説明

アーク溶接用トーチクリーナ

【課題】継続的にシールドノズル及びコンタクトチップの先端に付着したスパッタを除去することができるアーク溶接用トーチクリーナを提供する。
【解決手段】
側面に周方向所定角度をおいて、その上端からその途中部分までスリット刃2bが連通形成された円筒形状回転刃部材2と、基板2a上に板状刃2bが放射状に配設された先端付着物除去刃3と、先端付着物除去刃3をその上端に取り付けるコイルスプリング5と、回転刃部材2を回転させる駆動部を有する。先端付着物除去刃3はコイルスプリング5の上端に取り付けられ、常時は、回転刃部材2上端は、板状刃3bから上方には突出しないように構成されているので、シールドノズル52の先端から剥がれたリング状スパッタ99aが、回転刃部材2に串刺し状に積み重なることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスシールドアーク溶接をする際に用いられるガスシールドアーク溶接用トーチに付着したスパッタを除去するアーク溶接用トーチクリーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車部品等の組立の際に、MAG溶接やMIG溶接等のガスシールドアーク溶接が利用されている。ガスシールドアーク溶接に用いられるアーク溶接用トーチ50は、図7に示されるように、ソリッドワイヤーが送り出される略弾丸形状のコンタクトチップ55と、このコンタクトチップ55の基部を保持する円筒形状のチップホルダ51と、コンタクトチップ55及びチップホルダ51を包容するように配設された筒状のシールドノズル52と、シールドノズル52及びチップホルダ51が取り付けられるノズルホルダ53とから構成されている。ガスシールドアーク溶接は、連続的に送り出されるソリッドワイヤーに、コンタクトチップ51を介して大電流を流して、前記ソリッドワイヤーと被溶接部材との間でアークを発生させ(放電させ)、その際に発生する熱により、前記ソリッドワイヤーや被溶接部材を溶かして、被溶接部材を溶接する溶接方法である。溶接を行う際には、溶接箇所と空気とが接触することによるブローホールの発生を防止するために、チップホルダ51に形成されたガス供給口51aからCOやアルゴン等の不活性ガスを供給し、シールドノズル52の先端から溶接箇所に前記不活性ガスを供給して、溶接箇所と空気の接触を防止している。シールドノズル52は、不活性ガスの拡散を防止し、確実に溶接箇所に不活性ガスを供給するためのものであり、ガスシールドアーク溶接には不可欠なものである。
【0003】
溶接時には溶融金属の微粒子であるスパッタが発生して、溶接箇所から飛散する。図7に示されるように、シールドノズル52先端やコンタクトチップ55の先端部にスパッタ99が蓄積すると、シールドノズル52内の不活性ガスの流れが悪くなる。すると、溶接箇所への不活性ガスの供給が不十分となり、ブローホールが発生し溶接不良となってしまう。
【0004】
そこで、特許文献1に示されるような電極の清掃具が提案されている。この電極の清掃具は、回転する円筒状ホルダーの先端に、コイルスプリングを取り付けた構造のものであり、前記回転するコイルスプリングをシールドノズル52及びコンタクトチップ55の間に挿入して、シールドノズル52及びコンタクトチップ55の先端に付着したスパッタ99を除去する装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−136245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シールドノズル52に付着したスパッタ99同士が固着すると、図8に示されるように固着したスパッタ99がリング状になってしまう。このように、リング状のスパッタ99が生成した場合に、特許文献1に示される電極の清掃具で、シールドノズル52及びコンタクトチップ55の先端に付着したスパッタ99を除去すると、前記リング状のスパッタ99が前記回転するコイルスプリングに串刺されたように積み重なってしまい、最終的には、前記回転するコイルスプリングをシールドノズル52及びコンタクトチップ55の間に挿入することができなくなり、シールドノズル52及びコンタクトチップ55の先端に付着したスパッタ99を除去することができないという問題があった。このような状態になった場合には、作業者がコイルスプリングに串刺し状に積み重なったリング状スパッタ99を除去するしかなく、例えば、自動化スポット溶接ラインの場合には、リング状スパッタ99を除去するためにはライン自体を停止させなければならず、生産性が低下してしまうという問題があった。或いは、ラインを停止させずに、作業者がリング状スパッタを除去することにすると、作業者の安全性を確保することができないという問題があった。
