説明

アンテナ装置

【課題】高い信号強度を得つつ小型化が可能なアンテナ装置を提供する。
【解決手段】誘電体により基準方向Zに延びる略筒状に形成された第一のアンテナレードーム11および第一のアンテナ素子12を有する第一のアンテナ10と、誘電体により基準方向に延びる略筒状に形成された第二のアンテナレードーム21および第二のアンテナ素子22を有する第二のアンテナ20とを備え、両アンテナは第一のアンテナレードームの軸線C1に直交する方向に並べて配置され、第一のアンテナ素子の中心を原点とする第一の球座標系および第二のアンテナ素子の中心を原点とする第二の球座標系をそれぞれ規定したときに、第一の球座標系の第一の方位角φ1と第二の球座標系の第二の方位角φ2とが同一の場合には、第一の方位角の値によらず、第一のアンテナレードームの第一の方位角側の厚さD1と第二のアンテナレードームの第二の方位角側の厚さD2とは互いに異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナを搭載するアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、陸上移動通信用の基地局装置などに用いられるアンテナ装置に、通信の質や信頼性を向上させるために、複数のアンテナを備えるものが用いられている。
このようなアンテナ装置として、例えば図13に示すような構成のものが知られている。アンテナ装置100は、複数のアンテナ101を直線上に一定のピッチ(隣り合うアンテナ101の軸線間の距離)で配置した構成となっている。それぞれのアンテナ101は、円筒状のアンテナレードーム102と、アンテナレードーム102内に同軸に配置されたアンテナ素子103とを有している。それぞれのアンテナ101は、軸線が水平面に直交するように配置されている。アンテナ素子103としては、水平面内において無指向性の放射パターンとなるスリーブアンテナが用いられている。
【0003】
アンテナ素子103は、例えば非特許文献1に示されるように、厚さが均一のアンテナレードームに覆われているため、アンテナ101の振幅放射パターンは無指向性であり、位相放射パターンは水平面内の全方位角で同相である。
アンテナ装置100は、アンテナ素子103の使用波長の半分(以下、「0.5波長」と称する。)のピッチでアンテナ101を設置することにより、アンテナ素子103間のフェージング相関を低くし、ダイバーシチ合成技術により安定的に高い信号強度を得ることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】藤本京平、山田吉英、常川光一共著「図解移動通信用アンテナシステム」総合電子出版、2003年7月10日、p.91
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アンテナ101の数が増加する場合、低い相関係数を得るためにはアンテナ101のピッチを0.5波長程度としなければならないため、基地局装置の寸法よりもアンテナ装置100のスペースの方が大きくなり、基地局装置の小型化が困難となる課題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、高い信号強度を得つつ小型化が可能なアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明のアンテナ装置は、誘電体により基準方向に延びる略筒状に形成された第一のアンテナレードーム、および、前記第一のアンテナレードームの内部空間に配置された第一のアンテナ素子を有する第一のアンテナと、誘電体により前記基準方向に延びる略筒状に形成された第二のアンテナレードーム、および、前記第二のアンテナレードームの内部空間に配置された第二のアンテナ素子を有する第二のアンテナと、を備え、前記第一のアンテナおよび前記第二のアンテナは、前記第一のアンテナレードームの軸線に直交する方向に並べて配置され、前記第一のアンテナ素子の使用波長と前記第二のアンテナ素子の使用波長とは互いに等しく設定され、前記第一のアンテナレードームの軸線と前記第二のアンテナレードームの軸線との距離は、前記第一のアンテナ素子の使用波長の半分以下に設定され、前記第一のアンテナ素子の中心を原点とする第一の球座標系および前記第二のアンテナ素子の中心を原点とする第二の球座標系をそれぞれ規定したときに、前記第一の球座標系の第一の方位角と前記第二の球座標系の第二の方位角とが同一の場合には、前記第一の方位角の値によらず、前記第一のアンテナレードームの前記第一の方位角側の厚さと前記第二のアンテナレードームの前記第二の方位角側の厚さとは互いに異なることを特徴としている。
