説明

イオン交換樹脂タンクの点検方法

【課題】放射性物質で汚染されたイオン交換樹脂を移送することなく、イオン交換樹脂タンクの内部点検を可能とすることである。
【解決手段】イオン交換樹脂を貯蔵したイオン交換樹脂タンクのタンク内面を撮影する点検ロボットをイオン交換樹脂タンクのイオン交換樹脂の貯蔵位置より上部のタンク内面に装着し、イオン交換樹脂タンク上部のタンク内面に沿って点検ロボットを走行させてイオン交換樹脂タンク上部のタンク内面を点検する。その後に、イオン交換樹脂タンク内のイオン交換樹脂の貯蔵位置までの体積より多めの体積の水を注入し、イオン交換樹脂タンク内に比重分離用物質を注入し撹拌してイオン交換樹脂を比重分離用物質溶液の上部に浮上させ、比重分離用物質溶液が存在するイオン交換樹脂タンク下部のタンク内面に沿って点検ロボットを走行させてイオン交換樹脂タンク下部のタンク内面を点検する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性物質で汚染されたイオン交換樹脂を貯蔵するイオン交換樹脂タンクの点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所などの放射性物質で汚染される設備機器に対して、イオン交換樹脂により放射性物質を除染するようにしている。放射性物質を除染した使用済みのイオン交換樹脂は、放射性物質で汚染されているのでイオン交換樹脂タンクに貯蔵される。
【0003】
このようなイオン交換樹脂タンクは、放射性物質で汚染されたイオン交換樹脂を貯蔵しているので、ひび割れや孔食が発生していないかを点検し、定期的にイオン交換樹脂タンクの健全性を確認するようにしている。
【0004】
イオン交換樹脂タンクの点検方法として、イオン交換樹脂タンクに貯蔵されたイオン交換樹脂を別のイオン交換樹脂タンクに移送してイオン交換樹脂タンクを点検することが行われている。
【0005】
イオン交換樹脂を移送するものとして、樹脂混合槽をイオン交換樹脂塔の上流側に、ポンプをイオン交換樹脂塔の下流側にそれぞれ配置すると共に、樹脂混合槽へ樹脂吸引ノズルを取り付け、この樹脂吸引ノズルとイオン交換樹脂塔に設けられた樹脂投入ノズルとを樹脂移送ホースで接続する一方、イオン交換樹脂塔に設けられた除染液出口ノズルとポンプの吸引口とを吸引ホースで接続し、ポンプを作動させることにより、樹脂移送・充填系統に負圧を発生させて樹脂混合槽内のイオン交換樹脂と樹脂移送媒体とをイオン交換樹脂塔内へ移送・充填するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、放射性廃棄物である廃スラッジを貯蔵タンクから一旦取り出して、タンクの検査時に、堆積中に固結したスラッジを効果的に崩して容易に移送するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−61377号公報
【特許文献2】特開2008−96116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のものは、放射線量の高いイオン交換樹脂を予め移送することでタンク点検は可能となるが、移送装置と移送先のタンクとが別途必要となる。また、放射線量の高いイオン交換樹脂を移送することになるので、放射線が漏れないように配慮した移送装置が必要となる。
【0009】
本発明の目的は、放射性物質で汚染されたイオン交換樹脂を移送することなく、イオン交換樹脂タンクの内部点検を行うことができるイオン交換樹脂タンクの点検方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明に係るイオン交換樹脂タンクの点検方法は、イオン交換樹脂を貯蔵したイオン交換樹脂タンクのタンク内面に沿って走行し搭載したカメラでタンク内面を撮影する点検ロボットを前記イオン交換樹脂タンクのイオン交換樹脂の貯蔵位置より上部のタンク内面に装着し、前記イオン交換樹脂が存在しない前記イオン交換樹脂タンク上部のタンク内面に沿って前記点検ロボットを走行させて前記イオン交換樹脂タンク上部のタンク内面を点検し、前記イオン交換樹脂タンク内の前記イオン交換樹脂の貯蔵位置までの体積より多めの体積の水を注入し、前記イオン交換樹脂タンク内に比重分離用物質を注入し撹拌して前記イオン交換樹脂を比重分離用物質溶液の上部に浮上させ、前記比重分離用物質溶液が存在する前記イオン交換樹脂タンク下部のタンク内面に沿って前記点検ロボットを走行させて前記イオン交換樹脂タンク下部のタンク内面を点検することを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