説明

アンテナ装置

【課題】スイッチのグランド端子に接続されるスイッチ用グランドパターンがアンテナ素子に近接することによるアンテナ性能の劣化がなく、アンテナ素子の電気長を変えて共振周波数を切り替え可能なアンテナ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】第一アンテナ素子102および第二アンテナ素子103と、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スイッチ104を設け、第一アンテナ素子102の一端には給電点110を設けている。第一アンテナ素子102の他端113とMEMSスイッチ104の第一端子106とが接続され、MEMSスイッチ104の第二端子107に第二アンテナ素子103の一端114が接続される。第一アンテナ素子102の一端はインダクタ115を介してグランドパターン101に接地され、MEMSスイッチ104のグランド端子105は第一アンテナ素子102の他端113に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチを用いてアンテナ素子の電気長を可変することでその共振周波数を切り替えできるマルチバンド対応のアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のアンテナ装置としては、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載されているようなものがあった。
【0003】
特許文献1では、アンテナに給電点と複数接地点とが設けられ、各接地点をグランドに対して接続又は開放する複数の接地点スイッチを備え、接地点スイッチ手段を選択して切り替え操作によって接地点が切り替えられて共振周波数の調整が行われる技術が開示されている。
【0004】
特許文献2では、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スイッチを複数具備するアンテナ装置において、複数のMEMSスイッチと、複数の微小パッチ導体とを用いて、アンテナの大きさや形状を可変することにより動作周波数を可変する技術が開示されている。
【0005】
特許文献3では、アンテナ素子上のスイッチ部に併設した光信号処理部とスイッチ制御回路とが光導波路で接続され、スイッチ部に対する制御信号が光通信によって伝送される。スイッチ部がON/OFF制御されることでアンテナ素子の物理的長さが変わり、周波数特性を可変する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−261533号公報
【特許文献2】特開2007−142721号公報
【特許文献3】特開2007−174017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、スイッチのグランド端子に接続されるスイッチ用グランドパターンがアンテナ素子に近接することによって、アンテナが狭帯域となったり、放射抵抗が低下して放射効率の低下が発生したりと、アンテナ性能が劣化する場合があった。
【0008】
例えば、特許文献1や特許文献2の技術の場合、逆Fアンテナやパッチアンテナには好適だが、モノポールアンテナ素子上に直列にスイッチを挿入してアンテナ素子の電気長を可変する場合には、アンテナ素子にスイッチ用グランドパターンが近接することになり、アンテナ性能の劣化が懸念される。特許文献3の技術の場合には、スイッチを制御する信号の影響でアンテナ性能が劣化することは避けられるが、構成が複雑で高価となり、スイッチのグランド端子に接続されるスイッチ用グランドパターンに関しては記載がない。
【0009】
本発明は、スイッチのグランド端子に接続されるスイッチ用グランドパターンがアンテナ素子に近接することによるアンテナ性能の劣化がなく、アンテナ素子の電気長を変えて共振周波数を切り替え可能なアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するため、本発明のアンテナ装置は、グランドパターンを有する回路基板と、前記グランドパターンと所定の間隔を隔てて配置される、第一アンテナ素子および第二アンテナ素子と、グランド端子、第一端子および第二端子を有し、この第一端子とこの第二端子との間で接続または切断される第一スイッチを備え、前記第一アンテナ素子の一端に給電点を設け、前記第一アンテナ素子の他端と前記第一スイッチの前記第一端子とが接続され、前記第一スイッチの前記第二端子に前記第二アンテナ素子の一端が接続され、前記第一アンテナ素子の一端はインダクタを介して前記回路基板のグランドパターンに接地され、前記第一スイッチの前記グランド端子は前記第一アンテナ素子の他端に接続されるように構成する。このアンテナ装置によれば、スイッチのグランド端子に接続されるスイッチ用グランドパターンを第一アンテナ素子と共用するため、アンテナ性能を劣化させることなく、アンテナ素子の電気長を変えて二つの共振周波数を得ることができる。