【0008】
また、上記のアンテナ装置において、前記第一のアンテナレードームは、Nを自然数として、自身の前記軸線回りに第一の方位角が(π/N)ごとに、第一の厚さと、前記第一の厚さより厚い第二の厚さとに交互に設定され、前記第二のアンテナレードームは、前記第一のアンテナレードームを前記軸線回りに(π/N)だけ回転させた形状であることがより好ましい。
また、上記のアンテナ装置において、前記第一のアンテナレードームは、前記第一のアンテナレードームの軸線回りに全周にわたり厚さが等しく、前記第二のアンテナレードームは、前記第二のアンテナレードームの軸線回りに全周にわたり厚さが等しく、前記第一のアンテナレードームの厚さと前記第二のアンテナレードームの厚さとは、互いに異なることがより好ましい。
【0009】
また、上記のアンテナ装置において、前記第一のアンテナレードームは、前記第一のアンテナレードームの軸線回りに全周にわたり厚さが不規則に変化し、前記第二のアンテナレードームは、前記第二のアンテナレードームの軸線回りに全周にわたり厚さが不規則に変化することがより好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアンテナ装置によれば、高い信号強度を得つつ小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態のアンテナ装置の斜視図である。
【図2】同アンテナ装置の第一のアンテナの平面図である。
【図3】同アンテナ装置の第一のアンテナにおける水平面内での振幅放射パターンを説明する図である。
【図4】同アンテナ装置の第一のアンテナにおける水平面内での位相放射パターンを説明する図である。
【図5】同アンテナ装置の平面図である。
【図6】本発明の第1実施形態の変形例におけるアンテナ装置の平面図である。
【図7】本発明の第2実施形態のアンテナ装置の平面図である。
【図8】同アンテナ装置の第一のアンテナの斜視図である。
【図9】同アンテナ装置の第一のアンテナにおける水平面内での振幅放射パターンを説明する図である。
【図10】同アンテナ装置の第一のアンテナにおける水平面内での位相放射パターンを説明する図である。
【図11】本発明の第3実施形態のアンテナ装置の斜視図である。
【図12】同アンテナ装置の平面図である。
【図13】従来のアンテナ装置を説明する全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明に係るアンテナ装置の第1実施形態を、図1から図6を参照しながら説明する。以下では、アンテナ装置が2つのアンテナを備える場合について説明する。
図1に示すように、本アンテナ装置1は、第一のアンテナ10と第二のアンテナ20とを備えている。
【0013】
図1および図2に示すように、第一のアンテナ10は、誘電体により鉛直方向(基準方向)Zに延びる略筒状に形成された第一のアンテナレードーム11、および、第一のアンテナレードーム11の内部空間11aに第一のアンテナレードーム11と同軸に配置された第一のアンテナ素子12を有している。
第一のアンテナレードーム11は、第一のアンテナレードーム11の軸線C1を含む第一の基準平面S1を規定したときに、第一の基準平面S1の一方側Y1の厚さT1の方が他方側Y2の厚さT2より厚くなるように形成されている。第一のアンテナレードーム11は、第一の基準平面S1の一方側Y1において、鉛直方向Zの位置および軸線C1回りの位置によらず、厚さが等しく設定されている。同様に、第一のアンテナレードーム11は、第一の基準平面S1の他方側Y2において、鉛直方向Zの位置および軸線C1回りの位置によらず、厚さが等しく設定されている。
第一のアンテナレードーム11が形成される誘電体としては、FRP(繊維強化プラスチックス)などの材料を好適に用いることができる。
【0014】
第一のアンテナ素子12としてはスリーブアンテナが用いられている。第一のアンテナ素子12の端部には、給電端子12aが設けられている(図1参照)。