明に係るイオン交換樹脂タンクの点検方法は、イオン交換樹脂を貯蔵したイオン交換樹脂タンク内の前記イオン交換樹脂の貯蔵位置までの体積より多めの体積の水を注入し、前記イオン交換樹脂タンク内の水中を遊泳し搭載したカメラで前記イオン交換樹脂タンクのタンク内面を撮影する水中点検ロボットを前記イオン交換樹脂タンクの水中に投入し、前記イオン交換樹脂が存在しない前記イオン交換樹脂タンク上部の水中で前記水中点検ロボットを遊泳させて前記イオン交換樹脂タンク上部のタンク内面を点検し、前記イオン交換樹脂タンク内に比重分離用物質を注入し撹拌して前記イオン交換樹脂を比重分離用物質溶液の上部に浮上させ、前記比重分離用物質溶液が存在する前記イオン交換樹脂タンク下部の前記比重分離用物質溶液中で前記水中点検ロボットを遊泳させて前記イオン交換樹脂タンク下部のタンク内面を点検することを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明に係るイオン交換樹脂タンクの点検方法は、請求項1または2の発明において、前記イオン交換樹脂タンク下部のタンク内面を点検した後、前記イオン交換樹脂タンク下部の前記比重分離用物質溶液を排出することを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明に係るイオン交換樹脂タンクの点検方法は、請求項1乃至3のいずれか1項の発明において、前記比重分離用物質は、ポリタングステン酸ナトリウムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、イオン交換樹脂が貯蔵されたイオン交換樹脂タンクの上部のタンク内面を点検ロボットにより点検し、次にイオン交換樹脂タンクに水を注入するとともに比重分離用物質を注入してイオン交換樹脂を比重分離用物質溶液の上部に浮上させ、イオン交換樹脂タンク下部の比重分離用物質溶液中のタンク内面に沿って点検ロボットを走行させてイオン交換樹脂タンク下部のタンク内面を点検するので、イオン交換樹脂を別のイオン交換樹脂タンクに移送することなく、イオン交換樹脂タンクの内部点検を行うことができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、イオン交換樹脂を貯蔵したイオン交換樹脂タンク内に水を注入し、イオン交換樹脂タンク上部の水中で水中点検ロボットを遊泳させてイオン交換樹脂タンク上部のタンク内面を点検し、次に、比重分離用物質を注入してイオン交換樹脂を比重分離用物質溶液の上部に浮上させ、イオン交換樹脂タンク下部の比重分離用物質溶液中で水中点検ロボットを遊泳させてイオン交換樹脂タンク下部のタンク内面を点検するので、イオン交換樹脂を別のイオン交換樹脂タンクに移送することなく、イオン交換樹脂タンクの内部点検を行うことができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明の効果に加え、イオン交換樹脂タンク下部のタンク内面を点検した後に、イオン交換樹脂タンク下部の比重分離用物質溶液を排出するので、早期に追加のイオン交換樹脂の貯蔵が可能となる。
【0017】
請求項4の発明によれば、請求項1乃至3のいずれか1項の発明の効果に加え、ポリタングステン酸ナトリウム溶液の比重は約3であり、透明であるので、イオン交換樹脂を上部に浮上させ、点検ロボットに搭載したカメラでの撮影にも支障を来すことがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態1に係るイオン交換樹脂タンクの点検方法の一例を示すフローチャート。
【図2】本発明の実施形態1の一例でのイオン交換樹脂タンクの点検状況の推移図。
【図3】本発明の実施形態1に係るイオン交換樹脂タンクの点検方法の他の一例を示すフローチャート。
【図4】本発明の実施形態1の他の一例でのイオン交換樹脂タンクの点検状況の推移図。
【図5】本発明の実施形態2に係るイオン交換樹脂タンクの点検方法の一例を示すフローチャート。
【図6】本発明の実施形態2の一例でのイオン交換樹脂タンクの点検状況の推移図。
【図7】本発明の実施形態2に係るイオン交換樹脂タンクの点検方法の他の一例を示すフローチャート。
【図8】本発明の実施形態2の他の一例でのイオン交換樹脂タンクの点検状況の推移図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を説明する。図1は本発明の実施形態1に係るイオン交換樹脂タンクの点検方法の一例を示すフローチャートであり、図2は本発明の実施形態1の一例でのイオン交換樹脂タンクの点検状況の推移図である。
【0020】
