説明

イオン液体ゲル化剤及びゲル

【課題】イオン液体を少量でゲルを形成できるポリオール誘導体からなるイオン液体ゲル化剤、並びに該ゲル化剤とイオン液体よりなるゲルの提供。
【解決手段】式(1):


(式中、R1は炭素原子数10至20の飽和脂肪族基又は1個の二重結合を持つ炭素原子
数10乃至20の不飽和脂肪族基を表し、R2はアミノ酸が有する置換基を表し、Xは酸
素原子またはNHを表す。)で表されるポリオール誘導体及び薬学的に使用可能な塩から成る事を特徴とするイオン液体ゲル化剤、該ゲル化剤の自己集合化により形成される自己集合体、及び、該ゲル化剤又は自己集合体とイオン液体より成るゲル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン液体をゲル化できるポリオール誘導体系ゲル化剤、又は該ゲル化剤が自己集合化して形成する自己集合体、並びに該ゲル化剤又は自己集合体とイオン液体より構成されるゲルに関する。
【背景技術】
【0002】
強酸由来のアニオンと弱塩基由来のカチオンから形成される塩であるイオン液体(常温溶融塩、イオン性液体とも)は、一般的な塩とは異なり、常温でも液体であることから、水、油(有機溶媒)に次ぐ“第3の液体”として注目を集めている。
イオン液体は、難燃性・不揮発性・イオン伝導性を有し、また数百度の高温でも分解しないといった特性を持つことから、従来の有機溶媒に代わる環境負荷の小さい有機反応溶媒や潤滑剤としての利用、或いは、燃料電池や二次電池の電解質、人工アクチュエータなどへの応用が検討されている。
【0003】
さて燃料電池や二次電池の開発においては、電解質の漏えい防止や、自己放電の抑制等を目的として、従来より種々の電解質ゲルの検討がなされている。また、人工アクチュエータの開発においても、電気伝導性があり且つ伸縮自在な柔軟性を有するゲル素材の検討が為されている。
これらの用途開発研究において検討されてきた従来のゲルの多くは、高分子化合物をベースとするものであり、その種のゲルは、例えば機械的強度を改善するため、一般に、部分的に架橋構造が導入された網目構造体を形成してなる。しかしこの網目構造体は、電気伝導またはイオン伝導を抑制しやすく、また、液浸が困難であるといった課題を残していた。
【0004】
一方、「超分子ゲル」として、低分子化合物を棒状に会合させたゲルやそのためのゲル化剤の研究がなされている。例えば12−ヒドロキシステアリン酸は、食用油等の非水系溶剤のゲル化剤であり、廃油処理剤として実用化されており、また最近では水系溶剤のゲル化剤として、核酸やアミノ酸誘導体などへの適用が検討されている。
かかる状況の下、低分子化合物をベースとするゲル化剤として、水系・非水系溶剤をゲル化し、更にはイオン液体をゲル化する、ポリオール構造を有するゲル化性有機化合物が報告されている(特許文献1)。
一方、界面活性剤や乳化剤として活用されている脂質アミノポリオールも自己集合して自己集合体を形成するが、その構造によってヒドロゲルを形成できるもの(1b〜3b)とできないもの(1a〜3a)があることが報告されている(非特許文献6)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、類似した構造を有する低分子化合物(例:ポリオール化合物)であっても、必ずしもゲル形成能を有するとは限らない。
またイオン液体が有する耐熱性、難燃性、不揮発性といった特性を活かした様々な用途、特に燃料電池や二次電池の電解質への応用において、液漏れや電池の自由放電防止といった課題を解決できる、様々なイオン液体をゲル化できるゲル化剤に対する潜在的な要求があった。
【0006】
本発明は、上記の事情に基づいてなられたものであり、その解決しようとする課題は、各種のイオン液体をゲル化でき、また、イオン液体に対して極めて少量の添加でゲルを形成できる高いゲル化能を有するイオン液体ゲル化剤、並びにイオン液体からなるゲルを提
供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、第1観点として、式(1):
式(1):
【化1】

