説明

アンテナ装置

【課題】誘電体12の中央部に設けられた空きスペースに組み込まれた電子回路16をシールドするためのシールドカバー18によるアンテナ特性への影響を少なくしたアンテナ装置を提供する。
【解決手段】誘電体12の中央部に空きスペースを設け、空きスペースの上方に放射電極14を配設し、空きスペースに電子回路16を組み込み、空きスペースに電子回路16を放射電極14からシールドするシールドカバー18を配設する。シールドカバー18の電子回路16を収容する収容部の周縁の平面形状を上から見て放射電極16の平面形状よりも小さくて内側に位置するようにし、収容部の周縁の部分を外側が放射電極14からより離れるように背が低くなるように傾斜させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体の中央部に設けた空きスペースに電子回路を組み込んだ平面型のアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平面型のアンテナ装置にあっては、誘電体基板の上面に誘電体を配設し、この誘電体の上面で支持するように放射電極が設けられ、誘電体基板の下面に電子回路が搭載され、この電子回路をシールドするようにシールドカバーが誘電体基板の下面に設けられていた。かかる構成のアンテナにあっては、誘電体と電子回路が誘電体基板の上面と下面にそれぞれ設けられるために、その上下方向の寸法が大きなものとなる。そこで、誘電体を環状に形成してその中央部に空きスペースを設け、この空きスペースに電子回路を組み込み、さらにこの空きスペースに電子回路をシールドするシールドカバーを配設して、上下方向の寸法が従来より小さくなるようにしたアンテナ装置の技術が、実開平5−70013号公報で提案されている。誘電体基板の上面に、誘電体を配設するとともに電子回路を搭載することができ、小型化に好適である。
【特許文献1】実開平5−70013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の特許文献1で提案された技術にあっては、誘電体の中央部に設けられた空きスペースに組み込まれた電子回路をシールドするシールドカバーは、アンテナ装置のGND電極と同電位であり、空きスペースの上方に配設された放射電極とGND電極間の距離が短く、アンテナ装置としてのアンテナ効率が低下し、利得が低下するという問題がある。また、放射電極とGND電極間の距離が短いために、放射電極とGND電極間の距離のバラツキによりアンテナ特性が大きく影響されるという問題もあった。
【0004】
そこで、本発明は、上述のごとき事情に鑑みてなされたもので、誘電体の中央部に設けられた空きスペースに組み込まれた電子回路をシールドするためのシールドカバーによるアンテナ特性への影響をより少なくするようにしたアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために、本発明のアンテナ装置は、誘電体の中央部に空きスペースを設け、前記空きスペースの上方に放射電極を配設し、前記空きスペースに電子回路を組み込み、前記空きスペースに前記電子回路を前記放射電極からシールドするシールドカバーを配設したアンテナ装置において、前記シールドカバーの前記電子回路を収容する収容部の周縁の平面形状を上から見て前記放射電極の平面形状よりも小さくて内側に位置するようにし、前記収容部の前記周縁の部分を外側が前記放射電極からより離れるように傾斜させて構成されている。
【0006】
また、前記シールドカバーの前記周縁の部分を外側が前記放射電極からより離れるテーパー状に傾斜させて構成しても良い。
【0007】
そして、前記シールドカバーの前記収容部内で、その中央部にフィルタ部品を配設し、その外側にダイオードおよび/またはトランジスタ部品を配設し、さらにその外側にチップ部品を配設して構成することもできる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載のアンテナ装置にあっては、シールドカバーの電子回路を収容する収容部の周縁の平面形状を上から見て放射電極の平面形状よりも小さくして内側に位置するようにしているので、放射電極の周縁部とGND電極としてのシールドカバーの周縁との間の距離が大きなものとなり、アンテナ効率がより大きなものとなる。しかも、シールドカバーの収容部の周縁の部分を外側が前記放射電極からより離れるように傾斜させているので、この傾斜によっても放射電極の周縁部とGND電極としてのシールドカバーの周縁との間の距離が大きなものとなり、アンテナ効率がさらに改善される。
【0009】
請求項2記載のアンテナ装置にあっては、シールドカバーの周縁の部分を外側が放射電極からより離れるテーパー状に傾斜させているので、シールドカバーの形状が簡単であり、製造が容易である。
【0010】
請求項3記載のアンテナ装置にあっては、一般的に背の高いフィルタ部品を収容部内の中央部に配設し、中程度に背の高いダイオードおよび/またはトランジスタ部品をその外側に配設し、さらに最も背の低いチップ部品を最も外側に配設したので、周縁の部分が外側ほど低い背丈となる収納部内に、効率良く電子部品を配設できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施例を図1ないし図3を参照して説明する。図1は、本発明のアンテナ装置の実施例を示し、(a)は本発明のアンテナ装置の縦断面図であり、(b)は本発明のアンテナ装置で用いるシールドカバーの平面形状を示す図である。図2は、放射電極の平面形状の大きさとシールドカバーの平面形状の大きさの違いによるアンテナ特性への影響を調べたことを説明する図であり、(a)はアンテナ装置の縦断面図であり、(b)は放射電極とシールドカバーの平面形状を示す図である。図3は、本発明のアンテナ装置の実施例と比較するための従来の構造のアンテナ装置を示し、(a)は従来のアンテナ装置の縦断面図であり、(b)は従来のアンテナ装置で用いるシールドカバーの平面形状を示す図である。
