説明

イオン微量分析の方法、デバイス及びシステム

イオンを微量分析するための方法であって、本方法は、ある内部体積を有する空胴(1)内部に、前記内部体積より小さい体積のイオン液体(2)を置くステップと、前記内部空胴(1)内部に分析されるべき前記イオン(C+、A−)を含む溶液(4)を置くステップであって、前記溶液(4)の溶媒及び前記イオン液体(2)は、不混和性でありかつ前記溶液(4)から前記イオン液体(2)へのイオン移動(C+、A−)を許容するように選択されるステップと、前記イオン液体(2)における前記イオン(C+、A−)の存在を、自由状態または錯化体である前記イオン液体(2)内の溶液における少なくとも1つのタイプのイオンを分析する分析手段(3)を使用して検出するステップであって、前記分析手段(3)は前記イオン液体(2)に接触されるステップとを備えている。また、この方法を実行するためのデバイス及びシステムも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンを微量分析するための方法、デバイス及びシステムに関する。このような方法、デバイス及びシステムは、例えば水中の金属イオンである溶液中のイオンを検出及び/または検定できるようにする。
【背景技術】
【0002】
水中の重金属(Ni、Cr、Pb、他)のイオンを、健康及び環境上の理由で検定することは必要である。この定義に適合する41元素のうちで、21元素は人間及び環境にとって有害である。それにも関わらず、これらの元素を水中で直接検出及び/または検定することは、これらが微量でしか存在しない場合が多いという理由で、かつ感度に関する現時点の技術の限界を理由として極めて困難である可能性がある。従って、その分析を促進するためには、しばしば、これらの化学種をより小さい体積の有機溶剤内へ抽出して濃縮する段階を実行することが必要である。これらの金属は、概して、前記溶媒内の溶液において錯化またはキレート分子を使用することにより抽出される。
【0003】
イオンの抽出及び分析は、具体的には必要とされる溶媒の量を減らすために、典型的には1ミリリットル未満である小体積のサンプル上で実行されることが効果的である。具体的には、これらの作業を「ラボオンチップ」としても知られる微量分析デバイス上で実行できることが望ましい。渡慶次学、外による論文「マイクロ単位操作と多層流ネットワークとの組合せによるマイクロチップ上の連続流化学プロセス」2002年度版分析化学74、1565−1571ページ、は、Co(II)イオンをマイクロ流体デバイスにおける錯化によって抽出しかつ分析できるようにするマイクロ流体システムについて記述している。抽出に使用される溶媒はm−キシレンであり、錯化剤は2−ニトロソ−1−ナフトールである。このような溶媒では、抽出は熱力学的に強化されず、よってその効率は低い。さらに、溶媒は、その揮発性により、カバーも使用しなければ小さい体積で使用することができず、これにより、分析デバイスはより複雑になり、多数のサンプル上での容易な平行実装にとって障害となる。通常の溶媒の大部分は、このような問題点に遭遇する。
【0004】
室温のイオン液体(以下、イオン液体と称する)は、具体的にはごく僅かな蒸気圧及び大部分の有機または無機分子を溶解する能力に関して効果的な特性を示す既知の溶媒である。使用されている陰イオンまたは陽イオンに依存して、イオン液体は水と混和性である場合も、不混和性である場合もある。
【0005】
下記の論文は、従来的な溶媒(「揮発性有機溶媒」)を使用する場合より大きい分配係数でクラウンエーテルにより金属イオンを抽出するための溶媒としてイオン液体を使用する可能性を実証している。
・ Sheng Daiら、「室温のイオン液体を使用するクラウンエーテルによる硝酸ストロンチウムの溶媒抽出」日本化学学会ドルトン会報、1999年、1202−1202ページ、及び、
・ Huimin Luoら、「イオン液体内でカリックス[4]アレーン−bis(tert−オクチルベンゾ−クラウン6)を使用する水溶液からのセシウムイオンの抽出」2004年度版応用化学76、3078−3083ページ。
【0006】
しかしながら、これらの論文に記述されている技術は、比較的多量のイオン液体の使用(数ミリリットル)を必要とし、かつ分析されるべきさらに多量の水溶液を必要とする。さらに、これらの技術を使用すれば、分析は抽出ポイントから遠隔で実行されるために、複雑な操作の実行が必要となる。
【0007】
Jung−fuら、「イオン液体ベースの液相マイクロ抽出、液体クロマトグラフィの新しいサンプル濃縮手順」クロマトグラフィジャーナルA1026(2004年)、143−147ページ、は、分析されるべき水溶液を含むレセプタクル内に液滴の形式で浮遊される小体積(マイクロリットル)のイオン液体を使用して、イオンがクロマトグラフィにより検定される、金属イオンを抽出するための技術を記述している。この技術は複雑であり、長くかつ巧妙な、しかも自動化が困難である多数の操作を必要とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】渡慶次学ら、「マイクロ単位操作と多層流ネットワークとの組合せによるマイクロチップ上の連続流化学プロセス」2002年度版分析化学74、1565−1571ページ。
【非特許文献2】Sheng Daiら、「室温のイオン液体を使用するクラウンエーテルによる硝酸ストロンチウムの溶媒抽出」日本化学会ドルトン会報、1999年、1202−1202ページ。