本発明は、上記問題を解決し、シールドノズルの先端にリング状スパッタが生成した場合であっても、継続的にシールドノズル及びコンタクトチップの先端に付着したスパッタを除去することができるアーク溶接用トーチクリーナを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、
ソリッドワイヤーが送り出されるコンタクトチップと、このコンタクトリップを包容するように配設され不活性ガスが供給されるシールドノズルを有するアーク溶接用トーチの前記シールドノズルの先端に付着したスパッタを除去するアーク溶接用トーチクリーナにおいて、
円筒形状であり、その側面に周方向所定角度をおいて、その上端からその途中部分までスリット刃が連通形成された回転刃部材と、
中央に前記回転刃部材の外径よりも僅かに大きい内径の挿通穴が形成された基板上に、板状刃が、前記挿通穴上から放射状に、周方向所定角度をおいて配設された先端付着物除去刃と、
前記回転刃部材の外周に配設され、前記先端付着物除去刃がその上端に取り付けられ、前記先端付着物除去刃を上方に付勢するとともに、前記先端付着物除去刃を前記回転刃部材の上端で保持するコイルスプリングと、
前記回転刃部材を回転させる駆動部を有し、
常時は、前記回転刃部材の上端は前記板状刃から上方には突出していないが、前記板状刃が下方に押圧されると、前記各板状刃が前記各スリット刃に侵入するとともに前記挿通穴に前記回転刃部材が挿通し、前記先端付着物除去刃が下方に移動するように構成されていることを特徴とする。
これにより、シールドノズルの先端を前記板状刃に当接させて、シールドノズル内に前記回転する回転刃部材の先端を挿通させながらアーク溶接用トーチを下降させると、シールドノズルの先端に付着したスパッタが除去されるとともに、シールドノズル内に付着したスパッタが除去される。このため、シールドノズル内に供給される不活性ガスの流路が確保され、溶接時のブローホールの発生が防止され、溶接不良が防止される。
また、先端付着物除去刃はコイルスプリングの上端に取り付けられ、常時は、回転刃部材上端は、板状刃から上方には突出しないように構成されているので、シールドノズルの先端にリング状スパッタが生成した場合であっても、シールドノズルの先端から剥がれたリング状スパッタが、回転刃部材に串刺し状に積み重なることがない。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、先端付着物除去刃の上側方に、先端付着物除去刃の上面に、圧縮空気が噴出する圧縮空気噴出管を配設したことを特徴とする。
これにより、シールドノズルの先端にリング状スパッタが生成した場合であっても、圧縮空気噴管から噴出する圧縮空気によって、シールドノズルの先端から剥がれたリング状スパッタが、先端付着物除去刃上を横方向に移動し、確実に、前記リング状スパッタを先端付着物除去刃から除去することが可能となる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、
板状刃の先端面に、上方から下方に向かって徐々に挿通穴中心に迫り出し、コンタクトチップの先端部側面と対応するように湾曲した傾斜面を形成し、
コンタクトチップの先端部側面を前記板状刃の傾斜面に当接させて、コンタクトチップの先端部側面に付着したスパッタが除去されるように構成したことを特徴とする。
これにより、コンタクトチップの先端部側面を前記板状刃の傾斜面に当接させると、コンタクトチップの先端部側面に付着したスパッタが除去される。このため、シールドノズル内に供給される不活性ガスの流路が確実に確保され、溶接時のブローホールの発生が防止され、溶接不良が防止される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアーク溶接用トーチクリーナを使用すると、シールドノズルの先端に付着したスパッタが除去されるとともに、シールドノズル内に付着したスパッタが除去され、シールドノズル内に供給される不活性ガスの流路が確保され、溶接時のブローホールの発生が防止され、溶接不良が防止される。本発明では、先端付着物除去刃はコイルスプリングの上端に取り付けられ、常時は、回転刃部材上端は、板状刃から上方には突出しないように構成されているので、シールドノズルの先端にリング状スパッタが生成した場合であっても、シールドノズルの先端から剥がれたリング状スパッタが、回転刃部材に串刺し状に積み重なることがない。このため、継続的にシールドノズル及びコンタクトチップの先端に付着したスパッタを除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態を示すアーク溶接用トーチクリーナの上面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1のB−B断面図である。
