説明

アンモニアの分解方法

【課題】
アンモニアを水素源として利用するために、高温条件を必要とせず、小型、軽量で、空間速度が高く、効率の高いアンモニアの分解方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、図1に示すように、原料のアンモニア1を反応容器2に導入し、反応容器内に設置した触媒3の表面に、光源4から得た光5を、照射し、アンモニアを分解して、生成物である水素および窒素6を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒表面に光照射することによるアンモニア分解の方法に関する。より詳しくは、触媒表面にLEDやレーザーやランプを光源とする人工の光や太陽光などの自然光を照射することにより、アンモニアを水素に分解する方法に関する。

【背景技術】
【0002】
地球環境にやさしいエネルギーとして水素が期待され、その水素を利用した発電システムや、移動体の駆動システムの開発が進められているが、反面、水素は貯蔵・運搬が難しく、利用場所までの供給面での技術課題・安全性・経済性が大きく障害となっており、水素利用システムの経済的実用化を阻んでいる。
【0003】
一方、従来の化石燃料である石油や天然ガスなどの炭化水素は、水素を含む化合物であり、その貯蔵・運搬が容易であり、従来の設備インフラが利用できて経済的であるため、水素の利用場所までは、従来の化石燃料である石油や天然ガスなどの炭化水素を貯留・運搬し、それを利用の際に分解して、水素を生成する方法が検討されている。
【0004】
従来の化石燃料である石油や天然ガスなどの炭化水素を分解して水素を得たときに、生成する二酸化炭素は、地球温暖化効果ガスとして作用するので、炭化水素を利用する方法では、せっかくの水素利用のメリットを損なってしまっている。
【0005】
炭素を含まず水素を含む化合物で、産業規模で製造されている化合物であるアンモニアを分解して水素が生成できれば、温暖化効果ガスである二酸化炭素を排出せずに、水素を利用することが可能となる。
【0006】
アンモニアの分解は、熱分解、放射線分解、電気分解、光分解、及び触媒を用いた接触分解などがある。

【0007】
変換効率の観点から、熱分解や接触分解などが検討されているが、分解反応には高温雰囲気が必要であり、熱分解では、800℃程度、活性化の温度を低くできる触媒を利用した接触分解でも300℃から700℃程度の温度が必要であり、そのための装置が大型となり定置の装置となる(特許文献1、特許文献2)。
【0008】
また、高温雰囲気にするために必要な投入エネルギーも大きなものとなるので、飛行機や自動車などの移動体への積載は難しい。
【0009】
放射線分解には、放射能が必要であり、安全性や経済性などから実用的ではなく、電気分解では、エネルギーの利用効率もよくなく、高コストの方法であり、また、分解反応を駆動するための電源が必要であるので、飛行機や自動車などの移動体への積載は難しい。
【0010】
光分解は、目的に好適な波長を選択して利用できれば、目的の分子間結合を選択的に切ることが可能であるので、LEDなどの小電力の光源が利用できれば、反応収量を考慮しなければ、軽量化・小型化が容易となるので、飛行機や自動車などの移動体への積載は可能である。
【0011】
しかし、光反応では、光源から反応場に注入した光量子が対象の化合物に衝突する必要があるが、気相中あるいは水相中の対象物質に、光量子が衝突する確率は低く、例えば、500Wの光源を3時間照射しても約40マイクロリットル程度の水素しか得られないほど、反応速度が低いため(特許文献3)、ある一定以上の反応収量を得る為には、装置を大きくすることが求められ、軽量化・小型化のメリットを活かせない。


【特許文献1】特開2004−195454号公報
【特許文献2】特開平5−330802号公報
【特許文献3】特開2006−182615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
反応効率がよく反応速度が高い小型・軽量化に適した、水素を生成するためのアンモニア分解方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、光分解の手法に、触媒を用いた接触分解の方法を組み合わせる方法である。
【0014】
本発明は、接触分解に用いる触媒の担体機能を利用し、その触媒表面にアンモニアを捕捉して、高効率の光反応場を造りだす方法である。
【0015】
本発明は、図1に示すように、原料のアンモニア1を反応容器2に導入し、反応容器内に設置した触媒3の表面に、光源4から得た光5を、照射し、アンモニアを分解して、生成物である水素および窒素6を得る。
【0016】
本発明は、光源としては、LEDまたは半導体レーザーまたはレーザーまたは紫外線灯を用いることができ、用いる波長としては、400nm以下、望ましくは300nm以下、さらに、望ましく220nm以下である。
【0017】
本発明で用いる触媒は、タングステン、白金、金などの貴金属や、クロム、ニッケル、鉄などの遷移金属であり、それらの単体で用いても良く、それらの混合組成の触媒でもよい。
【0018】
本発明で用いる触媒は、常温で反応させてもよく、通電して触媒金属自体を発熱させてもよい。
【0019】
原料のアンモニアには、バランスとして窒素を含めてもよい。

【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、反応容器システム全体を高温にすることなく、反応システム全体がコンパクトな装置構成にて、アンモニアを分解できる。
【0021】
本発明によれば、反応容器内の触媒の表面での光分解反応であるので、空間速度を大きくとれ、反応システムが小型化、軽量化できる。
【0022】
本発明によれば、反応システムが小型化、軽量化できるので、自動車や飛行機などの移動体に積載して利用できる。
【0023】
本発明によれば、反応システムが小型化、軽量化できるので、定置利用として場所の制約がある場合でも、利用できる。
【0024】
本発明によれば、簡易な装置構成で、アンモニアの分解を行い、水素を得ることができるので、低コストの水素製造システムが構築され、水素利用システムの普及に貢献できる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の例示を以下に示すが、光源や触媒種類は、例示に示す方法に限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
石英ガラスの反応容器内に触媒として、直径0.18mmのニクロム線を敷設して、交流20Vを通電しながら、ニクロム線表面付近の温度を120℃とし、あらかじめ窒素を充填していた反応容器内にアンモニアを導入して、水銀紫外線灯を照射し、反応容器内の気体を採取した。
【0027】
ガスクロマトグラフーで分析した結果、採取した反応容器内の気体試料中に水素と窒素が検出された。

【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の方法により、簡易な装置構成により、小型で軽量なアンモニア分解のシステムが構築できる。
【0029】
本発明の方法により、アンモニアを水素源として利用でき、二酸化炭素の排出負荷のない燃料システムが構築できる。

【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明のアンモニア分解方法を示した説明図である。
【符号の説明】
【0031】
1 原料(アンモニア)
2 反応容器
3 触媒
4 光源
5 光
6 生成物(水素と窒素)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを含む気相または液相において、貴金属または遷移金属または貴金属および遷移金属を成分とする触媒の表面に光を照射することによりアンモニアを分解する方法

【請求項2】
請求項1のアンモニア分解方法であって、分解生成物が水素であることを特徴とする方法

【請求項3】
請求項1のアンモニア分解方法であって、用いる触媒の成分が、タングステン、白金、金、パラジウムなどの貴金属や、クロム、ニッケル、鉄などの遷移金属のいづれか1種類以上で構成されている触媒であることを特徴とする方法

【請求項4】
請求項1のアンモニア分解方法であって、光が、10.6ミクロンメータから0.15ミクロンメータの波長を特徴とする方法

【請求項5】
請求項1のアンモニア分解方法であって、光源としてLEDを用いることを特徴とする方法



【図1】
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【公開番号】特開2009−67649(P2009−67649A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240022(P2007−240022)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(591167430)株式会社KRI (211)
【Fターム(参考)】