説明

アンモ酸化用触媒の調製方法

【課題】 アルカンの気相接触アンモ酸化によるニトリルの製造において用いられる、ニトリル収率の優れたニオブ含有触媒、特に、シリカ担持ニオブ含有触媒の調製方法を提供することである。
【解決手段】 シュウ酸とニオブ化合物を含む水溶液または水性懸濁液を冷却後、濾別して得られるニオブ含有液を、シュウ酸/ニオブのモル比が2〜4となるように調整し、ニオブの原料液として用いた触媒の調製方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルカンの気相接触アンモ酸化反応に用いるニオブを含む触媒の調製方法およびこの触媒の存在下に不飽和ニトリルを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、不飽和ニトリルを製造するに当たって、アルケンに替わって、アルカンをアンモニアおよび酸素と気相接触させるアンモ酸化反応によって、対応する不飽和ニトリルを製造する方法が着目されている。
【0003】この反応に用いるニオブを含む触媒が種々提案されており、例えば、Mo−V−Nb−Te含有酸化物触媒が特開平2−257公報、特開平5−148212公報、特開平5−208136公報、特開平6−285372公報、特開平7−144132号公報、特開平7−289907号公報、特開平8−57319公報および特開平8−141401号公報などに開示されている。これらの公報では、酸化物触媒の調製におけるニオブの原料として、シュウ酸ニオブアンモニウム塩、ニオブ酸、NbCl3 、NbCl5 、Nb2 (C2 4 5 、Nb2 5、Nb(OC2 5 5 などが用いられている。
【0004】Mo−V−Nb−Sb含有酸化物触媒は特開昭63−295545公報、特開平2−95439公報、特開平5−213848公報および特開平9−157241号公報などに開示されている。これらの公報では、シュウ酸ニオブアンモニウム塩やNb2 5 が用いられている。これらのニオブ化合物を水溶液または水性懸濁液の形で用いて調製した触媒は、ニトリル収率が不十分なだけでなく、再現性も良くない。特に、流動床反応に用いるために耐磨耗性を付与すべくシリカに担持したニオブ含有触媒は、シリカ含量の増加とともに収率が低下するという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ニトリル収率の優れたニオブ含有触媒、特に、シリカ担持ニオブ含有触媒の調製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】本発明者らはこの課題を解決するため、アルカンのアンモ酸化反応に用いるニオブを含む触媒の調製方法について鋭意検討した結果、シュウ酸とニオブ化合物を含む水溶液または水性懸濁液を冷却後、濾別して得られるニオブ含有液を原料液として用いて調製した触媒が、優れたニトリル収率を与えることを見出し、本発明をなすに至った。
【0006】即ち、本発明は(1)アルカンのアンモ酸化反応に用いるニオブを含む触媒の調製方法であって、シュウ酸とニオブ化合物を含む水溶液または水性懸濁液を冷却後、濾別して得られるニオブ含有液を、シュウ酸/ニオブのモル比が2〜4となるように調整し、ニオブ原料液として用いることを特徴とするニオブ含有触媒の調製方法。
(2)該ニオブ化合物がニオブ酸およびシュウ酸水素ニオブから選ばれる少なくとも1種類以上である(1)に記載の触媒の調製方法。
(3)該触媒が次の一般組成式で示されることを特徴とする(1)または(2)のいずれかに記載の触媒の調製方法。
【0007】
Mo1 a Nbb c d n (1)
(式中、成分XはTeおよびSbから選ばれる少なくとも1種以上の元素、成分ZはW、Cr、Ta、Ti、Zr、Hf、Mn、Re、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Ag、Zn、B、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、P、Bi、Y、希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも一種以上の元素であり、a、b、c、d、nはMo1原子当たりの原子比を表し、0.1≦a≦1、0.01≦b≦1、0.01≦c≦1、0≦d≦0.1、そしてnは構成金属の酸化状態によって決まる数である。)
(4)該触媒がシリカに担持されていることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の触媒の調製方法。
