説明

アームレスト

【課題】アームレストの軸方向の大きさを小さくする
【解決手段】アームフレームR1と、アームフレームR1を回動可能にシートバックに支持させるクラッチ(ワンウェイクラッチ1)とを備え、クラッチは、アームフレームR1およびシートバックの一方に固定される内輪2と、内輪2の径方向外側に、内輪2から離間して設けられ、アームフレームR1およびシートバックの他方に固定される外輪3と、内輪2と外輪3の間に位置し周方向の一方へ向かうにつれ径方向の幅が小さくなる部分を有するポケットに収容された可動片(ローラ71)と、可動片に対し周方向の一方側に隣接して配置された解除片41を有し、内輪2および外輪3の双方に対し同軸で回動可能に設けられた解除部材4と、解除部材4を作動させて、可動片がポケットの内壁に挟持されるロック状態を解除する解除操作機構とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームレストに関し、特に、軸方向の大きさを小さくすることが可能なクラッチを用いたアームレストに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車においては、シートにアームレストが設けられることがある。一部の改良されたアームレストは、特許文献1に記載のように、使用時の角度においては下方への回動がロックされ、それ以外の非使用時の角度においては、上下に自由に回動できるように構成されている。
【0003】
特許文献1に記載のアームレストは、下方への回動をロックするワンウェイクラッチ機構として、シャフトの外周にコイルスプリングを巻き付けた構成を採用している。この構成では、コイルスプリングが巻き締まる方向への回転は、コイルスプリングの回転がロックされ、逆にコイルスプリングが緩む方向への回転は自由になることを利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−261828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のように、コイルスプリングを利用したワンウェイクラッチ機構は、コイルスプリングの軸方向の大きさが大きくなるという問題がある。
【0006】
本発明は、以上のような背景に鑑みてなされたものであり、軸方向の大きさを小さくできるクラッチを用いたアームレストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決する本発明は、シートバックに取り付けられるアームレストであって、アームフレームと、前記アームフレームを回動可能に前記シートバックに支持させるクラッチとを備え、前記クラッチは、前記アームフレームおよび前記シートバックの一方に固定される内輪と、前記内輪の径方向外側に、前記内輪から離間して設けられ、前記アームフレームおよび前記シートバックの他方に固定される外輪と、前記内輪と外輪の間に位置し周方向の一方へ向かうにつれ径方向の幅が小さくなる部分を有するポケットに収容された可動片と、前記可動片に対し周方向の前記一方側に隣接して配置された解除片を有し、前記内輪および外輪の双方に対し同軸で回動可能に設けられた解除部材と、前記解除部材を作動させて、前記可動片が前記ポケットの内壁に挟持されるロック状態を解除する解除操作機構とを備えたことを特徴とする。
【0008】
このような構成のアームレストによれば、シャフトとコイルスプリングを用いることなく、ポケットに収容された可動片により、ロックを可能とし、解除部材および解除操作機構によりロック状態を解除するアームレストにすることができる。そのため、軸方向の大きさを小さくすることができる。
【0009】
前記したアームレストにおいて、前記クラッチは、ワンウェイクラッチであり、前記解除操作機構は、前記解除部材に係合または固定された第1の操作部材と、前記内輪および外輪の双方に対して同軸で回動可能であるとともに周面を有する切換部材とを備え、前記第1の操作部材は、前記切換部材の前記周面に当接し、前記切換部材は、前記周面として小径部と、当該小径部より大径の大径部とを有し、前記内輪または前記外輪の一方は、前記切換部材に係合して前記切換部材に対する相対回転を所定角度範囲内に規制する回転規制部を有し、前記周面には、径方向に向けて突出する戻し係合部が設けられ、前記第1の操作部材が前記小径部および前記大径部の一方に当接することで前記解除部材を周方向の前記一方に回動させて前記可動片が前記ポケットの内壁に挟持されてロックされるのを可能とし、前記第1の操作部材が前記小径部および前記大径部の他方に当接することで前記解除部材を周方向の他方に回動させて前記可動片のロックを解除するように構成することができる。
【0010】
このような構成によれば、内輪と外輪の一方を他方に対し回転させると、内輪の外輪と一方に連動して切換部材が第1の操作部材に対して相対的に回転する。そのため、内輪と外輪の一方を回動させると、第1の操作部材の、切換部材の周面への当接点が、大径部と小径部との間で切換部材の位相(向き)に応じて切り替わる。そうすると、第1の操作部材が解除部材に対して係合または固定されていることで、解除部材が周方向に少し回動する。これにより、解除部材が有している解除片が周方向の一方または他方に回動し、一方(ポケットの径方向の幅が小さくなる方向)に回動する場合には、可動片がポケットに挟持されてロックされる。すなわち、内輪と外輪が係合してこれらが互いに回動しなくなる。また、解除片が周方向の他方に回動すると、解除片が、可動片をポケットの幅が広い方に押して、ロックが解除される。すなわち、内輪と外輪が互いに自由に回動できるようになる。
【0011】
このように、本発明によれば、ポケット内に可動片を設けたアームレストにおいて、アームレストを回動させることで、ロックとロック解除を実現することができる。
【0012】
また、回転規制部を有する内輪または外輪は、回転規制部により切換部材との相対回転が規制されない範囲においては、切換部材に対して自由に回転できる。一方、回転が規制される範囲においては、回転規制部を有する内輪または外輪は、切換部材と一体に回転する。切換部材と、内輪および外輪の一方が一体に回転すると、切換部材と第1の操作部材が相対的に回転することで第1の操作部材の切換部材への周面の当接点が、小径部と大径部の間で適宜切り替わる。そして、この構成においては、周面には、径方向へ向けて突出する戻し係合部が設けられているので、例えば、一度、内輪および外輪の一方を回転させることで戻し係合部を乗り越えて大径部に当接した第1の操作部材は、内輪および外輪の一方を逆回転させたときには、第1の操作部材が戻し係合部に係合して、切換部材を逆方向へ回転させることができる。すなわち、切換部材が、内輪または外輪に対して1つの方向に相対的に回転するだけでなく、逆方向にも回ることができるので、内輪と外輪の一方を他方に対して行ったり来たりさせるような動作を実現することができる。この行ったり来たりの動作の中で、第1の操作部材が切換部材の周面の大径部と小径部のどちらに接触するかにより、内輪と外輪のロック状態とロック解除状態を切り替えることができる。
