イオン性基含有架橋ポリマーフィルム
本発明は、イオン性基含有架橋ポリマーフィルムの製造に関する。本発明の方法は、少なくとも1種のプレポリマーを含有する材料を押出し、押出後の材料を重合させ、押出された材料をイオン性基をグラフトさせるための化学反応に付すことから成る。前記プレポリマーは、それぞれが少なくとも1個の芳香族基(GA)及び少なくとも1個の官能基(GF)から成る繰返し単位を含む。さらに、前記プレポリマーは、押出温度より高い温度において熱で又は光化学的に重合させることができる少なくとも1個の基(GP)、並びにイオン性基をグラフトさせることを可能にする少なくとも1個の反応性基(GR)を有する。前記フィルムは、燃料電池若しくは電気透析用の膜として、リチウム電池、スーパーキャパシター若しくはエレクトロクロミック装置の電解質として、又はイオン交換膜として、用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン性基を有する架橋したポリマー(イオン性基含有架橋ポリマーと言う)から成るフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸性形態のイオン性基を有する芳香族ポリマーのフィルムは燃料電池の膜として用いることができることが知られている。
【0003】
また、揮発性溶剤中のポリマーの溶液からの流延及び蒸発によって又は押出によってポリマーフィルムを製造することも知られている。押出法には、一般的に毒性があってしかも可燃性の有機溶剤を用いないという利点がある。さらに、押出は連続プロセスであり、高い生産性を有し、膜を形成するフィルムの製造コストの有意の低減を可能にする。実際、膜の生産コストは膜燃料電池の商品化における主要な障害の1つである。最後に、押出法は、流延及び蒸発法とは対照的に、表面全体で均一な厚さのフィルムをもたらす。
【0004】
ポリマーは、高い熱安定性を有して押出に必要な温度に耐えられれば、押出することができる。また、これらの温度においてその粘度が成形プロセスに適合することも必要である。実際、骨格構造中に芳香環を含むポリマーは、高い粘度を有する。さらに、芳香環を有するこれらのポリマーの構造内にイオン性基が存在すると、ガラス転移温度の上昇を引き起こし、この上昇の影響でさらにポリマーの粘度が増大し、より高い押出温度が必要となり、これが芳香族骨格構造の完全性に対して悪影響を及ぼすことがある。
【0005】
ポリマーのガラス温度は、そのモル質量を制限することによって下げることができる。この方法で、鎖の移動性が改善され、押出温度におけるポリマーの粘度の低下がもたらされる。従って、熱分解を引き起こすことなく押出による成形プロセスを実施することができる。しかしながら、ポリマーのモル質量が低いと、得られるフィルムの機械的強度が低くなる。この問題を解決するための1つの解決策は、押出段階の後に枝分かれ又は架橋の結び目によってポリマーのモル質量を増加させ又はフィルムを架橋させることから成る。しかしながら、この質量の増加又は架橋は押出段階の間に起こさなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、押出によってイオン性基含有ポリマーフィルムを得るための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、1種以上のプレポリマーからのフィルムの製造方法及び該方法によって得られるフィルムに関する。
【0008】
本発明の方法は、少なくとも1種のプレポリマーを含む出発(初期)ポリマー材料を押出することから成る工程、押出後のこのポリマー材料を重合させることから成る工程、及び押出された材料に対してイオン性基をグラフトさせるための化学反応を行うことから成る工程を含み、
・前記プレポリマーが1個以上の芳香族基GA及び1個以上の官能基GFをそれぞれが含む繰返し単位を含み;
・前記プレポリマーが熱で(押出温度より高い温度において)、又は光化学的に、架橋し得る基GPを1個以上有し;
・前記プレポリマーがイオン性基をグラフトさせることを可能にする反応性基GRを1個以上有し;
・2個以上の芳香族基GA及び/又は2個以上の官能基GFを含む繰返し単位において、これらの芳香族基が同一であっても異なっていてもよく、官能基GFが同一であっても異なっていてもよい:
ことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下において、「単位(GA,GF)」という用語は、1個以上の基GA及び1個以上の基GFを含む繰返し単位を意味するために用いられる。ここで、基GA及びGFは随意に反応性基GR及び基GPを有する。
【0010】
1つの実施形態において、出発ポリマー材料は単一のプレポリマーを含有する。
【0011】
別の実施形態において、出発ポリマー材料は、繰返し単位(GA,GF)を含む第2のプレポリマー及び/又はポリマー少なくとも1種を含有する。この第2のプレポリマーの単位(GA,GF)の内の少なくともいくつかは、基GPを有する。前記ポリマーの単位(GA,GF)の内のいくつかは、随意に基GPを有する。
【0012】
本明細書において、プレポリマーはモル質量が15000g/モル未満、好ましくは5000〜10000g/モルの範囲となるような数の繰返し単位(GA,GF)を含み、ポリマーはモル質量が15000g/モル超、好ましくは25000g/モル超500000g/モル未満となるような数の繰返し単位(GA,GF)を含む。
【0013】
出発ポリマー材料が第2のプレポリマー及び/又はポリマーを含有する場合、この第2のプレポリマー及び/又はポリマーの繰返し単位(GA,GF)は、第1のプレポリマーの繰返し単位(GA,GF)と異なるものであってもよい。
【0014】
プレポリマーの骨格構造は、繰返し単位(GA,GF)が単一の鎖を形成して成ることができる。また、繰返し単位(GA,GF)が主鎖及び側鎖を形成して成ることもできる。繰返し単位の基GAは、主鎖及び場合により側鎖の構成要素である。基GFは、鎖の構成要素であることもでき、基GAの側部置換基であることもできる。
【0015】
プレポリマーの繰返し単位は、同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0016】
ポリマーの骨格構造は、繰返し単位が単一の鎖を形成して成るのが好ましい。ポリマーの例には、特にSolvay社よりUdel、Radel A及びRadel R の名称で、BASF社よりUltrason E及びUltrason Sの名称で並びに住友化学株式会社よりSumikaexcelの名称で販売されているポリスルホン、並びにVictrex社よりPeek HT及びPeek Optimaの名称で販売されているポリエーテルエーテルケトンがある。
【0017】
繰返し単位の芳香族基GAは、
・非置換フェニレン基−C6H4−、少なくとも1個の置換基を有するフェニレン基、置換基を持たない2個の縮合フェニレン核から成る基若しくは少なくとも1個の置換基を有する2個の縮合フェニレン核から成る基;又は
・N、O及びSから選択される1個以上のヘテロ原子を含むヘテロ芳香核から成る基(このヘテロ芳香族基は随意に1個以上の置換基を有する):
から選択することができ、
但し、フェニレン基又はヘテロ芳香核の各置換基は、互いに独立して、アルキル基(好ましくは1〜5個の炭素原子を有するもの)、ハロアルキル基(好ましくは1〜5個の炭素原子を有するもの)、アルケニル基(好ましくは2〜8個の炭素原子を有するもの)、又は1個以上の非縮合若しくは縮合芳香核を含み且つ随意に置換基を有する芳香族基を表わす。
【0018】
繰返し単位の官能基GFは、エーテル基、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基(例えば−C(CH3)2−])、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレン基(例えば−C(CF3)2−)、カルボニル、エステル、スルフィド、スルホン、オキサゾリル基、イミダゾリル基、アミド基又はイミド基であることができる。この官能基は、ポリマーの形成に寄与し、その特性を調節することを可能にする。例えば、エーテル、スルフィド、アルキル又はペルフルオロアルキルタイプの基はポリマーに柔軟性(可撓性)を付与し、一方スルホン又はカルボニルタイプの基はポリマーに酸化剤に対する耐性を付与する。
【0019】
繰返し単位の例には、次の単位が包含される:
・下記式(I):
【化1】
{ここで、R3及びR4が互いに独立的にアルキル基(好ましくは1〜5個の炭素原子を有するもの)、アルケニル基(好ましくは2〜8個の炭素原子を有するもの)又は1個以上の縮合若しくは非縮合芳香核を含み且つ随意に置換基を有するアリール基を表わす}
に相当するオキシフェニレン基、
・下記式のアリールエーテルケトン基:
【化2】
【化3】
・下記式のベンゾオキサゾール基:
【化4】
・下記式のベンゾイミダゾール基:
【化5】
・下記式のポリアミド酸(押出後にポリイミドへのその重合が達成される):
【化6】
・下記式:
【化7】
においてXが好ましくはH、ハロゲン原子、OH基又はニトロ基を表わすものに相当するp−フェニレン基、
・下記式のフェニレンスルフィド基:
【化8】
・下記式:
【化9】
(ここで、R5は単結合、S及びOから選択されるヘテロ原子、−C(CH3)2−若しくは−C(CF3)2−基、随意に置換基を有する芳香核、又は2個以上の縮合若しくは非縮合芳香核(随意に置換基を有するもの)。
【0020】
上記の式(I)〜(IX)において、nはプレポリマー中の繰返し単位の数を表わし、そしてnはプレポリマーのモル質量が15000g/モル未満となるようなものである。
【0021】
上記の式(II)〜(IX)において、フェニレン基の少なくとも1つは、R3及びR4について与えた定義に相当する少なくとも1個の置換基を有することができる。
【0022】
押出後にプレポリマーの架橋又は重合を可能にする基GPは、主鎖の末端及び/又は場合により側鎖上に位置することができる。
【0023】
基GPが熱重合可能な基(熱重合性基と言う)である場合、これは、式−C≡C−R2{ここで、R2は芳香族基、アルキル基(好ましくは1〜5個の炭素原子を有するもの)又はペルフルオロアルキル基(好ましくは1〜5個の炭素原子を有するもの)を表わす}に相当するアルキニル基から選択されるのが好ましい。好ましくは、R2は芳香族基、より特定的には基GAについて上で与えた定義に相当する基を表わす。
【0024】
アルキニルタイプの基GPが繰返し単位の芳香族基GAに結合している場合、これは該芳香族基GAに直接結合することができる。この場合、前記プレポリマーの当該末端は、構造−GA−C≡C−R2を有する。
【0025】
基GPが繰返し単位の官能基GFに結合している場合、これは芳香族基、アルキレン基又はペルフルオロアルキレン基を表わす基−R1−を介して結合する。R1は好ましくは芳香族基、より特定的には基GAと同様の芳香族基を表わす。この場合、前記プレポリマーの当該末端又は当該置換基は、構造−GF−R1−C≡C−R2を有する。
【0026】
下記の表Iに、末端繰返し単位の官能基GFに結合する熱重合性基GPを有するプレポリマー末端の例をいくつか与える。
【表1】
【0027】
下記の式IXbは、芳香族基GAに直接結合した熱重合性基を一方の末端に有し且つ基GF上にビアリールスルホニルタイプの基R1を介して結合した熱重合性基をもう一方の末端に有するポリスルホンプレポリマーの例を与える。
【化10】
【0028】
基GPが光化学的に重合又は架橋可能な基である場合、これはビニルエーテル基CH2=CH−O−及びオキシラン、オキセタン若しくはアジリジンから誘導されるヘテロ環式基から選択することができる。
【0029】
繰返し単位(GA,GF)が有する反応性基GR(これは、押出及び架橋の後に得られるポリマーフィルム上にイオン性基をグラフトさせることを可能にする)は、主鎖及び/又は任意の側鎖に結合していることができる。この反応性基GRは、望まれる最終イオン性基及び該イオン性基を結合させるために利用可能な試薬の関数として選択される。この反応性基GRは、基GA又は基GAの置換基から成ることができる。
【0030】
最終イオン性基は、ポリマーに結合したアニオン部分と、プロトン、一価金属、二価金属又は三価金属のイオン並びにアンモニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、テトラゾリウム、ピリジニウム及びグアニジニウムイオンから選択される有機イオンから選択されるカチオンM+とを含む。アンモニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、テトラゾリウム、ピリジニウム又はグアニジニウムカチオンの置換基は同一であっても異なっていてもよく、これらは互いに独立して、H、1〜6個の炭素原子(好ましくは1〜4個の炭素原子)を有するアルキル基及びアリール基から選択されるのが好ましく、また、2個の置換基が一緒になってアルケニル基を形成することもできる。
【0031】
最終イオン性基/反応性基GRの好適な組合せの例のいくつかを、下記の表IIに与える。
【表2】
【0032】
式SO2NR6-(1/p)Mp+において、R6は水素、アルキル基(好ましくは1〜6個の炭素原子を有するもの)、一部フッ素化されたアルキル基(好ましくは1〜6個の炭素原子を有するもの)、アルケニル基(好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、一部フッ素化されたアルケニル基(好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、オキシアルキレン基CH3−(O−(CH2)m)n(ここで、好ましくは2≦m<5且つ1≦n≦10である)、又は1個以上の縮合若しくは非縮合芳香核を含み且つ随意に置換基を有するアリール基である。
【0033】
式−SO2N-(1/p)Mp+−SO2−R7において、R7はアルキル基(好ましくは1〜6個の炭素原子を有するもの)、ペルフッ素化若しくは一部フッ素化されたアルキル基(好ましくは1〜6個の炭素原子を有するもの)、アルケニル基(好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、ペルフッ素化若しくは一部フッ素化されたアルケニル基(好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、オキシアルキレン基CH3−(O−(CH2)m)n(ここで、好ましくは2≦m<5且つ1≦n≦10である)、又は1個以上の縮合若しくは非縮合芳香核を含み且つ随意に置換基を有するアリール基である。
【0034】
GRがフェニレン基である場合、これはスルホネート、チオカルボキシレート又はジチオカルボキシレートイオン性基のグラフトを可能にする:
・スルホネートイオン性基のグラフトは、ポリマーフィルムをクロロスルホン酸トリメチルシリル又はクロロスルホン酸と反応させ、次いでMp+(OH-)pを添加することによって行われる;
・チオカルボキシレート基のグラフトは、ポリマーフィルムをブチルリチウムと反応させ、次いでCS2、SOCl2及びMp+(OH-)pを順次添加することによって行われる;
・ジチオカルボキシレート基のグラフトは、ポリマーフィルムをブチルリチウムと反応させ、次いでCS2、HCl及びMp+(OH-)pを順次添加することによって行われる。
【0035】
基GRが芳香族基GAが有するOH基である場合:
・前記フィルムとMp+(OH-)pとを反応させることによってフェノキシドが得られ;
・前記フィルムとClSO3Hとを反応させ、次いでMp+(OH-)pを添加することによって、OH基がサルフェート基に転化する。
【0036】
メチルを表わす基GRは、ポリマーフィルムとKMnO4とを反応させ、次いでMp+(OH-)pを添加することによって、カルボキシレートイオン性基を結合させることを可能にする。
【0037】
−CH2−X(ここで、Xはハロゲンである)を表わす基GRは、P(OCH3)3と反応させ、次いでMp+(OH-)pを添加することによって、ホスホネートイオン性基をグラフトさせることができる。
【0038】
例えば上記の方法によってポリマーフィルムに結合させたスルホネート基−SO3-(1/p)Mp+は、スルホニルイミド又はスルホニルアミド基を結合させるために基GRとして用いることができる:
・スルホニルアミド基のグラフトは、スルホネート基を有するポリマーフィルムをSOCl2又はPCl5と反応させ、次いでR6NH2及びMp+(OH-)pと順次反応させることによって行われる;
・スルホニルイミド基のグラフトは、スルホネート基を有するポリマーフィルムをSOCl2又はPCl5と反応させ、次いでR7SO2NH-(1/p)Mp+及びMp+(OH-)pと順次反応させることによって行われる。
【0039】
押出の温度は、フィルム製造用に用いられるプレポリマー(群)の基GPの関数として選択される。基GPが熱重合性である場合には、押出温度を重合温度より低くする。基GPがアルキンタイプのものであり且つこのアルキン基が少なくとも1個の芳香族基に直接結合したプレポリマーは、基GPが芳香族基に直接結合していないアルキンであるプレポリマーより高い重合温度を有する。芳香族基に結合したアルキン基の重合温度は、約330℃に達し得る。
【0040】
押出は、一軸スクリュー又は二軸スクリュー押出装置を用いて実施することができる。装置の例には、DSMXPLORE社よりMicrocompounder DACAの名称で販売されている二軸スクリュー押出機がある。プレポリマーの関数としての特定の選択は、当業者の範囲内である。
【0041】
押出の目的のために、様々な添加剤をプレポリマーに添加することができる。この添加剤は、プロトン伝導性充填剤(例えばα−ZrP若しくはホスホアンチモン酸)又は補強材{ガラス繊維、炭素繊維、Kevlar(登録商標)}であることができる。
【0042】
重合の様相は、基GPの性状に依存する。基GPが熱重合性基である場合には、押出後に得られるポリマーフィルムを押出機からの出口においてオーブン中に入れることから成る熱処理を行う。特にエチニル基の場合、熱処理はフィルムを2〜3時間の間250〜330℃の範囲の温度にすることから成るのが有利である。基GPが光架橋性の基である場合には、第1の実施形態に従い、光開始剤を押出の前にプレポリマー中に導入し、次いで押出によって得られたフィルムを5〜150mW/cm2の強度で200〜400nmの範囲のUV照射に付すことによって、架橋を行うことができる。光開始剤は、トリアリールスルホニウム塩(例えば(C6H5)3S+,PF6-)であることができる。さらに、第2の実施形態に従えば、押出後に得られたプレポリマーフィルムを電子ビームに付すことによって架橋を行うことができる。
【0043】
式(IXb)においてR5が単結合又はアリールエーテル基を表わすポリスルホンプレポリマーは、2工程プロセスによって得ることができる。
【0044】
・第1工程において、式(IXc)に相当するテレケリック(両端官能化)ポリスルホンを調製する。
【化11】
このプレポリマー(IXc) の合成は、極性非プロトン性溶剤及び弱塩基の存在下で、過剰量で用いた活性化されたハロゲン化芳香族化合物(例えば次式:
【化12】
に相当する4,4’−ジクロロジフェニルスルホン)と2個のジフェノールモノマー{例えば4,4’−ジヒドロキシビフェニル及び1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン(それぞれ次式:
【化13】