【0008】(5)シリカの含有量が該触媒成分とシリカから成るシリカ担持触媒の全重量比20〜60重量%であることを特徴とする(4)に記載の触媒の調製方法。
(6)該シリカ担体の原料がアンモニウムイオンで安定化したゾルであることを特徴とする(4)または(5)のいずれかに記載の触媒の調製方法。
(7)該触媒の成分を含有する原料調合液を噴霧乾燥または蒸発乾固して得られる乾燥物を、実質的に酸素を含まないガス雰囲気下、500〜700℃の温度で焼成することを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の触媒の調製方法。
【0009】(8)該焼成に先立って、大気雰囲気下、200〜400℃で前焼成することを特徴とする(7)に記載の触媒の調製方法。
(9)アルカンを気相接触アンモ酸化反応させて不飽和ニトリルを製造するに当たり、シュウ酸とニオブ化合物を含む水溶液または水性懸濁液を冷却後、濾別して得られるニオブ含有液を、シュウ酸/ニオブのモル比が2〜4となるように調整し、ニオブ原料液として用いて調製したニオブ含有触媒を用いることを特徴とする不飽和ニトリルの製造方法。
(10)該ニオブ化合物がニオブ酸およびシュウ酸水素ニオブから選ばれる少なくとも1種類以上である(9)に記載の不飽和ニトリルの製造方法。
(11)該触媒が次の一般組成式で示されることを特徴とする(9)または(10)のいずれかに記載の不飽和ニトリルの製造方法。
【0010】
Mo1 a Nbb c d n (1)
(式中、成分XはTeおよびSbから選ばれる少なくとも1種以上の元素、成分ZはW、Cr、Ta、Ti、Zr、Hf、Mn、Re、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Ag、Zn、B、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、P、Bi、Y、希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも一種以上の元素であり、a、b、c、d、nはMo1原子当たりの原子比を表し、0.1≦a≦1、0.01≦b≦1、0.01≦c≦1、0≦d≦0.1、そしてnは構成金属の酸化状態によって決まる数である。)
(12)該触媒がシリカに担持されていることを特徴とする(9)〜(11)のいずれかに記載の不飽和ニトリルの製造方法。
(13)シリカの含有量が該触媒成分とシリカから成るシリカ担持触媒の全重量比20〜60重量%であることを特徴とする(12)に記載の不飽和ニトリルの製造方法。
【0011】(14)該シリカ担体の原料がアンモニウムイオンで安定化したゾルであることを特徴とする(12)または(13)のいずれかに記載の不飽和ニトリルの製造方法。
(15)該触媒の成分を含有する原料調合液を噴霧乾燥または蒸発乾固して得られる乾燥物を、実質的に酸素を含まないガス雰囲気下、500〜700℃の温度で焼成して得られる触媒を用いることを特徴とする(9)〜(14)のいずれかに記載の不飽和ニトリルの製造方法。
(16)該焼成に先立って、大気雰囲気下、200〜400℃で前焼成して得られる触媒を用いることを特徴とする(15)に記載の不飽和ニトリルの製造方法。
(17)アルカンがプロパンまたはイソブタンである(9)〜(16)のいずれかに記載の不飽和ニトリルの製造方法に関するものである。以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】本発明の方法に用いるニオブ化合物は、ニオブ酸およびシュウ酸水素ニオブを好適に用いることができる。なお、ニオブ酸は水酸化ニオブおよび酸化ニオブを含む。これらのニオブ化合物は、固体または懸濁液の形で用いることができる。ニオブ酸は使用前にアンモニア水および/または水による洗浄をすることができる。これらのニオブ化合物は長期保存や脱水の進行によって変質を受ける場合がある。本発明においては調製直後の新鮮なこれら化合物を用いることが好ましいが、多少変質した化合物をも用いることができる。
【0013】本発明の方法に用いるシュウ酸はシュウ酸無水物またはシュウ酸二水和物を好適に用いることができる。また、ニオブ化合物としてシュウ酸水素ニオブを用いる場合は、シュウ酸を加えなくてもよい。水にこれらニオブ化合物とシュウ酸を加え、撹拌することによって水溶液または水性懸濁液を得ることができる。懸濁する場合は、少量のアンモニア水を添加するか、または加熱することによってニオブ化合物の溶解を促進することができる。この水溶液または水性懸濁液のニオブ濃度は0.2〜0.8(mol−Nb/Kg−液)程度であることが好ましい。
