説明

アンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症の治療

【課題】アンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症、骨折、及び/又は骨ミネラル濃度(BMD)の減少を、治療、抑制若しくは抑止する又はその発生を低減させる。
【解決手段】本発明は、患者に、トレミフェン及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。また、本発明は、体熱感(hot flash)、女性化乳房及び/又は脱毛を、治療、予防、抑制若しくは抑止する又はその発生を低減させるための方法であって、上記の投与ステップを含む方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症、骨折、及び/又は骨ミネラル濃度(bone mineral density:BMD)の減少を、治療、抑制若しくは抑止する又はその発生を低減させる方法であって、患者に、トレミフェン及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。また、本発明は、体熱感(hot flash)、女性化乳房及び/又は脱毛を、治療、予防、抑制若しくは抑止する又はその発生を低減させるための方法であって、上記の投与ステップを含む方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
男性の場合、年を取るにつれて骨ミネラル濃度が減少することが良く知られている。骨ミネラルの含有量及び密度の減少量は、骨強度の低下及び骨折のしやすさと関係がある。非生殖組織における性ホルモンの多面発現効果の基礎をなす分子機構は、やっと理解され始めたばかりであるが、アンドロゲン及びエストロゲンの生理的濃度が、一生を通じて、骨の恒常性を維持するための重要な役割を果たすことは明らかである。したがって、アンドロゲン又はエストロゲンが欠乏すると、骨再形成の割合が増加するため、再吸収と形成のバランスが崩れて再吸収の方が多くなり、全体としては骨量が減少する。男性では、壮年における性ホルモンの自然な減少(アンドロゲンの直接的減少、並びにアンドロゲンの末梢組織の芳香化によって生じるエストロゲンの減少)は、骨の弱さと関係する。このことは、去勢された男性にも見られる。
【0003】
前立腺癌は、米国の男性において最も多く診断される非皮膚性癌の1つである。前立腺癌を治療するためのアプローチの1つとしては、アンドロゲンを枯渇させることがある。男性ホルモンであるテストステロンは、癌性の前立腺細胞の成長を促進する。したがって、テストステロンは、前立腺癌を成長させる主要な要因である。アンドロゲン枯渇の目的は、癌性前立腺細胞の成長がテストステロンによって促進されるのを減少させることである。テストステロンは、通常は、黄体形成ホルモン(luteinizing hormone:LH)と呼ばれるホルモン信号からの刺激に反応して、睾丸で生成される。黄体形成ホルモン(LH)は、黄体形成ホルモン放出ホルモン(luteinizing hormone-releasing hormone:LH-RH)によって刺激される。アンドロゲン枯渇は、両側精巣摘出によって外科的に、又は、非ステロイド性抗アンドロゲン剤の存在下若しくは非存在下でLH-RHアゴニストによって化学的に行われる。
【0004】
最近の研究は、微小転移の患者においては、早期のアンドロゲン枯渇が実際に生存期間を延長することを示唆している(Messing EM, et al (1999), N Engl J Med 34, 1781-1788; Newling (2001), Urology 58(Suppl 2A), 50-55)。さらに、アンドロゲン枯渇は、例えば、前立腺全摘出術目前のネオアジュバント療法、放射線療法又は外科手術後の再発率が高い患者に対する長期間のアジュバント療法、放射線療法のためのネオアジュバント療法、及び放射線療法又は外科手術後の生化学的再発の治療などの様々な新しい臨床設定で使用されている(Carroll, et al (2001), Urology 58, 1-4; Horwitz EM, et al (2001), Int J Radiat Oncol Biol Phy Mar 15;49(4), 947-56)。したがって、より多くの前立腺患者が、将来アンドロゲン除去治療の対象となる、又は現在アンドロゲン除去治療を受けている。さらに、前記前立腺患者は、アンドロゲン枯渇療法(androgen deprivation therapy:ADT)を、以前よりも早期に又は長期(場合によっては10年以上も)に受けるようになってきている。
【0005】
残念なことに、アンドロゲン枯渇療法は、体熱感(ほてり)、女性化乳房、骨粗鬆症、除脂肪体重の減少、うつ病及び他の情緒変化、性欲減弱、及び勃起障害などの、重大な副作用を伴う(Stege R (2000), Prostate Suppl 10,38-423)。そのため、アンドロゲン遮断の合併症は、現在では、前立腺癌男性患者の罹患率(場合によっては死亡率)の重大な要因である。
【0006】
今日ではより多くの患者が長期間のアンドロゲン枯渇療法を受けているので、アンドロゲン枯渇療法を受けている前立腺癌男性患者にとって、骨粗鬆症が臨床的に重大な副作用となっている。骨ミネラル濃度(bone mineral density:BMD)の減少は、アンドロゲン除去治療を6ヶ月間行った患者の大多数に生じる。そのため、前立腺癌男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症の発症をさせるための、基礎科学及び臨床レベルの両方における新規な革新的アプローチが至急必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症を治療する方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法に関する。
【0008】
本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症を防止するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法に関する。
【0009】
本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症を抑制又は抑止するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法に関する。
【0010】
本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症の発生を低減させるための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法に関する。
【0011】
本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じるBMDの損失を治療するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法に関する。
【0012】
本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じるBMDの損失を予防するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法に関する。
【0013】
本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じるBMDの損失を抑制又は抑止するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法に関する。
【0014】
本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じるBMDの損失の発生を低減させるための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法に関する。
【0015】
本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる骨折を治療するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法に関する。
【0016】
本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる骨折を防止するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法に関する。
【0017】
本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる骨折を抑制又は抑止するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法に関する。
【0018】
本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる骨折の発生を低減させるための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法に関する。
【0019】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる体熱感を治療するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法に関する。
【0020】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる体熱感を抑制又は抑止するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法に関する。
【0021】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる体熱感の発生を低減させるための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法に関する。
【0022】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる女性化乳房を治療するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法に関する。