【0013】
なお、切換部材が第1の操作部材に対して相対的に回転するというのは、外部から見たときに、切換部材が停止していて、第1の操作部材が回転する場合をも含む意味である。このような場合には、切換部材は、相対的には、第1の操作部材に対して回転しているからである。
【0014】
前記したアームレストにおいて、前記内輪は、前記ポケットの内壁の一部を構成する第1の金属部品と、第1の樹脂部品とを含んでなり、前記第1の金属部品の内周に形成された凹凸と前記第1の樹脂部品の外周に形成された凹凸との係合により前記第1の金属部品と前記第1の樹脂部品とが互いに周方向にずれないように組み合わされた構成とすることができる。
【0015】
このような構成によれば、第1の金属部品により内輪の必要な強度を持たせつつ、第1の樹脂部品を利用することで軽量化を図ることができる。
【0016】
また、前記した構成において、前記可動片を前記周方向の一方側に向けて付勢するように配置された付勢部材をさらに備え、前記内輪は、前記ポケットの内壁の一部を構成する第1の金属部品と、第1の樹脂部品とを含んでなり、前記第1の金属部品の内周に形成された凹凸と前記第1の樹脂部品の外周に形成された凹凸との係合により前記第1の金属部品と前記第1の樹脂部品とが互いに周方向にずれないように組み合わされ、前記第1の金属部品は、外周において、前記付勢部材を保持するための、中心に向かって凹んだ付勢部材保持凹部を有し、当該付勢部材保持凹部の径方向内側に、前記第1の金属部品の凹凸のうち中心に向かって凸となる凸形状が位置する構成とするのが望ましい。
【0017】
このような構成によれば、第1の金属部品により内輪の必要な強度を持たせつつ、第1の樹脂部品を利用することで軽量化を図ることができるだけでなく、第1の金属部品の径方向の幅を確保して第1の金属部品に局部的な弱い部分ができるのを抑制できる。
【0018】
前記した本発明のアームレストにおいて、前記外輪は、前記ポケットの内壁の一部を構成する第2の金属部品と、第2の樹脂部品とを含んでなり、前記第2の金属部品の外周に形成された凹凸と前記第2の樹脂部品の内周に形成された凹凸との係合により前記第2の金属部品と前記第2の樹脂部品とが互いに周方向にずれないように組み合わされた構成とすることができる。
【0019】
このような構成によれば、第2の金属部品により外輪の必要な強度を持たせつつ、第2の樹脂部品を利用することで軽量化を図ることができる。
【0020】
この構成においては、前記クラッチがロック状態にあるときには、前記可動片の径方向外側に、前記第2の金属部品の凹凸のうちの径方向外側に向かって凸となる凸形状が位置することが望ましい。
【0021】
このようにすることで、第2の金属部品の剛性が高い部分で可動片の接触圧を受けることができ、第2の金属部品の強度を確保することができる。
【0022】
前記した本発明のアームレストにおいて、前記解除部材は、径方向外側に向けて延びる延出部を有し、前記第1の操作部材は、前記延出部において前記解除部材と係合し、前記外輪の径方向外側、かつ、軸方向において前記外輪と重なる範囲に配置されるのが望ましい。
【0023】
このような構成によれば、第1の操作部材が外輪の径方向外側で、かつ、軸方向において外輪と重なる範囲に位置するので、第1の操作部材があっても軸方向の大きさが大きくなりにくい。すなわち、軸方向の大きさのコンパクト化を実現することができる。
【0024】
前記した本発明のアームレストにおいて、前記ポケットの内壁には、前記可動片に対し周方向の前記一方側に突起が設けられ、前記内輪と前記外輪のロック方向への強制的な相対回転時に前記突起と前記可動片が接触するように構成するのが望ましい。
【0025】
このような構成によれば、内輪と外輪の、ロック方向への強制回転時に、突起と可動片の接触することで可動片がそれ以上ポケットの内壁に強く挟持されないので、内輪および外輪に過大な径方向荷重が掛かるのを抑制することができる。
【0026】
前記した本発明のアームレストにおいて、前記解除操作機構は、前記解除部材に係合または固定され、前記アームフレームの先端に向けて延びる第2の操作部材を備えてなり、前記第2の操作部材の操作により前記解除部材を周方向の前記他方に回動させることで、前記可動片のロックを解除可能に構成することができる。
【0027】
このような構成によれば、内輪と外輪の所定の相対回転によるロックおよびロック解除だけでなく、第2の操作部材を操作することによりロック解除が可能となるので、使いやすさの向上を図ることができる。
【0028】
前記した本発明のアームレストにおいて、前記解除操作機構は、前記解除部材に係合または固定され、前記アームフレームの先端に向けて延びる第2の操作部材を備えてなり、前記第2の操作部材の操作により前記解除部材を周方向の前記他方に回動させることで、前記可動片のロックを解除可能に構成され、前記第1の操作部材は、アームフレームの回動軸周りに円弧状に設けられ、前記第2の操作部材は、前記アームフレームの長手方向に沿って設けられ、軸方向から見て、前記第1の操作部材と前記第2操作部材とは互いに重ならないように配置するのが望ましい。
【0029】
このように、第1の操作部材と第2の操作部材とを、アームレストの回動軸の方向から見て重ならないように配置することで、第1の操作部材と第2の操作部材を設ける場合に、軸方向の大きさが大きくなるのを抑制することができる。
【0030】
前記した解除部材に延出部を有するアームレストにおいて、前記アームフレームは、前記クラッチ側に突出して、前記外輪および前記内輪のうち前記シートバックに固定される方と係合してアームフレームの回動範囲を規制するストッパを有し、前記ストッパは、軸方向において前記延出部と重なる範囲に設けられているとともに、軸方向から見て前記延出部と重ならない範囲に設けられていることが望ましい。
【0031】
このように、軸方向から見て延出部とストッパを互いに重ならない範囲に設け、軸方向で重なる範囲に設けることで、アームレストの軸方向の大きさをよりコンパクト化することができる。
