説明

アンテナ装置

【課題】 レドームを曲面形状に成型する場合、レドームの端部を曲げて屈曲した形状とする必要があるが、複合材としては成形が難しい構造となっていた。
【解決手段】 レドーム1をスキン3とハニカムコア4で構成し、上側構体フレーム5の上側にハニカムコア4を直接接着する。上部構体フレーム5は、ボルト7で下部構体フレーム6と結合することで、レドーム1を平面形状に構成することができるので、レドームの端部を屈曲させる必要がなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子アンテナを保護するレドームを有したアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レドームは、風雨等の外部環境による素子アンテナの劣化や損傷を防ぐように、素子アンテナを電波が透過する部材で覆って、素子アンテナを保護するものである。素子アンテナの電波放射面から放射される電波は、レドームを介在して空間に放射される。従来のレドームは、スキンとコアを接着した複合材から形成されるサンドイッチ板からなる。レドームにおける素子アンテナの電波放射面と対向した電波を透過する部分は、電波干渉を防ぐとともに構造強度を確保するため、梁(ビーム)を設置しなくても形状を保持するよう、例えば半球状に成型した曲面形状をなしている(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2010−506453号広報
【特許文献2】特開2002−111357号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、レドームを曲面形状に成型する場合は、レドームの取り付け面から鉛直方向にレドームを曲げてレドームの高さを取り付け面から嵩上げし、さらに素子アンテナの電波放射面を覆うために、再度素子アンテナの電波放射面と向き合うようにレドームを曲げて、レドームの端部を二回折り曲げたZ形状とすることで、レドームを両持ち梁で支持する複雑な構造としている。
【0005】
レドーム端部がZ形状をなす場合、レドームを成形する際に、折り曲げている箇所にスキンとコアを接着させるための力を加えることが難しくなるという問題があった。
【0006】
また、レドームが半球状である場合は、素子アンテナの電波放射面に半球の中心が位置しないと、電波が透過する素子アンテナからレドームまでの長さの計算が複雑となって、透過損失計算時のレドームの形状モデルを、複数のメッシュからなる有限要素モデルで構成する必要があり、透過損失計算に時間を要するという問題があった。
【0007】
本発明は係る課題を解決するためになされたものであり、アンテナ装置に設けられるレドームの形状及び支持構造を簡略化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるアンテナ装置は、複合材料からなるスキンと、上記スキンに対し所定の間隔を空けて配置され、貫通穴が設けられた構体と、上記スキンと構体の間隙に配置され、上記スキン及び構体に接着されるハニカム構造またはフォーム材からなるコアと、上記構体の貫通穴を介して挿入される素子アンテナと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レドームを素子アンテナの電波放射面に接して支持する構造とすることで、レドームを平面のような単純な形状にすることができ、レドームの製造及び電気特性の計算を簡略化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1によるアンテナ装置における、レドームと素子アンテナの組み合わせ構造を示す図である。
【図2】実施の形態1によるアンテナ装置における、レドームと素子アンテナの接続構造を示す図である。
【図3】実施の形態1によるアンテナ装置において、レドームを外して上から素子アンテナを見た図である。
【図4】実施の形態2によるアンテナ装置における、レドームと素子アンテナの接続構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、この発明に係る実施の形態1によるアンテナ装置における、レドームと素子アンテナの組み合わせ構造を示す図である。図において、実施の形態1のアンテナ装置は、レドーム1と、アンテナ本体2から構成される。レドーム1は平面形状をなしている。アンテナ本体2は複数の素子アンテナ8が平面上に配列された平面アレーアンテナを構成している電子機器である。レドーム1は、アンテナ本体2における素子アンテナ8が配列された平面上に直接接して配置されている。また、レドーム1はアンテナ本体2における素子アンテナ8が配列された平面を覆い、素子アンテナ8に対して、外部から風が吹き付けたり雨や水滴が浸入しないように、素子アンテナが配列される平面を保護している。素子アンテナ8は、誘電体基板上にパターン形成された、銅や金等の薄膜導体からなる。
【0012】
