説明

イオノマーポリエステル化合物のためのホスファイト安定剤

イオノマーポリエステルの発色を低減するための、ホスファイトのような被酸化性リン安定剤の使用を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリアミドポリマーをポリエステルポリマーマトリックスに分散させることは、産業において知られている。スルホン化ポリエステルポリマーが、その分散性を向上させることも知られている。分散工程中に着色物質が生じ得ること、およびスルホン化ポリエステルポリマーのリチウム塩を使用することにより発色が低減されることも知られている。
【背景技術】
【0002】
これらの分散体は、ハイバリアボトルを製造するために包装産業で使用される。ボトルを粉砕し、分散体を第2の熱履歴(例えば乾燥および再押出)に暴露すると、黄変が強くなり得ることが知られている。
【0003】
ホスフェートの使用が主張されることがある一方で、ホスファイトまたは被酸化性リン化合物は典型的には使用されない。被酸化性リン化合物の使用により、ポリエステル中でアンチモンのような触媒がその金属元素状態に還元され、好ましくない黒ずんだ色をもたらすことはよく知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、ポリエステルポリマー中で金属触媒を還元せず、リサイクル工程中に起こり得るような第2の熱履歴の際の黄変を最小にするかまたは低減する、安定剤に対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この明細書は、被酸化性リン化合物と、少なくとも1種のイオノマーモノマーから誘導されたイオノマーポリエステルとを含んでなる組成物であって、イオノマーポリエステルの酸単位の少なくとも90%がテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ジメチルナフタル酸およびそれらの各々のジメチルエステルからなる群から誘導され、該組成物がイオノマーポリエステルポリマーの量と存在するならば非イオノマーポリエステルポリマーの量との和であるポリエステル総量を有する、組成物を開示する。
【0006】
更に、該組成物のイオノマーモノマーが、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ジメチルナフタル酸およびそれらの各々のジメチルエステルのスルホネートの金属塩からなる群から選択され得ることを開示する。
【0007】
更に、被酸化性リン化合物が、トリフェニルホスファイト、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、(2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール)2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4−ビフェニルジホスホナイトからなる群から選択され得ることを開示する。
【0008】
被酸化性リン化合物は、総ポリエステルポリマー1,000,000部あたりリン15〜150部、総ポリエステルポリマー1,000,000部あたりリン15〜120部、または総ポリエステルポリマー1,000,000部あたりリン30〜100部の範囲で存在する。
【0009】
更に、組成物がポリアミドポリマーを本質的に含有しないことを開示する。また、組成物が、組成物の0.2重量%〜10重量%の範囲のポリアミドポリマーを更に含んでなることを開示する。
【0010】
組成物はまた、被酸化性リン化合物によって還元される金属イオンであった金属元素を本質的に含有できない。「本質的に含有しない」は、ホスファイトの添加によって沈降された沈降金属が事実上存在しない(0.5ppm未満)ことを意味する。別の化合物によって沈降された金属は存在していてもよい。リン化合物を含有する組成物と含有しない組成物とを比較できる。リン沈降金属を本質的に含有しないために、酸性リン化合物含有組成物は、酸性リン化合物を含有しない組成物に対して、0.5ppm未満、より好ましくは0.25ppm未満の金属元素または沈降金属を含有する。
【0011】
本明細書はまた、組成物が、多少の金属元素、しかしながら1ppm未満の金属元素、または2ppm未満の金属元素、または5ppm未満の金属元素、または10ppm未満の金属元素を含有し得ることを開示する。
【0012】
本発明の方法は、酸素の存在下で組成物を70℃より高い温度まで2分を超える時間加熱する工程を含む、前記組成物の熱処理法を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
非被酸化性リン(P+5)化合物は、ポリエステルポリマーを安定化させるためにしばしば使用される。リン酸(HPO)は、一般に使用されている安定剤である。トリエチルホスファイト(TEP)のような被酸化性リン化合物(P+3)は、被酸化性リン化合物と通常ポリマー中に存在する還元性(酸化)金属イオン触媒との酸化還元反応の故に、ポリエステルを安定化させるために実質的には使用されない。リン化合物は酸化されるので金属は還元され、しばしば、フィルターをふさぎ、反応器壁に堆積し、最終物品に黒ずんだ色をもたらす、金属元素粒子を生じる。非イオノマーポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレートコポリマーにおいて前記影響が認められる一方で、イオノマーポリエステルポリマー、例えば所定量のスルホン化金属塩を含有するポリエチレンテレフタレートコポリマー(例えばスルホイソフタル酸ナトリウムまたはスルホイソフタル酸リチウムから誘導されたもの)に被酸化性リン化合物を使用することについての情報はほとんどまたは全く存在しない。
