説明

アース線取付金具

【課題】ボルトやナット、タッピンネジ等の連結部材やこれらに使用する工具等を一切使用することなく、狭いスペースでもワンタッチで接地工事を行えるアース線取付金具を提供する。
【解決手段】弾性を有する導電性の板材にて、被接地板材Pの板面を挟着せしめる一対の挟着部1を形成する。該挟着部1のいずれか一方又は両方に、被接地板材Pの表面を傷付ける爪2を突設する。該挟着部1の一方の開放端部にアース線Qを連結せしめる連結部3を屈曲形成する。挟着部1の開放端部に、該開放端部を拡開して前記被接地板材Pの端部を導入せしめる導入部4を屈曲形成する。該導入部4の被接地板材Pがわに被接地板材Pの表面を傷付ける前記爪2を突設する。連結部3に差込タブ端子5を複数個形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接地工事に用いる接地用ビニール絶縁電線等からなるアース線を取り付ける際に使用するアース線取付金具に係り、特に、狭い場所でも取付作業が容易なアース線取付金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アース線を取り付ける手段として、例えば、導電性を有する被接地部材に取付孔を開穿し、ボルト及びナットを使用してアース線を固定する手段がある。
【0003】
当出願人は先に、造営材や筋金物等の被接地部材への取付位置に孔明け加工が不要なアース線取付金具を提案している(特許文献1)。この取付金具は、角筒状の金具本体に造営材や筋金物を挟み込むための挟込口を設け、この挟込口に挟み込んだ造営材や筋金物を取付ボルトで固定し、この取付ボルトにアース線を連結する構造である。
【0004】
一方、太陽電池アレイの接地工事のように狭いスペースでの接地工事には、アース線をタッピンネジで被接地部材に直接取り付けるか、若しくは、アース線の代わりとなる金属プレートをタッピンネジで直接取り付ける接地工事が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平6−22936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
太陽電池アレイの接地工事のように、作業スペースが限られている場所での接地工事には、従来の取付金具のように取付孔を開穿し、ボルト及びナットを使用してアース線を固定する作業は極めて困難な作業になる。
【0007】
また、孔明け加工が不要な特許文献1の取付金具は、主な被接地部材として鉄骨等の造営材やトンネル内の筋金物にアース線を取り付ける際に使用するものである。そのため、この取付金具自体のサイズが大きく嵩張るものであるため、限られたスペースでの接地工事には使用することはできないものであった。
【0008】
更に、太陽電池アレイの接地工事では、傾斜のある折板屋根の上に設置した太陽電池アレイの下面にもぐり込んで接地するなど、狭い接地スペースに加え、取り付け作業の環境も厳しい状態で行われている。そのため、アース線や金属プレートをタッピンネジで取り付ける際に、このタッピンねじを落としてしまうことも少なくない。しかも、近年の太陽電池アレイ用架台は、軽量化、簡素化が求められ、作業スペースが益々狭くなる傾向にあり、取付け作業の困難性も増している。
【0009】
そこで、本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、ボルトやナット、タッピンネジ等の連結部材やこれらに使用する工具等を一切使用することなく、狭いスペースでもワンタッチで接地工事を行えるアース線取付金具の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、導電性を有する被接地板材Pにアース線Qを電気的接続するアース線取付金具であって、
弾性を有する導電性材にて被接地板材Pの板体端部から差し込んで板面を挟着せしめる一対の挟着部1を一体形成し、
該挟着部1のいずれか一方又は両方に、被接地板材Pの表面を傷付ける爪2を突設すると共に、該挟着部1の一方の開放端部にアース線Qを連結せしめる連結部3を屈曲形成したことにある。
【0011】
第2の手段は、前記挟着部1の前記連結部3を形成していない開放端部に、該開放端部を拡開して前記被接地板材Pの端部を導入せしめる導入部4を屈曲形成すると共に、該導入部4の被接地板材Pがわに被接地板材Pの表面を傷付ける前記爪2を突設したものである。
【0012】
第3の手段は、前記連結部3に差込タブ端子5を複数個形成し、前記アース線Qに差込形接続端子Q1を設けたことを課題解消のための手段とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1によると、被接地板材Pの端部から差し込んで板面を挟着せしめる一対の挟着部1を形成し、該挟着部1のいずれか一方又は両方に、被接地板材Pの表面を傷付ける爪2を突設すると共に、該挟着部1の一方の開放端部にアース線Qを連結せしめる連結部3を屈曲形成したことにより、狭いスペースでも挟着部1で被接地板材Pを挟みこむだけで簡単に接地工事が完了する。したがって、ボルトやナット、タッピンネジ等の連結部材やこれらに使用する工具等を一切使用することなく、ワンタッチで接地工事を行えるものである。
【0014】
また、請求項2により、挟着部1の開放端部に、該開放端部を拡開して前記被接地板材Pの端部を導入せしめる導入部4を屈曲形成しているので、挟着部1の取付け作業が極めて容易になる。しかも、導入部4の被接地板材Pがわに被接地板材Pの表面を傷付ける前記爪2を突設しているので、被接地板材Pの板面に効果的に傷を付けることができる。
【0015】
請求項3に記載のごとく、連結部3に差込タブ端子5を複数個形成したことで、差込形接続端子Q1を備えたアース線Qの連結作業が簡単に行えるから、例えば太陽電池アレイの接地工事のごとく、狭いスペースでも簡単に接地工事を行えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明の使用状態を示す側面図である。
【図3】(イ)乃至(ニ)は本発明の連結片の他の実施例を示す斜視図である。
