説明

アンテナ装置

【課題】 広い帯域で所望のアンテナ特性が得られるアンテナ装置を提供する。
【解決手段】 チップアンテナ12は、親基板2に実装される。親基板2には、表面側接地導体板6、裏面側接地導体板7、ストリップ導体8からなるストリップ線路5を設ける。また、チップアンテナ12は、積層体13、放射導体素子17、無給電導体素子19、結合量調整導体板20およびLGA22によって構成する。放射導体素子17は、ビア18を通じてLGA22の第1の平面電極パッド23に接続される。一方、結合量調整導体板20は、放射導体素子17と無給電導体素子19との間に配置されると共に、その両端側がビア21を通じてLGA22の第2,第3の平面電極パッド24,25に接続される。そして、LGA22は、親基板22の給電用電極パッド9および表面側接地導体板6に接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマイクロ波やミリ波等の高周波信号に用いて好適なアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術によるアンテナ装置として、例えば波長に比べて薄い誘電体を挟んで互いに対向する放射導体素子と接地導体板を設けると共に、放射導体素子の放射面側に無給電導体素子を設けたマイクロストリップアンテナ(パッチアンテナ)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭55−93305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1によるアンテナ装置では、放射導体素子と無給電導体素子との電磁界結合を利用して広帯域化を実現している。しかし、電磁界結合の大きさは放射導体素子と無給電導体素子との間の厚さ方向の間隔寸法が大きく寄与するため、帯域を広げるには限界がある。
【0005】
また、特許文献1によるアンテナ装置では、コネクタ等からなる入力端子を用いて給電を行う構成となっている。しかし、このようなアンテナをミリ波帯に用いる場合には、アンテナの外形が数mm程度まで小さくなるから、コネクタを用いた給電を行うことができず、給電線路に直接接続することになる。このとき、アンテナと給電線路との接合部で整合が崩れやすく、反射特性やアンテナ利得等のアンテナ特性が低下し易いという問題がある。
【0006】
また、例えば多層基板にアンテナと給電線路とを一体化して形成することによって、アンテナと給電線路との整合性を高めることも考えられる。しかし、電磁波の損失を小さくするためには、アンテナに用いる絶縁材料として誘電正接(tanδ)が低い材料が要求されるのに対し、このような特性を有する材料(例えばセラミックス材料)は一般的な絶縁材料(例えば樹脂材料)に比べて高価である。このため、アンテナと給電線路とを一体化した場合には、製造コストが上昇する傾向がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、広い帯域で所望のアンテナ特性が得られるアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、給電線路を備えた親基板にチップアンテナを実装したアンテナ装置であって、前記チップアンテナは、複数の絶縁層が積層された積層体と、該積層体の内部に位置して2つの絶縁層の間に挟まれ前記親基板の給電線路に接続される放射導体素子と、該放射導体素子よりも前記積層体の表面側に位置して該放射導体素子と絶縁された無給電導体素子と、該無給電導体素子と前記放射導体素子との間に配置されこれらの結合量を調整する結合量調整導体板と、前記積層体の裏面に設けられた複数の平面電極パッドからなるランドグリッドアレイとを備え、前記結合量調整導体板は、前記無給電導体素子と前記放射導体素子とが互いに重なり合う部位を部分的に覆い、前記放射導体素子に流れる電流の向きに対して直交方向に前記放射導体素子を跨ぐ構成とし、前記放射導体素子は、前記ランドグリッドアレイの第1の平面電極パッドを介して前記親基板の給電線路に接続し、前記結合量調整導体板の両端側は、前記ランドグリッドアレイの第2,第3の平面電極パッドを介して前記親基板のグランドに接続する構成としている。
【0009】
請求項2の発明では、前記結合量調整導体板の両端側と前記ランドグリッドアレイの第2,第3の平面電極パッドとの間は、前記積層体の厚さ方向に延びる柱状の導体を用いて接続する構成としている。
【0010】
請求項3の発明では、前記給電線路は、前記親基板の表面に設けられた表面側接地導体板と、前記親基板の裏面に設けられた裏面側接地導体板と、前記表面側接地導体板と裏面側接地導体板との間に設けられたストリップ導体とからなるストリップ線路によって構成し、前記ストリップ導体は、前記表面側接地導体板に設けた接続用開口を通じて前記第1の平面電極パッドに接続し、前記表面側接地導体板は、前記第2,第3の平面電極パッドに接続する構成としている。
【0011】
請求項4の発明では、前記給電線路は、前記親基板の表面に設けられた表面側接地導体板と、前記親基板の裏面に設けられた裏面側接地導体板と、前記表面側接地導体板に形成された線状の空隙部と、該空隙部に設けられ該空隙部の長さ方向に沿って延びるストリップ導体とからなるグランド付きコプレーナ線路によって構成し、前記ストリップ導体は、前記第1の平面電極パッドに接続し、前記表面側接地導体板は、前記第2,第3の平面電極パッドに接続する構成としている。
【0012】
請求項5の発明では、前記給電線路は、前記親基板の裏面に設けられた裏面側接地導体板と、前記親基板の表面に設けられたストリップ導体とからなるマイクロストリップ線路によって構成し、前記ストリップ導体は、前記第1の平面電極パッドに接続し、前記裏面側接地導体板は、前記親基板の表面に設けられた2個の接地電極パッドを介して前記第2,第3の平面電極パッドに接続する構成としている。
【0013】
請求項6の発明では、前記放射導体素子、無給電導体素子および結合量調整導体板は、前記積層体の厚さ方向に対して互いに異なる位置に配置する構成としている。
【0014】
請求項7の発明は、給電線路を備えた親基板にチップアンテナを実装したアンテナ装置であって、前記チップアンテナは、複数の絶縁層が積層された積層体と、該積層体の内部に位置して2つの絶縁層の間に挟まれ前記親基板の給電線路に接続される放射導体素子と、該放射導体素子よりも前記積層体の表面側に位置して該放射導体素子と絶縁された無給電導体素子と、前記積層体の裏面に設けられた複数の平面電極パッドからなるランドグリッドアレイとを備え、前記放射導体素子は、前記ランドグリッドアレイの第1の平面電極パッドを介して前記親基板の給電線路に接続し、前記ランドグリッドアレイの残余の平面電極パッドは、前記親基板の電極に接合する構成としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、結合量調整導体板は、無給電導体素子と放射導体素子とが互いに重なり合う部位を部分的に覆い、放射導体素子に流れる電流の向きに対して直交方向に放射導体素子を跨ぐ構成とした。このため、放射導体素子と無給電導体素子とが電界結合するときに、結合量調整導体板を用いてこの電界結合の強さを調整することができ、給電線路と放射導体素子とが整合する帯域を広くすることができる。