に相当する)}との重縮合によって実施される。過剰量のジフェノールモノマーを使用することによって、鎖の各末端にフェノール官能基を有するプレポリマーを得ることができ、これは弱塩基(例えばK2CO3)のカチオン(例えばK+)のフェノキシドに転化される。プレポリマーの長さは用いる各種モノマー間の化学量論比に依存する。
【0045】
・第2工程において、プレポリマーIXcと次式(X):
【化14】
(ここで、R7はハロゲンである)
に相当する一官能性モノマーとを反応させることによって、プレポリマーのフェノキシド末端を変性する。
【0046】
1つの特定的な実施形態において、モノマー4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン及び(X)からプレポリマー(IXc)を製造する方法は、次の工程を含む:
・N,N−ジメチルアセトアミド中の4,4’−ジヒドロキシビフェニル及び1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンの溶液を調製する。この2つの試薬は、約30質量%を占めるのが好ましい。次いで、この溶液に炭酸カルシウムを添加し、次いでこれを機械式に撹拌しながら窒素流下で150℃の温度において2時間共沸蒸留して、水を除去する;
・得られた脱水済溶液を4,4’−ジクロロジフェニルスルホンと混合し、次いでこの溶液中の試薬の濃度を適量のN,N−ジメチルアセトアミド溶剤を添加することによって20質量%にし、その後にこの溶液を170℃の温度にし、機械式に撹拌しながら窒素流下でこの温度を20時間保つ;
・次いでこの溶液に一官能性モノマー(X)を添加し、次いでこの溶液中の試薬の濃度を適量のN,N−ジメチルアセトアミド溶剤を添加することによって20質量%にし、その後この溶液を170℃の温度にし、機械式に撹拌しながら窒素流下でこの温度を10時間保つ;
・プレポリマーを脱塩水から沈殿させて濾過することによって抽出し、脱塩水ですすぎ、アセトンですすぐ;
・プレポリマー(IXc)を真空下で100℃において乾燥させる。
【0047】
4,4’−ジクロロジフェニルスルホン及び4,4’−ジヒドロキシビフェニルは商品として入手できる製品である。
【0048】
1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン(BHPB)は、次の反応式に従って合成することができる。
【化15】
この第1工程は、弱塩基(好ましくは炭酸カリウム)及び極性非プロトン性溶剤(好ましくはN,N−ジメチルアセトアミド)の存在下での4−フルオロベンズアルデヒド及びヒドロキノンを用いた二重求核置換に相当し、化合物1,4−ビス(p−ホルミルフェノキシ)ベンゼン(a)の生成をもたらす。この化合物(a)は次いで3−クロロペルオキシ安息香酸(MCPBA)の存在下で1,4−ビス(p−ホルミルオキシフェノキシ)ベンゼン(b)に酸化される。次いでこの化合物(b)を塩基性媒体(好ましくはKOH)中で加水分解して、所望のジフェノール化合物BHPBが得られる。
【0049】
4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホン(CPEDPS)(R2がClである化合物(X))の合成は、2つの連続工程で実施される。第1工程は、次の反応式に従って、塩素化溶剤(好ましくは1,2−ジクロロエタン)及びルイス酸(好ましくはAlCl3)の存在下でクロロベンゼン及び4−ブロモベンゾイルクロリドを用いたフリーデルクラフトタイプの芳香族求電子置換によって支配される。
【化16】
【0050】
第2工程は、パラジウム(II)をベースとする触媒(好ましくはビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド)及び助触媒(好ましくはヨウ化銅(I))の存在下で4−ブロモ−4’−クロロジフェニルスルホン化合物の臭素をフェニルアセチレン官能基で置換することから成る。この反応式は、次の通りである。
【化17】
【0051】
前記イオン性基は、押出後に得られたフィルムの重合後に得られたフィルム中に、次の工程を含む方法によって導入される:
・前記の重合させたフィルムを無水溶剤によって膨潤させる;
・この膨潤させたフィルムを、イオン性基の前駆体である試薬の無水溶剤中の溶液と、撹拌しながら接触させる;
・このフィルムを溶液から抽出し、純水で洗浄し、真空下で乾燥させ、次いで蒸留水中に浸して保存する。
【0052】
プレポリマーがポリスルホンである場合、得られる変性プレポリマーの繰返し単位は、次式:
【化18】
によって表わすことができる。
【0053】
1つの特定実施形態において、イオン性基−SO3M+は、末端アルキニル基GPを含み且つ反応性基GRがいくつかの基GAによって構成されるポリスルホンプレポリマーを架橋させることによって得られた乾燥フィルム中に、次の工程を含む方法によって導入される。
a.前記の乾燥フィルムをニトロエタン、ニトロメタン、クロロホルム及びジクロロエタンから選択される無水溶剤によって膨潤させる;
b.選択した無水溶剤中のクロロスルホン酸トリメチルシリル又はクロロスルホン酸の無水溶液を調製する;
c.第1工程において得られた膨潤フィルムを第2工程の際に調製された溶液と接触させる;
d.前記フィルムを第1工程において用いた純粋な溶剤で洗浄する;
e.スルホン化されたフィルムを力学的真空下で40〜80℃の範囲の温度(例えば50℃)において乾燥させる;
f.前記フィルムを蒸留水中に浸す。
【0054】
得られる変性プレポリマーの繰返し単位は、次式:
【化19】
によって表わすことができる。
【0055】
エーテルスルホン繰返し単位への−SO3H基の結合は、GAのフェニルに対するクロロスルホン酸(ACS)又はクロロスルホン酸トリメチルシリル(CST)から選択されるスルホン化用試薬による求電子置換によって実施することができる。この方法は、次の工程を含む:
(a)非プロトン性溶剤中のACS又はCSTから選択されるスルホン化用試薬の無水溶液を調製する;
(b)前記溶液とポリ(エーテルスルホン)フィルムとを20℃〜80℃の範囲の温度において5分〜24時間の間接触させる;
(c)前記フィルムを非プロトン性溶剤で洗浄する;
(d)力学的真空下で40〜80℃の範囲の温度において乾燥を実施する。
を含む。
【0056】
前記フィルムは次いで蒸留水中に保存することができる。
【0057】
1つの実施形態において、本方法は、試薬の溶液と接触させる前にフィルムを非プロトン性溶剤中で膨潤させる予備工程を含む。
【0058】
非プロトン性溶剤は、スルホン化用試薬に対して不活性でありながらこれを溶解させることができるものでなければならず、そしてイオン性基の結合の前後においてポリマーフィルムを溶解させてはならない。この非プロトン性溶剤は、より特定的にはニトロエタン(NE)、ニトロメタン(NM)、ジクロロエタン(DCE)、シクロヘキサン(CH)、石油エーテル(EP)、クロロホルム(CHL)又はそれらの混合物の1つから選択することができる。
【0059】
押出工程終了時に得られるフィルムは本質的に無水であり、スルホネート基を結合させるための反応に付すことができる。押出後に保存したフィルムは、スルホン化処理によって反応させる直前に乾燥に付さなければならない。乾燥は、10ミリバールの真空下で110℃において2時間実施することができる。
【0060】
本発明の方法によって得られたフィルムは、本発明のさらなる主題を構成する。本発明に従うフィルムは、上で規定した繰返し単位(GA,GF)及びイオン性基を含む架橋したポリマーから成る。
【0061】
1つの好ましい実施形態において、本発明の方法によって得られるフィルムは、10μm〜300μmの範囲の厚さを有する。この場合、このフィルムはイオン性基の均一な分布を示す。押出条件(スクリュー回転速度、供給速度)を調節することによって特定の厚さが得られ、その調節は当業者の範囲内である。
【0062】
押出すべき材料が熱重合性基GPを含むプレポリマー及び光化学重合性基GPを含むプレポリマーの2種のプレポリマーの混合物から成る場合、これら2つの方法による連続的な架橋は相互侵入網目構造をもたらす。出発ポリマー材料が基GPを含有しないポリマーである場合、押出後の重合は半相互侵入網目構造を形成させる。
【0063】
フィルムを構成するポリマーは、単位(I)〜(V)及び(VII)〜(X)から選択される繰返し単位又は式(VI)に相当するポリアミド酸基タイプの単位を重合させることによって得られる単位(VI')から成ることができ、これらの単位の内の少なくとも一部はイオン性基を有するものとする。単位(VI')は、下記の式によって表わすことができる。
【化20】
【0064】
フィルムを構成するポリマーのイオン性基は、スルホネート基−SO3-(1/p)Mp+、サルフェート基−OSO3-(1/p)Mp+、フェノキシド基−O-(1/p)Mp+、カルボキシレート基−CO2-(1/p)Mp+、チオカルボキシレート基−C(=S)O-(1/p)Mp+、ジチオカルボキシレート基−CS2-(1/p)Mp+、ホスホネート基−PO32-(2/p)Mp+、スルホニルアミド基−SO2N(R6)-(1/p)Mp+又はスルホニルイミド基−SO2N-(1/p)Mp+−SO2−R7であることができる。これらの基Mはプロトン、一価金属、二価金属又は三価金属のイオン並びにアンモニウム、ピラゾリウム、テトラゾリウム、ピリジニウム及びグアニジニウムイオンのような有機イオンから選択され、pはカチオンの原子価であり、そしてR6及びR7は上で与えた意味を持つ。
【0065】
本発明の方法に従って得られるフィルムは、燃料として水素(PEMFC)又はメタノール(DMFC)を用いる燃料電池用の膜として、イオン交換膜として、電気透析膜として、リチウム電池、スーパーキャパシター又はエレクトロクロミックデバイスのポリマー電解質として、有利に用いることができる。
【0066】
前記ポリマーフィルムをリチウム電池、スーパーキャパシター又はエレクトロクロミックデバイスの電解質として用いることが意図される場合には、カチオンはLiである。
【0067】
リチウム電池は、有機溶剤によりゲル化された又はゲル化されていないポリマー電解質によって隔てられた負極及び正極を含む。前記電解質は、本発明の方法によって得られたフィルムであることができる。
【0068】
エレクトロクロミックシステムは、透明電極と、酸化度と共に色が変化する活性材料から成る電極とを含み、これら2つの電極は、本発明に従う方法によって得られたフィルムから成るイオン伝導性電解質によって隔てられる。前記透明電極は、例えば酸化インジウムスズ(ITO)又はフッ素ドープ酸化スズ(FTO)から成ることができる。もう一方の電極は、例えば酸化タングステンWO3であることができる活性材料中にLi+イオンが入れられた時に色を変える。
【0069】
スーパーキャパシターは、有機溶剤によりゲル化された又はゲル化されていない伝導性ポリマー電解質によって隔てられた2個の炭素電極を含む。前記電解質は、本発明に従う方法によって得られたフィルムから成ることができる。
【0070】
本発明の方法によって得られたフィルムをイオン交換膜として又は電気透析膜として用いる場合、イオン性基のカチオンはプロトン並びにアンモニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、テトラゾリウム、ピリジニウム及びグアニジニウムイオンから選択される。
【0071】
前記ポリマーフィルムを燃料電池の膜として用いることが意図される場合、カチオンはH又はアンモニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、テトラゾリウム、ピリジニウム及びグアニジニウムイオンから選択することができる。プロトンが特に好ましい。
【実施例】
【0072】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0073】
実施例においては、各種サンプルを以下のものによって分析した:
・Bruker AC250装置を用いたプロトン、カーボン及びDEPT(distortionless enhancement by polarization transfer spectrum)核磁気共鳴(NMR)。分析すべき物質は、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解させる。
・HP 5890 series II GC装置とHP 5965B IR検出器との組合せ及びHP 5971A質量分析計を用いたガスクロマトグラフィーと質量分析との組合せ(GCMS)。適用した温度上昇は150〜300℃の範囲において10℃/分である。
・Waters HPLC装置(W510ポンプ、W410示差屈折率検出器、一連の2個のPIGEL混合Dカラム、70℃)、ポリスチレン標準物質を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)。
・Mettler Toledo DSC 822e装置を用いた示差走査熱量分析(DSC)。適用した温度上昇は、アルゴン下で5℃/分である(80ミリリットル/分)。
【0074】
例1及び2は、二官能性ビスフェノールモノマーの1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン及び一官能性モノマーの4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホンの調製を説明する。
【0075】
例3〜5は、押出及び架橋可能なポリスルホンプレポリマーの調製方法を説明する。
【0076】
例6〜8は、例3〜5に従って得られたプレポリマーの押出に関する。
【0077】
例9は、押出されたプレポリマーフィルムの熱架橋に関する。
【0078】
例10及び11は、前もって押出して架橋させたフィルムからのスルホン化イオン性基含有フィルムの調製に関する。
【0079】
例1
【0080】
1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンの調製
【0081】
S字管及び電磁式撹拌機を備え付けて窒素流で洗い流した500ミリリットルの三つ口丸底フラスコに、ヒドロキノン15g(136.2ミリモル)、4−フルオロベンズアルデヒド37.2g(299.7ミリモル)、炭酸カリウム22.59g(163.4ミリモル)及びN,N−ジメチルアセトアミド120ミリリットルを装填した(溶液中の有機試薬の濃度30質量%に相当)。この溶液を150℃において6時間撹拌する。赤みを帯びた生成物の一部が沈殿し始めた。
【0082】
反応終了時(NMRによって決定)に、反応混合物を脱塩水500ミリリットル中に注いで沈殿させることによって生成物を抽出する。得られた沈殿をガラス濾過器上で濾過し、次いで多量の脱塩水で洗浄し、メタノールで洗浄した。次いで生成物を80℃のオーブン中で真空中で5時間乾燥させた。99%の粗収率が得られた。
【0083】
第2工程は、次のように実施する:冷却管及び電磁式撹拌機を備え付けて窒素流で洗い流した1リットルの三つ口丸底フラスコに、70%3−クロロペルオキシ安息香酸77.43g(448.8ミリモル)及びクロロホルム200ミリリットルを装填した。混合物を均質化させた後に、滴下漏斗を用いて1,4−ビス(p−ホルミルフェノキシ)ベンゼン40g(125.7ミリモル)及びクロロホルム300ミリリットルを滴下した。
【0084】
周囲温度において3時間撹拌した後に、残留過酸を除去するために、反応混合物を重亜硫酸ナトリウム65.38g(157.1ミリモル)を含有させた脱塩水500ミリリットル中に注いた。次いで、生成した3−クロロ安息香酸を除去するために、重炭酸ナトリウム31.67g(377ミリモル)を添加した。この混合物を2つの透明な相が得られるまで撹拌した。
【0085】
分液漏斗を用いて有機相を回収した。塩化ナトリウムを添加することによってエマルションの生成を排除した。この有機相を脱塩水で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、次いで回転式蒸発器で濃縮した。得られた茶色の生成物を80℃のオーブン中で真空下で5時間乾燥させた。
【0086】
次いで1,4−ビス(p−ホルミルオキシフェノキシ)ベンゼンを2/3の脱塩水/メタノール混合物中で80℃において洗浄した。濾過によって回収された生成物を80℃のオーブン中で真空下で5時間乾燥させた。収率は89%だった。
【0087】
最後の工程において、1,4−ビス(p−ホルミルオキシフェノキシ)ベンゼンを次のように加水分解した。冷却管及び電磁式撹拌機を備え付けた500ミリリットルの一口丸底フラスコに、1,4−ビス(p−ホルミルオキシフェノキシ)ベンゼン30g(85.6ミリモル)及び1M水酸化カリウム含有メタノール溶液86ミリリットルを装填し、メタノール150ミリリットルを添加した。この反応混合物を溶剤の沸点において90分間撹拌した。
【0088】
反応終了時に、溶液を脱塩水500ミリリットル中に注いだ。こうして得られた茶色の沈殿をガラス濾過器上で濾別し、次いで3回すすいだ。次いで生成物を80℃のオーブン中で真空下で5時間乾燥させた。
【0089】
1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンを前もって酢酸エチル中に溶解させ、1/1の酢酸エチル/シクロヘキサン混合物を溶離剤として用いたカラムクロマトグラフィーによって精製する。回収された生成物を次いで高純度で得るために昇華させる。得られた全体質量収率は71%だった。
【0090】
1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンの特徴付け
【0091】
得られた生成物の構造を、1H−NMR、13C−NMR及びDEPT−NMRによって特徴付けした。
【0092】
図1は、1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンの1H−NMRスペクトルを表わす。
【0093】
図2は、上が1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンの13C−NMRスペクトルを表わし、下がDEPTスペクトルを表わす。図2及び以下の図中、carboneはカーボンである。
【0094】
これらのスペクトルは、1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンに特有のものである。この化合物の純度は、この分析によって確かめられる。プロトン化学シフト及びそれらのカップリング定数aJb-c(隣接したプロトンの間の相互作用を特徴付ける)(「b」は懸案のプロトンであり、「c」は「b」に隣接するプロトンであり、そして「a」は懸案の2個のプロトンを隔てる結合の数である)を下記の表IIIに与える。「特徴」はプロトンについてのピークの数を表わし;「指数」はスペクトルに対して与えられる式に相当し;「カップリング定数」は装置の周波数で割ったピーク間の距離の関数として計算される。
【0095】
【表3】
【0096】
例2
【0097】
4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホンの調製
【0098】
HClガストラップ(KOH水溶液)を上に乗せた冷却管の冷却管及び電磁式撹拌機を備え付けて窒素流で洗い流した250ミリリットルの三つ口丸底フラスコに、4−ブロモベンゼンスルホニルクロリド21g(82.2ミリモル)、塩化アルミニウム(AlCl3)13.14g(98.6ミリモル)の及び1,2−ジクロロエタン40ミリリットルを装填した。
【0099】