【発明の効果】
【0032】
請求項1に記載の構成によれば、クラッチを用いたアームレストの軸方向の大きさを小さくすることができる。
【0033】
請求項2に記載の構成によれば、アームレストを回動させることで、ロックとロック解除を実現することができる。
【0034】
請求項3に記載の構成によれば、第1の金属部品により内輪の必要な強度を持たせつつ、第1の樹脂部品を利用することで軽量化を図ることができる。
【0035】
請求項4に記載の構成によれば、第1の金属部品により内輪の必要な強度を持たせつつ、第1の樹脂部品を利用することで軽量化を図ることができるだけでなく、第1の金属部品の径方向の幅を確保して第1の金属部品に局部的な弱い部分ができるのを抑制できる。
【0036】
請求項5に記載の構成によれば、第2の金属部品により外輪の必要な強度を持たせつつ、第2の樹脂部品を利用することで軽量化を図ることができる。
【0037】
請求項6に記載の構成によれば、第2の金属部品の剛性が高い部分で可動片の接触圧を受けることができ、第2の金属部品の強度を確保することができる。
【0038】
請求項7に記載の構成によれば、軸方向の大きさのさらなるコンパクト化を実現することができる。
【0039】
請求項8に記載の構成によれば、内輪および外輪に過大な径方向荷重が掛かるのを抑制することができる。
【0040】
請求項9に記載の構成によれば、第2の操作部材を操作することによりロック解除が可能となるので、使いやすさの向上を図ることができる。
【0041】
請求項10に記載の構成によれば、第1の操作部材と第2の操作部材を設ける場合に、軸方向のコンパクト化を図ることができる。
【0042】
請求項11に記載の構成によれば、アームレストの軸方向の大きさをよりコンパクト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】アームレストを備えたシートの斜視図である。
【図2】アームレストの動作を説明する左側面図であり、(a)収納操作時と、(b)引出操作時を示す。
【図3】アームレストの分解斜視図である。
【図4】(a)外輪の右側面図と、(b)(a)のIV−IV断面図である。
【図5】ワンウェイクラッチの内部構造を示す図である。
【図6】ローラの動作を説明する図であり、(a)は、非ロック方向への回転時、(b)は、ロック方向への回転時、(c)は、ロック解除時を示す。
【図7】アームレストが引出位置(位置A)にあるときの、ワンウェイクラッチの左側面図(a)と、ワンウェイクラッチを下から見た図(b)である。
【図8】アームレストが位置B付近にあるときの、ロック状態にあるワンウェイクラッチの左側面図である。
【図9】アームレストが位置B付近にあるときの、非ロック状態にあるワンウェイクラッチの左側面図である。
【図10】アームレストが収納位置(位置C)にあるときの、非ロック状態にあるワンウェイクラッチの左側面図である。
【図11】アームレストを収納位置から引出位置へ向けて回動させたときの、アームレストが位置A付近で非ロック状態にあるワンウェイクラッチの左側面図である。
【図12】変形例に係るワンウェイクラッチのローラ付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
次に、添付の図面を参照しながら本発明のアームレストの一実施形態について説明する。図1に示すように、シートSは、シートバックS1と着座部S2を有し、アームレストRがクラッチの一例としてのワンウェイクラッチ1によりシートバックS1に固定されている。以下では、図1に示したように、シートバックS1の右側に設けられたアームレストRを左側から見た場合で説明する。なお、本明細書において、前後左右および上下は、シートSに座る人を基準に用い、例えば、アームレストRを左から見た図(図2など)を便宜上、左側面図とする。
【0045】
アームレストRは、図2(a)、(b)に示すように、先端が前に向いた引出状態(位置A)と、先端が上に向く収納状態(位置C)の間で回動動作可能である。そして、引出状態から収納状態へ向けて作動させる収納操作時には、図2(a)に示すように、引出状態から収納状態へ向けての所定角度範囲(位置Aから位置Bに向けての範囲)では、アームレストRを上に上げることはできるが、下に下げることはできないようになっている。この、下に下げられないことを、本明細書においてロックしている(ロック状態)という。そして、収納操作時において、位置Bから位置Cにかけては、アームレストRを上下いずれにも回動させることができるようになっている。これを、本明細書においてロック解除している(非ロック状態)という。そして、アームレストRは、図2(b)に示すように、収納状態(位置C)から引出状態(位置A)に向けて動かす引出操作時には、上下に自由に動かすことができるようになっている。すなわち、非ロック状態となっている。
また、アームレストRは、引出操作時に位置Aまで完全に移動させると、ロック状態に戻るようになっている。そして、上記の動作とは別に、アームレストRは、先端に設けられた操作レバーR2の下端部を押すことで、任意の姿勢においてロック解除することができるようになっている。
【0046】
以上のようなアームレストRの機能を実現するための構成について説明する。
図3に示すように、アームレストRは、樹脂からなるアームフレームR1を備え、図示はしないが、このアームフレームR1の外側にクッションや表皮が設けられる。アームフレームR1は、図3における前後に長い形状を有し、後端部で図示しないボルトなどによりワンウェイクラッチ1を介してシートバックS1に回動可能に取り付けられる。アームフレームR1の後端部には、左側に、ワンウェイクラッチ1を構成する内輪2の一部として、第1の樹脂部材の一例としての樹脂内輪2Bが形成されている。樹脂内輪2Bの外周には、一定ピッチで外径が異なることで凹凸形状部(凹凸)21Bが形成されている。
樹脂内輪2Bの径方向外側には、樹脂内輪2Bを挟んで2箇所に左側(ワンウェイクラッチ1側)に向けて突出するストッパR4が形成されている。ストッパR4は、後述する外輪3(内輪2および外輪3のうち、シートバックS1に固定される方)のストッパ38と周方向で係合することで、外輪3とアームフレームR1の相対回動範囲を規制するためのものである。
【0047】
ワンウェイクラッチ1は、内輪2と、外輪3と、可動片の一例としてのローラ71と、付勢部材の一例としてのスプリング72とを備えている。そして、ローラ71がポケットPKの内壁に挟持されるロック状態を解除する解除操作機構として、解除部材4と、切換部材5と、操作ロッド6とを備えている。