【0011】
また、本発明のアンテナ装置は、グランドパターンを有する回路基板と、前記グランドパターンと所定の間隔を隔てて配置される、第一アンテナ素子と、互いに電気長が異なる複数の第二アンテナ素子と、グランド端子、第一端子および複数の第二端子を有し、この第一端子と各第二端子との間で接続または切断される第一スイッチを備え、前記第一アンテナ素子の一端に給電点を設け、前記第一アンテナ素子の他端と前記第一スイッチの前記第一端子とが接続され、前記第一スイッチの前記各第二端子にそれぞれ前記第二アンテナ素子の一端が接続され、前記第一アンテナ素子の一端はインダクタを介して前記回路基板のグランドパターンに接地され、前記第一スイッチの前記グランド端子は前記第一アンテナ素子の他端に接続されるように構成する。このアンテナ装置によれば、第二アンテナ素子を複数設けることで3以上の共振周波数が得られる。
【0012】
また、本発明のアンテナ装置は、グランドパターンを有する回路基板と、前記グランドパターンと所定の間隔を隔てて配置される、第一アンテナ素子および第二アンテナ素子と、グランド端子、第一端子および複数の第二端子を有し、この第一端子と各第二端子との間で接続または切断される第一スイッチを備え、前記第一アンテナ素子の一端に給電点を設け、前記第一アンテナ素子の他端と前記第一スイッチの前記第一端子とが接続され、前記第一スイッチの前記第二端子の一つと前記第二アンテナ素子の一端とが接続され、他の前記第二端子のうち、少なくとも一つは前記第二アンテナ素子の一端とリアクタンス素子を介して接続され、前記第一アンテナ素子の一端はインダクタを介して前記回路基板のグランドパターンに接地され、前記第一スイッチの前記グランド端子は前記第一アンテナ素子の他端に接続されるように構成する。このアンテナ装置によれば、第二アンテナ素子が一つであっても3以上の共振周波数が得られる。
【0013】
また、本発明のアンテナ装置は、グランドパターンを有する回路基板と、前記グランドパターンと所定の間隔を隔てて配置される、第一アンテナ素子および第二アンテナ素子と、グランド端子、第一端子および複数の第二端子を有し、この第一端子と各第二端子との間で接続または切断される第一スイッチを備え、前記第一アンテナ素子の一端に給電点を設け、前記第一アンテナ素子の他端と前記第一スイッチの前記第一端子とが接続され、前記第一スイッチの前記第二端子の一つと前記第二アンテナ素子の一端とがリアクタンス素子を介して接続され、他の前記第二端子のうち、少なくとも一つは前記リアクタンス素子とは異なるリアクタンス値のリアクタンス素子を介して前記第二アンテナ素子の一端と接続され、前記第一アンテナ素子の一端はインダクタを介して前記回路基板のグランドパターンに接地され、前記第一スイッチの前記グランド端子は前記第一アンテナ素子の他端に接続されるように構成する。このアンテナ装置によれば、リアクタンス値の異なるリアクタンス素子を設けることで第二アンテナ素子が一つであっても3以上の共振周波数が得られる。
【0014】
また、本発明のアンテナ装置は、前記第一スイッチが電源端子および制御端子を備え、前記電源端子と前記回路基板を接続する電源ラインおよび前記制御端子と前記回路基板を接続する制御ラインのそれぞれに少なくとも一つのインダクタを挿入するように構成する。このアンテナ装置によれば、電源ラインや制御ラインによるアンテナ性能の劣化を抑制できる。
【0015】
また、本発明のアンテナ装置は、前記電源ラインと前記制御ラインの各ラインを前記第一アンテナ素子に近接して略平行に配置し、前記インダクタを給電点近傍に配置するように構成する。このアンテナ装置によれば、電源ラインや制御ラインを第一アンテナ素子などと一体化して動作させることでアンテナ性能の劣化を抑制できる。
【0016】
また、本発明のアンテナ装置は、前記第一スイッチがMEMSスイッチであるように構成する。このアンテナ装置によれば、スイッチの第一端子と各第二端子の切断状態のアイソレーションが高く接続状態の挿入損失が小さく、各第二端子間のアイソレーションも高く、第一端子と各第二端子間で位相の変化が小さいため、共振周波数の切り替えにおけるアンテナ性能の劣化を抑制できる。
【0017】