【0023】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる女性化乳房を抑制又は抑止するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法に関する。
【0024】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる女性化乳房の発生を低減させるための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法に関する。
【0025】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる脱毛を治療するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法に関する。
【0026】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる脱毛を抑制又は抑止するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法に関する。
【0027】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる脱毛の発生を低減させるための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、前立腺癌の男性患者に、抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与することにより、次の(1)〜(12)を行う方法を提供する。(1)アンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症の治療。(2)前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症の予防。(3)アンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症の抑制又は抑止。(4)アンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症の発生低減。(5)アンドロゲン除去によって生じるBMDの損失の治療。(6)アンドロゲン除去によって生じるBMDの損失の予防。(7)アンドロゲン除去によって生じるBMDの損失の抑制又は抑止。(8)アンドロゲン除去によって生じるBMDの損失の発生低減。(9)アンドロゲン除去によって生じる骨折の治療。(10)アンドロゲン除去によって生じる骨折の予防。(11)アンドロゲン除去によって生じる骨折の抑制又は抑止。(12)アンドロゲン除去によって生じる骨折の発生低減。
【0029】
本発明における、疾病、病態又は疾患を、治療、抑制若しくは抑止する又はその発生を低減させる方法は、ある実施形態では、前記疾病、病態又は疾患の治療に使用される医薬組成物を製造するための化合物の使用を意味することを理解されたい。
【0030】
ある実施形態では、アンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症及び/又はBMD損失を、治療、予防、抑制若しくは抑止する又はその発生を低減させる抗エストロゲンは、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(Selective Estrogen Receptor Modulator:SERM)及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせである。
【0031】
他の実施形態では、「抗エストロゲン」という用語は、エストロゲンの放出又は作用を無効にする化合物を意味する。抗エストロゲンは、当該技術分野では公知であり(例えば、タモキシフェン及びその誘導体(例えば、トリオキシフェン、トレミフェン、ドロロキシフェン))、市販されている(例えば、タモキシフェン;商標名:NOLVADEX、ICI pharmaceutical社の製品)。
【0032】
ある実施形態では、本発明に包含されるSERMとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、タモキシフェン、ドロロキシフェン、トレミフェン、イドキシフェン、クロミフェン、エンクロミフェン、ズクロミフェン、ラロキシフェン及びLY353581などのベンゾチオフェン誘導体、EM−800(SCH57050)及びその代謝物EM652などのベンゾピラン誘導体、ラソフォキシフェン(CP 336,156)などのナフタレン誘導体、レボルメロキシフェンなどのクロマン、又はそれらの類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物若しくはそれらの混合物がある。
【0033】
ここに示すように、本発明に包含される抗エストロゲンの他の実施形態としては、これらに限定されるものではないが、例えば、Cycladiene, Merck Index, 10th ed. #3085及び米国特許第2,464,203号及び米国特許第2,465,505号; Nafoxidine, USAN and USP Dictionary of DrugNames, p.327(1983); CI-680, (enlisted Drugs, 28(10): 169(o) (1976), CI-628, (enlisted Drugs, 26(7): 106(1) (1974)); CN-55, 945-27, or nitromitene citrate, Unlisted Drugs, 2712): l94(n) (1975); R2323 or 13-ethyl-17a-ethynl-17B-hydroxygona-4,9,11-tlien-3-one, Unlisted Drugs, 23(3): 34(b) (1971); MER-2i; IJ-11,555A; U-11, 100A; ICI-46,669 and ICI-46,474; all shown in L. Terenius, et al., "Aspects 01 the Mode of Action of Antiestrogens and Antiprogestrogens," Hormones and Protagonists. Gynec. Invest. 3: 98; Diphenol hydrochrysene;erythro-MEA; and ParkDavis CN-55,945; all disclosed in C. &eynet, et al., "Estrogens and Antiestrogens," Hormones and Antagonists. Gynec. Invest. 3: 12 13 (1972); Allenolic acid and cyclofenyl, disclosed in C. Cleynet, et al., Hormones and Antagonists. Gynec. Invest.3: 17 (1972); Chlorotrianisene, Merck Index, iOth ea., 2149; Ethamoxytriphetol, Merck index, 1Oth ed., #3668; and Triparanol, Merck Index, 10th ed., #9541及び米国特許第2,914,562号がある。
【0034】
本発明では、投与量は様々な範囲に設定される。ある実施形態では、投与量は1〜80mg/日の範囲である。他の実施形態では、投与量は5〜80mg/日の範囲である。他の実施形態では、投与量は33〜66mg/日の範囲である。他の実施形態では、投与量は20〜80mg/日の範囲である。他の実施形態では、投与量は20〜60mg/日の範囲である。他の実施形態では、投与量は40〜60mg/日の範囲である。他の実施形態では、投与量は45〜60mg/日の範囲である。他の実施形態では、投与量は15〜25mg/日の範囲である。他の実施形態では、投与量は55〜65mg/日の範囲である。他の実施形態では、投与量は20mg/日である。他の実施形態では、投与量は40mg/日である。他の実施形態では、投与量は60mg/日である。他の実施形態では、投与量は80mg/日である。他の実施形態では、投与量は50〜80mg/日の範囲である。他の実施形態では、投与量は55〜750mg/日の範囲である。他の実施形態では、投与量は60〜70mg/日の範囲である。他の実施形態では、投与量は62〜68mg/日の範囲である。他の実施形態では、投与量は58〜62mg/日の範囲である。他の実施形態では、投与量は52〜68mg/日の範囲である。
投与量の各範囲は、本発明の異なる実施形態である。
【0035】
したがって、本発明は、ある実施形態では、前立腺癌の男性患者に、抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与することにより、アンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症を治療する方法を提供する。