【図4】回転刃部材の詳細図である。
【図5】先端付着物除去刃の詳細図である。
【図6】本発明の作用について説明した説明図である。
【図7】アーク溶接用トーチの説明図である。
【図8】リング状スパッタの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(ガスシールドアーク溶接トーチクリーナの構成)
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。本発明のアーク溶接用トーチクリーナ20は、主に、駆動部1、回転刃部材2、先端付着物除去刃3、スプリング受け部材4、コイルスプリング5、傾斜スロープ13とから構成されている。
【0013】
駆動部1は、電動モータ等のアクチュエータと、前記アクチュエータの回転を減速させる複数のギアからなる減速機とから構成されている。駆動部1の上部には、回転軸1aが上方に突出している。回転軸1aには、前記アクチュエータの回転力が、前記減速機で減速されて付与されるようになっている。図に示される実施形態では、駆動部1は箱形の筐体11内に収納され、回転軸1aは筐体11の上面から突出している。
【0014】
スプリング支持部材4は、略円柱形状である。スプリング支持部材4の底面中心には、取付穴4aが形成されている。取付穴4aの内径は、駆動部1の回転軸1aの外径よりも僅かに大きくなっている。スプリング受け部材4の側面には、取付穴4aに連通する締付ネジ穴4bが形成されている。取付穴4aに回転軸1aを挿通させ、この状態で、締付ネジ穴4bに締付ネジ9を締め付けて、スプリング支持部材4を回転軸1aに取り付けている。
スプリング支持部材4の上端部には、コイルスプリング5の内径と略等しい外径のスプリング支持部4cが形成されている。スプリング支持部4の基端の周囲には、スプリング支持部材4の軸方向と直交する平面であるスプリング当接面4dが形成されている。図2や図3に示されるように、スプリング支持部4がコイルスプリング5に挿通し、コイルスプリング5の下端がスプリング当接面4dに当接して、コイルスプリング5がスプリング支持部4cに取り付けられている。スプリング支持部材4(スプリング受部4c)の上面中心には、円柱形状の回転刃部材支持部4eが突設されている。
【0015】
回転刃部材支持部4eには、回転刃部材2が同軸に取り付けられている。回転刃部材2は、コイルスプリング5に挿通している。言い換えると、コイルスプリング5は、回転刃部材2の外周に変形自在に配設されている。図4を用いて、回転刃部材2を詳細に説明する。図4において、(A)は回転刃部材2の上面図であり、(B)は回転刃部材2の側面図である。回転刃部材2は円筒形状である。回転刃部材2の内径は、回転刃部材支持部4eの外径と略同一となっている。回転刃部材支持部4eが回転刃部材2内に圧入されて、回転刃部材2が回転刃部材支持部4eに取り付けられている。回転刃部材2の上端には、外径が上側に向かって徐々に縮径する縮径部2aが形成されている。
回転刃部材2の側面には、回転刃部材2の上端から途中部分まで、スリット刃2bが連通形成されている。スリット刃2bは、周方向所定角度をおいて、回転刃部材2の側面に形成されている。図に示される実施形態では、スリット刃2bは、周方向90°をおいて、回転刃部材2の側面に、4つ形成されている。
【0016】