この反応混合物を15分間撹拌し、次いでクロロベンゼン11.10g(98.6ミリモル)及び1,2−ジクロロエタン5ミリリットルの混合物を滴下した。添加後に、この混合物を50℃において4時間撹拌した。
【0100】
反応終了時に、この溶液を脱塩吸い400ミリリットル中に注いだ。2層が生成し、次いで1時間撹拌した後に黄色っぽい生成物が沈殿した。これをガラス濾過器上で濾別し、次いですすぎ、次いでイソプロパノールで洗浄して残留クロロベンゼンを除去した。次いで生成物を80℃のオーブン中で真空下で5時間乾燥させた。これにより、4−ブロモ−4’−クロロジフェニルスルホンが91%の粗収率で得られた。
【0101】
冷却管及び電磁式撹拌機を備え付けてアルゴン真空下に隔離した250ミリリットルの三つ口丸底フラスコに、ヨウ化銅(I)28.4mg(0.15ミリモル)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド62.8mg(0.089ミリモル)、トリフェニルホスフィン156.4mg(0.596ミリモル)及びN,N−ジメチルホルムアミド20ミリリットルを装填した。この溶液を10分間撹拌し、その後に4−ブロモ−4’−クロロジフェニルスルホン24.71g(74.5ミリモル)、フェニルアセチレン7.61g(74.5ミリモル)、トリエチルアミン15ミリリットル及び無水N,N−ジメチルホルムアミド80ミリリットルを添加した。添加後に、この混合物を80℃において18時間撹拌した。
【0102】
反応終了時に、この溶液をセライト上で熱濾過して触媒を除去した。このセライトを次いで1,2−ジクロロエタンで3回すすいだ。濾液を回収し、次いで回転式蒸発器で濃縮した。得られたベージュ色の生成物を80℃のオーブン中で真空下で5時間乾燥させた。
【0103】
この4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホン(CPEDPS)をアセトニトリルからの再結晶によって精製した。この生成物を次いで80℃のオーブン中で真空下で5時間乾燥させた。全体収率は85%だった。
【0104】
4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホンの特徴付け
【0105】
CPEDPSの構造を1H、13C及びDEPT−NMRによって確認する。
【0106】
図3は、4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホンの1H−NMRスペクトルを表わす。
【0107】
図4は、上が4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホンの13C−NMRスペクトルを表わし、下がDEPTスペクトルを表わす。
【0108】
これらのスペクトルは所期の構造に一致した。プロトン化学シフト及びそれらのカップリング定数(J)を下記の表IVに与える。
【表4】
【0109】
GC−MS分析は、生成物の純度を確認することを可能にする。より特定的には、クロマトグラムは352g/モルのモル質量に相当する単一のピークを示す。この値は実際CPEDPSの質量に相当する。
【0110】
例3
【0111】
プレポリマーO−BP2の調製
【0112】
プレポリマーO−BP2は、所定のモル質量M0=2000g/モルを有する。これは、ジフェノールである4,4’−ジヒドロキシビフェニルから調製される。
【0113】
その合成の第1工程は、炭酸カリウム及びN,N−ジメチルアセトアミドの存在下での4,4’−ジクロロジフェニルスルホンと4,4’−ジヒドロキシビフェニルとの重縮合によって行われる。4,4’−ジクロロジフェニルスルホンは前もって昇華によって精製し、4,4’−ジヒドロキシビフェニルは前もってエタノールからの再結晶によって精製した。各末端にフェノール基を有するプレポリマーを得るために、4,4’−ジヒドロキシビフェニルを過剰量で用いる(炭酸カリウムのカリウムイオンによってカリウムフェノキシドに転化させる)。反応式は次の通りである。
【化21】
【0114】
第2段階において、プレポリマー(a)を、次の反応式に従って一官能性モノマー CPEDPSと反応させることによって、末端を化学的に変性する。
【化22】
【0115】
この合成は、次の手順に従って実施した。機械式撹拌機及び冷却管を上に乗せたディーンスターク装置を備え付けて窒素流で洗い流した250ミリリットルの三つ口丸底フラスコに、4,4’−ジヒドロキシビフェニル11.0308g(59.2ミリモル)、炭酸カリウム9.824g(71.0ミリモル)及びN,N−ジメチルアセトアミド5ミリリットルを装填した(ジフェノールモノマー濃度30質量%に相当)。この混合物をトルエン10ミリリットルと混合し、次いで150℃にし、共沸蒸留によって水を除去するためにこの温度を2時間保った。
【0116】
次いで、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン12.7038g(44.24ミリモル)及びN,N−ジメチルアセトアミド40ミリリットルを添加して溶液中の有機試薬の濃度を20質量%まで低下させた。この溶液を次いで、ディーンスターク装置をS字管に交換した後に、170℃において20時間撹拌した。
【0117】
最後に、20質量%の濃度を保つために4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホン15.8778g(45ミリモル)及びN,N−ジメチルアセトアミド63ミリリットルを添加し、この溶液を200℃において10時間撹拌した。
【0118】
このプレポリマーを脱塩水中に沈殿させることによって抽出した。ガラス濾過器上で濾過し、脱塩水で洗浄し、次いでアセトンで洗浄して過剰分4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホンを除去した後に、プレポリマーを100℃のオーブン中で真空下で乾燥させた。
【0119】
試薬の量は、次のように決定した。繰返し単位の数は、下記の式(これは式(IXb)においてR5が単結合であるものに相当する):
【化23】
に相当するポリスルホンプレポリマーO−BP2の構造を考慮に入れて、関係式(I)
M0=n×Mur+T
{ここで、Murは繰返し単位のモル質量(400.454g/モル)を表わし、
Tは鎖末端のモル質量(418.513g/モル)を表わし、そして
M0はプレポリマーの所定のモル質量を表わす}
から決定することができる。所望のプレポリマーのモル数を表わすためにN0(N0はN0=m0/M0の関係によって規定され、m0はプレポリマーの質量である)を用いた場合、各試薬のモル数nrは、下記の表Vにまとめた関係から決定することができる。
【0120】
【表5】
【0121】
プレポリマーO−BP2の特徴付け
【0122】
プレポリマーO−BP2を1H、13C及びDEPT−NMRによる構造特徴付けに付した。
【0123】
図5は、プレポリマーO−BP2の1H−NMRスペクトルを表わす。
【0124】
図6は、上がプレポリマーO−BP2の13C−NMRスペクトルを表わし、下がDEPTスペクトルを表わす。
【0125】
これらのスペクトルは、所望のものに一致する明確な構造を示す。カーボンスペクトルは、鎖の大部分がCPEDPS単位を末端とすることを立証する。
【0126】
図7は、上が中間体のプレポリマーのカーボンスペクトルを表わし、下が所望のO−BP2プレポリマーのカーボンスペクトルを表わす。2つのスペクトルの重なり部分は、フェノール鎖末端を示す。上の曲線の丸で囲んだピークは、フェノールに相当する。図中、phenolはフェノールを意味する。
【0127】
1H−NMRスペクトルに基づいて測定したプレポリマーO−BP2のモル質量は、3100g/モルだった。この値は、次の関係式を用いて決定される。
【数1】
ここで、Atはフェニルアセチレン末端の芳香族プロトンを特徴付けるピークの面積に相当し、Aurは繰返し単位のプロトンを特徴付けるピークの面積であり、Nurは面積Aurのピークによって特徴付けられる繰返し単位当たりのプロトンの数であり、そしてNtはピーク面積Atによって特徴付けられるプロトンの数である。マクロ分子鎖中の繰返し単位(n)の平均数は、上に与えた関係式(I)を用いて質量を推定することによって決定することができる。
【0128】
N,N−ジメチルホルムアミド中でのサイズ排除クロマトグラフィーによって測定したプレポリマーO−BP2の数平均モル質量は8400g/モルであり、多分散指数は1.2だった。
【0129】
例4
【0130】
モル質量5000g/モルのプレポリマーO−BP/BHPB5の調製:
【0131】
プレポリマーO−BP/BHPB5の合成は、例3のものと同様の方法に従って、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ジフェノールBHPB及び一官能性モノマーのCPEDPSの重縮合によって実施した。このプレポリマーの繰返し単位は、4,4’−ジヒドロキシビフェニル50%及びBHPB50%から構成される。反応式は次の通りである。
【化24】
【0132】
機械式撹拌機及び冷却管を上に乗せたディーンスターク装置を備え付けて窒素流で洗い流した250ミリリットルの三つ口丸底フラスコに、4,4’−ジヒドロキシビフェニル3.7541g(20.16ミリモル)、1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン5.9334g(20.16ミリモル)、炭酸カリウム6.687g(48.3ミリモル)及びN,N−ジメチルアセトアミド4ミリリットルのを装填した(ジフェノールモノマー濃度30質量%に相当)。この混合物にトルエン10ミリリットルを添加し、次いで150℃にし、共沸蒸留によって水を除去するためにこの温度を2時間保った。
【0133】
次いで4,4’−ジクロロジフェニルスルホン10.4301g(36.32ミリモル)及びN,N−ジメチルアセトアミド33ミリリットルを添加して、試薬の濃度を20重量%に下げた。この溶液を次いで170℃において20時間撹拌し、その後にディーンスターク装置をS字管に交換した。
【0134】
最後に4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホン4.2341g(12ミリモル)及びN,N−ジメチルアセトアミド17ミリリットルを添加して20質量%の濃度を保ち、この溶液を200℃において10時間撹拌した。
【0135】
このプレポリマーを脱塩水中に沈殿させることによって抽出した。ガラス濾過器で濾過し、脱塩水ですすぎ、次いでアセトンですすいで過剰分の4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホンを除去した後に、プレポリマー(20g)を100℃のオーブン中で真空下で乾燥させた。
【0136】
試薬の量は、次のように決定した。繰返し単位の数は、次式:
【化25】
に相当するポリスルホンプレポリマーの構造を考慮に入れて、関係式(II)
M0=n×(Mur1+Mur2)+T
{ここで、Mur1及びMur2はそれぞれ繰返し単位BPのモル質量(400.454g/モル)及び繰返し単位BHBPのモル質量(508.551g/モル)を表わし、
Tは鎖末端のモル質量(418.513g/モル)を表わし、そして
M0はプレポリマーの所定のモル質量を表わす}
から決定することができる。所望のプレポリマーのモル数を表わすためにN0(N0はN0=m0/M0の関係によって規定され、m0はプレポリマーの質量である)を用いた場合、各試薬のモル数nrは、下記の表VIにまとめた関係から決定することができる。
【0137】
【表6】
【0138】
プレポリマーO−BP/BHPB5の特徴付け
【0139】
1H、13C及びDEPT−NMR分光法によってプレポリマーO−BP/BHPB5の特徴付けを実施した。
【0140】
図8は、プレポリマーO−BP/BHPB5の1H−NMRスペクトルを表わす。
【0141】
図9は、上がプレポリマーO−BP/BHPB5の13C−NMRスペクトルを表わし、下がDEPTスペクトルを表わす。
【0142】
これらのスペクトルは、所期の構造に一致した。これらのスペクトルの分析から、マクロ分子鎖の大部分がフェニルアセチレン単位を末端とし、各ジフェノールに対応する積分値の比が最初に決められた50/50の割合に相当すると考えることができる。
【0143】
プレポリマーO−BP/BHPB5のモル質量は、1H−NMRスペクトルから測定して3600g/モルだった。この値は、例3に記載した手順に従って(上記の関係式(II)を使用して)決定した。N,N−ジメチルホルムアミド中でのサイズ排除クロマトグラフィーによって測定した数平均モル質量は21700g/モルであり、多分散指数は1.4だった。
【0144】
例5
【0145】
モル質量10000g/モルのプレポリマーO−BP/BHPB10の調製:
【0146】
例4の手順に従い、用いる試薬の量を変更して、プレポリマーO−BP/BHPB10の合成を実施した。
【0147】
機械式撹拌機及び冷却管を上に乗せたディーンスターク装置を備え付けて窒素流で洗い流した250ミリリットルの三つ口丸底フラスコに、4,4’−ジヒドロキシビフェニル3.9255g(21.08ミリモル)、1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン6.2044g(21.08ミリモル)、炭酸カリウム6.9927g(50.59ミリモル)及びN,N−ジメチルアセトアミド50ミリリットルを装填した(この溶液は、30質量%のジフェノールモノマー濃度を有する)。この混合物にトルエン10ミリリットルを添加し、次いで150℃にし、共沸蒸留によって水を除去するためにこの温度を2時間保った。
【0148】
次いで4,4’−ジクロロジフェニルスルホン11.5333g(40.16ミリモル)及びN,N−ジメチルアセトアミド36ミリリットルを添加して、試薬の濃度を20重量%に下げた。この溶液を次いで170℃において20時間撹拌し、その後にディーンスターク装置をS字管に交換した。
【0149】
最後に4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホン2.1170g(6ミリモル)及びN,N−ジメチルアセトアミド7ミリリットルを添加して20質量%の濃度を保ち、この溶液を200℃において10時間撹拌した。
【0150】
このプレポリマーを脱塩水中に沈殿させることによって抽出した。ガラス濾過器で濾過し、脱塩水ですすぎ、次いでアセトンですすいで過剰分の4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホンを除去した後に、プレポリマー(20g)を100℃のオーブン中で真空下で乾燥させた。
【0151】
プレポリマーO−BP/BHPB10の特徴付け
【0152】
1H、13C及びDEPT−NMRによってプレポリマーO−BP/BHPB10の特徴付けを実施した。
【0153】
図10は、BP/BHPB10の1H−NMRスペクトルを表わす。
【0154】
図11は、上がBP/BHPB10の13C−NMRスペクトルを表わし、下がDEPTスペクトルを表わす。
【0155】
これらのスペクトルは所期の構造に一致した。これらのスペクトルの分析から、マクロ分子鎖の大部分がフェニルアセチレン単位を末端とし、各ジフェノールに対応する積分値の比が最初に決められた50/50の割合に相当すると考えることができる。
【0156】
プレポリマーO−BP/BHPB10のモル質量は、1H−NMRスペクトルから測定して6400g/モルだった。この値は、例4に記載した手順に従って決定した。N,N−ジメチルホルムアミド中でのサイズ排除クロマトグラフィーによって測定した数平均モル質量は29900g/モルであり、多分散指数は1.6だった。
【0157】
例6
【0158】
プレポリマーO−BP2の押出
【0159】
この例は、例3の手順に従って得られたプレポリマーを用いて実施した。
【0160】
DACA社よりMicrocompounderの商品名で販売されている押出機を用いて、押出を実施した。この押出機の本体は、2つの似たようなプレートが互いに対して組み立てられて成る。図12は、押出機が掃除のために開かれた時のプレート(5)の一方の部分正面図である。これは、内側に2個の逆回転する円錐型スクリュー(2、2’)を存在させたバレル(筒状部)(1)、バレル中の温度を均一に保つために2個のプレート中に挿入される加熱用カートリッジ(図示せず)、温度センサー(図示せず)、トルクセンサー(図示せず)、2ポジションの弁(3)、交換可能なダイ(4)、及びバレルの底部と頂部とを連結する流路(6)を含む。バレル(1)の容積は4.5cm3である。
【0161】
2個の逆回転する円錐型スクリュー(2、2’)は、100mmの長さ及び10mmの最大直径を有する。それらの回転速度は、0回転/分から360回転/分まで変動することができる。本例においては、その速度は100回転/分であり、約1500s-1の平均剪断速度を表わし、言い換えれば工業押出条件の代表的な剪断速度である。
【0162】
2ポジションの弁(3)は、「再循環」ポジション(これは、スクリュー末端の材料が再び上昇してバレルに再び入ることを可能にする)又は「押出」ポジション(ダイを通して材料を排出する)のいずれかにあることができる。
【0163】
本例において用いられる交換可能なダイ(4)は、2mmの直径を有する線対称ダイである。Microcompounder押出機において、押出は次の条件下で行われる。押出機のプレートは、所定温度Teに調節する。押出用混合物を供給ホッパーに入れ、ピストンによってバレル中に押し入れる。バレル内で、2個のスクリューが材料を混合し且つ溶融させ、下方に押しやる。材料がバレルの下部に達した時に、外側流路(6)を通って再上昇し、次いでバレルに再び入り、そこで混合される。この方法は、期間Deの間、何回も繰り返すことができる。プレポリマーの温度は、温度センサーによってリアルタイムで測定される。トルクセンサー(図示せず)が、0〜5N・mの範囲で、スクリューの回転の際に材料によって発生する抵抗Reを測定する。混合プロセス終了時に、弁を押出ポジションに戻し、ダイ(4)から材料を排出させる。
【0164】
図13は、前記プレポリマーのDSCサーモグラムである。これは、DSCによって測定したプレポリマーO−BP2のガラス転移温度が162℃であることを示す。
【0165】
化合物が押出可能であるためには、その化合物が押出温度において流動するのに充分低い粘度を有していなければならない。プレポリマーO−BP2の粘度は、Rheometrics社からのARESレオメーターを用いた動力学的レオメトリーにより、200〜260℃の範囲の温度にわたり、そして10-1〜102s-1の範囲の剪断速度について、測定した。
【0166】
図14は、応力振幅の関数としての粘度のプロットを表わす。200℃〜260℃の各温度について、粘度が振幅によってほとんど変化を示さない。この挙動ゾーンは、「ニュートン平坦域」と称される。これらのプロットは、研究した剪断速度についてはプレポリマーO−BP2の粘度が200℃において4000Pa・sであり、そして220℃超の温度については粘度は非常に低く、102s-1において300Pa・s未満であることを示す。従って、この混合物は押出することができる。
【0167】
プロセスの実現可能性を検査するために、上記のMicrocompounderを用いて化合物に対する押出試験を実施した。押出は、3.3gの混合物を用い、200℃のプレート温度Te及び5分の期間Deで、実施した.
