説明

アース端子

【課題】 本発明の目的は、車体回収時にアース線を引っ張るだけで確実に外れ、かつその一部が車体側に残ることなく回収作業を行うことのできるアース端子を提供することにある。
【解決手段】 本発明のアース端子21は、自動車に配索されたワイヤーハーネスに組み込まれたアース線40の端末に接続され、車体に固定用部材41により固定されるアース端子21において、アース端子21の一端にはアース線40の端末部を把持するために折曲げられる電線把持部23が形成され、他端には平面略Jの字状の板状体の先端部22Aが基端部22Bに重なるように折り曲げられて内側に固定用部材41が挿通可能な挿通穴24が設けられた固定用部材締結部22が形成され、かつ固定用部材締結部22はその基端部22B側で電線把持部23と連結部26を介して一体的に形成されていることを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤーハーネスに組み込まれたアース用電線の端部を車体に固定するために用いられるアース端子の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車内に配索されるワイヤーハーネスにはアース用電線が組み込まれており、このアース用電線の端末はアース端子を介して車体の所定位置にボルト等の固定用部材により固定されている。
【0003】
ところで最近では、環境保護意識の高まりの中で資源の有効利用が叫ばれ、自動車業界にあっても自動車を構成する各部品類のリサイクル化が大きな課題になっている。
自動車の場合、車体を構成する鉄系の材料は言うに及ばず、銅系の導電性材料に絶縁体を被覆したワイヤーハーネスもリサイクルの大きな対象になっている。
具体的には、いかに容易にワイヤーハーネスを車体から取り外せるか、そしてワイヤーハーネスを構成する銅系の導電性材料と前述した車体を構成する鉄系の材料とを確実に分離できるか、すなわち、ワイヤーハーネス及びその破片を車体に残すことなく取り外せるか、が大きな課題になっている。
【0004】
この課題への取り組みの一例が、アース端子の改良として特許文献1の中で従来技術として開示されている。このアース端子を図3にて説明する。因みに、図3(a)はアース端子の平面図、図3(b)はその側面図を示している。
このアース端子21の場合、一端にアース用電線40(以下単にアース線という)の端末部を把持するために折曲げられる電線把持部23が形成され、他端にはボルト等の固定用部材が挿通される挿通穴24を有する固定用部材締結部22が形成されていて、これら固定用部材締結部22と電線把持部23とがその幅方向に易断部としてV溝35を有する連結部26を介して一体的に形成されている。
尚、電線把持部23には、前方圧着固定部29と後方圧着固定部30とが設けられていて、前者でアース線40の導体31の部分を、後者でアース線40の絶縁被覆32の部分をそれぞれ圧着して固定するようになっている。
【0005】
このようにしてなるアース端子付きのアース線40を回収する場合、このアース端子21に連結されているアース線40を引っ張れば、前記V溝35でアース端子21が容易に切断され、アース線40を簡単に回収できる、すなわちボルト等の固定用部材を緩めることなく、単にアース線40を引っ張るだけで回収できる、というものである。
しかしながらこの方法の場合、前述したV溝35の先端側に位置する固定用部材締結部22はボルト等の固定用部材とともに車体側に残ってしまう。すなわち銅系の材料が鉄系の材料の中に混入してしまう、という問題がある。
【0006】
そこで特許文献1では前記問題を解決すべく、図4、図5に示すようなアース端子を提案している。因みに、図4(a)はこの改良型のアース端子の平面図、図4(b)はその側面図である。また図5は、図4に示すアース端子を車体にボルトで固定した状態を示す側面図である。
図4、図5が示すように、このアース端子21は全体が一枚の導電性材料、具体的には銅合金製の材料からなる板状体を打ち抜き加工により所定形状に打ち抜いたもので、その一部を折り曲げたり、折り返したりすることにより作製されている。
そしてこのアース端子21は、主としてボルト等の固定用部材41により車体に締結される固定用部材締結部22とアース線40を接続する電線把持部23と、これら固定用部材締結部22と電線把持部23とを連結する連結部26とを有している。
【0007】
ここで固定用部材締結部22には、ボルト等の固定用部材41を貫通させるための開口穴24Bが設けられている。この開口穴24Bは文字通り穴の一部が外部に開放された形状、より具体的には、アース端子21の先端部側に穴の一部が開口していて、このアース端子21がボルト41により車体50に固定されていても、このアース端子21を電線把持部23側にアース線40を介して強く引っ張ると、アース端子21が前記開口穴24Bの開口を介してボルト41から抜けるようになっている。
【0008】
また固定用部材締結部22は、板状体を折り返し部25の部分で谷折りに二つ折りに折り返されて形成された上側部22Aと下側部22Bからなっている。そして上側部22Aの電線把持部23側において、その部位の一部が切除され、またその両側において、板状体が下向きに山折りに折り曲げられ、さらに下側部22Bの側面を覆うように折り曲げられてそれぞれリブ27A、27Bが形成されている。