図2や図3に示されるように、コイルスプリング5の上端には、先端付着物除去刃3が溶接により取り付けられている。図5を用いて、先端付着物除去刃3を説明する。図5において、(A)は先端付着物除去刃3の上面図であり、(B)は先端付着物除去刃3の側面図であり、(C)は先端付着物除去刃3の斜視図である。先端付着物除去刃3は、略円盤形状の基板3a上に、周方向所定角度をおいて、板状刃3bを貼設した構造のものである。基板3aの中央には、円形状の挿通穴3cが形成されている。挿通穴3cの内径は、回転刃部材2の外径よりも僅かに大きくなっている。このため、挿通穴3eには、回転刃部材2が挿通可能となっている。板状刃3bは、基板3a上に放射状に貼設されている。言い換えると、板状刃3bは、その長手方向を基板3aの半径方向と同一にして貼設されている。図に示される実施形態では、4枚の板状刃3bが、周方向90°をおいて、基板3a上に貼設されている。図5の(A)に示されるように、板状刃3bは、基板3aに形成された挿通穴3c上にまで突出している。板状刃3bの挿通穴3c上に突出する面には、言い換えると、板状刃3bの先端面には、傾斜面3dが形成されている。傾斜面3dは、上方から下方に向かって徐々に挿通穴3c中心に迫り出している。言い換えると、互いに相対向する傾斜面3dは、上方に向かって広くなっている。傾斜面3dの傾斜角度は、コンタクトチップ55先端部側面の傾斜角度と同一になっていて、互いに相対向する傾斜面3dは、コンタクトチップ55先端部側面に対応する湾曲した形状となっている。板状刃3bの幅寸法は、回転刃部材2の回転刃部材2に形成されたスリット刃2bの幅寸法よりも僅かに小さくなっている。このため、板状刃3bがスリット刃2bに侵入可能となっている。
【0017】
基板3aの下部には、コイルスプリング5の内径よりも僅かに小さい外径のスプリング挿入部3eが形成されている。スプリング挿入部3eの基端の周囲には、平面である溶接面3fが形成されている。スプリング挿入部3eがコイルスプリング5の上端に挿入され、先端付着物除去刃3がコイルスプリング5上に載置された状態で、コイルスプリング5上端が溶接面3fに溶接されて、先端付着物除去刃3がコイルスプリング5上端に取り付けられている。このような構成により、回転刃部材3はコイルスプリング5で回転刃部材2の上端に保持されている。なお、先端付着物除去刃3の各板状刃3bは、回転刃部材2の各スリット刃2bが形成されている位置と合致している。このため、各板状刃3bは各スリット刃2b内に侵入可能となっていて、先端付着物除去刃3は回転刃部材2に対して下側に移動可能となっている。図2や図3に示されるように、常時は、回転刃部材2の上端は、板状刃3bから上方には突出していない。板状刃3bが下方に押圧されると、各板状刃3bが各スリット刃2bに侵入し、挿通穴3cに回転刃部材2が挿通し、先端付着物除去刃3が下方に移動する。先端付着物除去刃3が回転刃部材2に対して下側に移動した状態では、各板状刃3bが、各スリット刃2b内に侵入していて両者が係合しているので、回転刃部材2が回転すると、先端付着物除去刃3もまた回転するようになっている。
【0018】
図2や図3に示されるように、筐体11の上部には、上方に開放している有底箱形のスパッタ除去粉受け12は配設されている。スパッタ除去粉受け12は、先端付着物除去刃3、スプリング受け部材4、コイルスプリング5、回転刃部材2を取り囲んでいる。
【0019】
スパッタ除去粉受け12の上方には、回転刃部材2及びコイルスプリング5の上部、先端付着物除去刃3を取り囲む傾斜スロープ13が配設されている。傾斜スロープ13の底面である傾斜面13aは、水平面に対して傾斜している。図に示される実施形態では、傾斜面13aは、アーク溶接用トーチクリーナ20の前方(図2の紙面手前側)に向かって低くなるように傾斜している。図に示される実施形態では、傾斜面13aに円形状の連通穴13bが形成され、この連通穴13bに回転刃部材2及びコイルスプリング5が挿通して、回転刃部材2及びコイルスプリング5が傾斜面13aから上方に突出している。
【0020】
図2に示されるように、先端付着物除去刃3のやや上方の側方には、侵入検知センサー15が配設されている。侵入検知センサー15は、先端付着物除去刃3直上へのアーク溶接用トーチ50の侵入を検知するものである。本実施形態では、侵入検知センサー15は、所謂光電センサーであり、レーザー光等の照射光を照射する発光部15aと、発光部15aから照射された照射光を受光する受光部15bとから構成されている。発光部15aと受光部15bは、発光部15aと受光部15bを結ぶ直線が、先端付着物除去刃3の直上を跨ぐように配設されている。発光部15aと受光部15bの間にアーク溶接用トーチ50が侵入すると、発光部15aから照射された照射光がアーク溶接用トーチ50で遮られ、受光部15bが前記照射光を受光することができないので、アーク溶接用トーチ50の侵入が検知される。受光部15a及び発光部15bは、筐体11の内部に配設されたコントロール部10に接続している。駆動部1のアクチュエータは、コントロール部10と接続している。侵入検知センサー15が、先端付着物除去刃3直上へのアーク溶接用トーチ50の侵入を検知すると、駆動部1のアクチュエータが起動し、回転軸1aが回転するようになっている。