また、本発明のアンテナ装置は、前記グランドパターンと所定の間隔を隔てて配置される、少なくとも一つの第三アンテナ素子と、グランド端子、第一端子および少なくとも一つの第二端子を有し、この第一端子と各第二端子との間で接続または切断される第二スイッチを少なくとも一つ備え、前記第二アンテナ素子の少なくとも一つの他端には前記第二スイッチの前記第一端子を接続し、前記第二スイッチの前記第二端子の少なくとも一つが前記第三アンテナ素子の一端と直接またはリアクタンス素子を介して接続され、前記第二アンテナ素子の一端は前記第一スイッチ、前記第一アンテナ素子およびインダクタを介して前記回路基板のグランドパターンに接地され、前記第二スイッチの前記グランド端子は前記第二アンテナ素子の他端に接続されるように構成する。このアンテナ装置によれば、より多くの共振周波数に対応できる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明のアンテナ装置によれば、スイッチのグランド端子に接続されるスイッチ用グランドパターンをアンテナ素子と共用するため、アンテナ性能を劣化させることなく、アンテナ素子の電気長を変えて共振周波数を切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1におけるアンテナ装置の概略図
【図2】本発明の実施の形態1におけるアンテナ装置における第一アンテナ素子の他端の詳細図
【図3】本発明の実施の形態1におけるアンテナ装置の反射特性を示す図
【図4】本発明の実施の形態2におけるアンテナ装置の概略図
【図5】本発明の実施の形態2におけるアンテナ装置の反射特性を示す図
【図6】本発明の実施の形態3におけるアンテナ装置の概略図
【図7】本発明の実施の形態3におけるアンテナ装置の反射特性を示す図
【図8】本発明の実施の形態3における別のアンテナ装置の概略図
【図9】本発明の実施の形態4におけるアンテナ装置の概略図
【図10】本発明の実施の形態5におけるアンテナ装置の概略図
【図11】本発明の実施の形態6におけるアンテナ装置の概略図
【図12】本発明の実施の形態6における別のアンテナ装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるアンテナ装置100の概略図である。
【0022】
図1に示すアンテナ装置100において、そのほぼ全面にグランドパターン101を有する回路基板と、このグランドパターン101と所定の間隔を隔てて配置される第一アンテナ素子102および第二アンテナ素子103と、第一スイッチとしてのMEMSスイッチ104を設けている。MEMSスイッチ104は、グランド端子105、第一端子106および第二端子107、電源端子108、制御端子109を有し、この第一端子106と第二端子107との間で切断状態と接続状態とを切り替える単極単投(SPST:Single-Pole Single-Throw)スイッチである。第一アンテナ素子102の一端には給電点110を設け、図示外の無線部に接続される。電源端子108と制御端子109はそれぞれインダクタ111とインダクタ112を介して回路基板上の図示外の制御部に接続される。第一アンテナ素子102の他端113とMEMSスイッチ104の第一端子106とが接続され、MEMSスイッチ104の第二端子107に第二アンテナ素子103の一端114が接続される。さらに第一アンテナ素子102の一端はインダクタ115を介してグランドパターン101に接地され、MEMSスイッチ104のグランド端子105は第一アンテナ素子102の他端113に接続されている。インダクタ115としては無線通信の周波数においてアンテナ性能への影響が小さくなるようにインダクタンス値を選定する。
【0023】
図1の概略図に対して、図2は、MEMSスイッチ104近傍の第一アンテナ素子102の他端113の形状の詳細図である。
【0024】
図2に示すように、MEMSスイッチ104は一般的に複数のグランド端子105を備えている。このため、第一アンテナ素子102の他端113は、第二端子107、電源端子108、制御端子109を除いてMEMSスイッチ104を覆うような形状としている。
【0025】
上記構成により、MEMSスイッチ104のグランド端子105は第一アンテナ素子102およびインダクタ115を介してグランドパターン101に接地される。すなわち、MEMSスイッチ104のグランド端子105に接続されるスイッチ用グランドパターンを第一アンテナ素子102と共用するため、スイッチ用グランドパターンがアンテナ素子に近接してアンテナ性能が劣化することがない。また、図3にアンテナの反射特性の一例を示す。図3において、実線はMEMSスイッチ104の第一端子106と第二端子107が切断された状態、破線はMEMSスイッチ104の第一端子106と第二端子107が接続された状態の反射特性である。よって、無線通信の周波数に応じてMEMSスイッチ104の第一端子106と第二端子107の切断状態と接続状態を切り替えることで、アンテナ素子の電気長を変えて二つの共振周波数を得ることができる。