【非特許文献3】Huimin Luoら、「イオン液体内でカリックス[4]アレーン−bis(tert−オクチルベンゾ−クラウン6)を使用する水溶液からのセシウムイオンの抽出」2004年度版応用化学76、3078−3083ページ。
【非特許文献4】Jung−fuら、「イオン液体ベースの液相マイクロ抽出、液体クロマトグラフィの新しいサンプル濃縮手順」クロマトグラフィジャーナルA1026(2004年)、143−147ページ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上述の欠点のうちの少なくとも幾つかを示さない、または示すとしても減じられた形式で示す、イオンを微量分析するための方法、デバイス及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、イオンは、小体積のイオン液体をイオン液体に接触しているアナライザと共に含む単一の空胴内で抽出されかつ分析される。イオン液体の体積は、分析されるべき溶液の体積を空洞内へ導入できるように、空胴の内側の体積より小さいものでなければならない。本発明の意味するところの「空胴」という用語は、例えば流体チップ内のチャネルまたは溝もしくはウェルを包含するものとして理解することができる。
【0011】
イオン液体の蒸気圧は極めて低く、実際には蒸発しないことから、イオン液体を含む空胴は、長期的な使用に供する準備が整った状態で、しかもカバーを設ける必要なしに維持され得るデバイスを構成する。
【0012】
イオンの抽出及び分析作業は単一の空胴内で実行されることから、本発明による微量分析方法は巧妙な操作を必要とせず、単純に、かつ大部分を自動的に実装されることが可能である。複数の分析は、本発明による複数のデバイスにより構成される微量分析システムを使用して、例えば複数の異なる溶液において同じタイプの複数の検定イオンを検出するために、または単一の溶液において複数のタイプのイオンを検出するために並行して実行されることが可能である。
【0013】
さらに、イオン液体の良好な導電性は、電気化学的技術を使用して抽出イオンを検定することを可能にし、これにより、本発明によるデバイスの構造及びその使用方法をさらに単純化できるようになる。
【0014】
「分析」という用語は、定量分析または検定だけでなく、イオン液体により抽出されるイオンの単なる検出をも意味して使用される。
【0015】
より正確に言えば、本発明はイオンを微量分析する方法を提供し、本方法は、下記のステップ、即ち、
・ ある内部体積を有する空胴内に、前記内部体積より小さい体積のイオン液体を置くステップと、
・ 前記空胴内に、分析されるべき前記イオンを含む溶液を置くステップであって、前記溶液の溶媒及び前記イオン液体は、不混和性であるように、かつ前記溶液から前記イオン液体へのイオン移動を有効化するように選択されるステップと、
・ 前記イオン液体における前記イオンの存在を、自由状態または錯化状態である前記イオン液体内の溶液における少なくとも1つのタイプのイオンを分析するための分析手段を使用して検出するステップであって、前記分析手段は前記イオン液体に接触して置かれるステップ
を備えることを特徴とする。
【0016】
具体的には、本発明による方法の実装は下記の通りである。
・ 本発明は、前記イオン液体及び前記溶液を、前記イオンの移動を容易にするような方法で攪拌するステップも含んでもよい。
・ 分析されるべきイオンを含む前記溶液は、水溶液である。
・ 前記イオンは金属イオンであってもよい。
・ 前記イオン液体における前記イオンの存在を前記分析手段によって検出することに存する前記手段は、前記イオンの濃度の定量的測定を含んでもよい。
・ 前記イオン液体は、溶液内に、前記抽出されかつ分析されるべきタイプのイオンに対して錯化機能を有する少なくとも1つの分子を含んでもよい。
・ イオン液体は、前記抽出されかつ分析されるべきタイプのイオンに対して錯化機能を持つ少なくとも1つの陰イオンまたは陽イオンを有するタスク固有のイオン液体と混合されてもよい。
・ 前記錯化機能は、単一タイプのイオンしか錯化できない選択的機能であってもよい。
・ 前記イオン液体または錯化機能を有する前記分子は、分析されるべきイオンの錯化に反応して変わる少なくとも1つの検出可能な物理的または化学的性質を有するプローブ機能を含んでもよい。
・ 前記イオン液体の体積は、分析されるべきイオンを含む溶液の体積の半分より少なくてもよく、好適には10分の1より、
さらに好適には100分の1より少なくてもよい。
・ 前記空胴の内部体積は、1ミリリットル(mL)より少なくてもよく、好適には500マイクロリットル(μL)より少なくてもよい。
・ 前記イオン液体の体積は、10μLより少なくてもよく、好適には約1μL以下であってもよい。
・ 前記イオン液体は、前記溶液の密度より大きい密度を示してもよい。
・ 前記空胴は、底部と、少なくとも1つの側壁とを呈してもよく、前記イオン液体の体積は前記底部を完全に覆うに足るだけのものである。或いは、イオン液体は、前記分析手段に接触して前記底部上で液滴を形成するように、より少ない量で存在してもよい。
・ 前記イオン液体内の溶液において少なくとも1つのタイプのイオンを分析するための前記分析手段は、前記体積のイオン液体に接触している少なくとも2つの、好適には3つの電極を有する電気化学的分析手段を備えてもよく、前記分析手段による前記イオン液体における前記イオンの存在の検出に存する前記ステップは、電気化学的技術を使用して、具体的には差分パルス・ボルト−アンペア測定によって、または周期的ボルト−アンペア測定によって実行される。