【0016】
具体的には、結合量調整導体板の幅方向が放射導体素子に流れる電流の向きと平行な方向としたときに、結合量調整導体板の幅寸法を変えることによって、放射導体素子と無給電導体素子との電界結合の強さを調整することができる。また、結合量調整導体板の長さ方向が放射導体素子に流れる電流の向きと直交する方向としたときに、結合量調整導体板の長さ寸法を変えることによって、電流の共振周波数を調整することができる。
【0017】
また、積層体の裏面には複数の平面電極パッドからなるランドグリッドアレイを設けたから、例えばランドグリッドアレイを親基板側に半田付けすることによって、親基板にチップアンテナを接合して固定することができる。これに加え、放射導体素子はランドグリッドアレイの第1の平面電極パッドを介して親基板の給電線路に接続されるから、第1の平面電極パッドを介して給電を行うことができる。また、第1〜第3の平面電極パッドの配置や形状を適宜調整することによって、親基板とチップアンテナとの間の整合を取ることができる。これらの調整によって取りきれない整合は、積層体内のビアの径および配置、放射導体素子、結合量調整導体板、無給電導体素子の形状、大きさおよび配置、積層体の絶縁層の厚みおよび層構造等を調整することによって、適宜調整することができる。
【0018】
さらに、積層体には例えば裏面全体を覆うような接地導体板を設けないから、放射導体素子等を接地導体板との間で不必要な浮遊容量が発生することがない。このため、浮遊容量に基づく、整合性の低下を抑えることができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、結合量調整導体板の両端側とランドグリッドアレイの第2,第3の平面電極パッドとの間は、柱状の導体によって接続した。このため、積層体に設けた柱状の導体をなすビアを用いて結合量調整導体板と第2,第3の平面電極パッドとを容易に接続することができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、給電線路は、親基板に設けた表面側接地導体板、裏面側接地導体板およびストリップ導体からなるストリップ線路によって構成した。このため、ストリップ導体を第1の平面電極パッドに接続することによって、ストリップ線路から放射導体素子に給電を行うことができる。また、表面側接地導体板を第2,第3の平面電極パッドに接続することによって、結合量調整導体板の両端側をグランドに接続することができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、給電線路は、親基板に設けた表面側接地導体板と、裏面側接地導体板と、表面側接地導体板の空隙部に設けたストリップ導体とからなるグランド付きコプレーナ線路によって構成した。このため、ストリップ導体を第1の平面電極パッドに接続することによって、ストリップ線路から放射導体素子に給電を行うことができる。また、表面側接地導体板を第2,第3の平面電極パッドに接続することによって、結合量調整導体板の両端側をグランドに接続することができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、給電線路は、親基板に設けた裏面側接地導体板およびストリップ導体からなるマイクロストリップ線路によって構成した。このため、ストリップ導体を第1の平面電極パッドに接続することによって、ストリップ線路から放射導体素子に給電を行うことができる。また、裏面側接地導体板は親基板の表面に設けた2個の接地電極パッドを介して第2,第3の平面電極パッドに接続するから、2個の接地電極パッドを介して結合量調整導体板の両端側をグランドに接続することができる。
【0023】
請求項6の発明によれば、放射導体素子、無給電導体素子および結合量調整導体板は、複数の絶縁層が積層された積層体に設ける構成とした。このため、例えば互いに異なる絶縁層の表面に放射導体素子、無給電導体素子および結合量調整導体板を設けることによって、これらを積層体の厚さ方向に対して互いに異なる位置に容易に配置することができる。この結果、チップアンテナの生産性を高めることができると共に、アンテナ毎の特性ばらつきを低減することができる。
【0024】
請求項7の発明によれば、無給電導体素子と放射導体素子とが互いに重なり合う構成としたから、無給電導体素子を省いた場合に比べて、給電線路と放射導体素子とが整合する帯域を広くすることができる。
【0025】
また、積層体の裏面には複数の平面電極パッドからなるランドグリッドアレイを設けたから、例えばランドグリッドアレイを親基板側に半田付けすることによって、親基板にチップアンテナを接合して固定することができる。また、放射導体素子はランドグリッドアレイの第1の平面電極パッドを介して親基板の給電線路に接続したから、第1の平面電極パッドを介して給電を行うことができる。また、複数の平面電極パッドの配置や形状を適宜調整することによって、親基板とチップアンテナとの間の整合を取ることができる。これらの調整によって取りきれない整合は、積層体内のビアの径および配置、放射導体素子等の形状、大きさおよび配置、積層体の絶縁層の厚みおよび層構造等を調整することによって、調整することができる。
【0026】
さらに、積層体には例えば裏面全体を覆うような接地導体板を設けないから、放射導体素子等を接地導体板との間で不必要な浮遊容量が発生することがない。このため、浮遊容量に基づく、整合性の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるアンテナ装置を示す斜視図である。
【図2】図1中の親基板とチップアンテナを分離した状態で示す斜視図である。
【図3】アンテナ装置の要部を示す平面図である。
【図4】アンテナ装置を図3中の矢示IV−IV方向からみた断面図である。
【図5】アンテナ装置を図3中の矢示V−V方向からみた断面図である。
【図6】図1中のチップアンテナを単体で示す斜視図である。
【図7】図1中のチップアンテナを示す平面図である。
【図8】チップアンテナを図5中の矢示VIII−VIII方向からみた断面図である。
【図9】第1の実施の形態および第1の比較例において、反射特性の周波数特性を示す特性線図である。
【図10】第1の実施の形態および第1の比較例において、アンテナ利得の周波数特性を示す特性線図である。
【図11】第2の実施の形態によるアンテナ装置を親基板とチップアンテナを分離した状態で示す斜視図である。
【図12】第2の実施の形態によるアンテナ装置の要部を示す平面図である。
【図13】アンテナ装置を図12中の矢示XIII−XIII方向からみた断面図である。
【図14】第3の実施の形態によるアンテナ装置を親基板とチップアンテナを分離した状態で示す斜視図である。
【図15】第3の実施の形態によるアンテナ装置の要部を示す平面図である。
【図16】アンテナ装置を図15中の矢示XVI−XVI方向からみた断面図である。
【図17】第4の実施の形態によるアンテナ装置を示す斜視図である。
【図18】第4の実施の形態によるアンテナ装置の要部を示す平面図である。