【0014】
ポリマーがイオノマーである場合に、被酸化性リン化合物と金属触媒との酸化還元反応が全く生じないことが見出された。従って、得られるポリマーの黒ずみに作用することなく、イオノマー不含有組成物と比べて、多量の安定剤を組成物に使用できる。
【0015】
被酸化性リン安定剤が、イオノマーポリマーとポリアミドとの組み合わせを熱履歴(例えば、乾燥または溶融および押出)に付すことによって生じるカラーシフトを低減するのに有効であることも見出された。
【0016】
従って本発明は、主として、イオノマーポリエステルポリマーおよび被酸化性リン安定剤を含んでなる組成物を対象としており、該組成物はポリアミドを含有しない。「ポリアミドを含有しない」とは、組成物がポリアミドポリマーを含有し得ない、ポリアミドポリマーを本質的に含有しない、またはポリアミドを本質的に含まないことを意味する。
【0017】
しかしながら、ポリアミドを含有する別の組成物が存在する。従って、本発明は、イオノマーポリエステルポリマーおよび被酸化性リン安定剤を含んでなる組成物も対象としており、該組成物はポリアミドポリマーを更に含んでなる。
【0018】
本発明はまた、イオノマーポリマーおよびポリアミドを含んでなる組成物を加熱する方法であって、イオノマーポリエステルポリマー、ポリアミドポリマーおよび被酸化性リン化合物を含んでなる組成物を調製する工程と、酸素の存在下で該組成物を少なくとも70℃で少なくとも2分間熱処理(例えば空気中乾燥)に付す工程とを含む方法も対象とする。この熱処理は、組成物の乾燥、押出、および/または固相重合を包含するが、それらに限定されない。
【0019】
本発明に適したイオノマーポリマーは、極性コモノマーを用いて調製されたポリエステルを包含する。
【0020】
イオノマーポリマーの適当なタイプの1つは、結晶性スルホン化ポリエステルポリマーである。用語「結晶性」は、配向または熱誘起結晶性のいずれかの故に、熱可塑性ポリマーが半結晶性になり得ることを意味する。プラスチックは完全には結晶性でないこと、およびその結晶性状態は、より正確には半結晶性として記載されることはよく知られている。用語「半結晶性」は、この技術分野でよく知られており、結晶性領域のシャープな特徴と無定形領域特有の散乱した特徴とを有するX線パターンを示すポリマーを表すことを意味する。半結晶性を純結晶性状態および無定形状態と区別すべきであることも、この技術分野ではよく知られている。
【0021】
結晶性ポリマーを溶融状態から徐冷すると、ポリマーは結晶を形成する。この結晶は、X線によって観察可能な回折を生じる。
【0022】
好ましくは、本発明に使用される熱可塑性ポリマーは、ポリエチレンテレフタレートのスルホン化ホモポリマーまたはポリエチレンテレフタレートのスルホン化結晶性コポリマーを意味する、スルホン化ポリエステルポリマーを含んでなる。明確にするために、用語「結晶性ポリエチレンテレフタレート」および「結晶性ポリエチレンテレフタレートからなる群」は、結晶性であり、少なくとも85%のポリエチレンテレフタレート反復セグメントを含んでなる、ポリマーを意味する。残りの15%は、酸−グリコール反復単位の他の組み合わせであり得、得られたポリマーは、少なくとも5%、より好ましくは10%の結晶化度に達し得る。
【0023】
用語「結晶性ポリエステル」は、結晶性であり、その酸部分の少なくとも85%がテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸またはそれらの各々のジメチルエステルからなる群から選択されている、ポリマーを意味する。
【0024】
有用なポリエステルポリマーは、酸部分がテレフタル酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸またはそれらの各々のジメチルエステルから誘導されている、フタレートポリマーおよびナフタレートポリマーである。
【0025】
主たる酸の選択にかかわらず、ポリエステル相中のポリエステルポリマーの少なくとも一部はスルホン化されている。
【0026】
1つの好ましい結晶性ポリエステルはPETである。PETは、酸またはそのジエステルとエチレングリコールとの約1:1の化学量論反応による、ポリエチレンテレフタレートと、スルホイソフタレート(SIPA)のジエステルまたはジカルボン酸から誘導されたスルホイソフタレートの金属塩で変性されたポリエチレンテレフタレートコポリマーを包含するポリエチレンテレフタレートコポリマーとからなる、ポリエステルの群である。
【0027】
興味深い特定のコポリマーは、酸部分としての少なくとも1種のスルホイソフタレートと、イソフタル酸またはそのジエステル、2,6−ナフタレンジカルボン酸またはそのジエステル、およびシクロヘキサンジメタノールからなる群から選択されるコモノマーから誘導された少なくとも1種の別の酸部分とを含有する結晶性ポリエチレンテレフタレートである。好ましいスルホイソフタレートは、物品中のポリエステルの酸部分に基づいて0.01〜2.0mol%の範囲のリチウムスルホイソフタレート濃度を有するリチウムスルホイソフタレートである。
【0028】
