説明

アンモニアの安全貯蔵及び安全運搬の方法及び装置、並びにアンモニア貯蔵材料の使用

アンモニア貯蔵及び運搬用の方法及び装置(100、100’)であって、異なるアンモニア蒸気圧を有し、アンモニアを可逆的に吸収または吸着することができる少なくとも2つのアンモニア貯蔵材料(1a、2a)が使用された方法及び装置が示されている。より高いアンモニア蒸気圧が圧力閾値より高い場合、アンモニアで一部分のみ飽和しているかまたは完全にアンモニアがない、より低い蒸気圧を有するアンモニア貯蔵材料(2a)は、より高いアンモニア蒸気圧を有するアンモニア貯蔵材料(1a)から放出されたアンモニアを吸収または吸着するために、より高いアンモニア蒸気圧を有するアンモニア貯蔵材料(1a)と、流体連結される。さらに、このような装置(100、100’)を備えた自動車のNO処理システム(200)が示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアの貯蔵に関し、特にアンモニアの安全な貯蔵及びアンモニアを可逆的に拘束及び放出することができる貯蔵材料からの放出のための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニア吸着及び吸収材料は、アンモニアの固体貯蔵媒体として使用されることができ、同様に、例えば自動車車両からのNO排出を減少させるための選択接触還元(SRC)における還元剤としても使用され得る(例:WO第99/01205号参照)。通常、アンモニアは、アンモニアを含む容器の外部(例:WO第99/01205号参照)または内部加熱(例:WO第2006/012903号)を利用した熱脱離によって、それらの材料から放出される。多くの応用において、液体アンモニア、アンモニア水溶液または尿素水溶液と比較すると、本アンモニア貯蔵及び運搬方法は、一定の利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第99/01205号
【特許文献2】国際公開第2006/012903号
【特許文献3】国際公開第2006/081824号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属アンミン塩はアンモニアを可逆的に吸収及び脱着することができる材料であり、アンモニアの固体貯蔵媒体として使用することができる。WO99/01205では、粒状Ca(NHClまたはSr(NHClが好ましいアンモニア貯蔵材料として使用されている。WO2006/081824には、アンモニア高貯蔵容量を有する金属アンミン塩形態が記載されている。
【0005】
通常、アンモニアは熱脱離によって固体貯蔵媒体から放出される。また、固体貯蔵媒体は環境条件によって高温にさらされ得る。特に、閉鎖系において高いアンモニア蒸気圧が生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1側面において、本発明は、第1アンモニア蒸気圧が圧力閾値以上である時、第1アンモニア蒸気圧を有し、アンモニアを可逆的に吸着または吸収及び脱着することができる第1アンモニア貯蔵材料が、アンモニアが一部分のみ飽和しているかまたは完全にない、前記第1アンモニア蒸気圧より低い第2アンモニア蒸気圧を有し、アンモニアを可逆的に吸着または吸収及び脱着することができる第2アンモニア貯蔵材料と流体連結されるようなアンモニアの貯蔵及び運搬方法に関する。
【0007】
本発明の別の側面によると、流体連結において連結可能であり、アンモニアを可逆的に吸着または吸収及び脱着することができる第1及び第2アンモニア貯蔵材料を含む第1及び第2貯蔵/運搬ユニットを備えたアンモニアの貯蔵及び運搬装置が提供され、第1貯蔵/運搬ユニットにおける第1アンモニア貯蔵材料は第2貯蔵/運搬ユニットにおける第2アンモニア貯蔵材料より高い蒸気圧を有する。
【0008】
第3側面は、このような装置を備えた自動車のNo処理システムである。
【0009】
その他の特徴は、開示した方法及び製品に固有のものであるか、または以下の実施形態及び添付図面の詳細な説明から当業者に明らかであるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
ここで、本発明の実施形態を一例として及び図面を参照して説明する。
【0011】
【図1】図1は、より高いアンモニア蒸気圧を有するアンモニア貯蔵材料を含む第1貯蔵/運搬ユニット(主貯蔵タンク)と、主貯蔵タンクより小さく、より低いアンモニア蒸気圧を有し、流体連結において、アンモニアが一部分のみ飽和したまたは完全にない、アンモニア貯蔵材料を含む、第2貯蔵/運搬ユニット(貯蔵チャンバ)と、を備えたアンモニア貯蔵及び運搬装置の実施形態を示す。
【図2】図2は、図1と類似し、エンジンとアンモニアによるNOの選択接触還元用触媒との間の排出ラインへと通じるアンモニア供給ラインにおける注入バルブと、主タンクと、の間にバッファ容積をさらに備えたアンモニア貯蔵及び運搬装置の別の実施形態を示す。
【図3】図3は、図2と類似し、アンモニアを非常に強力に吸着または吸収する材料を含む吸収ユニットをさらに備えたアンモニア貯蔵及び運搬装置の別の実施形態を示す。
【図4】図4は、第2アンモニア貯蔵材料を含まない従来技術によるアンモニア貯蔵/運搬システムの温度(細い線)及び圧力(太い線)発生を示す。前記アンモニア貯蔵材料は、当初25℃の温度であり、その後40、60、80、100℃の温度にさらされる。
【図5】図5は、より高いアンモニア蒸気圧を有する第1アンモニア貯蔵材料と、アンモニアが完全にないまたはアンモニアで一部分のみ飽和されたMgClであり、より低いアンモニア蒸気圧を有する第2アンモニア貯蔵材料と、を組み合わせて使用した図1または2(細い線)によるアンモニア貯蔵/運搬システムの圧力発生を示す。システムは当初25℃の温度であり、その後60℃の温度にさらされる。従来技術によるシステムを比較のために示す(太い線)。
【図6】図6は、80℃の温度にさらされたときの図5のシステムの圧力発生を示す。