【図19】アンテナ装置を図18中の矢示XIX−XIX方向からみた断面図である。
【図20】アンテナ装置を図18中の矢示XX−XX方向からみた断面図である。
【図21】図17中のチップアンテナを単体で示す斜視図である。
【図22】第4の実施の形態および第2の比較例において、反射特性の周波数特性を示す特性線図である。
【図23】第4の実施の形態および第2の比較例において、アンテナ利得の周波数特性を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態によるアンテナ装置として例えば60GHz帯用のパッチアンテナに適用した場合を例に挙げて、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0029】
図1ないし図5は第1の実施の形態によるアンテナ装置1を示している。このアンテナ装置1は、後述する親基板2にチップアンテナ12を実装することによって構成されている。
【0030】
親基板2は、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のうち例えばX軸方向およびY軸方向に対して平行に広がる平板状に形成されている。この親基板2は、幅方向となるY軸方向に対して例えば数mm程度の幅寸法を有し、長さ方向となるX軸方向に対して例えば数mm程度の長さ寸法を有すると共に、厚さ方向となるZ軸方向に対して例えば数百μm程度の厚さ寸法を有している。
【0031】
また、親基板2は、例えば絶縁性の樹脂材料を用いて形成され、表面2A側から裏面2B側に向けてZ軸方向に積層した2層の絶縁層3,4を有している。そして、親基板2には、ストリップ線路5が設けられている。
【0032】
ストリップ線路5は、図1ないし図5に示すように、チップアンテナ12の放射導体素子17に対する給電を行う給電線路を構成している。このストリップ線路5は、親基板2の表面2Aに設けられた表面側接地導体板6と、親基板2の裏面2Bに設けられた裏面側接地導体板7と、表面側接地導体板6と裏面側接地導体板7との間に位置して絶縁層3,4間に挟まれて設けられたストリップ導体8とによって構成されている。
【0033】
ここで、表面側接地導体板6は、例えば銅、銀等の導電性金属材料を用いた薄膜によって形成され、グランドに接続されている。この表面側接地導体板6は、親基板2の表面2Aを略全面に亘って覆っている。
【0034】
また、表面側接地導体板6の中央部分には、放射導体素子17とストリップ導体8とを接続するために、例えば略四角形の接続用開口6Aが設けられている。この接続用開口6Aは、X軸方向に長さ寸法L1を有すると共に、Y軸方向に幅寸法L2を有し、略長方形の開口となっている。このとき、接続用開口6Aは、放射導体素子17よりも大きな面積をもっている。このため、接続用開口6Aの長さ寸法L1および幅寸法L2は、放射導体素子17の長さ寸法L3および幅寸法L4よりも大きな値に設定されている。
【0035】
また、接続用開口6Aの中央部分には、略四角形の給電用電極パッド9が設けられている。この給電用電極パッド9は、例えば後述するチップアンテナ12の第1の平面電極パッド23と略同じ大きさおよび形状に形成されている。また、給電用電極パッド9は、例えば放射導体素子17よりも小さな面積に形成されている。なお、親基板2とチップアンテナ12とを接合したときの位置ずれ等に基づくアンテナ特性のばらつきを低減するためには、接続用開口6Aの面積はできるだけ大きく形成した方がよい。
【0036】
裏面側接地導体板7は、表面側接地導体板6とほぼ同様に、導電性金属材料を用いて形成され、グランドに接続されている。この裏面側接地導体板7は、親基板2の裏面2Bを略全面に亘って覆っている。
【0037】
また、裏面側接地導体板7は、複数のビア10によって表面側接地導体板6に電気的に接続されている。このビア10は、絶縁層3,4を貫通して内径が数十〜数百μm程度の貫通孔に例えば銅、銀等の導電性金属材料を設けることによって円柱状の導体として形成されている。また、ビア10は、Z軸方向に延びて、その両端が接地導体板6,7にそれぞれ接続されている。そして、複数のビア10は、ストリップ導体8を取囲むようにストリップ導体8の幅方向両側に配置されると共に、接続用開口6Aを取囲むように接続用開口6Aの外周縁に沿って配置されている。これにより、ビア10は、接地導体板6,7の電位を安定させると共に、ストリップ導体8を伝搬する高周波信号が漏洩するのを抑制している。
【0038】
一方、ストリップ導体8は、例えば表面側接地導体板6と同様の導電性金属材料からなり、X軸方向に延びる細長い帯状に形成されると共に、絶縁層3と絶縁層4との間に配置されている。このストリップ導体8の端部は、接続用開口6Aの中心部分に配置され、接続線路としてのビア11および給電用電極パッド9を介して放射導体素子17に接続されている。
【0039】
ビア11は、ビア10とほぼ同様に円柱状の導体として形成されている。このビア11は、絶縁層3を貫通して形成され、接続用開口6Aの中心部分を通ってZ軸方向に延び、その両端がストリップ導体8と給電用電極パッド9にそれぞれ接続されている。そして、ストリップ線路5は、幅方向の中心位置を通るX軸に平行な線に関して線対称に形成されている。
【0040】
チップアンテナ12は、図1ないし図8に示すように、積層体13、放射導体素子17、無給電導体素子19、結合量調整導体板20およびランドグリッドアレイ22(以下、LGA22という)によって構成されている。
【0041】
積層体13は、親基板2に比べて誘電正接が低い材料として例えば低温同時焼成セラミックス(LTCC)を用いて形成され、表面13A側から裏面13B側に向けてZ軸方向に積層した3層の絶縁層14〜16を有している。各絶縁層14〜16は、1000℃以下の低温で焼成可能な絶縁性のセラミックス材料からなり、例えば6〜10程度の比誘電率を有すると共に、薄い層状に形成されている。ここで、各絶縁層14〜16は、例えばX軸方向に数百μm〜数mm程度の長さ寸法を有し、Y軸方向に数百μm〜数mm程度の幅寸法を有すると共に、X軸方向が短辺となりY軸方向が長辺となった略長方形に形成されている。これにより、積層体13は、略直方体形状に形成されている。
【0042】
放射導体素子17は、例えば銅、銀等の導電性金属材料を用いて略四角形状に形成され、表面側接地導体板6の接続用開口6Aと間隔をもって対向している。この放射導体素子17は、絶縁層15と絶縁層16との間に配置されている。このため、放射導体素子17と表面側接地導体板6との間には、絶縁層16が配置される。また、放射導体素子17は、接続用開口6Aよりも小さい面積をもって形成されている。このため、親基板2に接合された状態でチップアンテナ12を平面視したときには、放射導体素子17は、接続用開口6Aの内部に配置される。
【0043】
また、放射導体素子17は、図3に示すように、X軸方向に例えば数百μm程度の長さ寸法L3を有すると共に、Y軸方向に例えば数百μm程度の幅寸法L4を有している。この放射導体素子17のX軸方向の長さ寸法L3は、電気長で例えば使用する高周波信号の半波長となる値に設定されている。
【0044】