【0036】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症を防止するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0037】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症を抑制又は抑止するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0038】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症の発生を低減させるための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0039】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じるBMDの損失を治療するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0040】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じるBMDの損失を防止するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0041】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じるBMDの損失を抑制又は抑止するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0042】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じるBMDの発生を低減させるための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0043】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる骨折を治療するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0044】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる骨折を防止するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0045】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる骨折を抑制又は抑止するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0046】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる骨折の発生を低減させるための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0047】
本明細書中に示すように、例えばトレミフェンなどの抗エストロゲンを投与すると、骨が保持(維持)されることが実証された。このことは、骨の再吸収及び形成を示す骨特異的血清マーカの量を測定することにより確認された。さらに、本発明は、例えばトレミフェン(及び/又は17−β−エストラジオール)などの抗エストロゲンが骨ミネラル濃度を増加させることを実証した。
【0048】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる体熱感を治療するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0049】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる体熱感を抑制又は抑止するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0050】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる体熱感の発生を低減させるための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0051】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる体熱感を治療するための方法であって、トレミフェン及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0052】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる体熱感を抑制又は抑止するための方法であって、前記患者にトレミフェン及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0053】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる体熱感の発生を低減させるための方法であって、前記患者にトレミフェン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0054】
ある実施形態では、「体熱感」という用語は、例えば急激な体温上昇などの、患者の体温の一時的な乱れを意味する。他の実施形態では、前記乱れは、発汗を伴う。ある実施形態では、「体熱感」という用語は、体の上半身又は全体における突然の熱感、顔面及び首の紅潮、胸、背中及び腕に現れる赤い斑点、大量の発汗、寒さ震えなど、或いはこれらの任意の組み合わせを意味する。ある実施形態では、体熱感は人間が体験する。他の実施形態では、体熱感は男性が体験する。ある実施形態では、体熱感はADTに起因する。他の実施形態では、体熱感はADTに起因しない。
【0055】
本発明に係る体熱感を治療するための方法は、ある実施形態では、例えば閉経、タモキシフェン、酢酸アンモニウム処理、前立腺癌処理、アルコールデヒドロゲナーゼ欠陥、又はカルチノイド症候群/褐色細胞腫によって引き起こされる体熱感を治療するのに使用される。
【0056】
本明細書中に示すように、例えばトレミフェンなどの抗エストロゲンを投与すると、体熱感の頻度及び血中FSH濃度が減少することが実証された。
【0057】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる女性化乳房を治療するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0058】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる女性化乳房を抑制又は抑止するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0059】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる女性化乳房の発生を低減させるための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0060】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる女性化乳房を治療するための方法であって、前記患者にトレミフェン及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0061】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる女性化乳房を抑制又は抑止するための方法であって、前記患者にトレミフェン及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0062】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる女性化乳房の発生を低減させるための方法であって、前記患者にトレミフェン及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0063】
ある実施形態では、女性化乳房は、男性において、乳房組織の量が増加することを特徴とする。他の実施形態では、女性化乳房は、エストロゲンによって媒介される。他の実施形態では、女性化乳房は、血漿又は乳房の内部におけるエストロゲンに対する活性アンドロゲンの正常な比率が乱れることによって生じる。他の実施形態では、女性化乳房は、エストラジオールに起因する。ある実施形態では、エストラジオール形成は、抹消組織内で、循環アンドロゲンがエストロゲンに変換することにより生じる。他の実施形態では、女性化乳房は、胸痛を特徴とする。ある実施形態では、女性化乳房は、乳房の大きさの増大、乳房の膨らみの増大、乳頭の前腋窩線までの増大、乳頭の胸骨切痕までの増大、又はそれらの組み合わせを特徴とする。
【0064】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる脱毛の発生を低減させるための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0065】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる脱毛を治療するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0066】
他の実施形態では、本発明は、前立腺癌の男性患者におけるアンドロゲン除去によって生じる脱毛を抑制又は抑止するための方法であって、前記患者に抗エストロゲン物質及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせを投与するステップを含む方法を提供する。
【0067】
ある実施形態では、「脱毛(hair loss)」は脱毛症(alopecia)を意味する。他の実施形態では、脱毛は、毛髪の再生の乱れが原因であり、最初の段階では、その再生周期の頻度を加速させ、毛髪の質そして毛髪の量に損害を与える。濃い毛髪の緩やかな減少は、ある実施形態では、いわゆる「硬い(terminal)」毛髪が産毛の段階に退化することにより生じる。ある実施形態では、特定の領域が選択的に影響を受ける。男性の場合は(女性の場合も)、頭頂部に、特にこめかみ又は前頭部に、広範囲な脱毛症が見られる。「脱毛症」という用語は、他の実施形態では、最終的には毛髪の部分的又は全体的な永久的な損失をもたらす毛嚢の病気群を意味する。ある実施形態では、脱毛はADTに起因する。他の実施形態では、脱毛はADTに起因しない。脱毛の各種類は、本発明の異なる実施形態である。
【0068】
ある実施形態では、抗エストロゲンは、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)である。他の実施形態では、抗エストロゲンは、トリフェニルエチレンである。他の実施形態では、抗エストロゲンは、トレミフェンである。他の実施形態では、抗エストロゲンは、クエン酸塩トレミフェンである。
【0069】
骨粗鬆症は、ある実施形態では、全身性の骨疾患であり、骨量の減少及び骨組織の劣化を特徴とする。そのため、骨粗鬆症にかかると、骨が脆くなって骨折しやすくなる。骨粗鬆症患者の骨強度は異常に低いため、骨折する危険性が高い。骨粗鬆症は、骨内に含有されているカルシウムとタンパク質コラーゲンを激減させる。その結果、骨の性質が異常になる又は骨密度が減少する。骨粗鬆症に冒された骨は、普通なら骨折の原因にはならないような、ちょっとした転倒やケガでも骨折する。骨折は、ある実施形態では、亀裂(例えば、股関節の骨折)又は崩壊(例えば、脊柱の圧迫骨折)である。脊柱、股関節及び手関節は、骨粗鬆症による骨折が起こりやすい部位である。なお、骨折は、他の骨格部位でも起こり得る。