【図7】図7は、55℃、及び25℃の外気温において2.5barの圧力から冷却したときの、第2貯蔵材料を含まない従来技術のシステム(細い点線)、図1または2のシステム(細い実線)の温度発生、及び第2貯蔵材料を含まない従来技術のシステム(太い点線)、図1または2のシステム(細い実線)の圧力発生を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態は、吸着または吸収及び脱着によりアンモニアを可逆的に拘束及び放出可能であり、装置100、100’、100”またはシステムにおいて異なるアンモニアの圧力を有しアンモニア蒸気圧を積極的に低下させることができる少なくとも2つの貯蔵材料1a、2aを使用する方法及び装置100、100’、100”と、または、圧力が閾値レベルを超えて上昇する場合に、2つの材料1a、2aを流体連結させることによりそこでの圧力が閾値レベルを超える場合に、システムからアンモニアを吸収するためにより低いアンモニア蒸気圧を有する材料2aを使用するシステムと関連する。
【0013】
2つの材料1a、2aは、流体連結される前に、例えばゲートまたはゲートバルブによって分離された1つの容器(図示せず)に収容してよく、また、流体連結において連結することができる別々の容器1、2に収容してもよい(図1、2、3)。
【0014】
アンモニアの気圧の圧力閾値は、システムの構成、配置、動作要件により変化する。自動車等の移動ユニットにおけるアンモニア貯蔵及び運搬システム/装置100、100’、100”における、システムを第2アンモニア貯蔵材料と流体連結するための圧力閾値は、堅固な壁がシステムを画定することができる固定ユニットと異なるのが望ましい。発電所における望ましい圧力閾値は、比較的軽く薄い壁の移動ユニットより相当高くなり得る。
【0015】
第1アンモニア貯蔵材料1aは、第2アンモニア貯蔵材料2aより高いアンモニア蒸気圧を有する。両貯蔵材料は、アンモニアを可逆的に吸着または吸収及び脱着する。さらに、所定の圧力閾値に達した後に第1貯蔵材料1aから放出されたアンモニアを吸着または吸収するために使用される時、第2アンモニア貯蔵材料2aは、アンモニアで一部分のみ飽和しているかまたは完全にアンモニアがない。
【0016】
アンモニア貯蔵材料1a、2aは、アンモニアを可逆的に吸着または吸収する。アンモニア吸着材料の非限定的な例には、酸処理した活性炭素材料及びゼオライトがある。アンモニア吸収材料の非限定的な例には、金属アンミン錯体がある。
【0017】
本発明の具体例の有用性を示す非限定的な例は以下の通りである。例えばアンモニア貯蔵材料で充填された容器を装備した自動車が暖かい環境下にある時(例えば夏に太陽の下に駐車した場合)、受動圧力が増加する。アンモニアが比較的蒸発しやすいような特定のアンモニア貯蔵材料を備えた従来のアンモニア貯蔵及び運搬システムが例えば60℃に加熱された場合、アンモニア圧力は3bar以上に達し得る。この圧力でシステムにリークがあれば、アンモニアは大気に放出されるだろう。また、アンモニア貯蔵及び運搬システムが作動中であった場合、例えば2〜2.5bar(絶対値)の適切な供給圧力を形成するために、通常容器が積極的に加熱されていた。自動車が駐車される場合、貯蔵材料の温度は初期には作動温度のままであり、加熱が終了した時でも限られた量のアンモニアしか放出することができない。従って、従来のシステムにおいては、システムが室温(約25℃)に冷却されるまで、上昇したアンモニア圧力が存続する。外気温が室温より高ければ(例えば40℃)、圧力は上昇し続けるだろう。システムにリークがあれば、自動車が車庫に駐車してある場合アンモニアが大気中に放出され、特に望ましくない。従って、自動車内の本発明の実施形態によるアンモニア貯蔵及び運搬システムにおいて、システムが故障したときにアンモニアが大気中にリークする可能性を避けるために、所定の圧力閾値を約外気圧または約1barに設定するのが望ましいかもしれない。
【0018】
また、例えば熱制御に欠陥がある場合、作動中の自動車のアンモニア貯蔵及び運搬システムにおける圧力は動作中に不要に高くなり得る。この場合、すなわち自動車が作動している間(すなわちNO還元触媒のアンモニアが最も多く必要となる可能性がある間)、リークの可能性またはシステムの損傷を避けるために、所定の圧力閾値を予測される最も高いアンモニア作動圧力(例えば約5bar)よりいくらか高く設定するのが望ましいかもしれない。
【0019】
実施形態によっては、第1及び第2アンモニア貯蔵材料1a、2aは、例えば圧力閾値を超えた時に2つの材料を流体連結させるために開放されるある種のバルブ12を備え得るパイプ20によって連結されるユニット、または容器1、2に収容される。
【0020】
第1容器1(主貯蔵タンク)は通常、断熱層4bによって覆われ、より高いアンモニア気圧を有する貯蔵材料1aからアンモニアを揮発させるための加熱手段3aを備える。第2容器2(貯蔵チャンバ)は通常、主貯蔵タンク(1)より小さく、任意で加熱手段3bを備えてよい。任意で弱断熱層であり得る断熱層4bで一部分または全体を覆ってよい。
【0021】
実施形態によっては、例えば適切なバルブ12によって流体連結を中断及び再開することができる。流体連結は、例えばアンモニア蒸気圧が十分低下した時に中断され得、アンモニア蒸気圧が再び閾値に達した時に再開され得る。
【0022】
実施形態によっては、第1及び第2アンモニア貯蔵材料1a、2aは同じ温度である。これは、例えば自動車がしばらく駐車され、第1及び第2アンモニア貯蔵材料が同じ温度にさらされる場合であり得る。
【0023】
他の実施形態において、第1アンモニア貯蔵材料1aは、前記第2アンモニア貯蔵材料2aより高温である。これは、例えば第1アンモニア材料がアンモニアを放出するために加熱された場合またはシステムの作動が停止した直後の場合であり得る。
【0024】
実施形態によっては、作動中のアンモニア消費ユニットを備えるシステムにおけるアンモニア源として、第1アンモニア材料1aが使用されている。このようなアンモニア消費ユニット200または消費装置は、例えば軽油、ガソリン、天然ガス、石炭、水素、もしくは、その他の化石燃料または合成燃料を燃料とした様々な燃焼機関7、またはその他の燃焼工程に見られる、例えば酸素含有排ガスにおける選択接触還元用触媒8であり得るが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態において、NOの還元は、燃焼機関7で駆動する自動車、トラック、電車、船、もしくはその他の電動機械、乗り物、または電力発生装置においてなされる。