【0048】
内輪2は、第1の金属部品の一例としての金属内輪2Aと、前記した樹脂内輪2Bとからなる。金属内輪2Aは、中心の貫通孔の内周に凹凸形状部(凹凸)21Aを有し、前記した樹脂内輪2Bの凹凸形状部21Bと金属内輪2Aの凹凸形状部21Aとが係合することで、金属内輪2Aと樹脂内輪2Bとが互いに周方向にずれないように組み合わされている。これにより、内輪2は、アームフレームR1に固定されている。また、このように、内輪2が金属内輪2Aと樹脂内輪2Bを組み合わせていることで、必要な強度を持たせつつ、軽量化を図ることができる。
【0049】
図5に示すように、金属内輪2Aは、等角度間隔で径方向外側に向けて突出するローラ保持部26を3つ有している。ローラ保持部26の外周面には、中心へ向けて凹む凹みが形成されており、この凹みには、図5における時計回り(以下、時計回りおよび反時計回りは図5を基準とする)の先に行くほど徐々に半径が大きくなる傾斜面22と、この傾斜面22の反時計回りの端部に隣接して、傾斜面22よりも中心に向かって凹んだ付勢部材保持凹部23とが形成されている。また、傾斜面22の時計回り方向の端部には、後述する解除片41と金属内輪2Aとの位置関係を規定する係止部24が設けられている。さらに、付勢部材保持凹部23の反時計回り方向側にはスプリング72の姿勢を規制する規制壁25が設けられている。
なお、付勢部材保持凹部23の径方向内側には、前記した金属内輪2Aの内周の凹凸形状部21Aのうち凸形状(径方向内側に凸の部分。図5の符号21X参照。)が位置している。これにより、金属内輪2Aの径方向の幅を確保して金属内輪2Aに局部的な弱い部分ができるのを抑制している。
【0050】
金属内輪2Aの径方向外側には、外輪3が、内輪(金属内輪2A)2から離間して設けられている。外輪3の内周31は、円筒面をなしており、金属内輪2Aの傾斜面22と外輪3の内周31の間に、ローラ71とスプリング72が収容されるポケットPKが形成されている。外輪3の内周31が円筒面であるのに対し、傾斜面22が時計回り方向に向かうにつれ外径が大きくなっているので、ポケットPKは、径方向の幅が、周方向の一方(時計回り方向)に向かうにつれ小さくなる部分を有している。
【0051】
ローラ71の周方向の一方側(時計回り方向側)には、解除片41が隣接して配置されている。解除片41は、前記した解除部材4が有する部材である。ローラ71の周方向の他方側(反時計回り方向側)には、略U字形状の板バネからなるスプリング72が隣接して配置されている。スプリング72は、図6(a)に拡大して示すように、屈曲部72Aにおいて前記した付勢部材保持凹部23に保持され、一方のアーム72Bが前記規制壁25に当接し、他方のアーム72Cがローラ71を時計回り方向に向けて付勢している。この付勢力により、ローラ71は、ポケットPKの内壁(傾斜面22および内周31)に当接し、がたつきが防止されている。なお、このスプリング72の付勢力は、ローラ71のがたつきを防止するのに必要十分な程度の弱いもので、ローラ71がポケットPKの内壁に食いついて内輪2と外輪3の相対回転をロックするほどのものではない。
【0052】
外輪3は、図4(a),(b)に示すように、第2の金属部材の一例としての金属外輪3Aと、第2の樹脂部材の一例としての樹脂外輪3Bからなっている。
金属外輪3Aは、前記したように、内周31が円筒面からなり、外周には、一定ピッチで外径が異なることで凹凸形状部(凹凸)32Aが形成されている。樹脂外輪3Bには、内周に、凹凸形状部32Aに対応した凹凸形状部32Bが形成されており、金属外輪3Aの凹凸形状部32Aと樹脂外輪3Bの凹凸形状部32Bが係合することで、金属外輪3Aと樹脂外輪3Bとが互い周方向にずれないように組み合わされている。このように、外輪3が金属外輪3Aと樹脂外輪3Bを組み合わせていることで、必要な強度を持たせつつ、軽量化を図ることができる。ワンウェイクラッチ1がロック可能な状態にあるとき、すなわち、図2(a)で示した、アームレストRが収納操作時における位置Aから位置Bの範囲にあるときには、ローラ71の径方向外側に、金属外輪3Aの外周の凹凸形状部32Aのうち、凸形状(径方向外側に凸の部分)が位置しているのが望ましい。このようにすることで、金属外輪3Aの剛性が高い部分でローラ71の接触圧を受けることができ、金属外輪3Aの強度を確保することができる。
【0053】
図3に示すように、樹脂外輪3Bの左側面には、円形で突出した支持軸34が設けられている。また、支持軸34には、シートバックS1との間で係合して外輪3をシートバックS1に対して回転しないようにする突起39が設けられている。また、樹脂外輪3Bの外周には、径方向外側に突出したストッパ38(図4(a)参照)が2つ設けられている。さらに、樹脂外輪3Bの右側面の外縁部には、切換部材5に対する相対回転を所定角度範囲内に規制するための回転規制部35が突出して設けられている。
【0054】
解除部材4は、ローラ71がポケットPKの内壁に挟持されることによるロックを解除するための部材である。解除部材4は、図3に示すように板状のリング部材からなり、径方向外側、図3では下方に向けて延びる延出部42を有する。延出部42は、解除部材4の本体と一体に成形することで容易に製造でき、また、部品点数の削減を図ることができる。そして、解除部材4が樹脂内輪21Bの根本まで入って組み合わされることから分かるように、延出部42は、軸方向において、ストッパR4と重なる範囲に設けられている。また、延出部42は、図7(a)、図8〜図10に示すように、軸方向から見てストッパR4と重ならない範囲に設けられている。これにより、空間を有効利用して、ワンウェイクラッチ1(アームレストR)の軸方向の大きさをよりコンパクト化することができる。
【0055】
延出部42には、操作ロッド6が係合する係合突起43が設けられている。解除部材4の内周部44は、樹脂内輪2Bの外径に対応した直径を有しており、内周部44が樹脂内輪2Bに嵌ることで、解除部材4は、内輪2に対し同軸で回動可能に設けられている。また、内輪2と外輪3は互いに回動可能な関係にあり、解除部材4と外輪3は互いに固定されてはいないので、解除部材4は、内輪2および外輪3の双方に対し同軸で回動可能である。
解除部材4の左側の側面には、各ローラ71に対応して前記した解除片41が突出して設けられている。
【0056】