さらに、放射導体素子17には、X軸方向の途中位置にビア18が接続されると共に、ビア18を介して後述する第1の平面電極パッド23が接続されている。このとき、ビア18は、例えばX軸方向に対して放射導体素子17の中央位置から位置ずれして配置されると共に、ビア10とほぼ同様に円柱状の導体として形成されている。そして、ビア18は、絶縁層16を貫通すると共に、第1の平面電極パッド23等を介してストリップ導体8に電気的に接続される。これにより、放射導体素子17には、ストリップ線路5からの給電によって、X軸方向に向けて電流Iが流れる構成となっている。
【0045】
無給電導体素子19は、例えば放射導体素子17と同様の導電性金属材料を用いて略四角形状に形成され、積層体13のうち放射導体素子17からみて親基板2との接合面(裏面13B)に対して反対側に位置し、積層体13の表面13A(絶縁層14の表面)に配置されている。この無給電導体素子19と放射導体素子17との間には、絶縁層14,15が配置されている。このため、無給電導体素子19は、放射導体素子17および表面側接地導体板6と絶縁された状態で、放射導体素子17と間隔をもって対面している。
【0046】
また、無給電導体素子19は、図7に示すように、X軸方向に例えば数百μm程度の長さ寸法L5を有すると共に、Y軸方向に例えば数百μm程度の幅寸法L6を有している。この無給電導体素子19の幅寸法L6は、例えば放射導体素子17の幅寸法L4よりも大きくなっている。一方、無給電導体素子19の長さ寸法L5は、例えば放射導体素子17の長さ寸法L3よりも小さくなっている。なお、無給電導体素子19および放射導体素子17の大小関係やこれらの具体的な形状は、上述のものに限らず、チップアンテナ12の放射パターン等を考慮して適宜設定されるものである。そして、無給電導体素子19は、放射導体素子17と電磁界係合を生じる。
【0047】
結合量調整導体板20は、例えば放射導体素子17と同様の導電性金属材料を用いて略四角形状に形成され、放射導体素子17と無給電導体素子19との間に配置されている。具体的には、結合量調整導体板20は、絶縁層14と絶縁層15との間に配置され、放射導体素子17および無給電導体素子19に対して絶縁されている。
【0048】
また、結合量調整導体板20は、図8に示すように、X軸方向に例えば数百μm程度の長さ寸法L7を有すると共に、Y軸方向に例えば数百μm程度の幅寸法L8を有している。この結合量調整導体板20の幅寸法L8は、例えば放射導体素子17の幅寸法L4よりも大きくなり、無給電導体素子19の幅寸法L6と同程度の値に設定されている。一方、結合量調整導体板20の長さ寸法L7は、例えば放射導体素子17の長さ寸法L3および無給電導体素子19の長さ寸法L5よりも小さくなっている。これにより、結合量調整導体板20は、放射導体素子17と無給電導体素子19とが互いに重なり合う部位のうちその一部となる中心部分(例えばX軸方向の中心部分)をY軸方向に横切って覆っている。このため、結合量調整導体板20は、放射導体素子17に流れる電流Iの向きに対して直交方向に放射導体素子17を跨いでいる。
【0049】
また、結合量調整導体板20の両端側には一対のビア21が設けられている。これらのビア21は、ビア10とほぼ同様に円柱状の導体として形成され、絶縁層15,16を貫通して形成され、結合量調整導体板20と第2,第3の平面電極パッド24,25とを電気的に接続している。
【0050】
そして、放射導体素子17、無給電導体素子19および結合量調整導体板20は、例えば互いの中心位置がXY平面上の同じ位置に配置されている。また、放射導体素子17、無給電導体素子19および結合量調整導体板20は、これらの中心位置を通るX軸に平行な線に関して線対称に形成されると共に、これらの中心位置を通るY軸に平行な線に関して線対称に形成されている。そして、結合量調整導体板20は、放射導体素子17と無給電導体素子19との間の結合量を調整するものである。
【0051】
LGA22は、図1および図6に示すように、第1ないし第3の平面電極パッド23〜25によって構成され、積層体13の裏面13Bに設けられている。第1の平面電極パッド23は、裏面13Bの中央部分に配置され、給電用電極パッド9と略同じ大きさで、略同じ四角形状に形成されている。このため、第1の平面電極パッド23は、放射導体素子17よりも小さな面積に形成されている。
【0052】
一方、第2,第3の平面電極パッド24,25は、第1の平面電極パッド23を挟んでY軸方向の両側にそれぞれ配置されている。第2,第3の平面電極パッド24,25は、例えばX軸方向が長辺となり、Y軸方向が短辺となった長方形状に形成されると共に、Y軸方向に対して接続用開口6Aの幅寸法L2と略同じ間隔寸法をもって互いに離間している。このため、第2,第3の平面電極パッド24,25の長辺のうち第1の平面電極パッド23に近いものは、接続用開口6Aの外周縁に沿ってX軸方向に延伸している。
【0053】
これにより、例えばリフロー方式の半田付け等によってチップアンテナ12を親基板2に接合するときには、第1ないし第3の平面電極パッド23〜25と給電用電極パッド9、表面側接地導体板6との間にセルフアライメント作用が生じる。この結果、第1の平面電極パッド23の中心が給電用電極パッド9の中心に略一致すると共に、第2,第3の平面電極パッド24,25の長辺が接続用開口6AのうちX軸方向に延びる部分に対して略平行な状態に位置合わせされる。
【0054】
また、第2,第3の平面電極パッド24,25の長辺の長さ寸法は、例えば放射導体素子17の長さ寸法L3と同程度の値に設定されると共に、接続用開口6Aの長さ寸法L1よりも小さい値に設定されている。さらに、第1ないし第3の平面電極パッド23〜25は、第1の平面電極パッド23の中心位置を通るX軸に平行な線に関して線対称に形成されると共に、第1の平面電極パッド23の中心位置を通るY軸に平行な線に関して線対称に形成されている。
【0055】
そして、第1ないし第3の平面電極パッド23〜25は、給電用電極パッド9および表面側接地導体板6のうち接続用開口6Aの周縁部分と対向した状態で配置され、例えば半田付け等の接合手段によって給電用電極パッド9および表面側接地導体板6に接合される。これにより、チップアンテナ12は、親基板2に接合して固定されると共に、第1の平面電極パッド23は給電用電極パッド9に電気的に接続され、第2,第3の平面電極パッド24,25は表面側接地導体板6に電気的に接続される。
【0056】
本実施の形態によるアンテナ装置1は上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0057】
まず、ストリップ線路5から放射導体素子17に向けて給電を行うと、放射導体素子17には、X軸方向に向けて電流Iが流れる。これにより、チップアンテナ12は、放射導体素子17の長さ寸法L3に応じた高周波信号を送信または受信する。
【0058】
このとき、放射導体素子17と無給電導体素子19とは、互いに電磁界結合すると共に、互いに共振周波数が異なる2つの共振モードを有する。これら2つの共振周波数では高周波信号のリターンロスが低下するのに加え、これら2つの共振周波数の間の周波数帯域でも高周波信号のリターンロスが低下する。このため、無給電導体素子19を省いた場合に比べて、使用可能な高周波信号の帯域が広がる。