【0015】
第二のアンテナ20は、図1に示すように、誘電体により鉛直方向Zに延びる略筒状に形成された第二のアンテナレードーム21、および、第二のアンテナレードーム21の内部空間21aに第二のアンテナレードーム21と同軸に配置された第二のアンテナ素子22を有している。
第二のアンテナレードーム21は、第一の基準平面S1に平行であって第二のアンテナレードーム21の軸線C2を含む第二の基準平面S2を規定したときに、第二の基準平面S2の一方側Y1の厚さが前述の厚さT2に等しく、第二の基準平面S2の他方側Y2の厚さが前述の厚さT1に等しく設定されている。
第二のアンテナレードーム21は、第一のアンテナレードーム11と同一の材料で形成されている。
このように、第二のアンテナレードーム21は第一のアンテナレードーム11と同一の構成であり、配置する向きのみが異なる。すなわち、第二のアンテナレードーム21を軸線C2回りにπrad(ラジアン。以下、この角度の単位は省略する。)回転させると第一のアンテナレードーム11と同一の形状になる。
この実施形態では、アンテナレードーム11、21の軸線に直交する平面による断面形状は、内周面が円形になっていて、外周面に凹凸の形状を設けることで、アンテナレードーム11、21の厚さを調節している。
【0016】
第二のアンテナ素子22としては第一のアンテナ素子12と同一のものが用いられ、第二のアンテナ素子22の使用周波数と第一のアンテナ素子12の使用周波数とは、互いに等しくなっている。
第二のアンテナ素子22の端部には、給電端子22aが設けられている。
【0017】
第一のアンテナ10および第二のアンテナ20は、鉛直方向Zに直交する直交方向Yに並べて配置されている。この例では、XY平面が水平面に平行となる。
第一のアンテナレードーム11の軸線C1と第二のアンテナレードーム21の軸線C2との距離(ピッチ)Lは、第一のアンテナ素子12の使用波長の半分である0.5波長以下に設定されている。
【0018】
以上のように構成されたアンテナ装置1において、第一のアンテナ10の水平面内における振幅放射パターンを図3に、位相放射パターンを図4にそれぞれ示す。第一のアンテナ10の振幅放射パターンは、図3に示すように無指向性となる。これに対して、位相放射パターンは、第一のアンテナレードーム11が薄い領域(図4中で、角度が180〜360°の範囲)と比較して、第一のアンテナレードーム11が厚い領域(図4中で、角度が0〜180°の範囲)においては、誘電体による波長短縮の効果により、電波の位相が進行する。
【0019】
これにより、本発明のアンテナ素子12、22のフェージングの時間変動特性は、従来のアンテナ素子のフェージングの時間変動特性と異なった特性とすることができる。
ここで、図1に示すように、第一のアンテナ素子12の中心を原点O1とする第一の球座標系G1、および、第二のアンテナ素子22の中心を原点O2とする第二の球座標系G2をそれぞれ規定する。なお、図1においては、説明の便宜のため、第一の球座標系G1の原点を原点O1から原点O1’に移動して示すとともに、第二の球座標系G2の原点を原点O2から原点O2’に移動して示している。
第一の球座標系G1において、Z軸は軸線C1上に規定され、第一の方位角φ1は、Z軸に平行に見たときにX軸となす角度として規定される。同様に、第二の球座標系G2において、Z軸は軸線C2上に規定され、第二の方位角φ2は、Z軸に平行に見たときにX軸となす角度として規定される。
このとき、図5に示すように、第一の方位角φ1と第二の方位角φ2とが同一の場合には、第一の方位角φ1の値によらず、第一のアンテナレードーム11の第一の方位角φ1側の厚さ(長さ)D1と第二のアンテナレードーム21の第二の方位角φ2側の厚さD2とは互いに異なる。
【0020】
すなわち、アンテナ素子12、22に対して同一の向きから平行に入射した電波が通過するアンテナレードーム11、21の厚さは互いに異なる。この場合には、アンテナ素子12、22に入力された電波には位相差があることから、アンテナ素子12、22間のピッチが0.5波長よりも短い場合であっても相関が低くなる。このため、位相放射パターンが一定のアンテナと比較して、アンテナ素子12、22間のピッチが小さい場合であっても、高いダイバーシチ効果を得ることができる。
