説明

アームレストを備えた車両用シート

【課題】簡単且つ軽量な構成であると共に、シートバックの位置に依存せず、アームレストを最適な位置に保持することが可能なアームレストを備えた車両用シートを提供する。
【解決手段】本発明の車両用シートSは、シートクッションS2と、該シートクッションにリクライニング機構Rを介して連結されるシートバックS1と、アームレストA1とを備えている。アームレストA1は、アームレスト本体11と、該アームレスト本体11の一端側に係止されて該アームレスト本体11を支持するステー12と、を有し、ステー12は、シートクッションS2の側面に回動可能に軸支され、シートバックS1の傾倒動作と独立して回動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームレストを備えた車両用シートに係り、特にリクライニング機構によりシートバックが傾倒した状態であっても、アームレストを最適な位置に保持可能なアームレストを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいて、例えば、図12に示すように、アームレストA′がシートバックS1′に対して回動可能に取り付けられた構成のものが知られている。このような車両用シートにおいて、アームレストA′は、上方へ回動させてシートバックS1′の側方に沿わせることができる。しかしながら、図13に示すように、アームレストA′を備えた車両用シートにおいてリクライニング機構R′をさらに備えた車両用シートS′は、一般に、アームレストA′が下方へ回動する動きが規制されているため、シートバックを後方へ傾倒させたとき、シートバックS1′に対するアームレストA′の角度が保持される。
【0003】
その結果、アームレストA′は、シートバックS1′の傾倒に伴って上方に持ち上げられてしまい、アームレストA′に乗員が腕を載せる際、アームレストA′の位置が高く、快適性が損なわれることがあった。
【0004】
このように、シートバックの傾倒に伴ってアームレストが上方に持ち上がり、着座時の快適性が低下するという問題点に対し、特許文献1には、シートクッションフレームと、シートバックフレームと、アームレストと、アームレストの先端に取り付けられたアームと、によって平行四辺形の平行リンク機構を形成する構成を備えたアームレスト付きリクライニングシートが開示されている。
【0005】
特許文献1において開示されたリクライニングシートにおいては、アームレストとシートクッションフレームとが略平行となるように、アームレストの前端に軸支されたアームがシートクッションフレームに軸支される一方、アームレストの後端がシートバックフレームに軸支されている。この構成により、シートバックの後傾に伴ってアームレストの後端が後方に引っ張られる動きとなるが、アームレストに取り付けられたアームによってアームレストが略水平に保持される。したがって、シートバックを傾倒させた場合であっても、アームレストが略水平に保持されるため、乗員が腕を載せやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭60−113227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1で開示されたリクライニングシートは、アームレストとシートクッションとが平行に保持されるため、乗員は自然な状態で腕をアームレストに載せることができ、快適な着座感を得ることができる。
【0008】
しかし、特許文献1のシートクッションは、アームレストの後端がシートバックフレームに軸支され、さらにアームレスト前端はアームを介してシートクッションフレームに軸支される構成であり、その構成が複雑である。そして、部品点数が多くなることから、シートの製造工程が煩雑になるという問題点があった。
【0009】
また、特許文献1において、アームレストは、アームレストをシートバック側面まで回転させ、シートバック側面に沿わせるようにして収納される。したがって、アームレストは、収納時にシートバックの上方から突出しない程度の長さで形成されるため、長さを十分に確保することが難しい。その結果、乗員はアームレストに腕の全体を載せることができない場合があり、十分な快適性を得られないという問題点があった。
【0010】
さらに、特許文献1において、アームレストを収納する時は、シートバック側面にアームレストを沿わせることにより収納するため、アームレストが常に視認され、外観が良好でなくなるという不都合があった。
【0011】
本発明の目的は、簡単且つ軽量な構成であると共に、シートバックが傾倒した場合であってもアームレストを最適な位置に保持して快適な着座感を得ることが可能なアームレストを備えた車両用シートを提供することにある。また、本発明の他の目的は、アームレストの長さを十分に確保し、快適な着座感を得ることが可能なアームレストを備えた車両用シートを提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、アームレストの収納時、外観性を損なうことなく収納可能なアームレストを備えた車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題は、本発明のアームレストを備えた車両用シートによれば、シートクッションと、該シートクッションにリクライニング機構を介して連結されるシートバックと、アームレストとを備えた車両用シートであって、前記アームレストは、アームレスト本体と、該アームレスト本体の一端側に係止されて該アームレスト本体を支持するステーと、を有し、該ステーは、前記シートクッションの側面に回動可能に軸支され、前記シートバックの傾倒動作と独立して回動すること、により解決される。