【0009】
一方、電線把持部23には、前記図3に示したもの同様に、前方圧着固定部29と後方圧着固定部30とが設けられていて、前者でアース線40の導体31の部分を圧着して接続し、後者でアース線40の絶縁被覆32の部分を圧着して接続するようになっている。
このようにしてなるアース端子21は、図5が示すようにボルトの如き固定用部材41によりワッシャ42を介して車体50の所定位置に固定される。
【0010】
そしてこの自動車の解体作業時に、このアース線40側にクレーン等の引上装置のフックを引っ掛け、矢印P方向に引っ張ると、リブ27A、27Bが固定用部材締結部22の下側部22Bを強固に保持しようとする力が加わって、その結果応力が固定用部材締結部22側に集中し、開口穴24Bの前方が開放されていることもあって、アース端子21がボルト等の固定用部材41から抜け、アース端子21の一部が固定用部材41側に残ることなく回収できる、というものである。
【0011】
【特許文献1】特開2003−178825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、自動車走行中の振動等でアース端子21を固定しているボルト等の固定用部材41が緩まないように、アース端子21を車体50に固定する場合、単にボルト等の固定用部材41だけでアース端子21を締め込むのではなく、通常はバネ座金等のワッシャ42を介して締め込んでいるため、実際にはこのワッシャ42からアース端子21への作用力もあって、アース線40を引っ張っただけでアース端子21が固定用部材41から確実に外れるとは限らない、という問題がある。
【0013】
そこで本発明の目的は、車体回収時にアース線を引っ張るだけで確実に外れ、かつその一部が車体側に残ることなく回収作業を行うことのできるアース端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成すべく本発明の請求項1記載のアース端子は、自動車に配索されたワイヤーハーネスに組み込まれたアース用電線の端末に接続され、車体に固定用部材により固定されるアース端子において、該アース端子の一端には前記アース用電線の端末部を把持するために折曲げられる電線把持部が形成され、他端には平面略Jの字状の板状体の先端部が基端部に重なるように折り曲げられて内側に前記固定用部材が挿通可能な挿通穴が設けられた固定用部材締結部が形成され、かつ前記固定用部材締結部はその基端部側で前記電線把持部と連結部を介して一体的に形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
このようにしてなる請求項1記載のアース端子によれば、その一端において、平面略Jの字状の板状体の先端部が基端部に重なるように折り曲げられて内側に前記固定用部材が挿通可能な挿通穴が設けられた固定用部材締結部が形成されているため、ボルト等の固定用部材を前記挿通穴に挿通し、これを締め込んでアース端子を車体に固定すると、ボルトの頭の下面と車体表面との間にアース端子の固定用部材締結部の基端部と先端部が重なった状態で締め込まれることになる。
それ故、車体解体時にアース線を含むワイヤーハーネス側を引っ張った場合、固定用部材締結部の基端部と先端部が重なった部分の重なりが解けて、固定用部材締結部の先端部が固定用部材であるボルトから外れる。その結果、ボルトの頭の下面と車体表面間に隙間ができ、アース端子を締め込んでいたボルトの締め付け力が緩み、ボルトからアース端子が確実に外れるようになる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように本発明によれば、車体回収時にアース線を引っ張るだけで確実に外れ、かつその一部が車体側に残ることなく回収作業を行うことのできるアース端子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に図を用いて本発明のアース端子を詳細に説明する。
図1、図2は本発明のアース端子の一実施例を示すもので、図1は本発明のアース線を得るために銅合金製の板から打ち抜いた所定形状の板状体の平面図、図2は図1で示すものにアース線を装着した状態を示す斜視図である。
【0018】
図1、図2が示す本発明のアース端子21は、銅合金製の導電性金属材料からなる板から図1が示すような形状の板状体を打ち抜き加工により打ち抜いたもので、先端側には固定用部材締結部22を形成する部分が、後端側には電線把持部23を形成する部分がそれぞれ形成されていて、しかも固定用部材締結部22を形成する部分の基端部22B側と電線把持部23を形成する部分とが連結部26を介して一体的に形成されている。
図2が示すように電線把持部23には従来のものと同様に、前方圧着固定部29と後方圧着固定部30とが設けられていて、前者でアース線40の導体31の部分を加締めて接続し、後者でアース線40の絶縁被覆32の部分を加締めて接続する。
ここで符号45はアース線40の導体31を電気的に確実に接続できるように端子幅方向に直線状に形成された凹凸状の谷または山で、必要により設けられるものである。
【0019】