【0021】
従来、複数のアンテナを搭載するアンテナ装置では、アンテナ素子間のフェージング相関を低くし、ダイバーシチ合成技術により高い信号強度を得るためには、0.5波長程度のピッチでアンテナを設置する必要があった。
これに対して、本発明のアンテナ装置1では、アンテナ素子12、22間の低いフェージング相関を得るのに必要なアンテナ10、20のピッチを従来の0.5波長程度よりも小さくすることができるので、高い信号強度を得つつアンテナ装置1を小型化することができる。
【0022】
(第1実施形態の変形例)
なお、本実施形態ではアンテナ装置の構成を以下に説明するように変形させることができる。
すなわち、第一のアンテナレードームは、Nを自然数として、自身の軸線C1回りに第一の方位角φ1が(π/N)ごとに、第一の厚さと、この第一の厚さより厚い第二の厚さとに交互に設定され、第二のアンテナレードームは、第一のアンテナレードームを軸線C1回りに(π/N)だけ回転させた形状になっている。
【0023】
自然数Nが8の場合である図6に示すアンテナ装置2で具体的に説明する。第一のアンテナレードーム31は、軸線C1回りに第一の方位角φ1が(π/8)ごとに、第一の厚さT4と、第一の厚さT4より厚い第二の厚さT5とに交互に設定されている。第一のアンテナレードーム31は、第一の厚さT4の部分が8カ所、第二の厚さT5の部分が8カ所それぞれ形成されている。
第二のアンテナレードーム36は、第一のアンテナレードーム31を軸線C1回りに(π/8)だけ回転させた形状になっている。
この場合においても、第一の方位角φ1と第二の方位角φ2とが同一のときに、第一の方位角φ1の値によらず、第一のアンテナレードーム31の第一の方位角φ1側の厚さと第二のアンテナレードーム36の第二の方位角φ2側の厚さとは、互いに異なる。
アンテナ装置2をこのように構成しても、高い信号強度を得つつ小型化することができる。
なお、前記第1実施形態は、この変形例において自然数Nが1の場合に相当する。
【0024】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図7から図10を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図7および図8に示すように、本実施形態のアンテナ装置3は、前記第1実施形態のアンテナ装置1の第一のアンテナレードーム11に代えて第一のアンテナレードーム41を、第二のアンテナレードーム21に代えて第二のアンテナレードーム46をそれぞれ備えている。なお、図8においては、説明の便宜のため、第一の球座標系G1の原点を原点O1から原点O1’に移動して示している。
第一のアンテナレードーム41および前述の第一のアンテナ素子12で第一のアンテナ40が構成され、第二のアンテナレードーム46および前述の第二のアンテナ素子22で第二のアンテナ45が構成される。
【0025】
第一のアンテナレードーム41は、第一のアンテナレードーム41の軸線C1回りに全周にわたり厚さが不規則に変化するように形成されている。第二のアンテナレードーム46は、第二のアンテナレードーム46の軸線C2回りに全周にわたり厚さが不規則に変化するように形成されている。
具体的には、第一のアンテナレードーム41は、例えば、自身の軸線C1回りに中心角(π/10)ごとに、外周面の半径がR〜R20となるように設定されている。
同様に、第二のアンテナレードーム46は、自身の軸線C2回りに第一の方位角φ1が(π/10)ごとに、外周面の半径がR21〜R40となるように設定されている。
半径R〜R40は、互いに異なる値である。半径R〜R40の値は、互いに異なるように、乱数などを用いて設定することができる。
この例では、アンテナレードーム41、46の内径は軸線回りの位置によらず一定となっている。この場合においても、第一の方位角φ1と第二の方位角φ2とが同一のときに、第一の方位角φ1の値によらず、第一のアンテナレードーム41の第一の方位角φ1側の厚さと第二のアンテナレードーム46の第二の方位角φ2側の厚さとは、互いに異なる。
アンテナレードーム41、46は、第一のアンテナレードーム11と同一の材料で形成されている。
【0026】