【0013】
このように、本発明のアームレストを備えた車両用シートは、シートクッションの傾倒動作に伴ってアームレストが独立して回動する。したがって、リクライニング機構によってシートバックが傾倒しても、アームレストの位置は変化しないため、乗員の腕を載せる位置が変化せず、常にアームレストが最適な位置に保持される。
また、シートクッションの側面に回動可能に取り付けられたステーにより、アームレストは、シートクッションの側面に沿って収納可能である。したがって、アームレストの収納時、目視しにくい箇所にアームレストが収納されるため、外観の良い車両用シートとすることができる。
【0014】
このとき、請求項2のように、前記アームレスト本体は、前記シートバックに係止されていない構成であると好ましい。
このように、アームレスト本体がシートバックに係止された構成ではないため、アームレストはシートバックの傾倒動作に対して独立に回動可能であり、さらにアームレストの構成を簡素化することができる。
したがって、アームレスト本体をシートバックに対して係止するための係止部材を必要としないため、シート全体の重量を低減することができる。また、部品点数が増加することがないため、車両用シートの組み立て作業工程を簡素化することが可能である。
【0015】
また、このとき、請求項3のように、前記アームレスト本体は、前記ステーに対し回動可能に取着されてなると好適である。
このように、ステーに対してアームレスト本体が回動可能であると、アームレストの収納時、さらにアームレストを小型化して収納することができ、収納性が向上する。また、アームレストの収納時、アームレストが小型化されるため、アームレスト本体の長さを大きく確保することができる。
【0016】
さらにまた、請求項4のように、前記アームレスト本体は、前記ステーに対し該ステーの長手方向に沿ってスライド可能に取着されてなると好ましい。
このように、アームレスト本体がステーの長手方向に沿ってスライド可能であると、アームレストの収納時、さらに省スペース化することができる。したがって、アームレストの収納時の外観性を損なうことがない。
【0017】
また、請求項5のように、前記ステーは、前記シートクッションの側面に沿って摺接し、前記ステーの長手方向に沿ってスライド可能に取着されてなると好適である。
このように、ステーがシートクッションの側面に摺接して、ステーの長手方向に沿ってスライド可能とすると、アームレストの収納時、より省スペース化することができる。
【0018】
このとき、請求項6のように、前記ステーは、前記シートクッションの前後方向略中央部に軸支されてなると好適である。
このように、シートクッションの前後方向において、中央部よりも前方にステーを軸支することにより、アームレスト本体の長さを十分に確保することができる。すなわち、アームレスト本体を前方から後方に延設することにより、乗員の腕を支持する部分が大きく確保することができる。
さらに、リクライニング機構を備えた車両用シートにおいて、一般に、シートクッションの後方側は、リクライニング機構の幅により、側方に突出した形状となることが多い。したがって、アームレストのステーをシートクッションの前方に配設することにより、シートクッションの幅方向において狭い部分(リクライニング機構の端部よりも内側に入った部分)にアームレストが配設される。その結果、アームレストが側方に突出することなく、シート全体としての幅を小さくすることができる。
また、ステーをシートクッションの前後方向の略中央部を避けて配設することにより、シートクッションの前後方向の略中央の側面に、カップホルダ等のその他の物品を配設する空間が確保される。したがって、乗員の着座感をより良好にすることができる。
【0019】
このとき、請求項7のように、前記アームレストが使用状態にあるとき、前記アームレスト本体の肘掛け面は、水平に保持されると好ましい。
このように、本発明の車両用シートにおいては、アームレストがシートバックの傾倒動作に追従しないため、常にシートバックの動きと独立して使用状態を保持することができる。そして、アームレストが使用状態であるとき、アームレスト本体の肘掛け面が水平に保持可能であるため、乗員はシートバックの傾斜角度を調整した場合であっても、アームレストを常に最適な位置及び状態で使用することができる。
【0020】
このとき、請求項8のように、前記シートバックが最大傾倒位置にあるとき、前記アームレストは、前記シートバックの最も高い位置よりも下方に収納されると好適である。