【0059】
また、無給電導体素子19は放射導体素子17との間隔寸法が大きくなるに従って、ストリップ線路5と放射導体素子17とが整合する帯域は広がる傾向がある。しかし、無給電導体素子19は放射導体素子17との間隔寸法が大きくなると、チップアンテナ12が大型化してしまい、小型の電子機器等には適用が難しいという問題がある。
【0060】
これに対し、本実施の形態では、放射導体素子17と無給電導体素子19との間に結合量調整導体板20を設けたから、結合量調整導体板20を用いて放射導体素子17と無給電導体素子19との間の結合量を調整することができる。
【0061】
ここで、チップアンテナ12をパッチアンテナとして機能させるためには、放射導体素子17からみて無給電導体素子19と反対側に接地導体板を設ける必要がある。この接地導体板をチップアンテナ12に設けた場合には、放射導体素子17、結合量調整導体板20、ビア18,21等との間に不要な浮遊容量が発生し、給電線路となるストリップ線路5との間で整合が崩れる傾向がある。このため、本実施の形態では、チップアンテナ12には接地導体板は設けず、親基板2に接地導体板6,7を設ける構成とした。
【0062】
このようにチップアンテナ12から接地導体板を省いた構成による効果を確認するために、接地導体板を省いた場合(第1の実施の形態)と、接地導体板を設けた場合(第1の比較例)について、反射特性(リターンロス)およびアンテナ利得の周波数特性を測定した。その結果を図9および図10に示す。
【0063】
なお、親基板2の厚さ寸法は0.2mmとし、チップアンテナ12の厚さ寸法は0.4mmとした。放射導体素子17の長さ寸法L3は0.775mmとし、幅寸法L4は0.5mmとした。無給電導体素子19の長さ寸法L5は0.725mmとし、幅寸法L6は1.55mmとした。結合量調整導体板20の長さ寸法L7は0.35mmとし、幅寸法L8は1.55mmとした。ビア18,21の直径は0.15mmとした。また、第1の比較例では、チップアンテナ12の裏面13Bよりも50μmだけ表面13Aに近い位置にXY面と平行な接地導体板を配置すると共に、接地導体板はビア18の周囲を除いて略全面に亘って設けるものとした。
【0064】
図9の結果より、チップアンテナ12に接地導体板を設けない本実施の形態では、反射特性で−10dB以下となる周波数帯域幅は13.2GHz程度となる。これに対し、チップアンテナ12に接地導体板を設けた第1の比較例では、反射特性で−10dB以下となる周波数帯域幅は、6.2GHz程度となり、本実施の形態に比べて約53%低下することが分かる。
【0065】
また、図10の結果より、チップアンテナ12に接地導体板を設けない本実施の形態では、最大アンテナ利得が6dBiとなると共に、アンテナ利得の1dB幅、即ち最大アンテナ利得から1dB低下した周波数帯域の幅は10.6GHz程度となる。これに対し、チップアンテナ12に接地導体板を設けた第1の比較例では、最大アンテナ利得は本実施の形態よりも0.1dB上昇するものの、アンテナ利得の1dB幅は6.8GHzとなり、本実施の形態に比べて約36%低下することが分かる。
【0066】
このように、本実施の形態では、チップアンテナ12に接地導体板を設けないことによって、ストリップ線路5との整合性を高めることができ、反射特性およびアンテナ利得を広帯域化することができる。
【0067】
かくして、本実施の形態では、結合量調整導体板20は、放射導体素子17と無給電導体素子19とが互いに重なり合う部位を部分的に覆い、放射導体素子17に流れる電流Iの向きに対して直交方向に放射導体素子17を跨ぐ構成とした。このため、放射導体素子17と無給電導体素子19とが電界結合するときに、結合量調整導体板20を用いてこの電界結合の強さを調整することができ、ストリップ線路5と放射導体素子17とが整合する帯域を広くすることができる。
【0068】
また、積層体13の裏面13Bには複数の平面電極パッド23〜25からなるLGA22を設けたから、例えばLGA22を親基板2側に半田付けすることによって、親基板2にチップアンテナ12を接合して固定することができる。これに加え、放射導体素子17はLGA22の第1の平面電極パッド23を介して親基板2のストリップ線路5に接続されるから、第1の平面電極パッド23を介して給電を行うことができる。また、第1〜第3の平面電極パッド23〜25の配置や形状を適宜調整することによって、親基板2とチップアンテナ12との間の整合を取ることができる。これらの調整によって取りきれない整合は、積層体13内のビア18,21の径および配置、放射導体素子17、無給電導体素子19、結合量調整導体板20の形状、大きさおよび配置、積層体13の絶縁層14〜16の厚みおよび層構造等を調整することによって、適宜調整することができる。
【0069】
さらに、積層体13には接地導体板を設けないから、放射導体素子17等と接地導体板との間で不必要な浮遊容量が発生することがない。このため、浮遊容量に基づく整合性の低下を抑えることができ、積層体13に接地導体板を設けた場合に比べて、反射特性およびアンテナ利得を広帯域化することができる。
【0070】
また、結合量調整導体板20および第2,第3の平面電極パッド24,25を積層体13に設けたから、積層体13の絶縁層15,16を貫通するビア21を用いて、結合量調整導体板20の両端側を第2,第3の平面電極パッド24,25を介して表面側接地導体板6に容易に接続することができる。このため、結合量調整導体板20の電位を安定させることができると共に、結合量調整導体板20の電気的な特性をY軸方向に対して対称にすることができ、結合量調整導体板20の一端側だけを表面側接地導体板6に接続した場合に比べて、浮遊容量の発生や不要な共振現象等を抑制することができる。
【0071】
また、放射導体素子17、無給電導体素子19および結合量調整導体板20は、複数の絶縁層14〜16が積層された積層体13に設ける構成とした。このため、互いに異なる絶縁層14〜16の表面に無給電導体素子19、結合量調整導体板20および放射導体素子17を順次設けることによって、これらを積層体13の厚さ方向に対して互いに異なる位置に容易に配置することができる。この結果、量産工程に容易に適用することができ、チップアンテナ12の生産性を高めることができると共に、アンテナ毎の特性ばらつきを低減することができる。
【0072】
さらに、親基板2には、表面側接地導体板6、裏面側接地導体板7およびストリップ導体8からなるストリップ線路5を設けた。このため、接続用開口6Aを通じてストリップ導体8を第1の平面電極パッド23に接続することによって、ストリップ線路5から放射導体素子17に給電を行うことができる。また、表面側接地導体板6を第2,第3の平面電極パッド24,25に接合することによって、結合量調整導体板20の両端側をグランドに接続することができる。
【0073】
次に、図11ないし図13は本発明の第2の実施の形態を示している。そして、本実施の形態の特徴は、親基板にグランド付きコプレーナ線路を設け、該グランド付きコプレーナ線路をチップアンテナの放射導体素子に接続する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0074】