・ 或いは、前記イオン液体内の溶液における少なくとも1つのタイプのイオンのための前記分析手段は、分光測光法または発光を使用する光学的分析手段であってもよく、前記分析手段による前記イオン液体における前記イオンの存在の検出に存する前記ステップは、光学的技術によって実行される。
【0017】
また、本発明はイオンを微量分析するこのような方法を実装するためのデバイスも提供し、本デバイスは、
・ ある内部体積を有する空胴と、
・ 前記空胴内部に置かれる、ある体積のイオン液体であって、前記空胴の内部体積より小さい体積を有する前記イオン液体と、
・ 自由状態または錯化状態における前記イオン液体内の溶液における少なくとも1つのタイプのイオンを分析するための分析手段であって、前記空胴内部へ前記体積のイオン液体に接触して配置される前記分析手段と、
を備える。
【0018】
本発明によるデバイスの具体的な実施形態では、
・ 前記空胴は、前記体積のイオン液体に接触しかつ前記イオン液体内の溶液における少なくとも1つのタイプのイオンを電気化学的に分析するための手段を構成する少なくとも2つの、好適には少なくとも3つの電極が上に形成されている集積回路基板によって構成される底部を呈してもよい。
・ 前記空胴は、前記集積回路基板へ漏れ防止式に固定されるウェルプレート内のウェルによって形成される側壁を呈してもよい。
【0019】
また、本発明はイオンを微量分析するためのシステムも提供し、本システムは複数のこのようなデバイスを備え、各デバイスは、異なるタイプのイオンを選択的に抽出するためのイオン液体を含む。
【0020】
また、本発明はイオンを微量分析するためのシステムも提供し、本システムは複数のこのようなデバイスを備え、各デバイスは、単一タイプのイオンを選択的に抽出するためのイオン液体を含む。
【0021】
本発明の他の特徴、詳細及び優位点は、例示として示される添付の図面を参照して行う以下の説明を読めば明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明によるデバイスの略図である。
【図2A−2E】本発明による微量分析方法の様々なステップを示す。
【図3a】本発明による第1の具体的な実施形態における微量分析デバイスを示す。
【図3b】本発明による第1の具体的な実施形態における微量分析デバイスを示す。
【図4】本発明による第2の具体的な実施形態における微量分析デバイスを示す。
【図5】本発明による第3の具体的な実施形態における微量分析デバイスを示す。
【図6】本発明による第4の具体的な実施形態における、複数のデバイスにより構成される微量分析デバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のデバイスは、概して側壁1aと底部1bとを有しかつある内部体積を有しかつ前記内部体積より少ない予め規定された体積のイオン液体を含む空胴1によって構成される。図1において、イオン液体2は、空胴1の底部1b上へ蒸着された液滴を形成している。空胴1の内部には、イオン液体2の液滴に接触して(イオンを検出及び/または検定するための)イオン分析手段3が存在する。図1の例では、手段3は空胴1の底部1b上へ置かれ、イオン液体2の液滴によって完全に覆われている。変形例では、かつ図3に示すように、これらの手段は前記空胴の側壁1aに配置されてもよい。空胴1は、概して1mL未満の内部体積を呈し、典型的には、例えば500μLである数百μLの内部体積を呈する。イオン液体2の液滴の体積はこれより極度に小さく、例えば数μLであり、または約1μLですらある。「イオン液体」という用語は、−100℃から+250℃までの範囲の温度で、より具体的には100℃未満の温度で、または室温においても液体である塩または概して有機塩である塩の混合物を意味して使用される(このような塩は、室温イオン液体を意味する頭字語RTILで知られる)。
【0024】
空胴1の内部体積におけるイオン液体2の液滴により占有されない部分は、例えば水溶液である分析用溶液4で充填されることが可能であり、この溶液は本デバイスの一部を形成するものとは見なされない。イオン液体2は水より重く(概して、約1.3グラム/立方センチメートル(g/cm)から1.4g/cm)、かつ水と不混和性であることから、これは空胴の底部1b上へ蒸着された液滴の形態を保ち、イオン分析手段と接触した状態のままである。ある変形例では、空胴1の底部に位置づけられるイオン液体2と分析手段3との間の良好な接触を確実にすると同時に分析対象のイオンを高濃度にすることができるように、図1に示すような液滴を形成する代わりに、前記空胴の底部1bを完全に覆うに足るだけの量の前記イオン液体2を使用することが効果的である。
【0025】
当初、水溶液4は金属陽イオンC及び陰イオンAを含み、イオン液体2は金属陽イオンとの高い親和力を示し、よって金属陽イオンを抽出する傾向があり、イオン液体によるイオンの抽出は、それ自体は熱力学的に促進されるが、後に詳述するように、錯化反応によってさらに高速かつさらに効果的にされることが可能である。イオン液体2の体積は水溶液4の体積以下であることから、抽出は金属陽イオンCを濃縮する効果を有する可能性があり、これにより、金属陽イオンC+が前記溶液において極微量状態で存在する場合であってもこれらを手段3によって分析できるようになる。
【0026】