別の好ましい結晶性ポリエステルは、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)である。PTTは、例えば、1,3−プロパンジオールと少なくとも1種の芳香族二酸またはそのアルキルエステルとの反応により調製され得る。好ましい二酸およびアルキルエステルは、テレフタル酸(TPA)またはジメチルテレフタレート(DMT)を包含する。従って、PTTは、好ましくは少なくとも約80mol%のTPAまたはDMTを含んでなる。そのようなポリエステルに共重合され得る他のジオールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび1,4−ブタンジオールを包含する。スルホイソフタル酸の金属塩のような金属スルホネートに加えて、コポリマーを調製するために同時に使用され得る、他の芳香族および脂肪族の酸は、例えば、イソフタル酸およびセバシン酸を包含する。
【0029】
別の好ましい結晶性ポリエステルは、PENとしても知られているポリエチレンナフタレートである。PENは、2,6−ナフタレンジカルボン酸またはそのジエステル(2,6−ジメチルナフタレート)とエチレングリコールとの反応により調製される。
【0030】
また、本発明の結晶性ポリエステルは、再生ポリエステル、或いは使用済みポリエステルまたは工業リサイクル済みポリエステルに由来する材料(例えばポリエステルモノマー、触媒およびオリゴマー)を含み得ると考えられる。
【0031】
ポリエステルポリマーは、非スルホン化ポリエステル分子とスルホン化ポリエステル分子の混合物でもあり得る。
【0032】
ポリエステルポリマー相中のポリエステルポリマー分子は、通常、少なくとも1個の金属スルホネートを含有する。ポリエステルポリマーとポリアミドポリマーとを混合するとき、スルホン化ポリエステルポリマーが、ポリエステルポリマーとポリアミドポリマーの間の界面張力に作用するが、ポリアミドの存在は、金属を還元することなくポリエステルを安定化させるための被酸化性リン化合物の作用にとって必須ではない。
【0033】
従って、好ましいポリマー組成物はイオノマーポリエステルポリマーであって、該イオノマーポリエステルポリマーは、スルホン化ポリエステル、好ましくは0.01mol%〜5mol%の範囲のスルホイソフタル酸リチウム、およびスルホン化ポリエステルに対するトリエチルホスファイト(TEP)中リン元素として5〜200ppmの量のTEPである。
【0034】
スルホン化ポリエステルポリマーは、通常、官能化金属スルホネートに由来する金属スルホネートを含んでなる。用語「官能化金属スルホネート」は、式:R−SOM[式中、Mは金属イオンであり、Rは、官能化金属塩をポリエステル或いはその各モノマーまたはオリゴマーと反応させる官能基を少なくとも1個含有する、脂肪族、芳香族または環状化合物であり、Mは金属イオンである。]で示される化合物を表す。本発明において包含される官能化金属スルホネートは、脂肪族および芳香族のアルコール、カルボン酸、ジオール、ジカルボン酸、および多官能性のアルコール、カルボン酸、アミンおよびジアミンを包含するスルホン化コモノマーの、リチウム塩およびナトリウム塩である。一方、非官能性金属スルホネートは、R−SOMで示されるものであって、Rは官能基を含有しない。従って、用語「金属スルホネート」は、官能性金属スルホネートと非官能性金属スルホネートの両方を意味する。その例は、ポリエステル−ポリアミド系中で金属スルホネートとして作用することが知られている、スルホン化ポリスチレンまたはスルホン化ポリオレフィンである。
【0035】
一般に、金属スルホネートは、式:X−R[式中、Xは、アルコール、カルボン酸またはエポキシ、最も好ましくは、ジカルボン酸またはジオールであり、Rは、−SOM、−COOM、−OM、−PO(M)であり、Mは、Li、Na、Zn、Sn、KおよびCaからなる群から選択され得る+1価または+2価状態の金属である。]で示される官能化状態で存在する。X−Rは、界面張力を変更するために、ポリエステルポリマーに共重合される。X−Rの必要量は、ポリマー組成物中の各々のジカルボン酸またはジオールの総モル数に対して0.01mol%を超える。X−Rに、ジオールとジカルボン酸の両方を含むことも可能である。その場合、モルパーセントは、各々のジオール、ジカルボン酸またはポリマー反復単位の総モル数に基づく。
【0036】
官能化金属スルホネートは、2個以上のR基を含有し得る。Rは、ジオール、ジカルボン酸であり得るXの芳香族環、またはメチレン基のような側鎖に直接結合する。下記構造は一例である。
【化1】

[式中、Rは、−SOM、−COOM、−OM、−PO(M)であり、Mは、Li、Na、Zn、Sn、CaおよびKからなる群から選択され得る+1価または+2価状態の金属である。]
Rが−SOMである場合、化合物はスルホネート、有機スルホネート、より具体的にはスルホイソフタル酸として知られる。この対象が金属スルホネートであるならば、ポリエステルは、スルホイソフタル酸の金属塩に由来する酸単位を含有する。このとき、金属は、リチウム、ナトリウム、亜鉛、錫、カルシウムおよびカリウムからなる群から選択され得る。
【0037】
Xによって表されたジカルボン酸は、それぞれ、オルト、メタまたはパラであってよい。それらは例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸などのような芳香族ジカルボン酸を包含する。
【0038】
Xは、脂肪族であってもよい。その場合には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのような脂肪族ジカルボン酸が適している。シクロヘキサンジカルボン酸のような脂環式ジカルボン酸、およびそれらの1種以上の種を使用できる。イセチオン酸も包含される。ジカルボン酸の混合物も具体的には考えられる。
【0039】
Xは、アルコール、好ましくは下記構造:
【化2】

[式中、Rは、−SOM、−COOM、−OM、−PO(M)であり、Mは、Li、Na、Zn、Sn、KおよびCaからなる群から選択され得る+1価または+2価状態の金属である。]