【0168】
温度センサーによってリアルタイムで測定したプレポリマーO−BP2の温度は200℃のままであり、これはその混合物が加熱されなかったことを意味する。測定されたトルクは3.9N・mであり、これはその材料が粘性であることを意味する。混合プロセス終了時に、弁を押出ポジションに戻して、ダイから材料を排出させた。得られた押出物は滑らかであり、欠陥がなかった。
【0169】
例7
【0170】
モル質量5000g/モルのプレポリマーO−BP/BHPB5の押出:
【0171】
この例は、例4の手順に従って得られたプレポリマーO−BP/BHPB5を用いて実施した。
【0172】
図15は、該プレポリマーのDSCサーモグラムである。これは、DSCによって測定したプレポリマーO−BP/BHPB5のガラス転移温度が166℃であることを示す。
【0173】
プレポリマーO−BP/BHPB5の粘度を、Rheometrics社からのARESレオメーターを用いた動力学的レオメトリーにより、200〜240℃の範囲の温度にわたり、そして10-1〜102s-1の範囲の剪断速度について、測定した。図16は、横座標上の応力振幅の関数としての粘度のプロットを表わす。これらのプロットは、研究した剪断速度についてはプレポリマーO−BP/BHPB5の粘度が200℃において20000Pa・sであり、そして220℃超の温度については粘度が102s-1において1000Pa・s未満であることを示す。
【0174】
これらの粘度測定に基づいて、この混合物の押出における挙動を、時間−温度重ね合わせの原理を用いて予測した。時間−温度同等の原理に基づくこの重ね合わせは、様々な温度において得られたフロープロットを経験的に決定されたファクターによって解釈して成る。参照温度と称される設定温度について、広範な振幅にわたってフローにおける材料の挙動が得られる。
【0175】
図17は、240℃の参照温度におけるプレポリマーの挙動を示す。左側の縦座標のη*は粘度を表わし、横座標のωはサンプルの応力振幅を表わす。細い実線は、弾性モジュラス(弾性率)又は貯蔵モジュラスG’及び粘性モジュラス又は損失モジュラスG”を表わし、右側の縦座標上で読み取ることができる。太い実線は粘度η*を表わす。240℃において、この混合物は剪断減粘性であり、その粘度は押出プロセスにおいて代表的な104s-1の速度について100Pa・s未満であり、これは非常に低い。従って、この混合物は押出することができる。
【0176】
プロセスの実現可能性を検査するために、上記のMicrocompounderを用いて化合物に対する押出試験を実施した。押出は、2.0gの混合物を用い、200℃のプレート温度Te及び5分の期間Deで、実施した。
【0177】
温度センサーによってリアルタイムで測定したプレポリマーO−BP/BHPB5の温度は200℃のままであり、これはその混合物が加熱されなかったことを意味する。測定されたトルクは4.1N・mであり、これはその材料が粘性であることを意味する。混合プロセス終了時に、弁を押出ポジションに戻して、ダイから材料を排出させた。得られた押出物は滑らかであり、欠陥がなかった。
【0178】
例8
【0179】
モル質量10000g/モルのプレポリマーO−BP/BHPB10の押出:
【0180】
この例は、例5の手順に従って得られたプレポリマーO−BP/BHPB10を用いて実施した。
【0181】
図18は、プレポリマーO−BP/BHPB10のDSCサーモグラムである。これは、DSCによって測定したプレポリマーO−BP/BHPB10のガラス転移温度が175℃であることを示す。
【0182】
プレポリマーO−BP/BHPB10の粘度を、Rheometrics社からのARESレオメーターを用いた動力学的レオメトリーにより、200〜300℃の範囲の温度にわたり、そして10-1〜102s-1の範囲の剪断速度について、測定した。図19は、横座標上の応力振幅の関数としての粘度のプロットを表わす。これらのプロットは、研究した剪断速度についてはプレポリマーO−BP/BHPB10の粘度が220℃超の温度について10000Pa・s未満であることを示す。
【0183】
これらの粘度測定に基づいて、この混合物の押出における挙動を、例7におけるのと同様に時間−温度重ね合わせの原理を用いて予測した。図20は、300℃の参照温度における混合物の挙動を示す。左側の縦座標のη*は粘度を表わし、横座標のωはサンプルの応力振幅を表わす。細い実線は、弾性モジュラス(弾性率)又は貯蔵モジュラスG’及び粘性モジュラス又は損失モジュラスG”を表わし、右側の縦座標上で読み取ることができる。太い実線は粘度η*を表わす。300℃において、この混合物は剪断減粘性であり、その粘度は押出プロセスにおいて代表的な104s-1の速度について20Pa・s付近であり、これは非常に低い。従って、この混合物は押出することができる。
【0184】
プロセスの実現可能性を検査するために、上記のMicrocompounderを用いて化合物に対する押出試験を実施した。押出は、2.8gの混合物を用い、240℃のプレート温度Te及び5分の期間Deで、実施した。
【0185】
温度センサーによってリアルタイムで測定したプレポリマーO−BP/BHPB10の温度は240℃のままであり、これはその混合物が加熱されなかったことを意味する。測定されたトルクは3.3N・mであり、これはその材料が流動することを意味する。混合プロセス終了時に、弁を押出ポジションに戻して、ダイから材料を排出させた。得られた押出物は滑らかであり、欠陥がなかった。
【0186】
例9
【0187】
熱架橋
【0188】
例6〜8に従って押出によって得られた各フィルムのサンプルを320℃にし、この温度に3時間保って、エチニル基を介した架橋を達成した。
【0189】
例10
【0190】
BP/BHPB5から及びO−BP/BHPB10から得られた架橋フィルムのジクロロエタン中でのスルホン化
【0191】
第1工程において、真空(10ミリバール)下で110℃において前もって乾燥させた厚さ100μmのフィルム100cm2をジクロロエタン(DCE)200ミリリットル中に浸漬し、この全体の混合物を60℃にする。並行して、乾燥DCE50ミリリットル中にトリメチルシランクロリド47.2g(0.434モル)及びClSO3H42.2g(0.36モル)(両成分とも無水である)を加えて、生成するHClを捕捉しながらアルゴン下で30分間電磁式に撹拌することによって、クロロスルホン酸トリメチルシリルの無水溶液を調製した。
【0192】
第2工程において、フィルムを含有させたDCE中にこのクロロスルホネートの溶液を導入し、この反応混合物を60℃に2時間保った。
【0193】
次いでフィルムをこの溶液から取り出し、ジクロロエタンで3回洗浄した。次いで、残ったジクロロエタンを真空下で50℃において2時間蒸発させた。最後に、スルホン化フィルムを蒸留水中に浸す。
【0194】
インピーダンス測定により、電気化学電池にその平衡電圧付近で低振幅の正弦波電圧を印加することによって、電気化学的結果を得た。20℃、湿度90%において測定した酸性スルホン化ポリスルホンフィルムのプロトン伝導性は、1mS/cmだった。
【0195】
例11
【0196】
BP/BHPB5から又はO−BP/BHPB10から得られた架橋フィルムのニトロエタン中でのスルホン化
【0197】
真空(10ミリバール)下で110℃において前もって乾燥させた厚さ100μmのフィルム100cm2をニトロエタン(NE)200ミリリットル中に浸漬し、この全体の混合物を20分間40℃にする。
【0198】
次いでクロロスルホン酸16ミリリットルを添加し、この反応混合物を穏やかに撹拌しながら40℃に保った。
【0199】
30分間撹拌した後に、フィルムを溶液から取り出し、ニトロエタンで3回洗浄し、次いで残った溶剤を真空下で50℃において2時間蒸発させた。
【0200】
最後に、スルホン化フィルムを蒸留水中に浸す。
【0201】
インピーダンス測定により、電気化学電池にその平衡電圧付近で低振幅の正弦波電圧を印加することによって、電気化学的結果を得た。20℃、湿度90%において測定した酸性スルホン化ポリスルホンフィルムのプロトン伝導性は、1.2mS/cmだった。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンの1H−NMRスペクトルである。
【図2】上が1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンの13C−NMRスペクトルであり、下がDEPTスペクトルである。
【図3】4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホンの1H−NMRスペクトルである。
【図4】上が4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホンの13C−NMRスペクトルであり、下がDEPTスペクトルである
【図5】プレポリマーO−BP2の1H−NMRスペクトルである。
【図6】上がプレポリマーO−BP2の13C−NMRスペクトルであり、下がDEPTスペクトルである。
【図7】上が中間体のプレポリマーのカーボンスペクトルであり、下が所望のO−BP2プレポリマーのカーボンスペクトルである。
【図8】プレポリマーO−BP/BHPB5の1H−NMRスペクトルである。
【図9】上がプレポリマーO−BP/BHPB5の13C−NMRスペクトルであり、下がDEPTスペクトルである。
【図10】BP/BHPB10の1H−NMRスペクトルである。
【図11】上がBP/BHPB10の13C−NMRスペクトルであり、下がDEPTスペクトルである。
【図12】押出機の一方のプレート(5)の部分正面図である。
【図13】プレポリマーO−BP2のDSCサーモグラムである。
【図14】プレポリマーO−BP2について、粘度を応力振幅の関数としてプロットしたグラフである。
【図15】プレポリマーO−BP/BHPB5のDSCサーモグラムである。
【図16】プレポリマーO−BP/BHPB5について、粘度を横座標上の応力振幅の関数としてプロットしたグラフである。
【図17】240℃の参照温度におけるプレポリマーO−BP/BHPB5の挙動を示すグラフである。
【図18】プレポリマーO−BP/BHPB10のDSCサーモグラムである。
【図19】プレポリマーO−BP/BHPB10について、粘度を横座標上の応力振幅の関数としてプロットしたグラフである。
【図20】300℃の参照温度におけるプレポリマーO−BP/BHPB10の挙動を示すグラフである。
【符号の説明】
【0203】
1・・・バレル
2、2’・・・円錐型スクリュー
3・・・弁
4・・・ダイ
5・・・プレート
6・・・流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン性基を有する架橋したポリマー(イオン性基含有架橋ポリマーと言う)から成るフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸性形態のイオン性基を有する芳香族ポリマーのフィルムは燃料電池の膜として用いることができることが知られている。
【0003】
また、揮発性溶剤中のポリマーの溶液からの流延及び蒸発によって又は押出によってポリマーフィルムを製造することも知られている。押出法には、一般的に毒性があってしかも可燃性の有機溶剤を用いないという利点がある。さらに、押出は連続プロセスであり、高い生産性を有し、膜を形成するフィルムの製造コストの有意の低減を可能にする。実際、膜の生産コストは膜燃料電池の商品化における主要な障害の1つである。最後に、押出法は、流延及び蒸発法とは対照的に、表面全体で均一な厚さのフィルムをもたらす。
【0004】
ポリマーは、高い熱安定性を有して押出に必要な温度に耐えられれば、押出することができる。また、これらの温度においてその粘度が成形プロセスに適合することも必要である。実際、骨格構造中に芳香環を含むポリマーは、高い粘度を有する。さらに、芳香環を有するこれらのポリマーの構造内にイオン性基が存在すると、ガラス転移温度の上昇を引き起こし、この上昇の影響でさらにポリマーの粘度が増大し、より高い押出温度が必要となり、これが芳香族骨格構造の完全性に対して悪影響を及ぼすことがある。
【0005】
ポリマーのガラス温度は、そのモル質量を制限することによって下げることができる。この方法で、鎖の移動性が改善され、押出温度におけるポリマーの粘度の低下がもたらされる。従って、熱分解を引き起こすことなく押出による成形プロセスを実施することができる。しかしながら、ポリマーのモル質量が低いと、得られるフィルムの機械的強度が低くなる。この問題を解決するための1つの解決策は、押出段階の後に枝分かれ又は架橋の結び目によってポリマーのモル質量を増加させ又はフィルムを架橋させることから成る。しかしながら、この質量の増加又は架橋は押出段階の間に起こさなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、押出によってイオン性基含有ポリマーフィルムを得るための方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、1種以上のプレポリマーからのフィルムの製造方法及び該方法によって得られるフィルムに関する。
【0008】
本発明の方法は、少なくとも1種のプレポリマーを含む出発(初期)ポリマー材料を押出することから成る工程、押出後のこのポリマー材料を重合させることから成る工程、及び押出された材料に対してイオン性基をグラフトさせるための化学反応を行うことから成る工程を含み、
・前記プレポリマーが1個以上の芳香族基GA及び1個以上の官能基GFをそれぞれが含む繰返し単位を含み;
・前記プレポリマーが熱で(押出温度より高い温度において)、又は光化学的に、架橋し得る基GPを1個以上有し;
・前記プレポリマーがイオン性基をグラフトさせることを可能にする反応性基GRを1個以上有し;
・2個以上の芳香族基GA及び/又は2個以上の官能基GFを含む繰返し単位において、これらの芳香族基が同一であっても異なっていてもよく、官能基GFが同一であっても異なっていてもよい:
ことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下において、「単位(GA,GF)」という用語は、1個以上の基GA及び1個以上の基GFを含む繰返し単位を意味するために用いられる。ここで、基GA及びGFは随意に反応性基GR及び基GPを有する。
【0010】
1つの実施形態において、出発ポリマー材料は単一のプレポリマーを含有する。
【0011】
別の実施形態において、出発ポリマー材料は、繰返し単位(GA,GF)を含む第2のプレポリマー及び/又はポリマー少なくとも1種を含有する。この第2のプレポリマーの単位(GA,GF)の内の少なくともいくつかは、基GPを有する。前記ポリマーの単位(GA,GF)の内のいくつかは、随意に基GPを有する。
【0012】
本明細書において、プレポリマーはモル質量が15000g/モル未満、好ましくは5000〜10000g/モルの範囲となるような数の繰返し単位(GA,GF)を含み、ポリマーはモル質量が15000g/モル超、好ましくは25000g/モル超500000g/モル未満となるような数の繰返し単位(GA,GF)を含む。
【0013】
出発ポリマー材料が第2のプレポリマー及び/又はポリマーを含有する場合、この第2のプレポリマー及び/又はポリマーの繰返し単位(GA,GF)は、第1のプレポリマーの繰返し単位(GA,GF)と異なるものであってもよい。
【0014】
プレポリマーの骨格構造は、繰返し単位(GA,GF)が単一の鎖を形成して成ることができる。また、繰返し単位(GA,GF)が主鎖及び側鎖を形成して成ることもできる。繰返し単位の基GAは、主鎖及び場合により側鎖の構成要素である。基GFは、鎖の構成要素であることもでき、基GAの側部置換基であることもできる。
【0015】
プレポリマーの繰返し単位は、同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0016】
ポリマーの骨格構造は、繰返し単位が単一の鎖を形成して成るのが好ましい。ポリマーの例には、特にSolvay社よりUdel、Radel A及びRadel R の名称で、BASF社よりUltrason E及びUltrason Sの名称で並びに住友化学株式会社よりSumikaexcelの名称で販売されているポリスルホン、並びにVictrex社よりPeek HT及びPeek Optimaの名称で販売されているポリエーテルエーテルケトンがある。
【0017】
繰返し単位の芳香族基GAは、
・非置換フェニレン基−C6H4−、少なくとも1個の置換基を有するフェニレン基、置換基を持たない2個の縮合フェニレン核から成る基若しくは少なくとも1個の置換基を有する2個の縮合フェニレン核から成る基;又は
・N、O及びSから選択される1個以上のヘテロ原子を含むヘテロ芳香核から成る基(このヘテロ芳香族基は随意に1個以上の置換基を有する):
から選択することができ、
但し、フェニレン基又はヘテロ芳香核の各置換基は、互いに独立して、アルキル基(好ましくは1〜5個の炭素原子を有するもの)、ハロアルキル基(好ましくは1〜5個の炭素原子を有するもの)、アルケニル基(好ましくは2〜8個の炭素原子を有するもの)、又は1個以上の非縮合若しくは縮合芳香核を含み且つ随意に置換基を有する芳香族基を表わす。
【0018】
繰返し単位の官能基GFは、エーテル基、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基(例えば−C(CH3)2−])、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレン基(例えば−C(CF3)2−)、カルボニル、エステル、スルフィド、スルホン、オキサゾリル基、イミダゾリル基、アミド基又はイミド基であることができる。この官能基は、ポリマーの形成に寄与し、その特性を調節することを可能にする。例えば、エーテル、スルフィド、アルキル又はペルフルオロアルキルタイプの基はポリマーに柔軟性(可撓性)を付与し、一方スルホン又はカルボニルタイプの基はポリマーに酸化剤に対する耐性を付与する。
【0019】
繰返し単位の例には、次の単位が包含される:
・下記式(I):
【化1】
{ここで、R3及びR4が互いに独立的にアルキル基(好ましくは1〜5個の炭素原子を有するもの)、アルケニル基(好ましくは2〜8個の炭素原子を有するもの)又は1個以上の縮合若しくは非縮合芳香核を含み且つ随意に置換基を有するアリール基を表わす}
に相当するオキシフェニレン基、
・下記式のアリールエーテルケトン基:
【化2】
【化3】
・下記式のベンゾオキサゾール基:
【化4】
・下記式のベンゾイミダゾール基:
【化5】
・下記式のポリアミド酸(押出後にポリイミドへのその重合が達成される):
【化6】
・下記式:
【化7】
においてXが好ましくはH、ハロゲン原子、OH基又はニトロ基を表わすものに相当するp−フェニレン基、
・下記式のフェニレンスルフィド基:
【化8】
・下記式:
【化9】
(ここで、R5は単結合、S及びOから選択されるヘテロ原子、−C(CH3)2−若しくは−C(CF3)2−基、随意に置換基を有する芳香核、又は2個以上の縮合若しくは非縮合芳香核(随意に置換基を有するもの)。
【0020】
上記の式(I)〜(IX)において、nはプレポリマー中の繰返し単位の数を表わし、そしてnはプレポリマーのモル質量が15000g/モル未満となるようなものである。
【0021】
上記の式(II)〜(IX)において、フェニレン基の少なくとも1つは、R3及びR4について与えた定義に相当する少なくとも1個の置換基を有することができる。
【0022】
押出後にプレポリマーの架橋又は重合を可能にする基GPは、主鎖の末端及び/又は場合により側鎖上に位置することができる。
【0023】
基GPが熱重合可能な基(熱重合性基と言う)である場合、これは、式−C≡C−R2{ここで、R2は芳香族基、アルキル基(好ましくは1〜5個の炭素原子を有するもの)又はペルフルオロアルキル基(好ましくは1〜5個の炭素原子を有するもの)を表わす}に相当するアルキニル基から選択されるのが好ましい。好ましくは、R2は芳香族基、より特定的には基GAについて上で与えた定義に相当する基を表わす。
【0024】
アルキニルタイプの基GPが繰返し単位の芳香族基GAに結合している場合、これは該芳香族基GAに直接結合することができる。この場合、前記プレポリマーの当該末端は、構造−GA−C≡C−R2を有する。
【0025】
基GPが繰返し単位の官能基GFに結合している場合、これは芳香族基、アルキレン基又はペルフルオロアルキレン基を表わす基−R1−を介して結合する。R1は好ましくは芳香族基、より特定的には基GAと同様の芳香族基を表わす。この場合、前記プレポリマーの当該末端又は当該置換基は、構造−GF−R1−C≡C−R2を有する。
【0026】
下記の表Iに、末端繰返し単位の官能基GFに結合する熱重合性基GPを有するプレポリマー末端の例をいくつか与える。
【表1】
【0027】
下記の式IXbは、芳香族基GAに直接結合した熱重合性基を一方の末端に有し且つ基GF上にビアリールスルホニルタイプの基R1を介して結合した熱重合性基をもう一方の末端に有するポリスルホンプレポリマーの例を与える。
【化10】
【0028】
基GPが光化学的に重合又は架橋可能な基である場合、これはビニルエーテル基CH2=CH−O−及びオキシラン、オキセタン若しくはアジリジンから誘導されるヘテロ環式基から選択することができる。
【0029】
