説明

イオン交換性混合物及びその製造方法

【課題】イオン交換性混合物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】イオン交換樹脂からなる高分子化合物と、ビス−アクリルアミド及びアクリルアミドをそれぞれ少なくとも1種以上含むアクリルアミド混合物と、高分子化合物及びアクリルアミド混合物を反応させて得た共重合体と、を含むイオン交換性混合物及びその製造方法である。これにより、本発明のイオン交換性混合物を利用して製造したイオン交換性膜は、従来のイオン交換性膜よりはるかに低い電気抵抗を有し、電荷を帯びるために優れた選択透過性を有する。また、本発明のイオン交換性膜は、製造条件が非常にマイルドなので、製造が非常に容易であり、かつ水溶媒下で架橋反応と同時に成膜されるので、所望のサイズ、形状、形態に自由に製造できるという長所がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換性混合物及びその製造方法に係り、より具体的には、電気抵抗が低く、選択透過性があり、かつ製造が容易であるので、膜への成形においてサイズ、形態などに影響されないイオン交換性混合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細流動装置は、入口、出口及び反応容器などがマイクロチャンネルを介して連通する装置をいう。このような装置は、当業界に公知であり、LOC(Lab−on−a−chip)などの微細分析装置に広く利用されている。このような微細流動装置には、前記マイクロチャンネルが形成されている以外に、一般的に流体の移送及び混合のためのマイクロポンプ、マイクロミキサ及び移送される流体を濾過するためのマイクロフィルタなどが備えられている。
【0003】
LOCのような生物分析装置として使われる微細流動装置は、一般的に細胞またはウイルスを溶解する過程に必要な装備を備えるか、外部で溶解された細胞溶液または既に精製された物質を利用せねばならない。従来の細胞溶解方法として、アルカリ法、酵素を用いる方法、煮沸法などが使われていた。
【0004】
アルカリ法は、細胞またはウイルスにNaOHなどの化学物質を添加して、高いpHに露出させて細胞を溶解する方法である。しかし、アルカリ法のような従来の細胞またはウイルスの溶解法をLOCなどの微細流動装置に用いるには、多くの問題点がある。例えば、NaOHなそのアルカリ溶液を添加するか、アルカリ溶液を利用して細胞を溶解して得られるアルカリ性である細胞溶解液に、中和溶液を添加して中和する場合には、細胞を溶解させるためのアルカリ溶液の注入段階及びこのための装置が必要であり、アルカリ溶液及び中和溶液の添加によるサンプル溶液が希釈されるという問題が発生する。このような溶液の注入段階及び装置問題は、微細体積を扱う微細流動装置においては、深刻な問題となり、また、その後のPCRのような生物学的分析方法を使用するために、NaOHなどのアルカリ溶液は、除去されるか、または中和されねばならない。
【0005】
前記のような問題点を解決するために、別途にアルカリ溶液を注入する必要なく、電気分解によってpHを調節することによって、アルカリ溶液に作り、前記のように形成されたpHをイオン交換性膜で維持しつつ、これによりインシチュ(in situ)で細胞を溶血させる方法が必要であるが、形成されたpHが一定に維持されるように優れた選択透過性を示すと共に、電気伝導度に優れて電気分解の効率を高めるイオン交換性膜に関しては、まだ知られていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が達成しようとする第1の技術的課題は、電気抵抗が低く、選択透過性があり、膜への成形が容易なイオン交換性混合物を提供することにある。
【0007】
本発明が達成しようとする第2の技術的課題は、前記イオン交換性混合物の製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明が達成しようとする第3の技術的課題は、前記イオン交換性混合物を利用して製造したイオン交換性膜を提供することにある。
【0009】