【0014】仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は3〜6程度が好ましい。シュウ酸/ニオブのモル比が大きい場合は、ニオブ化合物の溶解性が増し、冷却後ニオブ成分の析出は少なくニオブの回収率が高まるが、シュウ酸の析出量が増し、シュウ酸の回収率が低くなる。逆にシュウ酸/ニオブのモル比が小さい場合は、溶解しないニオブ化合物が増え、ニオブの回収率が低くなることがある。次いでこの水溶液または水性懸濁液を冷却し、濾別することによって、ニオブ含有液を得ることができる。冷却は簡便には氷冷によって、濾別は簡便にはデカンテーションまたは濾過によって実施できる。
【0015】このニオブ含有液はシュウ酸/ニオブのモル比を2〜4、好ましくは2〜3.5に調整されなければならない。この調整はニオブ酸およびシュウ酸水素ニオブから選ばれるニオブ化合物、または、シュウ酸をニオブ含有液に添加して行うことができる。一般には、仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比、ニオブ濃度および冷却温度を適宜制御することによって、直接、シュウ酸/ニオブのモル比が2〜4のニオブ含有液を得ることができる。
【0016】本発明で用いられる好ましい触媒は、下記の一般組成式(1)で示される。
Mo1 a Nbb c d n (1)
(式中、成分XはTeおよびSbから選ばれる少なくとも1種以上の元素、成分ZはW、Cr、Ta、Ti、Zr、Hf、Mn、Re、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Ag、Zn、B、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、P、Bi、Y、希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも一種以上の元素であり、a、b、c、d、nはMo1原子当たりの原子比を表し、0.1≦a≦1、0.01≦b≦1、0.01≦c≦1、0≦d≦0.1、そしてnは構成金属の酸化状態によって決まる数である。)
式(1)中の成分XはTeが好ましい。成分Zは希土類元素およびYから選ばれる少なくとも1種以上の元素が好ましく、特にYbが好ましい。また、Mo1原子当たりの原子比a、b、cおよびdはそれぞれ、0.2〜0.5、0.01〜0.5、0.1〜0.5、0.005〜0.05が好ましい。本発明で用いられる触媒は担体に担持されていても、されていなくても良いが、担持触媒であることが好ましい。
【0017】好ましく用いられる担体はシリカであり、担体シリカの含有量は、触媒成分とシリカから成るシリカ担持触媒の全重量比20〜60重量%、好ましくは20〜40重量%である。本発明の触媒を調製するための成分金属の原料は特に限定されないが、下記の化合物を好適に用いることができる。
【0018】MoとVの原料は、それぞれ、ヘプタモリブデン酸アンモニウムとメタバナジン酸アンモニウムを好適に用いることができる。TeとSbの原料は、それぞれ、テルル酸とアンチモン酸化物を好適に用いることができる。成分Zの原料は、それぞれの金属の有機酸塩、硝酸塩、塩化物、水酸化物または酸化物などを用いることができる。シリカの原料は、シリカゾルを好適に用いることができる。アルカリ金属イオンで安定化したシリカゾルよりもアンモニウムイオンで安定化したゾルを用いることが好ましい。
【0019】本発明の触媒調製は、例えば、下記の原料調合、乾燥および焼成の3つの工程を経て行うことができる。
(原料調合工程)ヘプタモリブデン酸アンモニウム、メタバナジン酸アンモニウムおよびテルル酸の混合水溶液を調製する。アンチモンを用いる場合は、メタバナジン酸アンモニウム水溶液と酸化アンチモンからなるスラリーをリフラックス条件下に加熱した後、ヘプタモリブデン酸アンモニウムを添加し、場合に応じてテルル酸を添加して混合水溶液を調製する。この混合水溶液に、攪拌下、本発明で得られるニオブ原料液と、式(1)の成分Zを含む水溶液、例えば、酢酸イッテルビウム水溶液を順次添加して原料調合液を得ることができる。シリカ担持触媒を調製する場合は、攪拌下、この調合液にシリカゾルを添加して、原料調合液を得ることができる。
【0020】(乾燥工程)原料調合工程で得られた調合液を噴霧乾燥法または蒸発乾固法によって乾燥させ、乾燥粉体を得ることができる。噴霧乾燥法における噴霧化は遠心方式、二流体ノズル方式または高圧ノズル方式によって行うことができる。乾燥熱源は、スチーム、電気ヒーターなどによって加熱された空気を用いることができる。熱風の乾燥機入口温度は150〜300℃が好ましい。