繰返し単位(GA,GF)が有する反応性基GR(これは、押出及び架橋の後に得られるポリマーフィルム上にイオン性基をグラフトさせることを可能にする)は、主鎖及び/又は任意の側鎖に結合していることができる。この反応性基GRは、望まれる最終イオン性基及び該イオン性基を結合させるために利用可能な試薬の関数として選択される。この反応性基GRは、基GA又は基GAの置換基から成ることができる。
【0030】
最終イオン性基は、ポリマーに結合したアニオン部分と、プロトン、一価金属、二価金属又は三価金属のイオン並びにアンモニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、テトラゾリウム、ピリジニウム及びグアニジニウムイオンから選択される有機イオンから選択されるカチオンM+とを含む。アンモニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、テトラゾリウム、ピリジニウム又はグアニジニウムカチオンの置換基は同一であっても異なっていてもよく、これらは互いに独立して、H、1〜6個の炭素原子(好ましくは1〜4個の炭素原子)を有するアルキル基及びアリール基から選択されるのが好ましく、また、2個の置換基が一緒になってアルケニル基を形成することもできる。
【0031】
最終イオン性基/反応性基GRの好適な組合せの例のいくつかを、下記の表IIに与える。
【表2】
【0032】
式SO2NR6-(1/p)Mp+において、R6は水素、アルキル基(好ましくは1〜6個の炭素原子を有するもの)、一部フッ素化されたアルキル基(好ましくは1〜6個の炭素原子を有するもの)、アルケニル基(好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、一部フッ素化されたアルケニル基(好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、オキシアルキレン基CH3−(O−(CH2)m)n(ここで、好ましくは2≦m<5且つ1≦n≦10である)、又は1個以上の縮合若しくは非縮合芳香核を含み且つ随意に置換基を有するアリール基である。
【0033】
式−SO2N-(1/p)Mp+−SO2−R7において、R7はアルキル基(好ましくは1〜6個の炭素原子を有するもの)、ペルフッ素化若しくは一部フッ素化されたアルキル基(好ましくは1〜6個の炭素原子を有するもの)、アルケニル基(好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、ペルフッ素化若しくは一部フッ素化されたアルケニル基(好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、オキシアルキレン基CH3−(O−(CH2)m)n(ここで、好ましくは2≦m<5且つ1≦n≦10である)、又は1個以上の縮合若しくは非縮合芳香核を含み且つ随意に置換基を有するアリール基である。
【0034】
GRがフェニレン基である場合、これはスルホネート、チオカルボキシレート又はジチオカルボキシレートイオン性基のグラフトを可能にする:
・スルホネートイオン性基のグラフトは、ポリマーフィルムをクロロスルホン酸トリメチルシリル又はクロロスルホン酸と反応させ、次いでMp+(OH-)pを添加することによって行われる;
・チオカルボキシレート基のグラフトは、ポリマーフィルムをブチルリチウムと反応させ、次いでCS2、SOCl2及びMp+(OH-)pを順次添加することによって行われる;
・ジチオカルボキシレート基のグラフトは、ポリマーフィルムをブチルリチウムと反応させ、次いでCS2、HCl及びMp+(OH-)pを順次添加することによって行われる。
【0035】
基GRが芳香族基GAが有するOH基である場合:
・前記フィルムとMp+(OH-)pとを反応させることによってフェノキシドが得られ;
・前記フィルムとClSO3Hとを反応させ、次いでMp+(OH-)pを添加することによって、OH基がサルフェート基に転化する。
【0036】
メチルを表わす基GRは、ポリマーフィルムとKMnO4とを反応させ、次いでMp+(OH-)pを添加することによって、カルボキシレートイオン性基を結合させることを可能にする。
【0037】
−CH2−X(ここで、Xはハロゲンである)を表わす基GRは、P(OCH3)3と反応させ、次いでMp+(OH-)pを添加することによって、ホスホネートイオン性基をグラフトさせることができる。
【0038】
例えば上記の方法によってポリマーフィルムに結合させたスルホネート基−SO3-(1/p)Mp+は、スルホニルイミド又はスルホニルアミド基を結合させるために基GRとして用いることができる:
・スルホニルアミド基のグラフトは、スルホネート基を有するポリマーフィルムをSOCl2又はPCl5と反応させ、次いでR6NH2及びMp+(OH-)pと順次反応させることによって行われる;
・スルホニルイミド基のグラフトは、スルホネート基を有するポリマーフィルムをSOCl2又はPCl5と反応させ、次いでR7SO2NH-(1/p)Mp+及びMp+(OH-)pと順次反応させることによって行われる。
【0039】
押出の温度は、フィルム製造用に用いられるプレポリマー(群)の基GPの関数として選択される。基GPが熱重合性である場合には、押出温度を重合温度より低くする。基GPがアルキンタイプのものであり且つこのアルキン基が少なくとも1個の芳香族基に直接結合したプレポリマーは、基GPが芳香族基に直接結合していないアルキンであるプレポリマーより高い重合温度を有する。芳香族基に結合したアルキン基の重合温度は、約330℃に達し得る。
【0040】
押出は、一軸スクリュー又は二軸スクリュー押出装置を用いて実施することができる。装置の例には、DSMXPLORE社よりMicrocompounder DACAの名称で販売されている二軸スクリュー押出機がある。プレポリマーの関数としての特定の選択は、当業者の範囲内である。
【0041】
押出の目的のために、様々な添加剤をプレポリマーに添加することができる。この添加剤は、プロトン伝導性充填剤(例えばα−ZrP若しくはホスホアンチモン酸)又は補強材{ガラス繊維、炭素繊維、Kevlar(登録商標)}であることができる。
【0042】
重合の様相は、基GPの性状に依存する。基GPが熱重合性基である場合には、押出後に得られるポリマーフィルムを押出機からの出口においてオーブン中に入れることから成る熱処理を行う。特にエチニル基の場合、熱処理はフィルムを2〜3時間の間250〜330℃の範囲の温度にすることから成るのが有利である。基GPが光架橋性の基である場合には、第1の実施形態に従い、光開始剤を押出の前にプレポリマー中に導入し、次いで押出によって得られたフィルムを5〜150mW/cm2の強度で200〜400nmの範囲のUV照射に付すことによって、架橋を行うことができる。光開始剤は、トリアリールスルホニウム塩(例えば(C6H5)3S+,PF6-)であることができる。さらに、第2の実施形態に従えば、押出後に得られたプレポリマーフィルムを電子ビームに付すことによって架橋を行うことができる。
【0043】
式(IXb)においてR5が単結合又はアリールエーテル基を表わすポリスルホンプレポリマーは、2工程プロセスによって得ることができる。
【0044】
・第1工程において、式(IXc)に相当するテレケリック(両端官能化)ポリスルホンを調製する。
【化11】
このプレポリマー(IXc) の合成は、極性非プロトン性溶剤及び弱塩基の存在下で、過剰量で用いた活性化されたハロゲン化芳香族化合物(例えば次式:
【化12】
に相当する4,4’−ジクロロジフェニルスルホン)と2個のジフェノールモノマー{例えば4,4’−ジヒドロキシビフェニル及び1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン(それぞれ次式:
【化13】
に相当する)}との重縮合によって実施される。過剰量のジフェノールモノマーを使用することによって、鎖の各末端にフェノール官能基を有するプレポリマーを得ることができ、これは弱塩基(例えばK2CO3)のカチオン(例えばK+)のフェノキシドに転化される。プレポリマーの長さは用いる各種モノマー間の化学量論比に依存する。
【0045】
・第2工程において、プレポリマーIXcと次式(X):
【化14】
(ここで、R7はハロゲンである)
に相当する一官能性モノマーとを反応させることによって、プレポリマーのフェノキシド末端を変性する。
【0046】
1つの特定的な実施形態において、モノマー4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン及び(X)からプレポリマー(IXc)を製造する方法は、次の工程を含む:
・N,N−ジメチルアセトアミド中の4,4’−ジヒドロキシビフェニル及び1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンの溶液を調製する。この2つの試薬は、約30質量%を占めるのが好ましい。次いで、この溶液に炭酸カルシウムを添加し、次いでこれを機械式に撹拌しながら窒素流下で150℃の温度において2時間共沸蒸留して、水を除去する;
・得られた脱水済溶液を4,4’−ジクロロジフェニルスルホンと混合し、次いでこの溶液中の試薬の濃度を適量のN,N−ジメチルアセトアミド溶剤を添加することによって20質量%にし、その後にこの溶液を170℃の温度にし、機械式に撹拌しながら窒素流下でこの温度を20時間保つ;
・次いでこの溶液に一官能性モノマー(X)を添加し、次いでこの溶液中の試薬の濃度を適量のN,N−ジメチルアセトアミド溶剤を添加することによって20質量%にし、その後この溶液を170℃の温度にし、機械式に撹拌しながら窒素流下でこの温度を10時間保つ;
・プレポリマーを脱塩水から沈殿させて濾過することによって抽出し、脱塩水ですすぎ、アセトンですすぐ;
・プレポリマー(IXc)を真空下で100℃において乾燥させる。
【0047】
4,4’−ジクロロジフェニルスルホン及び4,4’−ジヒドロキシビフェニルは商品として入手できる製品である。
【0048】
1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン(BHPB)は、次の反応式に従って合成することができる。
【化15】
この第1工程は、弱塩基(好ましくは炭酸カリウム)及び極性非プロトン性溶剤(好ましくはN,N−ジメチルアセトアミド)の存在下での4−フルオロベンズアルデヒド及びヒドロキノンを用いた二重求核置換に相当し、化合物1,4−ビス(p−ホルミルフェノキシ)ベンゼン(a)の生成をもたらす。この化合物(a)は次いで3−クロロペルオキシ安息香酸(MCPBA)の存在下で1,4−ビス(p−ホルミルオキシフェノキシ)ベンゼン(b)に酸化される。次いでこの化合物(b)を塩基性媒体(好ましくはKOH)中で加水分解して、所望のジフェノール化合物BHPBが得られる。
【0049】
4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホン(CPEDPS)(R2がClである化合物(X))の合成は、2つの連続工程で実施される。第1工程は、次の反応式に従って、塩素化溶剤(好ましくは1,2−ジクロロエタン)及びルイス酸(好ましくはAlCl3)の存在下でクロロベンゼン及び4−ブロモベンゾイルクロリドを用いたフリーデルクラフトタイプの芳香族求電子置換によって支配される。
【化16】
【0050】
第2工程は、パラジウム(II)をベースとする触媒(好ましくはビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド)及び助触媒(好ましくはヨウ化銅(I))の存在下で4−ブロモ−4’−クロロジフェニルスルホン化合物の臭素をフェニルアセチレン官能基で置換することから成る。この反応式は、次の通りである。
【化17】
【0051】
前記イオン性基は、押出後に得られたフィルムの重合後に得られたフィルム中に、次の工程を含む方法によって導入される:
・前記の重合させたフィルムを無水溶剤によって膨潤させる;
・この膨潤させたフィルムを、イオン性基の前駆体である試薬の無水溶剤中の溶液と、撹拌しながら接触させる;
・このフィルムを溶液から抽出し、純水で洗浄し、真空下で乾燥させ、次いで蒸留水中に浸して保存する。
【0052】
プレポリマーがポリスルホンである場合、得られる変性プレポリマーの繰返し単位は、次式:
【化18】
によって表わすことができる。
【0053】
1つの特定実施形態において、イオン性基−SO3M+は、末端アルキニル基GPを含み且つ反応性基GRがいくつかの基GAによって構成されるポリスルホンプレポリマーを架橋させることによって得られた乾燥フィルム中に、次の工程を含む方法によって導入される。
a.前記の乾燥フィルムをニトロエタン、ニトロメタン、クロロホルム及びジクロロエタンから選択される無水溶剤によって膨潤させる;
b.選択した無水溶剤中のクロロスルホン酸トリメチルシリル又はクロロスルホン酸の無水溶液を調製する;
c.第1工程において得られた膨潤フィルムを第2工程の際に調製された溶液と接触させる;
d.前記フィルムを第1工程において用いた純粋な溶剤で洗浄する;
e.スルホン化されたフィルムを力学的真空下で40〜80℃の範囲の温度(例えば50℃)において乾燥させる;
f.前記フィルムを蒸留水中に浸す。
【0054】
得られる変性プレポリマーの繰返し単位は、次式:
【化19】
によって表わすことができる。
【0055】
エーテルスルホン繰返し単位への−SO3H基の結合は、GAのフェニルに対するクロロスルホン酸(ACS)又はクロロスルホン酸トリメチルシリル(CST)から選択されるスルホン化用試薬による求電子置換によって実施することができる。この方法は、次の工程を含む:
(a)非プロトン性溶剤中のACS又はCSTから選択されるスルホン化用試薬の無水溶液を調製する;
(b)前記溶液とポリ(エーテルスルホン)フィルムとを20℃〜80℃の範囲の温度において5分〜24時間の間接触させる;
(c)前記フィルムを非プロトン性溶剤で洗浄する;
(d)力学的真空下で40〜80℃の範囲の温度において乾燥を実施する。
を含む。
【0056】
前記フィルムは次いで蒸留水中に保存することができる。
【0057】
1つの実施形態において、本方法は、試薬の溶液と接触させる前にフィルムを非プロトン性溶剤中で膨潤させる予備工程を含む。
【0058】
非プロトン性溶剤は、スルホン化用試薬に対して不活性でありながらこれを溶解させることができるものでなければならず、そしてイオン性基の結合の前後においてポリマーフィルムを溶解させてはならない。この非プロトン性溶剤は、より特定的にはニトロエタン(NE)、ニトロメタン(NM)、ジクロロエタン(DCE)、シクロヘキサン(CH)、石油エーテル(EP)、クロロホルム(CHL)又はそれらの混合物の1つから選択することができる。
【0059】
押出工程終了時に得られるフィルムは本質的に無水であり、スルホネート基を結合させるための反応に付すことができる。押出後に保存したフィルムは、スルホン化処理によって反応させる直前に乾燥に付さなければならない。乾燥は、10ミリバールの真空下で110℃において2時間実施することができる。
【0060】
本発明の方法によって得られたフィルムは、本発明のさらなる主題を構成する。本発明に従うフィルムは、上で規定した繰返し単位(GA,GF)及びイオン性基を含む架橋したポリマーから成る。
【0061】
1つの好ましい実施形態において、本発明の方法によって得られるフィルムは、10μm〜300μmの範囲の厚さを有する。この場合、このフィルムはイオン性基の均一な分布を示す。押出条件(スクリュー回転速度、供給速度)を調節することによって特定の厚さが得られ、その調節は当業者の範囲内である。
【0062】
押出すべき材料が熱重合性基GPを含むプレポリマー及び光化学重合性基GPを含むプレポリマーの2種のプレポリマーの混合物から成る場合、これら2つの方法による連続的な架橋は相互侵入網目構造をもたらす。出発ポリマー材料が基GPを含有しないポリマーである場合、押出後の重合は半相互侵入網目構造を形成させる。
【0063】
フィルムを構成するポリマーは、単位(I)〜(V)及び(VII)〜(X)から選択される繰返し単位又は式(VI)に相当するポリアミド酸基タイプの単位を重合させることによって得られる単位(VI')から成ることができ、これらの単位の内の少なくとも一部はイオン性基を有するものとする。単位(VI')は、下記の式によって表わすことができる。
【化20】
【0064】
フィルムを構成するポリマーのイオン性基は、スルホネート基−SO3-(1/p)Mp+、サルフェート基−OSO3-(1/p)Mp+、フェノキシド基−O-(1/p)Mp+、カルボキシレート基−CO2-(1/p)Mp+、チオカルボキシレート基−C(=S)O-(1/p)Mp+、ジチオカルボキシレート基−CS2-(1/p)Mp+、ホスホネート基−PO32-(2/p)Mp+、スルホニルアミド基−SO2N(R6)-(1/p)Mp+又はスルホニルイミド基−SO2N-(1/p)Mp+−SO2−R7であることができる。これらの基Mはプロトン、一価金属、二価金属又は三価金属のイオン並びにアンモニウム、ピラゾリウム、テトラゾリウム、ピリジニウム及びグアニジニウムイオンのような有機イオンから選択され、pはカチオンの原子価であり、そしてR6及びR7は上で与えた意味を持つ。
【0065】
本発明の方法に従って得られるフィルムは、燃料として水素(PEMFC)又はメタノール(DMFC)を用いる燃料電池用の膜として、イオン交換膜として、電気透析膜として、リチウム電池、スーパーキャパシター又はエレクトロクロミックデバイスのポリマー電解質として、有利に用いることができる。
【0066】
前記ポリマーフィルムをリチウム電池、スーパーキャパシター又はエレクトロクロミックデバイスの電解質として用いることが意図される場合には、カチオンはLiである。
【0067】
リチウム電池は、有機溶剤によりゲル化された又はゲル化されていないポリマー電解質によって隔てられた負極及び正極を含む。前記電解質は、本発明の方法によって得られたフィルムであることができる。
【0068】
エレクトロクロミックシステムは、透明電極と、酸化度と共に色が変化する活性材料から成る電極とを含み、これら2つの電極は、本発明に従う方法によって得られたフィルムから成るイオン伝導性電解質によって隔てられる。前記透明電極は、例えば酸化インジウムスズ(ITO)又はフッ素ドープ酸化スズ(FTO)から成ることができる。もう一方の電極は、例えば酸化タングステンWO3であることができる活性材料中にLi+イオンが入れられた時に色を変える。
【0069】
スーパーキャパシターは、有機溶剤によりゲル化された又はゲル化されていない伝導性ポリマー電解質によって隔てられた2個の炭素電極を含む。前記電解質は、本発明に従う方法によって得られたフィルムから成ることができる。
【0070】
本発明の方法によって得られたフィルムをイオン交換膜として又は電気透析膜として用いる場合、イオン性基のカチオンはプロトン並びにアンモニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、テトラゾリウム、ピリジニウム及びグアニジニウムイオンから選択される。
【0071】
前記ポリマーフィルムを燃料電池の膜として用いることが意図される場合、カチオンはH又はアンモニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、テトラゾリウム、ピリジニウム及びグアニジニウムイオンから選択することができる。プロトンが特に好ましい。
【実施例】
【0072】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0073】
実施例においては、各種サンプルを以下のものによって分析した:
・Bruker AC250装置を用いたプロトン、カーボン及びDEPT(distortionless enhancement by polarization transfer spectrum)核磁気共鳴(NMR)。分析すべき物質は、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解させる。
・HP 5890 series II GC装置とHP 5965B IR検出器との組合せ及びHP 5971A質量分析計を用いたガスクロマトグラフィーと質量分析との組合せ(GCMS)。適用した温度上昇は150〜300℃の範囲において10℃/分である。
・Waters HPLC装置(W510ポンプ、W410示差屈折率検出器、一連の2個のPIGEL混合Dカラム、70℃)、ポリスチレン標準物質を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)。
・Mettler Toledo DSC 822e装置を用いた示差走査熱量分析(DSC)。適用した温度上昇は、アルゴン下で5℃/分である(80ミリリットル/分)。
【0074】
例1及び2は、二官能性ビスフェノールモノマーの1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン及び一官能性モノマーの4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホンの調製を説明する。
【0075】
例3〜5は、押出及び架橋可能なポリスルホンプレポリマーの調製方法を説明する。
【0076】
例6〜8は、例3〜5に従って得られたプレポリマーの押出に関する。
【0077】
例9は、押出されたプレポリマーフィルムの熱架橋に関する。
【0078】
例10及び11は、前もって押出して架橋させたフィルムからのスルホン化イオン性基含有フィルムの調製に関する。
【0079】
例1
【0080】
1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンの調製