本発明が達成しようとする第4の技術的課題は、前記イオン交換性膜を利用して製造した微細流動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記第1の技術的課題を達成するために、(a)陰イオン交換樹脂からなる高分子化合物と、(b)ビス−アクリルアミド及びアクリルアミドをそれぞれ少なくとも1種以上含むアクリルアミド混合物と、(c)前記陰イオン交換樹脂からなる高分子化合物と前記アクリルアミド混合物とを反応させて得た共重合体と、を含むイオン交換性混合物を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記第1の技術的課題を達成するために、(a)陽イオン交換樹脂からなる高分子化合物と、(b)ビス−アクリルアミド及びアクリルアミドをそれぞれ少なくとも1種以上含むアクリルアミド混合物と、(c)前記陽イオン交換樹脂からなる高分子化合物と前記アクリルアミド混合物とを反応させて得た共重合体と、を含むイオン交換性混合物を提供する。
【0012】
本発明は、前記第2の技術的課題を達成するために、陰イオン交換樹脂からなる高分子化合物と、ビス−アクリルアミド及びアクリルアミドをそれぞれ少なくとも1種以上含むアクリルアミド混合物と、開始剤と、触媒とを溶媒と混合して反応させる段階を含むイオン交換性混合物の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記第2の技術的課題を達成するために、陽イオン交換樹脂からなる高分子化合物と、ビス−アクリルアミド及びアクリルアミドをそれぞれ少なくとも1種以上含むアクリルアミド混合物と、開始剤と、触媒とを溶媒と混合して反応させる段階を含むイオン交換性混合物の製造方法を提供する。
【0014】
本発明は、前記第3の技術的課題を達成するために、前記イオン交換性混合物を含むイオン交換性膜を提供する。
【0015】
本発明は、前記第4の技術的課題を達成するために、アノードチャンバ、カソードチャンバ、及び前記アノードチャンバ及びカソードチャンバの間に設置された分割膜を含む細胞融解用の電気分解装置を備える微細流動装置であって、前記分割膜が前記イオン交換性膜である微細流動装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のイオン交換性混合物を利用して製造したイオン交換性膜は、従来のイオン交換性膜よりはるかに低い電気抵抗を有し、電荷を帯びるために優れた選択透過性を有する。
また、本発明のイオン交換性膜は、製造条件が非常にマイルドなので、製造が非常に容易であり、かつ水溶媒下で架橋反応と同時に成膜されるため、所望のサイズ、形状、形態に自由に製造可能であるという長所がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明をさらに具体的に説明する。
【0018】
本発明の第1態様によれば、本発明のイオン交換性混合物は、(a)陰イオン交換樹脂からなる高分子化合物と、(b)ビス−アクリルアミド及びアクリルアミドをそれぞれ少なくとも1種以上含むアクリルアミド混合物と、(c)前記陰イオン交換樹脂からなる高分子化合物と前記アクリルアミド混合物とを反応させて得た共重合体とを含む。
【0019】
前記陰イオン交換樹脂は、スチレン系、フェノール系、アミン系、メタクリル系であることが望ましいが、これらに限定されるものではない。特に、前記陰イオン交換樹脂は、下記化学式1のスチレン系であり、トリメチルアミンで置換されたものが望ましい。
【0020】
【化1】

【0021】
(ここで、nは2ないし100,000の整数である。)
前記化学式1の化合物は、下記化学式5の単量体を重合して製造することができる。
【0022】
【化2】

【0023】
前記化学式5の単量体を重合して化学式1の化合物を製造するためには、例えば、過硫酸アンモニウム(ammonium persulfate)、過酸化ベンゾイル (BPO:bezoyl peroxide)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN:azobisisobutyronitrile)などの開始剤と、TEMED(N,N,N’,N’−tetramethylethylenediamine)とを触媒として溶媒内で溶液重合することが望ましい。前記反応は、70℃ないし90℃の温度で30分ないし4時間行われる。
【0024】
前記溶媒は、前記重合反応に参加しない親水性溶媒であれば特別に限定されないが、水、特に、脱イオン水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類が望ましい。