本発明の車両用シートは、シートバックとアームレストが連動しないため、シートバックを最も傾倒させた状態でアームレストを収納するとき、アームレストがシートバックの最も高い位置よりも下方に収納される。したがってアームレストがシートバックから上方に突出することがないため、アームレストの収納性が良好である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の発明によれば、シートバックの傾倒動作に依存せず、アームレストの位置を常に最適な状態で保持できるため、着座感の良好な車両用シートを提供することができる。また、アームレストがシートクッションの側方に収納可能であるため、外観の良い車両用シートを提供することができる。
請求項2の発明によれば、構成が簡単であり、軽量な車両用シートとすることができる。
請求項3の発明によれば、アームレストの収納時、アームレストを小型化して収納可能であるため、収納性がよい。さらに、アームレストの長さを確保することができるため、着座感が良好な車両用シートを提供することができる。
請求項4の発明によれば、アームレストの収納箇所を小さくすることができるため、収納性がさらに高く、外観性の良い車両用シートを提供することができる。
請求項5の発明によれば、アームレストの収納性がより高い車両用シートを提供することができる。
請求項6の発明によれば、乗員が腕を載せることが可能な範囲を十分に大きく確保することができ、着座性が良好な車両用シートとすることができる。
請求項7の発明によれば、シートバックの傾斜角度に依存せず、乗員が腕を載せる部分が水平に保持されるので、乗員は快適な着座感を得ることが可能な車両用シートとすることができる。
請求項8の発明によれば、アームレストの収納時、シートバックからアームレストが突出することなく、収納性の良好な車両用シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態1に係る車両用シートの概略斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係るアームレストとシートクッションの分解説明図である。
【図3】本発明の実施形態1に係るアームレストの使用状態と収納状態の説明図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る車両用シートのシートバック傾倒時の側面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る車両用シートの平面図である。
【図6】本発明の実施形態2に係るアームレストの概略斜視図である。
【図7】本発明の実施形態2に係るアームレストの使用状態と収納状態の説明図である。
【図8】本発明の実施形態3に係るアームレストの概略斜視図である。
【図9】本発明の実施形態3に係るアームレストの使用状態と収納状態の説明図である。
【図10】本発明の実施形態4に係るアームレストの概略斜視図である。
【図11】本発明の実施形態4に係るアームレストの使用状態と収納状態の説明図である。
【図12】従来例に係るアームレストを備えた車両用シートの概略斜視図である。
【図13】従来例に係るアームレストを備えた車両用シートの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることはもちろんである。また、本明細書において、車両とは、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物、地上以外を移動する航空機や船舶など、シートを装着できる移動用のものをいうものとする。
さらに、本明細書における方向を示す用語に関し、図1のように各方向を定義する。すなわち、左右方向とは、車両用シートの幅方向を示し、着座した乗員から見て左側を左方向、着座した乗員から見て右側を右方向とする。また、前方向とは、着座した乗員から見て前方を指すものであり、後方向とは、着座した乗員から見て後方を指すものである。
【0024】
図1乃至図5は本発明の実施形態1に係るもので、図1は車両用シートの概略斜視図、図2はアームレストとシートクッションの分解説明図、図3はアームレストの使用状態と収納状態の説明図、図4は車両用シートのシートバック傾倒時の側面図、図5は車両用シートの平面図であり、図6及び図7は本発明の実施形態2に係るもので、図6はアームレストの概略斜視図、図7はアームレストの使用状態と収納状態の説明図であり、図8及び図9は実施形態3に係るもので、図8はアームレストの概略斜視図、図9はアームレストの使用状態と収納状態の説明図であり、図10及び図11は実施形態4に係るもので、図10はアームレストの概略斜視図、図11はアームレストの使用状態と収納状態の説明図である。また、図12及び図13は従来例に係るもので、図12はアームレストを備えた車両用シートの概略斜視図、図13はアームレストを備えた車両用シートの概略側面図である。
【0025】
(実施形態1)
図1乃至図5を参照して、実施形態1に係るアームレストA1を備えた車両用シートSについて説明する。
車両用シートSは、図1で示すように、シートバックS1、シートクッションS2、アームレストA1より構成されており、シートバックS1及びシートクッションS2はシートフレームにクッションパッド1a,2aを載置して、表皮材1b,2bで被覆されている。なお、図1において、アームレストA1は、使用時の状態となっている。
