説明

イオン測定装置

【課題】イオンの量を精度良く検出することが可能なイオン測定装置を提供する。
【解決手段】筐体の空気取入口から筐体内の空気通路にイオンを含む空気を吸い込み、空気通路に配置されたイオン検出電極により空気中に含まれるイオン量を検出するとき、合成樹脂製の筐体に発生しやすい静電気を帯電防止剤や導電層により未然に防ぎ、または発生した静電気を導電層より導体である把持部から人体を通して外部に放出するので、イオンの量を精度良く検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中に含まれるイオンの量を検出するイオン測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イオン発生装置から室内空間に放出されたイオンの量を測定し、イオンの発生状況をチェックするイオン測定装置として特許文献1に示すものが知られている。
【0003】
このイオン測定装置は、合成樹脂製の略直方体状の筐体の表面に、2つの検出電極と、4つの発光ダイオードとから表示装置とを備え、2つの検出電極のうちの一方の検出電極にプラスの電圧を印加して、プラスと逆極性の電荷を帯びたマイナスイオンを選択的に捕獲し、他方の検出電極にマイナスの電圧を印加して、マイナスと逆極性の電荷を帯びたプラスイオンを選択的に捕獲している。
【0004】
検出電極から捕獲されたイオンの個数に応じた電圧が出力されるので、その出力された電圧に基づいて演算手段によりイオンの量を演算し、表示装置の4つの発光ダイオードの点灯の組み合わせによって、捕獲されたイオンの量を段階的に表示するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−205274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種のイオン測定装置において、装置の外郭を構成する筐体は製品設計を容易にするため合成樹脂により構成されることが多い。一方、検出電極では、その検出精度を上げるため、筐体や他の構成部材と非接触になるように所定の間隔をおいて配置され、かつ、電気絶縁体を介して筐体に保持されるようになっている。
【0007】
しかし、イオン測定装置において、筐体が合成樹脂であるため、静電気が発生しやすくなり、特に、送風により空気を筐体側に接触させると、静電気が発生しやすくなる。そのため、たとえ、検出電極と筐体とが絶縁体により非接触状態を保つ構造になっていたとしても、合成樹脂製の筐体側に静電気が蓄えられ、検出電極に悪い影響を与え、イオンの測定精度を低下させる原因になっている。
【0008】
本発明は、上記に鑑み、合成樹脂製の筐体を用いてもイオンの量を精度良く測定することができるイオン測定装置の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明では、合成樹脂製の筐体に形成された空気取入口から筐体内の空気通路にイオンを含む空気を導入してイオン検出電極により空気に含まれるイオン量を検出するイオン測定装置であって、前記筐体にイオン検出に影響を及ぼす静電気の発生を抑制し、発生した静電気を除去する静電気抑制手段が設けられたことを特徴とする。
【0010】
上記構成によると、静電気抑制手段により、イオン検出に影響を及ぼす静電気の発生を抑制し、発生した静電気を除去するので、静電気が発生しやすい合成樹脂製の筐体であっても、静電気による測定精度の低下を抑えることができる。
【0011】
検出電極は、筒状の電極と、その中心に配置された線状の電極とを備えているので、板状の電極を用いてイオンを検出する場合に比べて、イオンの検出面積を大きくすることができる。このとき、検出電極の両端部は電気絶縁性の支持部を介して筐体に支持されているので、静電気が発生しやすい筐体と検出電極とは確実に電気絶縁することができる。
【0012】
支持部は、電極の両端外周面に嵌合されて電極を保持する保持リングと、該保持リングの径方向に差し渡されて線電極の両端を保持する差渡片とから構成すると、筒状の電極と線状の電極とを一度に保持することができる。なお、支持部としては、電気絶縁性に優れたフッ素樹脂系の素材を使用すれば、軽量かつ優れた電気絶縁性を発揮することができる。