【0025】
前記アクリルアミド混合物は、ビス−アクリルアミドとアクリルアミドをそれぞれ少なくとも1種以上含む。特に、前記ビス−アクリルアミドは、N,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドであることが望ましいが、これらに限定されるものではない。
【0026】
前記共重合体は、前記陰イオン交換樹脂からなる高分子化合物と前記アクリルアミド混合物とを反応させて得た共重合体である。前記陰イオン交換樹脂がトリメチルアミンに置換されたスチレン系樹脂である場合の製造されうる共重合体の一例を下記化学式3で示す。
【0027】
【化3】

【0028】
前記化学式3から分かるように、前記共重合体は、陰イオン交換樹脂及びポリアクリルアミドの鎖を有し、これらの鎖がビス−アクリルアミドにより架橋されている。
【0029】
また、前記陰イオン交換樹脂、前記アクリルアミド混合物及び前記共重合体は、互いに相互浸透している。ここで、相互浸透とは、陰イオン交換樹脂の高分子鎖とアクリルアミドからなる高分子鎖が3次元的にランダムに互いにもつれた状態であって、巨視的には均一な状態であり、特定成分の濃度勾配などは形成されていない状態を意味する。
【0030】
本発明の第2態様によれば、本発明のイオン交換性混合物は、(a)陽イオン交換樹脂からなる高分子化合物と、(b)ビス−アクリルアミド及びアクリルアミドをそれぞれ少なくとも1種以上含むアクリルアミド混合物と、(c)前記陽イオン交換樹脂からなる高分子化合物と前記アクリルアミド混合物とを反応させて得た共重合体とを含む。
【0031】
前記陽イオン交換樹脂は、スチレン系、フェノール系、アミン系、メタクリル系であることが望ましいが、これらに限定されるものではない。特に、前記陽イオン交換樹脂は、下記化学式2に示すようにスチレン系であり、スルホン基で置換されたものが望ましい。
【0032】
【化4】

【0033】
(ここで、nは2ないし100,000の整数である。)
前記化学式2の化合物は、下記化学式6の単量体を重合して製造することができる。
【0034】
【化5】

【0035】
但し、前記単量体に置換されたスルホン基が−SOHである場合には、その後に発生する水素イオンによって、溶液のpH調節において望ましくない結果をもたらすこともある。このような場合には、前記スルホン基がナトリウムなどの塩、例えば−SONaであることが望ましい。
【0036】
前記化学式6の単量体を重合して化学式2の化合物を製造するためには、例えば、過硫酸アンモニウム、BPO、AIBNなどの開始剤とTEMEDとを触媒として溶媒内で溶液重合することが望ましい。前記反応の溶媒及び反応条件は、前記化学式1の化合物の製造の場合と同様である。
【0037】
前記アクリルアミド混合物は、ビス−アクリルアミドとアクリルアミドをそれぞれ少なくとも1種以上含み、前述したように前記ビス−アクリルアミドは、N,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドであることが望ましいが、これらに限定されるものではない。
【0038】
前記共重合体は、前記陽イオン交換樹脂からなる高分子化合物と前記アクリルアミド混合物とを反応させて得た共重合体である。前記陽イオン交換樹脂がスルホン基に置換されたスチレン系樹脂の場合の製造されうる共重合体の一例を下記化学式4で示す。
【0039】
【化6】

【0040】
前記化学式4から分かるように、前記共重合体は、陽イオン交換樹脂とポリアクリルアミドの鎖を有し、これらの鎖がビス−アクリルアミドにより架橋されている。また、前記陰イオン交換樹脂、前記アクリルアミド混合物、及び前記共重合体は、互いに相互浸透している。
【0041】
本発明の第3態様によれば、本発明は、陰イオン交換樹脂からなる高分子化合物と、ビス−アクリルアミド及びアクリルアミドをそれぞれ少なくとも1種以上含むアクリルアミド混合物と、開始剤と、触媒とを溶媒と混合して反応させる段階を含むイオン交換性混合物の製造方法を提供する。
【0042】
前記反応物は、全体反応混合物100質量部に対して、陰イオン交換樹脂からなる高分子化合物0.1ないし20質量部と、ビス−アクリルアミド0.1ないし5質量部と、アクリルアミド5ないし40質量部と、開始剤0.05ないし1質量部と、触媒0.05ないし1質量部と、溶媒55ないし90質量部であることが望ましい。