(焼成工程)乾燥工程で得られた乾燥粉体を焼成することによって酸化物触媒を得ることができる。焼成は窒素などの実質的に酸素を含まないガス雰囲気下、500〜700℃、好ましくは550〜650℃で実施することができる。焼成時間は0.5〜20時間、好ましくは1〜8時間である。焼成は回転炉、トンネル炉、管状炉および流動焼成炉などを用いることができ、酸素を実質的に含まないガスを流通させながら行うことができる。この焼成の前に大気雰囲気下または大気流通下、200〜400℃、1〜5時間、前焼成することができる。
【0021】このようにして調製された触媒の存在下、アルカンをアンモニアおよび酸素と気相接触反応させて、対応する不飽和ニトリルを製造することができる。アルカンとアンモニアの供給原料は必ずしも高純度である必要はなく、工業グレードのガスを使用できる。アルカンはプロパンまたはイソブタンであることが好ましい。
【0022】供給酸素源としては、空気、純酸素または純酸素で富化した空気を用いることができる。さらに、希釈ガスとしてヘリウム、ネオン、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気、窒素などを供給してもよい。反応に供給するアンモニアのアルカンに対するモル比は0.3〜1.5、好ましくは0.8〜1.2である。反応圧力は0.1〜10atm、好ましくは1〜3atmである。反応温度は350℃〜500℃、好ましくは380℃〜470℃である。
【0023】接触時間は0.1〜30(sec・g/cc)、好ましくは0.5〜10(sec・g/cc)である。反応方式は、固定床、流動床、移動床などを採用できるが、反応熱の除熱が容易で触媒層の温度がほぼ均一に保持できること、触媒を反応器から運転中に抜き出したり添加することができるなどの理由から、流動床反応が好ましい。
【発明の実施の形態】以下に本発明を、ニオブ原料液の調製実施例、触媒の調製実施例およびプロパンの気相接触アンモ酸化反応によるアクリロニトリルの製造実施例を用いて説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、これら実施例に限定されるものではない。
【0024】このアンモ酸化反応の結果を次式で定義されるプロパン転化率、アクリロニトリル選択率およびアクリロニトリル収率によって評価した。
プロパン転化率(%)=(反応したプロパンのモル数)/(供給したプロパンのモル数)×100アクリロニトリル選択率(%)=(生成したアクリロニトリルのモル数)/(反応したプロパンのモル数)×100アクリロニトリル収率(%)=(生成したアクリロニトリルのモル数)/(供給したプロパンのモル数)×100
【0025】
【実施例】(実施例1)
(ニオブ原料液の調製)水6562gにNb2 5 として80.0重量%を含有するニオブ酸664.0gとシュウ酸二水和物〔H2 2 4 ・2H2 O〕2774.0gを混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は5.5、仕込みのニオブ濃度は0.4(mol−Nb/Kg−液)である。この混合液を95℃で1時間加熱撹拌することによって、ニオブが溶解した水溶液を得た。この水溶液を静置、氷冷後、固体を吸引濾過によって濾別し、均一なニオブ含有液を得た。このニオブ含有液のシュウ酸/ニオブのモル比は下記の分析により2.6であった。
【0026】るつぼにこのニオブ含有液10gを精秤し、95℃で一夜乾燥後、600℃で1時間熱処理し、Nb2 5 0.625gを得た。この結果から、ニオブ濃度は0.47(mol−Nb/Kg−液)であった。300mlのガラスビーカーにこのニオブ含有液3gを精秤し、約80℃の熱水200mlを加え、続いて1:1硫酸10mlを加えた。得られた溶液をホットスターラー上で液温70℃に保ちながら、攪拌下、1/4規定KMnO4 を用いて滴定した。KMnO4 によるかすかな淡桃色が約30秒以上続く点を終点とした。シュウ酸の濃度は、滴定量から次式に従って計算した結果、1.22(mol−シュウ酸/Kg−液)であった。
2KMnO4 +3H2 SO4 +5H2 2 4 →K2 SO4 +2MnSO4 +10CO2 +8H2 O得られたニオブ含有液は、シュウ酸/ニオブのモル比を調整することなく、下記の触媒調製のニオブ原料液として用いた。
(触媒の調製)触媒成分の組成式がMo1 0.32Nb0.12Te0.22n であって、SiO2 含有量30重量%のシリカ担持触媒を次のようにして調製した。