【0013】
また、静電気抑制手段は、筐体内側に形成され、前記検出電極と非接触の内側導電層と、筐体外部に設けられ、前記内側導電層と電気的に導通する外側導電層とを含む。
【0014】
上記構成によると、たとえ、筐体の内部に静電気が発生したとしても筐体外部の外側導電層に導電体(人体を含む)が接触すれば、導電体を通して静電気が外部に逃げるので、検知精度の低下を回避することができる。
【0015】
この場合の内側導電層および/または外側導電層は金属の表面処理膜を形成する。例えば、金属メッキ層あるいは金属蒸着層である。これにより、薄膜の導電層を形成することができる。
【0016】
その他の静電気抑制手段としては、筐体を形成する合成樹脂に帯電防止剤を添加することが行われる。帯電防止剤の添加は、帯電防止剤を樹脂素材に練込む、帯電防止剤を樹脂表面に塗布する、あるいは帯電防止剤をコーティングしたフィルムを樹脂表面に貼り付ける等がある。
【0017】
なお、筐体の大きさは、導電体(人体を含む)から静電気を逃がすために、ハンディタイプのものが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
以上のとおり、合成樹脂製の筐体の空気取入口から筐体内の空気通路にイオンを含む空気を吸い込み、空気通路に配置されたイオン検出電極により空気中に含まれるイオン量を検出するとき、合成樹脂製の筐体に発生しやすい静電気を未然に防ぎ、または発生した静電気を除去するので、イオンの量を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態を示すイオン測定装置の外観斜視図である。
【図2】イオン測定装置の分解斜視図である。
【図3】イオン発生装置の上面筐体部を取り除いて内部を示す断面図である。
【図4】イオン発生装置の中央切断断面を示す側面断面図である。
【図5】図4の斜視図である。
【図6】イオン測定装置のブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のイオン測定装置は、筐体1に形成された空気取入口2から筐体内の空気通路3にイオンを含む空気を導入して、イオン検出電極4,5により空気中に含まれるイオンの量を検出するもので、合成樹脂製の前記筐体1に、イオン検出に影響を及ぼす静電気の発生を未然に防止し、発生した静電気を除去する静電気抑制手段6が設けられたものである。
【0021】
筐体1は、製品設計を容易にするため合成樹脂製とされている。例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)により形成される。ABS樹脂は、剛性、硬度、加工性、耐衝撃性、曲げ疲労性などの機械的特性のバランスに優れている。
【0022】
筐体1は、断面コ字形の上面筐体部1Aと同じく断面コ字形の下面筐体部1Bとが、その開放面を互いに対向させて接合し、筒状に形成すると共に、その筒体の一側に、空気取入口2が形成された空気取入側キャップ7を嵌合し、また、他側に、排気口8が形成された排気側キャップ9を嵌合することで、全体として直方体形状に形成される。
【0023】
筐体1の大きさは、測定したい空間のイオンの量を測定するため、持ち運び可能なハンディタイプの大きさに形成されている。例えば、筐体1は、縦60mm〜150mm、横150mm〜300mm、高さが20mm〜50mm程度に設定される。
【0024】
筐体内部の下面筐体部1Bには、図3に示すように、左右両側のキャップ7,9間の中央位置に仕切受け10が形成され、この仕切受け10と前記空気取入側キャップ7に形成された電極受け11との間でイオン検出電極4,5を支持するようになっている。
【0025】
イオン検出部12は、検出電極4,5とオペアンプ13とを備えている。検出電極は、筒状の電極4と、その中心に配置された線状の電極5とを備えている。線状電極5の周囲に筒状の電極4を配置したので、イオンの量を検出する検出面積を大きくすることができる。
【0026】