【0043】
陰イオン交換樹脂からなる高分子化合物の含有量が0.1質量部未満であれば、荷電量が小さくなり、20質量部を超過すれば、製造されるイオン交換性混合物の強度が弱くなる。ビス−アクリルアミドの量が0.1質量部未満であれば、強度が低くなり、5質量部を超過すれば、含水率が減少して電気抵抗が増加するという短所がある。また、アクリルアミドの量が5質量部より低いと、強度が低下し、40質量部より多いと、含水率が減少して電気抵抗が増加する。開始剤の含有量が0.05質量部未満であれば、反応速度が遅くなって望ましくなく、1質量部より多ければ、物性が低下しうる。触媒の量が0.05質量部未満であれば、反応速度が遅くなって望ましくなく、1質量部より多ければ、それ自体が塩基性を帯びて試料を塩基溶液に作ってしまう副作用があり得る。溶媒の量が55質量部未満であれば、製造されるイオン交換性混合物の電気抵抗が増加し、90質量部より多ければ、強度が低下する。
【0044】
前記反応は、常温で行われ、反応時間は、開始剤及び触媒の量によって伸縮的であり、30秒ないし20分間行われる。反応時間が30秒より短ければ、反応が十分でないため、あまり架橋されず、反応時間が20分より長ければ、反応がほとんど完了するため、それ以上の反応は不要である。
【0045】
前記開始剤は、高分子のラジカル重合において開始剤として使われるものであれば特に限定されるものではないが、過硫酸アンモニウム、BPO、AIBNでありうる。また、前記触媒は、TEMEDであることが望ましい。
【0046】
前記溶媒は、水、特に、脱イオン水、メタノール、エタノール、プロパノール、またはブタノールなどのアルコールが望ましく、脱イオン水がさらに望ましい。
【0047】
前記反応が完了すれば、固体形態の陰イオン交換性混合物が製造され、前記陰イオン交換性混合物は、多量の水を含水する。
【0048】
本発明の第4態様によれば、本発明は、陽イオン交換樹脂からなる高分子化合物と、ビス−アクリルアミド及びアクリルアミドをそれぞれ少なくとも1種以上含むアクリルアミド混合物と、開始剤と、触媒とを溶媒と混合して反応させる段階を含むイオン交換性混合物の製造方法を提供する。
【0049】
前記反応物は、全体反応混合物100質量部に対して、陽イオン交換樹脂からなる高分子化合物0.1ないし20質量部と、ビス−アクリルアミド0.1ないし5質量部と、アクリルアミド5ないし40質量部と、開始剤0.05ないし1質量部と、触媒0.05ないし1質量部と、溶媒55ないし90質量部であることが望ましい。
【0050】
陽イオン交換樹脂からなる高分子化合物の含有量が0.1質量部未満であれば、電荷量が小さくなり、20質量部を超過すれば、製造されるイオン交換性混合物の強度が弱くなる。その他の成分の含有量を数値限定する理由は、前述した陰イオン交換性混合物の場合と同一である。また、反応条件、開始剤、触媒、及び溶媒についても前述したものと同様である。
【0051】
前記反応が完了すれば、固体形態の陽イオン交換性混合物が製造され、前記陽イオン交換性混合物は、多量の水を含水する。
【0052】
本発明の第5態様によれば、本発明は、前記イオン交換性混合物からなるイオン交換性膜を提供する。前記イオン交換性膜は、通常のイオン交換膜のように選択透過性があるため、陽イオン交換樹脂からなる高分子化合物を利用して製造した陽イオン交換性膜は、陽イオンは透過させるが、陰イオンは透過させない性質を有し、一方、陰イオン交換樹脂からなる高分子化合物を利用して製造した陰イオン交換性膜は、陰イオンは透過させるが、陽イオンは透過させない性質を有する。
【0053】
したがって、試料を入れたチャンバの中心を前記のようなイオン交換性膜を利用して隔離した後、前記試料を電気分解すると、電気分解の結果として発生するイオンの移動を制限することが可能であり、その結果、特定イオンの濃度を選択的に高め、試料のpHを調節することができる。
【0054】
本発明の一例として、前記陰イオン交換樹脂を利用して製造したイオン交換性混合物でイオン交換性膜を製造することが可能であり、他の例として、前記陽イオン交換樹脂を利用して製造したイオン交換性混合物でイオン交換性膜を製造することが可能である。また、さらに他の例として、陰イオン交換樹脂を利用して製造したイオン交換性混合物及び陽イオン交換樹脂を利用して製造したイオン交換性混合物でそれぞれイオン交換性膜を製造した後、これらを積層して複数層を有するイオン交換性膜を製造することも可能である。