図2は、実施の形態1によるアンテナ装置における、レドーム1とアンテナ本体2の接続構造を示す図である。図において、レドーム1は、スキン3とハニカムコア4を接着して構成される。また、アンテナ本体2は、上部構体フレーム5と、下部構体フレーム6と、アンテナモジュール9から構成される。上部構体フレーム5と下部構体フレーム6は2つに分割された構体を構成する。
【0013】
スキン3は樹脂とガラス繊維の複合材料を素材とするものであり、例えばGFRP(glass fiber reinforced plastics;ガラス繊維強化プラスチック)から構成される。ハニカムコア4は、アラミッド紙と樹脂の複合材料を素材としたハニカム構造を構成している。ハニカムコア4は、スキン3と上部構体フレーム5の間に挟まれて上部構体フレーム5と接着され、スキン3と上部構体フレーム5の間隙を埋める。これによって、レドーム1がアンテナ本体2に結合される。素子アンテナ8はハニカムコア4の裏面と対向して配置される。上部構体フレーム5は、鉄ニッケルコバルト合金やCFRP(carbon fiber reinforced plastics;炭素繊維強化プラスチック)やアルミ合金等によって構成される板状の構造体である。温度変化が大きい環境下で用いられる場合は、上部構体フレームとして、スキン3と線膨張係数が近い材料を用いるのがよい。上部構体フレーム5は、板厚方向に貫通した複数のモジュール挿抜用穴(貫通穴)30が形成されている。
【0014】
アンテナモジュール9は、素子アンテナ8とパッケージ90と送受信回路(図示せず)を備えて構成され、ブロック形状をなしている。素子アンテナ8は、アンテナモジュール9の上面に配置される。素子アンテナ8は、マイクロ波帯やミリ波帯の高周波の送信信号が給電されて空間に電波を放射するとともに、空間から電波を受信する。アンテナモジュール9の送受信回路は、素子アンテナ8に増幅された送信信号を給電するとともに、素子アンテナ8から受信した受信信号を周波数変換する。アンテナモジュール9のパッケージ90は、金属または誘電体から構成され、内部に上記送受信回路を包んでいる。アンテナモジュール9のパッケージ90は外周にボルト穴の形成された突縁部が設けられる。
【0015】
アンテナモジュール9は、下部構体フレーム6の上面に載置される。パッケージ90の上記ボルト穴からボルト20が挿入され、下部構体フレーム6に設けられたねじ穴と係合して、アンテナモジュール9が下部構体フレーム6に締結される。上部構体フレーム5は、下部構体フレーム6の上面に接して下部構体フレーム6上に配置される。このとき、上部構体フレーム5に設けられたモジュール挿抜用穴30を介して、アンテナモジュール9における素子アンテナ8を含む上端部が、上部構体フレーム5に挿入されることとなる。また、下部構体フレーム6に設けられたボルト穴を介して、ボルト7が下部構体フレーム6の下面側から挿入され、ボルト7が上部構体フレーム5に設けられたねじ穴に係合することで、上部構体フレーム5が下部構体フレーム6と結合する。上部構体フレーム5の下面は、アンテナモジュール9の突縁部が収容されるように、窪みが設けられている。
【0016】
なお、素子アンテナ8の表面は、素子アンテナ8の厚み分だけ、上部構体フレーム5の上面との間に段差を生じる。このため、素子アンテナ8の厚みが無視し得ない場合に、ハニカムコア4の裏面における素子アンテナ8の配置される部分において、素子アンテナ8の厚み分だけ、ハニカムコア4を除去して窪みを設けてもよい。或いは、素子アンテナ8の表面が、上部構体フレーム5の上面と同一面に位置するように、アンテナモジュール9の形状を調整してもよい。
【0017】
図3は、レドーム1を取り外した状態で、上からアンテナ本体2を構成する上部構体フレーム5及びアンテナモジュール9を見た図である。図に示すように、ボルト7のまわりは素子アンテナ8を設置せず、ボルト7を設置できる面積を確保している。上部構体フレーム5のモジュール挿抜用穴30から、アンテナモジュール9が挿抜される。また、アンテナ裏面側(図2の下側)から、上部構体フレーム5と下部構体フレーム6を締結するボルト7を取り外すことによって、下部構体フレーム6とともに、上部構体フレーム5からアンテナモジュール9を引き抜くことができる。
【0018】
本実施の形態1のアンテナ装置は以上のように構成され、次のように動作する。
レドーム1は風雨等の外部環境からアンテナ本体2を保護する。レドーム1は、例えば風圧荷重や雨滴による水圧荷重等の外部からの荷重(以下、外部荷重)を受ける。このレドーム1が受けた外部荷重は、素子アンテナ8及びアンテナモジュール9には負荷されず、上部構体フレーム5を経由して下部構体フレーム6に負荷されることとなる。これによって、素子アンテナ8及びアンテナモジュール9等の電子機器を、外部荷重から保護することができる。
【0019】
また、素子アンテナ8から電波10を照射する際、図2の構造においては、電波10が電気透過性の高いスキン3とハニカムコア4のみを通過するため、アンテナの電気特性において損失が少ない。
【0020】
これによって、レドーム1が平面形状であってもレドームとしての機能を果たすことができるため、複合材としては成形が難しいレドーム端がZ形状に曲がっている構造を採用する必要がなくなり、製品品質の向上及び製造の低コスト化が図れる。