で示されるジオールも表し得る。
【0040】
Xによって表されたジオールは、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコールのような脂肪族グリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールのような脂環式ジオールであり得、1種以上の種を組み合わせて使用できる。それらのうち、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびシクロヘキサンジオールが好ましい。
【0041】
使用され得る他の官能化金属スルホネートは、ヒドロキシル末端ポリエーテル、例えばポリエチレングリコール(Carbowax)、および環状アミド、例えばエトキシル化ジメチルヒダントインを包含する。また、ポリエステルは、エポキシ末端ポリエーテルを包含するエポキシ末端化合物と反応して、ポリマーに結合したポリエーテル側鎖を形成することができる。
【0042】
下記構造:
【化3】

は、スルホイソフタル酸リチウム(LiSIPA)またはイソフタル酸変性スルホン酸リチウム塩を示す。
【0043】
塩形態のうち、ジカルボン酸、ジエステル、または予備反応低分子量オリゴマー、例えばリチウムスルホイソフタレートのビス−ヒドロキシエチルエステルが好ましい。金属スルホネート、この場合はリチウムスルホネートがジオール形態で存在することも可能である。可能な代替物は、ペンダント鎖の末端にスルホネート基を含有するエチレングリコールである。ポリエステル分子の末端にスルホネートを配置することが提案されてきた。これは、溶融反応器または押出機のいずれかで、ポリエステルと安息香酸のスルホン化塩または他の単官能性種(例えばイセチオン酸)とを反応させるかまたは共重合させることによって達成され得る。
【0044】
共重合としても知られている、いずれかのポリマーへの反応のために、金属スルホネートは少なくとも1個の官能基を含有しなければならない。これらの官能基の例は、カルボン酸(−COOH)、アルコール(−OH)、カルボン酸エステル、エポキシ末端、ジアミンまたはアミン末端基である。
【0045】
非官能化金属スルホネートは、極性基含有化合物、例えばリチウム塩であるが、金属スルホネートをポリエステルまたはポリアミドと反応させる官能性末端基を含有しない。スルホン化ポリスチレンのリチウム塩が、例として挙げられる。3成分系では、金属スルホネートのモルパーセントは、ポリエステルの酸基の全てに基づいたモルパーセントである。
【0046】
以下に教示するように、ポリエステルポリマーは、金属スルホネートで変性される。この変性は、金属スルホネートをポリマー鎖に共重合させることによって行われる。
【0047】
組成物は、2成分形態で要素を含み得る。もちろん、2成分に加えて、他の化合物も組成物中にもちろん存在できる。2成分形態の1つの態様では、金属スルホネートをポリエステルポリマーと共重合させて、ポリエステルをスルホン化ポリエステルコポリマーにする。
【0048】
組成物の要素は、3成分以上として存在することもできる。また、重要な成分に加えて、他の化合物が組成物中に存在することももちろん可能である。例えば、1つの態様は、ポリマーと共重合された金属スルホネートを含有しないポリエステル、ポリマーと共重合された金属スルホネートを含有するポリエステル、並びにポリアミドおよび被酸化性リン化合物と共重合された金属スルホネートを含有しないポリアミドである。別の態様は、ポリマーと共重合された金属スルホネートを含有しないポリエステル、並びにポリマーおよび被酸化性リン化合物と共重合された金属スルホネートを含有するポリエステルである。
【0049】
別の態様は、ポリマーと共重合された金属スルホネートを含有しないポリエステル、ポリマーと共重合された金属スルホネートを含有するポリエステル、ポリアミドと共重合された金属スルホネートを含有するポリアミド、並びにポリアミドおよび被酸化性リン化合物と共重合された金属スルホネートを含有しないポリアミドである。
【0050】
例えば、典型的なホモポリマーポリエステルは、100mol%のテレフタル酸由来テレフタレートおよび約100mol%のエチレングリコール由来エチレンを含有し、残りのグリコールは、製造工程中にインサイチューで誘導されたジエチレングリコールに由来するジエチレンである。5mol%のイオン性ジカルボン酸コモノマー(例えばスルホイソフタル酸リチウム)を含有するポリマー100molは、95molのテレフタル酸由来テレフタレート、5molのリチウムスルホイソフタレート、および約100molのエチレングリコール由来エチレンを含有する。同様に、イソフタル酸のような別のコモノマーを使用することも有利であり得る。例えば、2molのテレフタレートを2molのイソフタレートに置き換えて、2molのイソフタレート、93molのテレフタレート、5molのスルホイソフタレートおよび約100molのエチレンを含有するポリマーを調製し、100molのポリマー反復単位を作ることができる。
【0051】
3成分ブレンド系において、酸のモル数は、スルホン化ポリエステルポリマー中の酸のモル数と相溶性未変性ポリエステルポリマー中の酸のモル数との和である。例えば、2種類のポリエステルが存在し、1種はスルホイソフタレートを含有し、もう1種はスルホイソフタレートを含有しないならば、スルホイソフタレートのモルパーセントは、スルホイソフタレートのモル数を、一緒に添加された2種のポリエステルの酸部分のモル数で除したものである。
【0052】