金属陽イオンC+を抽出するためには、イオン液体内のイオン濃度と水中のイオン濃度との平衡比として定義される分配係数Dが十分に高値であること、例えば約10であることが必要である点を理解することができる。本発明のある効果的な実装においては、抽出が錯化反応によってアシストされ、これにより、時に10を超える分配係数を達成できるようになる。
【0027】
本発明を実装する第1の方法は、化学的に不活性でありかつ単独で錯化機能を有する分子が溶解されている溶媒として作用する所謂「マトリクス」イオン液体を使用することを含む。本発明の実装に適するイオン液体マトリクスの例は、下記の通りである(このリストは、網羅的なものではない):
・ 1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスファート(BmimPF6)、
・ 1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム bis(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BmimNTF2)、
・ 1−エチル−3−メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスファート(EmimPF6)、
・ 1−エチル−3−メチルイミダゾリウム tris(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスファート(EMIMFAP)、
・ 1−ブチル−1−メチルイミダゾリウム tris(ペンタフルオロエチル)トリフルオロホスファート(BMIMFAP)、
・ ブチルトリメチルアンモニウム bis(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BtmaNTF2)、
・ 1−ブチル−1−メチル−ピロリジニウム bis(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(BMPTF2)および、
・ その他、アンモニウム、ホスホニウム、イミダゾリウム、ピリジニウムまたはグアニジニウムの塩類。
【0028】
錯化分子は、クラウンエーテル、クリプタンド、ポダンド、シクロファン、カリックスアレーン、カルボキシル酸、チオ尿素、尿素、チオエーテル、ホウ素誘導体、ラリエット、ロタキサン、アジン、エチレン、エチレンジアミン四酢酸(ETDA)及び酵素を含む非網羅的なリストから選択されてもよい。
【0029】
別の可能性は、イオン液体マトリクスとタスク固有のイオン液体との混合に存し、前記タスクは陰イオン、陽イオンまたは上述のリストから選択される錯化機能を構成する両イオンに関連する。タスク固有のイオン液体の使用または純粋状態のオニウム塩の使用は、これらの物質が概して室温では液体でないという事実によって妨げられる。
【0030】
効果的には、錯化機能は、それが溶質の分子によって担われるか、イオン液体マトリクスと混合されるタスク固有のイオン液体を構成するイオンの1つによって担われるかに関わらず特有のものであり、即ち、単一のタイプのイオンを選好方法で抽出できるようにする。
【0031】
本発明の具体的な実装において、イオン液体2は、概して錯化分子または錯化機能へグラフトされる「プローブ」機能を含み、前記「プローブ」は、錯化するイオンによって影響される少なくとも1つの検出可能な化学的または物理的性質(光学的、電気化学的な性質など)を有する。従って、「プローブ」は、前記イオンを間接的に検出できるようにする。本発明の他の実装においては、錯化機能はプローブ機能も提供する。
【0032】
プローブの非網羅的な例は、下記の通りである。
・ 電気化学的検出用のフェロセン、ニトロフェニル、キノン−ヒドロキノン及びピレン・ペア、
・ 光学的検出用のピレンまたはイオンの錯化前後で異なる応答を示すことのできる任意のフルオロフォア、及び、
・ 選択的錯化分子及び生物学的プローブの双方として作用する酵素。
【0033】
そのイオン種が適切な「サイン」を示す場合は、プローブに頼る必要なしにこれを直接、具体的には電気化学的技術によって検出することも可能である。検出を実行できるようにするこのサインはレドックス反応であってもよく、これは、例えば亜鉛、鉄、塩素、鉛、カドミウムなどに当てはまる。
【0034】
本明細書では、陽イオンCの抽出及び検出及び/または測定について考察する。しかしながら、本発明は溶液から陰イオンAを、もしくは実際には両タイプのイオンを抽出しかつ分析することも可能にする。これは、単にイオン液体2と分析手段3との適切な組合せを使用することによって実行可能である。さらに、陽イオンCは必ずしも金属イオンではなく、例えばホスホニウムまたはアンモニウムの陽イオンであってもよい。
【0035】
下表は、イオン種を間接的、電気的または光学的に検出できるようにするイオン液体の特有例を示す。表の最初の欄は検出されるべきイオンを表し、第2の欄は水と不混和性であるイオン液体マトリクスを表し、第3の欄は、第1の欄のイオンを抽出しかつ検出するためにプローブ機能を担いかつ前記イオン液体マトリクスと混合されることが可能なタスク固有のイオン液体を表し、第4の欄は、同じく前記イオンを抽出しかつ検出するためにプローブ機能を担いかつイオン液体マトリクス内に溶解され得る錯化分子を表し、最後に第5の欄は使用され得る検出方法、即ち電気化学的方法(E)または光学的方法(O)を示す。
【0036】
【表1】

【表2】