【0021】
また、レドーム1が平面なので、その厚みが一定であり、各素子アンテナ8からの距離が一定であるため、電波が透過する長さの計算が単純になるため、透過損失計算が容易となり、計算精度の向上及び計算時間短縮による低コスト化が図れる。
【0022】
さらに、レドーム1の修理の際には、上部構体フレーム5と下部構体フレーム6を結合しているボルト7を外すことで、レドーム1及び上部構体フレーム5をアンテナ本体2から分離することができるので、レドーム1を容易に取り外して修理することができる。
【0023】
また、レドーム1が平面形状であるので、球状形状に比べて高さが低く抑えられ、レドーム1の小型化も図れる。
【0024】
以上説明したように、実施の形態1によるアンテナ装置は、樹脂とガラス繊維の複合材料を素材とするスキンと、スキンと上部構体フレームの間隙を埋めるアラミッド紙と樹脂の複合材料を素材とするハニカムコアで構成され、ハニカムコアと上部構体フレームを接着し、上部構体フレームと下部構体フレームをボルトで結合して、平面形状に構成する。すなわち、複合材料からなるスキンと、上記スキンに対し所定の間隔を空けて配置され、貫通穴が設けられた構体と、上記スキンと構体の間隙に配置され、上記スキン及び構体に接着されるハニカム構造のコアと、上記構体の貫通穴を介して挿入される素子アンテナと、を備えたことを特徴とする。また、上記構体は、上面が上記コアに接着される上記貫通穴が複数形成された上部構体フレームと、上記上部構体フレームの裏面に取り付けられる下部構体フレームから構成され、上記素子アンテナは、上記下部構体フレームに保持される複数のアンテナモジュール上にそれぞれ形成され、上記アンテナモジュールは、上部構体フレームの貫通穴を介して挿抜される。
【0025】
この構成により、レドームを素子アンテナの電波放射面に接して支持する構造とすることで、レドームを平面のような単純な形状にすることができ、レドームの製造及び電気特性の計算を簡略化することが可能となる。これによって、製品品質の向上及び製造の低コスト化や、透過損失計算が容易となるレドームを得ることが可能となる。
【0026】
実施の形態2.
図4は、この発明に係る実施の形態2によるレドームの構成を示す図である。実施形態2のレドームは、スキン3及び上部構体フレーム5の間にあり、スキン3及び上部構体フレーム5の間隙を埋めるコア材として、フォーム材コア11を用いたことを特徴とする。フォーム材コア11は、高分子からなるクローズドセル(独立発泡)の硬質プラスチック製のフォーム材(発泡体)から構成される。他の構成については、実施の形態1と同一である。
【0027】
実施の形態2によるアンテナ装置は、複合材料からなるスキンと、上記スキンに対し所定の間隔を空けて配置され、貫通穴が設けられた構体と、上記スキンと構体の間隙に配置され、上記スキン及び構体フレームに接着されるフォーム材からなるコアと、上記構体の貫通穴を介して挿入される素子アンテナと、を備えたものである。このように構成することで、上記した実施の形態1と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0028】
1 レドーム、2 アンテナ本体、3 スキン、4 ハニカムコア、5 上部構体フレーム、6 下部構体フレーム、7 ボルト、8 素子アンテナ、9 アンテナモジュール、11 フォーム材コア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料からなるスキンと、
上記スキンに対し所定の間隔を空けて配置され、貫通穴が設けられた構体と、
上記スキンと構体の間隙に配置され、上記スキン及び構体に接着されるハニカム構造のコアと、
上記構体の貫通穴を介して挿入される素子アンテナと、
を備えたアンテナ装置。
【請求項2】
複合材料からなるスキンと、
上記スキンに対し所定の間隔を空けて配置され、貫通穴が設けられた構体と、
上記スキンと構体の間隙に配置され、上記スキン及び構体フレームに接着されるフォーム材からなるコアと、
上記構体の貫通穴を介して挿入される素子アンテナと、
を備えたアンテナ装置。
【請求項3】
上記構体は、上面が上記コアに接着される上記貫通穴が複数形成された上部構体フレームと、上記上部構体フレームの裏面に取り付けられる下部構体フレームから構成され、
上記素子アンテナは、上記下部構体フレームに保持される複数のアンテナモジュール上にそれぞれ形成され、
上記アンテナモジュールは、上部構体フレームの貫通穴を介して挿抜される請求項1または請求項2に記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−165111(P2012−165111A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22725(P2011−22725)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】