また、ジエチレングリコールが、ポリエステルの調製においてインサイチューで生成されること、およびグリコール由来反復単位の総モル数の約1〜3%がジエチレングリコール由来ジエチレンであることもよく知られている。従って、ポリエステルの組成は、しばしば、約97mol%のエチレンおよび約3mol%のジエチレンである。
【0053】
金属スルホイソフタル酸またはそのジメチルエステルに由来する金属スルホイソフタレートの典型的な濃度は、約0.01〜約15mol%の範囲であり、約0.05〜約10mol%の範囲がより好ましく、約0.1〜5mol%の範囲もまた好ましく、約0.2〜約4mol%および約0.3〜約2mol%の範囲も良好な操作範囲である。金属スルホネートの量は、ポリマー中のイオウまたはポリマー中の金属の量を測ることによって測定される。スルホネートがイソフタレート類に属する場合、スルホネートは、金属スルホイソフタル酸およびグリコールに由来する金属スルホイソフタレートであると記載され得、金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛およびマンガンからなる群から選択される。
【0054】
本発明に使用される金属スルホネート変性ポリエステルは、大抵の重合法により調製され得る。常套技術は、エステル法、酸法および変性法に分けることができる。エステル法では、加熱下でカルボン酸のジメチルエステルをグリコールと反応させ、除去されたメタノールが酸のビスヒドロキシエチルエステルを生じる。次いで、ビスヒドロキシエチルエステルを減圧および加熱してグリコールを除去し、分子量を増加させることによって、液体状態で重合させる。対象とする金属スルホネート含有ポリマーの典型的な調製は、以下の割合から出発する:98molのジメチルテレフタレート、2molのスルホイソフタレートのジメチルナトリウム塩、および220molのグリコール(典型的にはエチレングリコール)。220molのグリコールのうち、120は過剰であり、工程中に除去される。ビス−(ヒドロキシエチル)形態またはジメチルエステル形態のいずれかでスルホン化コモノマーが得られることに注意しなければならない。
【0055】
明確にするために、「少なくともX%の特定の酸と共重合させる」という表現は、その化合物がポリマーの酸基の部分(例えばテレフタル酸またはイソフタル酸)と見なされることを意味する。これにより、何モルの化合物を使用するかを決めるための基準が与えられる。この表現は、該化合物が酸として工程に添加されなければならないことを意味するのではない。例えば、スルホイソフタル酸リチウムは、2個のカルボン酸末端基を含有する酸として、カルボン酸のジメチルエステルとして、ジメチルエステルのビス−ヒドロキシエステルとして、グリコール酸ポリマーの超低分子量オリゴマーとして(このとき、酸部分は少なくとも一部分においてスルホイソフタレート塩である)、またはジアルコールとして、ポリエチレンテレフタレートに共重合され得る。
【0056】
「酸の塩を共重合させる」という表現は、酸形態のものしか使用できないとして請求項を制限すべきではなく、化合物がポリマー内で酸由来基の1つになることを意味すると理解されるべきである。
【0057】
「と共重合させる」という表現は、化合物をポリマーと、例えばポリマー鎖内にまたはペンダント基として化学反応させることを意味する。例えば、リチウムスルホイソフタレートと共重合させたポリエステル、またはポリエステルに少なくとも0.01mol%のスルホイソフタレートを共重合させることによって変性されたポリエステルは、スルホイソフタレートがポリマーと少なくとも1個の化学結合で結合していることを意味し、この結合は、ポリマー鎖への結合を包含する。この表現は、どのようにして物質がポリマーに組み込まれたかを問題としない。リチウムスルホイソフタレートと共重合させたポリエステル、またはポリエステルに少なくとも0.01mol%のリチウムスルホイソフタレートを共重合させることによって変性されたポリエステルは、リチウムスルホイソフタレート含有ポリエステルを意味し、リチウムスルホイソフタレートが、限定されるわけではないが、スルホイソフタル酸リチウム、スルホ安息香酸リチウム、スルホイソフタル酸リチウムのジメチルエステル、スルホ安息香酸リチウムのメチルエステル、リチウムスルホヒドロキシベンゼン、ヒドロキシベンゼンスルホン酸のリチウム塩、或いはリチウムスルホイソフタレート含有オリゴマーまたはポリマーを用いて組み込まれたかどうかは問われない。
【0058】
先の段落では例としてリチウムを使用したが、同じことがナトリウムおよび他の金属塩についても言える。本明細書におけるリチウムに対する言及が特許請求の範囲をリチウム塩のみに制限すべきではないことに、注意しなければならない。リチウムは好ましい金属であるが、被酸化性リン化合物の使用がナトリウムのような他の金属を用いた場合に有効ではないと考えられる理由はない。従って、他の金属の使用も考えられる。
【0059】
「および誘導体」並びに「およびその誘導体」という表現は、ポリマーに共重合され得る、金属スルホネート塩の様々な官能化形態を意味する。例えば、リチウムスルホイソフタレート「およびその誘導体」は、限定するわけではないが、スルホイソフタル酸リチウム、スルホイソフタル酸リチウムのジメチルエステル、スルホイソフタル酸リチウムのビス−ヒドロキシエチルエステル、低分子量オリゴマー、およびポリマー鎖中にリチウムスルホイソフタレートを含有する高I.V.ポリマーをまとめて意味する。
【0060】
同じ命名法が金属スルホネートを含有するグリコールまたはアルコールにも適用される。
【0061】