図2Aから2Eは、本発明によるイオン微量分析方法の様々なステップを示す。
【0037】
第1のステップ(図2A)は、分析されるべき溶液4をまだ含まない本発明のデバイスを準備することに存する。
【0038】
第2のステップ(図2B)は、分析されるべき溶液4を本発明のデバイスの空胴1内へ、例えばピペット5によって導入することに存する。抽出を加速するためには、分析されるべき溶液4とイオン液体2との接触面積を最大化することが効果的である。これを行うためには、イオン液体2と不混和性である水溶液内で前記イオン液体2の乳濁液6を形成するように攪拌する第3のステップ(図2C)を設けることが適切である。例示として、攪拌は、本デバイスをサーモミキサ内部へ置くことによって実行されてもよい。イオンの錯化及び抽出は、主としてこの攪拌段階の間に発生する。
【0039】
イオン液体2と水溶液4との密度差は、不混和性であるこれらの2相を沈降により分離させる(図2D)。錯化剤が存在していれば、この時点で、事実上全ての金属陽イオンCは溶液からイオン液体2へ錯体の形態で移動している。
【0040】
最終的に、イオン液体2と接触しているイオン分析手段3は、前記イオン液体により抽出されるイオンを検出しかつ好適には検定する働きをする。測定計器7は、この検出または検定ステップの結果を表示する働きをする。
【0041】
以下、図3a及び3bを参照して、本発明のデバイス及び方法の詳細な実装について説明する。
【0042】
本発明による空胴1の底部1bは、スチーム流下の1050℃での酸化により取得される500ナノメートル(nm)厚さのSiO層に覆われた直径100ミリメートル(mm)のnドープシリコン基板10から開始される、集積回路の製造に使用される類のマイクロ電子技術を使用して製造される。基板上には、500nm厚さの白金Pt層がスパッタリングによって蒸着される。その後、Pt層上へ感光樹脂層が遠心処理によって蒸着される。感光樹脂層はフォトリソグラフィマスクを介して露光され、マイクロ電極及びイオンを電気化学的に分析するための手段を構成する導体トラックのパターン30が画定される。具体的には、このパターンは、直径300マイクロメートル(μm)の円形作用電極30aと、作用電極を取り囲む幅130μmのリング形対電極30bと、50μm×130μmの大きさを有する長方形の基準電極30cとを有し、これらの電極間の距離は70μmである。
【0043】
露光されない感光樹脂が除去された後、パターンはアルゴンイオンビーム(「アルゴンイオンバッチエッチシステム、Veeco Microtech 801」)を使用してエッチングされ、この後、露光された樹脂が取り除かれる。
【0044】
基板10の表面上には、厚さ500nmのSiO層がプラズマ化学気相成長法(PECVD)によって形成され(蒸着は、SiH及びNOの混合物を使用して「STSマルチプレクス」マシンにより300℃で実行される)、500℃で3時間(h)、窒素流下で焼き付けられる。
【0045】
SiO層上へは、感光樹脂の第2の層が蒸着され、前記SiO層を電極30a、30b及び30cと見当を合わせて、かつ導体トラックへの接続を供給するポイントと見当を合わせて開放することができるような方法で露光される。開放は、反応性CHF/Oイオンのビーム(「Nextral 100」マシン)を使用してエッチングにより実行される。
【0046】
空胴1を画定する側壁1aは、底部1bを形成する基板へ紫外線(UV)放射により重合される「Vitralit 7105」で接着されるポリエチレン管11によって構成される。このようにして達成される空胴の合計体積は、500μLである。
【0047】
空胴の底部1b上へは、錯化剤として2ミリグラム/ミリリットル(mg/mL)の1,4−bis(フェロセニル)−2,3−ジアザ−1,3−ブタジエンを含む体積約100μLの[bmin][PF]が電極系30と接触して蒸着される。1,4−bis(フェロセニル)−2,3−ジアザ−1,3−ブタジエンは、Caballeroら、により日米化学学会2005年度会報127(45)、15666−15667ページ、において記述されている方法を使用して合成される。
【0048】
このようにして製造されるデバイスの空胴1へは、10ミリモル(mM)で200μLのHgClを含む水溶液4が導入される。抽出は、攪拌デバイスとして使用される毎分1500回転(rpm)のサーモミキサにおいて室温で10分間(min)実行される。この後、電極系30はポテンシオスタットへ接続され、差分パルスボルト−アンペア測定によって、または周期的ボルト−アンペア測定によって電気化学的測定が実行される。水銀のアジン機能による錯化は、電気化学的プローブとして作用するフェロセンの電気化学的反応の改質を誘導する。イオン液体2におけるHg2+の濃度は、ΔE=f([イオン])のチャートによる電位(ΔE)の変位に関連づけられる。但し、ΔEは錯化前後のプローブのレドックス電位の変形であり、[イオン]は濃縮されるイオンの濃度である。これらのチャートは、プローブ及び錯化されるイオンの性質に依存する。(プローブなしの)直接的な電気化学的分析技術が使用される場合は、Randles−Sevcikの式、
=(2.69×10)n3/2×A×D1/2×C×v1/2
を利用することが可能である。但し、iはピーク電流であり、はレドックス反応の電子数であり、Aは作用電極の表面積であり、Cは検出されるべき溶液内のイオンの濃度であり、は走査速度である。イオン液体2と水溶液4との体積比を所与とし、かつ全ての金属イオンが抽出されているものと仮定すると、分析されるべき溶液におけるこれらの開始濃度を計算することが可能である。