図1において、まず、イオン交換樹脂タンクのイオン交換樹脂の貯蔵位置より上部のタンク内面に点検ロボットを装着する(S1)。図2(a)に示すように、イオン交換樹脂タンク11に貯蔵されているイオン交換樹脂12は、イオン交換樹脂タンク11の下部に沈殿している。イオン交換樹脂12は、水と混合された状態でイオン交換樹脂タンク11に充填されるが、時間の経過に伴い、水との分離または水の蒸発によって、イオン交換樹脂12は、イオン交換樹脂タンク11の下半分以下に沈殿して貯蔵されている。
【0021】
この状態で、イオン交換樹脂12の貯蔵位置hより上部のタンク内面に点検ロボット13を装着する。この点検ロボット13はカメラを搭載しており、例えば、タンク内面に真空吸着して図示省略の遠隔操作装置により、イオン交換樹脂タンク11のタンク内面に沿って走行する。
【0022】
次に、点検ロボット13を走行させてイオン交換樹脂タンク上部のタンク内面を点検する(S2)。すなわち、イオン交換樹脂12がイオン交換樹脂タンク11の下半分に沈殿しているため、イオン交換樹脂タンク11の上半分についてはそのままの状態で気中での目視点検が可能である。そこで、イオン交換樹脂12が存在しないイオン交換樹脂タンク上部のタンク内面に沿って点検ロボット13を走行させて、カメラで撮影した映像を図示省略の監視装置に表示出力する。点検員はこの監視装置に表示出力されたタンク内面の映像を目視して、イオン交換樹脂タンク上部のタンク内面を点検することになる。
【0023】
イオン交換樹脂タンク上部のタンク内面の点検が終わると、イオン交換樹脂タンク11内のイオン交換樹脂12の貯蔵位置hまでの体積より多めの体積の水14を注入する(S3)。図2(b)に示すように、イオン交換樹脂タンク11に水を注入し満水状態とする。
【0024】
次に、イオン交換樹脂タンク11内に比重分離用物質15を注入し撹拌して、イオン交換樹脂を比重分離用物質溶液16の上部に浮上させる(S4)。
【0025】
図2(c)に示すように、イオン交換樹脂タンク11に比重分離用物質15を注入し、図示省略の撹拌手段で撹拌する。撹拌しながら比重分離用物質15を注入してもよい。また、比重分離用物質15としては、その溶液の比重が水より大きく、かつ透明であるものを用いる。例えば、比重分離用物質15としてポリタングステン酸ナトリウム(SPT)を用いる。
【0026】
これは、図2(a)に示す段階では、イオン交換樹脂タンク11の下半分についてはイオン交換樹脂12が不透明であり、点検ロボット13を走行させてもそのままの状態では目視点検ができないので、比重分離用物質溶液16の上部に浮上させて、イオン交換樹脂タンク11の下半分についても点検ロボット13での点検を可能とするためである。
【0027】
比重分離用物質溶液16の比重が3程度まで高くなると、図3(d)に示すように、相対的に軽いイオン交換樹脂12が上半分へ移動し、比重分離用物質溶液16は下半分に沈降する。ここで、比重分離用物質溶液16は透明度が高いため、点検ロボット13を用いた目視点検が可能である。そこで、点検ロボット13を比重分離用物質溶液16中に移動させる。
【0028】
この状態で、比重分離用物質溶液16が存在するイオン交換樹脂タンク下部のタンク内面に沿って点検ロボットを走行させてイオン交換樹脂タンク下部のタンク内面を点検する(S5)。これにより、イオン交換樹脂タンク11の上部及び下部のタンク表面の双方の点検を行える。
【0029】
そして、イオン交換樹脂タンク11の上部及び下部のタンク表面の点検終了後は、点検ロボット13を回収し、そのまま放置しておく。これにより、図2(e)に示すように、イオン交換樹脂タンク11内の水分が蒸発し、比重分離用物質15及びイオン交換樹脂12がイオン交換樹脂タンク11の下部に沈殿する。従って、比重分離用物質15及びイオン交換樹脂12がイオン交換樹脂タンク11の下部に沈殿した状態となり、図2(a)の状態と比較し、比重分離用物質15が追加された状態である。従って、再びイオン交換樹脂12を上半分へ移動させる場合には比重分離用物質15の注入を省略または少なくできる。
【0030】
次に、本発明の実施形態1に係るイオン交換樹脂タンクの点検方法の他の一例を説明する。図3は本発明の実施形態1に係るイオン交換樹脂タンクの点検方法の他の一例を示すフローチャートであり、図4は本発明の実施形態1の他の一例でのイオン交換樹脂タンクの点検状況の推移図である。この実施形態1の他の一例は、図1に示した実施形態1の一例に対し、イオン交換樹脂タンク11の上部及び下部のタンク表面の点検終了後に、イオン交換樹脂タンク下部の比重分離用物質溶液を排出するステップS6を追加して設けたものである。図1及び図2と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0031】