酸法では、出発物質はジカルボン酸であり、水が主な副生物である。典型的な酸法における導入割合は、99.5molのテレフタル酸、0.5molのスルホイソフタル酸の金属塩(例えば、スルホイソフタル酸リチウム−LiSIPA)、および120molのグリコール(典型的にはエチレングリコール)である。初期導入物は、被酸化性リン化合物および触媒も含む。グリコールと酸との反応後、物質を、エステル法と同じ重合法条件に付す。実際には、塩の多くは分解するので、予備反応させたビスヒドロキシエステル形態で添加される。
【0062】
変法は、特定の工程で中間生成物を組み合わせた、各方法の変法である。例えば、酸法を使用して、テレフタル酸のみを用いてその低分子量中間体を調製でき、エステル法を使用して、ホモポリマースルホン化ポリエステルのビス−ヒドロキシエチルエステルを調製できる。次いで、これら2つの中間体を混合し、よりランダムなコポリマーに重合させる。別の変法では、最終変性ポリマーを溶融反応器に添加し、溶融工程で変性ポリマーを解重合させ、その後、ランダムコポリマーを生成させる。PET、スルホン化PETの3成分系は、本発明の一部と見なされる。
【0063】
未変性イソフタル酸誘導体を含有するターポリマーを調製しようとするならば、98molのテレフタル酸、0.5molのスルホイソフタル酸リチウム、および1.5molの非スルホン化イソフタル酸を使用する。
【0064】
変性ポリマーの別の製造方法では、多量の金属スルホネート基を含有する変性ポリエステルを、未変性ポリエステルに完全エステル交換して、よりブロックであるコポリマーを調製する。これは、長い滞留時間および/または高温押出のような他の方法を用いて実施され得る。
【0065】
被酸化性リン化合物の例は以下のものである:
テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4−ビフェニルジホスホナイトとしても知られているClariant GmbH(ドイツ国在)製Sandostab(登録商標)P-EPQ(CAS 119345-01-6);
Sigma-Aldrich社(米国MO 63103セントルイス在)製トリエチルホスファイト(CAS 122-52-1)C15P;
Sigma-Aldrich社(米国MO 63103セントルイス在)製トリメチルホスファイト(CAS 121-45-9)C15P;
Sigma-Aldrich社(米国MO 63103セントルイス在)製トリフェニルホスファイト(CAS 101-02-0)C15P;
ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトとして知られているCrompton Corporation(現Chemtura Corporation、米国コネティカット州ミドルベリ在)製Ultranox 626(登録商標)(CAS 26741-53-7);
(2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール)2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールホスファイトとして知られているCrompton Corporation(現Chemtura Corporation、米国コネティカット州ミドルベリ在)製Ultranox 641(登録商標)(CAS 161717-32-4)(MW=450)。
【0066】
安定剤の量に厳密な上限は存在しないが、リンが、組成物中のポリエステルポリマーの総量1,000,000部あたりリン15部〜組成物中のポリエステルポリマーの総量1,000,000部あたりリン150部の範囲で存在するのに十分な量で、安定剤は存在すべきである。組成物中のポリエステルポリマーの総量は、存在するイオノマーポリエステルポリマーの量と存在するならば非イオノマーポリエステルポリマーの量との和である。リン元素に基づいて15〜150ppmが好ましいが、リン元素に基づいて15〜120ppmがより好ましく、リン元素に基づいて20〜100ppmが最も好ましい。
【0067】
被酸化性リン化合物の添加は、好ましくは、反応開始時に、被酸化性リン化合物をイオノマーポリエステルポリマーに溶融混合させることによって実施する。
【0068】
安定剤は、イオノマーポリエステルポリマーを溶融し、場合によりパーツに押し出すかまたは非イオノマーポリエステルポリマーまたは場合によりポリアミドとブレンドする場合、後の溶融混合によって添加することもできる。
【0069】
被酸化性リン化合物は、アンチモンを還元することなくイオノマーポリエステルを安定化するので、この組成物はポリアミドの不存在下でさえ有用である。従って、組成物は、ポリアミドポリマーを含有し得ないか、ポリアミドポリマーを本質的に含有し得ないか、イオノマーポリマーおよび被酸化性リン化合物からなり得るか、またはイオノマーポリマーおよび被酸化性リン化合物から本質的になり得る。
【0070】
本発明はポリアミドの存在下でも安定化するので、組成物はポリアミドポリマーを更に含むことができる。本発明に適した変性または未変性であり得るポリアミドは、アミノカプロン酸またはA−Dの反復単位からなる群から選択されるものとして記載され得、Aは、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、レゾルシノールジカルボン酸またはナフタレンジカルボン酸を包含するジカルボン酸或いはそれらの混合物の基であり、Dは、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミンまたは1,4−シクロヘキサンジメチルアミンを包含するジアミン或いはそれらの混合物の基である。
【0071】