(式中、R1は炭素原子数10乃至20の飽和脂肪族基又は1個の二重結合を持つ炭素原
子数10乃至20の不飽和脂肪族基を表し、R2は水素原子、炭素原子数1又は2の分枝
鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基、フェニルメチル基、又は−(CH2)n
−Y基(nは1乃至4の数を表し、Yはアミノ基、グアニジノ基、−CONH2基、又は
窒素原子を1乃至3個有し得る5員環若しくは6員環又は5員環と6員環から構成される縮合複素環を表す。)を表し、Xは酸素原子又はNH基を表す。)で表されるポリオール誘導体又はその薬学的に使用可能な塩からなる事を特徴とするイオン液体ゲル化剤に関する。
第2観点として、R2は、水素原子、メチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、
イソブチル基又はフェニルメチル基を表すことを特徴とする、第1観点記載のイオン液体ゲル化剤に関する。
第3観点として、R1は、炭素原子数14乃至18の飽和脂肪族基を表すことを特徴と
する、第1観点記載のイオン液体ゲル化剤に関する。
第4観点として、R1はパルミチル基又はステアリル基を表すことを特徴とする、第3
観点記載のイオン液体ゲル化剤に関する。
第5観点として、第1観点乃至第4観点のうちいずれか一項に記載のイオン液体ゲル化剤の自己集合化により形成される自己集合体に関する。
第6観点として、第1観点乃至第4観点のうちいずれか一項に記載のイオン液体ゲル化剤又は請求項5記載の自己集合体と、イオン液体よりなるゲルに関する。
第7観点として、前記イオン液体が、無機硫酸塩、無機リン酸塩、水酸化無機塩、PF6塩、トリフルオロスルホン酸無機塩、過クロル酸無機塩、BF4無機塩、(CF3SO22N無機塩及び無機コバルト酸塩からなる群から選択される少なくとも一種の無機塩を溶
解させたイオン液体である、第6観点記載のゲルに関する。
第8観点として、前記イオン液体が、Li2SO4、Li2PO4、LiOH、LiPF6
、CF3SO3Li、LiClO4,LiBF4、(CF3SO22NLi及びLiCoO2からなる群から選択される少なくとも一種の無機塩を溶解させたイオン液体である、第6観点記載のゲルに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のイオン液体ゲル化剤は、架橋剤等を用いずに、しかも従来に比べて少量の添加で各種のイオン液体をゲル化させてゲルを形成することができる。
また本発明のイオン液体ゲル化剤は、化粧品や医薬品の添加剤として利用できる高級アルコール又は高級アミン、ポリオール及び天然に存在するアミノ酸より構成されるため生体安全性が高く、しかも二回の還流反応により容易にかつ大量に合成できるため、経済的にも優れた低分子型イオン液体ゲル化剤である。
さらに本発明のイオン液体ゲル化剤は、無機塩が溶け込んだイオン液体においてもゲルを形成することができる。
【0009】
また本発明のイオン液体ゲル化剤は、該ゲル化剤を構成するポリオール誘導体を2種類以上混合して用いても、ゲル化剤としてのゲル形成能を有することが出来る。
さらに、本発明のゲル化剤は、上記式(1)で表されるポリオール誘導体以外に、自己集合体を形成し得る他の各種ペプチド、すなわちN末端を脂肪酸にて修飾されたトリペチドやテトラペプチドを混合しても、それぞれが又は混合して自己集合体を形成することができる。
【0010】
そして本発明のイオン液体ゲルは、イオン液体の種々の特性、すなわち、高耐熱性や難燃性、イオン伝導性を保持したままゲル構造を安定に保つことができるため、このため、燃料電池や二次電池の電解質、人工アクチュエータなどへの応用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1はイオン液体ゲル化剤をイオン液体に投入した場合の自己集合化及びそれに続くゲル化の概念図を示す図である。
【図2】図2は例10で合成した式(j)で表されるポリール誘導体のIRスペクトルを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
前述の特許文献1において開示されたポリオール構造を有するゲル化性有機化合物は、糖アミド、アミノ酸アミド及びエーテル基を基本骨格とし、エーテル基を含む二本の長い疎水性基(アルキル鎖)や、分子中にアミド基を3つ及び水酸基を5つ以上有するという構造を有し、これにより、イオン液体を含む種々の溶剤に対してゲル化性を有すると報告している。しかし、特許文献1には、エーテル基を含む日本の長い疎水性基に代えて、エーテル基を含まない一本の疎水性基を持つポリオール構造の化合物もイオン液体に対してゲル化性能を発揮する点は示唆されていない。
その上、同文献において、ゲル化が確認されたとするイオン液体はN−メチル−N’−メトキシメチルイミダゾリウムブロミド、或いは、N−メチル−N’−メトキシエチルイミダゾリウムブロミドのみであり、ゲル化できるイオン液体が限定されている。しかも上記化合物は構造が非常に複雑であり、煩雑な合成スキームを要する(特許文献1:図1)ため、経済的な観点からも不利である。
本発明者らの鋭意研究により完成したイオン液体ゲル化剤は、高級アルコール又は高級アミン由来の脂肪族長鎖疎水性基と、アミノ酸及びポリオール由来の親水性基とを連結させたポリオール誘導体からなり、その上、それは、種々のイオン液体をゲル化できるゲル化剤であり、すなわち、本発明のゲル化剤化合物とその効果は上記の特許文献1より何ら示唆されない。
以下、さらに本発明を詳細に説明する。
【0013】
[イオン液体ゲル化剤]
本発明のイオン液体ゲル化剤は、下記式(1)で表される構造を有するポリオール誘導体又はその薬学的に使用可能な塩から成り、該ポリオール誘導体は、脂溶性の高い長鎖を有する高級アルコール又は高級アミン由来の部分、アミノ酸由来の部分そしてポリオール(グルコノラクトン)由来の部分より構成される。
【化2】