【0026】
なお、第一アンテナ素子102の電気長と第二アンテナ素子103の電気長を調整することで所望の二つの共振周波数を得ることができる。また、第二アンテナ素子103の電気長の微調整のために、MEMSスイッチ104の第二端子107と第二アンテナ素子103の一端114の間に一つ以上のリアクタンス素子を挿入しても同様の効果が得られる。また、MEMSスイッチ104はグランドパターン101を有する回路基板上に実装してもよいし、別の基板(基材)に実装してもよい。また、第一アンテナ素子102および第二アンテナ素子103も、グランドパターン101を有する回路基板上の導体パターンで構成してもよいし、その一部を別途板金で構成してもよい。また、第一スイッチとしてはMEMSスイッチに限らず、第一端子106と第二端子107の切断状態のアイソレーションが高く接続状態の挿入損失が小さければ半導体スイッチなどを用いてもよいが、第一端子106と第二端子107間で位相の変化が小さい点からMEMSスイッチが望ましい。また、インダクタ115は、MEMSスイッチ104のグランド端子105をグランドパターン101に接地するためだけでなく、整合回路の一部を兼ねてもよい。
【0027】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2におけるアンテナ装置400の概略図である。図4において、図1および図2と同じ構成については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0028】
図4に示すアンテナ装置400おいて、互いに電気長が異なる二つの第二アンテナ素子401aおよび第二アンテナ素子401bと、第一スイッチとしてのMEMSスイッチ402を設けている。ここでは、第二アンテナ素子401aの方が第二アンテナ素子401bよりも電気長を長く設定している。MEMSスイッチ402は、二つの第二端子107aおよび107bを有し、第一端子106が第二端子107aとも107bとも切断された状態、第一端子106が第二端子107aと接続された状態、第一端子106が第二端子107bと接続された状態の3状態を切り替える単極双投(SPDT:Single-Pole Double-Throw)スイッチであり、第二端子の増加に伴って制御端子109やインダクタ112も増加する。
【0029】
上記構成により得られるアンテナの反射特性の一例を図5に示す。図5において、実線はMEMSスイッチ402の第一端子106が第二端子107aとも107bとも切断された状態、破線はMEMSスイッチ402の第一端子106が第二端子107aと接続された状態、一点鎖線はMEMSスイッチ402の第一端子106が第二端子107bと接続された状態の反射特性である。よって、無線通信の周波数に応じてMEMSスイッチ402の状態を切り替えることで、アンテナ素子の電気長を変えて三つの共振周波数を得ることができる。
【0030】
なお、本実施の形態では第一スイッチとしてSPDTスイッチの場合について述べたが、第二アンテナ素子401aとも第二アンテナ素子401bとも電気長が異なる第二アンテナ素子を追加し、第一スイッチとしてSP3Tスイッチを用いることで4つの共振周波数が得られるように、SPnT(n=3,4,5,・・・)スイッチ構成でn+1の共振周波数が得られる。
【0031】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3におけるアンテナ装置600の概略図である。図6において、図1、図2および図4と同じ構成については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0032】
図6に示すアンテナ装置600おいて、第二アンテナ素子103は一つだが、第一スイッチとしてはSPDT構成のMEMSスイッチ402を設け、第二端子107aと第二アンテナ素子103の一端114にはリアクタンス素子601を挿入し、第二端子107bと第二アンテナ素子103の一端114は直接接続している。
【0033】
上記構成により得られるアンテナの反射特性の一例としてリアクタンス素子601がインダクタの場合を図7に示す。図7において、実線はMEMSスイッチ402の第一端子106が第二端子107aとも107bとも切断された状態、破線はMEMSスイッチ402の第一端子106が第二端子107aと接続された状態、一点鎖線はMEMSスイッチ402の第一端子106が第二端子107bと接続された状態の反射特性である。よって、無線通信の周波数に応じてMEMSスイッチ402の状態を切り替えることで、アンテナ素子の電気長を変えて3以上の共振周波数を得ることができる。