【0025】
他の実施形態において、アンモニア消費ユニットはアンモニアを窒素及び水素に分離または分解するための触媒装置であり得る。生成される水素は、例えば電気を発生させる電力ユニットまたは燃料等として使用され得る。アンモニア消費ユニットはさらに、直接アンモニアで作動する燃料電池であり得る。
【0026】
放出されるアンモニアを消費ユニット200で消費する場合、アンモニアを放出するためにアンモニア源すなわち第1アンモニア貯蔵材料1aが加熱され得る。
【0027】
実施形態によっては、アンモニア消費ユニット200が停止され、システムの圧力が圧力閾値を超える場合、第1アンモニア貯蔵材料1aを第2アンモニア貯蔵材料2aと流体連結する。消費ユニット200の運転が停止された時、アンモニア放出のために加熱されていた場合、たとえ加熱が既に停止されていたとしても、第1アンモニア貯蔵材料1aは依然として暖かい可能性がある。この場合、第1アンモニア貯蔵材料1aはアンモニアを放出し続け、それ以上消費しないため、結果として圧力が上昇するか、または、少なくとも長時間上昇した圧力が維持され、圧力閾値に達し得る。アンモニアで一部分のみ飽和しているかまたは完全にアンモニアがない第2アンモニア貯蔵材料2aは、第1アンモニア貯蔵材料1aと流体連結され、アンモニアの平衡圧に達するまでアンモニアを吸着または吸収する。結果としてシステム100、100’の圧力は下降する。
【0028】
実施形態によっては、第2アンモニア貯蔵材料2aの25℃におけるアンモニア分圧は、約0.1bar以下である。いくつかの実施形態において、第1アンモニア貯蔵材料1aのアンモニア分圧は、25℃で約0.1から1.0barである。本発明のいくつかの実施形態において、第1アンモニア貯蔵材料1aの分圧は、アンモニア飽和状態において例えば25℃で約0.1から1.0barであり、所定の温度で飽和状態の例えば25℃で0.1bar以下の圧力を有し得る第2アンモニア貯蔵材料2aより高い。他の実施形態において、第1及び第2アンモニア貯蔵材料1a、2aは、同じアンモニア飽和状態にある時、同一材料である。その後、第1アンモニア貯蔵材料が、第2アンモニア貯蔵材料より高程度の飽和状態を有することによって、それらのアンモニア蒸気圧間に差が生じる。
【0029】
実施形態によっては、第1及び第2アンモニア貯蔵材料1a、2aのうち少なくとも一方は、可逆的にアンモニアを吸収及び脱着する。いくつかの実施形態において、アンモニア吸収及び脱着材料1a、2aは金属アンミン錯体である。
【0030】
いくつかの実施形態において、前記金属アンミン錯体は、一般式M(NH(MはLi、Na、KまたはCs等のアルカリ金属、Mg、Ca、またはSr等のアルカリ土類金属、及び/またはV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、またはZn等の遷移金属、もしくはNaAl、KAI、KZn、CsCu、またはKFe等それらの組み合わせから選択された1つ以上のカチオンであり、Xは、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、チオシアン酸塩、硫酸塩、モリブデン酸塩、及びリン酸イオンから選択された1つ以上のアニオンであり、aは、塩分子あたりのカチオン数であり、zは、塩分子あたりのアニオン数であり、nは2から12までの配位数である)で表される金属アンミン錯体から選択される。
【0031】
いくつかの実施形態において、第1アンモニア吸収及び脱着材料1aは、Sr(NHClまたはCa(NHClもしくはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、第2アンモニア吸収及び脱着材料2aは、Mg(NHCl、Fe(NHClまたはNi(NHClもしくはそれらの組み合わせである。
【0032】
アンモニア飽和したMg(NHCl、Sr(NHCl2、及びCa(NHClの蒸気圧を以下の表に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
Mg(NHClのアンモニア蒸気圧は、60℃の場合だけでなく室温でも、Sr(NHCl及びCa(NHClのどちらよりもずっと低い。
【0035】
Mg(NHCl及び同様の低蒸気圧の材料をアンモニア消費ユニットのアンモニア源として使用すると、例えば強烈な太陽光にさらされた時に高蒸気圧を発生させないため非常に安全であるが、1barを超えるアンモニア脱着圧力に達するためには100℃を超える温度まで加熱しなければならない。これは容器の材料に制限を課す上に、高作動温度は、例えばアンモニアをNO還元のために排出ラインに運搬する車に搭載された装置を作動するために、さらに多くの電力を消費する。このようなアンモニア貯蔵材料を備えるユニットは、電気加熱で作動するため、例えば熱効率20〜40%を有するエンジンで駆動する発電機によって約100Wの電力が供給される時、余分な燃料消費を伴う。結果として、エンジンの排出に連結されたアンモニア生成ユニットの電力消費の減少は、車、トラック、または別の種類の応用での全般的燃料消費に重大な影響を与えるだろう。
【0036】
アンモニア消費ユニット用のアンモニア源として使用する場合、Sr(NHClまたはCa(NHCl等の、より揮発性の高い貯蔵材料、すなわちより高いアンモニア蒸気圧を有する貯蔵材料での消費電力はより低くなるが、その使用は、例えば室温から100℃までの範囲の温度において増加する不要な受動圧力を考慮すると、それほど安全ではないだろう。本実施形態は、比較的高いアンモニア蒸気圧を有する材料を使用する場合に、安全性を大幅に高める。
【0037】