【0014】
上記式(1)において、高級アルコール由来の部分に含まれるR1は炭素原子数10乃
至20の飽和脂肪族基又は1個の二重結合を持つ炭素原子数10乃至20の不飽和脂肪族基を表す。
好ましくはR1は炭素原子数14乃至18の飽和脂肪族基であり、パルミチル基又はス
テアリル基であることが特に好ましい
【0015】
2は水素原子、炭素原子数1又は2の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキ
ル基、フェニルメチル基、又は−(CH2)n−Y基を表す。
上記−(CH2)n−Y基において、nは1乃至4の数を表し、Yはアミノ基、グアニ
ジノ基、−CONH2基、又は窒素原子を1乃至3個有し得る5員環若しくは6員環又は
5員環と6員環から構成される縮合複素環を表す。
上記炭素原子数1又は2の分枝鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基は、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基又はsec−ブチル基等を表し、より好ましくはメチル基、イソプロピル基、イソブチル基又はsec−ブチル基を表し、特に好ましくはメチル基を表す。
上記−(CH2)n−Y基において、Xは好ましくはアミノ基、ピロール基、イミダゾ
ール基、ピラゾール基又はインドール基を表す。従って、上記−(CH2)n−Y基は、
好ましくは2−アミノエチル基、4−アミノブチル基、4−アミノ−ピロールメチル基、イミダゾールメチル基、ピラゾールメチル基又は3−インドールメチル基を表す
これらの中でも、R2は好ましくは水素原子、メチル基、イソプロピル基、sec−ブ
チル基、イソブチル基、フェニルメチル基であり、イソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基、フェニルメチル基が特に好ましい。
【0016】
Xは酸素原子又はNH基を表し、特に酸素原子であることが好ましい。
【0017】
[ゲル化剤より形成される自己集合体]
本発明のゲル化剤は、後述するイオン液体中に投入されると、式(1)におけるアミノ酸由来の部分並びにポリオール由来の部分が水素結合により分子間非共有結合を形成し、一方、式(1)における高級アルコール又は高級アミン由来の部分が疎水的にパッキングするように自己集合化(或いは自己組織化ともいう)し、自己集合体が形成される。
参考として図1に本発明のゲル化剤を構成するポリオール誘導体の自己集合化及びゲル化の概念図の一例を示す(但し、本発明において、全てのポリオール誘導体が図1に示す自己集合化及びゲル化の形態をとっているとは限らない)。
該ポリオール誘導体分子(a)は疎水性部位である高級アルコール又は高級アミン由来の部分を中心として集合し(b)、自己集合化により自己集合体(c)を形成する。自己集合体の形状は限定されないが、筒状又は板状の形状が挙げられる。
【0018】
[ゲル]
前述の自己集合体が、後述するイオン液体中で形成されると、この自己集合体が三次元網目構造を形成し(例えば図1における(d)参照)、さらに、自己集合体表面の親水性部分(アミノ酸由来部分、ポリオール由来部分)とイオン液体間で非共有結合を形成して
膨潤することにより、イオン液体がゲル化し、イオン液体ゲルが形成される。
【0019】
[イオン液体]
本発明に用いられるイオン液体としては、一般に「イオン液体」として既知のものを使用でき、例えばイミダゾリウム、ピリジニウム、ピペリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム、アンモニウム及びスルホニウムからなる群から選択されるカチオンと、ハロゲン、カルボキシレート、サルフェート、スルホネート、チオシアネート、ニトレート、アルミネート、ボレート、ホスフェート、アミド、アンチモネート、イミド及びメチドからなる群から選択されるアニオンとから構成されるものが挙げられる。
例えば、カチオン種としては、1,3−ジアルキルイミダゾリウムイオン、1,2,3−トリアルキルイミダゾリウムイオン、N−アルキルピリジニウムイオン、N−アルキルピロリジニウム、テトラアルキルアンモニウムイオン、テトラアルキルホスホニウムイオン、トリアルキルスルホニウムイオンなどが挙げられる。
また、アニオン種としては、テトラフルオロボレート(BF4-)イオン、ヘキサフルオロホスフェート(PF6-)イオン、トリフルオロメタンスルホネート(CF3SO3-)イ
オン、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6-)イオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド((CF3SO22-)イオン、ビス(フルオロスルホニル)イミド((FSO22-)イオン、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド((CF3SO23-)イオン、ニトレート(NO3-)イオン、トリフルオロメチルカルボキシレー
ト(CF3CO2-)イオン、カルボキシレート(CH3CO2-)イオン、クロロアルミネート(Al2Cl7-)イオンなどが挙げられる。
【0020】
本発明において、前記イオン液体には無機塩を加えることができ、好ましい無機塩の例としては無機硫酸塩、無機リン酸塩、水酸化無機塩、PF6塩、トリフルオロスルホン酸
無機塩、過クロル酸無機塩、BF4無機塩、(CF3SO22N無機塩又は無機コバルト酸塩が挙げられる。これら無機塩のうち数種を加えても良いが、好ましくは1又は2種である。
より好ましい無機塩としては、Li2SO4、Li2PO4、LiOH、LiPF6、CF3SO3Li、LiClO4,LiBF4、(CF3SO22NLi又はLiCoO2である。
【0021】
本発明のイオン液体ゲル化剤は、不燃性やイオン伝導性といった様々な特性を有するイオン液体において安定なゲルを形成することができる。このため、本発明のイオン液体ゲル化剤及びそれから得られるイオン液体ゲルは、燃料電池や二次電池、色素増感太陽電池の電解質、人工アクチュエータ、電気化学センサ、発光表示装置、衝撃吸収材(例えば、ランニングシューズ、寝具、精密機器や音響装置へ影響する振動抑制、梱包材など)、更に強度、弾性、柔軟性、柔軟性、伸張性、伸縮性を有することより、光学材料、電気電子材料、建築材料、医薬・医療材料、帯電防止剤、光漏れ防止膜、光学部材用粘着剤などの各種産業に幅広く利用することができる。
【0022】
しかも本発明のイオン液体ゲルは低分子化合物(ポリオール誘導体)によって形成されたゲルであるため、該化合物の設定によって、例えば外部刺激応答性によりゾル−ゲル転換するゲルを形成できるなど、高分子鎖の修飾や共重合反応の実施と必要せずとも、様々な機能を容易に付加することが可能である。
【実施例】
【0023】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものでない。
【0024】
例1:式(a)で表されるポリオール誘導体の合成
【化3】