以上のように構成されたアンテナ装置3において、第一のアンテナ40の水平面内における振幅放射パターンを図9に、位相放射パターンを図10にそれぞれ示す。第一のアンテナ40の振幅放射パターンは無指向性となる。これに対して、位相放射パターンは、誘電体による波長短縮の効果により、軸線C1回りの方位角に応じて電波の位相の値が不規則に進行し、変化していることが分かる。
【0027】
前述の第1実施形態のアンテナ装置1の場合は、平行に入射する電波が通過するアンテナレードーム11、21の厚さが異なるように、アンテナレードーム11、21の水平面内の向きを調整する必要があった。
これに対して、本実施形態のアンテナ装置3では、アンテナレードーム41、46において半径がR〜R40となる部分では厚さが互いに異なるため、アンテナ素子12、22に平行に入射する電波が通過するアンテナレードーム41、46の厚さは、電波が入射する方位角によらず互いに異なる。すなわち、アンテナ40、45の水平面内の向きを調整しなくとも、アンテナ40、45での相関を低くし、アンテナ装置3を小型化することができる。
【0028】
本実施形態では、半径R〜R40の値は互いに異なるように設定したが、半径R〜R40の値の一部に互いに等しいものがあってもよい。アンテナ装置3をこのように構成しても、ある方向からアンテナ素子12、22に平行に入射する電波が通過するアンテナレードーム41、46の厚さが互いに異なる可能性が高くなる。すなわち、アンテナ40、45の水平面内の向きを調整しなくとも、アンテナ40、45での相関が低い可能性が高くなる。
【0029】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図11および図12を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図11および図12に示すように、本実施形態のアンテナ装置4は、前記第1実施形態のアンテナ装置1の第一のアンテナレードーム11に代えて第一のアンテナレードーム51を、第二のアンテナレードーム21に代えて第二のアンテナレードーム56をそれぞれ備えている。
【0030】
第一のアンテナレードーム51は、第一のアンテナレードーム51の軸線C1回りに全周にわたり厚さが等しい円筒状に形成されている。同様に、第二のアンテナレードーム56は、第一のアンテナレードーム56の軸線C2回りに全周にわたり厚さが等しい円筒状に形成されている。第一のアンテナレードーム51の厚さは、第二のアンテナレードーム56の厚さより薄く設定されている。この場合においても、第一の方位角φ1と第二の方位角φ2とが同一のときに、第一の方位角φ1の値によらず、第一のアンテナレードーム51の第一の方位角φ1側の厚さと第二のアンテナレードーム56の第二の方位角φ2側の厚さとは、互いに異なる。
アンテナレードーム51、56は、第一のアンテナレードーム11と同一の材料で形成されている。
【0031】
このように構成されたアンテナ装置4は、誘電体による波長短縮の効果により、誘電体の厚さに応じた電波の位相の進行を生じさせ、アンテナ装置4を小型化することができる。
本実施形態では、アンテナレードーム51の厚さが全周にわたり一定であり、かつ、アンテナレードーム56の厚さが全周にわたり一定であるため、前記実施形態のアンテナ装置1〜3と比較して、アンテナ装置4の製造が容易になる。
【0032】
これまで説明したように、従来、複数のアンテナを備えるアンテナ装置を用いた陸上移動通信用の基地局装置では、アンテナ素子間のフェージング相関を低くし、ダイバーシチ合成技術により高い信号強度を得るためには、アンテナを0.5波長程度のピッチで設置する必要がある。これに対して、本発明のアンテナ装置によれば、アンテナ素子間の低いフェージング相関を得るのに必要なアンテナのピッチを従来の0.5波長程度よりも小さな距離とすることができるので、アンテナ装置および基地局装置を小型化することができる。
【0033】
以上、本発明の第1実施形態から第3実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
たとえば、前記第1実施形態および第2実施形態では、各アンテナレードームの軸線に直交する平面による断面形状は、内周面が円形になっていて、外周面の形状によりアンテナレードームの厚さを調節していた。しかし、この断面形状を、外周面を円形にするとともに内周面に凹凸の形状を設けることでアンテナレードームの厚さを調節してもよいし、内周面および外周面の両側に凹凸の形状を設けてアンテナレードームの厚さを調節してもよい。