切換部材5は、操作ロッド6と協働してアームレストRの回動動作による内輪2と外輪3の(ローラ71の)ロックおよびロック解除を切り替えるための部材である。切換部材5は、板状のリング部材からなり、円形の内周部54が外輪3の支持軸34に係合することで外輪3に対して回動可能となっている。切換部材5の外周のうち、前斜め下方と下方には、それぞれ径方向外側へ向けて突出する規制壁56および規制壁57が形成されており、図7(a)に示すように、切換部材5を外輪3に組み合わせたときに規制壁56と規制壁57の間に外輪3の回転規制部35が位置するようになっている。すなわち、回転規制部35が規制壁56と規制壁57のそれぞれに当接する範囲において切換部材5と外輪3が相対的に回転可能である。また、外輪3と内輪2は相対的に回転可能であり、切換部材5は、内輪2と係合していないので、切換部材5は、内輪2および外輪3の双方に対して回動可能である。なお、回転規制部35が規制壁56または規制壁57に当接しているときには、その当接する回転方向には、外輪3と切換部材5が一体に回転可能である。
【0057】
切換部材5の外周面のうち、図3における後方から上方にかけては、内周部54と同軸となっている小径部51である。小径部51は、切換部材5の周縁が軸方向(左側)に延出したフランジ形状を有しており、切換部材5の軽量化を図るとともに後述する操作ロッド6の当接部63との摺接面が広く確保されている。また、切換部材5の外周のうち、図3における後方から下方の規制壁57にかけては、内周部54と同軸であり、小径部51よりも僅かに大径の大径部52となっている。図7(b)に示すように、大径部52も小径部51と同様に、切換部材5の周縁が軸方向(左側)に延出したフランジ形状を有して操作ロッド6の当接部63との摺接面が確保されている。小径部51のフランジ形状と大径部52のフランジ形状とは、連続していることで、切換部材5の周縁部の剛性は高くなっている。
【0058】
切換部材5の周面のうち小径部51と大径部52の接続部には、径方向外側に向けて小さな山形に突出する戻し係合部53が設けられている。戻し係合部53は、小径部51および大径部52を形成するフランジの部分に、切換部材5の本体と一体に成形されている。これにより、戻し係合部53は容易に製造でき、また、部品点数の削減を図ることができる。さらに、前記した規制壁57は、大径部52の時計回り方向の端部に隣接し、大径部52より径方向外側に突出していることで、大径部52上で当接部63が摺動したときに、当接部63の摺動範囲を制限するようになっている。
【0059】
操作ロッド6は、切換部材5と協働することにより、アームレストRの回動動作や、使用者の操作に応じてローラ71のロックおよびロック解除を操作するための部材である。操作ロッド6は、僅かに撓み変形可能な程度の剛性の金属棒からなり、円弧状に延びる第1の操作部材の一例としての第1操作部61と、第1操作部61の前端から、アームフレームR1の先端へ向けてアームフレームR1の長手方向に沿って直線状に延びる第2の操作部材の一例としての第2操作部62とを有している。本実施形態においては、第1操作部61と第2操作部62とは、一体に構成され、アームレストRの軸方向から見てこれらは互いに重なっていない。そのため、アームレストRの軸方向のコンパクト化が図られている。また、第2操作部62は、アームフレームR1の下側の縁に沿って設けられ、前記した解除部材4の延出部42も下方に向けて延出しているので、これらがアームフレームR1の上側に設けられる場合に比較して、アームレストRが上側に出っ張るのを抑制することができる。
【0060】
第1操作部61と第2操作部62の接続部には係合孔69が形成され、係合孔69が解除部材4の延出部42に設けられた係合突起43に係合している。第1操作部61は、外輪3の径方向外側で、かつ、軸方向において外輪3と重なる範囲に配置されている(図7(b)参照)。このため、第1操作部61を設けてもワンウェイクラッチ1の軸方向の大きさが大きくならず、ワンウェイクラッチ1を軸方向にコンパクト化することができる。第1操作部61は、係合孔69の部分から外輪3の外周に沿って図7(a)の下方から後方まで90度回り込んで円弧状に延び、先端で左向きに屈曲した当接部63が、切換部材5の外周面(図7(a)では小径部51)に径方向外側から当接している。当接部63は、屈曲して設けられていることで、剛性が向上している。係合孔69に対する当接部63の位置は、このように、回転中心を基準に90度離れている場合には限られないが、係合孔69と小径部51や大径部52の中心を結んだ直線からできるだけ離れているのがよい。第1操作部61は、解除部材4に係合しており、解除部材4は、外輪3と相対的に回転可能であるので、前記した切換部材5は、外輪3と連動することで第1操作部61に対し相対的に回動可能である。
【0061】
図3に示すように、第2操作部62の前端には、取付孔65が設けられている。アームフレームR1の前端には、操作レバーR2が軸R3により揺動可能に設けられており、この操作レバーR2の、軸R3よりも下の部分に、取付孔65を利用して第2操作部62の前端がネジ68により連結されている。これにより、操作レバーR2の下端部を後方へ押し込むと、第2操作部62を介して解除部材4を図7(a)の反時計回りに回動させることが可能になっている。
【0062】
前記した戻し係合部53は、切換部材5が、回転規制部35と規制壁56または規制壁57との係合により回転が規制されないときには、当接部63との係合により切換部材5を回動させることが可能な程度に、小径部51および大径部52から突出している。また、戻し係合部53は、切換部材5が、回転規制部35と規制壁56または規制壁57との係合により回転が規制されるときには、第1操作部61を撓ませて当接部63が戻し係合部53を乗り越えることが可能な程度の大きさで突出している。
【0063】
以上のように構成されたワンウェイクラッチ1を用いたアームレストRの動作について説明する。
まず、図6を参照しながらローラ71およびポケットPKによるワンウェイ機構の動作と、解除片41によるロック解除の動作を説明する。図6(a)に示すように、外輪3に対して内輪2を時計回りに回転させようとするとき、ポケットPKの空間は、外輪3に対して時計回りに回転するので、ローラ71との関係でいうと、ポケットPKの狭い部分がローラ71から離れる方向に移動する。ローラ71を基準にして言えば、ローラ71は、ポケットPKの内壁(傾斜面22および内周31)により形成されるくさび形の空間の広い方へ相対的に移動しようとする(実際には、スプリング72によりローラ71が付勢されているので、ポケットPK内でローラ71は相対的に移動しない)。そのため、ポケットPKの内壁とローラ71の間の接触圧は高まらず、ローラ71は、図の反時計回りに転がることができ、内輪2は外輪3に対して相対的に回転することが可能である。この方向の回転を非ロック方向への回転とする。