パルミチルアルコール(12.1g,50mmol)、L−ロイシン(6.56g,5
0mmol)をトルエン(300mL)に懸濁させ、p−トルエンスルホン酸一水和物(11.4g,60mmol)を加えて4時間加熱還流した。放冷後、減圧下で半分以下まで濃縮し、クロロホルムで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。
有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、減圧下で濃縮した。得られた残渣をアセトン中に分散させ、濃塩酸を加えることで沈殿させ、桐山ロートにて吸引ろ過を行って沈殿物を得た。得られた沈殿物をアセトンで洗浄した後、クロロホルムで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、減圧下で濃縮し、残渣(14.2g、40mmol)を得た。
このようにして得られた残渣をエタノール(300mL)に溶解させ、D−(+)−グルコノ−1,5−ラクトン(8.91g,50mmol)を加えて5時間加熱還流した。放冷後、減圧下で濃縮し、生じた結晶を1,4−ジオキサンに溶解させ、熱時ろ過を2度行い、得られたろ液を減圧下で濃縮し、真空乾燥して、上記式(a)で表されるポリオール誘導体(17.7g,33mmol,収率66.2%)を白色固体として得た。得られたポリオール誘導体についてNMR及びIRスペクトルデータを測定した。
【0025】
1H−NMR(500MHz DMSO−d6 δppm):7.81(d,1H),5.34(d,1H),4.50(d,1H)、4.39(d,1H),4.32(m,3H),4.05(m,3H),3.87(m,2H),3.57(m,1H),3.46(m,2H),1.56(m,5H),1.24(m,26H),0.85(m,9H).
・IR(nujol):3396cm-1,2918cm-1,2850cm-1,1736cm-1,1657cm-1,1531cm-1,1469cm-1
【0026】
例2:式(b)で表されるポリオール誘導体の合成
【化4】

パルミチルアルコール(12.1g,50mmol)、L−バリン(5.86g,50mmol)をトルエン(300mL)に懸濁させ、p−トルエンスルホン酸一水和物(11.4g,60mmol)を加えて4時間加熱還流した。放冷後、減圧下で半分以下まで濃縮し、クロロホルムで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。
有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、減圧下で濃縮した。得られた残渣をアセトン中に分散させ、濃塩酸を加えることで沈殿させ、桐山ロートにて吸引ろ過を行って沈殿物を得た。得られた沈殿物をアセトンで洗浄した後、クロロホルムで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、減圧下で濃縮し、残渣(11.65g、34mmol)を得た。
このようにして得られた残渣をエタノール(200mL)に溶解させ、D−(+)−グルコノ−1,5−ラクトン(7.13g,40mmol)を加えて5時間加熱還流した。放冷後、減圧下で濃縮し、生じた結晶を1,4−ジオキサンに溶解させ、熱時ろ過を2度行い、得られたろ液を減圧下で濃縮し、真空乾燥して、上記式(b)で表されるポリオール誘導体(15.6g,30mmol,収率60.0%)を白色固体として得た。得られたポリオール誘導体についてNMR及びIRスペクトルデータを測定した。
【0027】
1H−NMR(500MHz DMSO−d6 δppm):7.59(d,1H),5.45(d,1H),4.53(d,1H),4.43(d,1H),4.37(d,1H),4.33(t,3H),4.23(m,1H),4.09(m,2H),4.04(m,1H),3.89(m,2H),3.57(m,1H),3.48(m,1H),2.05(m,1H),1.57(m,2H),1.24(m,26H),0.86(m,9H).
・IR(nujol):3400cm-1,3350cm-1,2981cm-1,2851cm-1,1735cm-1,1659cm-1,1533cm-1,1266cm-1
【0028】
例3:式(c)で表されるポリオール誘導体の合成
【化5】

パルミチルアルコール(12.1g,50mmol),L−フェニルアラニン(8.26g,50mmol)をトルエン(300mL)に懸濁させ、p−トルエンスルホン酸一水和物(11.4g,60mmol)を加えて4時間加熱還流した。放冷後、減圧下で半分以下まで濃縮し、クロロホルムで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。
有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、減圧下で濃縮した。得られた残渣をアセトン中に分散させ、濃塩酸を加えることで沈殿させ、桐山ロートにて吸引ろ過を行って沈殿物を得た。得られた沈殿物をアセトンで洗浄した後、クロロホルムで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、減圧下で濃縮し、残渣(15.2g、39mmol)を得た。
このようにして得られた残渣をエタノール(200mL)に溶解させ、D−(+)−グルコノ−1,5−ラクトン(8.91g,50mmol)を加えて5時間加熱還流した。放冷後、減圧下で濃縮し、生じた結晶を1,4−ジオキサンに溶解させ、熱時ろ過を2度行い、得られたろ液を減圧下で濃縮し、真空乾燥して、上記式(c)で表されるポリオール誘導体(18.54g,33mmol,収率66.0%)を白色固体として得た。得られたポリオール誘導体についてNMR及びIRスペクトルデータを測定した。
【0029】
1H−NMR(500MHz DMSO−d6 δppm):7.79(d,1H),7.27(m,2H),7.18(m,3H),5.43(d,1H),4.54(m,2H),4.43(d,1H),4.34(t,2H),4.00(m,1H),3.89(m,1H),3.57(m,H),3.47(m,2H),3.03(d,2H),1.48(m,2H),1.24(m,26H),0.85(t,3H).
・IR(nujol):3289cm-1,2918cm-1,2850cm-1,1744cm-1,1651cm-1,1529cm-1,1360cm-1
【0030】
例4:式(d)で表されるポリオール誘導体の合成
【化6】