なお、侵入検知センサーを、超音波式の近接センサーや、機械式のリミットスイッチ等で構成しても差し支えない。
【0021】
先端付着物除去刃3の上側方には、リミットスイッチ16が配設されている。本実施形態では、リミットスイッチ16は、ローラーレバー式のリミットスイッチであり、内部にバルブを有するリミットスイッチ本体15aと、リミットスイッチ本体16aに揺動自在に取り付けられたレバー16bと、レバー16bの先端に回転自在に取り付けられたローラー16cとから構成されている。ローラー16cは、アーク溶接用トーチ50の侵入軌跡に位置している。ローラー16cが押されて、レバー16cが初期位置から押されて揺動すると(図3に示される実施形態では、レバー16cがリミットスイッチ本体16a側に揺動すると)、前記バルブが開放する。一方で、レバー16bが初期位置にある場合には、前記バルブが閉塞している。前記バルブの入口側には、工場用圧縮空気等の圧縮空気が供給される圧縮吸気供給管19が接続している。前記バルブの出口側には、圧縮空気流通管17が接続している。圧縮空気流通管17の先端には、圧縮空気噴出管18が接続している。圧縮空気噴出管18の開口方向は、先端付着物除去刃3の側上方から先端付着物除去刃3の上面方向であって、且つ、傾斜面13aが低くなる方向である。先端付着物除去刃3の直上に、アーク溶接用トーチ50が侵入して、ローラー16cがシールドノズル50で押圧されると、前記バルブが開放されて、圧縮空気噴出管18の開口部から先端付着物除去刃3の上面に圧縮空気が噴出される。このことによる効果は後述する。
【0022】
(本発明の作用)
次に、図6を用いて、本発明の作用について説明する。図6の(A)に示される例では、シールドノズル52の先端には、リング状のスパッタ99aが付着している。アーク溶接用トーチ50を、先端付着物除去刃3の直上に移動させる(図6の(A)の状態)。すると、侵入検知センサー15が、先端付着物除去刃3直上へのアーク溶接用トーチ50の侵入を検知し、駆動部1のアクチュエータが起動し、回転刃部材2、コイルスプリング5、及び、先端付着物除去刃3が回転する。更に、シールドノズル52がローラー16cを押圧して、圧縮空気噴出口18から先端付着物除去刃3の上面に、圧縮空気が噴出する。
【0023】
次に、アーク溶接用トーチ50を更に下降させると、先端付着物除去刃3がシールドノズル52の先端に押圧されて下降し、シールドノズル52内に回転刃部材2の先端が挿通する。回転刃部材2の上端には縮径部2aが形成されているので、回転刃部材2がシールドノズル52内に挿通しやすくなっている。すると、シールドノズル52の内側に付着したスパッタ99aが、回転刃部材2に形成されたスリット刃2bによって除去されるとともに、板状刃3bと接触しているリング状のスパッタ99aが、シールドノズル52の先端から剥がれる。更に、アーク溶接用トーチ50を下降させ、コンタクトチップ55の先端が、対向する板状刃3b間に挿通されると、対向する板状刃3bの傾斜面3dによって、コンタクトチップ55の先端に付着したスパッタ99bが除去される(図6の(B))の状態。この際に、スパッタ除去粉は、回転刃部材2のスリット刃2bの下部から、スパッタ除去粉受け12に排出される。
【0024】
次に、アーク溶接用トーチ50を上方に引き上げると、コイルスプリング5の付勢力により、先端付着物除去刃3が上昇する。コイルスプリング5が伸びきると、圧縮空気噴管18から噴出する圧縮空気によって、シールドノズル52の先端から剥がれたリング状スパッタ99aが、先端付着物除去刃3上を横方向に移動し、傾斜スロープ13の傾斜面13aに滑落して、アーク溶接用トーチクリーナ20の外部に排出される。(図6の(C)の状態)。
このように、本発明では、先端付着物除去刃3はコイルスプリング5の上端に取り付けられ、常時は、回転刃部材2の上端は、板状刃3bから上方には突出しないように構成されているので、シールドノズル52の先端から剥がれたリング状スパッタ99aが、回転刃部材2に串刺し状に積み重なることがない。このため、シールドノズル52の先端にリング状スパッタ99aが生成した場合であっても、継続的にシールドノズル52及びコンタクトチップ55の先端に付着したスパッタ99a、99bを除去することが可能となった。
【0025】
以上説明した実施形態では、先端付着物除去刃3の上側方にリミットスイッチ16を配設して、アーク溶接用トーチ50が先端付着物除去刃3直上に侵入した場合に、圧縮空気噴出管18から先端付着物除去刃3の上面に圧縮空気が噴出する構成としたが、侵入検知センサー15と連動する電磁弁を設け、侵入検知センサー15でアーク溶接用トーチ50の先端付着物除去刃3直上への侵入が検知され、前記電磁弁が開放して、圧縮空気噴出管18から先端付着物除去刃3の上面に圧縮空気が噴出する構成としても差し支えない。
【0026】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うアーク溶接用トーチクリーナもまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0027】
1 駆動部
1a 回転軸
2 回転刃部材
2a 縮径部
2b スリット刃
3 先端付着物除去刃
3a 基板
3b 板状刃
3c 挿通穴
3d 傾斜面
3e スプリング挿入部
3f 溶接面
4 スプリング受け部材
4a 取付穴
4b 締付ネジ穴
4c スプリング支持部
4d スプリング当接面
4e 回転刃部材取付部
5 コイルスプリング
9 締付ネジ
10 コントロール部
11 筐体
12 スパッタ除去粉受け
13 傾斜スロープ
13a 傾斜面
13b 連通穴
15 侵入検知センサー
15a 発光部
15b 受光部
16 リミットスイッチ
16a リミットスイッチ本体
16b レバー
16c ローラー
17 圧縮空気流通管
18 圧縮空気噴出管
19 圧縮空気供給管
20 アーク溶接用トーチクリーナ
50 アーク溶接用トーチ
51 チップホルダ
51a ガス供給口
52 シールドノズル
53 ノズルホルダ
55 コンタクトチップ
99 スパッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソリッドワイヤーが送り出されるコンタクトチップと、このコンタクトリップを包容するように配設され不活性ガスが供給されるシールドノズルを有するアーク溶接用トーチの前記シールドノズルの先端に付着したスパッタを除去するアーク溶接用トーチクリーナにおいて、
円筒形状であり、その側面に周方向所定角度をおいて、その上端からその途中部分までスリット刃が連通形成された回転刃部材と、
中央に前記回転刃部材の外径よりも僅かに大きい内径の挿通穴が形成された基板上に、板状刃が、前記挿通穴上から放射状に、周方向所定角度をおいて配設された先端付着物除去刃と、
前記回転刃部材の外周に配設され、前記先端付着物除去刃がその上端に取り付けられ、前記先端付着物除去刃を上方に付勢するとともに、前記先端付着物除去刃を前記回転刃部材の上端で保持するコイルスプリングと、
前記回転刃部材を回転させる駆動部を有し、
常時は、前記回転刃部材の上端は前記板状刃から上方には突出していないが、前記板状刃が下方に押圧されると、前記各板状刃が前記各スリット刃に侵入するとともに前記挿通穴に前記回転刃部材が挿通し、前記先端付着物除去刃が下方に移動するように構成されていることを特徴とするアーク溶接用トーチクリーナ。
【請求項2】
先端付着物除去刃の上側方に、先端付着物除去刃の上面に、圧縮空気が噴出する圧縮空気噴出管を配設したことを特徴とする請求項1に記載のアーク溶接用トーチクリーナ。
【請求項3】
板状刃の先端面に、上方から下方に向かって徐々に挿通穴中心に迫り出し、コンタクトチップの先端部側面と対応するように湾曲した傾斜面を形成し、
コンタクトチップの先端部側面を前記板状刃の傾斜面に当接させて、コンタクトチップの先端部側面に付着したスパッタが除去されるように構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアーク溶接用トーチクリーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−125901(P2011−125901A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286571(P2009−286571)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(392014760)新光機器株式会社 (50)
【出願人】(506332937)株式会社フィーダシステム (10)
【Fターム(参考)】