【0064】
一方、図6(b)に示すように、外輪3に対して内輪2を反時計回りに回転させようとするとき、ポケットPKの空間は、外輪3に対して反時計回りに回転するので、ローラ71との関係でいうと、ポケットPKの狭い部分がローラ71に近づく方向に移動する。ローラ71を基準にして言えば、ローラ71は、ポケットPKの内壁(傾斜面22および内周31)により形成されるくさび形の空間の狭い方へ相対的に移動しようとする。そのため、ポケットPKの内壁にローラ71が挟持され、ポケットPKとローラ71の間の接触圧が高まって、ローラ71は、内輪2および外輪3に対して回転することができなくなる。すなわち、内輪2と外輪3が互いにロックされる。
【0065】
図6(c)に示すように、内輪2に対して解除片41が反時計回りに回動したとき、解除片41がローラ71に当接してローラ71を反時計回りに付勢する。すると、ローラ71は、ポケットPKの内壁(傾斜面22および内周31)により形成されるくさび形の空間の広い方へ相対的に移動し、ローラ71がポケットPKの内壁から離間する。そのため、この状態で内輪2を外輪3に対し、時計回りおよび反時計回りのいずれの方向に回しても自由に回転することができるようになる。すなわち、ロック解除される。
【0066】
このように、図6(a),(b)のように解除片41がローラ71を付勢していないときには、内輪2と外輪3の回転方向によっては、互いの回転が不能になっているので、ロック可能な状態といえる。一方、図6(c)の場合には、内輪2が外輪3に対して任意の方向に空転できるのでロック解除状態である。
【0067】
以上のようなロックおよびロック解除の原理に基づき、アームレストRは、次のように動作する。
図7(a)に示すように、アームフレームR1(アームレストR)が最も下に位置しているとき、すなわち、収納操作前においてアームレストRが位置Aにあるとき、外輪3の回転規制部35は、規制壁56と規制壁57の間の規制壁56側に寄っており、操作ロッド6の当接部63は、外輪3の小径部51のうち大径部52に最も近い、戻し係合部53に隣接したところに位置している。このとき、解除片41はローラ71に当接しておらず、図6(a)および図6(b)を参照して説明したように、回転方向によってはロック可能な状態となっている。なお、外輪3は、上述したようにシートバックS1に固定されているので、図7(a)および図8〜図11において不動である。
【0068】
図7(a)の状態からアームフレームR1を上に回動させていくと、当接部63が大径部52と小径部51の段差(ここでは戻し係合部53)に係合することで切換部材5が当接部63に押されて外輪3に対し時計回りに回動する。この回動は、図8に示すように、規制壁57が回転規制部35に当接するまで可能である。そして、この回動の範囲(位置A〜位置B)では、解除片41はローラ71に当接していないので、ロック可能な状態であり、アームフレームR1は上には回動できるが、下には回動することができない。なお、アームフレームR1は、内輪2と一体に回転するので、アームフレームR1が上に回動するとき、内輪2は外輪3に対して相対的に回転している。
【0069】
そして、アームフレームR1をさらに上に回動させると、切換部材5は、規制壁57が外輪3の回転規制部35に当接しているので時計回りに回転することができず、図9に示すように、当接部63が戻し係合部53を乗り越えて大径部52に当接する。このとき、当接部63は図9の右下方向に引っ張られるので、係合孔69は僅かに右下方向に引っ張られ、これにより解除部材4が内輪2に対し相対的に反時計回りに回転する。このとき、第1操作部61は、僅かに外側に撓むが、小径部51と大径部52の半径の差に比較すると、第1操作部61の撓み量(係合孔69を止めて見たときの当接部63の径方向外側への移動量)は僅かに小さく、第1操作部61の撓みによる当接部63の移動量と解除部材4の回転による当接部63の移動量の和が、およそ小径部51と大径部52の半径の差に対応している。
【0070】
解除部材4が内輪2に対し相対的に反時計回りに回転すると、図6(c)を参照して説明したように、解除片41がローラ71を反時計回りに付勢して、ロック解除状態となる。すなわち、当接部63が大径部52に当接している間は、内輪2(アームフレームR1)は、外輪3に対して任意の方向に回動させることができる。
【0071】
アームフレームR1をさらに上に回動させると、切換部材5は、規制壁57が外輪3の回転規制部35に当接しているので時計回りに回転することができず、当接部63が大径部52の上を滑りながらアームフレームR1が外輪3に対して回動する。この回動は、図10に示すように、アームフレームR1のストッパR4が外輪3のストッパ38に当接するまで可能である。アームフレームR1のストッパR4が外輪3のストッパ38に当接すると、位置Cまで回動したことになる。この図9と図10の間においては、アームフレームR1は上下のいずれの方向にも任意に回動させることができる。
【0072】
図10の状態から使用位置へ向けて引出操作するとき、アームフレームR1を下へ回動させると、当接部63は大径部52の上を反時計回りに滑っていき、戻し係合部53に係合して切換部材5を反時計回りに回動させる。切換部材5は、図11に示すように規制壁56が回転規制部35に当接するまで回動する。なお、当接部63と大径部52の間の摩擦が大きく、切換部材5と外輪3の間の摩擦が小さい場合には、当接部63が大径部52上を滑らずに、第1操作部61(当接部63)と切換部材5が一体になって反時計回りに回動し、規制壁56が回転規制部35に当接した後に当接部63が大径部52の上を反時計回りに滑っていくことがあるが、いずれの順序で動作するとしても、図11の状態に至る。図10〜図11の状態においては、当接部63は大径部52に当接しているので、ロック解除状態にあり、アームフレームR1は、上下いずれの方向にも自由に回動することができる。なお、図11の状態は、アームフレームR1が位置Aの僅かに上に位置している状態である。
【0073】