【0070】
ある実施形態では、骨粗鬆症は、ADTに起因する。他の実施形態では、骨粗鬆症は、ADTに起因しない。骨粗鬆症の各種類は、本発明の異なる実施形態である。
【0071】
BMDは、骨量の正確な測定値である。BMDにより測定された骨の絶対量は、一般的に、骨強度及び骨の重量に耐える能力と相関関係にある。血圧を測定することによって脳卒中の危険を予測できるのと同様に、BMDを測定することによって骨折の危険性を予測することが可能になる。
【0072】
BMDは、ある実施形態では、既知の骨ミネラル含有量マッピング技術によって測定することができる。股関節、脊柱、手関節又は踵骨の骨密度は、様々な手法によって測定することができる。BMD測定の好ましい方法としては、二重エネルギーX吸収測定法(dual-energy x-ray densitometry:DXA)がある。股関節、前後方向(antero-posterior)の脊柱、横向方の脊柱及び手関節のBMDは、この測定方法によって測定することができる。どの部位の測定によっても骨折の全体的な危険性を予測することは可能であるが、特定の部位の情報がその部位での骨折を予測する上での最良の判断材料となる。また、脊柱のBMDの測定に、定量的CTスキャン(Quantitative Computed Tomography:QCT)を使用することもできる。例えば、次の文献「Nuclear Medicine: Quantitative Procedures, by Wahner H W, Dunn W L, Thorsen H C, et al., published by Toronto Little, Brown & Co., 1983, p.107-132」、「Assessment of Bone Mineral Part 1, Journal of Nuclear Medicine, 1984, p.1134-1141」、及び「Bone Mineral Density of The Radius, Vol. 26, No. 11, 1985 Nov., Journal of Nuclear Medicine. p.13-39」を参照されたい。また、骨ミネラル濃度の測定にガンマ線カメラを使用することに関しては、次の文献「S. Hoory et al., Radiology, Vol. 157 (P), 1985,p.87」、及び「C. R. Wilson et al., Radiology, Vol. 157 (P), 1985, p.88」を参照されたい。
【0073】
本発明は、ある実施形態では、アンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症及び/又はBMD損失を治療、予防、抑制若しくは抑止する又はその発生を低減させるための安全で効果的な方法を提供する。本発明は、特に、アンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症が進行する危険性が高い、前立腺癌の男性患者を治療するのに有用である。ある実施形態では、前記男性患者は、哺乳類の患者である。他の実施形態では、前記男性患者は、人間の患者である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態である。
【0074】
ある実施形態では、患者は、前立腺癌を患っている。他の実施形態では、患者は、良前立腺過形成を有する。他の実施形態では、患者のアンドロゲン、テストステロン又はエストロゲン濃度は、通常よりも低い、又は通常よりも高い。
【0075】
他の実施形態では、患者は、ADTを受けている。「受けている」という表現は、ある実施形態では、最近(6ヶ月以内)又は現在、一般的にアンドロゲン濃度(特にテストステロン濃度)を減少させる当該技術分野では周知の治療を受けていることを意味する。他の実施形態では、この表現は、前記治療を以前に6ヶ月以上受けたことを意味する。ある実施形態では、前記治療は外科的に行われる。他の実施形態では、前記治療は内科的に行われる。他の実施形態では、前記治療は、アンドロゲン又はテストステロンを、完全に又は検出以下の濃度となるように除去する。他の実施形態では、ADTは、アンドロゲン又はテストステロンの濃度を低下させることを目的としていない治療の副作用である。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態である。
【0076】
ここに示すデータは、抗エストロゲンが、例えば、骨粗鬆症、骨量減少、BMD損失、体熱感、女性化乳房、及び脱毛などのアンドロゲン枯渇の徴候に作用することを実証する。ある実施形態では、本発明に係る抗エストロゲンは、エストロゲン受容体アンタゴニストとして作用する。他の実施形態では、本発明に係る抗エストロゲンは、エストロゲン受容体アゴニストとして作用する。別の実施形態では、本発明に係る抗エストロゲンは、ある組織ではエストロゲン受容体アンタゴニストとして作用し、他の組織ではエストロゲン受容体アゴニストとして作用する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態である。
【0077】
さらに、本発明に係る抗エストロゲンは、骨量減少によって生じる骨粗鬆症の治療、抑制又は抑止に有効である。「骨粗鬆症」は、骨の石灰化及び密度の減少を意味する。骨粗鬆症は、ある実施形態では、全ての骨格系を含む用語であり、その症状は良く知られている。
【0078】
他の実施形態では、本発明は、ADTに関連する任意の疾患、疾病又は病態を治療する方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、アンドロゲン除去によって生じる任意の疾患、疾病又は病態を治療する方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、テストステロン除去によって生じる任意の疾患、疾病又は病態を治療する方法を提供する。各可能な形態は、本発明の異なる実施形態である。
【0079】
本発明は、アンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症、BMD損失、体熱感、女性化乳房及び/又は脱毛を治療するための、抗エストロゲン及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせの使用に関する。したがって、ある実施形態では、本発明に係る方法は、前記抗エストロゲンの類似体の投与を含む。他の実施形態では、本発明に係る方法は、前記抗エストロゲンの誘導体の投与を含む。他の実施形態では、本発明に係る方法は、前記抗エストロゲンの異性体の投与を含む。他の実施形態では、本発明に係る方法は、前記抗エストロゲンの代謝体の投与を含む。他の実施形態では、本発明に係る方法は、前記抗エストロゲンの薬学的に許容される塩の投与を含む。他の実施形態では、本発明に係る方法は、前記抗エストロゲンの医薬品の投与を含む。他の実施形態では、本発明に係る方法は、前記抗エストロゲンの水和物の投与を含む。他の実施形態では、本発明に係る方法は、前記抗エストロゲンのN酸化物の投与を含む。他の実施形態では、本発明に係る方法は、前記抗エストロゲンの類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物又はN酸化物の任意の組み合わせの投与を含む。
【0080】
ここの定義するように、「異性体」という用語は、これらに限定されるものではないが、光学異性体及びその類似体、構造異性体及びその類似体、配座異性体及びその類似体などを含む。
【0081】
ある実施形態では、本発明は、抗エストロゲン化合物の様々な光学異性体の使用を包含する。本発明に係る抗エストロゲン化合物が少なくとも1つのキラル中心を有していることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明に係る方法に使用される抗エストロゲン化合物は、光学活性体又はラセミ体で存在し得る及び単離され得る。また、一部の化合物は、結晶多形を示し得る。当然のことながら、本発明は、ここで説明したアンドロゲン関連疾患の治療に有用な望ましい性質を形成する、任意のラセミ体、光学活性体、結晶多形体若しくは立体異性体又はそれらの混合物を包含する。ある実施形態では、抗エストロゲン化合物は、純粋な(R)異性体である。他の実施形態では、抗エストロゲン化合物は、純粋な(S)異性体である。他の実施形態では、抗エストロゲン化合物は、(R)異性体と(S)異性体との混合物である。他の実施形態では、抗エストロゲン化合物は、(R)異性体と(S)異性体とを同量含むラセミ混合物である。光学活性体を生成する方法は、当該技術分野では周知である(例えば、再結晶法を使用したラセミ体の分割による方法、光学体活性体開始物質からの合成による方法、キラル合成による方法、又はキラル固定相を使用したクロマトグラフ分離による方法がある)。
【0082】
本発明は、有機酸又は無機酸(例えばクエン酸又は塩酸)を有するアミノ置換化合物の「薬学的に許容される塩」を含む。また、本発明は、ここで説明した化合物のアミノ置換化合物のN酸化物も含む。薬学的に許容される塩は、無機塩基(例えば水酸化ナトリウム)で処理することによって、フェノール化合物から作成することもできる。また、フェノール化合物のエステルは、脂肪族カルボン酸及び芳香族カルボン酸(例えば酢酸エステル及び安息香酸エステル)から作成することができる。
【0083】
他の実施形態では、本発明は、抗エストロゲン化合物の誘導体をさらに含む。「誘導体」という用語は、これらに限定されるものではないが、エーテル誘導体、酸誘導体、アミノ誘導体、エステル誘導体などを意味する。また、本発明は、抗エストロゲン化合物の水和物をさらに含む。「水和物」という用語は、これらに限定されるものではないが、半水和物、一水和物、二水和物、三水和物などを意味する。
【0084】
本発明は、抗エストロゲン化合物の代謝体をさらに含む。「代謝体」という用語は、代謝作用又は代謝過程によって、別の物質から作成された任意の物質を意味する。
【0085】
本発明は、抗エストロゲン化合物の医薬品をさらに含む。ここに定義するように、「医薬品」という用語は、医薬的な使用に適した組成物(医薬組成物)を意味する。
【0086】
さらに、本発明は、純粋な(RR、SS)及び(RS、SR)光学異性体対並びにそれらの混合物のみならず、ここで定義された抗エストロゲン化合物の純粋な(Z)及び(E)異性体並びにそれらの混合物を包含する。
【0087】
《医薬品組成物》
【0088】