従って、アンモニア消費ユニットの通常の作動の間、より高い蒸気圧を有する上記金属アンミン錯体がアンモニア源として使用されるであろう。例えば自動車が駐車された時、もしくは車の安全システムが例えば衝突のような事故または火災を検知した時等の場合に起こり得る、アンモニア源材料を含む容器の熱制御の故障、またはアンモニア消費ユニット停止後の所望の圧力より高い圧力等の安全リスクがあると直ぐに、低アンモニア蒸気圧を有するすなわちアンモニアとより強く結合しているMg(NHCl等の少量のアンモニア貯蔵材料は、部分的にまたは完全にアンモニアがない状態(MgCl等)において、より高いアンモニア蒸気圧を有する金属アンミン錯体、すなわちアンモニア源材料と流体連結される。超過したアンモニアの少なくとも一部は、MgClまたは同様の材料によって吸収され、その結果システム中の圧力が低下する。従って、図7に示すように、アンモニア消費ユニットの作動停止後に、急速な作動圧力の低下が達成され、例えば車が太陽の下に駐車された時等、アンモニア消費ユニットが暖かい環境にさらされた時に受動加熱によって増加する超過圧力を、図5及び6に示すように避けることができる。本発明の実施形態によって高度の安全性が達成されることが明らかである。
【0038】
金属塩によるアンモニアの吸収は発熱反応、すなわち吸収熱の発生と関連する。従って、いくつかの実施形態において、第2アンモニア貯蔵材料2a、例えばMg(NHClまたはそのアンモニアがない形態MgClもしくは酸処理した活性炭素等の強力な吸着材料は、金属または金属合金等の熱をよく周囲に分散させることができる材料と近接または接触している。この方法では、2つの貯蔵ユニットが流体連結されている時、システムの圧力は周囲の温度及び第2貯蔵材料の低いアンモニア圧力によって制御される。
【0039】
いくつかの実施形態において、例えば、その吸収容量がシステム中の圧力を著しく減少させる程度にアンモニアを吸収するのに十分でない域を超えてその飽和度が閾値より高い場合、第2貯蔵/運搬ユニット(貯蔵チャンバ2)を加熱することによって第2アンモニア貯蔵材料2aを加熱するための加熱手段3bが備えられている。いくつかの実施形態において、アンモニア消費ユニット200の作動中にこれを達成することができるため、第2貯蔵材料2aから放出されるアンモニアを、例えばNO還元用触媒8等の消費ユニット200に通じるライン9に供給することができる。従って、第2アンモニア貯蔵材料2aをほぼ不飽和状態に維持し続け、必要時にアンモニアを吸収する状態にすることが可能である。
【0040】
いくつかの実施形態において(図示せず)、必要に応じて、より高いアンモニア圧力を有するアンモニア貯蔵及び運搬材料1aを含む1つを超える主貯蔵タンク1と、より低いアンモニア圧力を有するアンモニア貯蔵及び運搬材料2aを含む一般的により小さい1つを超える貯蔵チャンバ2と、2つを超える異なるアンモニア貯蔵材料とが、アンモニア貯蔵及び運搬用装置100、100’中に備えられ得る。
【0041】
例えば、第1貯蔵チャンバ2中の材料は、アンモニアを可逆的に吸着または吸収及び脱着する材料であり得、第2貯蔵チャンバ(吸収ユニット13)中の材料13aは、多量の硫酸で処理された活性炭素等の不可逆的に及び非常に強力にアンモニアを吸着または吸収するアンモニア貯蔵材料であり得る。第2貯蔵チャンバ(吸収ユニット13)は、任意で断熱層/シェル4cで断熱され得るが、システム100、100’、100”におけるアンモニア圧力が何かの理由で安全限界の上限を超える場合における緊急ユニットである場合には当てはまらない。さらに、衝突事故または火災等の異常事象を検知すると、第1貯蔵チャンバ2を追加で作動させ、吸収ユニット13を急速に作動することができるため、事故の場合にもアンモニアの放出を最小限に抑えることができる。これは、これら実施形態のさらなる安全特性である。
【0042】
あらゆる上記貯蔵ユニット(1つ以上の主貯蔵タンク1、貯蔵チャンバ2、吸収ユニット13)は、予定されるアンモニア貯蔵材料の交換を容易にするために、装置またはシステム100、100’に着脱可能に取り付けられ得る。
【0043】
いくつかの実施形態において、緩衝容器5を備える場合があり、前記緩衝容器5は流体連結において少なくとも1つの第1貯蔵/運搬ユニット(主貯蔵タンク1)及び第2貯蔵ユニット(貯蔵チャンバ2)に連結される。前記緩衝容器5は、消費ユニット(消費装置)200に運搬されるアンモニア圧力をよりよく調節するよう作用し得る。緩衝容器5の上流及び下流には、緩衝容器5に流入する及び排出されるアンモニアを制御するために、そこへ及びそこからのラインに備えられた制御バルブ(1つ(6)のみ図示)が備えられ得る。
【0044】
図1は、第1貯蔵/運搬ユニットとして作用する主貯蔵タンク1と、第2貯蔵/運搬ユニットとして作用する貯蔵チャンバ2とを備えたアンモニア貯蔵及び運搬用装置100を示す。主貯蔵タンク1は、室温で0.1から1barの範囲の(吸収されたアンモニア)蒸気圧を有する第1アンモニア貯蔵材料1aを含む。貯蔵チャンバ2は、主貯蔵タンク1における(0.1barまでの範囲のより低い蒸気圧で)第1貯蔵材料1aよりも強力にアンモニアと結合する第2アンモニア貯蔵材料2aを含む。
【0045】
主貯蔵タンク1は、断熱層/シェル4aで囲まれ、貯蔵チャンバ2は、断熱層/シェル4bで囲まれている。これらの断熱材/シェル4a、4bは、ミネラルウール、ロックウール、PUR、PIR等の適切な断熱材料、またはそれぞれの用途に特定の環境条件(温度、湿度、化学物質への暴露)に適切なその他の断熱材/シェル材料から成り得る。このような断熱層/シェルは、熱伝導率をさらに減少させるために、真空にした多孔性材料で充填してよい。断熱層/シェル4a、4bは、断熱カバー(図示せず)で保護してよく、適切なシェル材料で形成してもよい。
【0046】
主貯蔵タンク1及び貯蔵タンク2は、加熱手段3aと3bとを備える。これらの加熱手段3a、3bは、それぞれ第1及び第2貯蔵材料1a、2a内に埋め込まれた内部加熱手段として形成され得る(図参照)。これらは、主貯蔵タンク1及び貯蔵チャンバ2のシェルの外側であるが断熱層4a及び4bの内側に配置されることもできる。適切な加熱手段3a、3bは、電気抵抗加熱手段または流体加熱手段(熱湯、蒸気、油、排ガス等)であり得、直接電気入力(電力供給)を制御するかまたは間接的に加熱流体ライン(流体供給及び/または温度)の制御バルブ(図示せず)のいずれかによる制御ユニットによって加熱出力を制御する。
【0047】