図11の状態から、アームフレームR1を下に回動させようとすると、規制壁56が回転規制部35に当接しているので、切換部材5は反時計回りに回動することができず、第1操作部61が撓みながら当接部63が戻し係合部53を乗り越えて小径部51に当接する。そして、図7(a)に示したような状態に戻る。このとき、当接部63の切換部材5の外周面に当接する位置が大径部52から小径部51に切り替わり、図8から図9の状態への変化とは逆に、解除部材4が内輪2に対して僅かに時計回りに回動する。これにより、解除片41がローラ71を付勢しなくなり、図6(a)、(b)を参照して説明したように、ロック可能な状態に戻る。
【0074】
以上のようにして、本実施形態のワンウェイクラッチ1によれば、アームレストR(アームフレームR1)の所定の回動動作により、ロック状態とロック解除状態とを切り替えることが可能である。そして、ワンウェイクラッチ1は、従来のようにシャフトにコイルスプリングを巻き付けた構成ではなく、くさび形状のポケットPK内に配置されるローラ71を用いた構造であるので、軸方向の小型化を図ることができる。
【0075】
また、前記したように、切換部材5が内輪2と外輪3の双方に対して回動可能であり、かつ、回転規制部35、規制壁56および規制壁57によりこの回動範囲が規制され、切換部材5には戻し係合部53が設けられていることで、上述したようにアームフレームR1を上下に行き来させるような動作が可能である。
【0076】
そして、上記の動作とは別に、操作レバーR2の下端部を押せば、第2操作部62を介して解除部材4を反時計回りに回動させることができ、アームフレームR1の向きや当接部63の切換部材5に接触する位置によらず、使用者の意思によりいつでもロック解除をすることができる。すなわち、使いやすさを向上することができる。
【0077】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、適宜変形して実施することができる。
例えば、図12に示すように、ポケットPKの内壁に、ローラ71に対してポケットPKの径方向の幅が小さくなる側に近接して突起22Aを設けてもよい。こうすると、内輪2と外輪3のロック方向への強制的な相対回転時に突起22Aとローラ71とが接触し、それ以上はローラ71とポケットPKの内壁との接触圧が大きくならないので、内輪2と外輪3に過大な径方向荷重が掛かるのを抑制することができる。なお、この突起22Aは、外輪3の内周31に設けられていてもよい。
【0078】
また、前記実施形態において、ローラ保持部26は3つ設けられていたが、ローラ保持部26の数は1つ以上であればいくつであっても構わない。もっとも、内輪2と外輪3の回転をスムーズにするためには、ローラ保持部26は3つ以上で、できるだけ多いのが望ましい。
【0079】
前記実施形態においては、内輪2をアームフレームR1に固定し、外輪3をシートバックS1に固定したが、これを逆にして、外輪3をアームフレームR1に固定し、内輪2をシートバックS1に固定してもよい。なお、当然であるが、この場合には、ポケットPKのくさび形状の向きなどを適宜変更するとよい。
また、解除部材4を周方向のいずれの方向に回転させたときに内輪2と外輪3をロック可能にし、またはロック解除状態にするかは、ポケットPKのくさび形状の向きに応じて適宜変更することができる。
【0080】
前記実施形態においては、可動片の一例として、ローラ71を例示したが、可動片は、球であってもよいし、滑り性が適切に設定されていれば、内輪2や外輪3に対して転がらない、矩形やくさび形の小片であってもよい。
【0081】
第1の操作部材は、解除部材に係合しているのではなく、固定されていてもよい。この場合でも、第1の操作部材の当接部が小径部から大径部に乗り上げることができる程度に撓み変形可能な剛性に設定されていれば解除部材を回動させてロックおよびロック解除の切換が可能である。また、同様に、第2の操作部材も解除部材に固定されていても構わない。
【0082】
前記実施形態においては、外輪3の内周を円筒面にし、内輪2の外周(ローラ保持部26)に凹みを形成してポケットPKを形成していたが、内輪2の外周を円筒面にし、外輪3に凹みを設けてポケットを形成してもよい。
【0083】
前記実施形態において、回転規制部35は外輪3に設けられていたが、内輪2に設けられていてもよい。
【0084】
前記実施形態において、当接部63が大径部52に当接するときにロック解除状態とし、小径部51に当接するときにロックすることが可能な状態としたが、要するに、解除部材4を回動させることによりこれを切り替える原理を利用しているので、当接部63が大径部52に当接するときにロックすることが可能な状態とし、小径部51に当接するときにロック解除状態となるように構成してもよい。また、当接部63が当接する解除部材4の周面は、外周面ではなく、内周面であってもよい。この場合には、戻し係合部53は、内側に突出することになる。
【0085】
前記実施形態においては、切換部材5が外輪3に連動するように構成したが、切換部材5は、内輪2に連動して回動するように構成してもよい。
【0086】
前記実施形態においては、小径部51と大径部52の接続部に戻し係合部53を設けたが、戻し係合部53は、大径部52や小径部51の途中に設けることもできる。
【0087】
前記実施形態においては、付勢部材の一例として、スプリング72を例示したが、付勢部材は、ゴムダンパーであってもよい。
【0088】
前記実施形態においては、クラッチとして、ワンウェイクラッチ1を例示したが、クラッチは、内輪と外輪がいずれの方向へ回転するときも係合(ロック)させることが可能なツーウェイのクラッチでもよい。例えば、可動片(ローラ71)、ポケットPK、解除片41などを、スプリング72を挟んで対称に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 ワンウェイクラッチ
2 内輪
2A 金属内輪
2B 樹脂内輪
3 外輪
3A 金属外輪
3B 樹脂外輪
4 解除部材
5 切換部材
6 操作ロッド
21A 凹凸形状部
21B 凹凸形状部
22 傾斜面
22A 突起
23 付勢部材保持凹部
26 ローラ保持部
31 内周
32A 凹凸形状部
32B 凹凸形状部
35 回転規制部
41 解除片
42 延出部
43 係合突起
51 小径部
52 大径部
53 戻し係合部
54 内周部
56 規制壁
57 規制壁
61 第1操作部
62 第2操作部
63 当接部
69 係合孔
71 ローラ
72 スプリング
PK ポケット
R アームレスト
R1 アームフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックに取り付けられるアームレストであって、
アームフレームと、
前記アームフレームを回動可能に前記シートバックに支持させるクラッチとを備え、