第2の実施の形態によるアンテナ装置31は、親基板32にチップアンテナ12を実装することによって構成されている。
【0075】
親基板32は、第1の実施の形態による親基板2とほぼ同様に、例えば絶縁性の樹脂材料を用いて形成され、XY面に平行に広がっている。また、親基板32の表面32Aには、チップアンテナ12が実装される。
【0076】
グランド付きコプレーナ線路33は、チップアンテナ12の放射導体素子17に対する給電を行う給電線路を構成している。このグランド付きコプレーナ線路33は、親基板32の表面32Aに設けられた表面側接地導体板34と、親基板32の裏面32Bに設けられた裏面側接地導体板35と、表面側接地導体板34に形成されX軸方向に延びる線状の空隙部36と、該空隙部36に設けられ該空隙部36の長さ方向に沿って延びるストリップ導体37とによって構成されている。
【0077】
ここで、表面側接地導体板34は、第1の実施の形態による表面側接地導体板6と同様に、導電性金属材料を用いた薄膜によって形成され、グランドに接続されている。この表面側接地導体板34は、親基板32の表面32Aを略全面に亘って覆っている。裏面側接地導体板35も、表面側接地導体板34と同様に、金属薄膜によって形成され、グランドに接続されると共に、親基板32の裏面32Bを略全面に亘って覆っている。
【0078】
また、表面側接地導体板34の中央部分には、例えば略四角形の接続用開口34Aが設けられている。この接続用開口34Aは、第1の実施の形態による接続用開口6Aとほぼ同様な大きさおよび形状をもって形成され、略長方形の開口となると共に、放射導体素子17よりも大きな面積を有している。このため、接続用開口34Aの4辺の外周縁のうちX軸方向に延びる2辺は、第2,第3の平面電極パッド24,25の長辺のうち第1の平面電極パッド23に近いものに沿って延伸している。そして、接続用開口34Aには、X軸方向に直線状に延びる空隙部36が連続して繋がっている。
【0079】
また、裏面側接地導体板35は、複数のビア38によって表面側接地導体板34に電気的に接続されている。このビア38は、親基板32を貫通すると共に、Z軸方向に延びた円柱状の導体として形成されている。そして、複数のビア38は、空隙部36を取囲むように空隙部36の幅方向両側に配置されると共に、接続用開口34Aを取囲むように接続用開口34Aの外周縁に沿って配置されている。
【0080】
ストリップ導体37は、表面側接地導体板34と同様の導電性金属材料からなり、親基板32の表面32Aに形成されている。このストリップ導体37は、空隙部36のうち幅方向の中心部分に位置してX軸方向に延びる細長い帯状に形成されている。このとき、ストリップ導体37は、空隙部36によって表面側接地導体板34と非接触な状態になっている。そして、グランド付きコプレーナ線路33は、幅方向の中心位置を通るX軸に平行な線に関して線対称に形成されている。
【0081】
また、ストリップ導体37の端部は、接続用開口34Aの中央部分に位置してチップアンテナ12の第1の平面電極パッド23と略同じ形状に形成された接合部37Aとなっている。この接合部37Aは、チップアンテナ12の第1の平面電極パッド23と対向した位置に配置され、半田付け等の接合手段によって第1の平面電極パッド23に接合される。これにより、ストリップ導体37は、チップアンテナ12の放射導体素子17に電気的に接続される。
【0082】
一方、表面側接地導体板34のうち接続用開口34Aを挟んで幅方向両側に位置する部位は、第2,第3の平面電極パッド24,25に接合される。これにより、チップアンテナ12の結合量調整導体板20の両端側は、第2,第3の平面電極パッド24,25を介してグランドに接続される。
【0083】
そして、例えばリフロー方式の半田付け等によってチップアンテナ12を親基板32に接合するときには、第1ないし第3の平面電極パッド23〜25とストリップ導体37の接合部37A、表面側接地導体板34との間にセルフアライメント作用が生じる。
【0084】
かくして、本実施の形態でも第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、放射導体素子17にグランド付きコプレーナ線路33を接続する構成としたから、単層からなる親基板32を用いることができる。このため、第1の実施の形態によるストリップ線路5に比べて、グランド付きコプレーナ線路33の構成を簡略化することができ、製造コストを低減することができる。また、高周波回路において一般的に使用されるグランド付きコプレーナ線路33を用いるから、他の高周波回路との接続性が向上する。
【0085】
次に、図14ないし図16は本発明の第3の実施の形態を示している。そして、本実施の形態の特徴は、親基板にマイクロストリップ線路を設け、該マイクロストリップ線路をチップアンテナの放射導体素子に接続する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0086】
第3の実施の形態によるアンテナ装置41は、親基板42にチップアンテナ12を実装することによって構成されている。
【0087】
親基板42は、第1の実施の形態による親基板2とほぼ同様に、例えば絶縁性の樹脂材料を用いて形成され、XY面に平行に広がっている。また、親基板42の表面42Aには、チップアンテナ12が実装される。
【0088】
マイクロストリップ線路43は、チップアンテナ12の放射導体素子17に対する給電を行う給電線路を構成している。このマイクロストリップ線路43は、親基板42の裏面42Bに設けられた裏面側接地導体板44と、親基板42の表面42Aに設けられたストリップ導体45とによって構成されている。
【0089】
ここで、裏面側接地導体板44は、第1の実施の形態による表面側接地導体板6と同様に、導電性金属材料を用いた薄膜によって形成され、親基板42の裏面42Bを略全面に亘って覆っている。また、ストリップ導体45は、裏面側接地導体板44と同様の導電性金属材料からなり、X軸方向に延びる細長い帯状に形成されている。そして、マイクロストリップ線路43は、幅方向の中心位置を通るX軸に平行な線に関して線対称に形成されている。
【0090】
また、ストリップ導体45の端部は、チップアンテナ12の第1の平面電極パッド23と略同じ形状に形成された接合部45Aとなっている。この接合部45Aは、チップアンテナ12の第1の平面電極パッド23と対向した位置に配置され、半田付け等の接合手段によって第1の平面電極パッド23に接合される。これにより、ストリップ導体45は、チップアンテナ12の放射導体素子17に電気的に接続される。
【0091】
さらに、親基板42の表面42Aには、2個の接地電極パッド46,47が設けられている。これらの接地電極パッド46,47は、ストリップ導体45の接合部45Aを挟んで幅方向(Y軸方向)の両側に位置すると共に、チップアンテナ12の第2,第3の平面電極パッド24,25と対向する位置に配置されている。また、接地電極パッド46,47は、第2,第3の平面電極パッド24,25と略同じ大きさおよび形状に形成されると共に、親基板42を貫通するビア48を用いて裏面側接地導体板44に電気的に接続されている。そして、接地電極パッド46,47は、半田付け等の接合手段によってチップアンテナ12の第2,第3の平面電極パッド24,25にそれぞれ接合される。これにより、チップアンテナ12の結合量調整導体板20の両端側は、接地電極パッド46,47等を介してグランドに接続される。