パルミチルアルコール(41.1g,170mmol)、グリシン(12.8g,170mmol)をトルエン(500mL)に懸濁させ、p−トルエンスルホン酸一水和物(40.25g,212mmol)を加えて5時間加熱還流した。放冷後、減圧下で濃縮し、クロロホルムで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。
有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、減圧下で濃縮した。得られた残渣をアセトン中に分散させ、濃塩酸を加えることで沈殿させ、桐山ロートにて吸引ろ過を行って沈殿物を得た。得られた沈殿物をアセトンで洗浄した後、クロロホルムで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過後、減圧下で濃縮した。
このようにして得られた化合物(48.0g,158mmol)をエタノール(750mL)に溶解させ、D−(+)−グルコノ−1,5−ラクトン(31.04g、174mmol)を加えて5時間加熱還流した。放冷後、減圧下で濃縮し、生じた結晶を1,4−ジオキサンに溶解させ、熱時ろ過を2度行い、得られたろ液を減圧下で濃縮し、真空乾燥して、上記式(d)で表されるポリオール誘導体(35.00g,76.6mmol,収率45.0%)を白色固体として得た。得られたポリオール誘導体についてNMR及びIRスペクトルデータを測定した。
【0031】
1H−NMR(500MHz DMSO−d6 δppm):8.00(t,J=6.0Hz,1H),5.49(d,J=4.9Hz,1H),4.54(d,J=5.0Hz,1H)、4.47(d,J=5.5Hz,1H),4.36(t,J=7.1Hz,1H),4.34(t,J=5.7Hz,1H),4.03(m,3H),3.90(m,2H),3.79(m,1H),3.57(m,1H),3.49(m,2H),1.56(m,2H),1.24(m,26H),0.86(t,J=6.9Hz,3H).
・IR(nujol):3511cm-1,2918cm-1,2849cm-1,1726cm-1,1635cm-1,1362cm-1,1239cm-1
【0032】
例5:式(e)で表されるポリオール誘導体の合成
【化7】

オレイルアルコール(20.0g,74.5mmol)、グリシン(6.2g,82.6mmol)をトルエン(400mL)に懸濁させ、p−トルエンスルホン酸一水和物(23.6g,124mmol)を加えて4時間加熱還流した。放冷後、減圧下で半分以下の量まで濃縮し、塩化メチレンで希釈後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。
有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過後、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル200g,メタノール:塩化メチレン=0:100〜1:30)にて精製し、目的化合物(17.9g,55.0mmol,収率6
7%)を茶色液体として得た。
このようにして得られた化合物(17.9g,55.0mmol)をエタノール(350mL)に溶解し、D−(+)−グルコノ−1,5−ラクトン(9.8g,55.0mmol)を加えて5時間加熱還流した。放冷後、室温で一晩ゆっくり攪拌し、生じた結晶をろ過、メタノールで洗浄、乾燥して式(e)で表されるポリオール誘導体(17.5g,34.7mmol,収率63%)を白色結晶として得た。得られたポリオール誘導体についてNMR及びFT−MSスペクトルデータを測定した。
【0033】
1H NMR(500MHz DMSO−d6 δppm):7.99(1H,t,J=5.8Hz 1NH Gly),5.49(1H,d,J=5.2Hz,−OH),5.
4−5.3(2H,m,−CH=CH−),4.54(1H,d,J=5.2Hz,−OH),4.47(1H,d,J=5.8Hz,−OH),4.37(1H,d,J=7.4Hz,−OH),4.34(1H,t,J=5.5Hz,−CH2−OH),4.08
−4.01(3H,m,−CH(OH)−,−CH2O−),3.94−3.89(2H
,m,−CH(OH)−,α−CH Gly),3.77(1H,m,α−CH Gly),3.57(1H,m,−CH2−OH),3.52−3.44(2H,m,−CH(
OH)−×2),3.38(1H,m,−CH2−OH),2.0−1.9(4H,m,
−CH2−CH=CH−CH2−),1.58−1.52(2H,m,−CH2−),1.
34−1.20(22H,m,−CH2−),0.85(3H,t,J=7.1Hz,C
3
・FT−MS +m/z calc.for C26H50O8N1 [M+H]+504.35364,found 504.3541
【0034】
例6:式(f)で表されるポリオール誘導体の合成
【化8】