【0012】
図1に示すごとく、誘電体基板10の上に、中央部に空きスペースを設けてこれを囲むように誘電体12が配設される。誘電体12は、一例として、平面外形が矩形の環状である。そして、空きスペースの上方を覆うように平面矩形の放射電極14が配設され、誘電体12の上面で支持される。さらに、誘電体基板10の上面で空きスペースの部分に、電子回路16が搭載される。また、この電子回路16を放射電極14からシールドするようにシールドカバー18が、誘電体基板10の上面で空きスペースに位置させて配設される。なお符号20は、放射電極14の給電端子である。シールドカバー18は、その平面形状が放射電極12の平面形状よりも小さく、上から見てシールドカバー18が放射電極12の内側に配置される。また、シールドカバー18の周縁の部分は、外側が放射電極12から離れるように背が低くされてテーパー状に傾斜されて構成される。さらに、電子回路16にあっては、一般的に背の高いフィルタ部品を収容部内の中央部に配設し、中程度に背の高いダイオードおよびトランジスタ部品等をその外側に配設し、さらに最も背の低いチップコンデンサやチップインダクタやチップ抵抗等のチップ部品がその最も外側に配設されている。なお、シールドカバー18は、誘電体基板10に設けられたGND電極等に電気的接続されて、アンテナ装置のGND電極と同電位とされることは勿論である。また、給電端子20は、放射電極14で送受信する信号を電子回路16に伝搬し得るように適宜に回路構成されていることは勿論である。
【0013】
発明者らは、本発明のアンテナ装置を設計するにあたり、まず放射電極14の平面形状とシールドカバー18の収容部の平面形状の大きさの違いによるアンテナ特性への影響を調べた。そこで、図2に示すような構造のアンテナ装置を製作して実験を行った。図2に示すアンテナ装置は、誘電体基板10の上に、誘電体22が配設される。この誘電体22は、偏平で矩形の直方体であり、その下側の面から凹部22aが穿設されて空きスペースが構成されている。そして、誘電体22の上面全体で支持されて放射電極14が配設される。さらに、誘電体22の凹部22aの内周面には、導電金属からなるシールドカバー28が配設され、電子回路16の収容部とされている。このシールドカバー28の収容部内の空きスペースで、誘電体基板10の上面に電子回路16が配設される。そして、放射電極14の平面形状の大きさを一辺がAの正方形とし、シールドカバー28の収容部の平面形状の大きさを一辺がBの正方形として、AがBより小さい場合、AとBが同じ場合、AがBより大きな場合のアンテナ特性をそれぞれに測定した。すると、AがBより大きな場合のアンテナ特性が優れ、AがBより小さい場合のアンテナ特性が最も悪い結果となった。これは、AがBより小さい場合では、放射電極14の周縁部とシールドカバー28の間の距離が短く、シールドカバー28はGND電極と同電位であるので、放射電極14の周縁部とGND電極との間の距離が短いのと同様に作用し、もってアンテナ特性が悪くなったものと考えられる。そして、AがBより大きい場合では、放射電極14の周縁部とシールドカバー28の間の距離が長くなり、放射電極14の周縁部とGND電極との間の距離も長くなって、アンテナ特性に優れたものになると考えられる。なお、放射電極14に比較してシールドカバー28の収容部の平面形状が極端に小さなものとなれば、放射電極14とGND電極との間の距離の長いアンテナ装置として作用し、アンテナ特性は優れたものとなる。かかる結果から、発明者らは、放射電極14の平面形状よりもシールドカバー28の収容部の平面形状が小さくて、上から見て、放射電極14の平面形状の内側にシールドカバー28の収容部が位置するようにすべきものであることが確認された。
【0014】
さらに、発明者らは、放射電極14の周縁部とシールドカバー18の収容部の間の距離が長くなれば、アンテナ特性が優れたものになることから、放射電極14の周縁部とシールドカバー18の収容部の間の距離を長くするために、シールドカバー18の収容部の周縁部を、外側の背が低くなるテーパー状の傾斜として、放射電極14からの距離がより離れるように構成した。シールドカバー18の収容部の周縁部を、外側が放射電極14から離れるように傾斜させた構造の作用効果を調べるために、図3に示すごとき、従来の構造のアンテナ装置を製作して比較実験を行った。図1の構造と図3の構造で、その違いは、図1にあってはシールドカバー18の周縁部が外側が低い傾斜となっているが、図3にあってはシールドカバー38は中央部と周縁部が同じ高さである。そして、放射電極14とシールドカバー18、38の間の隙間dを、一例として、0.9mmに設定、この隙間dの距離を変化させて、アンテナ装置の周波数特性を測定した。すると、図3の構造では、隙間dを0.9mmとした状態から、僅かながら0.05mm変化させて、0.85mmと0.95mmとした場合に、共振周波数は17%の低下と、19%の上昇となった。そして、図1の構造では、隙間dを0.9mmとした状態から、隙間dを0.85mmと0.95mmとした場合に、共振周波数は6%の低下と、7%の上昇となった。この測定結果から、図1のごとく、シールドカバー18の収容部の周縁部を外側が放射電極14から離れるように傾斜させることで、隙間dのバラツキに対して、安定したアンテナ特性が得られることが確認された。