【0081】
S字管及び電磁式撹拌機を備え付けて窒素流で洗い流した500ミリリットルの三つ口丸底フラスコに、ヒドロキノン15g(136.2ミリモル)、4−フルオロベンズアルデヒド37.2g(299.7ミリモル)、炭酸カリウム22.59g(163.4ミリモル)及びN,N−ジメチルアセトアミド120ミリリットルを装填した(溶液中の有機試薬の濃度30質量%に相当)。この溶液を150℃において6時間撹拌する。赤みを帯びた生成物の一部が沈殿し始めた。
【0082】
反応終了時(NMRによって決定)に、反応混合物を脱塩水500ミリリットル中に注いで沈殿させることによって生成物を抽出する。得られた沈殿をガラス濾過器上で濾過し、次いで多量の脱塩水で洗浄し、メタノールで洗浄した。次いで生成物を80℃のオーブン中で真空中で5時間乾燥させた。99%の粗収率が得られた。
【0083】
第2工程は、次のように実施する:冷却管及び電磁式撹拌機を備え付けて窒素流で洗い流した1リットルの三つ口丸底フラスコに、70%3−クロロペルオキシ安息香酸77.43g(448.8ミリモル)及びクロロホルム200ミリリットルを装填した。混合物を均質化させた後に、滴下漏斗を用いて1,4−ビス(p−ホルミルフェノキシ)ベンゼン40g(125.7ミリモル)及びクロロホルム300ミリリットルを滴下した。
【0084】
周囲温度において3時間撹拌した後に、残留過酸を除去するために、反応混合物を重亜硫酸ナトリウム65.38g(157.1ミリモル)を含有させた脱塩水500ミリリットル中に注いた。次いで、生成した3−クロロ安息香酸を除去するために、重炭酸ナトリウム31.67g(377ミリモル)を添加した。この混合物を2つの透明な相が得られるまで撹拌した。
【0085】
分液漏斗を用いて有機相を回収した。塩化ナトリウムを添加することによってエマルションの生成を排除した。この有機相を脱塩水で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、次いで回転式蒸発器で濃縮した。得られた茶色の生成物を80℃のオーブン中で真空下で5時間乾燥させた。
【0086】
次いで1,4−ビス(p−ホルミルオキシフェノキシ)ベンゼンを2/3の脱塩水/メタノール混合物中で80℃において洗浄した。濾過によって回収された生成物を80℃のオーブン中で真空下で5時間乾燥させた。収率は89%だった。
【0087】
最後の工程において、1,4−ビス(p−ホルミルオキシフェノキシ)ベンゼンを次のように加水分解した。冷却管及び電磁式撹拌機を備え付けた500ミリリットルの一口丸底フラスコに、1,4−ビス(p−ホルミルオキシフェノキシ)ベンゼン30g(85.6ミリモル)及び1M水酸化カリウム含有メタノール溶液86ミリリットルを装填し、メタノール150ミリリットルを添加した。この反応混合物を溶剤の沸点において90分間撹拌した。
【0088】
反応終了時に、溶液を脱塩水500ミリリットル中に注いだ。こうして得られた茶色の沈殿をガラス濾過器上で濾別し、次いで3回すすいだ。次いで生成物を80℃のオーブン中で真空下で5時間乾燥させた。
【0089】
1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンを前もって酢酸エチル中に溶解させ、1/1の酢酸エチル/シクロヘキサン混合物を溶離剤として用いたカラムクロマトグラフィーによって精製する。回収された生成物を次いで高純度で得るために昇華させる。得られた全体質量収率は71%だった。
【0090】
1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンの特徴付け
【0091】
得られた生成物の構造を、1H−NMR、13C−NMR及びDEPT−NMRによって特徴付けした。
【0092】
図1は、1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンの1H−NMRスペクトルを表わす。
【0093】
図2は、上が1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンの13C−NMRスペクトルを表わし、下がDEPTスペクトルを表わす。図2及び以下の図中、carboneはカーボンである。
【0094】
これらのスペクトルは、1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンに特有のものである。この化合物の純度は、この分析によって確かめられる。プロトン化学シフト及びそれらのカップリング定数aJb-c(隣接したプロトンの間の相互作用を特徴付ける)(「b」は懸案のプロトンであり、「c」は「b」に隣接するプロトンであり、そして「a」は懸案の2個のプロトンを隔てる結合の数である)を下記の表IIIに与える。「特徴」はプロトンについてのピークの数を表わし;「指数」はスペクトルに対して与えられる式に相当し;「カップリング定数」は装置の周波数で割ったピーク間の距離の関数として計算される。
【0095】
【表3】
【0096】
例2
【0097】
4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホンの調製
【0098】
HClガストラップ(KOH水溶液)を上に乗せた冷却管の冷却管及び電磁式撹拌機を備え付けて窒素流で洗い流した250ミリリットルの三つ口丸底フラスコに、4−ブロモベンゼンスルホニルクロリド21g(82.2ミリモル)、塩化アルミニウム(AlCl3)13.14g(98.6ミリモル)の及び1,2−ジクロロエタン40ミリリットルを装填した。
【0099】
この反応混合物を15分間撹拌し、次いでクロロベンゼン11.10g(98.6ミリモル)及び1,2−ジクロロエタン5ミリリットルの混合物を滴下した。添加後に、この混合物を50℃において4時間撹拌した。
【0100】
反応終了時に、この溶液を脱塩吸い400ミリリットル中に注いだ。2層が生成し、次いで1時間撹拌した後に黄色っぽい生成物が沈殿した。これをガラス濾過器上で濾別し、次いですすぎ、次いでイソプロパノールで洗浄して残留クロロベンゼンを除去した。次いで生成物を80℃のオーブン中で真空下で5時間乾燥させた。これにより、4−ブロモ−4’−クロロジフェニルスルホンが91%の粗収率で得られた。
【0101】
冷却管及び電磁式撹拌機を備え付けてアルゴン真空下に隔離した250ミリリットルの三つ口丸底フラスコに、ヨウ化銅(I)28.4mg(0.15ミリモル)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド62.8mg(0.089ミリモル)、トリフェニルホスフィン156.4mg(0.596ミリモル)及びN,N−ジメチルホルムアミド20ミリリットルを装填した。この溶液を10分間撹拌し、その後に4−ブロモ−4’−クロロジフェニルスルホン24.71g(74.5ミリモル)、フェニルアセチレン7.61g(74.5ミリモル)、トリエチルアミン15ミリリットル及び無水N,N−ジメチルホルムアミド80ミリリットルを添加した。添加後に、この混合物を80℃において18時間撹拌した。
【0102】
反応終了時に、この溶液をセライト上で熱濾過して触媒を除去した。このセライトを次いで1,2−ジクロロエタンで3回すすいだ。濾液を回収し、次いで回転式蒸発器で濃縮した。得られたベージュ色の生成物を80℃のオーブン中で真空下で5時間乾燥させた。
【0103】
この4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホン(CPEDPS)をアセトニトリルからの再結晶によって精製した。この生成物を次いで80℃のオーブン中で真空下で5時間乾燥させた。全体収率は85%だった。
【0104】
4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホンの特徴付け
【0105】
CPEDPSの構造を1H、13C及びDEPT−NMRによって確認する。
【0106】
図3は、4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホンの1H−NMRスペクトルを表わす。
【0107】
図4は、上が4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホンの13C−NMRスペクトルを表わし、下がDEPTスペクトルを表わす。
【0108】
これらのスペクトルは所期の構造に一致した。プロトン化学シフト及びそれらのカップリング定数(J)を下記の表IVに与える。
【表4】
【0109】
GC−MS分析は、生成物の純度を確認することを可能にする。より特定的には、クロマトグラムは352g/モルのモル質量に相当する単一のピークを示す。この値は実際CPEDPSの質量に相当する。
【0110】
例3
【0111】
プレポリマーO−BP2の調製
【0112】
プレポリマーO−BP2は、所定のモル質量M0=2000g/モルを有する。これは、ジフェノールである4,4’−ジヒドロキシビフェニルから調製される。
【0113】
その合成の第1工程は、炭酸カリウム及びN,N−ジメチルアセトアミドの存在下での4,4’−ジクロロジフェニルスルホンと4,4’−ジヒドロキシビフェニルとの重縮合によって行われる。4,4’−ジクロロジフェニルスルホンは前もって昇華によって精製し、4,4’−ジヒドロキシビフェニルは前もってエタノールからの再結晶によって精製した。各末端にフェノール基を有するプレポリマーを得るために、4,4’−ジヒドロキシビフェニルを過剰量で用いる(炭酸カリウムのカリウムイオンによってカリウムフェノキシドに転化させる)。反応式は次の通りである。
【化21】
【0114】
第2段階において、プレポリマー(a)を、次の反応式に従って一官能性モノマー CPEDPSと反応させることによって、末端を化学的に変性する。
【化22】
【0115】
この合成は、次の手順に従って実施した。機械式撹拌機及び冷却管を上に乗せたディーンスターク装置を備え付けて窒素流で洗い流した250ミリリットルの三つ口丸底フラスコに、4,4’−ジヒドロキシビフェニル11.0308g(59.2ミリモル)、炭酸カリウム9.824g(71.0ミリモル)及びN,N−ジメチルアセトアミド5ミリリットルを装填した(ジフェノールモノマー濃度30質量%に相当)。この混合物をトルエン10ミリリットルと混合し、次いで150℃にし、共沸蒸留によって水を除去するためにこの温度を2時間保った。
【0116】
次いで、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン12.7038g(44.24ミリモル)及びN,N−ジメチルアセトアミド40ミリリットルを添加して溶液中の有機試薬の濃度を20質量%まで低下させた。この溶液を次いで、ディーンスターク装置をS字管に交換した後に、170℃において20時間撹拌した。
【0117】
最後に、20質量%の濃度を保つために4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホン15.8778g(45ミリモル)及びN,N−ジメチルアセトアミド63ミリリットルを添加し、この溶液を200℃において10時間撹拌した。
【0118】
このプレポリマーを脱塩水中に沈殿させることによって抽出した。ガラス濾過器上で濾過し、脱塩水で洗浄し、次いでアセトンで洗浄して過剰分4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホンを除去した後に、プレポリマーを100℃のオーブン中で真空下で乾燥させた。
【0119】
試薬の量は、次のように決定した。繰返し単位の数は、下記の式(これは式(IXb)においてR5が単結合であるものに相当する):
【化23】
に相当するポリスルホンプレポリマーO−BP2の構造を考慮に入れて、関係式(I)
M0=n×Mur+T
{ここで、Murは繰返し単位のモル質量(400.454g/モル)を表わし、
Tは鎖末端のモル質量(418.513g/モル)を表わし、そして
M0はプレポリマーの所定のモル質量を表わす}
から決定することができる。所望のプレポリマーのモル数を表わすためにN0(N0はN0=m0/M0の関係によって規定され、m0はプレポリマーの質量である)を用いた場合、各試薬のモル数nrは、下記の表Vにまとめた関係から決定することができる。
【0120】
【表5】
【0121】
プレポリマーO−BP2の特徴付け
【0122】
プレポリマーO−BP2を1H、13C及びDEPT−NMRによる構造特徴付けに付した。
【0123】
図5は、プレポリマーO−BP2の1H−NMRスペクトルを表わす。
【0124】
図6は、上がプレポリマーO−BP2の13C−NMRスペクトルを表わし、下がDEPTスペクトルを表わす。
【0125】
これらのスペクトルは、所望のものに一致する明確な構造を示す。カーボンスペクトルは、鎖の大部分がCPEDPS単位を末端とすることを立証する。
【0126】
図7は、上が中間体のプレポリマーのカーボンスペクトルを表わし、下が所望のO−BP2プレポリマーのカーボンスペクトルを表わす。2つのスペクトルの重なり部分は、フェノール鎖末端を示す。上の曲線の丸で囲んだピークは、フェノールに相当する。図中、phenolはフェノールを意味する。
【0127】
1H−NMRスペクトルに基づいて測定したプレポリマーO−BP2のモル質量は、3100g/モルだった。この値は、次の関係式を用いて決定される。
【数1】
ここで、Atはフェニルアセチレン末端の芳香族プロトンを特徴付けるピークの面積に相当し、Aurは繰返し単位のプロトンを特徴付けるピークの面積であり、Nurは面積Aurのピークによって特徴付けられる繰返し単位当たりのプロトンの数であり、そしてNtはピーク面積Atによって特徴付けられるプロトンの数である。マクロ分子鎖中の繰返し単位(n)の平均数は、上に与えた関係式(I)を用いて質量を推定することによって決定することができる。
【0128】
N,N−ジメチルホルムアミド中でのサイズ排除クロマトグラフィーによって測定したプレポリマーO−BP2の数平均モル質量は8400g/モルであり、多分散指数は1.2だった。
【0129】
例4
【0130】
モル質量5000g/モルのプレポリマーO−BP/BHPB5の調製:
【0131】
プレポリマーO−BP/BHPB5の合成は、例3のものと同様の方法に従って、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ジフェノールBHPB及び一官能性モノマーのCPEDPSの重縮合によって実施した。このプレポリマーの繰返し単位は、4,4’−ジヒドロキシビフェニル50%及びBHPB50%から構成される。反応式は次の通りである。
【化24】
【0132】
機械式撹拌機及び冷却管を上に乗せたディーンスターク装置を備え付けて窒素流で洗い流した250ミリリットルの三つ口丸底フラスコに、4,4’−ジヒドロキシビフェニル3.7541g(20.16ミリモル)、1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン5.9334g(20.16ミリモル)、炭酸カリウム6.687g(48.3ミリモル)及びN,N−ジメチルアセトアミド4ミリリットルのを装填した(ジフェノールモノマー濃度30質量%に相当)。この混合物にトルエン10ミリリットルを添加し、次いで150℃にし、共沸蒸留によって水を除去するためにこの温度を2時間保った。
【0133】
次いで4,4’−ジクロロジフェニルスルホン10.4301g(36.32ミリモル)及びN,N−ジメチルアセトアミド33ミリリットルを添加して、試薬の濃度を20重量%に下げた。この溶液を次いで170℃において20時間撹拌し、その後にディーンスターク装置をS字管に交換した。
【0134】
最後に4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホン4.2341g(12ミリモル)及びN,N−ジメチルアセトアミド17ミリリットルを添加して20質量%の濃度を保ち、この溶液を200℃において10時間撹拌した。
【0135】
このプレポリマーを脱塩水中に沈殿させることによって抽出した。ガラス濾過器で濾過し、脱塩水ですすぎ、次いでアセトンですすいで過剰分の4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホンを除去した後に、プレポリマー(20g)を100℃のオーブン中で真空下で乾燥させた。
【0136】
試薬の量は、次のように決定した。繰返し単位の数は、次式:
【化25】
に相当するポリスルホンプレポリマーの構造を考慮に入れて、関係式(II)
M0=n×(Mur1+Mur2)+T
{ここで、Mur1及びMur2はそれぞれ繰返し単位BPのモル質量(400.454g/モル)及び繰返し単位BHBPのモル質量(508.551g/モル)を表わし、
Tは鎖末端のモル質量(418.513g/モル)を表わし、そして
M0はプレポリマーの所定のモル質量を表わす}
から決定することができる。所望のプレポリマーのモル数を表わすためにN0(N0はN0=m0/M0の関係によって規定され、m0はプレポリマーの質量である)を用いた場合、各試薬のモル数nrは、下記の表VIにまとめた関係から決定することができる。
【0137】
【表6】
【0138】
プレポリマーO−BP/BHPB5の特徴付け
【0139】
1H、13C及びDEPT−NMR分光法によってプレポリマーO−BP/BHPB5の特徴付けを実施した。
【0140】
図8は、プレポリマーO−BP/BHPB5の1H−NMRスペクトルを表わす。
【0141】
図9は、上がプレポリマーO−BP/BHPB5の13C−NMRスペクトルを表わし、下がDEPTスペクトルを表わす。
【0142】
これらのスペクトルは、所期の構造に一致した。これらのスペクトルの分析から、マクロ分子鎖の大部分がフェニルアセチレン単位を末端とし、各ジフェノールに対応する積分値の比が最初に決められた50/50の割合に相当すると考えることができる。
【0143】
プレポリマーO−BP/BHPB5のモル質量は、1H−NMRスペクトルから測定して3600g/モルだった。この値は、例3に記載した手順に従って(上記の関係式(II)を使用して)決定した。N,N−ジメチルホルムアミド中でのサイズ排除クロマトグラフィーによって測定した数平均モル質量は21700g/モルであり、多分散指数は1.4だった。
【0144】
例5
【0145】
モル質量10000g/モルのプレポリマーO−BP/BHPB10の調製:
【0146】
例4の手順に従い、用いる試薬の量を変更して、プレポリマーO−BP/BHPB10の合成を実施した。
【0147】
機械式撹拌機及び冷却管を上に乗せたディーンスターク装置を備え付けて窒素流で洗い流した250ミリリットルの三つ口丸底フラスコに、4,4’−ジヒドロキシビフェニル3.9255g(21.08ミリモル)、1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン6.2044g(21.08ミリモル)、炭酸カリウム6.9927g(50.59ミリモル)及びN,N−ジメチルアセトアミド50ミリリットルを装填した(この溶液は、30質量%のジフェノールモノマー濃度を有する)。この混合物にトルエン10ミリリットルを添加し、次いで150℃にし、共沸蒸留によって水を除去するためにこの温度を2時間保った。
【0148】
次いで4,4’−ジクロロジフェニルスルホン11.5333g(40.16ミリモル)及びN,N−ジメチルアセトアミド36ミリリットルを添加して、試薬の濃度を20重量%に下げた。この溶液を次いで170℃において20時間撹拌し、その後にディーンスターク装置をS字管に交換した。
【0149】
最後に4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホン2.1170g(6ミリモル)及びN,N−ジメチルアセトアミド7ミリリットルを添加して20質量%の濃度を保ち、この溶液を200℃において10時間撹拌した。
【0150】
このプレポリマーを脱塩水中に沈殿させることによって抽出した。ガラス濾過器で濾過し、脱塩水ですすぎ、次いでアセトンですすいで過剰分の4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホンを除去した後に、プレポリマー(20g)を100℃のオーブン中で真空下で乾燥させた。
【0151】
プレポリマーO−BP/BHPB10の特徴付け
【0152】
1H、13C及びDEPT−NMRによってプレポリマーO−BP/BHPB10の特徴付けを実施した。
【0153】
図10は、BP/BHPB10の1H−NMRスペクトルを表わす。
【0154】
図11は、上がBP/BHPB10の13C−NMRスペクトルを表わし、下がDEPTスペクトルを表わす。
【0155】
これらのスペクトルは所期の構造に一致した。これらのスペクトルの分析から、マクロ分子鎖の大部分がフェニルアセチレン単位を末端とし、各ジフェノールに対応する積分値の比が最初に決められた50/50の割合に相当すると考えることができる。
【0156】
プレポリマーO−BP/BHPB10のモル質量は、1H−NMRスペクトルから測定して6400g/モルだった。この値は、例4に記載した手順に従って決定した。N,N−ジメチルホルムアミド中でのサイズ排除クロマトグラフィーによって測定した数平均モル質量は29900g/モルであり、多分散指数は1.6だった。
【0157】
例6
【0158】
プレポリマーO−BP2の押出
【0159】
この例は、例3の手順に従って得られたプレポリマーを用いて実施した。
【0160】