【0027】水2300gにヘプタモリブデン酸アンモニウム〔(NH4 6 Mo7 24・4H2 O〕546.7g、メタバナジン酸アンモニウム〔NH4 VO3 〕116.3gおよびテルル酸〔H6 TeO6 〕156.9gを順次加え、60℃に加熱して溶解した後、30℃まで冷却して混合水溶液を得た。次いでこの混合水溶液に、上記のニオブ原料液785.0gおよびシリカとして30重量%を含有するシリカゾル1000gを順次添加して混合し、触媒原料調合液を得た。この原料調合液を遠心式噴霧乾燥機にて入口温度が240℃、出口温度が145℃で乾燥し、微小球状の乾燥粉体を得た。得られた乾燥粉体を大気雰囲気下275℃で2時間焼成した。この粉体85gを直径1インチのSUS製管に充填し、150Ncc/minの窒素ガス流通下、600℃で2時間焼成してシリカ担持触媒を得た。
(プロパンのアンモ酸化反応)内径25mmのバイコールガラス流動床型反応管に調製して得られた触媒を45g充填し、反応温度430℃、反応圧力常圧下にプロパン:アンモニア:酸素:ヘリウム=1:1.2:3:12のモル比の混合ガスを接触時間3.0(sec・g/cc)で通過させた。得られた結果を表1に示す。
【0028】なお、接触時間は次式で定義される。
接触時間(sec・g/cc)=(W/F)×273/(273+T)
(ここで、Wは充填触媒量(g)、Fは原料混合ガス流量(Ncc/sec)、そしてTは反応温度(℃)である。)
【0029】(実施例2)
(ニオブ原料液の調製)実施例1のシュウ酸/ニオブのモル比2.6のニオブ含有液に、さらにシュウ酸/ニオブのモル比3.0となるようにシュウ酸二水和物〔H2 2 4 ・2H2 O〕を加え、加熱して溶解させた後、30℃まで冷却した。得られた液を下記の触媒調製のニオブ原料液として用いた。このニオブ原料液中のニオブ濃度は実施例1と同様にして分析した結果、0.46(mol−Nb/Kg−液)であった。
(触媒の調製)触媒成分の組成式がMo1 0.32Nb0.12Te0.22n であって、SiO2 含有量30重量%のシリカ担持触媒を、上記のニオブ原料液を用い、その使用量を802.1gとした他は実施例1と同様にして調製してシリカ担持触媒を得た。
(プロパンのアンモ酸化反応)得られた触媒を用いて、実施例1と同じ条件でプロパンのアンモ酸化反応を行った。結果を表1に示す。
【0030】(比較例1)
(ニオブ原料液の調製)実施例1と同様にして得られる、ニオブが溶解したシュウ酸/ニオブのモル比5.5の液を氷冷することなく、そのまま下記の触媒調製のニオブ原料液として用いた。このニオブ原料液中のニオブ濃度は実施例1と同様にして分析した結果、0.41(mol−Nb/Kg−液)であった。
(触媒の調製)触媒成分の組成式がMo1 0.32Nb0.12Te0.22n であって、SiO2 含有量30重量%のシリカ担持触媒を、上記のニオブ原料液を用い、その使用量を899.9gとした他は実施例1と同様にして調製してシリカ担持触媒を得た。
(プロパンのアンモ酸化反応)得られた触媒を用いて、実施例1と同じ条件でプロパンのアンモ酸化反応を行った。結果を表1に示す。
【0031】(実施例3)
(ニオブ原料液の調製)水782gにNb2 5 として80.0重量%を含有するニオブ酸66.4gとシュウ酸二水和物〔H2 2 4 ・2H2 O〕151.3gを混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は3.0、仕込みのニオブ濃度は0.4(mol−Nb/Kg−液)である。この混合液を95℃で1時間加熱撹拌することによって、不溶ニオブ成分を含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を静置、氷冷後、固体を濾別し、均一なニオブ含有液を得た。このニオブ含有液中のニオブ濃度およびシュウ酸/ニオブのモル比は、それぞれ、実施例1と同様にして分析した結果、0.41(mol−Nb/Kg−液)および2.8であった。このニオブ含有液は、シュウ酸/ニオブのモル比を調整することなく下記の触媒調製のニオブ原料液として用いた。
(触媒の調製)触媒成分の組成式がMo1 0.32Nb0.12Te0.22n であって、SiO2 含有量30重量%のシリカ担持触媒を、上記のニオブ原料液を用い、その使用量を899.9gとした他は実施例1と同様にして調製してシリカ担持触媒を得た。
(プロパンのアンモ酸化反応)得られた触媒を用いて、実施例1と同じ条件でプロパンのアンモ酸化反応を行った。結果を表1に示す。
【0032】(実施例4)