【0092】
また、ストリップ導体45の接合部45Aは、第1の平面電極パッド23と略同じ大きさおよび形状に形成されると共に、接地電極パッド46,47は、第2,第3の平面電極パッド24,25と略同じ大きさおよび形状に形成されている。このため、例えばリフロー方式の半田付け等によってチップアンテナ12を親基板42に接合するときには、第1ないし第3の平面電極パッド23〜25とストリップ導体45の接合部45A、接地電極パッド46,47との間にセルフアライメント作用が生じる。
【0093】
かくして、本実施の形態でも第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、放射導体素子17にマイクロストリップ線路43を接続する構成としたから、第1の実施の形態によるストリップ線路5に比べて、マイクロストリップ線路43の構成を簡略化することができ、製造コストを低減することができる。また、高周波回路において一般的に使用されるマイクロストリップ線路43を用いるから、他の高周波回路との接続性が向上する。
【0094】
次に、図17ないし図21は本発明の第4の実施の形態を示している。そして、本実施の形態の特徴は、チップアンテナの結合用調整導体板を省く構成としたことにある。なお、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0095】
第4の実施の形態によるアンテナ装置51は、親基板2にチップアンテナ52を実装することによって構成されている。
【0096】
チップアンテナ52は、積層体53、放射導体素子56、無給電導体素子58およびランドグリッドアレイ59(以下、LGA59という)によって構成されている。
【0097】
積層体53は、第1の実施の形態による積層体13と同様に、例えば低温同時焼成セラミックス(LTCC)を用いて形成されている。この積層体53は、表面53A側から裏面53B側に向けてZ軸方向に積層した2層の絶縁層54,55を有し、略直方体形状に形成されている。
【0098】
放射導体素子56は、第1の実施の形態による放射導体素子17とほぼ同様に形成され、表面側接地導体板6の接続用開口6Aと間隔をもって対向している。この放射導体素子56は、絶縁層54と絶縁層55との間に配置されている。また、放射導体素子56は、接続用開口6Aよりも小さい面積をもって形成されると共に、放射導体素子56のX軸方向の長さ寸法は、電気長で例えば使用する高周波信号の半波長となる値に設定されている。
【0099】
さらに、放射導体素子56には、X軸方向の途中位置に円柱状の導体からなるビア57が接続されると共に、該ビア57を介して後述する第1の平面電極パッド60が接続されている。このとき、ビア57は、例えばX軸方向に対して放射導体素子56の中央位置から位置ずれして配置されている。そして、放射導体素子56は、ビア57、第1の平面電極パッド23等を介してストリップ導体8に電気的に接続される。
【0100】
無給電導体素子58は、第1の実施の形態による無給電導体素子19とほぼ同様に形成され、積層体53のうち放射導体素子56からみて親基板2との接合面(裏面53B)に対して反対側に位置し、積層体53の表面53A(絶縁層54の表面)に配置されている。この無給電導体素子58は、放射導体素子56および表面側接地導体板6と絶縁された状態で、放射導体素子56と間隔をもって対面している。そして、無給電導体素子58は、放射導体素子56と電磁界係合を生じる。
【0101】
LGA59は、第1の実施の形態による平面電極パッド23〜25とほぼ同様な第1ないし第3の平面電極パッド60〜62を備えると共に、積層体53の裏面53Bに設けられている。第1の平面電極パッド60は、裏面53Bの中央部分に配置され、給電用電極パッド9と略同じ大きさで、略同じ四角形状に形成されている。
【0102】
一方、第2,第3の平面電極パッド61,62は、第1の平面電極パッド60を挟んでY軸方向の両側にそれぞれ配置されている。第2,第3の平面電極パッド61,62は、X軸方向が長辺となり、Y軸方向が短辺となった長方形状に形成されると共に、Y軸方向に対して接続用開口6Aの幅寸法と略同じ間隔寸法をもって互いに離間している。
【0103】
また、第1ないし第3の平面電極パッド60〜62は、第1の平面電極パッド60の中心位置を通るX軸に平行な線に関して線対称に形成されると共に、第1の平面電極パッド60の中心位置を通るY軸に平行な線に関して線対称に形成されている。
【0104】
そして、第1ないし第3の平面電極パッド60〜62は、給電用電極パッド9および表面側接地導体板6のうち接続用開口6Aの周縁部分と対向した状態で配置され、例えば半田付け等の接合手段によって給電用電極パッド9および電極としての表面側接地導体板6に接合される。これにより、チップアンテナ12は、親基板2に接合して固定されると共に、第1の平面電極パッド23は給電用電極パッド9に電気的に接続される。また、例えばリフロー方式の半田付け等によってチップアンテナ52を親基板2に接合するときには、第1ないし第3の平面電極パッド60〜62と給電用電極パッド9、表面側接地導体板6との間にセルフアライメント作用が生じる。
【0105】
かくして、本実施の形態でも第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、本実施の形態によるチップアンテナ52は結合量調整導体板を省く構成としたから、結合量調整導体板による広帯域化の効果は得られない。しかし、放射導体素子56に対向した無給電導体素子58を備えるから、無給電導体素子58による広帯域化を図ることができる。これに加え、チップアンテナ52は、第1の実施の形態によるチップアンテナ12に比べて1層少ない2層の絶縁層54,55からなる積層体53によって構成することができるから、製造コストを低減することができる。
【0106】
また、チップアンテナ52はLGA59を用いて親基板2に接合する構成としたから、第1の実施の形態と同様に、第1〜第3の平面電極パッド60〜62等の配置や形状を適宜調整することによって、親基板2とチップアンテナ52との間の整合を取ることができる。
【0107】
ここで、LGA59の第2,第3の平面電極パッド61,62は、放射導体素子56および無給電導体素子58には電気的に接続されていないため、省くことも可能である。そこで、第2,第3の平面電極パッド61,62を設けた場合(第4の実施の形態)と、第2,第3の平面電極パッド61,62を省いた場合(第2の比較例)について、反射特性(リターンロス)およびアンテナ利得の周波数特性を測定した。その結果を図22および図23に示す。
【0108】
なお、親基板2の厚さ寸法は0.2mmとし、チップアンテナ12の厚さ寸法は0.4mmとした。放射導体素子56の長さ寸法は0.775mmとし、幅寸法は0.5mmとした。無給電導体素子58の長さ寸法は0.725mmとし、幅寸法は1.55mmとした。ビア57の直径は0.15mmとした。