DACA社よりMicrocompounderの商品名で販売されている押出機を用いて、押出を実施した。この押出機の本体は、2つの似たようなプレートが互いに対して組み立てられて成る。図12は、押出機が掃除のために開かれた時のプレート(5)の一方の部分正面図である。これは、内側に2個の逆回転する円錐型スクリュー(2、2’)を存在させたバレル(筒状部)(1)、バレル中の温度を均一に保つために2個のプレート中に挿入される加熱用カートリッジ(図示せず)、温度センサー(図示せず)、トルクセンサー(図示せず)、2ポジションの弁(3)、交換可能なダイ(4)、及びバレルの底部と頂部とを連結する流路(6)を含む。バレル(1)の容積は4.5cm3である。
【0161】
2個の逆回転する円錐型スクリュー(2、2’)は、100mmの長さ及び10mmの最大直径を有する。それらの回転速度は、0回転/分から360回転/分まで変動することができる。本例においては、その速度は100回転/分であり、約1500s-1の平均剪断速度を表わし、言い換えれば工業押出条件の代表的な剪断速度である。
【0162】
2ポジションの弁(3)は、「再循環」ポジション(これは、スクリュー末端の材料が再び上昇してバレルに再び入ることを可能にする)又は「押出」ポジション(ダイを通して材料を排出する)のいずれかにあることができる。
【0163】
本例において用いられる交換可能なダイ(4)は、2mmの直径を有する線対称ダイである。Microcompounder押出機において、押出は次の条件下で行われる。押出機のプレートは、所定温度Teに調節する。押出用混合物を供給ホッパーに入れ、ピストンによってバレル中に押し入れる。バレル内で、2個のスクリューが材料を混合し且つ溶融させ、下方に押しやる。材料がバレルの下部に達した時に、外側流路(6)を通って再上昇し、次いでバレルに再び入り、そこで混合される。この方法は、期間Deの間、何回も繰り返すことができる。プレポリマーの温度は、温度センサーによってリアルタイムで測定される。トルクセンサー(図示せず)が、0〜5N・mの範囲で、スクリューの回転の際に材料によって発生する抵抗Reを測定する。混合プロセス終了時に、弁を押出ポジションに戻し、ダイ(4)から材料を排出させる。
【0164】
図13は、前記プレポリマーのDSCサーモグラムである。これは、DSCによって測定したプレポリマーO−BP2のガラス転移温度が162℃であることを示す。
【0165】
化合物が押出可能であるためには、その化合物が押出温度において流動するのに充分低い粘度を有していなければならない。プレポリマーO−BP2の粘度は、Rheometrics社からのARESレオメーターを用いた動力学的レオメトリーにより、200〜260℃の範囲の温度にわたり、そして10-1〜102s-1の範囲の剪断速度について、測定した。
【0166】
図14は、応力振幅の関数としての粘度のプロットを表わす。200℃〜260℃の各温度について、粘度が振幅によってほとんど変化を示さない。この挙動ゾーンは、「ニュートン平坦域」と称される。これらのプロットは、研究した剪断速度についてはプレポリマーO−BP2の粘度が200℃において4000Pa・sであり、そして220℃超の温度については粘度は非常に低く、102s-1において300Pa・s未満であることを示す。従って、この混合物は押出することができる。
【0167】
プロセスの実現可能性を検査するために、上記のMicrocompounderを用いて化合物に対する押出試験を実施した。押出は、3.3gの混合物を用い、200℃のプレート温度Te及び5分の期間Deで、実施した.
【0168】
温度センサーによってリアルタイムで測定したプレポリマーO−BP2の温度は200℃のままであり、これはその混合物が加熱されなかったことを意味する。測定されたトルクは3.9N・mであり、これはその材料が粘性であることを意味する。混合プロセス終了時に、弁を押出ポジションに戻して、ダイから材料を排出させた。得られた押出物は滑らかであり、欠陥がなかった。
【0169】
例7
【0170】
モル質量5000g/モルのプレポリマーO−BP/BHPB5の押出:
【0171】
この例は、例4の手順に従って得られたプレポリマーO−BP/BHPB5を用いて実施した。
【0172】
図15は、該プレポリマーのDSCサーモグラムである。これは、DSCによって測定したプレポリマーO−BP/BHPB5のガラス転移温度が166℃であることを示す。
【0173】
プレポリマーO−BP/BHPB5の粘度を、Rheometrics社からのARESレオメーターを用いた動力学的レオメトリーにより、200〜240℃の範囲の温度にわたり、そして10-1〜102s-1の範囲の剪断速度について、測定した。図16は、横座標上の応力振幅の関数としての粘度のプロットを表わす。これらのプロットは、研究した剪断速度についてはプレポリマーO−BP/BHPB5の粘度が200℃において20000Pa・sであり、そして220℃超の温度については粘度が102s-1において1000Pa・s未満であることを示す。
【0174】
これらの粘度測定に基づいて、この混合物の押出における挙動を、時間−温度重ね合わせの原理を用いて予測した。時間−温度同等の原理に基づくこの重ね合わせは、様々な温度において得られたフロープロットを経験的に決定されたファクターによって解釈して成る。参照温度と称される設定温度について、広範な振幅にわたってフローにおける材料の挙動が得られる。
【0175】
図17は、240℃の参照温度におけるプレポリマーの挙動を示す。左側の縦座標のη*は粘度を表わし、横座標のωはサンプルの応力振幅を表わす。細い実線は、弾性モジュラス(弾性率)又は貯蔵モジュラスG’及び粘性モジュラス又は損失モジュラスG”を表わし、右側の縦座標上で読み取ることができる。太い実線は粘度η*を表わす。240℃において、この混合物は剪断減粘性であり、その粘度は押出プロセスにおいて代表的な104s-1の速度について100Pa・s未満であり、これは非常に低い。従って、この混合物は押出することができる。
【0176】
プロセスの実現可能性を検査するために、上記のMicrocompounderを用いて化合物に対する押出試験を実施した。押出は、2.0gの混合物を用い、200℃のプレート温度Te及び5分の期間Deで、実施した。
【0177】
温度センサーによってリアルタイムで測定したプレポリマーO−BP/BHPB5の温度は200℃のままであり、これはその混合物が加熱されなかったことを意味する。測定されたトルクは4.1N・mであり、これはその材料が粘性であることを意味する。混合プロセス終了時に、弁を押出ポジションに戻して、ダイから材料を排出させた。得られた押出物は滑らかであり、欠陥がなかった。
【0178】
例8
【0179】
モル質量10000g/モルのプレポリマーO−BP/BHPB10の押出:
【0180】
この例は、例5の手順に従って得られたプレポリマーO−BP/BHPB10を用いて実施した。
【0181】
図18は、プレポリマーO−BP/BHPB10のDSCサーモグラムである。これは、DSCによって測定したプレポリマーO−BP/BHPB10のガラス転移温度が175℃であることを示す。
【0182】
プレポリマーO−BP/BHPB10の粘度を、Rheometrics社からのARESレオメーターを用いた動力学的レオメトリーにより、200〜300℃の範囲の温度にわたり、そして10-1〜102s-1の範囲の剪断速度について、測定した。図19は、横座標上の応力振幅の関数としての粘度のプロットを表わす。これらのプロットは、研究した剪断速度についてはプレポリマーO−BP/BHPB10の粘度が220℃超の温度について10000Pa・s未満であることを示す。
【0183】
これらの粘度測定に基づいて、この混合物の押出における挙動を、例7におけるのと同様に時間−温度重ね合わせの原理を用いて予測した。図20は、300℃の参照温度における混合物の挙動を示す。左側の縦座標のη*は粘度を表わし、横座標のωはサンプルの応力振幅を表わす。細い実線は、弾性モジュラス(弾性率)又は貯蔵モジュラスG’及び粘性モジュラス又は損失モジュラスG”を表わし、右側の縦座標上で読み取ることができる。太い実線は粘度η*を表わす。300℃において、この混合物は剪断減粘性であり、その粘度は押出プロセスにおいて代表的な104s-1の速度について20Pa・s付近であり、これは非常に低い。従って、この混合物は押出することができる。
【0184】
プロセスの実現可能性を検査するために、上記のMicrocompounderを用いて化合物に対する押出試験を実施した。押出は、2.8gの混合物を用い、240℃のプレート温度Te及び5分の期間Deで、実施した。
【0185】
温度センサーによってリアルタイムで測定したプレポリマーO−BP/BHPB10の温度は240℃のままであり、これはその混合物が加熱されなかったことを意味する。測定されたトルクは3.3N・mであり、これはその材料が流動することを意味する。混合プロセス終了時に、弁を押出ポジションに戻して、ダイから材料を排出させた。得られた押出物は滑らかであり、欠陥がなかった。
【0186】
例9
【0187】
熱架橋
【0188】
例6〜8に従って押出によって得られた各フィルムのサンプルを320℃にし、この温度に3時間保って、エチニル基を介した架橋を達成した。
【0189】
例10
【0190】
BP/BHPB5から及びO−BP/BHPB10から得られた架橋フィルムのジクロロエタン中でのスルホン化
【0191】
第1工程において、真空(10ミリバール)下で110℃において前もって乾燥させた厚さ100μmのフィルム100cm2をジクロロエタン(DCE)200ミリリットル中に浸漬し、この全体の混合物を60℃にする。並行して、乾燥DCE50ミリリットル中にトリメチルシランクロリド47.2g(0.434モル)及びClSO3H42.2g(0.36モル)(両成分とも無水である)を加えて、生成するHClを捕捉しながらアルゴン下で30分間電磁式に撹拌することによって、クロロスルホン酸トリメチルシリルの無水溶液を調製した。
【0192】
第2工程において、フィルムを含有させたDCE中にこのクロロスルホネートの溶液を導入し、この反応混合物を60℃に2時間保った。
【0193】
次いでフィルムをこの溶液から取り出し、ジクロロエタンで3回洗浄した。次いで、残ったジクロロエタンを真空下で50℃において2時間蒸発させた。最後に、スルホン化フィルムを蒸留水中に浸す。
【0194】
インピーダンス測定により、電気化学電池にその平衡電圧付近で低振幅の正弦波電圧を印加することによって、電気化学的結果を得た。20℃、湿度90%において測定した酸性スルホン化ポリスルホンフィルムのプロトン伝導性は、1mS/cmだった。
【0195】
例11
【0196】
BP/BHPB5から又はO−BP/BHPB10から得られた架橋フィルムのニトロエタン中でのスルホン化
【0197】
真空(10ミリバール)下で110℃において前もって乾燥させた厚さ100μmのフィルム100cm2をニトロエタン(NE)200ミリリットル中に浸漬し、この全体の混合物を20分間40℃にする。
【0198】
次いでクロロスルホン酸16ミリリットルを添加し、この反応混合物を穏やかに撹拌しながら40℃に保った。
【0199】
30分間撹拌した後に、フィルムを溶液から取り出し、ニトロエタンで3回洗浄し、次いで残った溶剤を真空下で50℃において2時間蒸発させた。
【0200】
最後に、スルホン化フィルムを蒸留水中に浸す。
【0201】
インピーダンス測定により、電気化学電池にその平衡電圧付近で低振幅の正弦波電圧を印加することによって、電気化学的結果を得た。20℃、湿度90%において測定した酸性スルホン化ポリスルホンフィルムのプロトン伝導性は、1.2mS/cmだった。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンの1H−NMRスペクトルである。
【図2】上が1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンの13C−NMRスペクトルであり、下がDEPTスペクトルである。
【図3】4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホンの1H−NMRスペクトルである。
【図4】上が4−クロロ−(4’−フェニルエチニル)ジフェニルスルホンの13C−NMRスペクトルであり、下がDEPTスペクトルである
【図5】プレポリマーO−BP2の1H−NMRスペクトルである。
【図6】上がプレポリマーO−BP2の13C−NMRスペクトルであり、下がDEPTスペクトルである。
【図7】上が中間体のプレポリマーのカーボンスペクトルであり、下が所望のO−BP2プレポリマーのカーボンスペクトルである。
【図8】プレポリマーO−BP/BHPB5の1H−NMRスペクトルである。
【図9】上がプレポリマーO−BP/BHPB5の13C−NMRスペクトルであり、下がDEPTスペクトルである。
【図10】BP/BHPB10の1H−NMRスペクトルである。
【図11】上がBP/BHPB10の13C−NMRスペクトルであり、下がDEPTスペクトルである。
【図12】押出機の一方のプレート(5)の部分正面図である。
【図13】プレポリマーO−BP2のDSCサーモグラムである。
【図14】プレポリマーO−BP2について、粘度を応力振幅の関数としてプロットしたグラフである。
【図15】プレポリマーO−BP/BHPB5のDSCサーモグラムである。
【図16】プレポリマーO−BP/BHPB5について、粘度を横座標上の応力振幅の関数としてプロットしたグラフである。
【図17】240℃の参照温度におけるプレポリマーO−BP/BHPB5の挙動を示すグラフである。
【図18】プレポリマーO−BP/BHPB10のDSCサーモグラムである。
【図19】プレポリマーO−BP/BHPB10について、粘度を横座標上の応力振幅の関数としてプロットしたグラフである。
【図20】300℃の参照温度におけるプレポリマーO−BP/BHPB10の挙動を示すグラフである。
【符号の説明】
【0203】
1・・・バレル
2、2’・・・円錐型スクリュー
3・・・弁
4・・・ダイ
5・・・プレート
6・・・流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオンMp+がプロトンと一価金属、二価金属又は三価金属のイオンとアンモニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、テトラゾリウム、ピリジニウム及びグアニジニウムイオンから選択される有機イオンとから選択されるイオン性基含有架橋ポリマー材料から成るフィルムの製造方法であって、
少なくとも1種のプレポリマーを含む出発ポリマー材料を押出することから成る工程、押出後のこのポリマー材料を重合させることから成る工程、及び押出された材料に対してイオン性基をグラフトさせるための化学反応を行うことから成る工程を含み、
・前記プレポリマーが1個以上の芳香族基GA及び1個以上の官能基GFをそれぞれが含む繰返し単位を含み;
・前記プレポリマーが押出温度より高い温度において熱で、又は光化学的に、架橋し得る基GPを1個以上有し;
・前記プレポリマーがイオン性基をグラフトさせることを可能にする反応性基GRを1個以上有し;
・2個以上の芳香族基GA及び/又は2個以上の官能基GFを含む繰返し単位中のこれらの芳香族基が同一であっても異なっていてもよく、官能基GFが同一であっても異なっていてもよい:
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記プレポリマーの骨格構造が、繰返し単位(GA,GF)が単一の鎖を形成して成り、又は繰返し単位(GA,GF)が主鎖及び側鎖を形成して成ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
繰返し単位の基GAが主鎖及び随意に側鎖の構成要素であり、基GFが鎖の構成要素又は基GAの側部置換基であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
プレポリマーの繰返し単位が同一のもの又は異なるものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
繰返し単位の1個の芳香族基GAが、
・非置換フェニレン基−C6H4−、少なくとも1個の置換基を有するフェニレン基、置換基を持たない2個の縮合フェニレン核から成る基若しくは少なくとも1個の置換基を有する2個の縮合フェニレン核から成る基;又は
・N、O及びSから選択される1個以上のヘテロ原子を含み且つ随意に1個以上の置換基を有するヘテロ芳香核から成る基:
から選択され、
但し、フェニレン基又はヘテロ芳香核の各置換基は、互いに独立して、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基又は1個以上の非縮合若しくは縮合芳香核を含み且つ随意に置換基を有する芳香族基を表わす
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
官能基GFがエーテル基、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレン基、カルボニル、エステル、スルフィド、スルホン、オキサゾリル基、イミダゾリル基、アミド基又はイミド基であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
基GPが主鎖の末端及び/又は随意に側鎖上に位置することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
基GPが熱重合性の基であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記基GPが式−C≡C−R2(ここで、R2は芳香族基、アルキル基又はペルフルオロアルキル基を表わす)に相当するアルキニル基であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記基GPが繰返し単位の芳香族基GAに直接結合したアルキニル基であり、前記プレポリマーの当該末端が構造−GA−C≡C−R2を有することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基GPが芳香族基、アルキレン基又はペルフルオロアルキレン基を表わす基−R1−を介して繰返し単位の官能基GFに結合し、プレポリマーの当該末端又は当該置換基が構造−GF−R1−C≡C−R2を有することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
GRがフェニレン基であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ポリマーフィルムをクロロスルホン酸トリメチルシリル又はクロロスルホン酸と反応させ、次いでMp+(OH-)pを添加することによって、ポリマーフィルム上へのスルホネートイオン性基のグラフトを実施することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ポリマーフィルムをブチルリチウムと反応させ、次いでCS2、SOCl2及びMp+(OH-)pを順次添加することによって、チオカルボキシレート基のグラフトを実施することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
ポリマーフィルムをブチルリチウムと反応させ、次いでCS2、HCl及びMp+(OH-)pを順次添加することによって、ジチオカルボキシレート基のグラフトを実施することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
GRが芳香族基GAが有するOH基であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマーフィルムとClSO3Hとを反応させ、次いでMp+(OH-)pを添加することによって、前記OH基をサルフェート基に転化させることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマーフィルムとMp+(OH-)pとを反応させることによって前記OH基をフェノキシドイオン性基に転化させることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
GRがメチル基であること、及び前記ポリマーフィルムとKMnO4とを反応させ、次いでMp+(OH-)pを添加することによって、カルボキシレートイオン性基のグラフトを実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
GRが基−CH2−X(ここで、Xはハロゲンである)であること、及びP(OCH3)3との反応を実施し、次いでMp+(OH-)pを添加することによって、ホスホネートイオン性基のグラフトを実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
GRがスルホネート基−SO3(1/p)Mp+であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
スルホネート基を有するポリマーフィルムをSOCl2又はPCl5と反応させ、次いでR6NH2及びMp+(OH-)pと順次反応させる{ここで、R6は水素、アルキル基(好ましくは1〜6個の炭素原子を有するもの)、一部フッ素化されたアルキル基(好ましくは1〜6個の炭素原子を有するもの)、アルケニル基(好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、一部フッ素化されたアルケニル基(好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、オキシアルキレン基CH3−(O−(CH2)m)n(ここで、好ましくは2≦m<5且つ1≦n≦10である)、又は1個以上の縮合若しくは非縮合芳香核を含み且つ随意に置換基を有するアリール基を表わす}ことによってスルホニルアミド基のグラフトを実施することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