【0034】
なお、図8は、本発明の実施の形態3におけるアンテナ装置800の概略図である。図8に示すように第二端子107bと第二アンテナ素子103の一端114にもリアクタンス素子601とはリアクタンス値の異なるリアクタンス素子602を挿入しても同様の効果が得られる。また、第一スイッチとしてSPDTスイッチの場合について述べたが、SPnT(n=3,4,5,・・・)スイッチ構成でリアクタンス値の異なるリアクタンス素子を複数設けることで、第二アンテナ素子103の数がnを下回ってもn+1以上の共振周波数が得られる。リアクタンス素子としては、一つのインダクタやキャパシタのみならず、それらの組み合わせで周波数特性を与えてもよい。
【0035】
(実施の形態4)
図9は、本発明の実施の形態4におけるアンテナ装置900の概略図である。図9において、図1および図2と同じ構成については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0036】
図1に示すアンテナ装置100では、電源端子108と制御端子109はそれぞれインダクタ111および112を一つずつ介して回路基板上の図示外の制御部に接続されていたが、図9に示すアンテナ装置900においては、インダクタ111とインダクタ112をそれぞれ二つずつ挿入し、一方はグランドパターン101の近傍に、他方はMEMSスイッチ104の近傍に配置している。
【0037】
上記構成により、高周波的に電源ラインや制御ラインが遮断される。よって電源ラインや制御ラインの電気長に依存してアンテナ性能が劣化してしまう周波数帯が発生することを抑制できる。
【0038】
なお、電源ラインと制御ラインに一つもインダクタを挿入しない場合に比べれば一つでもインダクタを挿入する効果は大きく、電源ラインと制御ラインが長くなる場合にはその両端にインダクタを挿入することが望ましい。また、電源ラインおよび制御ラインは第二アンテナ素子103に近接しないように配線することが望ましい。
【0039】
(実施の形態5)
図10は、本発明の実施の形態5におけるアンテナ装置1000の概略図である。図10において、図1および図2と同じ構成については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0040】
図10に示すアンテナ装置1000においては、MEMSスイッチ104の電源端子108からインダクタ111までの電源ラインとMEMSスイッチ104の制御端子109からインダクタ112までの制御ラインの各ラインを第一アンテナ素子102に近接して略平行に配置している。また、インダクタ111および112は給電点110の近傍に並列するように配置している。
【0041】
上記構成により、アンテナ性能を劣化させる場合がある電源ラインおよび制御ラインを第一アンテナ素子102と一体化して動作させることにより、アンテナ性能の劣化を抑制できる。
【0042】
なお、インダクタ111および112はグランドパターン101と第一アンテナ素子102を高周波的に遮断するために、インダクタ115とも並列するように配置することが望ましい。
【0043】
また、電源ラインおよび制御ラインは、第一アンテナ素子102と同一平面上に配置することに限らず、多層基板を用いて第一アンテナ素子102の背面に配置してもよい。
【0044】
(実施の形態6)
図11は、本発明の実施の形態6におけるアンテナ装置1100の概略図である。図11において、図1および図2と同じ構成については同じ符号を用い、説明を省略する。
【0045】
図11に示すアンテナ装置1100においては、グランドパターン101と所定の間隔を隔てて配置される第三アンテナ素子1101と、第二スイッチとしてのMEMSスイッチ1102を設けている。MEMSスイッチ1102は、MEMSスイッチ104と同様に、グランド端子1103、第一端子1104および第二端子1105、電源端子1106、制御端子1107を有し、この第一端子1104と第二端子1105との間で切断状態と接続状態とを切り替えるSPSTスイッチである。電源端子1106と制御端子1107はそれぞれインダクタ1108とインダクタ1109を介して回路基板上の図示外の制御部に接続される。第二アンテナ素子103の他端116とMEMSスイッチ1102の第一端子1104とが接続され、MEMSスイッチ1102の第二端子1105に第三アンテナ素子1101の一端1110が接続される。MEMSスイッチ1102のグランド端子1103は第二アンテナ素子103の他端116に接続されている。