(ニオブ原料液の調製)水4084gにNb2 5 として80.0重量%を含有するニオブ酸664.0gとシュウ酸二水和物〔H2 2 4 ・2H2 O〕252.0gを混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は0.5、仕込みのニオブ濃度は0.8(mol−Nb/Kg−液)である。この混合液を95℃で1時間加熱撹拌することによって、不溶ニオブ成分を含む水性懸濁液を得た。この水性懸濁液を静置、氷冷後、固体を濾別し、均一なニオブ含有液を得た。このニオブ含有液中のニオブ濃度およびシュウ酸/ニオブのモル比は、それぞれ、実施例1と同様にして分析した結果、0.16(mol−Nb/Kg−液)および2.2であった。このニオブ含有液にさらに、シュウ酸/ニオブのモル比3.0となるようにシュウ酸二水和物を加え、加熱して溶解させた後、30℃まで冷却した。得られた液を下記の触媒調製のニオブ原料液として用いた。この液中のニオブ濃度は実施例1と同様にして分析した結果、0.158(mol−Nb/Kg−液)であった。
(触媒の調製)触媒成分の組成式がMo1 0.32Nb0.12Te0.22n であって、SiO2 含有量30重量%のシリカ担持触媒を、上記のニオブ原料液を用い、その使用量を2335.2gとした他は実施例1と同様にして調製してシリカ担持触媒を得た。
(プロパンのアンモ酸化反応)得られた触媒を用いて、実施例1と同じ条件でプロパンのアンモ酸化反応を行った。結果を表1に示す。
【0033】(実施例5)
(ニオブ原料液の調製)実施例2と同様にしてシュウ酸/ニオブのモル比3.0のニオブ原料液を得た。
(触媒の調製)触媒成分の組成式がMo1 0.32Nb0.12Te0.22n であって、SiO2 含有量50重量%のシリカ担持触媒を次のように調製した。水1600gにヘプタモリブデン酸アンモニウム〔(NH4 6 Mo7 24・4H2 O〕390.5g、メタバナジン酸アンモニウム〔NH4 VO3 〕83.1gおよびテルル酸〔H6 TeO6 〕112.0gを順次加え、60℃に加熱して溶解した後、30℃まで冷却して混合水溶液を得た。次いでこの混合水溶液に、上記のニオブ原料液572.9gおよびシリカとして30重量%を含有するシリカゾル1667gを順次添加して混合し、触媒原料調合液を得た。この原料調合液を遠心式噴霧乾燥機にて入口温度が240℃、出口温度が145℃で乾燥し、微小球状の乾燥粉体を得た。得られた乾燥粉体を大気雰囲気下275℃で2時間焼成した。この粉体85gを直径1インチのSUS製管に充填し、150Ncc/minの窒素ガス流通下、600℃で2時間焼成してシリカ担持触媒を得た。
【0034】(プロパンのアンモ酸化反応)得られた触媒を用いて、実施例1と同じ条件でプロパンのアンモ酸化反応を行った。結果を表1に示す。
【0035】(比較例2)
(ニオブ原料液の調製)比較例1と同様にしてシュウ酸/ニオブのモル比5.5のニオブ原料液を得た。
(触媒の調製)触媒成分の組成式がMo1 0.32Nb0.12Te0.22n であって、SiO2 含有量50重量%のシリカ担持触媒を、上記のニオブ原料液を用い、その使用量を642.8gとした他は実施例5と同様にして調製してシリカ担持触媒を得た。
(プロパンのアンモ酸化反応)得られた触媒を用いて、実施例1と同じ条件でプロパンのアンモ酸化反応を行った。結果を表1に示す。
(実施例6)
(ニオブ原料液の調製)実施例1と同様にしてシュウ酸/ニオブのモル比2.6のニオブ原料液を得た。
(触媒の調製)組成式がMo1 0.32Nb0.12Te0.22n で示される触媒を、次の様にして調製した。
【0036】水1650gにヘプタモリブデン酸アンモニウム〔(NH4 6 Mo7 24・4H2 O〕390.5g、メタバナジン酸アンモニウム〔NH4 VO3 〕83.1gおよびテルル酸〔H6 TeO6 〕112.0gを順次加え、60℃に加熱して溶解した後、30℃まで冷却して混合水溶液を得た。次いでこの混合水溶液に、上記のニオブ原料液560.7gを添加して混合し、触媒原料調合液を得た。この原料調合液を遠心式噴霧乾燥機にて入口温度が240℃、出口温度が145℃で乾燥し、微小球状の乾燥粉体を得た。得られた乾燥粉体を大気雰囲気下275℃で2時間焼成した。この粉体85gを直径1インチのSUS製管に充填し、150Ncc/minの窒素ガス流通下、600℃で2時間焼成して触媒を得た。
(プロパンのアンモ酸化反応)触媒1gを内径10mmの固定床型反応管に充填し、反応温度430℃、反応圧力常圧下にプロパン:アンモニア:酸素:ヘリウム=1:1.2:3:12のモル比の混合ガスを接触時間1.0(sec・g/cc)で通過させた。得られた結果を表1に示す。
【0037】(比較例3)