本発明のアース端子21の特徴は、前記固定用部材締結部22にある。具体的には、固定用部材締結部22は図1が示すように平面略Jの字状の形状、換言すると釣り針状の形状に打ち抜き加工されていて、この固定用部材締結部22の内側に形成されている固定用部材取付け用開口穴24Aはアース端子21の連結部26側で外部に向かって穴の一部が開口された状態になっている。
そして図1が示している平面略Jの字状の板状体の状態にあるものを、実際にアース端子21として使用する場合には、図2が示すように電線把持部23側に従来と同様にしてアース線40を加締める等して固定する。
一方、固定用部材締結部22については、その先端部22A、すなわち釣り針に例えた場合、針の先端部に相当する部分を、図2が示すように固定用部材締結部22の基端部22Bと一部重なるように折り曲げ、内側にボルト等の固定用部材が挿通可能な挿通穴24を形成する。
【0020】
具体的に、図2が示すアース端子21をボルトで車体の所定個所に固定する場合には、ボルトを挿通穴24に通し、ボルトの頭の下面で固定用部材締結部22の先端部22Aと基端部22Bとが重なった部分を抑えつけるようにボルトを締め込んで、アース端子21を車体に固定すればよい。もし必要ならバネ座金等のワッシャを用いてもよいが、前述した固定用部材締結部22の先端部22Aと基端部22Bとが重なった部分がバネ座金の役割を果たすので、あえて図5が示す従来のアース端子21の場合のようにワッシャ42を用いなくともよい。
【0021】
このように車体の所定個所に固定したアース端子21を、車体解体時、車体から分離して回収する場合には、アース端子21の電線把持部23に接続されているアース線40(ワイヤーハーネス)にフック等を引っ掛けて引っ張れば、アース端子21の固定用部材締結部22が引っ張られ、その際固定用部材締結部22の先端部22Aが基端部22Bから滑り落ち、重なっていた部分が解消される。
その結果、固定用部材締結部22の先端部22Aの厚さ分だけ、ボルトとの間に隙間ができ、ボルトの締め付け力から固定用部材締結部22の部分が開放され、さらにこの状態でアース線40を引っ張れば、固定用部材締結部22の先端部22Aが伸びてボルトからアース端子21が確実に抜ける。
【0022】
以上のように本発明のアース端子21を用いれば、車体解体時、アース線40を含むワイヤーハーネスの回収が極めて容易、かつ確実に行うことができる。しかもアース端子21の一部がボルト部分に残ることもないので、車体側の鉄系材料の中にワイヤーハーネス側の銅系の材料が混入することもない。仮に最悪、固定用部材締結部22の先端部22Aが一部千切れたとしても、前述したようにボルトとアース端子21の固定用部材締結部22との間には隙間ができ、既にボルトの締め付け力はなくなっている状態にあるため、千切れた部分はボルトの部分に挟まって残ることなく、車体から離れて落下する。それ故、この場合にも車体側とアース端子21とは確実に分離され、鉄系の材料の中に銅系の材料が混じることはない。
【0023】
さらに前述したように本発明のアース端子の場合、固定用部材締結部22の先端部22Aと基端部22Bとが重なった部分がボルトに対してバネ座金の役割を果たすので、あえてワッシャを用いなくともよい。その場合、このアース端子21を車体に固定する際、必要な部品点数が少なくて済む、という利点もある。
【0024】
以上述べたように、本発明のアース端子によれば、車体回収時にアース線を引っ張るだけで確実に、かつアース端子の一部が車体側に残ることなく回収作業を行うことのできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のアース端子の一実施例を示すもので、本発明のアース端子を得るために打ち抜いた板状体の平面図である。
【図2】本発明のアース端子にアース線を接続した状態を示す斜視図である。
【図3】従来のアース端子の一例を示すもので、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図4】従来の別のアース端子を示すもので、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【図5】図4に示す従来のアース端子を実際に車体に装着した状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0026】
21 アース端子
22 固定用部材締結部
22A 固定用部材締結部の先端部
22B 固定用部材締結部の基端部
23 電線把持部
24 挿通穴
24A 固定用部材取付け用開口穴
40 アース線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に配索されたワイヤーハーネスに組み込まれたアース用電線の端末に接続され、車体に固定用部材により固定されるアース端子において、該アース端子の一端には前記アース用電線の端末部を把持するために折曲げられる電線把持部が形成され、他端には平面略Jの字状の板状体の先端部が基端部に重なるように折り曲げられて内側に前記固定用部材が挿通可能な挿通穴が設けられた固定用部材締結部が形成され、かつ前記固定用部材締結部はその基端部側で前記電線把持部と連結部を介して一体的に形成されていることを特徴とするアース端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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