説明

アンテナ装置

【課題】送信アンテナから送信される電波(漏れ電波)の周波数や送信アンテナと受信アンテナの距離が異なる場合であっても、容易に且つ確実に送信アンテナから受信アンテナに達する漏れ電波(干渉波)を減衰させてアイソレーションを確保することを可能にしたアンテナ装置を提供する。
【解決手段】受信アンテナ2と、送信アンテナ1と、主電波を送信するとともに送信アンテナ1から漏れ出した漏れ電波の一部を受信アンテナ2に向けて反射させる反射部材3とを備えてアンテナ装置Aを構成する。また、反射部材3を、受信アンテナ2に直達する漏れ電波の直達波S1に対し、漏れ電波の一部を反射して受信アンテナ2に達する反射波S2が位相をずらして受信アンテナ2に達するように配設し、直達波S1と反射波S2の位相のずれによって干渉を生じさせて、送信アンテナ1から受信アンテナへの干渉波(直達波S1)を減衰させるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッシブ型IDタグのリーダライタなどのアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばパッシブ型IDタグのリーダライタなどのアンテナ装置は、情報のやり取りを行うRFタグ等の応答機に電波を送信する(受信アンテナとは異なるアンテナに主電波を送信する)送信アンテナと、応答機から発信された電波を受信する受信アンテナを隣接して備え、送信アンテナで電波(主電波)を応答機に送信しつつ応答機から発信された受信電波を受信アンテナで受信し、これら送信アンテナと受信アンテナで同時に電波の送受信を行うように構成されている。
【0003】
一方、この種のアンテナ装置においては、送信アンテナから漏れ出した漏れ電波の一部が直接的に、あるいは回り込んで受信アンテナで受信されてしまうと、この漏れ電波が大きなレベルの干渉波になってアンテナパターンに歪が生じ、受信アンテナの受信特性が劣化して必用利得や位相特性(アイソレーション)が確保できなくなる。そして、送信アンテナと受信アンテナの間に十分な距離を設ければ、アイソレーションを確保できるが、このように送信アンテナと受信アンテナを大きく離間させることが現実的に困難な場合が多い。
【0004】
このため、従来、送信アンテナと受信アンテナの間に電波シールドを設け、この電波シールドで漏れ電波を送信アンテナと受信アンテナ間で遮断してアイソレーションを確保することが提案、実用化されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−283391号公報
【特許文献2】特開2008−199562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の送信アンテナと受信アンテナの間に電波シールドを設けてなるアンテナ装置においては、送信アンテナから漏れ出した漏れ電波が電波シールドを回り込んで受信アンテナに受信されてしまうおそれがあった。また、送信アンテナから送信される電波(漏れ電波)の周波数や送信アンテナと受信アンテナの距離に応じて電波シールドの大きさを設定するため、送信アンテナから送信される電波の周波数や送信アンテナと受信アンテナの距離が異なるアンテナ装置毎に大きさの異なる電波シールドが必要になる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、送信アンテナから送信される電波(漏れ電波)の周波数や送信アンテナと受信アンテナの距離が異なる場合であっても、容易に且つ確実に送信アンテナから受信アンテナに達する漏れ電波(干渉波)を減衰させてアイソレーションを確保することを可能にしたアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0009】
本発明のアンテナ装置は、電波を受信する受信アンテナと、前記受信アンテナと隣接して設けられ、前記受信アンテナとは異なるアンテナに主電波を送信する送信アンテナと、前記送信アンテナから漏れ出した漏れ電波の一部を前記受信アンテナに向けて反射させる反射部材とを備え、前記反射部材は、前記受信アンテナに直達する前記漏れ電波の直達波に対し、前記漏れ電波の一部を反射して前記受信アンテナに達する反射波が位相をずらして前記受信アンテナに達するように配設され、前記直達波と前記反射波の位相のずれによって干渉を生じさせて、前記送信アンテナから前記受信アンテナに達する前記直達波を減衰させるように構成されていることを特徴とする。
【0010】
この発明においては、送信アンテナから受信アンテナに直達する漏れ電波の直達波に対し位相をずらして受信アンテナに達するように、漏れ電波の一部を反射部材で反射させることにより、直達波と反射波を干渉させることが可能になる。これにより、従来のアンテナ装置のように送信アンテナと受信アンテナの間に電波シールドを設けることなく、直達波に対して反射波の位相がずれるように反射部材を配設しておくことで、送信アンテナから受信アンテナに達して受信アンテナの受信特性を劣化させる干渉波(漏れ電波、直達波)の減衰効果を得ることが可能になる。
【0011】
また、本発明のアンテナ装置においては、前記送信アンテナが、所定の範囲に向けて電波を発信する指向性を有し、所定の範囲外に漏れ電波が発生するアンテナであることが望ましい。
【0012】
この発明においては、送信アンテナが、所定の範囲に向けて電波(主電波)を発信するとともに所定の範囲外に漏れ電波が発生するアンテナである場合に、反射部材を設けることで、受信アンテナに直達する漏れ電波の直達波と反射部材で反射した漏れ電波の反射波を干渉させて、確実に送信アンテナから受信アンテナに達して受信アンテナの受信特性を劣化させる干渉波を減衰させることができる。
【0013】
さらに、本発明のアンテナ装置において、前記送信アンテナは、棒状に形成され、軸線方向端部から前記所定の範囲に電波を送信し、軸線中心に漏れ電波が放射されるアンテナであってもよい。
【0014】
この発明においては、送信アンテナが、例えばヘリカルアンテナなどの棒状に形成され、軸線中心に漏れ電波が放射されるアンテナである場合に、反射部材を設けることで、漏れ電波の直達波と反射波を干渉させて、より確実に干渉波を減衰させることができる。
【0015】
また、本発明のアンテナ装置において、前記反射部材は、前記受信アンテナに達する前記反射波のうち最短伝搬行路となる反射波が前記直達波のうち最短伝搬行路となる直達波に対して前記受信アンテナ位置で半波長ずれるように配設されていることがより望ましい。
【0016】
この発明においては、漏れ電波の反射波が直達波に対して受信アンテナ位置で半波長ずれるように反射部材が配設されているため、直達波と反射波を互いに打ち消し合うように干渉させることができ、送信アンテナから受信アンテナに達して受信アンテナの受信特性を劣化させる干渉波をなくすことが可能になる。また、このとき、送信アンテナがヘリカルアンテナなどのアンテナである場合には、軸線中心に漏れ電波が放射されるが、最短伝搬行路となる反射波が、最短伝搬行路となる直達波に対して半波長ずれるように反射部材を配設しておくことで、効果的に送信アンテナから受信アンテナに達して受信アンテナの受信特性を劣化させる干渉波をなくすことが可能になる。
【0017】
さらに、本発明のアンテナ装置においては、前記送信アンテナと前記受信アンテナの距離及び/又は前記送信アンテナから送信される電波の周波数に応じて、前記反射部材と、前記送信アンテナ及び/又は前記受信アンテナとが相対移動するように構成されていることが望ましい。
【0018】
この発明においては、送信アンテナから送信される電波の周波数や送信アンテナと受信アンテナの距離が異なる場合であっても、送信アンテナと受信アンテナの距離及び/又は送信アンテナから送信される電波の周波数に応じて、送信アンテナ及び/又は受信アンテナに対する反射部材の相対位置を、反射波と直達波の位相がずれるように容易に設定することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のアンテナ装置においては、従来のアンテナ装置のように送信アンテナと受信アンテナの間に電波シールドを設けることなく、漏れ電波の直達波に対して反射波の位相がずれるように反射部材を配設しておくことにより、送信アンテナから受信アンテナに達して受信アンテナの受信特性を劣化させる干渉波の減衰効果を得ることが可能になる。
【0020】
これにより、送信アンテナから送信される電波の周波数や送信アンテナと受信アンテナの距離が異なる場合であっても、送信アンテナと受信アンテナの距離及び/又は送信アンテナから送信される電波の周波数に応じて、送信アンテナ及び/又は受信アンテナに対する反射部材の相対位置を直達波と反射波の位相がずれるように設定するだけで、容易に且つ確実にアイソレーションを確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置のアイソレーション特性の実験結果を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るアンテナ装置のアイソレーション特性の実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1から図4を参照し、本発明の一実施形態に係るアンテナ装置について説明する。本実施形態は、パッシブ型IDタグのリーダライタなどのアンテナ装置に関するものである。
【0023】
本実施形態のアンテナ装置Aは、図1及び図2に示すように、情報のやり取りを行うRFタグ等の応答機に電波を送信する(受信アンテナ2とは異なるアンテナに主電波を送信する)送信アンテナ1と、応答機から発信された電波を受信する受信アンテナ2を隣接して備え、送信アンテナ1で電波(主電波、送信電波)を応答機に送信しつつ応答機から発信された受信電波を受信アンテナ2で受信し、これら送信アンテナ1と受信アンテナ2で同時に電波の送受信を行うように構成されている。また、本実施形態のアンテナ装置Aは、送信アンテナ1から電波を送信するとともに、この送信アンテナ1から漏れ出した漏れ電波の一部を受信アンテナ2に向けて反射させる反射部材3を備えて構成されている。
【0024】
そして、本実施形態では、送信アンテナ1と受信アンテナ2が例えばヘリカルアンテナであり、これら送信アンテナ1と受信アンテナ2が互いの軸線O1、O2方向を同方向に向け、且つ所定の間隔T1をあけて並設されている。すなわち、本実施形態の送信アンテナ1は、所定の範囲に向けて電波を発信する指向性を有し、所定の範囲外に漏れ電波が発生するアンテナである。さらに、棒状に形成され、軸線O1方向端部から所定の範囲に電波を送信し、軸線O1中心に漏れ電波が放射されて発生するアンテナである。
【0025】
また、反射部材3は、例えば反射鏡、金属板、金属シートなどであり、反射面3aを送信アンテナ1と受信アンテナ2側に向け、送信アンテナ1と受信アンテナ2の双方に対して所定の間隔T2をあけて配設されている。さらに、このとき、反射部材3は、送信アンテナ1から放射されて受信アンテナ2に直達する漏れ電波の直達波S1に対し、反射部材3で反射して受信アンテナ2に達する反射波S2が位相をずらして受信アンテナ2に達するように配設されている。
【0026】
また、本実施形態において、反射部材3は、受信アンテナ2に達する反射波S2が直達波S1に対して受信アンテナ位置で半波長ずれるように配設されている。なお、この反射部材3は、板状に形成されていることに限定する必要はなく、電波を反射することが可能であれば、例えばメッシュ構造、グリッド構造などで構成されていてもよい。
【0027】
そして、このように構成した本実施形態のアンテナ装置Aは、送信アンテナ1及び受信アンテナ2がそれぞれ、軸線O1、O2方向に指向性を有し、情報のやり取りを行うRFタグ等の応答機に送信アンテナ1から電波が送信される。また、このとき、送信アンテナ1は、軸線O1を中心とした放射方向に漏れ電波が発生する。このため、送信アンテナ1に対して所定の間隔T1をあけて隣接した受信アンテナ2に、送信アンテナ1から放射された漏れ電波(直達波S1、干渉波)が受信されてしまい、この漏れ電波が大きなレベルの干渉波になってアンテナパターンに歪が生じ、受信アンテナ2の受信特性が劣化して必用利得や位相特性(アイソレーション)が確保できなくなるおそれがある。
【0028】
これに対し、本実施形態のアンテナ装置Aにおいては、反射部材3を備えているため、送信アンテナ1から放射された漏れ電波の一部が反射部材3によって反射され、この反射部材3で反射した反射波S2が受信アンテナ2に達する。また、このとき、反射部材3は、反射波S2が直達波S1に対して位相をずらして受信アンテナ2に達するように、さらに、反射波S2が直達波S1に対して受信アンテナ位置で半波長ずれるように配設されている。すなわち、送信アンテナ1から受信アンテナ2に直接達する直達波S1の行路T1と、送信アンテナ1から反射部材3、反射部材3から受信アンテナ2に達する反射波S2の行路(T3+T4)の差(行路差)が、受信アンテナ2に達する直達波S1と反射波S2の位相が半波長ずれるように設定されている。
【0029】
このため、受信アンテナ2に達する直達波S1と反射波S2の位相のずれにより、直達波S1と反射波S2の干渉が起こり(直達波S1と反射波S2が互いに打ち消し合い)、直達波S1が反射波S2によって減衰される。これにより、従来のアンテナ装置のように、送信アンテナ1と受信アンテナ2の間に電波シールドを設けることなく、干渉波が減衰することになる。
【0030】
このように受信アンテナ2に達する直達波S1と反射波S2の位相のずれにより、直達波S1と反射波S2の干渉が起こって干渉波が減衰されるため、送信電波の周波数や送信アンテナ1と受信アンテナ2の距離T2が異なる場合であっても、送信アンテナ1と受信アンテナ2の距離T1及び/又は送信アンテナ1から放射される電波の周波数に応じて、送信アンテナ1及び/又は受信アンテナ2に対する反射部材3の相対位置を、直達波S1に反射波S2が干渉して互いに打ち消し合うように設定しておくだけで、アイソレーションが確保されることになる。
【0031】
そして、送信アンテナ1と受信アンテナ2の距離T1及び/又は送信アンテナ1から発信される電波の周波数に応じて、予め、反射部材3と、送信アンテナ1及び/又は受信アンテナ2とを相対移動できるようにアンテナ装置Aを構成しておくと、電波の周波数や送信アンテナ1と受信アンテナ2の距離T1が異なる場合であっても、直達波S1の行路T1と反射波S2の行路(T3+T4)の差が直達波S1と反射波S2の位相を半波長ずれるように、送信アンテナ1、受信アンテナ2、反射部材3の相対位置の設定が容易に且つ確実に行える。すなわち、送信電波の周波数や送信アンテナ1と受信アンテナ2の距離T1が異なる場合であっても、送信アンテナ1、受信アンテナ2、反射部材3の相対位置を可変にしておくと、容易に且つ確実にアイソレーションの確保が図れることになる。
【0032】
ここで、反射部材3を備えた本実施形態のアンテナ装置Aの優位性を確認した実証実験について説明する。図3は、実証実験の結果を示した図であり、送信アンテナ1及び受信アンテナ2と反射部材3との間隔T2を20mm、40mm、60mm、80mm、100mmで段階的に変化させたときのアイソレーション特性を示したものである。また、図3では、横軸を送信アンテナ1と受信アンテナ2の間隔T2とし、縦軸をアイソレーション特性としている。
【0033】
そして、この図3から、両アンテナ1、2の間隔T1と、送信アンテナ1及び受信アンテナ2と反射部材3の間隔T2が、直達波S1と反射波S2の打ち消しの干渉が起こる位置関係になると、約8〜10数dBの利得が稼げることが確認された。すなわち、両アンテナ1、2の間隔T1と、送信アンテナ1及び受信アンテナ2と反射部材3の間隔T2が、直達波S1の行路T1と反射波S2の行路(T3+T4)の差が受信アンテナ2に達した直達波S1と反射波S2の位相をずらす(波長を半波長ずらす)位置関係になると、アイソレーションを確保できることが実証された。
【0034】
一方、図4(a)〜図4(f)は、送信アンテナ1及び受信アンテナ2と反射部材3との間隔T2を6cm、10cm、20cm、30cm、40cm、50cmに段階的に変化させるとともに、各ケースで送信アンテナ1と受信アンテナ2の距離T1を変化させて、アイソレーション特性を確認した結果を示している。また、これら図4(a)〜図4(f)には、実測値とともに計算値を示している。
【0035】
ここで、計算値の算出方法について、送信アンテナ1及び受信アンテナ2と反射部材3の位置関係を示す図2を参照して説明する。まず、直達波S1の伝搬距離をX、アンテナ間距離をT1、送信アンテナ1と受信アンテナ2の半径をRとすると、直達波S1の伝搬距離Xは、X=T1−2Rとなる。さらに、反射波S2の伝搬距離をZ、送信アンテナ1及び受信アンテナ2と反射部材3の距離をT2とすると、反射波の伝達距離Zは、Z=2×(((T1/2)+(T2+R)−1/2)−Rとなる。
【0036】
さらに、直達波S1と反射波S2の行路差MはM=Z−Xとなり、送信アンテナ1から発信される送信電波の波長をFとして行路差Mから相対位相差Cを求めると、C=2×π×M/Fとなる。
【0037】
そして、反射部材3で反射した際に位相が180度反転することから、受信側での相対位相差Cは、C=C+π(rad)となる。さらに、直達波S1に反射波S2が干渉した合成波の振幅値をAとすると、振幅値Aは、A=1+cos(C)となる。また、振幅値の対数値をBとすると、B=10×log(A)となり、さらに、直達波S1の伝搬ロスをVとすると、この伝搬ロスVは、V=20×log((4×π×(L−2R))/F)となる。
【0038】
このように求めた伝搬ロスVと受信アンテナ2の横方向の指向性Pから、受信側でのアイソレーションの計算値Iは、I=B+V−Pによって求まる。
【0039】
そして、このように求めた計算値と実測値を示した図4(a)〜図4(f)からも、両アンテナ1、2の間隔T1と、送信アンテナ1及び受信アンテナ2と反射部材3の間隔T2が、直達波S1の行路T1と反射波S2の行路(T3+T4)の差が受信アンテナ2に達した直達波S1と反射波S2の位相をずらす(波長を半波長ずらす)位置関係になると、アイソレーションを確保できることが確認された。
【0040】
したがって、本実施形態のアンテナ装置Aにおいては、送信アンテナ1から受信アンテナ2に直達する漏れ電波の直達波S1に対し位相をずらして受信アンテナ2に達するように、漏れ電波の一部を反射部材3で反射させることにより、直達波S1と反射波S2を干渉させることが可能になる。これにより、従来のアンテナ装置のように送信アンテナ1と受信アンテナ2の間に電波シールドを設けることなく、直達波S1に対して反射波S2の位相がずれるように反射部材3を配設しておくことで、送信アンテナ1から受信アンテナ2に達して受信アンテナ2の受信特性を劣化させる干渉波(漏れ電波)の減衰効果を得ることが可能になる。
【0041】
よって、本実施形態のアンテナ装置Aによれば、送信アンテナ1から送信される電波の周波数や送信アンテナ1と受信アンテナ2の距離T1が異なる場合であっても、送信アンテナ1と受信アンテナ2の距離T1及び/又は送信アンテナ1から送信される電波の周波数に応じて、送信アンテナ1及び/又は受信アンテナ2に対する反射部材3の相対位置を直達波S1と反射波S2の位相がずれるように設定するだけで、容易に且つ確実にアイソレーションを確保することが可能になる。
【0042】
また、本実施形態のように、送信アンテナ1が、所定の範囲に向けて電波を発信する指向性を有し、所定の範囲外に漏れ電波が発生するアンテナである場合に、さらに、送信アンテナ1が、棒状に形成され、軸線O1方向端部から所定の範囲に電波を送信し、軸線O1中心に漏れ電波が放射されるヘリカルアンテナなどのアンテナである場合に、反射部材3を設けることで、漏れ電波の直達波S1と反射波S2を干渉させて、確実に干渉波を減衰させることができる。
【0043】
さらに、漏れ電波の反射波S2が直達波S1に対して受信アンテナ位置で半波長ずれるように反射部材3が配設されているため、直達波S1と反射波S2を互いに打ち消し合うように干渉させることができ、送信アンテナ1から受信アンテナ2に達して受信アンテナ2の受信特性を劣化させる干渉波をなくすことが可能になる。
【0044】
また、反射部材3と、送信アンテナ1及び/又は受信アンテナ2とが相対移動するように構成すると、送信アンテナ1から送信される電波の周波数や送信アンテナ1と受信アンテナ2の距離T1が異なる場合であっても、送信アンテナ1と受信アンテナ2の距離T1及び/又は送信アンテナ1から送信される電波の周波数に応じて、送信アンテナ1及び/又は受信アンテナ2に対する反射部材3の相対位置を、反射波S2と直達波S1の位相がずれるように容易に設定することが可能になる。
【0045】
そして、このようなアンテナ装置Aは、例えば高速道路等の料金所に設置されるERP(Electronic Road Pricing)などの自動料金収受システムにも好適に採用することが可能である。また、例えば警察車両のルーフ部上に本実施形態のアンテナ装置Aを設けておき、他の車両に搭載した応答機と情報のやり取りを行えるようにし、他の車両のナンバープレートの内容等の識別データを走行しながら取得することにも好適に採用することが可能である。さらに、この場合には、車両のルーフ部を反射部材3としてもよい。