アンモニアは、管20を通じてアンモニア消費装置(図示せず)に供給される。供給は、注入バルブ6によって制御され、装置100における供給圧力は、圧力センサー10と、ヒーター3aを制御する制御ユニット11とによって検知されることができる。注入バルブ6は、電気的、空気圧、水圧操作可能及び制御可能なあらゆる適切な型であり得る。
【0048】
所定のアンモニアが必要な工程の間に、注入バルブ6を閉鎖することによってアンモニア供給が停止された場合、貯蔵チャンバ2へのバルブ12が開放され、貯蔵チャンバ2における第2貯蔵材料2aが、揮発性の違いのために、それぞれ主タンク1及び第1貯蔵材料1aからのアンモニアを吸収する。この工程により主貯蔵タンク1内の圧力が1bar程度またはそれ以下に維持される。バルブ12はさらに制御ユニット11によって制御される。
【0049】
バルブ6の閉鎖及びバルブ12の開放は、乗り物の安全監視システムへのリンクによっても実施され得る。例えば車が衝突した場合、加速検知器によって制御されエアバッグが即座に開放される。例えば火災の検知等の安全監視システムからのその他のあらゆる緊急信号と同様に、このこともバルブ6の閉鎖及びバルブ12の開放への引き金となり得る。
【0050】
暖かい環境を考慮した別のシステム用途も可能である。主ユニットの通常の安全貯蔵温度は、例えば室温である。システムが例えば60℃に配置された場合、主貯蔵タンク1及び貯蔵チャンバ2両方のゆっくりとした受動加熱が起こるだろう。さらに主貯蔵タンク1の温度上昇により、第1貯蔵材料1a内のアンモニア圧力の上昇が引き起こされる。この圧力上昇は、例えば1barを超える等、圧力が高すぎる場合、圧力センサー10によって検知され、貯蔵チャンバ2へのバルブ12が開放され、アンモニアは主貯蔵タンク1から貯蔵チャンバ2へと移動する。貯蔵チャンバ2におけるアンモニアの吸収は、温度上昇を引き起こし、生成した熱は断熱材/シェル及び貯蔵チャンバ2の表面を通じて外気へ拡散される。
【0051】
この工程は、主貯蔵タンク1への熱移動が貯蔵チャンバ2から外への熱移動の最大値以下である限り継続されることができる。言い換えると、結果としてアンモニア脱着となる主貯蔵タンク1における熱(エネルギー)の取り込みは、貯蔵チャンバ2の断熱材/シェル4bを通じた放熱によって、貯蔵チャンバ2の断熱材/シェル4bを通じて放出されることができなければならない。
【0052】
主貯蔵タンク1は外表面積Aを備え、断熱材4aを含む外部シェルは熱移動係数αによって特定され、貯蔵チャンバ2は外表面積Aを備え、さらに熱移動数αによって特定される。上記工程を可能にするために、以下の関係が当てはまるべきである。
【0053】
(1) α>α
【0054】
第2貯蔵材料2aが完全に飽和されない限りこの工程は継続されることができ、以下の例によってさらに説明される。
【0055】
貯蔵チャンバ2における第2貯蔵材料2aが飽和された場合、貯蔵チャンバ2の加熱手段3bが利用される。加熱することによって、貯蔵チャンバ2におけるアンモニアは、アンモニア吸収工程のバルブ12及びバルブ6を通じて放出されることができる。貯蔵チャンバ2は、より大きなユニット1を補完するための通常のアンモニア放出の間または高速始動の間に使用されることができる。
【0056】
従って、吸収されたアンモニアのある部分は、連結されたアンモニア消費工程へと時々放出されるため、貯蔵チャンバ2において常に高いアンモニア吸収容量を有するであろうことを保証することができる。
【0057】
貯蔵チャンバ2からアンモニアが放出される間、主貯蔵タンク1において逆流を避けるために、チェックバルブ(図示せず)がライン20内においてバルブ12と主貯蔵タンク1との間に備えられ得る。第2貯蔵材料2aにおけるアンモニア圧力が第1貯蔵材料1aにおけるアンモニア圧力より高く上昇した場合にのみこのようなチェックバルブが必要である。
【0058】
図2は、図1による装置がアンモニア消費システム200、特に燃焼エンジン7の排出ライン9と、連結された配置を示す。システムはさらに、主貯蔵タンク1と注入バルブ6との間に緩衝容器5を備える。前記緩衝容器5は、高いが短いピークフローを注入する能力を向上させ、さらにシステムの制御能も向上させ得る。放出されたアンモニアは、排出ライン9から、アンモニアを還元剤としてNOの選択接触還元が行われる触媒8へと導かれる。図2によるシステムは、自動車のNO後処理のための搭載アンモニア貯蔵及び運搬用の発明の実施を示す。
【0059】
図3は、図2による装置がさらに断熱層/シェル4cを有する吸収ユニット13を備えた配置を示す。前記吸収ユニット13は、主貯蔵タンク1から制御バルブ14を介して緩衝容器5へとつながる管20と連結されている。
【0060】
本発明の装置の2つの主な特徴は、以下に関する。
a)通常の駆動または同様のアンモニア注入作動の間にシステムが適用された後、作動圧力の急速な減少が可能な装置100、100’、100”またはシステム。
b)暖かい環境における受動加熱によって引き起こされる主貯蔵タンク内の圧力増加に伴う問題を回避するシステムまたは装置。
【0061】
両方の場合、重要な特徴は、搭載アンモニア還元システムを備えた車において、駐車している間にアンモニア圧力が上昇するまたは上昇したことを回避することである。
【0062】
図4は、第2アンモニア貯蔵材料を含まない断熱された(およそ7cmのロックウールに相当する)従来技術によるアンモニア貯蔵ユニットにおいて、ユニット中の唯一のアンモニア貯蔵材料(Ca(NHCl)5kgが初期温度25℃で、その後40、60、80、100℃(Text)の外部温度にさらされた場合の温度発生(細い曲線)及び圧力発生(太い曲線)を示す。特に60、80、100℃の場合、貯蔵ユニットは著しい温度上昇(細い曲線)を示し、5時間後には温度は45から80℃の間となっている。関連する圧力は太い曲線で示されている。40℃にさらされたユニットのみが、5時間の過程で1barを超える圧力を蓄積しない。80℃にさらされた貯蔵ユニットは、5時間後にほぼ4.5barの圧力に達し、100℃にさらされたユニットは、8barを超える室温の流体アンモニアと同程度に高い圧力に達する。断熱材が無い場合、圧力及び温度上昇はさらに激的となるだろう。