オクタデカノール(7.9g,29.2mmol)、グリシン(2.0g,26.6mmol)をトルエン(80mL)に懸濁させ、p−トルエンスルホン酸一水和物(6.6g,34.7mmol)を加えて18時間加熱還流した。放冷後、塩化メチレンで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過後、減圧下で濃縮した。得られた残渣に4M 塩酸ジオキサン溶液(20mL)を加え、減圧下で濃縮後、生じた結晶をろ過し、酢酸エチルで洗浄した。結晶を再度塩化メチレンに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過、減圧下での濃縮を経て、目的化合物(5.5g,16.8mmol,収率63%)を白色固体として得た。
上記のようにして得られた化合物(5.5g,16.8mmol)をエタノール(100mL)に懸濁し、D−(+)−グルコノ−1,5−ラクトン(3.0g,16.8mmol)を加えて5時間加熱還流した。放冷後、室温で一晩ゆっくり攪拌し、生じた結晶をろ過後、塩化メチレンで洗浄し、乾燥して式(f)で表されるポリオール誘導体(6.1g,12.1mmol,収率72%)を白色結晶として得た。得られたポリオール誘導体についてNMR及びFT−MSスペクトルデータを測定した。
【0035】
1H NMR(500MHz DMSO−d6 δppm):7.92(1H,t,J=5.8Hz 1NH Gly),5.40(1H,d,J=4.9Hz,−OH),4.
46(1H,d,J=5.2Hz,−OH),4.40(1H,d,J=5.5Hz,−
OH),4.30(1H,d,J=7.0Hz,−OH),4.27(1H,t,J=5.5Hz,−CH2−OH),4.08−4.02(3H,m,−CH(OH)−,−C
2O−),3.94−3.88(2H,m,−CH(OH)−,α−CH Gly),
3.79(1H,m,α−CH Gly),3.58(1H,m,−CH2−OH),3
.52−3.44(2H,m,−CH(OH)−×2),3.38(1H,m,−CH2
−OH),1.60−1.54(2H,m,−CH2−),1.35−1.20(30H
,m,−CH2−),0.86(3H,t,J=7.1Hz,CH3
・FT−MS +m/z calc.for C26H52O8N1 [M+H]+506.36929,found 506.3696
【0036】
例7:式(g)で表されるポリオール誘導体の合成
【化9】

ステアリルアミン(200mg,0.74mmol)、N−Boc−グリシン(156mg,0.89mmol)を塩化メチレン(4mL)に懸濁させ、WSC(水溶性カルボジイミド:185mg,0.96mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(126mL,0.74mmol)を加えて4時間攪拌した。塩化メチレンで希釈後、1M 塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した。
有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過後、減圧下で濃縮した。得られた残渣を塩化メチレン(4mL)に溶解し、4M 塩酸ジオキサン溶液(3mL)を加えて3時間攪拌し、生じた結晶をろ過した後、塩化メチレンで洗浄した。得られた結晶を再度塩化メチレンに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過、減圧下での濃縮を経て、目的化合物(106mg,0.32mmol,収率43% for 2steps)を白色結晶として得た。
上記のようにして得られた化合物(100mg,0.31mmol)をエタノール(5mL)に溶解し、D−(+)−グルコノ−1,5−ラクトン(55mg,0.31mmol)を加えて3時間加熱還流した。放冷後、室温で一晩ゆっくり攪拌し、生じた結晶をろ過後、メタノールで洗浄、乾燥して式(g)で表されるポリオール誘導体(110mg,0.22mmol,収率70%)を白色結晶として得た。得られたポリオール誘導体についてNMR及びFT−MSスペクトルデータを測定した。
【0037】
1H NMR(500MHz DMSO−d6 δppm):7.94(1H,t,J=5.8Hz 1NH Gly),7.73(1H,t,J=5.8Hz,−NH−),5
.60(1H,d,J=4.6Hz,−OH),4.63(1H,d,J=6.2Hz,−OH),4.59(1H,d,J=5.5Hz,−OH),4.54(1H,d,J=7.0Hz,−OH),4.36(1H,t,J=5.5Hz,−CH2−OH),4.
05(1H,m,−CH(OH)−),3.92(1H,m,−CH(OH)−),3.73(1H,m,α−CH Gly),3.64−3.42(4H,m,α−CH Gly,−CH2−OH,−CH(OH)−×2),3.37(1H,m,−CH(OH)−
),3.10−2.96(2H,m,−CH2NHCO−),1.42−1.32(2H
,m,−CH2−),1.30−1.20(30H,m,−CH2−),0.85(3H,t,J=7.1Hz,CH3
・FT−MS +m/z calc.for C26H53O7N2 [M+H]+50
5.38528,found 505.3856
【0038】
例8:式(h)で表されるポリオール誘導体の合成
【化10】