【0034】
また、前記第1実施形態から第3実施形態では、アンテナ装置が2つのアンテナを備える場合について説明した。しかし、アンテナ装置が備えるアンテナの数に制限はなく、複数であれば3つ以上でもよい。
また、アンテナ素子は、アンテナレードームの内部空間に配置されていれば、アンテナレードームと同軸に配置されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1、2、3、4 アンテナ装置
10、40 第一のアンテナ
11、31、41、51 第一のアンテナレードーム
11a、21a 内部空間
12 第一のアンテナ素子
20、45 第二のアンテナ
21、36、46、56 第二のアンテナレードーム
22 第二のアンテナ素子
C1、C2 軸線
G1 第一の球座標系
G2 第一の球座標系
O1、O2 原点
S1 第一の基準平面
S2 第二の基準平面
T1、T2 厚さ
T4 第一の厚さ
T5 第二の厚さ
Y 直交方向
Z 鉛直方向(基準方向)
φ1 第一の方位角
φ2 第二の方位角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体により基準方向に延びる略筒状に形成された第一のアンテナレードーム、および、前記第一のアンテナレードームの内部空間に配置された第一のアンテナ素子を有する第一のアンテナと、
誘電体により前記基準方向に延びる略筒状に形成された第二のアンテナレードーム、および、前記第二のアンテナレードームの内部空間に配置された第二のアンテナ素子を有する第二のアンテナと、を備え、
前記第一のアンテナおよび前記第二のアンテナは、前記第一のアンテナレードームの軸線に直交する方向に並べて配置され、
前記第一のアンテナ素子の使用波長と前記第二のアンテナ素子の使用波長とは互いに等しく設定され、
前記第一のアンテナレードームの軸線と前記第二のアンテナレードームの軸線との距離は、前記第一のアンテナ素子の使用波長の半分以下に設定され、
前記第一のアンテナ素子の中心を原点とする第一の球座標系および前記第二のアンテナ素子の中心を原点とする第二の球座標系をそれぞれ規定したときに、前記第一の球座標系の第一の方位角と前記第二の球座標系の第二の方位角とが同一の場合には、前記第一の方位角の値によらず、前記第一のアンテナレードームの前記第一の方位角側の厚さと前記第二のアンテナレードームの前記第二の方位角側の厚さとは互いに異なることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記第一のアンテナレードームは、Nを自然数として、自身の前記軸線回りに第一の方位角が(π/N)ごとに、第一の厚さと、前記第一の厚さより厚い第二の厚さとに交互に設定され、
前記第二のアンテナレードームは、前記第一のアンテナレードームを前記軸線回りに(π/N)だけ回転させた形状であることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第一のアンテナレードームは、前記第一のアンテナレードームの軸線回りに全周にわたり厚さが等しく、
前記第二のアンテナレードームは、前記第二のアンテナレードームの軸線回りに全周にわたり厚さが等しく、
前記第一のアンテナレードームの厚さと前記第二のアンテナレードームの厚さとは、互いに異なることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第一のアンテナレードームは、前記第一のアンテナレードームの軸線回りに全周にわたり厚さが不規則に変化し、
前記第二のアンテナレードームは、前記第二のアンテナレードームの軸線回りに全周にわたり厚さが不規則に変化することを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−244288(P2012−244288A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110437(P2011−110437)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】