【図4】本発明を太陽電池アレイに使用する例を示す概略図である。
【図5】本発明を太陽電池アレイ設置工事に使用する例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明によると、ボルトやナット、タッピンネジ等の連結部材やこれらに使用する工具等を一切使用することなく、狭いスペースでもワンタッチで接地工事を行えるなどといった当初の目的を達成した。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例を説明する。本発明取付金具は、接地用ビニール絶縁電線等からなるアース線を、導電性を有する被接地板材に電気的接続する際に使用するアース線取付金具を改良したものである。
【0019】
本発明取付金具は、金属板等の弾性を有する導電性の板材等にて一体形成するもので、この板体を屈曲して一対の挟着部1を形成している(図1参照)。この挟着部1は、被接地板材Pの板体端部から強制的に差し込んで板面を挟着し、被接地板材Pにワンタッチで取付ける部材である。図示例の挟着1は、金属板を折り曲げて形成しているが、弾性を有する導電性材なら金属板に限らず、杆状、パイプ状などの部材を折り曲げて挟着部1を形成することも可能である。
【0020】
この挟着部1を被接地板材P端部に差し込む際に、被接地板材Pの表面を傷付ける爪2を突設している。この爪2は、被接地板材Pの表面に錆や塗料等が付着していた場合に、これらの錆等を除去して電気的接続を確実にするものである。図示例の爪2は、一方の挟着部1の側縁部に切り込みを設け、この切り込み部分を屈曲して鋭角状の爪2を一対形成している(図1参照)。爪2の数や形状、設置位置等は図示例に限られるものではなく、両方の挟着部1に形成することも可能であり、後述するように導入部4に形成してもよい。
【0021】
導入部4は、挟着部1の一方の開放端部に、該開放端部を拡開して前記被接地板材Pの端部を導入せしめるものである(図2参照)。実施例では、挟着部1の一方の開放端部から導入部4を延長して屈曲形成したもので、この導入部4の被接地板材Pがわの挟着部1端部に切り込みを設け、導入部4から被接地板材P方向に突出する爪2を設けている。そして、導入部4から被接地板材Pの端部に差し込んだときに、導入部4の爪2で被接地板材Pの表面に傷を付けるように構成している。
【0022】
更に、挟着部1のもう一方の開放端部にアース線Qを連結せしめる連結部3を屈曲形成している。この連結部3にアース線Qを連結するものであるが、アース線Qと連結部3との連結作業は、被接地板材Pに挟着部1を装着する前後を問わない。
【0023】
実施例では、連結部3に差込タブ端子5を複数個形成している。そして、差込形接続端子Q1を設けたアース線Qを使用することで、被接地板材Pに挟着部1を装着した後でも簡単にアース線Qを連結することが可能になる。すなわち、太陽電池アレイの接地工事のような狭い場所において、挟着部1を被接地板材Pに装着した後でもアース線Qをワンタッチで連結することができるものである(図4参照)。また、図示していないが、予め連結部3にアース線Qを連結した状態で被接地板材Pに装着することも可能である。
【0024】
図示の連結部3は、3個の差込タブ端子5を連設している。この差込タブ端子5は、例えば、太陽電池アレイを設置する工事のように、太陽電池を隙間なく設置するときに、一つの太陽電池に取付けた取付金具から周辺の残り3枚の太陽電池に電気的接続を図ることが可能になる(図5参照)。
【0025】
また、差込タブ端子5の形状や数は任意に変更することが可能である。図3(イ)乃至(ニ)に示す差込タブ端子5は、差込タブ端子5の他の実施例を示している。すなわち、(イ)の如く同じ長さの差込タブ端子5を同一方向に屈曲した例や、(ロ)の如く差込タブ端子5の長さを変えた例、(ハ)の如く差込タブ端子5の向きを変えた例や、(ニ)の如く実施例とは逆方向に屈曲した例などである。尤も、差込タブ端子5を連結部3に設けるか否かの選択も任意であり、他の連結手段を連結部3に設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の実施例において、挟着部1、爪2、連結部3、導入部4の形状や構成、あるいは本発明を使用して連結するアース線Qの組合せは図示例に限定されるものではない。また、挟着部1で挟着する被接地板材Pは、被接地板材Pに限らず、他の被接地材に金属プレート等を取付け、この金属プレート等を挟着部1で挟着することも可能である。
【符号の説明】
【0027】
P 被接地板材
Q アース線
Q1 差込形接続端子
1 挟着部
2 爪
3 連結部
4 導入部
5 差込タブ端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する被接地板材にアース線を電気的接続するアース線取付金具であって、弾性を有する導電性材にて被接地板材の板体端部から差し込んで板面を挟着せしめる一対の挟着部を一体形成し、該挟着部のいずれか一方又は両方に、被接地板材の表面を傷付ける爪を突設すると共に、該挟着部の一方の開放端部にアース線を連結せしめる連結部を屈曲形成したことを特徴とするアース線取付金具。
【請求項2】
前記挟着部の前記連結部を形成していない開放端部に、該開放端部を拡開して前記被接地板材の端部を導入せしめる導入部を屈曲形成すると共に、該導入部の被接地板材がわに被接地板材の表面を傷付ける前記爪を突設した請求項1記載のアース線取付金具。
【請求項3】
前記連結部に差込タブ端子を複数個形成し、前記アース線に差込形接続端子を設けた請求項1記載のアース線取付金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−174583(P2012−174583A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37015(P2011−37015)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000136686)株式会社ブレスト工業研究所 (74)
【Fターム(参考)】