図3において、ステップS1〜ステップS5の工程で、イオン交換樹脂タンク11の上部及び下部のタンク表面の点検が終了すると、その後に、イオン交換樹脂タンク下部の比重分離用物質溶液を排出する(S6)。これは、図4(e)に示すように、イオン交換樹脂タンク下部の比重分離用物質溶液16のみをポンプ17で吸い出すことで行われる。そして、吸い出した比重分離用物質溶液16の水分を蒸発させて比重分離用物質15を回収する。これにより、イオン交換樹脂タンク11は、点検後に即座に新たなイオン交換樹脂12を受け入れることができる。
【0032】
次に、本発明の実施形態2に係るイオン交換樹脂タンクの点検方法の一例を説明する。図5は本発明の実施形態2に係るイオン交換樹脂タンクの点検方法の一例を示すフローチャートであり、図6は本発明の実施形態2の一例でのイオン交換樹脂タンクの点検状況の推移図である。この実施形態2の一例は、図1に示した実施形態1に対し、タンク内面に沿って走行する点検ロボット13に代えて、水中を遊泳する水中点検ロボット18を用いたものである。
【0033】
図5において、まず、イオン交換樹脂タンク内のイオン交換樹脂の貯蔵位置までの体積より多めの体積の水を注入する(S11)。図6(a)に示すように、イオン交換樹脂タンク11に貯蔵されているイオン交換樹脂12は、イオン交換樹脂タンク11の下部に沈殿している。前述のように、イオン交換樹脂12は、水と混合された状態でイオン交換樹脂タンク11に充填されるが、時間の経過に伴い、水との分離または水の蒸発によって、イオン交換樹脂12は、イオン交換樹脂タンク11の下半分以下に沈殿して貯蔵されている。
【0034】
そこで、図6(b)に示すように、イオン交換樹脂タンク11内のイオン交換樹脂12の貯蔵位置hまでの体積より多めの体積の水14を注入する。イオン交換樹脂12は水より比重が大きいので、イオン交換樹脂タンク11の下半分以下に沈殿したままで、水がイオン交換樹脂タンク11の上部に位置することになる。
【0035】
次に、水中点検ロボットをイオン交換樹脂タンク内の水中に投入する(S12)。図6(b)に示すように、イオン交換樹脂タンク11内の水中に水中点検ロボット18を投入し、水中点検ロボット18を遠隔操作装置で遊泳させる。
【0036】
つまり、イオン交換樹脂が存在しないイオン交換樹脂タンク上部の水中で、水中点検ロボット18を遊泳させてイオン交換樹脂タンク上部のタンク内面を点検する(S13)。水中点検ロボット18はスクリューで推進し、カメラを搭載している。そして、カメラで撮影した映像を図示省略の監視装置に表示出力する。点検員はこの監視装置に表示出力されたタンク内面の映像を目視して、イオン交換樹脂タンク上部のタンク内面を点検することになる。
【0037】
イオン交換樹脂タンク上部のタンク内面の点検が終わると、イオン交換樹脂タンク11内に比重分離用物質15を注入し、イオン交換樹脂を比重分離用物質溶液16の上部に浮上させる(S14)。図6(c)に示すように、実施形態1の場合と同様に、イオン交換樹脂タンク11に比重分離用物質15を注入し、図示省略の撹拌手段で撹拌する。撹拌しながら比重分離用物質15を注入してもよい。比重分離用物質15としては、その溶液の比重が水より大きく、かつ透明であるものを用いる。例えば、比重分離用物質15としてポリタングステン酸ナトリウム(SPT)を用いる。これにより、図6(d)に示すように、相対的に軽いイオン交換樹脂12が上半分へ移動し、比重分離用物質溶液16は下半分に沈降し、水中点検ロボット18は比重分離用物質溶液16中に移動させる。
【0038】
この状態で、点検員は、遠隔操作装置により、比重分離用物質溶液16が存在するイオン交換樹脂タンク下部の比重分離用物質溶液中で水中点検ロボットを遊泳させて、イオン交換樹脂タンク下部のタンク内面を点検する(S15)。これにより、イオン交換樹脂タンク11の上部及び下部のタンク表面の双方の点検を行える。
【0039】
そして、イオン交換樹脂タンク11の上部及び下部のタンク表面の点検終了後は、水中点検ロボット18を回収し、そのまま放置しておく。これにより、図6(e)に示すように、イオン交換樹脂タンク11内の水分が蒸発し、比重分離用物質15及びイオン交換樹脂12がイオン交換樹脂タンク11の下部に沈殿する。従って、比重分離用物質15及びイオン交換樹脂12がイオン交換樹脂タンク11の下部に沈殿した状態となり、図6(a)の状態と比較し、比重分離用物質15が追加された状態である。従って、再びイオン交換樹脂12を上半分へ移動させる場合には比重分離用物質15の注入を省略または少なくできる。