【0046】
上記構成により、MEMSスイッチ104の第一端子106と第二端子107が接続状態においては、MEMSスイッチ1102のグランド端子1103は第二アンテナ素子103、MEMSスイッチ104、第一アンテナ素子102およびインダクタ115を介してグランドパターン101に接地される。すなわち、MEMSスイッチ1102のグランド端子1103に接続されるスイッチ用グランドパターンを第二アンテナ素子103と共用するため、スイッチ用グランドパターンがアンテナ素子に近接してアンテナ性能が劣化することがない。また、無線通信の周波数に応じてMEMSスイッチ104の第一端子106と第二端子107の切断状態と接続状態およびMEMSスイッチ1102の第一端子1104と第二端子1105の切断状態と接続状態を切り替えることで、アンテナ素子の電気長を変えて三つの共振周波数を得ることができる。
【0047】
なお、MEMSスイッチ104の第一端子106と第二端子107が切断状態においては、第一アンテナ素子102が支配的となって共振周波数が決まるため、MEMSスイッチ1102のグランド端子1103がグランドパターン101に接地されないことは問題ない。また、第二アンテナ素子および第三アンテナ素子を複数備えたり、MEMSスイッチ104および1102をSPDTやSPnT(n=3,4,5,・・・)構成としたりすることでより多くの共振周波数を得ることができる。
【0048】
また、MEMSスイッチ1102の電源ラインおよび制御ラインを第二アンテナ素子103および第一アンテナ素子102に近接して略平行に配置する場合には、図12に示すように、インダクタ1108およびインダクタ1109は第一アンテナ素子102と第二アンテナ素子103の境界部分に配置する。電源ラインはMEMSスイッチ104および1102で共用し、制御ラインにはインダクタ1111をインダクタ111および112と並列するように追加することで、アンテナ性能を劣化させる場合がある電源ラインおよび制御ラインを第一アンテナ素子102および第二アンテナ素子103と一体化して動作させることにより、アンテナ性能の劣化を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
スイッチのグランド端子に接続されるスイッチ用グランドパターンをアンテナ素子と共用するため、スイッチ用グランドパターンがアンテナ素子に近接することによるアンテナ性能の劣化がなく、無線通信の周波数に応じてアンテナ素子の電気長を変えて共振周波数を切り替えることができるので、携帯電話端末やスマートフォン等の用途に有用である。
【符号の説明】
【0050】
100、400、600、800、900、1000、1100 アンテナ装置
101 グランドパターン
102 第一アンテナ素子
103、401a、401b 第二アンテナ素子
104、402 MEMSスイッチ(第一スイッチ)
105、1103 グランド端子
106、1104 第一端子
107、107a、107b、1105 第二端子
108、1106 電源端子
109、1107 制御端子
110 給電点
111、112、115、1108、1109、1111 インダクタ
601、602 リアクタンス素子
1101 第三アンテナ素子
1102 MEMSスイッチ(第二スイッチ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランドパターンを有する回路基板と、
前記グランドパターンと所定の間隔を隔てて配置される、第一アンテナ素子および第二アンテナ素子と、
グランド端子、第一端子および第二端子を有し、この第一端子とこの第二端子との間で接続または切断される第一スイッチを備え、
前記第一アンテナ素子の一端に給電点を設け、前記第一アンテナ素子の他端と前記第一スイッチの前記第一端子とが接続され、
前記第一スイッチの前記第二端子に前記第二アンテナ素子の一端が接続され、
前記第一アンテナ素子の一端はインダクタを介して前記回路基板のグランドパターンに接地され、前記第一スイッチの前記グランド端子は前記第一アンテナ素子の他端に接続されていることを特徴とする、アンテナ装置。
【請求項2】
グランドパターンを有する回路基板と、
前記グランドパターンと所定の間隔を隔てて配置される、第一アンテナ素子と、互いに電気長が異なる複数の第二アンテナ素子と、
グランド端子、第一端子および複数の第二端子を有し、この第一端子と各第二端子との間で接続または切断される第一スイッチを備え、