ある実施形態では、本発明に係る方法は、抗エストロゲン化合物及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせ、並びに薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物を投与するステップを含む。前記医薬組成物は、アンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症及び/又はBMD損失を治療するために、アンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症及び/又はBMD損失を抑制若しくは抑止するために、及び/又はアンドロゲン除去によって生じる骨粗鬆症及び/又はBMD損失の発生を低減させるために、前立腺癌の男性患者に投与される。
【0089】
「医薬組成物」という用語は、薬学的に許容される担体又は希釈剤と共に、「治療効果のある量」の「有効成分」すなわち抗エストロゲンを含んでいる組成物である。「治療効果のある量」は、与条件及び投薬計画に治療効果を与える量を意味する。
【0090】
抗エストロゲンを含んでいる医薬組成物は、例えば、非経口、側癌的(paracanceraly)、経粘膜、経皮、筋肉内、静脈内、皮内、皮下、腹膜内、脳室内、脳内、膣内又は腫瘍内投与などの当業者に周知の方法によって患者に投与される。
【0091】
ある実施形態では、前記医薬組成物は経口投与される。そのため、前記医薬組成物は、経口投与に適した形態(すなわち、固形又は液体製剤)に作成される。適切な経口用固形製剤としては、錠剤、カプセル、ピル、顆粒、ペレットなどがある。また、適切な経口用液体製剤としては、溶液、懸濁液、分散液、乳濁液、油などがある。本発明のある実施形態では、抗エストロゲン化合物はカプセル状に作成される。この実施形態では、本発明に係る組成物は、抗エストロゲン活性化合物、及び不活性担体又は希釈剤に加えて、硬ゲル化カプセルを含む。
【0092】
さらに、他の実施形態では、前記医薬組成物は、液体製剤の静脈内注射、動脈内注射又は筋肉内注射によって投与される。適切な液体製剤としては、溶液、懸濁液、分散液、乳濁液、油などがある。ある実施形態では、前記医薬組成物は、静脈内投与に適した形態に作成され、静脈内に投与される。他の実施形態では、前記医薬組成物は、動脈内投与に適した形態に作成され、動脈内に投与される。他の実施形態では、前記医薬組成物は、筋肉内投与に適した形態に作成され、筋肉内に投与される。
【0093】
さらに、他の実施形態では、前記医薬組成物は、局所投与に適した形態に作成され、体の表面に局所的に投与される。適切な局所性製剤としては、ゲル、軟膏、クリーム、ローション、液滴などがある。局所的に投与する場合は、抗エストロゲン物質又はその誘導体であって生理学的に耐容性を示すもの(例えば塩、エステル、N酸化物)が作成され、薬品担体を用いて又は用いることなく、生理学的に認容される希釈剤と共に、水溶液、懸濁液、又は乳状液として投与される。
【0094】
さらに、他の実施形態では、前記医薬組成物は、直腸座薬や尿道座薬などの座薬として投与される。さらに、他の実施形態では、前記医薬組成物は、ペレットの皮下埋め込みによって投与される。さらなる実施形態では、前記ペレットは、抗エストロゲン物質を長期間に渡って制御放出する。
【0095】
他の実施形態では、前記活性化合物は、小胞(特にリポソーム)に送達される。詳細については、「Langer, Science 249: 1527-1533, 1990; Treat et al., in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berestein and Fidler (eds.), Liss, New York, 353-365, 1989; Lopez-Berestein, ibid, 317-327」を参照されたい(主にibidを参照のこと)。
【0096】
「薬学的に許容される担体又は希釈剤」は、当業者に周知である。担体又は希釈剤としては、固形製剤用の固形担体又は希釈剤、液体製剤用の液体担体又は希釈剤、又はこれらの混合物がある。
【0097】
固形製剤/希釈剤としては、これらに限定されるものではないが、ガム、デンプン(例えば、コーンのデンプンや、予めゲル化されたデンプン)、糖(例えば、乳糖、マンニトール、ショ糖、ブドウ糖)、セルロース系材料(例えば微結晶性セルロース)、アクリル酸塩(例えばポリメチルアクリレート)、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、滑石、又はこれらの混合物がある。
【0098】
液体製剤の場合、薬学的に許容される担体としては、水溶性若しくは非水性の溶液、懸濁液、乳濁液、又は油がある。非水溶媒の例としては、プロピレン・グリコール、ポリエチレン・グリコール、及び注射用有機エステル(例えばオレイン酸エチル)がある。水溶性担体としては、水、アルコール性/水溶性の溶液、乳濁液、又は懸濁液(生理食塩水や緩衝培地を含む)がある。油の例としては、石油、動物性、植物性、又は合成油がある(例えば、ラッカセイ油、大豆油、鉱油、オリーブ油、ひまわり油、及び魚肝油)。
【0099】
非経口媒体(皮下注射、静脈内注射、動脈内注射、又は筋肉内注射用の)としては、塩化ナトリウム溶液、リンガー・デキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンガーオイル及び固定油がある。経静脈媒体としては、液体及び栄養補充薬、電解質補充薬(例えばリンガー・デキストロースに基づくもの)などがある。一例としては、界面活性剤及び他の薬学的に許容されるアジュバントを添加した又は添加しない、水や油などの無菌液がある。一般的に、水、生理食塩水、水溶性デキストロースや関連糖液、及びグリコール(例えば、プロピレン・グリコールやポリエチレン・グリコール)は、液体担体として適している(特に、注射用溶液に適している)。油の例としては、石油、動物性、植物性、又は合成油がある(例えば、ラッカセイ油、大豆油、鉱油、オリーブ油、ひまわり油、及び魚肝油)。
【0100】
また、前記医薬組成物は、さらに、結合剤(例えば、アカシア、コーンスターチ、ゼラチン、カルボマー、エチルセルロース、グアールガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン)、崩壊剤(例えば、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸、二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グアールガム、澱粉グリコール酸エステルナトリウム)、様々なpH及びイオン強度の緩衝液(例えば、トリス−HCI、アセテート、リン酸塩)、界面に対する吸収を防止するための添加物(例えば、アルブミン又はゼラチン)、洗剤(例えば、トウィーン20、トウィーン80、プルロニックF68、胆汁酸塩)、プロテアーゼインヒビター、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、浸透エンハンサー、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール)、安定剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、粘度上昇剤(例えば、カルボマー、コロイド状二酸化ケイ素、エチルセルロース、グアールガム)、甘味料(例えば、アスパルテーム、クエン酸)、防腐剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラオキシ安息香酸エステル類)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレン・グリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、流動助剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、可塑剤(例えば、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル)、乳化剤(例えば、カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム)、ポリマーコーティング(例えば、ポロキサマー、ポロキサミン)、被覆及び膜形成剤(例えば、エチルセルロース、アクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩)、及び/又はアジュバントを含むことができる。
【0101】
ある実施形態では、前記医薬組成物は、投与後に抗エストロゲン化合物を長期間に渡って放出する制御放出組成物である。制御若しくは持続放出組成物としては、脂溶性の持続性製剤(例えば、脂肪酸、ワックス、オイル)がある。他の実施形態では、前記医薬組成物は、投与後に全ての抗エストロゲン化合物を直ちに放出する即放組成物である。
【0102】
別の実施形態では、前記医薬組成物は、制御放出システムによって送達される。例えば、前記医薬組成物は、静脈内注入、植込型浸透圧ポンプ、経皮パッチ、リポソーム、又は他の投与形態により投与される。ある実施形態では、ポンプを使用して行う(例えば、Langer, supra; Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201, 1987; Buchwald et al., Surgery 88:507, 1980; Saudek et al., N. Engl. J. Med. 321:574, 1989を参照されたい)。他の実施形態では、高分子材料を使用することができる。別の実施形態では、制御放出システムは、治療標的すなわち脳の近くに設けることができる。この場合、必要とされる投与量は、全身に投与する場合と比べるとごく少量である(例えば、Goodson, in Medical Applications of Controlled Release, supra, vol. 2, pp.115-138, 1984を参照されたい)。他の制御放出システムについては、「Langer, Science 249:1527-1533, 1990」によるレビューに記載されている。
【0103】