【0015】
ところで、図1のごとく、シールドカバー18の収容部の周縁部を外側が放射電極14から離れるように傾斜させた構造にあっては、図3に示す従来の構成に比べて、シールドカバー14の収容部の容積が小さなものとなる。そこで、一般的に背の高い電子部品であるフィルタ部品を収容部内の中央部に配設し、中程度に背の高いダイオードおよびトランジスタ部品等をその外側に配設し、さらに最も背の低いチップコンデンサやチップインダクタやチップ抵抗等のチップ部品を最も外側に配設することで、収容部内に効率良く、電子部品を配設して電子回路16を構成することができる。
【0016】
図4ないし図6は、本発明のアンテナ装置で用いることのできる他のシールドカバーの形状を示す図であり。(a)はその縦断面図であり、(b)は平面形状を示す図である。図4に示すシールドカバー48は、球体の一部分からなるお椀を伏せたごとき形状であり、収容部の周縁部を外側が放射電極14からより離れる形状の1つとして断面円弧状に傾斜させた構造である。角張った部分がなく、放射電極14に対する電磁結合は少ないが、収容部の容積が小さいものである。また、図5に示すシールドカバー58は、円錐台状のものであり、図4に示す構造よりも、収容部の容積を大きくすることができる。さらに、図6に示すシールドカバー68は、垂直に立ち上がる背の低い側壁68aを備えて平面形状が8角形の構造であって周縁の部分が外側の背が低くなるテーパー状の傾斜とされて、放射電極14からの距離がより離れるように構成されている。なお、シールドカバーの形状は、図1および図4ないし図6に記載された構造に限られず、周縁の部分が外側の背が低くなる傾斜とされて放射電極14からの距離がより離れるように構成されていれば、如何なる構造であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のアンテナ装置の実施例を示し、(a)は本発明のアンテナ装置の縦断面図であり、(b)は本発明のアンテナ装置で用いるシールドカバーの平面形状を示す図である。
【図2】放射電極の平面形状の大きさとシールドカバーの平面形状の大きさの違いによるアンテナ特性への影響を調べたことを説明する図であり、(a)はアンテナ装置の縦断面図であり、(b)は放射電極とシールドカバーの平面形状を示す図である。
【図3】本発明のアンテナ装置の実施例と比較するための従来の構造のアンテナ装置を示し、(a)は従来のアンテナ装置の縦断面図であり、(b)は従来のアンテナ装置で用いるシールドカバーの平面形状を示す図である。
【図4】本発明のアンテナ装置で用いることのできる球体の一部分からなるお椀を伏せたごときシールドカバーの形状を示す図であり。(a)はその縦断面図であり、(b)は平面形状を示す図である。
【図5】本発明のアンテナ装置で用いることのできる円錐台状のシールドカバーの形状を示す図であり。(a)はその縦断面図であり、(b)は平面形状を示す図である。
【図6】本発明のアンテナ装置で用いることのできる垂直に立ち上がる背の低い側壁を備えて平面形状が8角形の構造であって周縁の部分が外側の背が低くなるテーパー状の傾斜とされたシールドカバーの形状を示す図であり。(a)はその縦断面図であり、(b)は平面形状を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
10 誘電体基板
12、22 誘電体
14 放射電極
16 電子回路
18、28、38、48、58、68 シールドカバー
20 給電端子
22a 凹部
68a 側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体の中央部に空きスペースを設け、前記空きスペースの上方に放射電極を配設し、前記空きスペースに電子回路を組み込み、前記空きスペースに前記電子回路を前記放射電極からシールドするシールドカバーを配設したアンテナ装置において、前記シールドカバーの前記電子回路を収容する収容部の周縁の平面形状を上から見て前記放射電極の平面形状よりも小さくて内側に位置するようにし、前記収容部の前記周縁の部分を外側が前記放射電極からより離れるように傾斜させて構成したことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1記載のアンテナ装置において、前記シールドカバーの前記周縁の部分を外側が前記放射電極からより離れるテーパー状に傾斜させて構成したことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のアンテナ装置において、前記シールドカバーの前記収容部内で、その中央部にフィルタ部品を配設し、その外側にダイオードおよび/またはトランジスタ部品を配設し、さらにその外側にチップ部品を配設して構成したことを特徴とするアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−103814(P2010−103814A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274146(P2008−274146)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000006758)株式会社ヨコオ (158)
【Fターム(参考)】