【0026】
車両用シートSのシートフレームは、シートバックS1を構成するシートバックフレーム(不図示)、シートクッションS2を構成する着座フレームFから構成されている。
シートバックS1は、シートバックフレームに、上述のようにクッションパッド1aを載置して、クッションパッド1aの上から表皮材1bにより覆われており、乗員の背中を後方から支持するものである。
【0027】
シートクッションS2は、着座フレームFに、上述のようにクッションパッド2aを載置して、クッションパッド2aの上から表皮材2bによって覆われており、乗員を下方から支持する構成となっている。また、シートクッションS2は、表皮材2bによって被覆されたクッションパッド2aの側方にカバーCを備えている。
【0028】
着座フレームFは脚部で支持されており、この脚部には、インナレールが取り付けられ、車体フロアに設置されるアウタレールとの間で、前後に位置調整可能なスライド式に組み立てられている。
着座フレームFの後端部は、リクライニング機構Rを介してシートバックフレーム(不図示)と連結されている。
リクライニング機構Rは、シートバックS1をシートクッションS2に対して傾動可能に支持するものであれば、公知の構成を用いることができる。
【0029】
本実施の形態において、アームレストA1は、車両用シートSの側部に配設されており、シートクッションS2(より詳細には、シートクッションS2を構成する着座フレームF)の側面に取り付けられている(図2参照)。なお、本実施形態では、アームレストA1はカバーCを介して着座フレームFに取り付けられた構成を示すが、クッションパッド2a及び表皮材2bをさらに介して着座フレームFに取り付けられた構成としても良い。
【0030】
また、アームレストA1は、着座フレームFに直接取り付けられていても良いし、乗員の腕を支持できる十分な剛性を備えていれば、カバーCに取り付けられていてもよい。ただし、以下に示すように、着座フレームFに対して軸部材13を係止する構成とすると、係止する部分の剛性が高く、強固にアームレストA1を保持することができるため、特に好適である。
【0031】
アームレストA1は、アームレスト本体11と、アームレスト本体11に固着されたステー12と、軸部材13とを備えている。アームレスト本体11は、長尺部材であって乗員の腕を支持するものであり、金属製の芯材によって支持されたパッド材がトリムカバー等の加飾部材によって被覆されている。そして、アームレスト本体11の側面11a(シートクッションS2側の面)には、平板状の長尺部材からなるステー12の上端部が固着されており、アームレスト本体11の長手方向と、ステー12の長手方向とは、互いに略垂直に交わるように固定されている。このとき、アームレスト本体11の肘掛け面11bよりも、ステー12の上端が突出しないようにステー12が取り付けられる。
【0032】
ステー12は、アームレスト本体11の芯材に固定されている。そして、ステー12は、乗員の荷重に耐えうる剛性を備えていればよく、金属や樹脂等によって形成される。また、ステー12は、外観性向上のためや着座感の向上のため、クッション材や表皮材で覆われた構成としても良い。
【0033】
使用状態(図1の状態)のアームレストA1において、アームレスト本体11の前端部は、ステー12の上端部に係止(固着)されている。一方、アームレスト本体11の後端は、他の部材に係止されておらず、自由端となっている。なお、本実施形態において、アームレスト本体11とステー12は、側面視略L字状に形成されているが、アームレストA1の肘掛け面11bが水平に配設可能であれば、側面視略V字状に形成されていても良い。
【0034】
ステー12は、その下端部に係止孔12aが形成されており、この係止孔12aに軸部材13が挿通される。この軸部材13は、さらにカバーCに形成された係止孔Ca、着座フレームFに形成された係止孔Faに挿通される。そして、係止孔Fa側に配設される嵌合部材14と軸部材13を嵌合させることにより、アームレストA1がシートクッションS2(より詳細には、着座フレームF)に対して密着し、シートクッションS2の側面に沿って前後方向に回動可能に軸支される。
なお、図2においては図示していないが、着座フレームFとカバーCとの間にクッションパッド2aと表皮材2bとが介在していても良い。
【0035】
軸部材13及び嵌合部材14は、例えば、ピボット軸やプレーン軸等を用いることができ、アームレストA1が前後方向に回動可能に取り付けられる構成であれば、公知の構成を用いることができる。なお、アームレストA1の使用時、ステー12が前方及び後方へ回転することがないように、シートクッションS2またはアームレストA1には、それぞれの方向に対する回転ストッパ(不図示)が備えられている。この回転ストッパの構成は、公知の構成が用いられる。
【0036】
次に、アームレストA1の収納時の動作について、図3を参照して説明する。図3(a)には、使用状態を実線、収納状態を二点鎖線で示している。なお、アームレストA1を収納状態から使用状態に復帰させるには、以下に説明する動作と逆の動作が行われる。