ウンデカノール(304mL,1.47mmol)、グリシン(100mg,1.33mmol)をトルエン(2mL)に懸濁させ、p−トルエンスルホン酸一水和物(330mg,1.73mmol)を加えて3時間加熱還流した。放冷後、塩化メチレンで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、減圧下で濃縮した。得られた残渣に4M 塩酸ジオキサン溶液(3mL)を加え、減圧下で濃縮後、生じた結晶をろ過し、酢酸エチルで洗浄した。結晶を再度塩化メチレンに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で分液し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過、減圧下での濃縮を経て、目的化合物(259mg,1.13mmol,収率85%)を薄黄色液体として得た。
上記のようにして得られた化合物(212mg,0.92mmol)をエタノール(4mL)に溶解し、D−(+)−グルコノ−1,5−ラクトン(165mg,0.92mmol)を加えて3時間加熱還流した。放冷後、室温で一晩ゆっくり攪拌し、生じた結晶をろ過、塩化メチレンで洗浄、乾燥して式(h)で表されるポリオール誘導体(268mg,0.66mmol,収率71%)を白色結晶として得た。得られたポリオール誘導体についてNMR及びFT−MSスペクトルデータを測定した。
【0039】
1H NMR(500MHz DMSO−d6 δppm):8.00(1H,t,J=5.8Hz 1NH Gly),5.49(1H,d,J=5.2Hz,−OH),4.
54(1H,d,J=5.2Hz,−OH),4.48(1H,d,J=5.8Hz,−OH),4.38(1H,d,J=7.3Hz,−OH),4.34(1H,t,J=5.8Hz,−CH2−OH),4.08−4.02(3H,m,−CH(OH)−,−C
2O−),3.94−3.88(2H,m,−CH(OH)−,α−CH Gly),
3.77(1H,m,α−CH Gly),3.58(1H,m,−CH2−OH),3
.52−3.44(2H,m,−CH(OH)−×2),3.38(1H,m,−CH2
−OH),1.60−1.54(2H,m,−CH2−),1.35−1.20(16H
,m,−CH2−),0.86(3H,t,J=7.1Hz,CH3
・FT−MS +m/z calc.for C19H38O8N1 [M+H]+408.25974,found 408.2589
【0040】
例9:式(i)で表されるポリオール誘導体の合成
【化11】

オレイルアルコール(330mg,1.23mmol)、L−アラニン(100mg,1.12mmol)をトルエン(4mL)に懸濁させ、p−トルエンスルホン酸一水和物(278mg,1.46mmol)を加えて3時間加熱還流した。放冷後、塩化メチレンで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過後、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル2g,メタノール:塩化メチレン=0:100〜1:30)にて精製し、目的化合物(358mg,1.06mmol,収率95%)を茶色シロップ
として得た。
このようにして得られた化合物(304mg,0.90mmol)をエタノール(8mL)に溶解させ、D−(+)−グルコノ−1,5−ラクトン(161mg,0.90mmol)を加えて3時間加熱還流した。放冷後、減圧下で濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル6g,メタノール:塩化メチレン=0:100〜1:50〜1:30)にて精製し、式(i)で表されるポリオール誘導体(116mg,0.22mmol,収率25%)を白色結晶として得た。得られたポリオール誘導体についてNMR及びFT−MSスペクトルデータを測定した。
【0041】
1H NMR(500MHz DMSO−d6 δppm):7.90(1H,d,J=7.3Hz 1NH Ala),5.39(1H,d,J=5.5Hz,−OH),5.
38−5.3(2H,m,−CH=CH−),4.53(1H,d,J=5.2Hz,−OH),4.44(1H,d,J=5.8Hz,−OH),4.38−4.25(3H,m,−OH,−CH2−OH,α−CH Ala),4.10−3.98(3H,m,−
CH(OH)−,−CH2O−),3.89(1H,m,−CH(OH)−),3.58
(1H,m,−CH2−OH),3.52−3.44(2H,m,−CH(OH)−×2
),2.0−1.9(4H,m,−CH2−CH=CH−CH2−),1.60−1.52(2H,m,−CH2−),1.34−1.20(25H,m,−CH2−,CH3 Al
a),0.85(3H,t,J=7.1Hz,CH3
*ただし、−CH2−OHの1H分は、3.3ppm水ピーク中に含む。
・FT−MS +m/z calc.for C27H52O8N1 [M+H]+518.36929,found 518.3699
【0042】
例10:式(j)で表されるポリオール誘導体の合成
【化12】

例1において、L−ロイシンの代わりにL−イソロイシン(6.56g,50mmol)を使用した以外は、例1と同様の手順を用いて上記式(j)で表されるポリオール誘導体(収率49.5%)を得た。得られたポリオール誘導体についてNMR及びIRスペクトル測定及び元素分析測定を行った。なお、IRスペクトルデータを図2に示す。
【0043】
1H NMR(500MHz DMSO−d6 δppm):7.60(d,1H),5.45(d,1H),4.53(d,1H),4.44(d,1H),4.38(d,1H),4.31(m,2H),4.09(m,2H),4.03(m,H),3.88(
m,1H),3.55(m,1H),3.47(m,2H),3.36(m,1H),1.81(m,1H),1.57(m,2H),1.40(m,1H),1.24(m,26H),0.85(m,9H)
・元素分析:Anal. Calcd for C285518:C,63.0;H,10.4;N,2.63. Found:C,62.8;H,10.4;N,2.4.
【0044】
実施例1:イオン液体のゲル化の評価
ゲル化剤として上記例2で合成された式(b)で表されるポリオール誘導体を用い、スクリュー管(マルエムNo1、(株)マルエム製)中で、表1に示す各イオン液体に対して、ゲル化剤を適当量添加し、ヒートブロック恒温糟(日本ジェネティクス(株)製)で
、100℃以上となるように加熱した後、室温に24時間放置した。
溶液の流動性が失われて、スクリュー管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を「ゲル化(○)」と判定した。得られた結果を表1に示す。
なお、以下の実施例において使用したイオン液体(カチオン種・アニオン種)は次の通りである。
<カチオン種>
Emim:1−エチル−3−メチル−イミダゾリウムイオン
Bmim:1−ブチル−3−メチル−イミダゾリウムイオン
Hmim:1−ヘキシル−3−メチル−イミダゾリウムイオン
Bpyr:N−ブチルピリジニウムイオン
<アニオン種>
TFSI:ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオン
CF3SO3:トリフルオロメタンスルホネートイオン
【0045】
【表1】

