説明

アースクリップ

【課題】 電線結束用のクリップを筐体等に取り付けるに際し、筐体等の取付孔にネジ切りやネジ止めする必要がなく、ワンタッチで取り付けることができ、スプリング機能を有する形状とすることにより堅固に固定され、金属筐体等構造体パネルの電気導通部分が露出する取付孔に効果的にアースすることのできる電線結束取り付け用アースクリップを提供すること。
【解決手段】 電線を結束する側面視C字形に湾曲するC字形スプリング部と、このC字形底部の延端をアーチ形にしたアーチスプリング部と、前記C字形上部の一端に前記アーチ形部に向かって突起する差込部よりなり、この差込部には本クリップを掛止するにあたりパネル等の取り付け孔を貫通し傘状に拡開して一旦差し込むと抜けない矢じりを設け、また、前記アーチスプリング部にはこの差込部が通過する開口を設け、本クリップの少なくとも全表面ないし表面の一部に導電層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1本ないし複数本の電線束(以下、電線と称する)を結束するとともに、この電線から発信する電磁ノイズや、結束した電線に影響を及ぼす電子機器内外からの電磁波ノイズをシールドするための遮蔽被覆材をアースするためのアースクリップに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器内外や電線から発生する電磁波は、各種配線や空間を通じて電子機器に影響を及ぼし、音声、映像ノイズや誤作動の原因となることがある。その対策として、電線や電線の外周に巻かれたシールド材等を筐体に接地する必要がある。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、外側表面に導電性を有するチューブで電線を包囲し、このチューブの外周をクランプして接地するアース構造が提案されている。また特許文献3には、電線の途中の外被を剥ぎ取ってシールド用線材を露出させ、その周囲を導電性のバンドクランプで締結し接地するアース構造が提案されている。また特許文献2及び特許文献3に記載されたものはクランプに係止機構が具わっているため、電子機器等の筐体パネルへの取り付けが容易となるよう工夫されている。
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開平09−291909号公報
【特許文献2】 特開2002−142327号公報
【特許文献3】 特開2001−357910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載の方法では、筐体等の取り付け部のネジ孔にネジで取り付けるので、ネジと溝との接触でアースが完全であるが、ネジを切る作業が必要となる。前記特許文献2、特許文献3に示される方法では、クリップが電気的に確実に筐体等の取り付け部に接触している部分は取り付け板表面に限られ、取り付け面が塗装等、絶縁状態になっている場合は、アースするに際して塗装等絶縁物を研磨等で取り除く等の作業が必要となる。
いる場合は、塗装等絶縁物を研磨等で取り除く等の作業が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(本発明の第1の特徴)
電線を結束する側面視C字形に湾曲するC字形スプリング部と、このC字形底部の延端をアーチ形にしたアーチスプリング部と、前記C字形上部の一端に前記アーチ形部に向かって突起する差込部よりなり、この差込部には本クリップを掛止するにあたりパネル等の取り付け孔を貫通し傘状に拡開して逆行を防止する矢じりを設け、また、前記アーチスプリング部にはこの差込部が通過する開口を設け、本クリップの少なくとも全表面ないし表面の一部に導電層を形成する。
【0007】
(本発明の第2の特徴)
前記差込部が、首軸およびその先に接続する先端軸と、この先端軸を介して接続する矢じりよりなり、前記首軸断面を外方に張出すスプリング機能を有する固定ばね形状とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
また本発明のアースクリップは、電線または電線束を結束した後、筐体等構造体のパネルに穿設された取付孔に差し込むだけでワンタッチで容易に取り付けることができる。
【0009】