【0037】
アームレストA1は、図3(a)に示すように、ステー12がシートクッションS2の側面に対して回動可能に取り付けられている。そして、アームレスト本体11がシートバックS1に係止されていないため、ステー12は、シートバックS1の傾倒動作に独立して回動可能である。
【0038】
したがって、アームレストA1の収納時、上記の回転ストッパを解除すると、ステー12は、前方に向かって回転可能である。なお、図3(b)ではステー12が水平になるまで回転した収納状態の様子を示しているが、後述するように、前端側(アームレスト本体11が取り付けられた側)がさらに下方になるように回転しても良い。
【0039】
一方、使用状態にあるとき、アームレストA1の後方側への回転は、不図示の回転ストッパによって阻止される。このとき、回転ストッパが着座フレームFに備えられていると、安定してステー12の回転を阻止できるため、好適である。
【0040】
アームレストA1の使用状態において、ステー12は、後方への回転ストッパだけでなく、前方への回転を阻止する回転ストッパによってもその回転が禁止されているため、ステー12はその長手方向が略垂直になるように固定される。その結果、アームレスト本体11の肘掛け面11bが略水平に配設される。
【0041】
上記のように、本発明の車両用シートSは、アームレスト本体11がシートバックS1に係止されておらず、アームレストA1がシートクッションS2のみに係止された構成である。したがって、シートバックS1が傾倒した場合であっても、アームレストA1(より詳細には、アームレストA1に備えられたステー12)がシートバックS1の傾倒動作と独立しており、シートバックS1の動きに追従しないため、アームレストA1を常に最適な位置に保持することができる。
【0042】
またアームレストA1は、上記のように、前方に傾倒させることができるため、収納性が良好であり、さらに外観を損なうことがない。そして、図4に示すように、シートバックS1を最大限に後傾させた時(すなわち、シートバックS1が最大後傾位置にある時、フルフラット時)であっても、アームレストA1を収納する際、アームレストA1が、シートバックS1の最も高い位置よりも下方になるようにアームレストA1を収納することができる。したがって、アームレストA1(より詳細には、アームレスト本体11が)がシートバックS1の最も高い位置(図4の線Y)よりも上方に突出することなく収納可能であるため、収納性に優れている。
【0043】
アームレストA1のステー12は、アームレストA1の使用状態において、シートクッションS2の前後方向略中央部(図3の線X)よりも前方に配設されている。一般に、シートクッションS2に備えられるカバーCの後方は、リクライニング機構Rを保護するため、シート側方に膨出して形成されている(図5参照)。したがって、カバーCの膨出部分(シート後方側)にステー12を取り付けるのではなく、前方に取り付ける構成とすることにより、ステー12がカバーCの膨出部分よりも内側に配設される。その結果、アームレストA1を含む車両用シートSの全体としてのシート幅が大きくなることが無く、好適である。なお、図5のように、真上から見た際、アームレストA1が取り付けられる位置において、カバーCの表面がクッション材2aよりも内側に位置する場合は、ステー12がシートクッションS2側面(より詳細には、表皮材2b)に摺接するように、軸部材13をシートクッションS2の側方から若干突出するように取り付けられていると良い。
【0044】
また、ステー12を前後方向略中央部に取り付けるのではなく、前方に備えることにより、アームレストA1において、乗員の腕を載せる範囲(すなわち、アームレスト本体11の長さ)を大きく確保することができるため、好適である。
【0045】
さらに、ステー12を前方に配設し、アームレストA1の収納時、ステー12が後方ではなく、前方に回転する構成とすることにより、シートクッションS2の前後方向略中央部に空間Pが常に確保される。したがって、この空間Pにカップホルダ等、他の物品を配設することができる(図3参照)。
【0046】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係るアームレストA2に関し、図6及び図7を参照して、以下説明する。
実施形態2のアームレストA2を備えた車両用シートSは、上記実施形態のアームレストA1とは異なる構成のアームレスト本体111及びステー112を備えている点を特徴とする。なお、その他の構成は、上記実施形態の車両用シートSと共通するため、その説明を省略する。
【0047】
実施形態2のアームレストA2は、アームレスト本体111が、ステー112に対して回動可能に軸支されている点を特徴としている。
アームレスト本体111には、支軸15が備えられており、支軸15は、アームレスト本体111の短手方向(幅方向)に沿って嵌合され、アームレスト本体111に対して固定されている。
【0048】