【0063】
図5は、60℃(外部温度Text)にさらされた場合の図1及び2によるアンモニア貯蔵装置100、100’において、断熱された(およそ7cmのロックウールに相当する)5kgのCa(NHClを含む第1貯蔵/運搬ユニット(主貯蔵タンク1)が、500gのMgClを有するより小さい第2貯蔵/運送ユニット(貯蔵チャンバ2;非断熱)と流体連結される場合の圧力発生(細い曲線)を示す。図5における太い曲線は、第2アンモニア貯蔵材料を含まない同じ従来技術に対応する図4の60℃での圧力曲線と同一である。この場合、圧力は5時間後に2bar超に達する。図1及び2によるシステムでは(細い曲線)、MgClによる連続的なアンモニア吸収によってアンモニア圧力は低減する。後者の温度は吸収熱によってゆっくりと上昇する。最終的に、システム圧力が大気圧の1/10の0.1barに達する安定状態に到達する。
【0064】
図6は、装置100、100’が80℃の外部気温にさらされている点以外は図5と同様である。図1及び図2による装置100、100’を備えたシステム中の圧力(細い曲線)は、0.26bar以下にとどまるのに対して、第2アンモニア貯蔵材料を含まない従来技術によるユニット(太い曲線)は、5時間後にほぼ4.5barの圧力に達する。
【0065】
図7は、初期温度55℃及び初期アンモニア圧力2.5bar(アンモニアをNO還元触媒8のわずかに上流の自動車の排出ライン9へと導入するのに適し得る圧力)を有する従来技術(点線曲線;アンモニア貯蔵材料:Ca(NHCl)ならびに図1及び図2(実線曲線;第1アンモニア貯蔵材料1a:Ca(NHCl;第2アンモニア貯蔵材料2a:MgCl)のユニットを、1時間作動させた後の温度発生(太い実線及び点線曲線)及び圧力発生(細い実線及び点線曲線)を示す。その後作動を停止させ、システムを自然環境に放置する。従来技術のユニットでは、温度(太い点線曲線)及び圧力(細い点線曲線)は非常にゆっくりと下降した。システムが1bar以下の圧力に達するまでに、3.5時間以上を要した。図1および図2のシステムでは、圧力(細い実線曲線)は第1貯蔵/運搬ユニット(主貯蔵タンク1)及びそれによる全体システム(太い実践曲線)の急速な温度降下のために、わずか30分と少し以内で1bar以下まで減少した。後者は、発熱アンモニア吸収によって駆動される5kgのCa(NHClを含む断熱主タンクから、わずかにまたは全く断熱されず、吸収熱を消散させることができるより小さい第2貯蔵/運搬ユニット(貯蔵チャンバ2)に含まれる500gのMgClへの、吸熱アンモニア脱着の結果である。図7のデータは、25℃の環境温度に対応する。温度が40℃であったなら、第2アンモニア貯蔵材料を含まない従来技術のシステム中の圧力は、5時間後には少なくとも1.5barとなっただろう。図1及び図2のシステムでは、依然として圧力は一時間以内に1bar以下に減少したであろう。
【0066】
本実施形態では、主タンク1と貯蔵チャンバ2とが流体連結された時、アンモニア貯蔵及び運搬システム内部の圧力は、より高いアンモニア圧力を有する材料1aを含む第1貯蔵/運搬ユニット(主貯蔵タンク1)のアンモニア圧力と、より低いアンモニア圧力を有する材料2aを含み、通常はより小さい貯蔵/運搬ユニット(貯蔵チャンバ2)との間のレベルに維持されるであろう。これは、アンモニア源として比較的高いアンモニア圧力を有するアンモニア吸収または吸着及び脱着固体材料を使用するアンモニア貯蔵及び運搬システムの安全性に大きく貢献する。
【0067】
本方法及びシステムは、NOの選択接触還元用の触媒を備えたあらゆる可動性または携帯用システム、燃料電池、アンモニアを窒素及び水素に分けるための触媒を備えたシステム、もしくは揮発性アンモニアの吸収または吸着及び脱着材料の安全な使用を要するその他のアンモニア消費工程との組み合わせにおいて使用され得る。
【0068】
(実施例)
第1貯蔵/運搬ユニットまたは主貯蔵タンク1は、10kgのSr(NHClを含む。より小さい第2貯蔵/運搬ユニットまたは貯蔵チャンバ2は、500gのMgClを含む。
【0069】
最近のエンジンを搭載した通常の乗用車では、1キロメートルの走行あたり約0.2から0.4gのNOを還元しなければならない。質量0.3gのNOは、NO還元のために、0.3g/km×17/30=0.17g NH/kg消費するのに相当すると想定される。これらの仕様を考えると、上記で定義されたシステムは以下を与える。
・主貯蔵タンクに基づく走行範囲は、[10,000g Sr(NHCl]×[0.462g NH/g Sr(NHCl]/[0.17g NH/km]=27,200kmである。
【0070】
より小さい貯蔵チャンバ2は、0.517×500g/(1−0.517)=535g NH(完全に飽和したMg(NHClにおけるアンモニアの質量分率は0.157である)吸収することができる。およそ1.2g/cmの密度を考慮すると、10kgの主ユニットの体積はおよそ8リットルである。8リットルタンクの主貯蔵タンク1は、およそ0.3mの外部領域Aを備える。断熱タンクの熱伝導率αは、0.2W/mであると想定され、容器と周囲との温度差が摂氏85−25=摂氏60度(またはK)である場合、主貯蔵タンクの温度上昇は、以下の通りとなる。
heat=0.3m×0.2W/K/m×(60K)=12W
ここで、Pheatは、ユニット時間(J/s=W)あたりの8リットルユニットへの熱(エネルギー)移動率である。
【0071】
すべての熱移動がアンモニア脱着をもたらすと想定すると、相当するアンモニア脱着率は、12Wをアンモニア脱着モルエンタルピー(Sr(NHClのエンタルピーはおよそ42kJ/molNH)で割ることによって得られる。これにより、略2.9×10−4mol/secまたは4.9×10−3gNH/secのアンモニア放出率が得られる。
【0072】
MgClユニット2は535gのNHを吸収することができるため、ここで例示されたシステムは、圧力が著しく上昇することなく、連続的に85℃の環境に30.3時間駐車されることができる。
【0073】