前記医薬組成物は、活性物質を、ポリマー化合物(ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲルなど)の粒子状製剤や、リポソーム、マイクロエマルション、ミセル、単層或いは多層状の小胞、赤血球ゴースト、又はスフェロプラストなどに組み込むことを含む。そのような組成物は、物理的状態、溶解度、安定性、インビボでの放出速度、及びインビボでの排出速度に影響を与える。
【0104】
ポリマー(例えば、ポロキサマー又はポロキサミン)で被覆された粒子状組成物も本発明に含まれる。また、組織特異性受容体、リガンド若しくは抗原に対する抗体と結合した化合物や、組織特異性受容体のリガンドと結合した化合物も本発明に含まれる。
【0105】
また、水溶性ポリマーの共有結合によって修飾された化合物も本発明に含まれる。前記水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン・グリコール、ポリエチレン・グリコールとポリプロピレン・グリコールのコポリマー、カルボキシメチル・セルロース、デキストラン、ポリビニル・アルコール、ポリビニルピロリドン、又はポリプロリンがある。修飾された化合物は、対応する修飾されていない化合物と比較すると、静脈注射後に血液中で著しく長い半減期を示すことが知られている(詳しくは、Abuchowski et al., 1981; Newmark et al., 1982; 及び Katre et al., 1987を参照されたい)。また、そのような修飾は、化合物の水溶液中での溶解度を高め、凝集を防止し、化合物の物理的及び化学的安定性を向上させ、化合物の免疫原性及び反応性を著しく低下させる。そのため、前記ポリマー化合物を、修飾されていない化合物よりも低い頻度で又は少ない用量で投与することにより、インビボでの望ましい生物学的活性を得ることができる。
【0106】
活性成分を含有する医薬組成物の作成は、当該技術分野で公知である(例えば、混合、顆粒化、又は錠剤製剤化によって作成する)。活性治療成分は、多くの場合は、薬学的に許容されるかつ活性化成分と適合する賦形剤と混合される。経口投与の場合は、抗エストロゲン物質又はその誘導体であって生理学的に耐容性を示すもの(例えば、塩、エステル、N酸化物)が、この目的に通常使用される添加物(例えば、賦形剤、安定剤、不活性希釈剤)と混合され、通常の方法によって投与に適した形態(例えば、錠剤、コート錠、硬ゼラチンカプセル、軟ゼラチンカプセル、水溶性、アルコール性溶液、油性溶液)に変換される。非経口投与の場合は、抗エストロゲン物質又はその誘導体であって生理学的に耐容性を示すもの(例えば、塩、エステル、N酸化物)は、必要に応じて、この目的に通常使用される適切な物質(例えば可溶化剤又は他の物質)によって、溶液、懸濁液又は乳濁液に変換される。
【0107】
活性成分は、中和された薬学的に許容される塩の形態で、前記医薬組成物内に配合することができる。薬学的に許容される塩としては、例えば、無機酸(塩酸、リン酸など)や有機酸(酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸など)により生成された酸付加塩がある(ポリペプチド又は抗体分子の遊離アミノ基により生成される)。遊離カルボキシル基から生成される塩は、例えば、無機塩(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄)や、有機塩基(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン)からも生成できる。
【0108】
医学的に使用するために、抗エストロゲンの塩を、薬学的に許容される塩として使用することができる。また、本発明に係る化合物又はその薬学的に許容される塩の作成に、他の塩を使用することもできる。本発明に係る化合物の適切な薬学的に許容される塩としては、例えば、本発明に係る化合物の溶液と、薬学的に許容される酸の溶液とを混合することによって作成した酸付加塩がある。前記薬学的に許容される酸としては、例えば、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、又はリン酸がある。
【0109】
「接触」という用語は、ある実施形態では、本発明に係る抗エストロゲン化合物を、試験管、フラスコ、組織培養、チップ、アレイ、プレート、マイクロプレート、毛細管などの内部の、酵素を含んでいるサンプル内に導入し、抗エストロゲンを酵素に結合させるのに十分な温度又は時間で培養することを意味する。抗エストロゲン又は他の特異結合成分をサンプルに接触させる方法は、当業者には周知であり、実施する分析方法の種類に応じて選択できる。また培養方法は標準的なものであり、当業者には周知である。
【0110】
他の実施形態では、「接触」という用語は、本発明に係る抗エストロゲン化合物を、治療を受ける患者に投与し、インビボで、抗エストロゲン化合物をアンドロゲン受容体と接触させることを意味する。
【0111】
「治療」という用語は、疾患を軽減する治療は勿論のこと、予防も含んでいる。「減少」、「抑止」及び「抑制」という用語は、「低下」又は「減少」という意味である。「進行」という用語は、範囲や重傷度の進行、増大、又は悪化を意味する。「再発」という用語は、病状の回復後に、病状が再発することを意味する。
【0112】
「投与」という用語は、本発明に係る抗エストロゲン化合物を患者に接触させることを意味する。投与は、インビトロ(すなわち試験管内)又はインビボ(すなわち、生体(ヒトなど)の細胞又は組織内)で実施される。ある実施形態では、本発明は、本発明に係る化合物を患者に投与することを含んでいる。
【0113】
ある実施形態では、本発明に係る方法は、抗エストロゲン化合物を唯一の活性化成分として投与するステップを含む。また、ホルモン療法のために、前立腺癌を治療するために、前立腺癌の進行を遅延させるために、及び前立腺癌の再発を予防及び/又は治療するために、抗エストロゲン化合物を1つ又はそれ以上の治療物質と共に投与する方法も、本発明の範囲に包含される。前記治療物質としては、これらに限定されるものではないが、LHRH類似体、可逆的抗アンドロゲン(ビカルタミドやフルタミドなど)、さらなる抗エストロゲン、抗癌剤、5−αレダクターゼ阻害剤、アロマターゼ阻害剤、プロゲスチン、選択的アンドロゲン受容体調節剤(SARM)、又は他の核ホルモン受容体を介して作用する物質がある。
【0114】
したがって、ある実施形態では、本発明は、LHRH類似体と共に、抗エストロゲンを含んでいる組成物及び医薬組成物の使用を含む。他の実施形態では、本発明は、可逆的抗アンドロゲンと共に、抗エストロゲンを含んでいる組成物及び医薬組成物を提供する。他の実施形態では、本発明は、可逆的抗アンドロゲンと共に、抗エストロゲンを含んでいる組成物及び医薬組成物を提供する。他の実施形態では、本発明は、さらなる抗エストロゲンと共に、抗エストロゲンを含んでいる組成物及び医薬組成物を提供する。他の実施形態では、本発明は、抗癌剤と共に、抗エストロゲンを含んでいる組成物及び医薬組成物を提供する。他の実施形態では、本発明は、5−αレダクターゼ阻害剤と共に、抗エストロゲンを含んでいる組成物及び医薬組成物を提供する。他の実施形態では、本発明は、アロマターゼ阻害剤と共に、抗エストロゲンを含んでいる組成物及び医薬組成物を提供する。他の実施形態では、本発明は、プロゲスチン剤と共に、抗エストロゲンを含んでいる組成物及び医薬組成物を提供する。他の実施形態では、本発明は、SARMと共に、抗エストロゲンを含んでいる組成物及び医薬組成物を提供する。他の実施形態では、本発明は、他の核ホルモン受容体を介して作用する物質と共に、抗エストロゲンを含んでいる組成物及び医薬組成物を提供する。
【0115】
以下の実施例は、本発明の実施形態をより詳細に説明するためのものである。ただし、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0116】
実施例1:雄のラットの骨減少症(osteopenia)に対するトレミフェンの効果
【0117】
<序論及び研究の目的>
【0118】
本研究の目的は、1)二重エネルギーX線吸収測定法(dual energy X-ray absorptiometry:DXA)を用いた骨ミネラル濃度の分析と、灰ミネラル濃度の測定とによって、精巣摘除(orchidectomized:ORX)ラットに2種類の投与量のトレミフェン(Tor)を投与した場合の骨量減少防止に対する効果を測定すること、2)溶媒投与したORXラット及び擬似手術したラットと比較して、ORXラットに2種類の投与量のトレミフェンを投与した場合の骨の物理的強度に対する効果を測定すること、及び3)ORXラットに2種類の投与量のトレミフェンを投与した場合の骨代謝及び骨構造の組織形態計測指標に対する効果を評価することである。
【0119】
<実験デザイン>
【0120】
8ヶ月齢のSD(Sprague Dawley)ラットに、擬似手術(SHAM)又は精巣摘除(ORX)を施した。投与は、手術の直後に行った。各投与群を表1に示す。
表1:投与群
【表1】

【0121】
屠殺する12日及び2日前に、動物にカルセインを投与した(腹空内に)。大腿骨、腰椎(L5)は、生理食塩水を染み込ませたガーゼに包んで凍結保存した。脛骨及び腰椎(L4)は、10%ホルマリン内で48時間保存し、その後、長期保存のために70%エタノールに移した。
【0122】
分析技術:表2に示すように、各時点で採取した骨の各部位に対する様々な分析を行った。
表2:分析技術
【表2】

【0123】
生体外二重エネルギーX線吸収測定法(DXA):PIXImus機器及び関連する動物研究ソフトウェア(Lunar Corporation, Madison, WI)を用いて、腰椎(L5)の生体外DXA分析を行った。骨ミネラル量(bone mineral content:BMC)、骨面積(bone area:BA)及び骨ミネラル濃度(bone mineral density:BMD)を測定した。また、pDXA Sabre及び関連する動物研究ソフトウェア(Norland Medical Systems, Inc., Fort Atkinson, WI)を用いて、大腿骨の生体外DXA分析を行った。4つの関心領域(大腿骨全体、大腿骨の遠位部25%、大腿骨の近位部25%、大腿骨の骨幹中央部50%)についてのBMC、BA及びBMDを測定した。
【0124】