(ニオブ原料液の調製)水803gにNb2 5 として80.0重量%を含有するニオブ酸66.4gとシュウ酸二水和物〔H2 2 4 ・2H2 O〕131.1gを混合した。仕込みのシュウ酸/ニオブのモル比は2.6、仕込みのニオブ濃度は0.4(mol−Nb/Kg−液)である。この混合液を95℃で1時間加熱撹拌したが、懸濁した状態であった。この懸濁状態の液を、下記の触媒調製のニオブ原料として用いた。このニオブ原料液中のニオブ濃度は実施例1と同様にして分析した結果、0.41(mol−Nb/Kg−液)であった。
(触媒の調製)組成式がMo1 0.32Nb0.12Te0.22n で示される触媒を、上記のニオブ原料液を用い、その使用量を642.8gとした他は実施例6と同様にして調製して触媒を得た。
(プロパンのアンモ酸化反応)得られた触媒を用いて、実施例6と同じ条件でプロパンのアンモ酸化反応を行った。結果を表1に示す。
【0038】(実施例7)
(ニオブ原料液の調製)実施例2と同様にしてシュウ酸/ニオブのモル比3.0のニオブ原料液を得た。
(触媒の調製)触媒成分の組成式がMo1 0.32Nb0.12Te0.22Yb0.010 n であって、SiO2 含有量30重量%のシリカ担持触媒を次のように調製した。水2300gにヘプタモリブデン酸アンモニウム〔(NH4 6 Mo7 24・4H2 O〕542.0g、メタバナジン酸アンモニウム〔NH4 VO3 〕115.3gおよびテルル酸〔H6 TeO6 〕155.5gを順次加え、60℃に加熱して溶解した後、30℃まで冷却して混合水溶液を得た。次いでこの混合水溶液に、上記のニオブ原料液795.2g、水250gに酢酸イッテルビウム〔Yb(CH3 COO)3 ・4H2 O〕12.88gを溶解させた水溶液、およびシリカとして30重量%を含有するシリカゾル1000gを順次添加して混合し、触媒原料調合液を得た。この原料調合液を遠心式噴霧乾燥機にて入口温度が240℃、出口温度が145℃で乾燥し、微小球状の乾燥粉体を得た。得られた乾燥粉体を大気雰囲気下275℃で2時間焼成した。この粉体85gを直径1インチのSUS製管に充填し、150Ncc/minの窒素ガス流通下、600℃で2時間焼成して触媒を得た。
(プロパンのアンモ酸化反応)得られた触媒を用いて、実施例1と同じ条件でプロパンのアンモ酸化反応を行った。結果を表1に示す。
【0039】(実施例8)
(ニオブ原料液の調製)水1000gにNb2 5 として14.9重量%を含有するシュウ酸水素ニオブ917gを混合した。仕込みのニオブ濃度は0.54(mol−Nb/Kg−液)である。この混合液を95℃で1時間加熱撹拌することによって、均一な水溶液を得た。実施例1と同様にしてシュウ酸/ニオブのモル比を分析した結果、5.2であった。この水溶液を静置、氷冷後、固体を濾別し、均一なニオブ含有液を得た。このニオブ含有液中のニオブ濃度およびシュウ酸/ニオブのモル比は、それぞれ、実施例1と同様にして分析した結果、0.66(mol−Nb/Kg−液)および2.4であった。このニオブ含有液にさらに、シュウ酸/ニオブのモル比3.0、ニオブ濃度0.46(mol−Nb/Kg−液)となるようにシュウ酸二水和物〔H2 2 4 ・2H2 O〕と水を加え、加熱、撹拌して溶解させた後、30℃まで冷却した。得られた液を下記の触媒調製のニオブ原料液として用いた。
(触媒の調製)触媒成分の組成式がMo1 0.32Nb0.12Te0.22n であって、SiO2 含有量30重量%のシリカ担持触媒を、上記のニオブ原料液を用いた他は、実施例2と同様にして調製してシリカ担持触媒を得た。
(プロパンのアンモ酸化反応)得られた触媒を用いて、実施例1と同じ条件でプロパンのアンモ酸化反応を行った。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】


【0041】
【発明の効果】本発明により、簡便に調製されるニオブの原料液を用いて、ニトリル収率が高く、かつ担体成分に担持した時にも触媒性能を十分発揮する触媒を調製することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 アルカンのアンモ酸化反応に用いるニオブを含む触媒の調製方法であって、シュウ酸とニオブ化合物を含む水溶液または水性懸濁液を冷却後、濾別して得られるニオブ含有液を、シュウ酸/ニオブのモル比が2〜4となるように調整し、ニオブ原料液として用いることを特徴とするニオブ含有触媒の調製方法。
【請求項2】 該ニオブ化合物がニオブ酸およびシュウ酸水素ニオブから選ばれる少なくとも1種類以上である請求項1に記載の触媒の調製方法。
【請求項3】 該触媒が次の一般組成式(1)で示される化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の触媒の調製方法。
Mo1 a Nbb c d n (1)