そして、支軸15の一端は、ステー112の上端部に形成された略円形状の貫通孔112bに挿通されており、アームレスト本体111はステー112に対して回動可能なように軸支されている。より詳細には、アームレストA2が使用状態にある時(図6(a)の状態)において、支軸15は、アームレスト本体112の前端に挿通されており、ステー112の上端部に挿通され、軸支されている。
【0049】
このとき、支軸15は、アームレスト本体111の側面111a(シートクッションS2側の面)側から挿入され、アームレスト本体111の長手方向とステー112の長手方向とは略直交している。そして、アームレスト本体111の肘掛け面111bは水平となるように配設される。なお、アームレスト本体111がステー112に軸支される構成は公知のものを用いることができる。なお、アームレストA2の使用状態において、アームレスト本体111の後端部が下方に傾倒することがないように、アームレストA2に備えられた不図示のバネ等の付勢部材や回転ストッパによってアームレスト本体111の回転が規制されている。
【0050】
ステー112の下端部には係止孔112aが形成されており、上記実施形態と同様に、軸部材13によって、ステー112はシートクッションS2に軸支される。なお、アームレストA2の使用時、ステー112の回転を規制する構成に関しては、上記実施形態と同様である。
【0051】
そして、アームレストA2は、収納時、図6(b)のように、アームレスト本体111とステー112とを折りたたむことができる。このとき、アームレストA2は、ステー112に対して支軸15を介して軸支されたアームレスト本体111の側面111aを、ステー112に沿わせるように折りたたまれる。
【0052】
以下、アームレストA2の収納時の動作について説明する。なお、アームレストA2を収納状態から使用状態に復帰させるには、逆の動作が行われる。
アームレストA2の収納時、図7(a)に示すように、ステー112は前方に回転し、ステー112が所定位置(略水平)となるまで回転する。このとき、回転ストッパ(不図示)によって、ステー112の前方回転が規制され、ステー112の前方回転が停止する。
【0053】
そして、アームレスト本体111は、図7(b)に示すように、支軸15を回転軸としてステー112に沿うように後方へ回転する。すなわち、図7(c)のように、アームレスト本体111の長手方向が、ステー112の長手方向に沿うような状態となる(図6(b)の状態)。このような構成とすることにより、アームレストA2の収納時、アームレスト本体111がシートクッションS2の側面に沿うように配設されるため、収納性が高い。
そして、支軸15は、アームレスト本体111の回転軸としての機能と、スライド機構としての機能を果たすため、省スペース化することができ、特に好適である。
なお、上記アームレスト本体111及びステー112の回転及びスライド順は上記に限定されるものではなく、任意に設定可能である。
【0054】
また、アームレスト本体111がステー112に対して折り畳まれる構成であるため、アームレスト本体111の長さを大きくしても、収納時にアームレスト本体111が上方に突出することがない。したがって、アームレスト本体11の長さが制限されることなく、乗員の腕を載せる範囲を十分に確保することができるため、着座性が良好な車両用シートSとすることが可能である。
【0055】
さらに、アームレスト本体111がステー112に対して任意に回動可能であるため、ステー112の角度に依存せず、アームレスト本体111の肘掛け面111bを常に水平に保持することができる。したがって、肘掛け面111bの高さを適宜設定することも可能である。
【0056】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係るアームレストA3に関し、図8及び図9を参照して、以下説明する。
実施形態3のアームレストA3を備えた車両用シートSは、上記実施形態のアームレストA2とは異なる構成のステー212を備えている点を特徴とする。なお、その他の構成は、上記実施形態の車両用シートSと共通するため、その説明を省略する。
【0057】
実施形態3のアームレストA3は、ステー212に備えられた貫通孔212bが、平面視略長孔状であり、アームレスト本体211が、ステー212の長手方向に沿ってスライド可能であることを特徴としている。
ステー212には、その長手方向に沿って長軸を有する長孔状の貫通孔212bが形成されている。貫通孔212bは、アームレストA3が使用状態にあるとき、ステー212において形成された係止孔212aよりも上方に形成されている。また、貫通孔212bの短軸方向の長さは、少なくとも支軸15の直径よりも大きく形成されており、支軸15が貫通孔212bに沿ってスライド可能である。なお、アームレストA3の使用状態において、支軸15(アームレスト本体111)が下方に向かってスライドしないように、シートクッションS2またはアームレストA3には、不図示のスライドストッパが備えられている。
【0058】
そして、支軸15の一端は、ステー212の上端部に形成された貫通孔212bに挿通されており、アームレスト本体211はステー212に対して回動可能なように軸支されている。より詳細には、アームレストA3が使用状態にある時において、支軸15は、アームレスト本体212の前端に挿通されており、ステー212の上端部に挿通され、軸支されている。