【0049】
金属イオンの検出及び/または検定は、概してプローブの使用による電気化学的技術以外の技術を使用して、例えば分光測光法により、生物発光により、または測色法により実行されることが可能である。電気化学的技術は、2つの電極または好適には3つの電極を利用してもよい。
【0050】
図4は、本発明の第2の実施形態におけるデバイスを示す。この場合のイオン分析手段31は、空胴1内へその側壁1aを介して貫入する2つの光ファイバ31a及び31bによって構成され、2つの光ファイバ30a及び30bの端面は互いに向き合い、よって2つのファイバのうちの一方から出る光線32はもう一方に貫入することができる。図4のデバイスの場合、イオン液体1は液滴の形ではなく、空胴1を部分的に満たし、その側壁1aに光ファイバ31a及び31bの端面の高さを上回る高さまで接触する。作動中、光線32は光ファイバ31aを出てイオン液体2を通過し、光ファイバ31bへ貫入する。光ファイバ31bは、この光線を分光測光器(不図示)へ運ぶ。金属イオンの錯化は、イオン液体に対するプローブ機能(例えば、ピレンベースのプローブ)の吸収スペクトルまたは蛍光スペクトルの変形に繋がり、この変形は前記分光測光器によって明らかにされ、これにより、前記イオンを検出及び検定できるようになる。
【0051】
例示として、光ファイバは集積されたプレーナ導波管によって置換される可能性もある。
【0052】
図5は、本発明の第3の実施形態におけるデバイスを示す。この場合、イオン分析手段は、空胴1の底部1bの全て、または大部分を覆って延びる光検出器35により構成される。イオン液体2は、その錯化分子として、所定のイオンが存在する場合にのみ動作しかつ選択されたイオン液体において安定している酵素を含む。例えば、アルカリフォスファターゼ及びルシフェラーゼは、Mg2+イオンが存在する場合にのみ動作し、その反応はこれらのイオンの濃度の関数である。イオン液体は1つまたは複数の酵素基板も含み、酵素反応の生成物は発光性である。Mg2+イオンの存在において、酵素は基板の発光生成物への転換を触媒し、発光生成物が次に放出する光子は光検出器35によって拾われる。ルシフェラーゼの場合、適切な基板はルシフェリン及びアデノシン3リン酸(ATP)であり、アルカリフォスファターゼの場合はアダマンチル1,2−ジオキセタンアリールリン酸塩の誘導体である。
【0053】
ある変形例では、光検出器35は空胴1の側壁1a上へ配置されてもよい。
【0054】
図4または5に示すデバイスは、例えば水銀(Hg2+イオン)を光学的に検出するために使用されることが可能である。このために、このようなデバイスの空胴1には、錯化剤としての5×10−4モル(M)の8−安息香酸ヒドロキシキノリン及び蛍光プローブを含む約100μLである体積2のBMPNTF2が、300μLである体積4の10mM HgCl水溶液と共に存在する。抽出は、室温の1500rpmサーモミキサ内で10分間実行されることが可能である。この後、イオン液体は、光ファイバ31aによって、または空胴1より上に置かれる蛍光ランプによって365nmの波長で照明される。非錯化の8−ヒドロキシキノリンはこの波長では励起されないが、錯化後は、485nmを中心とする蛍光帯が観察される。
【0055】
これまでは、分離されているデバイスについてのみ考察している。実際には、本発明の優位点の1つは、例えば共通の水溶液における複数のイオンの識別及び検定を目的として、または複数の異なる水溶液における同一イオンの識別及び検定を目的として、複数のサンプルに対する分析を並行して実行する可能性にある。このような並行分析は、図6に示す、本発明の複数のデバイスの配列により構成されるシステムを使用して実行されることが可能である。本システムは基板10’を備え、基板10’上には、図3a及び3bを参照して記述したタイプの複数の電極系が規則的な格子状に配列されて製造されている。基板10’は本システムにおける全ての空胴の底部を構成する。側壁1aは、電極と同じ格子パターンで配列されかつ典型的にはプラスチック材料で製造されて基板10’へ付着されるプレート12(ウェルプレート)を介して製造される開口として具現されている。基板10’は、測定デバイスの電極への接続を有効化する電気接点100を露出するように、プレート12を少し超えて突き出している。この方法では、極く小さい体積において何十個または何百個もの本発明のデバイスを結合する電気化学的「チップ」が達成される。例示として、各ウェルプレートは、典型的には96個または384個の開口を与える。
【0056】
このようにして製造される「チップ」は、各空胴へタスク固有のイオン液体または錯化分子を含む予め決められた量のイオン液体マトリクスを導入することによって、特定用途に適するものにされる。例えば、単一の溶液サンプルにおいて複数のタイプのイオン(例えば、1つの飲料水サンプルにおける有毒重金属の全てのイオン)を検出しかつ/または検定することが望まれる場合は、各空胴は異なるイオン液体を含み、または、錯化機能または錯化分子が異なる同一のイオン液体を含む。これに対して、複数の異なるサンプルに対して同一の分析を実行する(例えば、異なる川から、または1つの川沿いの異なる場所から採取される複数の水サンプルのHg2+イオン含有量を測定する)ことが望まれる場合は、空胴の各々へ同じイオン液体及び同じ錯化分子が導入される。
【0057】