これらのポリアミドは、末端基滴定によって測定されるように、2000〜60,000の数平均分子量を有し得る。これらのポリアミドは、アミノカプロン酸同士の反応生成物、および/またはアジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、レゾルシノールジカルボン酸またはナフタレンジカルボン酸を包含するジカルボン酸或いはそれらの混合物の基と、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミンまたは1,4−シクロヘキサンジメチルアミンを包含するジアミン或いはそれらの混合物の基との反応生成物としても記載され得る。
【0072】
当業者は、よく知られている市販ポリアミドとして多数の化合物を認識している。セバシン酸の基とヘキサメチレンジアミンとの反応生成物は、ナイロン6,10であり、アジピン酸の基とヘキサメチレンジアミンとの反応生成物は、ナイロン6,6である。ナイロン6,12は、本発明に有用である別のナイロンである。ナイロン6は、カプロラクタムを開環し、次いで、式:HN−(CH−COOHで示される得られたアミノカプロン酸を重合させることによって調製される、特定タイプのポリアミドである。1つの有用なポリアミドは、ポリ−m−キシリレンアジパミドとして知られている、アジピン酸の基とm−キシリレンジアミンとの反応生成物である。この生成物は、MXD6またはナイロンMXD6として商業的に知られており、三菱ガス化学社(日本国在)から購入できる。
【0073】
ポリアミドの好ましい量は、物品組成物100部あたり1〜15部、好ましくは物品組成物100部あたり3〜8部であり、最も好ましくは物品組成物100部あたり4〜7部である。ポリエステルポリマーの総量は、物品の総重量の少なくとも80%でなければならず、組成物の全成分の重量パーセントは合計で100%である。
【実施例】
【0074】
以下の実施例は、本発明の機能性を説明する。
【0075】
実施例1
7692gのテレフタル酸、194gのイソフタル酸、2924gのエチレングリコールを、先のバッチからの予備反応オリゴマーの容器に導入することによって、スルホイソフタル酸リチウム(LiSIPA)から誘導されたリチウムスルホイソフタレートの形態で所定量のリチウムスルホネートを含有する結晶性ポリエステルを調製した。予備反応オリゴマーをヒール(heel)と称する。反応器に導入される量であるバッチに対するヒールの重量は、約1:1である。内容物を262℃、3.38barの圧力の下で保持した。35分後、酢酸リチウムのエチレングリコール中1重量%リチウム混合物の4.5g、トリエチルホスフェート(TEP)のエチレングリコール希釈1重量%リン(60ppmリン)混合物の90.7g、SB138トナーの0.0550g、およびSV50トナーの0.02908gを反応器に導入した。内容物を、271℃の油温で3時間撹拌しながら、この容器内で保持した。内容物の温度は、3.38barで248℃〜263℃に上昇した。この間、容器から水を除去した。
【0076】
3時間反応させた後、容器内容物の一部を第2容器に移した。第1容器に残ったヒールは、原材料を最初に導入したときに容器内にあった量とほぼ同じ量であった。第2容器において、第1容器から第2容器に移した材料に、1重量%アンチモンの223、5%スルホイソフタル酸リチウムビスヒドロキシエチルエステル−95%エチレングリコール溶液の191g、およびエチレングリコールの1412gを添加した。第2容器の内容物を、大気圧下、244℃で撹拌した。30分混合した後、圧力を100torrまで低下させ、更に26分後、圧力を1.0torrまで低下させた。40分後、圧力は0.2torrであり、この圧力で20分間維持した後、成分を取り出し、無定形状態で材料をペレット化した。
【0077】
この無定形ペレット化材料を、複数の他の同様に調製したバッチと混合し、次いで、0.802I.V.(dL/g)に達するまで、0.1mmHgおよび230℃で、バッチ回転真空容器で固相重合させた。リチウムスルホイソフタレートの量は、得られるモルパーセントに応じて変化させた。表に記載したリチウムスルホイソフタレートの量は、X線を用いて測定したポリマー中のイオウ量に基づいており、導入量に基づく量ではない。
【0078】
HunterLab ColorQuest XEを用い、樹脂についてハンターL*色を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
実施例2
LiSIPAを添加しなかったこと、および実施例1で調製したポリマーとほぼ同じ色にするためにトナー濃度を調整したこと以外は、本質的に実施例1に記載したように、結晶性ポリエステル樹脂を調製した。樹脂は実施例1に記載したようにSSPバッチであり、カラーデータを測定した。HunterLab ColorQuest XEを用い、樹脂についてハンターL*色を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
TEPを添加せずに、実施例1および2の手順に従って対照も調製した。結果を以下の表1における1aおよび2aとして示す。LiSIPAを添加した場合のL*色の小さい変化は、沈降アンチモンが存在しないことを示す。
【0081】
【表1】

【0082】
実施例3
結晶性ポリエステル樹脂を、実施例1に記載したように調製した。樹脂は、実施例1に記載したように固体状態重合されたバッチであった。実施例1で与えられた末端基および分子量を有するポリアミドペレットの約100gを独立して乾燥し、実施例1に記載した結晶性ポリエステルの1900gと溶融混合した。次いで、プレフォームを製造し、粉砕し、SSPバッチスケール反応器で177℃×6時間空気乾燥して、リサイクル工程をシミュレートした。粉砕プレフォームについて、ハンターb*色を測定した。HunterLab ColorQuest XEを用いて、プレフォームの色を測定した。結果を表2に示す。