【0059】
このとき、支軸15は、アームレスト本体211の側面211a(シートクッションS2側の面)側から挿入され、アームレスト本体111の長手方向とステー212の長手方向とは略直交している。そして、アームレスト本体211の肘掛け面211bは水平となるように配設される。なお、アームレスト本体211がステー212に軸支される構成は公知のものを用いることができる。なお、アームレストA3の使用時、アームレスト本体211の後端部が下方に傾倒することがないように、バネ等の付勢部材や回転ストッパによってアームレスト本体211の回転が規制されている。
【0060】
ステー212の下端部には係止孔212aが形成されており、上記実施形態と同様に、軸部材13によって、ステー212はシートクッションS2に軸支される。なお、アームレストA3の使用時、ステー212の回転を規制する構成に関しては、上記実施形態と同様である。
【0061】
以下、アームレストA3の収納時の動作について説明する。なお、アームレストA3を収納状態から使用状態に復帰させるには、逆の動作が行われる。
アームレストA3の収納時、図9(a)に示すように、ステー212は前方に回転し、ステー212が所定位置(略水平)となるまで回転する。このとき、シートクッションS2またはアームレストA3に備えられた回転ストッパ(不図示)によって、ステー212の前方回転が規制され、ステー212の前方回転が停止する。
【0062】
そして、アームレスト本体211は、アームレストA3に備えられた回転ストッパ(不図示)が解除されると、図9(b)に示すように、支軸15を回転軸としてステー212に沿うように前方へ回転する。すなわち、アームレスト本体211の長手方向が、ステー212の長手方向に沿うような状態となる。
【0063】
さらに、スライドストッパが解除されると、図9(c)のように、支軸15が貫通孔212bに沿って後方へスライドするため、アームレスト本体211が後方に向かってスライドする。そして、アームレスト本体211が後方にスライドした状態で、スライドストッパに固定される。
なお、上記アームレスト本体211及びステー212の回転及びスライド順は上記に限定されるものではなく、任意に設定可能である。
【0064】
上記構成を備えることにより、アームレストA3は、アームレスト本体211がステー212に沿って配設されるため、収納性がよい。さらにこの時、アームレスト本体211の肘掛け面211bが下方に保持されるので、アームレストA3は、収納時に、アームレスト本体211の肘掛け面211bが保護されるため好適である。
【0065】
(実施形態4)
次に、実施形態4に係るアームレストA4に関し、図10及び図11を参照して、以下説明する。
実施形態4のアームレストA4を備えた車両用シートSは、上記実施形態のアームレストA2,A3とは異なる構成のステー312を備えている点を特徴とする。なお、その他の構成は、上記実施形態の車両用シートSと共通するため、その説明を省略する。
【0066】
実施形態4のアームレストA4は、ステー312に備えられた係止孔312aが長孔であり、ステー312が、シートクッションS2に対してステー312の長手方向に沿ってスライド可能であることを特徴としている。
ステー312には、その長手方向に沿って長軸を有する長孔状の係止孔312aが形成されている。係止孔312aは、その長軸方向がステー312の長手方向に沿うように形成されている。
【0067】
係止孔312aは、アームレストA4が使用状態にあるとき、ステー312の下端部から、略中央部よりも上方まで開口した長孔として形成されている。
また、係止孔312aの短軸方向の長さは、少なくともシートクッションS2に係止するために備えられる軸部材13の直径よりも大きく形成されており、軸部材13が係止孔312aに沿ってスライド可能である。なお、アームレストA4の使用状態において、ステー312が軸部材13に沿って下方に向かってスライドしないように、シートクッションS2またはアームレストA4には、不図示のスライドストッパが備えられている。
【0068】
そして、軸部材13は係止孔312aに挿通されており、ステー312はシートクッションS2に対して回動可能なように軸支されている。より詳細には、アームレストA4が使用状態にある時において、軸部材13は、ステー312の係止孔312aの最も下方において挿通されており、ステー312がシートクッションS2に対して軸支されている。
なお、アームレストA4の使用時、ステー312の回転を規制する構成に関しては、上記実施形態と同様である。
【0069】
また、アームレスト本体311はステー312に対して回動可能なように軸支されており、その構成は、上記実施形態のアームレストA2,A3と同様である。
【0070】
以下、アームレストA4の収納時の動作について説明する。なお、アームレストA4を収納状態から使用状態に復帰させるには、逆の動作が行われる。
アームレストA4の収納時、図11(a)に示すように、ステー312は前方に回転し、ステー212が所定位置(略水平)となるまで回転する。このとき、回転ストッパ(不図示)によって、ステー312の前方回転が規制され、ステー312の前方回転が停止する。