(式中、成分XはTeおよびSbから選ばれる少なくとも1種以上の元素、成分ZはW、Cr、Ta、Ti、Zr、Hf、Mn、Re、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Ag、Zn、B、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、P、Bi、Y、希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも一種以上の元素であり、a、b、c、d、nはMo1原子当たりの原子比を表し、0.1≦a≦1、0.01≦b≦1、0.01≦c≦1、0≦d≦0.1、そしてnは構成金属の酸化状態によって決まる数である。)
【請求項4】 該触媒がシリカに担持されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒の調製方法。
【請求項5】 シリカの含有量が該触媒成分とシリカから成るシリカ担持触媒の全重量比20〜60重量%であることを特徴とする請求項4に記載の触媒の調製方法。
【請求項6】 該シリカ担体の原料がアンモニウムイオンで安定化したゾルであることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の触媒の調製方法。
【請求項7】 該触媒の成分を含有する原料調合液を噴霧乾燥または蒸発乾固して得られる乾燥物を、実質的に酸素を含まないガス雰囲気下、500〜700℃の温度で焼成することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の触媒の調製方法。
【請求項8】 該焼成に先立って、大気雰囲気下、200〜400℃で前焼成することを特徴とする請求項7に記載の触媒の調製方法。
【請求項9】 アルカンを気相接触アンモ酸化反応させて不飽和ニトリルを製造するに当たり、シュウ酸とニオブ化合物を含む水溶液または水性懸濁液を冷却後、濾別して得られるニオブ含有液を、シュウ酸/ニオブのモル比が2〜4となるように調整し、ニオブ原料液として用いて調製したニオブ含有触媒を用いることを特徴とする不飽和ニトリルの製造方法。
【請求項10】 該ニオブ化合物がニオブ酸およびシュウ酸水素ニオブから選ばれる少なくとも1種類以上である請求項9に記載の不飽和ニトリルの製造方法。
【請求項11】 該触媒が次の一般組成式(1)で示される化合物であることを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の不飽和ニトリルの製造方法。
Mo1 a Nbb c d n (1)
(式中、成分XはTeおよびSbから選ばれる少なくとも1種以上の元素、成分ZはW、Cr、Ta、Ti、Zr、Hf、Mn、Re、Fe、Ru、Co、Rh、Ni、Pd、Pt、Ag、Zn、B、Al、Ga、In、Ge、Sn、Pb、P、Bi、Y、希土類元素およびアルカリ土類金属から選ばれる少なくとも一種以上の元素であり、a、b、c、d、nはMo1原子当たりの原子比を表し、0.1≦a≦1、0.01≦b≦1、0.01≦c≦1、0≦d≦0.1、そしてnは構成金属の酸化状態によって決まる数である。)
【請求項12】 該触媒がシリカに担持されていることを特徴とする請求項9〜11のいずれか1項に記載の不飽和ニトリルの製造方法。
【請求項13】 シリカの含有量が該触媒成分とシリカから成るシリカ担持触媒の全重量比20〜60重量%であることを特徴とする請求項12に記載の不飽和ニトリルの製造方法。
【請求項14】 該シリカ担体の原料がアンモニウムイオンで安定化したゾルであることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の不飽和ニトリルの製造方法。
【請求項15】 該触媒の成分を含有する原料調合液を噴霧乾燥または蒸発乾固して得られる乾燥物を、実質的に酸素を含まないガス雰囲気下、500〜700℃の温度で焼成して得られる触媒を用いることを特徴とする請求項9〜14のいずれか1項に記載の不飽和ニトリルの製造方法。
【請求項16】 該焼成に先立って、大気雰囲気下、200〜400℃で前焼成して得られる触媒を用いることを特徴とする請求項15に記載の不飽和ニトリルの製造方法。
【請求項17】 アルカンがプロパンまたはイソブタンである請求項9〜16のいずれか1項に記載の不飽和ニトリルの製造方法。

【公開番号】特開平11−253801
【公開日】平成11年(1999)9月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−80501
【出願日】平成10年(1998)3月13日
【出願人】(000000033)旭化成工業株式会社 (901)