】
コイル導体31の一部は導体層2と重なっているので、この構造により、コイル導体31から生じる磁束により導体層2に電流が流れる。
【0048】
なお、以上に示した各実施形態では、筐体の外面または内面に導体層を形成したが、筐体の内部に導体層を配置してもよい。また、筐体自体が金属である場合には、その筐体を前記導体層として用いてもよい。
【0049】
また、以上に示した各実施形態では、コイル導体31を備えたフレキシブル基板33とフェライトからなる磁性体シート39とを積層してアンテナコイルモジュール3を構成したが、アンテナコイルモジュール3の背面に磁束ループの形成にとって悪影響のない環境では、必ずしも磁性体シートを設けなくてよい。
【符号の説明】
【0050】
CA…導体開口部
CW…コイル開口部
MF…磁束
SL…スリット
1…下部筐体
2…導体層
3,13…アンテナコイルモジュール
4…リーダ・ライタ側アンテナ
31…コイル導体
32…接続部
33,34…フレキシブル基板
39…磁性体シート
41…コイル導体
101〜104…アンテナ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の筐体の内面または外面に設けられるアンテナ装置であって、
巻回中心部をコイル開口部とするループ状または渦巻き状のコイル導体と、
導体開口部、及び前記導体開口部と外縁との間を連接するスリット部を有した導体層と、を備え、
前記コイル導体を平面視したとき、前記コイル開口部と前記導体開口部とが重なっていて、
前記導体層の面積は前記コイル導体の形成領域の面積より大きく、
前記導体層は前記電子機器内部の回路のグランドに接続されている、
ことを特徴とする、アンテナ装置。
【請求項2】
前記筐体は金属部分を含み、
前記導体層は前記金属部分の少なくとも一部から構成される、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記金属部分は、前記筐体の内面または外面に形成された金属膜もしくは金属箔、または、金属からなる前記筐体である、請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記コイル導体と前記導体層とは磁界結合するように近接して配置されている、請求項1乃至3の何れかに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記コイル導体は複数層に亘って巻回されている、請求項1乃至4の何れかに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記コイル導体を平面視したとき、前記コイル開口部と前記導体開口部とが全周にわたってほぼ重なっている、請求項1乃至5の何れかに記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記コイル導体が基板の一方主面に形成され、前記基板の他方主面に磁性体シートが積層されることにより、前記コイル導体と前記基板と前記磁性体シートとを含むアンテナコイルモジュールが構成された、請求項1乃至6の何れかに記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記導体層が存在しない状態での共振周波数が利用周波数帯域の中心周波数より低く設定され、前記アンテナコイルモジュールが前記電子機器の筐体内に組み込まれた状態での共振周波数が利用周波数帯域の中心周波数に設定された、請求項7に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
巻回中心部をコイル開口部とするループ状または渦巻き状のコイル導体と、導体開口部、及び前記導体開口部と外縁との間を連接するスリット部を有した導体層と、回路グランドとを有し、前記コイル導体を平面視したとき、前記コイル開口部と前記導体開口部とが重なっているアンテナ装置を筐体の内面または外面に備えた電子機器であって、
前記導体層の面積は前記コイル導体の形成領域の面積より大きく、
前記導体層は前記回路グランドに接続されている、
ことを特徴とする、電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−157071(P2012−157071A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−107344(P2012−107344)
【出願日】平成24年5月9日(2012.5.9)
【分割の表示】特願2012−34664(P2012−34664)の分割
【原出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】