前記第一アンテナ素子の一端に給電点を設け、前記第一アンテナ素子の他端と前記第一スイッチの前記第一端子とが接続され、
前記第一スイッチの前記各第二端子にそれぞれ前記第二アンテナ素子の一端が接続され、
前記第一アンテナ素子の一端はインダクタを介して前記回路基板のグランドパターンに接地され、前記第一スイッチの前記グランド端子は前記第一アンテナ素子の他端に接続されていることを特徴とする、アンテナ装置。
【請求項3】
グランドパターンを有する回路基板と、
前記グランドパターンと所定の間隔を隔てて配置される、第一アンテナ素子および第二アンテナ素子と、
グランド端子、第一端子および複数の第二端子を有し、この第一端子と各第二端子との間で接続または切断される第一スイッチを備え、
前記第一アンテナ素子の一端に給電点を設け、前記第一アンテナ素子の他端と前記第一スイッチの前記第一端子とが接続され、
前記第一スイッチの前記第二端子の一つと前記第二アンテナ素子の一端とが接続され、他の前記第二端子のうち、少なくとも一つは前記第二アンテナ素子の一端とリアクタンス素子を介して接続され、
前記第一アンテナ素子の一端はインダクタを介して前記回路基板のグランドパターンに接地され、前記第一スイッチの前記グランド端子は前記第一アンテナ素子の他端に接続されていることを特徴とする、アンテナ装置。
【請求項4】
グランドパターンを有する回路基板と、
前記グランドパターンと所定の間隔を隔てて配置される、第一アンテナ素子および第二アンテナ素子と、
グランド端子、第一端子および複数の第二端子を有し、この第一端子と各第二端子との間で接続または切断される第一スイッチを備え、
前記第一アンテナ素子の一端に給電点を設け、前記第一アンテナ素子の他端と前記第一スイッチの前記第一端子とが接続され、
前記第一スイッチの前記第二端子の一つと前記第二アンテナ素子の一端とがリアクタンス素子を介して接続され、他の前記第二端子のうち、少なくとも一つは前記リアクタンス素子とは異なるリアクタンス値のリアクタンス素子を介して前記第二アンテナ素子の一端と接続され、
前記第一アンテナ素子の一端はインダクタを介して前記回路基板のグランドパターンに接地され、前記第一スイッチの前記グランド端子は前記第一アンテナ素子の他端に接続されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
前記第一スイッチは電源端子および制御端子を備え、
前記電源端子と前記回路基板を接続する電源ラインおよび前記制御端子と前記回路基板を接続する制御ラインのそれぞれに少なくとも一つのインダクタを挿入することを特徴とする請求項1乃至請求項4記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記電源ラインと前記制御ラインの各ラインは前記第一アンテナ素子に近接して略平行に配置し、前記インダクタを給電点近傍に配置することを特徴とする請求項5記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記第一スイッチはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)スイッチであることを特徴とする請求項1乃至請求項6記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記グランドパターンと所定の間隔を隔てて配置される、少なくとも一つの第三アンテナ素子と、
グランド端子、第一端子および少なくとも一つの第二端子を有し、この第一端子と各第二端子との間で接続または切断される第二スイッチを少なくとも一つ備え、
前記第二アンテナ素子の少なくとも一つの他端には前記第二スイッチの前記第一端子を接続し、
前記第二スイッチの前記第二端子の少なくとも一つが前記第三アンテナ素子の一端と直接またはリアクタンス素子を介して接続され、
前記第二アンテナ素子の一端は前記第一スイッチ、前記第一アンテナ素子およびインダクタを介して前記回路基板のグランドパターンに接地され、前記第二スイッチの前記グランド端子は前記第二アンテナ素子の他端に接続されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7記載のアンテナ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−256999(P2012−256999A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127889(P2011−127889)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)