組織学的並びに静的及び動的な、骨の組織形態計測:脛骨の近位部を約1.1cm切り取り、前部表面を低速のダイアモンド砥石で切り取って髄腔を暴露させた。L4腰椎体(lumbar vertebral body)は、腰椎の突起を低速のダイアモンド砥石で切り取ることにより得られた。脛骨近位部及び腰椎体のそれぞれを、一連の上昇する濃度のエタノール(EtOH)で脱水した。脱水後、骨の試料をメチル−メタクリル酸−ジブチルフタル酸プラスチック合成物に浸潤させ、埋め込んだ。埋め込まれた脛骨近位部の試料を、炭化タングステン・ミクロトーム刃を備えたLeitz電動ロータリー・ミクロトームで断片化した。ブロックが切り取られ試料の部分が露出すると、4ミクロンの切片は明視野顕微鏡法のためにGoldnerトリクロム染色で染色し、8ミクロンの切片は落射蛍光顕微鏡法のために染色しなかった。また、埋め込まれた腰椎体の試料についても、炭化タングステン・ミクロトーム刃を備えたLeitz電動ロータリー・ミクロトームで断片化した。ブロックが切り取られ試料の部分が露出すると、4ミクロンの切片は明視野顕微鏡法のためにGoldnerトリクロム染色で染色し、8ミクロンの切片は落射蛍光顕微鏡法のために染色しなかった。
【0125】
脛骨近位部の二次海綿骨の海綿骨は、3×2フィールドの直線で囲まれた領域における成長板の最も低い点から1.0mm離れた関心領域(region of interest:ROI)について評価した。腰椎体の髄空の海綿骨は、終板並びに背部及び腹部の皮質から約0.5mm離れたROIについて評価した。
【0126】
Nikon Eclipse E400 光学顕微鏡/落射蛍光顕微鏡及びビデオ・サブシステムと適合するOsteoMeasureソフトウェアプログラム(OsteoMetrics, Inc., Atlanta, GA)を用いて、骨の組織形態計測を行った。全てのスライドを、無光状態で分析した。4μmのGoldnerトリクロム染色切片における、組織全体の面積、骨梁の面積、骨梁の周辺長さ、並びに破骨細胞の周辺長さ及びその数を測定した。その後、骨梁面積のパーセント、骨梁の数、骨梁の厚さ、骨梁の間隔、骨面積の割合としての破骨細胞の周辺長さ、及び骨表面の単位当たりの破骨細胞の数を、標準化された方法で計算した。動的パラメータを導き出すために、8μmの非染色切片における、一重標識カルセインの周辺長さ、二重標識カルセインの周辺長さ、及びインターラベル(interlabel)の幅(標識の厚さ)を測定した。石灰化面(mineralizing surface)、石灰化速度、並びに、表面、骨及び組織についての骨形成速度を計算した。
【0127】
灰密度並びに灰中のCa(カルシウム)及びPi含有量:大腿骨から肉を取り除いた後、大腿骨の容量をアルキメデスの原理を用いて計算した。空気中及び水中における大腿骨の湿重量をそれぞれ測定し、容量を計算した。乾燥オーブンで大腿骨を乾燥させた後に、乾燥重量を測定した。その後、大腿骨をマッフル炉に入れて600℃で少なくとも10時間灰化させて、灰化した大腿骨のミネラル含有量を測定した。そして、大腿骨のカルシウム及びリン含有量を、所定の化学機器を用いて測定した。
【0128】
骨の物理的性質の測定:腰椎体の圧縮試験、大腿骨の骨幹の三点曲げ試験、大腿骨遠位部の圧縮試験、及び大腿頸部の一軸圧縮試験を行うことにより、骨の強度を評価した。物理的試験を行う前に、全ての試料を冷たい生理食塩水中で解凍し、試料に付着している組織を丁寧に除去した。
【0129】
<結果>
【0130】
前立腺の重量:ORXにより前立腺の重量は77%減少した。しかし、E(エストラジオール)又はTor(トレミフェン)の投与は、ORXラットの前立腺重量に対しては効果がなかった(図1参照)。
【0131】
骨の生化学的標識:ORXラットのOCレベルは、10日目では、擬似手術群よりも若干高かった。E、5mgのTor及び10mgのTorを投与した場合のOCレベルは、擬似手術群よりも若干低くなった。Torのさらなる効果は、投与量及び時間に依存する(図2a及び2b)。したがって、28日目での、5mgのTorのOCに対する抑制効果はEと同一であり、さらに変化することはない。しかし、10mgのTorの前記抑制効果は、5mgのTor及びEの前記抑制効果よりも顕著であり、42日間持続した。
【0132】
全ての時点で、ORXラットのCTXレベルは、擬似手術ラットよりも若干高かった。10日目では、E及びTorのいずれを投与した場合もCTXに対する効果を示さなかった。しかしながら、E及び10mgのTorを継続的に投与すると、28日目にCTXレベルが低下した。なお、Torを投与した場合は、Eを投与した場合よりもやや効果的であった。CTXレベルが擬似手術又はEを投与した群よりも低くなると、Eを投与した場合はCTXレベルがさらに変化することはなかったが、10mgのTorは、42日目でのCTXレベルは、Eを投与した場合よりも著しく低かった。したがって、10mgのTorの吸収阻害作用は経時的に持続し、42日目ではEよりも著しく高かった。5mgのTorのCTXに対する効果は均一ではないので、解釈できない。
【0133】
脛骨近位部の静的及び動的形態計測:ORXは、破骨細胞の数、石灰化速度(mineral apposition rate:MAR)及び骨形成速度(bone formation rate;BFR/BS、BFR/BV、BFR/TV)の増加から明らかなように、骨の代謝状態を著しく上昇させ、その結果、脛骨近位部での骨梁の体積を減少させた。骨梁の体積の減少は、骨梁の厚さ及び数の減少が原因である(しかし、これらの変化はどれも、統計的に有意なレベルには達していない)。10mg/kg/dのTor及びEの投与は、骨梁の体積の損失を防止するのに非常に効果的であった。
【0134】
ORXにより生じる骨代謝パラメータの上昇は、Tor及びEの投与(p<0.05 vs.ORX+溶媒)によって著しく抑制された。5及び10mg/kg/dのTorは、0.2mg/kg/dのEの結果と同様に、ORXにより生じる骨代謝パラメータの上昇をかなり減少させた。Tor又はEのいずれについても、破骨細胞の数及び表面は擬似手術した場合と同じレベルに減少したが、骨形成速度パラメータは擬似手術した場合よりも低いレベルに減少した。骨形成速度の減少は、Tor又はEの投与後の、骨形成表面(石灰化面)及び骨形成活性(MAR)の減少に起因する。したがって、エストラジオール及びトレミフェンの投与は、骨微細構造の向上をもたらす。要約データを、表3a及び3bに示す。
【0135】
表3a:6週間目の、脛骨近位部の静的及び細胞パラメータ
【表3a】

【0136】
表3b:6週間目の、脛骨近位部の動的パラメータ
【表3b】

n.a.:該当なし、n.s.:非有意、**:P<0.05 vs. ORX+溶媒
【0137】
大腿骨の骨ミネラル濃度(Bone Mineral Density:BMD):投与した6週間後、摘出した大腿骨をDXAスキャンした。異なる4つの関心領域のスキャン結果を分析した(大腿骨全体、大腿骨の遠位部、大腿骨の骨幹中央部、大腿骨の近位部)。要約データを、表4a及び4b、並びに図3に示す。
【0138】
大腿骨全体では、ORXによる骨量の有意な変化は見られなかった。また、トレミフェン又はエストラルジオールの投与による有意な効果も見られなかった。大腿骨の遠位部は、骨梁が多い部位である。大腿骨の遠位部では、ORXによって、骨面積が増加し、骨密度が減少した。10mg/kg/dのトレミフェンを投与した場合は、Torが骨面積を減少させる作用により、ORXに関連する骨密度の損失は防止することができた。一方、Eを投与した場合は、骨ミネラル量が増加し、その結果、全体的な密度は著しく向上した(p<0.05 vs. ORX+溶媒)。
【0139】
大腿骨の骨幹中央部は、皮質骨が多い部位である。また、大腿骨の近位部は、大腿骨の遠位部と同様に、骨梁が多い部位である。大腿骨の近位部では、ORXにより骨ミネラル濃度が若干損失した。大腿骨の遠位部と同様に、5mg/kg/dのTorを投与した場合は、骨密度の損失防止に効果がなかったが、10mg/kg/dのTor及びEを投与した場合は、骨密度の損失防止に効果があった(どちらの場合でも、骨密度は、擬似手術した場合と同じレベルだった)。大腿骨の骨幹中央部では、ORXによる骨ミネラル濃度の変化は見られなかった。また、大腿骨の骨幹中央部では、Tor又はEの投与は何の効果も示さなかった。
【0140】
表4a:6週間目の、大腿骨全体及び大腿骨の遠位部のBMD
【表4a】

n.a.:該当なし、n.s.:非有意、**:P<0.05 vs. ORX+溶媒
【0141】
【表4b】

表4b:6週間目の、大腿骨の骨幹中央部及び大腿骨の近位部のBMD
n.a.:該当なし、n.s.:非有意、**:P<0.05 vs. ORX+溶媒
【0142】
<骨の物理的性質の測定>
【0143】
A)大腿骨遠位部の圧縮試験:大腿骨遠位部の切片の圧縮試験を行った。意外にも、6週間目では、ORX動物の骨強度は擬似手術動物より高かった。6週間目では、トレミフェンを投与した動物の骨強度は擬似手術動物と同じになり、エストラジオールを投与した動物が全ての試験群の中で最も高い数値を示した。12週間目では、ORX動物と擬似手術動物との間では、ほとんど差はなかった。5mg/kg/dのトレミフェンを投与した場合の骨強度は略同一に維持されたが、10mg/kg/dのトレミフェンを投与した場合の骨強度は若干低下した。6週間目のときと同様に、12週間目では、エストラジオールを投与した場合に、最も高い数値を示した。投与群の間に、統計的に有意な差は見られなかった。要約データを、表5a〜5bに示す。
【0144】
表5a:6週間目に採取した大腿骨の遠位部の圧縮試験
【表5a】

n.a.:該当なし、n.s.:非有意、**:P<0.05 vs. ORX+溶媒
【0145】
表5b:12週間目に採取した大腿骨の遠位部の圧縮試験
【表5b】

n.a.:該当なし、n.s.:非有意、**:P<0.05 vs. ORX+溶媒
【0146】
B)大腿骨の骨幹の三点曲げ試験
【0147】
投与群の間では、大腿骨の骨幹の骨強度に、認識できる差異はなかった。要約データを、表6に示す。
【0148】
表6:大腿骨の骨幹の三点曲げ試験
【表6】

n.a.:該当なし、n.s.:非有意、**:P<0.05 vs. ORX+溶媒
【0149】
C)椎体(vertebral body)の圧縮試験
【0150】
ORXは、擬似手術した動物と比べると、骨強度を低下させる。トレミフェンを投与した場合は、前記変化(骨強度の低下)を防止できなかった。実際、10mg/kg/dの投与量では、前記変化を悪化させる可能性がある。エストラジオールを投与した場合は、ORXに起因する骨強度の損失を防止できた。要約データを、表7に示す。
【0151】
表7:椎体の圧縮試験
【表7】

n.a.:該当なし、n.s.:非有意、**:P<0.05 vs. ORX+溶媒