またC形スプスプリング部とアーチ部の有するスプリング機能により、矢じりを引き戻そうとする力がはたらくが、この矢じりはパネル等の取り付け孔に一旦差し込むと抜けない形状となっているため、パネル取付孔表側のアーチ部とパネル取付孔裏側の矢じりの顎部とでパネルを堅固に挟み確実に固定される。
【0010】
さらに、前記首軸の軸芯に接続する固定ばねの有するばね弾性により、たとえ筐体等構造体パネルの全表面に絶縁被覆が施されている場合でも、金属部分が露出する取付孔の内周壁に向かって強力に張り出し押接することができ、このためアースクリップより筐体等構造体に到るまでの導電性を確保し、効果的にアースすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明におけるアースクリップの材料としては、スプリング機能(ばね弾性)を有する熱可塑性合成樹脂であって、導電性を付与するためのメッキや塗装の可能な材料から選択することが好ましい。なかでもナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ABS、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂材料が好適であるが、必要によりこれらの材料を併用することもできる。熱可塑性樹脂の成形法としては、大量生産が可能で、かつ簡便な製造方法であることから射出成型法が好適である。
【0012】
本発明のアースクリップを図面に基づいて説明する。図1はその外形図、図2は左側面図であり、図4および図5はそれらを筺体等構造体に取付けた場合の態様を示す。このアースクリップ1は、電線を結束する側面視C字形に湾曲したC字形スプリング部2と、このC字形スプリング部2の
このC字形底部の延端をアーチ形にしたアーチスプリング部と、前記C字形上部の一端に前記アーチ形部に向かって突起する差込部よりなる。前記差込部3には矢じり部5を、アーチ部にはこの矢じり部5が通過する開口4aが設けられ、これら各部は熱可塑性樹脂を成形加工することにより一体的に形成する。本項以下、C字形スプリング部2の外面とそれに接続する面を外方、内面とそれに接続する面を内方と定義する。
【0013】
図3は前記図1、図2で示した差込部3に接続する矢じり部5の部分拡大図である。矢じり部5は差込部3の内方(図中下方)からアーチ形スプリング部4に対向するごとく突き出して接続し、付け根部5aを介して接続する首軸5bと、この首軸5bに接続する先端軸5dと、この先端軸5dに接続し周囲に張り出した複数枚の矢じり5eよりなる。
【0014】
矢じり5eには、その戻り方向先端(図中、差込部3側)顎部5fと、この顎部5fの内周寄りに突起5gを形成する。この突起5gは、本発明のアースクリップを、筺体等構造体のパネルに取り付けた際に、矢じりが極端に拡開して破損することを防止するためのものである。前記矢じり全体部5における各部分の形状や長さは、C字形スプリング部やアーチ形スプリング部によるばね効果と、アーチ形スプリング部4の厚さや反り具合、取り付ける筺体等構造体パネルの厚さ等を考慮して決める必要がある。
【0015】
図4は図3で示した矢じり全体部5における首軸5bの断面図を示し、首軸5bの斜線で示した軸芯に固定ばね5cを形成する。図4には一例として断面をS字形に形成した場合を示したが、それ以外にも図7(a)〜(h)に示すように、首軸5bと固定ばね5cを含めた断面につきS字形、C字型、E字形、またはこれらの逆字形等、所望により各種形状とすることができる。
【0016】
首軸5bと一体的に接続した固定ばね5cは、その少なくとも一部がスプリング機能によって外方向に張り出し拡開することが必要である。固定ばね5cの最突出部が内接する仮想円の径は、構造体等パネル12の取付孔12aの孔径よりやや大きくし、首軸5bの軸芯の太さはそれよりやや小さくにしておく。また本実施形態のように、首軸5bの矢じりに面した端部(図中下端)を円錐状に形成しておくと、筺体等構造体のパネル12に取り付ける際、取付孔12aへの挿入が容易となる。
【0017】
前記した矢じり部の構成によって、たとえ筐体等の構造体パネルの全表面に絶縁被覆が施されている場合でも、絶縁被覆されていない取付孔内周壁に向かって主軸が強力に突っ張って押接し、本発明のアースクリップより筐体等構造体に到るまでの導電性を確保し、効果的にアースされる。
【0018】