図2Aから2Eに示す方法を使用すれば、様々な分析を並行して実行することができ、よって単一の分析に要する以上の操作は不要であることが理解されるであろう。
【0058】
以上、本発明は所定の具体的な実装を参照して記述されているが、幾つかの変形が可能である。
【0059】
検出されかつ検定されるイオンは、重金属イオン以外のイオンであってもよい。例えば、医学的分析を実行し、アンモニウム陽イオン、ハロゲン化物陰イオン、他を検定する目的で、生体サンプルにおけるアルカリイオン及びアルカリ土類金属イオンを検定するために本発明を使用することができる。
【0060】
本明細書では、様々なイオン液体及び錯化機能または錯化分子に言及しているが、単に非限定的な例としての言及である。プローブ及びイオン分析手段についても同様である。
【0061】
また、本発明による分析は、水以外の溶媒を基礎とする溶液を使用して実行することも可能である。イオン液体は、前記溶媒と不混和性でありかつ検定されるべきイオンの抽出に効果的であるようにして選択されれば十分である。またイオン液体と分析されるべき溶液との密度差も、前記イオン液体とイオン分析手段との接触を確実にするためには重要である。例では、イオン液体の密度が溶液より高い構成しか考察していないが、逆も同じく可能であり、このような状況下では、分析手段は空胴の頂部に配置されなければならない。
【0062】
図3a及び3bを参照して詳述した実施形態では、空胴の内容物が「肉眼的な」サーモミキサを使用して攪拌されるが、他の攪拌技術を考慮することもできる。具体的には、マイクロ流体チップの表面で表面弾性波を使用してマイクロリットル規模の量の液体を攪拌することが知られている。本発明のデバイスまたはシステムは、例えば表面弾性波技術を基礎とする攪拌手段を内部に組み込ませてもよく、これにより、「肉眼的な」攪拌手段を使用する必要がなくなる。
【0063】
本発明のデバイスまたはシステムは、例えばチップ上で少量の液体を移動させるための手段を有するマイクロ流体システムである、幾分か大きい微量分析システムの単なる1つのエレメントを構成する場合もある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを微量分析する方法であって、
・ある内部体積を有する空胴(1)内に、前記内部体積より小さい体積のイオン液体(2)を置くステップと、
・前記空胴(1)内に、分析されるべき前記イオン(C、A)を含む溶液(4)を配置するステップであって、前記溶液(4)の溶媒及び前記イオン液体(2)は、不混和性であるように、かつ前記溶液(4)から前記イオン液体(2)へのイオン(C、A)の移動を有効化するように選択されるステップと、
・前記イオン液体(2)における前記イオン(C、A)の存在を、自由状態または錯化状態である前記イオン液体(2)内の溶液における少なくとも1つのタイプのイオンを分析するための分析手段(3)を使用して検出するステップであって、前記分析手段(3)は前記イオン液体(2)に接触した状態で配置されるステップと
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記方法は、前記イオン液体(2)及び前記溶液(4)を、前記イオン(C、A)の移動を容易にするような方法で攪拌するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分析されるべきイオン(C、A)を含む前記溶液(4)は水溶液であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記イオン(C、A)は金属イオンであることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記イオン液体(2)における前記イオン(C、A)の存在を前記分析手段(2)によって検出することに存する前記手段は、前記イオン(C、A)の濃度の定量的測定を含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記イオン液体(2)は、溶液内に、前記抽出されかつ分析されるべきタイプのイオン(C、A)に対して錯化機能を有する少なくとも1つの分子を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記イオン液体(2)は、前記抽出されかつ分析されるべきタイプのイオン(C、A)に対して錯化機能を持つ少なくとも1つの陰イオンまたは陽イオンを有するタスク固有のイオン液体と混合されることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記錯化機能は、単一タイプのイオンしか錯化できない選択的機能であることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記イオン液体(2)または錯化機能を有する前記分子は、前記分析されるべきイオンの錯化に反応して変わる少なくとも1つの検出可能な物理的または化学的性質を有するプローブ機能を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記イオン液体(2)の体積は、前記イオン(C、A)を抽出時に濃縮できるように、前記分析されるべきイオン(C、A)を含む前記溶液(4)の体積より少ないことを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記イオン液体(2)の