前記クラッチは、
前記アームフレームおよび前記シートバックの一方に固定される内輪と、
前記内輪の径方向外側に、前記内輪から離間して設けられ、前記アームフレームおよび前記シートバックの他方に固定される外輪と、
前記内輪と外輪の間に位置し周方向の一方へ向かうにつれ径方向の幅が小さくなる部分を有するポケットに収容された可動片と、
前記可動片に対し周方向の前記一方側に隣接して配置された解除片を有し、前記内輪および外輪の双方に対し同軸で回動可能に設けられた解除部材と、
前記解除部材を作動させて、前記可動片が前記ポケットの内壁に挟持されるロック状態を解除する解除操作機構とを備えたことを特徴とするアームレスト。
【請求項2】
前記クラッチは、ワンウェイクラッチであり、
前記解除操作機構は、
前記解除部材に係合または固定された第1の操作部材と、
前記内輪および外輪の双方に対して同軸で回動可能であるとともに周面を有する切換部材とを備え、
前記第1の操作部材は、前記切換部材の前記周面に当接し、
前記切換部材は、前記周面として小径部と、当該小径部より大径の大径部とを有し、
前記内輪または前記外輪の一方は、前記切換部材に係合して前記切換部材に対する相対回転を所定角度範囲内に規制する回転規制部を有し、
前記周面には、径方向に向けて突出する戻し係合部が設けられ、
前記第1の操作部材が前記小径部および前記大径部の一方に当接することで前記解除部材を周方向の前記一方に回動させて前記可動片が前記ポケットの内壁に挟持されてロックされるのを可能とし、前記第1の操作部材が前記小径部および前記大径部の他方に当接することで前記解除部材を周方向の他方に回動させて前記可動片のロックを解除するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のアームレスト。
【請求項3】
前記内輪は、前記ポケットの内壁の一部を構成する第1の金属部品と、第1の樹脂部品とを含んでなり、
前記第1の金属部品の内周に形成された凹凸と前記第1の樹脂部品の外周に形成された凹凸との係合により前記第1の金属部品と前記第1の樹脂部品とが互いに周方向にずれないように組み合わされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアームレスト。
【請求項4】
前記可動片を前記周方向の一方側に向けて付勢するように配置された付勢部材をさらに備え、
前記内輪は、前記ポケットの内壁の一部を構成する第1の金属部品と、第1の樹脂部品とを含んでなり、
前記第1の金属部品の内周に形成された凹凸と前記第1の樹脂部品の外周に形成された凹凸との係合により前記第1の金属部品と前記第1の樹脂部品とが互いに周方向にずれないように組み合わされ、
前記第1の金属部品は、外周において、前記付勢部材を保持するための、中心に向かって凹んだ付勢部材保持凹部を有し、当該付勢部材保持凹部の径方向内側に、前記第1の金属部品の凹凸のうち中心に向かって凸となる凸形状が位置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアームレスト
【請求項5】
前記外輪は、前記ポケットの内壁の一部を構成する第2の金属部品と、第2の樹脂部品とを含んでなり、
前記第2の金属部品の外周に形成された凹凸と前記第2の樹脂部品の内周に形成された凹凸との係合により前記第2の金属部品と前記第2の樹脂部品とが互いに周方向にずれないように組み合わされていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のアームレスト。
【請求項6】
前記クラッチがロック状態にあるときには、前記可動片の径方向外側に、前記第2の金属部品の凹凸のうちの径方向外側に向かって凸となる凸形状が位置することを特徴とする請求項5に記載のアームレスト。
【請求項7】
前記解除部材は、径方向外側に向けて延びる延出部を有し、
前記第1の操作部材は、前記延出部において前記解除部材と係合し、前記外輪の径方向外側、かつ、軸方向において前記外輪と重なる範囲に配置されたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のアームレスト。
【請求項8】
前記ポケットの内壁には、前記可動片に対し周方向の前記一方側に突起が設けられ、前記内輪と前記外輪のロック方向への強制的な相対回転時に前記突起と前記可動片が接触するように構成したことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のアームレスト。
【請求項9】
前記解除操作機構は、前記解除部材に係合または固定され、前記アームフレームの先端に向けて延びる第2の操作部材を備えてなり、
前記第2の操作部材の操作により前記解除部材を周方向の前記他方に回動させることで、前記可動片のロックを解除可能にしたことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のアームレスト。
【請求項10】
前記解除操作機構は、前記解除部材に係合または固定され、前記アームフレームの先端に向けて延びる第2の操作部材を備えてなり、前記第2の操作部材の操作により前記解除部材を周方向の前記他方に回動させることで、前記可動片のロックを解除可能に構成され、
前記第1の操作部材は、アームフレームの回動軸周りに円弧状に設けられ、
前記第2の操作部材は、前記アームフレームの長手方向に沿って設けられ、
軸方向から見て、前記第1の操作部材と前記第2操作部材とは互いに重ならないように配置されたことを特徴とする請求項2に記載のアームレスト。
【請求項11】
前記アームフレームは、前記クラッチ側に突出して、前記外輪および前記内輪のうち前記シートバックに固定される方と係合してアームフレームの回動範囲を規制するストッパを有し、
前記ストッパは、軸方向において前記延出部と重なる範囲に設けられているとともに、軸方向から見て前記延出部と重ならない範囲に設けられていることを特徴とする請求項7に記載のアームレスト。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−35507(P2013−35507A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175234(P2011−175234)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000220066)テイ・エス テック株式会社 (625)
【Fターム(参考)】