【0152】
D)大腿骨の頸部の一軸圧縮試験
【0153】
投与群の間では、大腿骨の骨幹の骨強度に差異はなかった。要約データを、表8に示す。
【0154】
表8:大腿骨の頸部の一軸圧縮試験
【表8】

n.a.:該当なし、n.s.:非有意、**:P<0.05 vs. ORX+溶媒
【0155】
SERMであるトレミフェンの骨量減少防止の効果を、男性の骨粗鬆症のモデルである精巣摘除したラットで試験した。2種類の投与量(5及び10mg/kg/d)のトレミフェン、並びに比較物であるエストラジオール(0.2mg/kg/d)を、精巣摘除したラットに投与した。投与した6週間後又は12週間後に、様々な骨部位を検査した。骨量、強度、組織形態計測による微細構造、及び灰密度を、骨の変化を判断するのに使用した。
【0156】
精巣摘除により、脛骨近位部及び腰椎体の両方で、破骨細胞及び骨形成速度の増加から明らかなように、骨の代謝状態を著しく上昇した。その結果、大腿骨遠位部の骨量、脛骨近位部及び腰椎体の骨梁体積、並びに腰椎体の強度パラメータが減少した。しかし、これらの変化はどれも、統計的に有意なレベルに達しなかった。
【0157】
5又は10mg/kg/dのトレミフェンを投与した場合は、0.2mg/kg/dのエストラジオールを投与した場合の結果と同様に、精巣摘除により生じる骨代謝の上昇が減少した。トレミフェンを投与した場合は骨梁体積の損失を完全に防止できるが、トレミフェンを投与した場合の骨量及び骨強度に対する効果は一様ではなかった。5mg/kg/dのトレミフェンを投与した場合は、溶媒投与した動物と比べると、常に同様な又はより良い数値を示した。しかし、10mg/kg/dのトレミフェンを投与した場合は、骨量及び強度パラメータを減少させる場合があった。エストラジオールを投与した場合は、検査した各骨部位において、骨量、微細構造、及び強度パラメータが向上した。
【0158】
結論として、トレミフェンを投与した場合は、精巣摘除により生じる骨代謝の上昇を著しく減少させることができる。トレミフェンは、骨梁損失の防止に関しては良好に作用したが、皮質骨に対する効果は一様ではなかった。これらの研究結果は、トレミフェンが男性の骨粗鬆症を効果的に治療できることを実証する。
【0159】
実施例2:トレミフェンの体熱感に対する効果
【0160】
テストステロンは前立腺癌に悪影響を及ぼすため、進行疾患に対する標準的な治療は、外科的又は化学的去勢である。しかしその結果、テストステロンのレベルが低くなるので、骨粗鬆症に至る骨量の減少、体熱感及び女性化乳房などの重大な副作用をもたらす。体熱感は、主に、生活の質に悪影響を及ぼす。しかし、体熱感は、多くの場合は、男性患者における服薬遵守の欠如の一番の理由と見なされる。
【0161】
第II相臨床試験は、黄体形成ホルモン放出ホルモンアゴニスト(LHRHa)を摂取している、進行性前立腺癌の男性患者におけるトレミフェンの骨ミネラル濃度(BMD)に対する効果を評価することを目的としている。体熱感の頻度の評価は、副次的評価項目に含まれる。この研究には、LHRHaを少なくとも12ヶ月間摂取している患者が、合計46人参加した。この研究の治療期間は6ヶ月間であった。治療開始時及び治療6ヶ月目における、患者の体熱感の頻度の評価結果を表9に示す。
【0162】
表9:体熱感の頻度 患者の数(患者の%)
【表9】

【0163】
したがって、トレミフェンの投与量を増やすと、体熱感の頻度が増加することを体感する患者の割合が減少した。これらの実験結果は、トレミフェンなどのSERMが体熱感を効果的に治療できることを実証する。
【0164】
実施例3:トレミフェンはADTによって生じる骨粗鬆症を回復させる。
【0165】
<材料及び方法>
【0166】
本研究に承諾した46人の、ADTを少なくとも12ヶ月間受けている前立腺癌患者を、偽薬、20mg、40mg又は60mgのクエン酸トレミフェン(AcapodeneTM)が投与されるグループに無作為に分けて、1日1回の経口投与を6ヶ月間行った。評価項目としては、二重エネルギーX吸収測定法(dual energy X-ray absorptiometry:DEXA)によって測定される骨ミネラル濃度(BMD)、骨代謝指標、骨吸収指標などがある。BMDは、DXAによって評価される。また、骨代謝指標のレベルが評価される。
【0167】
前記文献の報告により、抗アンドロゲン・ビカルタミドに骨代謝を変化させる作用があることが分かっている。ビカルタミドの作用と混同する可能性を避けるために、ビカルタミド投与を受けている患者はこの分析から除外した。
【0168】
<結果>
【0169】
トレミフェンは、全ての投与量の場合に、良好な耐容性を示した。60mg/日のトレミフェンを投与した場合は、6ヶ月間の治療後には、偽薬投与群のBMD減少と比べると、BMDの統計的に有意な増加が生じた(p<0.05、図4)。一方、20mg/日又は40mg/日のトレミフェンを投与した場合は、BMDは若干増加した。また、骨代謝指標である骨アルカリ・ホスファターゼ(bone alkaline phosphatase:BAP)、カルシウム及び骨カルシウム(osteocalcium)も、40mg/日又は60mg/日のトレミフェンの投与によって著しく減少する。このことは、骨代謝が減少したことを示す(図5)。さらに、骨吸収指標である尿Cテロペプチド(Urinary C Telopeptide:U−CTX)及び尿Nテロペプチド(Urinary N Telopeptide:U−NTX)は、トレミフェンの投与によって著しく減少する。このことは、骨吸収が減少したことを示す。
【0170】
これらの実験結果は、ADTを受けている患者において、トレミフェンなどの抗エストロゲンが、BMDに対して効果的に作用し、骨代謝及び骨吸収を減少させることを実証した。また、これらの実験結果は、トレミフェンなどの抗エストロゲンが、ADTによって生じる、骨粗鬆症、BMDの減少、並びに骨代謝及び骨吸収の増加を、停止及び回復できるのを示した。
【0171】
実施例4:トレミフェンは、ADTを受けている患者のFSHレベルを減少させる。
【0172】
<材料及び方法>
【0173】
LH及びFSH分析:LM(Luteinizing hormone:黄体形成ホルモン)及びFSH(follicle stimulating hormone:卵胞刺激ホルモン)は、NHPP(National Hormone & Peptide Program; Dr. AF Parlow, UCLA, CA)から提供された血清中で、RIA(radioimmunoassay:放射免疫測定)キットを使用して測定した。
【0174】
実施例1の患者における、下垂体ホルモンLH及びFSHの血清中濃度を測定した。トレミフェンが投与された患者は、血清中FSHが投与量に依存して減少することからも明らかなように、視床下部−下垂体系のフィードバック阻害を示した(図7参照)。
【0175】
これらの実験結果は、さらに、トレミフェンなどの抗エストロゲンが、ADTを受けている患者における体熱感及び女性化乳房を防止することを証明する。トレミフェンのFSH濃度に対する効果は、毛髪の損失に対しても効果的に作用する可能性が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】ORXラットの前立腺重量に対するトレミフェンの効果を示す。
【図2a】ラット血清中のオステオカルシン(osteocalcin)に対するトレミフェンの効果を示す。
【図2b】ラット血清中のRatLaps(TM)に対するトレミフェンの効果を示す。
【図3】ORXラットのBMDに対するトレミフェンの効果を示す。
【図4】ADTを受けている患者における、BMDに対するトレミフェンの効果を示す。
【図5】ADTを受けている患者における、骨代謝指標に対するトレミフェンの効果を示す。「*」は、偽薬と比べてp<0.05であることを表わす。
【図6】ADTを受けている患者における、骨吸収指標に対するトレミフェンの効果を示す。*:p=0.01、**:p=0.05、***:p=0.38。BAP=骨アルカリ・ホスファターゼ、U−CTX=尿Cテロペプチド、U−NTX=尿Nテロペプチド。
【図7】ADTを受けている患者における、下垂体ホルモン濃度に対するトレミフェンの効果を示す。LH=黄体形成ホルモン、FSH=卵胞刺激ホルモン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の女性化乳房を、治療、抑制若しくは抑止する又はその発生を低減させるための組成物を製造するための、トレミフェン及び/又はその類似体、誘導体、異性体、代謝体、薬学的に許容される塩、医薬品、水和物、N酸化物或いはそれらの任意の組み合わせの使用。
【請求項2】
請求項1に記載の使用であって、
前記トレミフェンは、クエン酸トレミフェンであることを特徴とする使用。
【請求項3】
請求項1に記載の使用であって、
前記組成物は、薬学的に許容される担体を含むことを特徴とする使用。
【請求項4】
請求項1に記載の使用であって、
前記組成物は、
静脈内、動脈内若しくは筋肉内注射のために液状に、
皮下埋め込みのために小粒状に、
経口投与のために液状又は固形状に、又は
局所塗布のために作成されることを特徴とする使用。
【請求項5】
請求項4に記載の使用であって、
前記組成物は、小粒、錠剤、カプセル、溶液、懸濁液、乳液、エリキシル剤、ゲル、クリーム、坐薬、又は非経口製剤であることを特徴とする使用。
【請求項6】
請求項1に記載の使用であって、
前記患者は、人間であることを特徴とする使用。
【請求項7】
請求項6に記載の使用であって、
前記人間患者は男性であることを特徴とする使用。
【請求項8】
請求項7に記載の使用であって、
前記男性患者は、アンドロゲン枯渇療法(ADT)を受けていることを特徴とする使用。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−29823(P2009−29823A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240566(P2008−240566)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【分割の表示】特願2007−532470(P2007−532470)の分割
【原出願日】平成17年9月19日(2005.9.19)
【出願人】(504206621)ジーティーエックス・インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】