【0046】
以上、本発明に係るアンテナ装置の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本実施形態では、送信アンテナ1と受信アンテナ2がヘリカルアンテナであるものとして説明を行ったが、本発明に係る送信アンテナと受信アンテナは必ずしもヘリカルアンテナに限定しなくてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、送信アンテナ1から受信アンテナ2に直接達する直達波S1の行路T1と、送信アンテナ1から反射部材3、反射部材3から受信アンテナ2に達する反射波S2の行路(T3+T4)の差(行路差)を、直達波S1と反射波S2の位相が半波長ずれるように設定するものとして説明を行った。これに対し、本発明においては、適宜前記行路差を調整して、直達波S1と反射波S2の位相をずらし、直達波S1と反射波S2の干渉効果が十分に得られるようにすればよく、必ずしも直達波S1と反射波S2の位相が半波長ずれるように前記行路差を設定することに限定しなくてもよい。特に図4(c)、(e)に示されるように反射部材3とアンテナ1、2の間隔T2、さらにアンテナ1、2の種類、形状などによっては、前記行路差を直達波S1と反射波S2の位相が半波長ずれるように設定すると、直達波S1と反射波S2の干渉効果が減少する場合もあり、このような場合においても、前記行路差を適宜調整することにより、直達波S1と反射波S2の干渉効果を高め、受信アンテナ2の受信特性を劣化させる干渉波を効果的に無くすることが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 送信アンテナ
2 受信アンテナ
3 反射部材
3a 反射面
A アンテナ装置
O1 送信アンテナの軸線
O2 受信アンテナの軸線
R アンテナの半径
S1 直達波
S2 反射波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を受信する受信アンテナと、前記受信アンテナと隣接して設けられ、前記受信アンテナとは異なるアンテナに主電波を送信する送信アンテナと、前記送信アンテナから漏れ出した漏れ電波の一部を前記受信アンテナに向けて反射させる反射部材とを備え、
前記反射部材は、前記受信アンテナに直達する前記漏れ電波の直達波に対し、前記漏れ電波の一部を反射して前記受信アンテナに達する反射波が位相をずらして前記受信アンテナに達するように配設され、
前記直達波と前記反射波の位相のずれによって干渉を生じさせて、前記送信アンテナから前記受信アンテナに達する前記直達波を減衰させるように構成されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1記載のアンテナ装置において、
前記送信アンテナが、所定の範囲に向けて電波を発信する指向性を有し、所定の範囲外に漏れ電波が発生するアンテナであることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項2記載のアンテナ装置において、
前記送信アンテナは、棒状に形成され、軸線方向端部から前記所定の範囲に電波を送信し、軸線中心に漏れ電波が放射されるアンテナであることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のアンテナ装置において、
前記反射部材は、前記受信アンテナに達する前記反射波のうち最短伝搬行路となる反射波が前記直達波のうち最短伝搬行路となる直達波に対して前記受信アンテナ位置で半波長ずれるように配設されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のアンテナ装置において、
前記送信アンテナと前記受信アンテナの距離及び/又は前記送信アンテナから送信される電波の周波数に応じて、前記反射部材と、前記送信アンテナ及び/又は前記受信アンテナとが相対移動するように構成されていることを特徴とするアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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