ここで示した場合は、アンモニア放出のためにエネルギーを供給するためだけでなく、8リットルユニットの平均温度を上昇させるための両方に必要な熱移動として考慮することができる。平均温度が例えば25℃から45℃へと上昇する場合、アンモニア放出は12Wのより多くの部分を使用するであろうにもかかわらず、12Wの加熱が8リットルユニットの平均温度の上昇しかもたらさない遅延期がある。
【0074】
さらに、タンクの外部表面温度が上昇し、周囲と貯蔵タンク表面との間の勾配が減少するため、12Wの熱移動率は、時間が経つにつれて減少するかもしれない。
【0075】
本出願に引用された全ての特許、特許出願、及び刊行物は、参照により全体がここに含まれる。
【符号の説明】
【0076】
1 第1容器(主貯蔵タンク)
1a 第1アンモニア貯蔵材料
2 第2容器(貯蔵チャンバ)
2a 第2アンモニア貯蔵材料
3a、3b 加熱手段
4a、4b、4c 断熱層/シェル
5 緩衝容器
6、12、14 制御バルブ
7 燃焼機関
8 選択接触還元用触媒
9 排出ライン
10 圧力センサー
11 制御ユニット
13 吸収ユニット
13a 材料
20 管
100、100’、100” アンモニア貯蔵及び運搬システム/装置
200、200’ アンモニア消費システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アンモニア蒸気圧が圧力閾値以上である時、第1アンモニア蒸気圧を有し、アンモニアを可逆的に吸着または吸収及び脱着することができる第1アンモニア貯蔵材料が、アンモニアで一部分のみ飽和しているかまたは完全にない、前記第1アンモニア蒸気圧より低い第2アンモニア蒸気圧を有し、アンモニアを可逆的に吸着または吸収及び脱着することができる第2アンモニア貯蔵材料と流体連結されることを特徴とするアンモニアの貯蔵及び運搬方法。
【請求項2】
前記第1アンモニア貯蔵材料と前記第2アンモニア貯蔵材料とが、流体連結の状態で異なる容器に収容されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流体連結が、中断及び再開可能であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記前記第1アンモニア貯蔵材料と前記第2アンモニア貯蔵材料とが同じ温度であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1アンモニア貯蔵材料が、前記第2アンモニア貯蔵材料より高温であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1アンモニア貯蔵材料が、作動中のアンモニア消費ユニットを備えたシステムにおいて、アンモニア源として使用されることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アンモニア消費ユニットが、酸素含有排ガスにおけるNOの選択接触還元(SCR)用の触媒であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記酸素含有排ガスにおけるNOのSCRが、自動車、トラック、電車、船、またはその他の電動機械、乗り物もしくはエンジン駆動発電機においてもたらされることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アンモニア消費ユニットが、アンモニアを窒素及び水素に分ける触媒装置または燃料電池であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記システム中のアンモニア圧力を減少させるために、前記アンモニア消費ユニットの作動が停止された時に、圧力閾値以上で、前記第1アンモニア貯蔵材料が、前記第2アンモニア貯蔵材料と流体連結されることを特徴とする請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記圧力閾値がほぼ周囲圧力であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記消費ユニットが作動する間、圧力閾値以上で、前記第1アンモニア貯蔵材料が、前記第2アンモニア貯蔵材料と流体連結されることを特徴とする請求項7、8、10及び11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記圧力閾値が、約5bar以上であることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第2安全システムからの信号が火災または衝突のような状況等の異常を伝えると直ぐに、前記圧力閾値が超過されると想定されることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2アンモニア圧力を有する前記第2アンモニア貯蔵材料のアンモニア分圧が、25℃で約0.1bar以下であることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1アンモニア圧力を有する前記第1アンモニア貯蔵材料のアンモニア分圧が、25℃で約0.1〜約1barの範囲であることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
所定の温度でアンモニア飽和状態における前記第2アンモニア貯蔵材料より、アンモニア飽和状態における前記第1アンモニア貯蔵材料が、高いアンモニア分圧を有することを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