【0109】
図22の結果より、チップアンテナ52に第2,第3の平面電極パッド61,62(LGA59)を設けた本実施の形態では、反射特性で−10dB以下となる周波数帯域幅は11.5GHz程度となる。これに対し、チップアンテナ52から第2,第3の平面電極パッド61,62(LGA59)を省いた第2の比較例では、反射特性で−10dB以下となる周波数帯域幅は、10.4GHz程度となり、本実施の形態に比べて約10%低下することが分かる。
【0110】
また、図23の結果より、チップアンテナ52に第2,第3の平面電極パッド61,62を設けた本実施の形態では、最大アンテナ利得が6dBiとなると共に、アンテナ利得の1dB幅、即ち最大アンテナ利得から1dB低下した周波数帯域の幅は10.9GHz程度となる。これに対し、チップアンテナ52から第2,第3の平面電極パッド61,62を省いた第2の比較例では、アンテナ利得の1dB幅は10.1GHz程度となり、本実施の形態に比べて約7%低下することが分かる。
【0111】
図22および図23の結果から分かるように、反射特性およびアンテナ利得を広帯域化するためには、本実施の形態のように、チップアンテナ52には第2,第3の平面電極パッド61,62を設けた方がよい。
【0112】
なお、第4の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の親基板2を用いる場合を例に挙げて説明したが、第2,第3の実施の形態による親基板32,42を用いる構成としてもよい。
【0113】
また、前記各実施の形態では、LGA22,59は、3個の平面電極パッド23〜25,60〜62を備える構成としたが、4個以上の平面電極パッドを備える構成としてもよい。
【0114】
さらに、前記各実施の形態では、60GHz帯のミリ波に用いるアンテナ装置1,31,41,51を例に挙げて説明したが、他の周波数帯のミリ波やマイクロ波等に用いるアンテナ装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0115】
1,31,41,51 アンテナ装置
2,32,42 親基板
5 ストリップ線路
6,34 表面側接地導体板
6A,34A 接続用開口
7,35,44 裏面側接地導体板
8,37,45 ストリップ導体
12,52 チップアンテナ
13,53 積層体
14,15,16,54,55 絶縁層
17,56 放射導体素子
19,58 無給電導体素子
20 結合量調整導体板
21 ビア(柱状の導体)
22,59 ランドグリッドアレイ
23,60 第1の平面電極パッド
24,61 第2の平面電極パッド
25,62 第3の平面電極パッド
33 グランド付きコプレーナ線路
36 空隙部
43 マイクロストリップ線路
46,47 接地電極パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電線路を備えた親基板にチップアンテナを実装したアンテナ装置であって、
前記チップアンテナは、複数の絶縁層が積層された積層体と、該積層体の内部に位置して2つの絶縁層の間に挟まれ前記親基板の給電線路に接続される放射導体素子と、該放射導体素子よりも前記積層体の表面側に位置して該放射導体素子と絶縁された無給電導体素子と、該無給電導体素子と前記放射導体素子との間に配置されこれらの結合量を調整する結合量調整導体板と、前記積層体の裏面に設けられた複数の平面電極パッドからなるランドグリッドアレイとを備え、
前記結合量調整導体板は、前記無給電導体素子と前記放射導体素子とが互いに重なり合う部位を部分的に覆い、前記放射導体素子に流れる電流の向きに対して直交方向に前記放射導体素子を跨ぐ構成とし、
前記放射導体素子は、前記ランドグリッドアレイの第1の平面電極パッドを介して前記親基板の給電線路に接続し、
前記結合量調整導体板の両端側は、前記ランドグリッドアレイの第2,第3の平面電極パッドを介して前記親基板のグランドに接続する構成としてなるアンテナ装置。
【請求項2】
前記結合量調整導体板の両端側と前記ランドグリッドアレイの第2,第3の平面電極パッドとの間は、前記積層体の厚さ方向に延びる柱状の導体を用いて接続する構成としてなる請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記給電線路は、前記親基板の表面に設けられた表面側接地導体板と、前記親基板の裏面に設けられた裏面側接地導体板と、前記表面側接地導体板と裏面側接地導体板との間に設けられたストリップ導体とからなるストリップ線路によって構成し、
前記ストリップ導体は、前記表面側接地導体板に設けた接続用開口を通じて前記第1の平面電極パッドに接続し、
前記表面側接地導体板は、前記第2,第3の平面電極パッドに接続する構成としてなる請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記給電線路は、前記親基板の表面に設けられた表面側接地導体板と、前記親基板の裏面に設けられた裏面側接地導体板と、前記表面側接地導体板に形成された線状の空隙部と、該空隙部に設けられ該空隙部の長さ方向に沿って延びるストリップ導体とからなるグランド付きコプレーナ線路によって構成し、
前記ストリップ導体は、前記第1の平面電極パッドに接続し、
前記表面側接地導体板は、前記第2,第3の平面電極パッドに接続する構成としてなる請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記給電線路は、前記親基板の裏面に設けられた裏面側接地導体板と、前記親基板の表面に設けられたストリップ導体とからなるマイクロストリップ線路によって構成し、
前記ストリップ導体は、前記第1の平面電極パッドに接続し、
前記裏面側接地導体板は、前記親基板の表面に設けられた2個の接地電極パッドを介して前記第2,第3の平面電極パッドに接続する構成としてなる請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記放射導体素子、無給電導体素子および結合量調整導体板は、前記積層体の厚さ方向に対して互いに異なる位置に配置する構成としてなる請求項1,2,3,4または5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
給電線路を備えた親基板にチップアンテナを実装したアンテナ装置であって、
前記チップアンテナは、複数の絶縁層が積層された積層体と、該積層体の内部に位置して2つの絶縁層の間に挟まれ前記親基板の給電線路に接続される放射導体素子と、該放射導体素子よりも前記積層体の表面側に位置して該放射導体素子と絶縁された無給電導体素子と、前記積層体の裏面に設けられた複数の平面電極パッドからなるランドグリッドアレイとを備え、
前記放射導体素子は、前記ランドグリッドアレイの第1の平面電極パッドを介して前記親基板の給電線路に接続し、
前記ランドグリッドアレイの残余の平面電極パッドは、前記親基板の電極に接合する構成としてなるアンテナ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate