アンテナ装置
【課題】 高性能化と薄型化や低コスト化との両立が可能なアンテナ装置を提供すること。
【解決手段】 絶縁性の基板本体2と、基板本体の表面に金属箔でパターン形成されたグランド面GNDと、基板本体の表面に金属箔でパターン形成されグランド面側の基端に給電点FPが設けられて延在するアンテナパターン3と、基板本体の表裏面の一方に設けられていると共にアンテナパターンの先端に直接又はスルーホールを介して接続された誘電体アンテナの一方側アンテナ素子AT1と、基板本体の表裏面の他方側に設けられた他方側導体パターン5Bとを備え、一方側アンテナ素子が、誘電体の表面に形成された一方側導体パターン5Aを有し、一方側導体パターンと他方側導体パターンとが、スルーホールHを介して接続され、全体として螺旋状の導体パターンを構成している。
【解決手段】 絶縁性の基板本体2と、基板本体の表面に金属箔でパターン形成されたグランド面GNDと、基板本体の表面に金属箔でパターン形成されグランド面側の基端に給電点FPが設けられて延在するアンテナパターン3と、基板本体の表裏面の一方に設けられていると共にアンテナパターンの先端に直接又はスルーホールを介して接続された誘電体アンテナの一方側アンテナ素子AT1と、基板本体の表裏面の他方側に設けられた他方側導体パターン5Bとを備え、一方側アンテナ素子が、誘電体の表面に形成された一方側導体パターン5Aを有し、一方側導体パターンと他方側導体パターンとが、スルーホールHを介して接続され、全体として螺旋状の導体パターンを構成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機器の薄型化又は小型化に適したアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機や無線通信機能内蔵のノート型パーソナルコンピュータ等の無線通信機器では、その小型化に伴って部品実装密度も高くなってきている。この対策として、例えば、特許文献1には、誘電体又は磁性体からなる基体表面に螺旋導体層を形成した、いわゆるチップアンテナを基板上に設置し、基板上に形成したグラウンド面にチップアンテナを接地させた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3758495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術においても、以下の課題が残されている。
近年、アンテナ装置のさらなる高性能化の要望が強いが、従来のようにチップアンテナを基板上に設置する場合、高誘電率の誘電体材料を使用したり、チップアンテナの厚みを増大させたりすることで高性能化させることは可能である。しかしながら、これらの対策は高コストになると共に装置全体の薄型化・小型化を図ることが困難になるという不都合があった。
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、高性能化と薄型化や低コスト化との両立が可能なアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明のアンテナ装置は、絶縁性の基板本体と、前記基板本体の表面に金属箔でパターン形成されたグランド面と、前記基板本体の表面に金属箔でパターン形成され前記グランド面側の基端に給電点が設けられて延在するアンテナパターンと、前記基板本体の表裏面の一方に設けられていると共に前記アンテナパターンの先端に直接又はスルーホールを介して接続された誘電体アンテナの一方側アンテナ素子と、前記基板本体の表裏面の他方側に設けられた他方側導体パターンとを備え、前記一方側アンテナ素子が、誘電体の表面に形成された一方側導体パターンを有し、前記一方側導体パターンと前記他方側導体パターンとが、前記基板本体に形成されたスルーホールを介して接続され、全体として螺旋状の導体パターンを構成していることを特徴とする。
【0007】
このアンテナ装置では、一方側アンテナ素子の一方側導体パターンと他方側導体パターンとが、基板本体に形成されたスルーホールを介して接続され、全体として螺旋状の導体パターンを構成しているので、螺旋状の導体パターンが一方側アンテナ素子の誘電体だけでなく少なくとも基板本体を含めて螺旋状に配されることで、一方側アンテナ素子の厚みを増大させたり高誘電率の材料を用いたりしなくても高性能化(高利得化、広帯域化)することが可能になる。
【0008】
また、第2の発明のアンテナ装置は、第1の発明において、前記基板本体の表裏面の他方であって前記一方側アンテナ素子の反対側に設けられた誘電体アンテナの他方側アンテナ素子を備え、前記他方側アンテナ素子が、誘電体の表面に形成された前記他方側導体パターンを有していることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、他方側アンテナ素子が、誘電体の表面に形成された他方側導体パターンを有しているので、一方側アンテナ素子と他方側アンテナ素子とで基板本体を挟んだ状態になり、螺旋状の導体パターンの内側に介在する2つのアンテナ素子の誘電体と基板本体とを合計した厚みにより高性能化が可能である。また、表裏面にそれぞれアンテナ素子を設置するので、アンテナ素子の厚みを薄くすることができる。さらに、表裏面の各アンテナ素子の誘電体材料として低誘電率な材料を選択することができ、低コスト化に対応することも可能である。
【0009】
第3の発明のアンテナ装置は、第1の発明において、前記他方側導体パターンが、前記基板本体の表裏面の他方に金属箔で直接パターン形成されていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、他方側導体パターンが、基板本体の表裏面の他方に金属箔で直接パターン形成されているので、アンテナ素子が1つであっても、螺旋状の導体パターンの内側に介在する一方側アンテナ素子の誘電体と基板本体とを合計した厚みにより高性能化が可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
本発明のアンテナ装置によれば、一方側アンテナ素子の一方側導体パターンと他方側導体パターンとが、基板本体に形成されたスルーホールを介して接続され、全体として螺旋状の導体パターンを構成しているので、一方側アンテナ素子の厚みを増大させたり高誘電率の材料を用いたりしなくても高性能化(高利得化、広帯域化)することが可能になる。したがって、同一のアンテナ占有領域であっても、高性能化と薄型化や低コスト化との両立が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るアンテナ装置の第1実施形態において、アンテナ装置を示す要部の平面図及び底面図である。
【図2】第1実施形態において、アンテナ装置を示す平面図及び底面図である。
【図3】第1実施形態において、基板本体を示す要部の平面図及び底面図である。
【図4】第1実施形態において、一方側アンテナ素子を示す上方から見た斜視図(a)と下方から見た斜視図(b)である。
【図5】第1実施形態において、他方側アンテナ素子を示す下方から見た斜視図(a)と上方から見た斜視図(b)である。
【図6】第1実施形態において、一方側導体パターン、ランド部、スルーホール及び他方側導体パターンの接続を示した概念的な斜視図である。
【図7】第1実施形態において、螺旋状の導体パターンを説明するための概念図である。
【図8】1つのアンテナ素子を使用した比較例1の場合(a)と、厚み2倍のアンテナ素子を使用した比較例2の場合(b)と、2つのアンテナ素子を使用した第1実施形態の場合(c)とにおいて、筐体と厚みとの関係を示す説明図である。
【図9】本発明に係るアンテナ装置の第2実施形態において、アンテナ装置を示す要部の底面図である。
【図10】本発明に係るアンテナ装置の実施例において、アンテナ装置のVSWR特性(電圧定在波比)を示すグラフである。
【図11】本発明の実施例において、アンテナ装置の放射パターンを示すグラフである。
【図12】本発明の実施例及び比較例において、各アンテナ装置における帯域幅を比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るアンテナ装置の一実施形態を、図1から図8を参照しながら説明する。
【0013】
本実施形態におけるアンテナ装置1は、図1から図3に示すように、絶縁性の基板本体2と、基板本体2の表面及び裏面に金属箔でパターン形成されたグランド面GNDと、基板本体2の表面に金属箔でパターン形成されグランド面GND側の基端に給電点FPが設けられて延在するアンテナパターン3と、基板本体2の表裏面の一方(表面)に設けられていると共にアンテナパターン3の先端に直接接続された誘電体アンテナの一方側アンテナ素子AT1と、基板本体2の表裏面の他方側(裏面側)に設けられた他方側導体パターン5Bとを備えている。
【0014】
また、このアンテナ装置1は、基板本体2の表裏面の他方であって一方側アンテナ素子AT1の反対側に設けられた誘電体アンテナの他方側アンテナ素子AT2を備えている。
そして、上記一方側アンテナ素子AT1は、図4に示すように、誘電体4の表面に一方側導体パターン5Aが形成されたチップ状とされていると共に、他方側アンテナ素子AT2は、図5に示すように、誘電体4の表面に上記他方側導体パターン5Bが形成されたチップ状とされている。すなわち、これらの一方側アンテナ素子AT1及び他方側アンテナ素子AT2は、誘電体4を用いたチップアンテナである。なお、図4及び図5では、導体パターンの部分をハッチングして図示している。
【0015】
また、基板本体2の表面(一方側の面)には、一方側アンテナ素子AT1を設置するための複数の一方側ランド部6Aが対応する位置に銅箔等でパターン形成されている。一方側アンテナ素子AT1は、略長板形状の誘電体4の上面から両側面を介して下面の一部にわたって複数の一方側導体パターン5Aが形成されているが、誘電体4の一方側ランド部6Aに対応した部分以外の下面には一方側導体パターン5Aが形成されていない。この一方側アンテナ素子AT1の下面を基板本体2の表面に向け、一方側アンテナ素子AT1の下面に形成された一方側導体パターン5Aとこれらに対応する一方側ランド部6Aとをハンダ材等で接合することで、一方側アンテナ素子AT1が固定される。
【0016】
また、基板本体2の裏面(他方側の面)には、他方側アンテナ素子AT2を設置するための複数の他方側ランド部6Bが対応する位置に銅箔等でパターン形成されている。他方側アンテナ素子AT2は、略長板形状の誘電体4の下面から両側面を介して上面の一部にわたって複数の他方側導体パターン5Bが形成されているが、誘電体4の他方側ランド部6Bに対応した部分以外の上面には他方側導体パターン5Bが形成されていない。この他方側アンテナ素子AT2の上面を基板本体2の裏面に向け、他方側アンテナ素子AT2の下面に形成された他方側導体パターン5Bとこれらに対応する他方側ランド部6Bとをハンダ材等で接合することで、他方側アンテナ素子AT2が固定される。
【0017】
また、一方側ランド部6Aから他方側ランド部6Bにつながる複数のスルーホールHが基板本体2に形成されており、上下の一方側ランド部6Aと他方側ランド部6Bとが電気的に導通している。
一方側導体パターン5Aと他方側導体パターン5Bとは、図6及び図7に示すように、基板本体2に形成されたスルーホールHを介して接続され、全体として螺旋状の導体パターンを構成している。すなわち、一方側導体パターン5A、一方側ランド部6A、スルーホールH、他方側ランド部6B及び他方側導体パターン5Bによって、螺旋状に接続された導体パターンを全体として構成している。
【0018】
したがって、基板本体2を挟んだ一方側アンテナ素子AT1と他方側アンテナ素子AT2とにより、全体として一つの仮想的なアンテナ素子が構成される。この仮想的なアンテナ素子は、全体として一方側アンテナ素子AT1の誘電体4と基板本体2と他方側アンテナ素子AT2の誘電体4とを合わせた誘電体材料の周りに螺旋状の導体パターンが巻回されたものとなる。この仮想的なアンテナ素子では、全体の厚みが、一方側アンテナ素子AT1と基板本体2と他方側アンテナ素子AT2との各厚みの合計となり、全体の幅が、一方側アンテナ素子AT1の幅と一方側ランド部6A及び他方側ランド部6Bの幅と他方側アンテナ素子AT2の幅とで構成される。
この全体として1つの仮想的なアンテナ素子の構成により、アンテナエレメントとしての実効長が長くなり、グランド面GNDへ流れる高周波電流の流れを効果的に抑制することができる。そのため、特にグランド面GNDの面積が小さくなった場合に有効となる。
【0019】
上記アンテナパターン3は、グランド面GND側の基端から該グランド面GNDから離間する方向に延在して途中に第1受動素子P1及び第2受動素子P2が接続された第1延在部3aと、該第1延在部3aの途中であって第2受動素子P2より基端側に先端が接続されていると共に途中に第3受動素子P3が接続され基端が給電点FPから離間した位置でグランド面GNDに接続されている第2延在部3bとを有している。
上記第1受動素子P1〜第3受動素子P3は、例えばインダクタ、コンデンサ、抵抗又はジャンパー線等が採用される。なお、本実施形態では、3つの上記受動素子を用いているが、1個又は3個以上の受動素子を使用しても構わない。
【0020】
また、アンテナパターン3の先端部、すなわち第1延在部3aの先端部には、上記の一方側アンテナ素子AT1が設けられている。また、該一方側アンテナ素子AT1の反対側には、他方側アンテナ素子AT2が設けられている。これら一方側アンテナ素子AT1と他方側アンテナ素子AT2とは、これらに対応して基板本体2の表面(一方側の面)及び裏面(他方側の面)に銅箔等でパターン形成された複数の一方側ランド部6Aと他方側ランド部6B上に半田材等で接着固定される。
【0021】
これら一方側アンテナ素子AT1及び他方側アンテナ素子AT2は、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子であって、例えば図4及び図5に示すように、セラミックス等の誘電体4の表面にAg等の一方側導体パターン5A及び他方側導体パターン5Bが形成されたチップアンテナである。これらの一方側アンテナ素子AT1及び他方側アンテナ素子AT2は、共振周波数等の設定に応じて、その長さ、幅、導体パターンの形状等が選択される。なお、本実施形態の一方側アンテナ素子AT1及び他方側アンテナ素子AT2のサイズは、横幅:10.5mm、奥行き:3.0mm、高さ:0.8mmである。
【0022】
一方側アンテナ素子AT1及び他方側アンテナ素子AT2は、第1延在部3aの延在方向に直交して延在するように設置されている。すなわち、一方側アンテナ素子AT1及び他方側アンテナ素子AT2は、対向するグランド面GNDの端辺に沿って平行に配されている。
【0023】
上記基板本体2は、一般的なプリント基板であって、本実施形態では、長方形状のガラスエポキシ樹脂等からなるプリント基板の本体を採用している。
上記給電点FPには、例えば高周波回路に接続された同軸ケーブルの芯線が接続され、該同軸ケーブルのグランド線は、グランド面GNDに接続される。
なお、本実施形態におけるグランド面GNDのサイズは、長手方向:71.0mm、短手方向:54.0mmであり、基板本体2の厚みは、0.8mmである。
【0024】
次に、このアンテナ装置1とこれを内蔵する筐体10との関係について、図8を参照して説明する。
例えば、図8の(a)に示すように、1つのアンテナ素子AT3を片面に設置した従来のアンテナ装置を薄型の筐体10内に設置した比較例1の場合に対して、1つのアンテナ素子で広帯域化するために、図8の(b)に示すように、アンテナ素子AT3の2倍の厚みのアンテナ素子AT4に変更した比較例2を採用した場合、筐体10内の基板本体2の表面側のスペースが不十分で、厚いアンテナ素子AT4が筐体10に当接してしまい筐体10内に収納することが困難になる場合がある。これに対して、図8の(c)に示すように、本実施形態のアンテナ装置1では、基板本体2の表裏面に分けてアンテナ素子AT3と同じ厚さの一方側アンテナ素子AT1及び他方側アンテナ素子AT2を設置するので、回路本体2の表面側の最大厚みが変わらないと共に裏面側のスペースを利用でき、薄型の筐体10内に収納可能となって、広帯域化と小型化・薄型化との両立が可能になる。
【0025】
このように本実施形態のアンテナ装置1では、一方側アンテナ素子AT1の一方側導体パターン5Aと他方側導体パターン5Bとが、基板本体2に形成されたスルーホールHを介して接続され、全体として螺旋状の導体パターンを構成しているので、螺旋状の導体パターンが一方側アンテナ素子AT1の誘電体だけでなく少なくとも基板本体2を含めて螺旋状に配されることで、一方側アンテナ素子AT1の厚みを増大させたり高誘電率の材料を用いたりしなくても高性能化(高利得化、広帯域化)することが可能になる。
【0026】
特に、基板本体2の裏面側に他方側アンテナ素子AT2を設置し、この他方側アンテナ素子AT2が、誘電体4の表面に形成された他方側導体パターン5Bを有しているので、一方側アンテナ素子AT1と他方側アンテナ素子AT2とで基板本体2を挟んだ状態になり、螺旋状の導体パターンの内側に介在する2つのアンテナ素子AT1,AT2の誘電体4と基板本体2とを合計した厚みにより高性能化が可能である。また、表裏面にそれぞれアンテナ素子AT1,AT2を設置するので、各アンテナ素子の厚みを薄くすることができる。さらに、表裏面の各アンテナ素子AT1,AT2の誘電体材料として低誘電率な材料を選択することができ、低コスト化に対応することも可能である。
【0027】
次に、本発明に係るアンテナ装置の第2実施形態について、図9を参照して以下に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0028】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、基板本体2の表裏面に一方側アンテナ素子AT1と他方側アンテナ素子AT2とを設置し、2つのアンテナ素子を使用すると共に他方側アンテナ素子AT2の誘電体4上に他方側導体パターン5Bを形成しているが、第2実施形態のアンテナ装置11では、図9に示すように、基板本体2の裏面(表裏面の他方の面)に他方側アンテナ素子AT2が実装されておらず、他方側導体パターン25Bが、基板本体2の裏面に金属箔で直接パターン形成されている点である。
【0029】
すなわち、基板本体2の表面のみに一方側アンテナ素子AT1を設置し、裏面に他方側ランド部6Bの代わりに他方側導体パターン25Bを銅箔等で直接パターン形成している。これら他方側導体パターン25Bは、それぞれ対応するスルーホールHに接続されており、基板本体2の表面に設置されている一方側アンテナ素子AT1の一方側導体パターン5AとスルーホールHを介して接続され、全体として螺旋状の導体パターンを構成している。
【0030】
このように第2実施形態のアンテナ装置11では、他方側導体パターン25Bが、基板本体2の表裏面の他方に金属箔で直接パターン形成されているので、アンテナ素子が1つであっても、螺旋状の導体パターンの内側に介在する一方側アンテナ素子AT1の誘電体4と基板本体2とを合計した厚みにより高性能化が可能である。したがって、第2実施形態では、アンテナ素子が一つだけであるため、第1実施形態に比べて低コストにできると共に、同じ厚みのアンテナ素子を用いた従来のアンテナ装置に比べて高性能化を図ることが可能である。
【実施例】
【0031】
次に、上記第1実施形態のアンテナ装置について、VSWR特性(電圧定在波比)と放射パターンとをシミュレーションにより解析した結果を、図10及び図11を参照して説明する。
なお、第1延在部3aの延在方向をY方向とし、一方側アンテナ素子AT1の延在方向をX方向とし、グランド面GNDに対する垂直方向(表面に向けた垂直方向)をZ方向とした。この際のYZ面に対する垂直偏波を解析した。
【0032】
また、各受動素子は、第1受動素子P1:8.2nH、第2受動素子P2:39nH、第3受動素子P3:3.9nHのいずれもインダクタを使用した。なお、解析周波数は、915MHz帯とした。
これらの結果からわかるように、帯域幅は55MHzと広く得られていると共に、無指向性の放射パターンが得られている。
【0033】
次に、図8の(a)(b)(c)で示した第1実施形態及び比較例の各アンテナ装置と第2実施形態のアンテナ装置とにおいて、帯域幅を比較したグラフを図12に示す。なお、図8の(a)(b)で使用した比較例1,2のアンテナ素子AT3,AT4は、一つの誘電体4の表面に一方側導体パターン5Aを形成し裏面に他方側導体パターン5Bを形成して両側面を介して螺旋状の導体パターンとしたものを使用し、各受動素子はそれぞれ同一とした。なお、図12中では、比較例1を「1個使用」、比較例2を「1個使用/厚み2倍」、第2実施形態の実施例を「1個使用+裏面パターン」、第1実施形態の実施例を「表裏2個使用」と表記している。
【0034】
これらの結果からわかるように、薄いアンテナ素子AT3が1つの比較例1に対して、2倍の厚みのアンテナ素子AT4を使用した比較例2では、帯域幅が拡がり、さらに表裏面に一方側アンテナ素子AT1と他方側アンテナ素子AT2とを使用した本発明の実施例では、より帯域幅が拡がって、比較例1に比べて20%以上改善されている。
【0035】
なお、本発明は上記各実施形態及び上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0036】
例えば、他方側アンテナ素子AT2は、基板本体2のアンテナ占有領域に応じて別の形状、導電体材料又は他端側導体パターンに、フレキシブルに変更することも可能である。
なお、搭載する機器毎に一方側アンテナ素子AT1と他方側アンテナ素子AT2とを変更することで、アンテナ性能を改善することができるが、金型代、設計時間等が必要になって大幅なコストが発生してしまう。しかしながら、本発明では、一方側アンテナ素子AT1と他方側アンテナ素子AT2とを変更すること無く、基板設計のみを変更することで、機器毎のアンテナ性能の高性能化を容易に図ることができ、小型化・薄型化との両立が可能である。
【0037】
また、第2実施形態では、基板本体2の表面だけに一方側アンテナ素子AT1を設置して裏面には他方側導体パターン25Bを形成しているが、逆に基板本体2の裏面だけに一方側アンテナ素子AT1を設置して表面に他方側導体パターン25Bを形成しても構わない。この場合、表面側のアンテナパターン3と裏面側の一方側アンテナ素子AT1とは、スルーホールHを介して接続を行うことで導通が可能になる。
【符号の説明】
【0038】
1,11…アンテナ装置、2…基板本体、3…アンテナパターン、4…誘電体、5A…一方側導体パターン、5B,25B…他方側導体パターン、6A…一方側ランド部、6B…他方側ランド部、AT1…一方側アンテナ素子、AT2…他方側アンテナ素子、FP…給電点、GND…グランド面、H…スルーホール
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機器の薄型化又は小型化に適したアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機や無線通信機能内蔵のノート型パーソナルコンピュータ等の無線通信機器では、その小型化に伴って部品実装密度も高くなってきている。この対策として、例えば、特許文献1には、誘電体又は磁性体からなる基体表面に螺旋導体層を形成した、いわゆるチップアンテナを基板上に設置し、基板上に形成したグラウンド面にチップアンテナを接地させた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3758495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術においても、以下の課題が残されている。
近年、アンテナ装置のさらなる高性能化の要望が強いが、従来のようにチップアンテナを基板上に設置する場合、高誘電率の誘電体材料を使用したり、チップアンテナの厚みを増大させたりすることで高性能化させることは可能である。しかしながら、これらの対策は高コストになると共に装置全体の薄型化・小型化を図ることが困難になるという不都合があった。
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、高性能化と薄型化や低コスト化との両立が可能なアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明のアンテナ装置は、絶縁性の基板本体と、前記基板本体の表面に金属箔でパターン形成されたグランド面と、前記基板本体の表面に金属箔でパターン形成され前記グランド面側の基端に給電点が設けられて延在するアンテナパターンと、前記基板本体の表裏面の一方に設けられていると共に前記アンテナパターンの先端に直接又はスルーホールを介して接続された誘電体アンテナの一方側アンテナ素子と、前記基板本体の表裏面の他方側に設けられた他方側導体パターンとを備え、前記一方側アンテナ素子が、誘電体の表面に形成された一方側導体パターンを有し、前記一方側導体パターンと前記他方側導体パターンとが、前記基板本体に形成されたスルーホールを介して接続され、全体として螺旋状の導体パターンを構成していることを特徴とする。
【0007】
このアンテナ装置では、一方側アンテナ素子の一方側導体パターンと他方側導体パターンとが、基板本体に形成されたスルーホールを介して接続され、全体として螺旋状の導体パターンを構成しているので、螺旋状の導体パターンが一方側アンテナ素子の誘電体だけでなく少なくとも基板本体を含めて螺旋状に配されることで、一方側アンテナ素子の厚みを増大させたり高誘電率の材料を用いたりしなくても高性能化(高利得化、広帯域化)することが可能になる。
【0008】
また、第2の発明のアンテナ装置は、第1の発明において、前記基板本体の表裏面の他方であって前記一方側アンテナ素子の反対側に設けられた誘電体アンテナの他方側アンテナ素子を備え、前記他方側アンテナ素子が、誘電体の表面に形成された前記他方側導体パターンを有していることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、他方側アンテナ素子が、誘電体の表面に形成された他方側導体パターンを有しているので、一方側アンテナ素子と他方側アンテナ素子とで基板本体を挟んだ状態になり、螺旋状の導体パターンの内側に介在する2つのアンテナ素子の誘電体と基板本体とを合計した厚みにより高性能化が可能である。また、表裏面にそれぞれアンテナ素子を設置するので、アンテナ素子の厚みを薄くすることができる。さらに、表裏面の各アンテナ素子の誘電体材料として低誘電率な材料を選択することができ、低コスト化に対応することも可能である。
【0009】
第3の発明のアンテナ装置は、第1の発明において、前記他方側導体パターンが、前記基板本体の表裏面の他方に金属箔で直接パターン形成されていることを特徴とする。
すなわち、このアンテナ装置では、他方側導体パターンが、基板本体の表裏面の他方に金属箔で直接パターン形成されているので、アンテナ素子が1つであっても、螺旋状の導体パターンの内側に介在する一方側アンテナ素子の誘電体と基板本体とを合計した厚みにより高性能化が可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
本発明のアンテナ装置によれば、一方側アンテナ素子の一方側導体パターンと他方側導体パターンとが、基板本体に形成されたスルーホールを介して接続され、全体として螺旋状の導体パターンを構成しているので、一方側アンテナ素子の厚みを増大させたり高誘電率の材料を用いたりしなくても高性能化(高利得化、広帯域化)することが可能になる。したがって、同一のアンテナ占有領域であっても、高性能化と薄型化や低コスト化との両立が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るアンテナ装置の第1実施形態において、アンテナ装置を示す要部の平面図及び底面図である。
【図2】第1実施形態において、アンテナ装置を示す平面図及び底面図である。
【図3】第1実施形態において、基板本体を示す要部の平面図及び底面図である。
【図4】第1実施形態において、一方側アンテナ素子を示す上方から見た斜視図(a)と下方から見た斜視図(b)である。
【図5】第1実施形態において、他方側アンテナ素子を示す下方から見た斜視図(a)と上方から見た斜視図(b)である。
【図6】第1実施形態において、一方側導体パターン、ランド部、スルーホール及び他方側導体パターンの接続を示した概念的な斜視図である。
【図7】第1実施形態において、螺旋状の導体パターンを説明するための概念図である。
【図8】1つのアンテナ素子を使用した比較例1の場合(a)と、厚み2倍のアンテナ素子を使用した比較例2の場合(b)と、2つのアンテナ素子を使用した第1実施形態の場合(c)とにおいて、筐体と厚みとの関係を示す説明図である。
【図9】本発明に係るアンテナ装置の第2実施形態において、アンテナ装置を示す要部の底面図である。
【図10】本発明に係るアンテナ装置の実施例において、アンテナ装置のVSWR特性(電圧定在波比)を示すグラフである。
【図11】本発明の実施例において、アンテナ装置の放射パターンを示すグラフである。
【図12】本発明の実施例及び比較例において、各アンテナ装置における帯域幅を比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るアンテナ装置の一実施形態を、図1から図8を参照しながら説明する。
【0013】
本実施形態におけるアンテナ装置1は、図1から図3に示すように、絶縁性の基板本体2と、基板本体2の表面及び裏面に金属箔でパターン形成されたグランド面GNDと、基板本体2の表面に金属箔でパターン形成されグランド面GND側の基端に給電点FPが設けられて延在するアンテナパターン3と、基板本体2の表裏面の一方(表面)に設けられていると共にアンテナパターン3の先端に直接接続された誘電体アンテナの一方側アンテナ素子AT1と、基板本体2の表裏面の他方側(裏面側)に設けられた他方側導体パターン5Bとを備えている。
【0014】
また、このアンテナ装置1は、基板本体2の表裏面の他方であって一方側アンテナ素子AT1の反対側に設けられた誘電体アンテナの他方側アンテナ素子AT2を備えている。
そして、上記一方側アンテナ素子AT1は、図4に示すように、誘電体4の表面に一方側導体パターン5Aが形成されたチップ状とされていると共に、他方側アンテナ素子AT2は、図5に示すように、誘電体4の表面に上記他方側導体パターン5Bが形成されたチップ状とされている。すなわち、これらの一方側アンテナ素子AT1及び他方側アンテナ素子AT2は、誘電体4を用いたチップアンテナである。なお、図4及び図5では、導体パターンの部分をハッチングして図示している。
【0015】
また、基板本体2の表面(一方側の面)には、一方側アンテナ素子AT1を設置するための複数の一方側ランド部6Aが対応する位置に銅箔等でパターン形成されている。一方側アンテナ素子AT1は、略長板形状の誘電体4の上面から両側面を介して下面の一部にわたって複数の一方側導体パターン5Aが形成されているが、誘電体4の一方側ランド部6Aに対応した部分以外の下面には一方側導体パターン5Aが形成されていない。この一方側アンテナ素子AT1の下面を基板本体2の表面に向け、一方側アンテナ素子AT1の下面に形成された一方側導体パターン5Aとこれらに対応する一方側ランド部6Aとをハンダ材等で接合することで、一方側アンテナ素子AT1が固定される。
【0016】
また、基板本体2の裏面(他方側の面)には、他方側アンテナ素子AT2を設置するための複数の他方側ランド部6Bが対応する位置に銅箔等でパターン形成されている。他方側アンテナ素子AT2は、略長板形状の誘電体4の下面から両側面を介して上面の一部にわたって複数の他方側導体パターン5Bが形成されているが、誘電体4の他方側ランド部6Bに対応した部分以外の上面には他方側導体パターン5Bが形成されていない。この他方側アンテナ素子AT2の上面を基板本体2の裏面に向け、他方側アンテナ素子AT2の下面に形成された他方側導体パターン5Bとこれらに対応する他方側ランド部6Bとをハンダ材等で接合することで、他方側アンテナ素子AT2が固定される。
【0017】
また、一方側ランド部6Aから他方側ランド部6Bにつながる複数のスルーホールHが基板本体2に形成されており、上下の一方側ランド部6Aと他方側ランド部6Bとが電気的に導通している。
一方側導体パターン5Aと他方側導体パターン5Bとは、図6及び図7に示すように、基板本体2に形成されたスルーホールHを介して接続され、全体として螺旋状の導体パターンを構成している。すなわち、一方側導体パターン5A、一方側ランド部6A、スルーホールH、他方側ランド部6B及び他方側導体パターン5Bによって、螺旋状に接続された導体パターンを全体として構成している。
【0018】
したがって、基板本体2を挟んだ一方側アンテナ素子AT1と他方側アンテナ素子AT2とにより、全体として一つの仮想的なアンテナ素子が構成される。この仮想的なアンテナ素子は、全体として一方側アンテナ素子AT1の誘電体4と基板本体2と他方側アンテナ素子AT2の誘電体4とを合わせた誘電体材料の周りに螺旋状の導体パターンが巻回されたものとなる。この仮想的なアンテナ素子では、全体の厚みが、一方側アンテナ素子AT1と基板本体2と他方側アンテナ素子AT2との各厚みの合計となり、全体の幅が、一方側アンテナ素子AT1の幅と一方側ランド部6A及び他方側ランド部6Bの幅と他方側アンテナ素子AT2の幅とで構成される。
この全体として1つの仮想的なアンテナ素子の構成により、アンテナエレメントとしての実効長が長くなり、グランド面GNDへ流れる高周波電流の流れを効果的に抑制することができる。そのため、特にグランド面GNDの面積が小さくなった場合に有効となる。
【0019】
上記アンテナパターン3は、グランド面GND側の基端から該グランド面GNDから離間する方向に延在して途中に第1受動素子P1及び第2受動素子P2が接続された第1延在部3aと、該第1延在部3aの途中であって第2受動素子P2より基端側に先端が接続されていると共に途中に第3受動素子P3が接続され基端が給電点FPから離間した位置でグランド面GNDに接続されている第2延在部3bとを有している。
上記第1受動素子P1〜第3受動素子P3は、例えばインダクタ、コンデンサ、抵抗又はジャンパー線等が採用される。なお、本実施形態では、3つの上記受動素子を用いているが、1個又は3個以上の受動素子を使用しても構わない。
【0020】
また、アンテナパターン3の先端部、すなわち第1延在部3aの先端部には、上記の一方側アンテナ素子AT1が設けられている。また、該一方側アンテナ素子AT1の反対側には、他方側アンテナ素子AT2が設けられている。これら一方側アンテナ素子AT1と他方側アンテナ素子AT2とは、これらに対応して基板本体2の表面(一方側の面)及び裏面(他方側の面)に銅箔等でパターン形成された複数の一方側ランド部6Aと他方側ランド部6B上に半田材等で接着固定される。
【0021】
これら一方側アンテナ素子AT1及び他方側アンテナ素子AT2は、所望の共振周波数に自己共振しないローディング素子であって、例えば図4及び図5に示すように、セラミックス等の誘電体4の表面にAg等の一方側導体パターン5A及び他方側導体パターン5Bが形成されたチップアンテナである。これらの一方側アンテナ素子AT1及び他方側アンテナ素子AT2は、共振周波数等の設定に応じて、その長さ、幅、導体パターンの形状等が選択される。なお、本実施形態の一方側アンテナ素子AT1及び他方側アンテナ素子AT2のサイズは、横幅:10.5mm、奥行き:3.0mm、高さ:0.8mmである。
【0022】
一方側アンテナ素子AT1及び他方側アンテナ素子AT2は、第1延在部3aの延在方向に直交して延在するように設置されている。すなわち、一方側アンテナ素子AT1及び他方側アンテナ素子AT2は、対向するグランド面GNDの端辺に沿って平行に配されている。
【0023】
上記基板本体2は、一般的なプリント基板であって、本実施形態では、長方形状のガラスエポキシ樹脂等からなるプリント基板の本体を採用している。
上記給電点FPには、例えば高周波回路に接続された同軸ケーブルの芯線が接続され、該同軸ケーブルのグランド線は、グランド面GNDに接続される。
なお、本実施形態におけるグランド面GNDのサイズは、長手方向:71.0mm、短手方向:54.0mmであり、基板本体2の厚みは、0.8mmである。
【0024】
次に、このアンテナ装置1とこれを内蔵する筐体10との関係について、図8を参照して説明する。
例えば、図8の(a)に示すように、1つのアンテナ素子AT3を片面に設置した従来のアンテナ装置を薄型の筐体10内に設置した比較例1の場合に対して、1つのアンテナ素子で広帯域化するために、図8の(b)に示すように、アンテナ素子AT3の2倍の厚みのアンテナ素子AT4に変更した比較例2を採用した場合、筐体10内の基板本体2の表面側のスペースが不十分で、厚いアンテナ素子AT4が筐体10に当接してしまい筐体10内に収納することが困難になる場合がある。これに対して、図8の(c)に示すように、本実施形態のアンテナ装置1では、基板本体2の表裏面に分けてアンテナ素子AT3と同じ厚さの一方側アンテナ素子AT1及び他方側アンテナ素子AT2を設置するので、回路本体2の表面側の最大厚みが変わらないと共に裏面側のスペースを利用でき、薄型の筐体10内に収納可能となって、広帯域化と小型化・薄型化との両立が可能になる。
【0025】
このように本実施形態のアンテナ装置1では、一方側アンテナ素子AT1の一方側導体パターン5Aと他方側導体パターン5Bとが、基板本体2に形成されたスルーホールHを介して接続され、全体として螺旋状の導体パターンを構成しているので、螺旋状の導体パターンが一方側アンテナ素子AT1の誘電体だけでなく少なくとも基板本体2を含めて螺旋状に配されることで、一方側アンテナ素子AT1の厚みを増大させたり高誘電率の材料を用いたりしなくても高性能化(高利得化、広帯域化)することが可能になる。
【0026】
特に、基板本体2の裏面側に他方側アンテナ素子AT2を設置し、この他方側アンテナ素子AT2が、誘電体4の表面に形成された他方側導体パターン5Bを有しているので、一方側アンテナ素子AT1と他方側アンテナ素子AT2とで基板本体2を挟んだ状態になり、螺旋状の導体パターンの内側に介在する2つのアンテナ素子AT1,AT2の誘電体4と基板本体2とを合計した厚みにより高性能化が可能である。また、表裏面にそれぞれアンテナ素子AT1,AT2を設置するので、各アンテナ素子の厚みを薄くすることができる。さらに、表裏面の各アンテナ素子AT1,AT2の誘電体材料として低誘電率な材料を選択することができ、低コスト化に対応することも可能である。
【0027】
次に、本発明に係るアンテナ装置の第2実施形態について、図9を参照して以下に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0028】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、基板本体2の表裏面に一方側アンテナ素子AT1と他方側アンテナ素子AT2とを設置し、2つのアンテナ素子を使用すると共に他方側アンテナ素子AT2の誘電体4上に他方側導体パターン5Bを形成しているが、第2実施形態のアンテナ装置11では、図9に示すように、基板本体2の裏面(表裏面の他方の面)に他方側アンテナ素子AT2が実装されておらず、他方側導体パターン25Bが、基板本体2の裏面に金属箔で直接パターン形成されている点である。
【0029】
すなわち、基板本体2の表面のみに一方側アンテナ素子AT1を設置し、裏面に他方側ランド部6Bの代わりに他方側導体パターン25Bを銅箔等で直接パターン形成している。これら他方側導体パターン25Bは、それぞれ対応するスルーホールHに接続されており、基板本体2の表面に設置されている一方側アンテナ素子AT1の一方側導体パターン5AとスルーホールHを介して接続され、全体として螺旋状の導体パターンを構成している。
【0030】
このように第2実施形態のアンテナ装置11では、他方側導体パターン25Bが、基板本体2の表裏面の他方に金属箔で直接パターン形成されているので、アンテナ素子が1つであっても、螺旋状の導体パターンの内側に介在する一方側アンテナ素子AT1の誘電体4と基板本体2とを合計した厚みにより高性能化が可能である。したがって、第2実施形態では、アンテナ素子が一つだけであるため、第1実施形態に比べて低コストにできると共に、同じ厚みのアンテナ素子を用いた従来のアンテナ装置に比べて高性能化を図ることが可能である。
【実施例】
【0031】
次に、上記第1実施形態のアンテナ装置について、VSWR特性(電圧定在波比)と放射パターンとをシミュレーションにより解析した結果を、図10及び図11を参照して説明する。
なお、第1延在部3aの延在方向をY方向とし、一方側アンテナ素子AT1の延在方向をX方向とし、グランド面GNDに対する垂直方向(表面に向けた垂直方向)をZ方向とした。この際のYZ面に対する垂直偏波を解析した。
【0032】
また、各受動素子は、第1受動素子P1:8.2nH、第2受動素子P2:39nH、第3受動素子P3:3.9nHのいずれもインダクタを使用した。なお、解析周波数は、915MHz帯とした。
これらの結果からわかるように、帯域幅は55MHzと広く得られていると共に、無指向性の放射パターンが得られている。
【0033】
次に、図8の(a)(b)(c)で示した第1実施形態及び比較例の各アンテナ装置と第2実施形態のアンテナ装置とにおいて、帯域幅を比較したグラフを図12に示す。なお、図8の(a)(b)で使用した比較例1,2のアンテナ素子AT3,AT4は、一つの誘電体4の表面に一方側導体パターン5Aを形成し裏面に他方側導体パターン5Bを形成して両側面を介して螺旋状の導体パターンとしたものを使用し、各受動素子はそれぞれ同一とした。なお、図12中では、比較例1を「1個使用」、比較例2を「1個使用/厚み2倍」、第2実施形態の実施例を「1個使用+裏面パターン」、第1実施形態の実施例を「表裏2個使用」と表記している。
【0034】
これらの結果からわかるように、薄いアンテナ素子AT3が1つの比較例1に対して、2倍の厚みのアンテナ素子AT4を使用した比較例2では、帯域幅が拡がり、さらに表裏面に一方側アンテナ素子AT1と他方側アンテナ素子AT2とを使用した本発明の実施例では、より帯域幅が拡がって、比較例1に比べて20%以上改善されている。
【0035】
なお、本発明は上記各実施形態及び上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0036】
例えば、他方側アンテナ素子AT2は、基板本体2のアンテナ占有領域に応じて別の形状、導電体材料又は他端側導体パターンに、フレキシブルに変更することも可能である。
なお、搭載する機器毎に一方側アンテナ素子AT1と他方側アンテナ素子AT2とを変更することで、アンテナ性能を改善することができるが、金型代、設計時間等が必要になって大幅なコストが発生してしまう。しかしながら、本発明では、一方側アンテナ素子AT1と他方側アンテナ素子AT2とを変更すること無く、基板設計のみを変更することで、機器毎のアンテナ性能の高性能化を容易に図ることができ、小型化・薄型化との両立が可能である。
【0037】
また、第2実施形態では、基板本体2の表面だけに一方側アンテナ素子AT1を設置して裏面には他方側導体パターン25Bを形成しているが、逆に基板本体2の裏面だけに一方側アンテナ素子AT1を設置して表面に他方側導体パターン25Bを形成しても構わない。この場合、表面側のアンテナパターン3と裏面側の一方側アンテナ素子AT1とは、スルーホールHを介して接続を行うことで導通が可能になる。
【符号の説明】
【0038】
1,11…アンテナ装置、2…基板本体、3…アンテナパターン、4…誘電体、5A…一方側導体パターン、5B,25B…他方側導体パターン、6A…一方側ランド部、6B…他方側ランド部、AT1…一方側アンテナ素子、AT2…他方側アンテナ素子、FP…給電点、GND…グランド面、H…スルーホール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基板本体と、
前記基板本体の表面に金属箔でパターン形成されたグランド面と、
前記基板本体の表面に金属箔でパターン形成され前記グランド面側の基端に給電点が設けられて延在するアンテナパターンと、
前記基板本体の表裏面の一方に設けられていると共に前記アンテナパターンの先端に直接又はスルーホールを介して接続された誘電体アンテナの一方側アンテナ素子と、
前記基板本体の表裏面の他方側に設けられた他方側導体パターンとを備え、
前記一方側アンテナ素子が、誘電体の表面に形成された一方側導体パターンを有し、
前記一方側導体パターンと前記他方側導体パターンとが、前記基板本体に形成されたスルーホールを介して接続され、全体として螺旋状の導体パターンを構成していることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記基板本体の表裏面の他方であって前記一方側アンテナ素子の反対側に設けられた誘電体アンテナの他方側アンテナ素子を備え、
前記他方側アンテナ素子が、誘電体の表面に形成された前記他方側導体パターンを有していることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記他方側導体パターンが、前記基板本体の表裏面の他方に金属箔で直接パターン形成されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項1】
絶縁性の基板本体と、
前記基板本体の表面に金属箔でパターン形成されたグランド面と、
前記基板本体の表面に金属箔でパターン形成され前記グランド面側の基端に給電点が設けられて延在するアンテナパターンと、
前記基板本体の表裏面の一方に設けられていると共に前記アンテナパターンの先端に直接又はスルーホールを介して接続された誘電体アンテナの一方側アンテナ素子と、
前記基板本体の表裏面の他方側に設けられた他方側導体パターンとを備え、
前記一方側アンテナ素子が、誘電体の表面に形成された一方側導体パターンを有し、
前記一方側導体パターンと前記他方側導体パターンとが、前記基板本体に形成されたスルーホールを介して接続され、全体として螺旋状の導体パターンを構成していることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記基板本体の表裏面の他方であって前記一方側アンテナ素子の反対側に設けられた誘電体アンテナの他方側アンテナ素子を備え、
前記他方側アンテナ素子が、誘電体の表面に形成された前記他方側導体パターンを有していることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記他方側導体パターンが、前記基板本体の表裏面の他方に金属箔で直接パターン形成されていることを特徴とするアンテナ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−74583(P2013−74583A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214063(P2011−214063)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】
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