体積は、前記分析されるべきイオン(C、A)を含む前記溶液(4)の体積の10分の1より少なく、好適には100分の1より少ないことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記空胴(1)の内部体積は、1mLより少なく、好適には500μLより少ないことを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記イオン液体(2)の体積は10μLより少なく、好適には約1μL以下であることを特徴とする、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記イオン液体(2)は、前記溶液(4)の密度より大きい密度を示すことを特徴とする、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記空胴(1)は、底部(1b)と、少なくとも1つの側壁(1a)とを呈し、前記イオン液体(2)の体積は前記底部(1b)の液滴を形成することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記空胴(1)は、底部(1b)と、少なくとも1つの側壁(1a)とを呈し、前記イオン液体(2)の体積は前記底部(1b)を完全に覆うに足るだけのものであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記イオン液体(2)内の溶液において少なくとも1つのタイプのイオンを分析するための前記分析手段(3)は、前記体積のイオン液体(2)に接触している少なくとも2つの、好適には3つの電極(30a、30b、30c)を有する電気化学的分析手段(30)を備え、前記分析手段(3)による前記イオン液体(2)における前記イオン(C、A)の存在の検出に存する前記ステップは電気化学的技術を使用して実行されることを特徴とする、請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記電気化学的技術は差分パルス・ボルト−アンペア測定による、または周期的ボルト−アンペア測定によるものであることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記イオン液体(2)内の溶液における少なくとも1つのタイプのイオンのための前記分析手段(3)は、分光測光法または発光を使用する光学的分析手段であり、前記分析手段(3)による前記イオン液体(2)における前記イオン(C、A)の存在の検出に存する前記ステップは光学的技術によって実行されることを特徴とする、請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
請求項1から19のいずれかに記載のイオンを微量分析する方法を実装するためのデバイスであって、
・ ある内部体積を有する空胴(1)と、
・ 前記空胴(1)内部に置かれる、ある体積のイオン液体(2)であって、前記空胴(1)の内部体積より小さい体積を有する前記イオン液体(2)と、
・ 自由状態または錯化状態における前記イオン液体(2)内の溶液における少なくとも1つのタイプのイオン(C、A)を分析するための分析手段(3)であって、前記空胴(1)内部へ前記体積のイオン液体(2)に接触して配置される前記分析手段(3)と、
を備えることを特徴とするデバイス。
【請求項21】
前記空胴は、前記体積のイオン液体に接触しかつ前記イオン液体内の溶液における少なくとも1つのタイプのイオンを電気化学的に分析するための手段(30)を構成する少なくとも2つの、好適には少なくとも3つの電極(30a、30b、30c)が上に形成されている集積回路基板(10、10’)によって構成される底部(1b)を呈することを特徴とする、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記空胴は、前記集積回路基板(10’)へ漏れ防止式に固定されるウェルプレート(14)内のウェルによって形成される側壁(1a)を呈することを特徴とする、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
イオンを微量分析するためのシステムであって、前記システムは、請求項20から22のいずれかに記載の複数のデバイスを備え、前記デバイスの各々は異なるタイプのイオンを選択的に抽出するためのイオン液体(2)を含むシステム。
【請求項24】
イオンを微量分析するためのシステムであって、前記システムは、請求項20から22のいずれかに記載の複数のデバイスを備え、前記デバイスの各々は単一のタイプのイオンを選択的に抽出するためのイオン液体(2)を含むシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−539089(P2009−539089A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−512636(P2009−512636)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際出願番号】PCT/FR2007/000874
【国際公開番号】WO2007/138180
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(506423291)コミサリア ア レネルジィ アトミーク (85)
【Fターム(参考)】