同一のアンモニア飽和状態にある時に、前記第1アンモニア貯蔵材料と前記第2アンモニア貯蔵材料とが同一の材料であり、前記第1アンモニア貯蔵材料が、前記第2アンモニア貯蔵材料より高程度のアンモニア飽和度を有することを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第1アンモニア貯蔵材料及び前記第2アンモニア貯蔵材料の内の少なくとも一方が、アンモニア吸収及び脱着材料であることを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記アンモニア吸収及び脱着材料の内の少なくとも一方が、金属アンミン錯体であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記金属アンミン錯体が、一般式M(NH(Mは、Li、Na、KまたはCs等のアルカリ金属、Mg、CaまたはSr等のアルカリ土類金属、及び/またはV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、またはZn等の遷移金属、もしくはNaAl、KAl、KZn、CsCu、またはKFe等それらの組み合わせから選択された1つ以上のカチオンであり、Xは、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、チオシアン酸塩、硫酸塩、モリブデン酸塩、及びリン酸イオンから選択された1つ以上のアニオンであり、aは塩分子あたりのカチオン数であり、zは塩分子あたりのアニオン数であり、nは2から12の配位数である)で表される金属アンミン錯体から選択されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記第1アンモニア吸収及び脱着材料が、Sr(NHClまたはCa(NHClもしくはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記第2アンモニア吸収及び脱着材料が、Mg(NHCl、Fe(NHCl、またはNi(NHClもしくはそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記第2アンモニア貯蔵材料が、アンモニア吸着または吸収時に、前記第2材料によって生成される吸収熱を分散させることができる材料に近接していることを特徴とする請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記第2材料のアンモニア飽和度が、圧力閾値で前記第2材料が前記第1アンモニア貯蔵材料から放出されるアンモニアを効果的に吸収する上限値より高い場合に、前記第2アンモニア貯蔵材料が、アンモニアを脱着するために加熱され得ることを特徴とする請求項1から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記第2材料のアンモニア飽和度が、圧力閾値で前記第2材料が前記第1アンモニア貯蔵材料から放出されるアンモニアを吸収する上限値以下に継続的に維持される程度まで、前記アンモニア消費ユニットが作動する間に、前記第2アンモニア貯蔵材料が、前記第1アンモニア貯蔵材料から放出されたアンモニアを補完するために使用されることを特徴とする請求項6から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
流体連結の状態に連結可能であり、アンモニアを可逆的に吸着または吸収及び脱着することができる第1及び第2アンモニア貯蔵材料(2a、2b)を含む第1及び第2貯蔵/運搬ユニット(1、2)を備えたアンモニア貯蔵及び運搬用装置(100、100’)であって、
前記第1貯蔵/運搬ユニット(1)における前記第1アンモニア貯蔵材料(1a)が、前記第2貯蔵/運搬ユニット(2)における前記第2アンモニア貯蔵材料(2a)より高い蒸気圧を有することを特徴とする装置(100、100’)。
【請求項28】
前記第1貯蔵/運搬ユニット(1)が加熱手段(3a)を備えることを特徴とする請求項27に記載の装置(100、100’)。
【請求項29】
前記第2貯蔵/運搬ユニット(2)が加熱手段(4b)を備えることを特徴とする請求項27または28に記載の装置(100、100’)。
【請求項30】
前記第1貯蔵/運搬ユニット(1)が表面積A及び熱伝導率αを有する第1シェル(4a)を備え、前記第2貯蔵/運搬ユニット(2)が表面積A及び第2熱伝導率αを有する第2シェルを備え、α>αの関係が当てはまることを特徴とする請求項27から29のいずれか一項に記載の装置(100、100’)。
【請求項31】
前記第1及び第2貯蔵/運搬ユニット(1、2)の内の少なくとも一方と流体連結の状態に連結可能な緩衝容器(5)をさらに備えることを特徴とする請求項27から30のいずれか一項に記載の装置(100、100’)。
【請求項32】
前記第1及び第2貯蔵/運搬ユニット(1、2)の内の少なくとも一方と流体連結の状態に連結可能な吸収ユニット(13)をさらに備え、前記吸収ユニット(13)がアンモニアを可逆的に吸収または吸着及び脱着する貯蔵材料もしくはアンモニアを不可逆的に吸収または吸着する貯蔵材料のいずれかを含むことを特徴とする請求項27から31のいずれか一項に記載の装置(100、100’)。
【請求項33】
少なくとも前記第1貯蔵/運搬ユニット(1)をアンモニア消費装置(8)と連結するための制御バルブの配置(6)を備えることを特徴とする請求項27から32のいずれか一項に記載の装置(100、100’、100”)。
【請求項34】
前記アンモニア消費装置(8)が、酸素含有排ガスにおけるNOのSCR用触媒、アンモニアを窒素及び酸素に分けるための触媒装置、並びに燃料電池から選択されることを特徴とする請求項33に記載の装置(100’、100”)。
【請求項35】
前記酸素含有排ガスにおけるNOのSCRが、自動車、トラック、電車、船またはその他の電動機械、乗り物もしくはエンジン駆動発電機においてもたらされることを特徴とする請求項34に記載の装置(100’、100”)。
【請求項36】
請求項27から33のいずれか一項に記載の装置(100、100’、100”)を備える自動車のNO処理システム(200)。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2010−513812(P2010−513812A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541917(P2009−541917)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/EP2007/011379
【国際公開番号】WO2008/077626
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(506320842)
【Fターム(参考)】