【0046】
表1に示すように、本発明のイオン液体ゲル化剤は、何れのイオン液体においても0.4wt%、0.5wt%又は0.8wt%濃度でゲル化が認められた。
【0047】
実施例2:イオン液体及びイオン液体よりなるゲルの電気伝導度測定
スクリュー管(マルエムNo1、(株)マルエム製)中で、表2に示す3種のイオン液体に、ゲル化剤として上記例2で合成された式(b)で表されるポリオール誘導体を加え、ヒートブロック恒温糟(日本ジェネティクス(株)製)で、100℃以上となるように加熱した後、室温に24時間放置し、イオン液体ゲルを作製した。
さらに、イオン液体:[Bmim][CF3SO3]については、イオン液体に対してLiCoO2を0.1wt%加えたものについても、ゲル化剤(式(b)で表されるポリオ
ール誘導体)を加え、同様にイオン液体ゲルを作製した。
3種のイオン液体、並びに作製したイオン液体ゲル(4種)について、インピーダンスメーターを用いて、下記手順により電気伝導度を測定した。
得られた結果を表2に示す。
【0048】
・電気伝導度測定手順
〈測定機器〉
日置電機(株) HIOKI 3532−80 CHEMICAL IMPEDANCE
METER
〈測定手順〉
1)測定容器内で試料を作製する(試料の量は1mg程度)。
2)測定機器の周波数特性を設定し、2本の電極を測定機器と接続し、電極の先端部分(
約6mm×5mm)を試料中に浸して測定を開始する。
3)電極と試料の接触面積をA[cm2]、電極間の距離a[cm]、抵抗をR[Ω]と
し、<伝導率σ[S/cm]=a/(A×R)>の式より電気伝導率を算出する
【0049】
【表2】

【0050】
表2に示すように、本発明のゲル化剤を用いて得られたイオン液体ゲルの電気伝導率は、イオン液体の電気伝導度率を大きく低下させることなく、ほぼ同じ値を示した。
【0051】
実施例3:種々のゲル化剤を用いたイオン液体のゲル化試験
ゲル化剤として上記例1〜4及び例10で合成された式(a)〜(d)及び式(j)で表されるポリオール誘導体を用い、スクリュー管(マルエムNo1、(株)マルエム製)中で、表3に示す各イオン液体に対してゲル化剤を適当量添加し、ヒートブロック恒温糟(日本ジェネティクス(株)製)で、100℃以上となるように加熱した後、室温に24時間放置した。
溶液の流動性が失われて、スクリュー管を倒置しても溶液が流れ落ちない状態を「ゲル化(○)」と判定した。得られた結果を表3に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
表3に示すように、本発明のイオン液体ゲル化剤は、種々のイオン液体においてもゲル化が認められた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0054】
【特許文献1】特開2002−265428号公報
【非特許文献】
【0055】
【非特許文献1】M.スズキ、S.オーワ、H.シライ及びK.ハナブサ、テトラヘドロン,63(2007)7302−7308(M.Suzuki, S.Owa, H.Shirai and Hanabusa, Tetrahedron 63 (2007) 7302-7308)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】

(式中、R1は炭素原子数10乃至20の飽和脂肪族基又は1個の二重結合を持つ炭素原
子数10乃至20の不飽和脂肪族基を表し、R2は水素原子、炭素原子数1又は2の分枝
鎖を有し得る炭素原子数1乃至4のアルキル基、フェニルメチル基、又は−(CH2)n
−Y基(nは1乃至4の数を表し、Yはアミノ基、グアニジノ基、−CONH2基、又は
窒素原子を1乃至3個有し得る5員環若しくは6員環又は5員環と6員環から構成される縮合複素環を表す。)を表し、Xは酸素原子又はNH基を表す。)で表されるポリオール誘導体又はその薬学的に使用可能な塩からなる事を特徴とするイオン液体ゲル化剤。
【請求項2】
2は、水素原子、メチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、イソブチル基又はフ
ェニルメチル基を表すことを特徴とする、請求項1記載のイオン液体ゲル化剤。
【請求項3】
1は、炭素原子数14乃至18の飽和脂肪族基を表すことを特徴とする、請求項1記載
のイオン液体ゲル化剤。
【請求項4】
1はパルミチル基又はステアリル基を表すことを特徴とする、請求項3記載のイオン液
体ゲル化剤。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載のイオン液体ゲル化剤の自己集合化により形成される自己集合体。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のうちいずれか一項に記載のイオン液体ゲル化剤又は請求項5記載の自己集合体と、イオン液体よりなるゲル。
【請求項7】
前記イオン液体が、無機硫酸塩、無機リン酸塩、水酸化無機塩、PF6塩、トリフルオロ
スルホン酸無機塩、過クロル酸無機塩、BF4無機塩、(CF3SO22N無機塩及び無機コバルト酸塩からなる群から選択される少なくとも一種の無機塩を溶解させたイオン液体である、請求項6記載のゲル。
【請求項8】
前記イオン液体が、Li2SO4、Li2PO4、LiOH、LiPF6、CF3SO3Li、
LiClO4,LiBF4、(CF3SO22NLi及びLiCoO2からなる群から選択される少なくとも一種の無機塩を溶解させたイオン液体である、請求項7記載のゲル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−236328(P2011−236328A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108780(P2010−108780)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】