【0055】
特に、前記のように複数層を有するイオン交換性膜を製造すれば、陽イオンと陰イオンの両方の動きを制限できるので、多様に応用できる。図1を参照すれば、陰イオン交換性膜10と陽イオン交換性膜20とを積層し、これを利用してチャンバをカソードチャンバ50とアノードチャンバ60との二区域に隔離し、ここに直流電源を通過させれば、カソードチャンバ50には陽イオンが発生し、アノードチャンバ60には陰イオンが発生するが、カソードチャンバ50で発生した陽イオンは、陰イオン交換性膜10によってアノードチャンバ60に移動することが制限され、アノードチャンバ60で発生した陰イオンは、陽イオン交換性膜20によってカソードチャンバ50に移動することが制限される。その結果、カソードチャンバ50には、陽イオンの濃度が高くなり、アノードチャンバ60には、陰イオンの濃度が高くなる。
【0056】
前記イオン交換性混合物を利用して成膜する方法は、特に限定されるものではない。例えば、前記イオン交換性混合物を製造するための反応物を薄いフィルム上に薄く塗布したまま反応させれば、反応の終了後に膜形態をなし、前記フィルムを除去すれば、本発明のイオン交換性膜になる。
【0057】
特に、前記イオン交換性混合物は、水を溶媒として利用し、常温でよく固化する性質を有するので、成膜するのに便利である。したがって、前記イオン交換性混合物は、膜形態の成形以外に、他の任意の形態にも成形することが可能である。
【0058】
本発明の第6態様によれば、アノードチャンバ、カソードチャンバ、及び前記アノードチャンバとカソードチャンバとの間に設置された分割膜とを含む細胞融解用の電気分解装置を備える微細流動装置であって、前記分割膜が前記イオン交換性膜の微細流動装置を提供する。
【0059】
図2Aは、本発明のイオン交換性膜100を含む微細流動装置の一例を示す概念図である。カソードチャンバ50及びアノードチャンバ60は、本発明のイオン交換性膜100によって分離されており、各チャンバ50、60には、電極30、40が設置されていて電極30、40を通じて電圧を印加することによって、各チャンバ50、60で電気分解反応を起こすことができる。前記各チャンバ50、60には、それぞれ流入口と流出口とが設置されており、前記各流出口は、合流してカソード30及びアノード40の電気分解溶液が混合するようになっている。
【0060】
図2B及び図2Cは、それぞれ本発明のイオン交換性膜100を含む微細流動装置の他の一例を示す概念図である。図2B及び図2Cに示した微細流動装置は、図2Aに示す微細流動装置にそれぞれ2つ及び1つのマイクロポンプ70がさらに備えられている。図2Cに示すように、一つのマイクロポンプ70が備えられている微細流動装置は、カソードチャンバ50及びアノードチャンバ60の電気分解溶液を同量に流入及び混合させるものであるため、電気分解によってアノードチャンバ60で生成した陰イオンの当量とカソードチャンバ50で生成した陽イオンの当量とが互いに類似した場合にのみ適用することが望ましい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例及び比較例をもって本発明の構成及び効果をより詳細に説明するが、これらの実施例は、単に本発明をより明確に理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0062】
<実施例1>
横15mm、縦15mm、厚さ0.75mmのサイズを有するモールドに前記化学式1のトリメチルアミンで置換されたスチレン系イオン交換樹脂1g、アクリルアミド(CHCHCONH)3.5g、ビス−アクリルアミド(CH(CHCHCONH))0.5g、過硫酸アンモニウムとTEMEDを各0.1g、水6gを入れて、常温で20分間架橋反応を行った。その結果、反応物が固化し、前記モールドを除去し洗浄して固体の陰イオン交換性膜を得た。得られた陰イオン交換性膜の厚さは、0.75mmであった。
【0063】
<実施例2>
トリメチルアミンで置換されたスチレン系イオン交換樹脂の代わりに、スルホン基のナトリウム塩(−SONa)で置換されたスチレン系イオン交換樹脂を使用したことを除いては、実施例1と同様に架橋反応を行った。その結果、固体の陽イオン交換性膜を得た。得られた陽イオン交換性膜の厚さは、0.75mmであった。