【0083】
実施例4
安定剤としてTEPを添加しなかったこと以外は、実施例3に記載したように、結晶性ポリエステル樹脂を調製した。実施例3に記載したように、プレフォームを製造して粉砕した。粉砕プレフォームについて、ハンターb*色を測定した。HunterLab ColorQuest XEを用いて、プレフォームの色を測定した。結果を表2に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
試験方法
HunterLab ColorQuest試験法
HunterLab ColorQuest XE分光比色計試験法を用いて、樹脂のL*色、a*色およびb*色を測定した。取扱説明書に従い、適当な試験片ホルダーを用いて、各試料を4つの異なった場所で試験した。試験終了時、依頼顧客は、スケールおよびパラメーターを規定した平均および標準偏差を、ソフトフェアを用いて表示、保存および印刷することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被酸化性リン化合物と、少なくとも1種のイオノマーモノマーから誘導されたイオノマーポリエステルとを含んでなる組成物であって、イオノマーポリエステルの酸単位の少なくとも90%がテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ジメチルナフタル酸およびそれらの各々のジメチルエステルからなる群から誘導され、該組成物がイオノマーポリエステルポリマーの量と存在するならば非イオノマーポリエステルポリマーの量との和であるポリエステル総量を有する、組成物。
【請求項2】
イオノマーモノマーが、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ジメチルナフタル酸およびそれらの各々のジメチルエステルのスルホネートの金属塩からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
被酸化性リン化合物が、トリフェニルホスファイト、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、(2,4,6−トリ−t−ブチルフェノール)2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4−ビフェニルジホスホナイトからなる群から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
被酸化性リン化合物が、総ポリエステルポリマー1,000,000部あたりリン15〜150部の範囲で存在する、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
被酸化性リン化合物が、総ポリエステルポリマー1,000,000部あたりリン15〜120部の範囲で存在する、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
被酸化性リン化合物が、総ポリエステルポリマー1,000,000部あたりリン30〜100部の範囲で存在する、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
組成物がポリアミドポリマーを本質的に含有しない、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
組成物が、組成物の0.2重量%〜10重量%の範囲のポリアミドポリマーを更に含んでなる、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
組成物が、被酸化性リン化合物によって還元される金属元素を本質的に含有しない、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
組成物が1ppm未満の金属元素を含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
組成物が2ppm未満の金属元素を含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
組成物が5ppm未満の金属元素を含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
組成物が10ppm未満の金属元素を含有する、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
酸素の存在下で組成物を70℃より高い温度まで2分を超える時間加熱する工程を含む、請求項9〜13のいずれかに記載の組成物を熱処理する方法。

【公表番号】特表2010−537007(P2010−537007A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522082(P2010−522082)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/074092
【国際公開番号】WO2009/026555
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(502214480)エンメ エ ジ・ポリメリ・イタリア・ソチエタ・ペル・アツィオーニ (16)
【Fターム(参考)】