一方アーチ部4には矢じり全体部5を挿通するための開口4aを設ける。開口4aの位置、大きさ、形状は、アースクリップ1本体の撓みにより、矢じり全体部5が開口4a内で回動し得るように決める。
【0019】
前記のごとく所定形状とした成形物に、導電性を付与するためその全面ないし一部に無電解メッキ、導電性塗料、導電性フィルムの接着等によって導電性被膜を形成させアースクリップ1として完成する。
【0020】
図5、図6で示すように、前記構成のアースクリップ1を用い、スプリング部2内側の電線収納領域11に電線(図示省略)を結束して筐体等構造体パネルに取り付ける。取り付けは、電線を結束した後、差込部3をアーチ部4側に押し当てる。このとき、矢じり部5の矢じり5eがアーチ部4の開口部4aを貫通し、次いで首軸5bが挿通して構造体パネル12の取付孔12aに嵌入する。矢じり5eの顎部5fが取付孔12aを貫通し裏側に完全に到達して抜けたとき、矢じり5eが外方に向けて傘状に拡開し逆行を防止することによって、アースクリップ1が構造体パネル12に完全に固定される。すなわち、一旦差し込むと抜けない状態となる。
【0021】
この状態でアースクリップ1と筺体等構造体のパネル12とが堅固かつ完全に固定され、再び引き抜くことができない。なお、電線の重量等によりアースクリップ1に引き抜く方向の力が加わった場合でも、矢じり5eの顎部5fに形成された突起5gにより、矢じり5eが極度に拡開することを阻止するため、矢じりが裂けて破損することがない。
【0022】
本発明のアースクリップ1は、電線等を収束した後筺体等構造体パネル12にワンタッチで容易に、かつ堅固に取り付けることができる。また前記首軸5bに固定ばね5cを形成したことでスプリング機能を発揮するため、筺体等構造物パネル12に取り付けた場合に、金属が露出する取付孔12aの内周壁に向かって首軸5bが強力に突っ張って押接し、アースクリップ1から筐体等構造体パネル12に到るまで、十分な導電性を確保して効果的にアースすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、電線結束用のアースクリップ以外に、各種の線材や紐状物の結束用クリップとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】 本発明の実施例を表わすアースクリップの外形図
【図2】 本発明の実施例を示すアースクリップの左側面図
【図3】 図2に示したアースクリップの矢じり全体部拡大図
【図4】 図3に示した矢じり全体部の首軸部分断面図
【図5】 図2に示したアースクリップを構造体パネルに実装後の状態を表す図
【図6】 図5に示したアースクリップの実装後の矢じり全体部拡大図
【符号の説明】
【0025】
1 アースクリップ
2 C字形スプリング部
3 差込部
4 アーチ形スプリング部
4a 開口
5 矢じり部
5a 付け根部
5b 首軸
5c 固定ばね
5d 先端軸
5e 矢じり
5f 顎部
5g 突起
11 電線収納領域
12 パネル(構造体パネル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を結束する側面視C字形に湾曲するC字形スプリング部と、このC字形底部の延端をアーチ形にしたアーチスプリング部と、前記C字形上部の一端に前記アーチ形部に向かって突起する差込部よりなり、この差込部には本クリップを掛止するにあたりパネル等の取り付け孔を貫通し傘状に拡開して逆行を防止する矢じりを設け、また、前記アーチスプリング部にはこの差込部が通過する開口を設け、本クリップの少なくとも全表面ないし表面の一部に導電層を形成する。
【請求項2】
前記差込部が、首軸およびその先に接続する先端軸と、この先端軸を介して接続する矢じりよりなり、前記首軸断面を外方に張出すスプリング機能を有する固定ばね形状とすることを特徴とする請求項1に記載のアースクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−317629(P2007−317629A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−175841(P2006−175841)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(391020078)日本ジッパーチュービング株式会社 (13)
【Fターム(参考)】