【0040】
次に、本発明の実施形態2に係るイオン交換樹脂タンクの点検方法の他の一例を説明する。図7は本発明の実施形態2に係るイオン交換樹脂タンクの点検方法の他の一例を示すフローチャートであり、図8は本発明の実施形態2の他の一例でのイオン交換樹脂タンクの点検状況の推移図である。この実施形態2の他の一例は、図5に示した実施形態2の一例に対し、イオン交換樹脂タンク11の上部及び下部のタンク表面の点検終了後に、イオン交換樹脂タンク下部の比重分離用物質溶液を排出するステップS16を追加して設けたものである。図5及び図6と同一要素には同一符号を付し重複する説明は省略する。
【0041】
図7において、ステップS11〜ステップS15の工程で、イオン交換樹脂タンク11の上部及び下部のタンク表面の点検が終了すると、その後に、イオン交換樹脂タンク下部の比重分離用物質溶液を排出する(S16)。これは、図8(e)に示すように、イオン交換樹脂タンク下部の比重分離用物質溶液16のみをポンプ17で吸い出すことで行われる。そして、吸い出した比重分離用物質溶液16の水分を蒸発させて比重分離用物質15を回収する。これにより、イオン交換樹脂タンク11は、点検後に即座に新たなイオン交換樹脂12を受け入れることができる。
【0042】
このように、イオン交換樹脂タンク11のタンク内面に沿って走行する点検ロボット13に代えて、水中を遊泳する水中点検ロボット18を用いた場合であっても、実施形態1の場合と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0043】
11…イオン交換樹脂タンク、12…イオン交換樹脂、13…点検ロボット、14…水、15…比重分離用物質、16…比重分離用物質溶液、17…ポンプ、18…水中点検ロボット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂を貯蔵したイオン交換樹脂タンクのタンク内面に沿って走行し搭載したカメラでタンク内面を撮影する点検ロボットを前記イオン交換樹脂タンクのイオン交換樹脂の貯蔵位置より上部のタンク内面に装着し、
前記イオン交換樹脂が存在しない前記イオン交換樹脂タンク上部のタンク内面に沿って前記点検ロボットを走行させて前記イオン交換樹脂タンク上部のタンク内面を点検し、
前記イオン交換樹脂タンク内の前記イオン交換樹脂の貯蔵位置までの体積より多めの体積の水を注入し、
前記イオン交換樹脂タンク内に比重分離用物質を注入し撹拌して前記イオン交換樹脂を比重分離用物質溶液の上部に浮上させ、
前記比重分離用物質溶液が存在する前記イオン交換樹脂タンク下部のタンク内面に沿って前記点検ロボットを走行させて前記イオン交換樹脂タンク下部のタンク内面を点検することを特徴とするイオン交換樹脂タンクの点検方法。
【請求項2】
イオン交換樹脂を貯蔵したイオン交換樹脂タンク内の前記イオン交換樹脂の貯蔵位置までの体積より多めの体積の水を注入し、
前記イオン交換樹脂タンク内の水中を遊泳し搭載したカメラで前記イオン交換樹脂タンクのタンク内面を撮影する水中点検ロボットを前記イオン交換樹脂タンクの水中に投入し、
前記イオン交換樹脂が存在しない前記イオン交換樹脂タンク上部の水中で前記水中点検ロボットを遊泳させて前記イオン交換樹脂タンク上部のタンク内面を点検し、
前記イオン交換樹脂タンク内に比重分離用物質を注入し撹拌して前記イオン交換樹脂を比重分離用物質溶液の上部に浮上させ、
前記比重分離用物質溶液が存在する前記イオン交換樹脂タンク下部の前記比重分離用物質溶液中で前記水中点検ロボットを遊泳させて前記イオン交換樹脂タンク下部のタンク内面を点検することを特徴とするイオン交換樹脂タンクの点検方法。
【請求項3】
前記イオン交換樹脂タンク下部のタンク内面を点検した後、前記イオン交換樹脂タンク下部の前記比重分離用物質溶液を排出することを特徴とする請求項1または2記載のイオン交換樹脂タンクの点検方法。
【請求項4】
前記比重分離用物質は、ポリタングステン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1または2記載のイオン交換樹脂タンクの点検方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−202745(P2012−202745A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65755(P2011−65755)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】