【0071】
そして、アームレスト本体311は、図11(b)に示すように、支軸15を回転軸としてステー312に沿うように前方へ回転する。すなわち、アームレスト本体311の長手方向が、ステー312の長手方向に沿うような状態となる。そして、アームレスト本体211がさらに下方に回転しないように、回転ストッパによってアームレスト本体211が固定される。
【0072】
さらに、スライドストッパが解除されると、図11(c)のように、軸部材13が係止孔312aに沿ってスライドするため、ステー312が、シートクッションS2の後方に向かってスライドする。そして、アームレスト本体311及びステー312が後方にスライドした状態で、スライドストッパに固定される。
なお、上記アームレスト本体311及びステー312の回転及びスライド順は上記に限定されるものではなく、任意に設定可能である。
【0073】
上記構成を備えることにより、アームレストA4は、アームレスト本体311及びステー312が後方にスライドする。したがってアームレストA4は、アームレスト本体311の長さを大きくしても、アームレストA4の収納時、アームレスト本体311がシートクッションS2よりも前方に突出しないため、収納性が高い。また、肘掛け面311bが下方に配置されるため、肘掛け面311bを保護することができる。
【0074】
なお、上記各実施形態では、具体例として、自動車のフロントシートに用いられる車両用シートSについて説明したが、これに限らず、後部座席のシートについても、同様の構成を適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
S,S′ 車両用シート
S1,S1′ シートバック
S2,S2′ シートクッション
A′,A1,A2,A3,A4 アームレスト
C カバー
Ca 係止孔
F 着座フレーム
Fa 係止孔
P 空間
R,R′ リクライニング機構
1a,2a クッションパッド
1b,2b 表皮材
11,111,211,311 アームレスト本体
11a,111a,211a,311a 側面
11b,111b,211b,311b 肘掛け面
12,112,212,312 ステー
12a,112a,212a,312a 係止孔
112b,212b,312b 貫通孔
13 軸部材
14 嵌合部材
15 支軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションと、該シートクッションにリクライニング機構を介して連結されるシートバックと、アームレストとを備えた車両用シートであって、
前記アームレストは、アームレスト本体と、該アームレスト本体の一端側に係止されて該アームレスト本体を支持するステーと、を有し、
該ステーは、前記シートクッションの側面に回動可能に軸支され、前記シートバックの傾倒動作と独立して回動することを特徴とするアームレストを備えた車両用シート。
【請求項2】
前記アームレスト本体は、前記シートバックに係止されていないことを特徴とする請求項1に記載のアームレストを備えた車両用シート。
【請求項3】
前記アームレスト本体は、前記ステーに対し回動可能に取着されてなることを特徴とする請求項1または2に記載のアームレストを備えた車両用シート。
【請求項4】
前記アームレスト本体は、前記ステーに対し該ステーの長手方向に沿ってスライド可能に取着されてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアームレストを備えた車両用シート。
【請求項5】
前記ステーは、前記シートクッションの側面に摺接し、前記ステーの長手方向に沿ってスライド可能に取着されてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のアームレストを備えた車両用シート。
【請求項6】
前記ステーは、前記シートクッションの前後方向略中央部に軸支されてなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のアームレストを備えた車両用シート。
【請求項7】
前記アームレストが使用状態にあるとき、前記アームレスト本体の肘掛け面は、水平に保持されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のアームレストを備えた車両用シート。
【請求項8】
前記シートバックが最大傾倒位置にあるとき、前記アームレストは、前記シートバックの最も高い位置よりも下方に収納されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のアームレストを備えた車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−188014(P2012−188014A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53171(P2011−53171)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【Fターム(参考)】