【0064】
<実施例3>
実施例1で製造した陰イオン交換性膜をチャンバの中間に固定し、100mM濃度のNaSO水溶液(初期pH=5.82)を前記陰イオン交換性膜で分けられたチャンバの両側に入れて、直流電源(10V)を加えて電気分解を行った。1分間直流電源を加えた後に電源の供給を中断し、2分間隔でpHの変化を測定した。その結果を表1に整理する。
【0065】
<実施例4>
陰イオン交換性膜の代わりに実施例2で製造した陽イオン交換性膜を使用した点を除いては、実施例3と同様に電気分解を行ってpHの変化を測定した。その結果を表1に整理する。
【0066】
<実施例5>
実施例1で製造した陰イオン交換性膜と、実施例2で製造した陽イオン交換性膜とを密着して積層した膜を使用した点を除いては、実施例3と同様に電気分解を行ってpHの変化を測定した。前記積層膜の厚さは、1.5mmであった。前記pH変化を測定した結果を表1に整理する。
【0067】
<比較例1>
イオン交換樹脂を添加しない点を除いては、実施例1と同じ方法でアクリルアミド膜を製造した後、実施例3と同様に電気分解を行ってpHの変化を測定した。その結果を表1に整理する。
【0068】
【表1】

【0069】
表1から分かるように、実施例3ないし実施例5で使われた本発明のイオン交換性膜は、10分間のpH変化が0.3未満に止まる。すなわち、電気分解の結果として発生したイオンの移動の遮断に何れも優れた性能を見せる。しかし、比較例1の場合は、アノードでの10分間のpH変化は1.84であって、選択透過性が不十分であることが分かる。
【0070】
<比較例2>
商用イオノマーであるデュポン社のナフィオン(Nafion:登録商標)膜を利用して電気抵抗を測定した。電気抵抗は5Vの直流電圧下で測定した。その結果を表2に整理する。
また、実施例3ないし5の膜についても比較例2と同じ方法で電気抵抗を測定して表2に共に整理する。
【0071】
【表2】

【0072】
表2から分かるように、本発明のイオン交換性膜は、従来のナフィオン膜に比べて著しく低い抵抗を有する。したがって、本発明のイオン交換性膜を利用すれば、従来のナフィオン膜を用いるときよりもっと効果的に電気分解を行えることが分かる。
【0073】
以上、本発明の望ましい実施例を詳細に説明したが、当業者ならば、特許請求の範囲で定義された本発明の思想及び範囲を外れず、これより多様に変形して実施可能である。従って、本発明の実施例の変更は、本発明の技術を逸脱しない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、生物分析装置などの、イオン交換性膜関連の技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明のイオン交換性膜を用いた電気分解の一例を示す概念図である。
【図2A】本発明のイオン交換性膜を含む微細流動装置の一例を示す概念図である。
【図2B】本発明のイオン交換性膜を含む微細流動装置の別の例を示す概念図である。
【図2C】本発明のイオン交換性膜を含む微細流動装置のその他の例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0076】
10 陰イオン交換性膜
20 陽イオン交換性膜
30 カソード
40 アノード
50 カソードチャンバ
60 アノードチャンバ
70 マイクロポンプ
100 イオン交換性膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)陰イオン交換樹脂からなる高分子化合物と、
(b)ビス−アクリルアミド及びアクリルアミドをそれぞれ少なくとも1種以上含むアクリルアミド混合物と、
(c)前記陰イオン交換樹脂からなる高分子化合物と前記アクリルアミド混合物とを反応させて得た共重合体と、を含むイオン交換性混合物。
【請求項2】
前記陰イオン交換樹脂はスチレン系、フェノール系、アミン系、またはメタクリル系であることを特徴とする請求項1に記載のイオン交換性混合物。
【請求項3】
前記陰イオン交換樹脂はトリメチルアミンで置換されてなるスチレン系であることを特徴とする請求項1に記載のイオン交換性混合物。
【請求項4】
(a)陽イオン交換樹脂からなる高分子化合物と、