スルホネート基を有するポリマーフィルムをSOCl2又はPCl5と反応させ、次いでR7SO2NH-(1/p)Mp+及びMp+(OH-)pと順次反応させる{ここで、R7はアルキル基、ペルフッ素化若しくは一部フッ素化されたアルキル基、ペルフッ素化若しくは一部フッ素化されたアルケニル基、オキシアルキレン基CH3−(O−(CH2)m)n(ここで、2≦m<5且つ1≦n≦10である)、又は1個以上の縮合若しくは非縮合芳香核を含み且つ随意に置換基を有するアリール基である}ことによってスルホニルイミド基のグラフトを実施することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
基GPが熱重合性基であり、且つ、押出を重合温度より低い温度において実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
押出の前にプレポリマーに1種以上の添加剤を添加し、該添加剤が伝導性充填剤又は補強材から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
GPが熱重合性基であり、且つ、押出の後に得られたプレポリマーフィルムを押出機からの出口においてオーブン中に入れることによって該フィルムを熱処理することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
GPが光架橋性の基であり、且つ、押出の後に得られたプレポリマーフィルムを5〜150mW/cm2の強度で200〜400nmの範囲のUV照射又は電子ビームに付すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
押出及び重合後に得られたフィルム中に前記イオン性基を、次の工程:
・前記の重合させたフィルムを無水溶剤によって膨潤させる工程、
・この膨潤させたフィルムを、イオン性基の前駆体である試薬の無水溶剤中の溶液と、撹拌しながら接触させる工程、
・このフィルムを溶液から抽出し、純水で洗浄し、真空下で乾燥させ、次いで蒸留水中に浸して保存する工程
を含む方法によって導入することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
末端アルキニル基GPを含み且つ反応性基GRがいくつかの基GAによって構成されるポリスルホンプレポリマーを架橋させることによって得られた乾燥フィルム中にイオン性基−SO3(1/p)Mp+を、次の工程:
・前記の乾燥フィルムを無水溶剤によって膨潤させる工程;
・選択した無水溶剤中のクロロスルホン酸トリメチルシリル又はクロロスルホン酸の無水溶液を調製する工程;
・第1工程において得られた膨潤フィルムを第2工程の際に調製された溶液と接触させる工程;
・前記フィルムを第1工程において用いた純粋な溶剤で洗浄する工程;
・スルホン化されたフィルムを力学的真空下で40〜80℃の範囲の温度において乾燥させる工程;
・前記フィルムを蒸留水中に浸す工程:
を含む方法によって導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
請求項1〜29のいずれかに記載の方法によって得られ、繰返し単位(GA,GR)を含むイオン性基含有架橋ポリマーから成ることを特徴とするフィルム。
【請求項31】
10〜300μmの範囲の厚さを有することを特徴とする、請求項30に記載のフィルム。
【請求項32】
前記架橋ポリマーが相互侵入網目構造を形成することを特徴とする、請求項30又は31に記載のフィルム。
【請求項33】
前記架橋ポリマーが半相互侵入網目構造を形成することを特徴とする、請求項30又は31に記載のフィルム。
【請求項34】
前記イオン性基のカチオンがリチウムイオンである請求項30〜33のいずれかに記載のフィルムの、リチウム電池、スーパーキャパシター又はエレクトロクロミックデバイスの電解質としての使用。
【請求項35】
前記イオン性基のカチオンがプロトン並びにアンモニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、テトラゾリウム、ピリジニウム及びグアニジニウムイオンから選択される請求項30〜33のいずれかに記載のフィルムの、燃料電池用の膜としての使用。
【請求項36】
前記イオン性基のカチオンがプロトン並びにアンモニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、テトラゾリウム、ピリジニウム及びグアニジニウムイオンから選択される請求項30〜33のいずれかに記載のフィルムの、イオン交換膜として又は電気透析膜としての使用。
【請求項37】
請求項1に記載の方法のためのプレポリマーとして用いることができる化合物であって、式(IXb):
【化1】
(ここで、R5は単結合又はアリールエーテル基を表わす)
に相当することを特徴とする、前記化合物。
【請求項38】
請求項37に記載の化合物(IXb)の製造方法であって、
・第1工程において、極性非プロトン性溶剤及びカチオンM+源である弱塩基の存在下で、次式:
【化2】
に相当する4,4’−ジクロロジフェニルスルホンとそれぞれ次式:
【化3】
に相当する過剰量で用いられる4,4’−ジヒドロキシビフェニル及び1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンの2種のモノマーとを重縮合させることによって次式(IXc):
【化4】
に相当するテレケリックポリスルホンを調製し;
・第2工程において、プレポリマーIXcと次式(X):
【化5】
(ここで、R7はハロゲンである)
に相当する一官能性モノマーとを反応させることによって、前記プレポリマーのフェノキシド末端を変性する:
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項1】
カチオンMp+がプロトンと一価金属、二価金属又は三価金属のイオンとアンモニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、テトラゾリウム、ピリジニウム及びグアニジニウムイオンから選択される有機イオンとから選択されるイオン性基含有架橋ポリマー材料から成るフィルムの製造方法であって、
少なくとも1種のプレポリマーを含む出発ポリマー材料を押出することから成る工程、押出後のこのポリマー材料を重合させることから成る工程、及び押出された材料に対してイオン性基をグラフトさせるための化学反応を行うことから成る工程を含み、
・前記プレポリマーが1個以上の芳香族基GA及び1個以上の官能基GFをそれぞれが含む繰返し単位を含み;
・前記プレポリマーが押出温度より高い温度において熱で、又は光化学的に、架橋し得る基GPを1個以上有し;
・前記プレポリマーがイオン性基をグラフトさせることを可能にする反応性基GRを1個以上有し;
・2個以上の芳香族基GA及び/又は2個以上の官能基GFを含む繰返し単位中のこれらの芳香族基が同一であっても異なっていてもよく、官能基GFが同一であっても異なっていてもよい:
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記プレポリマーの骨格構造が、繰返し単位(GA,GF)が単一の鎖を形成して成り、又は繰返し単位(GA,GF)が主鎖及び側鎖を形成して成ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
繰返し単位の基GAが主鎖及び随意に側鎖の構成要素であり、基GFが鎖の構成要素又は基GAの側部置換基であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
プレポリマーの繰返し単位が同一のもの又は異なるものであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
繰返し単位の1個の芳香族基GAが、
・非置換フェニレン基−C6H4−、少なくとも1個の置換基を有するフェニレン基、置換基を持たない2個の縮合フェニレン核から成る基若しくは少なくとも1個の置換基を有する2個の縮合フェニレン核から成る基;又は
・N、O及びSから選択される1個以上のヘテロ原子を含み且つ随意に1個以上の置換基を有するヘテロ芳香核から成る基:
から選択され、
但し、フェニレン基又はヘテロ芳香核の各置換基は、互いに独立して、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基又は1個以上の非縮合若しくは縮合芳香核を含み且つ随意に置換基を有する芳香族基を表わす
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
官能基GFがエーテル基、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基、1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレン基、カルボニル、エステル、スルフィド、スルホン、オキサゾリル基、イミダゾリル基、アミド基又はイミド基であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
基GPが主鎖の末端及び/又は随意に側鎖上に位置することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
基GPが熱重合性の基であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記基GPが式−C≡C−R2(ここで、R2は芳香族基、アルキル基又はペルフルオロアルキル基を表わす)に相当するアルキニル基であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記基GPが繰返し単位の芳香族基GAに直接結合したアルキニル基であり、前記プレポリマーの当該末端が構造−GA−C≡C−R2を有することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記基GPが芳香族基、アルキレン基又はペルフルオロアルキレン基を表わす基−R1−を介して繰返し単位の官能基GFに結合し、プレポリマーの当該末端又は当該置換基が構造−GF−R1−C≡C−R2を有することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
GRがフェニレン基であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ポリマーフィルムをクロロスルホン酸トリメチルシリル又はクロロスルホン酸と反応させ、次いでMp+(OH-)pを添加することによって、ポリマーフィルム上へのスルホネートイオン性基のグラフトを実施することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ポリマーフィルムをブチルリチウムと反応させ、次いでCS2、SOCl2及びMp+(OH-)pを順次添加することによって、チオカルボキシレート基のグラフトを実施することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
ポリマーフィルムをブチルリチウムと反応させ、次いでCS2、HCl及びMp+(OH-)pを順次添加することによって、ジチオカルボキシレート基のグラフトを実施することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
GRが芳香族基GAが有するOH基であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマーフィルムとClSO3Hとを反応させ、次いでMp+(OH-)pを添加することによって、前記OH基をサルフェート基に転化させることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマーフィルムとMp+(OH-)pとを反応させることによって前記OH基をフェノキシドイオン性基に転化させることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
GRがメチル基であること、及び前記ポリマーフィルムとKMnO4とを反応させ、次いでMp+(OH-)pを添加することによって、カルボキシレートイオン性基のグラフトを実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
GRが基−CH2−X(ここで、Xはハロゲンである)であること、及びP(OCH3)3との反応を実施し、次いでMp+(OH-)pを添加することによって、ホスホネートイオン性基のグラフトを実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
GRがスルホネート基−SO3(1/p)Mp+であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
スルホネート基を有するポリマーフィルムをSOCl2又はPCl5と反応させ、次いでR6NH2及びMp+(OH-)pと順次反応させる{ここで、R6は水素、アルキル基(好ましくは1〜6個の炭素原子を有するもの)、一部フッ素化されたアルキル基(好ましくは1〜6個の炭素原子を有するもの)、アルケニル基(好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、一部フッ素化されたアルケニル基(好ましくは1〜4個の炭素原子を有するもの)、オキシアルキレン基CH3−(O−(CH2)m)n(ここで、好ましくは2≦m<5且つ1≦n≦10である)、又は1個以上の縮合若しくは非縮合芳香核を含み且つ随意に置換基を有するアリール基を表わす}ことによってスルホニルアミド基のグラフトを実施することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
スルホネート基を有するポリマーフィルムをSOCl2又はPCl5と反応させ、次いでR7SO2NH-(1/p)Mp+及びMp+(OH-)pと順次反応させる{ここで、R7はアルキル基、ペルフッ素化若しくは一部フッ素化されたアルキル基、ペルフッ素化若しくは一部フッ素化されたアルケニル基、オキシアルキレン基CH3−(O−(CH2)m)n(ここで、2≦m<5且つ1≦n≦10である)、又は1個以上の縮合若しくは非縮合芳香核を含み且つ随意に置換基を有するアリール基である}ことによってスルホニルイミド基のグラフトを実施することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
基GPが熱重合性基であり、且つ、押出を重合温度より低い温度において実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
押出の前にプレポリマーに1種以上の添加剤を添加し、該添加剤が伝導性充填剤又は補強材から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
GPが熱重合性基であり、且つ、押出の後に得られたプレポリマーフィルムを押出機からの出口においてオーブン中に入れることによって該フィルムを熱処理することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
GPが光架橋性の基であり、且つ、押出の後に得られたプレポリマーフィルムを5〜150mW/cm2の強度で200〜400nmの範囲のUV照射又は電子ビームに付すことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
押出及び重合後に得られたフィルム中に前記イオン性基を、次の工程:
・前記の重合させたフィルムを無水溶剤によって膨潤させる工程、
・この膨潤させたフィルムを、イオン性基の前駆体である試薬の無水溶剤中の溶液と、撹拌しながら接触させる工程、
・このフィルムを溶液から抽出し、純水で洗浄し、真空下で乾燥させ、次いで蒸留水中に浸して保存する工程
を含む方法によって導入することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
末端アルキニル基GPを含み且つ反応性基GRがいくつかの基GAによって構成されるポリスルホンプレポリマーを架橋させることによって得られた乾燥フィルム中にイオン性基−SO3(1/p)Mp+を、次の工程:
・前記の乾燥フィルムを無水溶剤によって膨潤させる工程;
・選択した無水溶剤中のクロロスルホン酸トリメチルシリル又はクロロスルホン酸の無水溶液を調製する工程;
・第1工程において得られた膨潤フィルムを第2工程の際に調製された溶液と接触させる工程;
・前記フィルムを第1工程において用いた純粋な溶剤で洗浄する工程;
・スルホン化されたフィルムを力学的真空下で40〜80℃の範囲の温度において乾燥させる工程;
・前記フィルムを蒸留水中に浸す工程:
を含む方法によって導入する、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
請求項1〜29のいずれかに記載の方法によって得られ、繰返し単位(GA,GR)を含むイオン性基含有架橋ポリマーから成ることを特徴とするフィルム。
【請求項31】
10〜300μmの範囲の厚さを有することを特徴とする、請求項30に記載のフィルム。
【請求項32】
前記架橋ポリマーが相互侵入網目構造を形成することを特徴とする、請求項30又は31に記載のフィルム。
【請求項33】
前記架橋ポリマーが半相互侵入網目構造を形成することを特徴とする、請求項30又は31に記載のフィルム。
【請求項34】
前記イオン性基のカチオンがリチウムイオンである請求項30〜33のいずれかに記載のフィルムの、リチウム電池、スーパーキャパシター又はエレクトロクロミックデバイスの電解質としての使用。
【請求項35】
前記イオン性基のカチオンがプロトン並びにアンモニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、テトラゾリウム、ピリジニウム及びグアニジニウムイオンから選択される請求項30〜33のいずれかに記載のフィルムの、燃料電池用の膜としての使用。
【請求項36】
前記イオン性基のカチオンがプロトン並びにアンモニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、テトラゾリウム、ピリジニウム及びグアニジニウムイオンから選択される請求項30〜33のいずれかに記載のフィルムの、イオン交換膜として又は電気透析膜としての使用。
【請求項37】
請求項1に記載の方法のためのプレポリマーとして用いることができる化合物であって、式(IXb):
【化1】
(ここで、R5は単結合又はアリールエーテル基を表わす)
に相当することを特徴とする、前記化合物。
【請求項38】
請求項37に記載の化合物(IXb)の製造方法であって、
・第1工程において、極性非プロトン性溶剤及びカチオンM+源である弱塩基の存在下で、次式:
【化2】
に相当する4,4’−ジクロロジフェニルスルホンとそれぞれ次式:
【化3】
に相当する過剰量で用いられる4,4’−ジヒドロキシビフェニル及び1,4−ビス(p−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼンの2種のモノマーとを重縮合させることによって次式(IXc):
【化4】
に相当するテレケリックポリスルホンを調製し;
・第2工程において、プレポリマーIXcと次式(X):
【化5】
(ここで、R7はハロゲンである)
に相当する一官能性モノマーとを反応させることによって、前記プレポリマーのフェノキシド末端を変性する:
ことを特徴とする、前記方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2009−516761(P2009−516761A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540660(P2008−540660)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002560
【国際公開番号】WO2007/060321
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(507310949)
【出願人】(507310961)
【出願人】(506369944)サントル ナスィオナル ド ラ ルシェルシュ スィアンティフィク (45)
【出願人】(507001612)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/FR2006/002560
【国際公開番号】WO2007/060321
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(507310949)
【出願人】(507310961)
【出願人】(506369944)サントル ナスィオナル ド ラ ルシェルシュ スィアンティフィク (45)
【出願人】(507001612)
【Fターム(参考)】
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