(b)ビス−アクリルアミド及びアクリルアミドをそれぞれ少なくとも1種以上含むアクリルアミド混合物と、
(c)前記陽イオン交換樹脂からなる高分子化合物と前記アクリルアミド混合物とを反応させて得た共重合体と、を含むイオン交換性混合物。
【請求項5】
前記陽イオン交換樹脂はスチレン系、フェノール系、アミン系、またはメタクリル系であることを特徴とする請求項4に記載のイオン交換性混合物。
【請求項6】
前記陽イオン交換樹脂はスルホン基で置換されてなるスチレン系であることを特徴とする請求項4に記載のイオン交換性混合物。
【請求項7】
前記ビス−アクリルアミドはN,N’−メチレン−ビス−アクリルアミドであることを特徴とする請求項1または4に記載のイオン交換性混合物。
【請求項8】
(a)ないし(c)の化合物が互いに相互浸透していることを特徴とする請求項1または4に記載のイオン交換性混合物。
【請求項9】
陰イオン交換樹脂からなる高分子化合物と、ビス−アクリルアミド及びアクリルアミドをそれぞれ少なくとも1種以上含むアクリルアミド混合物と、開始剤と、触媒とを溶媒と混合して反応させる段階を含むイオン交換性混合物の製造方法。
【請求項10】
前記陰イオン交換樹脂はスチレン系、フェノール系、アミン系、またはメタクリル系であることを特徴とする請求項9に記載のイオン交換性混合物の製造方法。
【請求項11】
前記陰イオン交換樹脂はトリメチルアミンで置換されたスチレン系であることを特徴とする請求項9に記載のイオン交換性混合物の製造方法。
【請求項12】
反応物の含有量が陰イオン交換樹脂からなる高分子化合物0.1ないし20質量部と、ビス−アクリルアミド0.1ないし5質量部と、アクリルアミド5ないし40質量部と、開始剤0.05ないし1質量部と、触媒0.05ないし1質量部と、溶媒55ないし90質量部であることを特徴とする請求項9に記載のイオン交換性混合物の製造方法。
【請求項13】
陽イオン交換樹脂からなる高分子化合物と、ビス−アクリルアミド及びアクリルアミドをそれぞれ少なくとも1種以上含むアクリルアミド混合物と、開始剤と、触媒とを溶媒と混合して反応させる段階を含むイオン交換性混合物の製造方法。
【請求項14】
前記陽イオン交換樹脂はスチレン系、フェノール系、アミン系、またはメタクリル系であることを特徴とする請求項13に記載のイオン交換性混合物の製造方法。
【請求項15】
前記陽イオン交換樹脂はスルホン基で置換されたスチレン系であることを特徴とする請求項13に記載のイオン交換性混合物の製造方法。
【請求項16】
反応物の含有量が陽イオン交換樹脂からなる高分子化合物0.1ないし20質量部と、ビス−アクリルアミド0.1ないし5質量部と、アクリルアミド5ないし40質量部と、開始剤0.05ないし1質量部と、触媒0.05ないし1質量部と、溶媒55ないし90質量部であることを特徴とする請求項13に記載のイオン交換性混合物の製造方法。
【請求項17】
前記溶媒は水であることを特徴とする請求項9または13に記載のイオン交換性混合物の製造方法。
【請求項18】
前記開始剤は過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、またはアゾビスイソブチロニトリルであることを特徴とする請求項9または13に記載のイオン交換性混合物の製造方法。
【請求項19】
請求項1に記載のイオン交換性混合物または請求項4に記載のイオン交換性混合物を含むイオン交換性膜。
【請求項20】
請求項1に記載のイオン交換性混合物を含む第1層及び請求項4に記載のイオン交換性混合物を含む第2層を少なくとも一つ以上含む請求項19に記載のイオン交換性膜。
【請求項21】
アノードチャンバ、カソードチャンバ、及び前記アノードチャンバ及びカソードチャンバの間に設置された分割膜を含む細胞融解用の電気分解装置を備える微細流動装置であって、前記分割膜が請求項20に記載のイオン交換性膜である微細流動装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公開番号】特開2006−346673(P2006−346673A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162727(P2006−162727)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】