筒状の電極4は、その両端部が電気絶縁性の保持リング15、16を介して前記仕切受け10と電極受け11にそれぞれ支持されている。保持リング15,16は、リング状に形成されて筒状の電極4の両端外周面に嵌合され、筒状の電極4を保持するようにしている。また、保持リング15,16の径方向には差渡片17が差し渡し形成され、その中心部の孔に線電極5の両端が挿入支持されている。この保持リング15,16と差渡片17とにより、検出電極を支持する支持部が構成される。
【0027】
保持リング15,16及び差渡片17は、四フッ化エチレン樹脂(PTFE:ポリテトラフルオロエチレン)から一体的に形成されている。PTFEは合成樹脂の中で最も優れた電気絶縁性を有し、摩擦係数も最小である。
【0028】
保持リング15,16は、空気取入れ側の電極受け11と中央側の仕切受け10に夫々嵌合支持されている。そのため、保持リング自体が、その高い電気絶縁性のため、筒状の電極4と接触しても電気的に絶縁して筐体1側への導通を遮断するため、イオンの測定精度を高めることができる。
【0029】
空気取入れキャップ7には、筒状の電極4の開口に対向して空気取入口2が形成されている。空気取入口2の前面にはダストカバー18が着脱自在に設けられ、空気中の塵や埃などが筐体内の空気通路3中に入り込むのを防止している。
【0030】
一方、排気側キャップ9には、その中央部に排気口8が形成されている。排気口8はスリット状に形成され、筐体内の空気通路3への塵埃の侵入を極力抑えるようになっている。
【0031】
排気側キャップ9の裏面には排気口8の内側で支持枠20が形成され、この支持枠20に排気ファン21が嵌め込み設置されている。排気ファン21は、例えば、軸流ファンから構成される。
【0032】
筐体1内では、排気ファン21の駆動により、空気取入側キャップ7の空気取入口2からイオンを含む空気を取り入れ、イオン検出部12で空気中に含まれるイオンの量を検出し、取り入れた空気を下流側の排気口8から外部に放出する空気通路3が形成されている。
【0033】
なお、排気ファン21の駆動力は、計測する室内空間の空気を筐体内で計測するためのものであるので、空気取入口2から空気通路3に取り込む吸引力は低いもので十分である。
【0034】
次に、下面筐体部1Bには、検出電極4,5に隣接してオペアンプ13が設けられる。オペアンプ13は、図2に示すアンプ基板22に搭載される。アンプ基板22は、検出電極4,5に隣接する矩形のシールドケース23に収納され、シールドカバー24によってシールドされている。検出電極の線状電極5および筒状の電極4は、アンプ基板22にリード線を介して電気的に接続されている。アンプ基板22は、図2に示すメイン基板25にリード線を介して電気的に接続される。
【0035】
また、下面筐体部1Bの裏面側には、電源としてのバッテリ26を収容する凹状の収容部27が形成されており、この収容部27が下面筐体部の内側に突出するように設けられている。このバッテリ収容部27にはバッテリカバー28が着脱自在に設けられている。なお、電源はバッテリのみならず、ACアダプタを介して直流電源を供給するDCジャックも付設するようにすればよい。
【0036】
前記メイン基板25には、図6に示すように、マイクロコンピュータから構成される測定制御部30および複数の発光ダイオード31a(LED)からなる表示部31が搭載されている。メイン基板25は、前記アンプ基板22を収容するシールドケース23および前記バッテリ収容部27を覆うように配置され、下面筐体部1Bおよび上面筐体部1Aの内側から突出する支持ピン33によって挟み込まれるように支持される。
【0037】
上面筐体部1Aには、表示窓34が貫通され、表面側にイオン量を段階的に表示する表示シート35が貼り付けられる。
【0038】
空気取入側キャップ7には、図3に示すように、イオン検出電極4,5をオン・オフし、また、検出イオンの正負の種類を切換え可能な運転・切換えスイッチ37が設けられている。
【0039】
また、前記静電気抑制手段6は、静電気が発生しやすい合成樹脂から発生した静電気を外部に逃がすように設定されている。静電気を外部に逃がすため、導電体(人体を含む)を通じて静電気を逃がすように工夫されている。
【0040】
すなわち、静電気抑制手段6は、筐体内側に形成された、検出電極4,5と非接触の内側導電層40と、前記内側導電層40と電気的に導通する外側導電層41とを含み、外側導電層41は、使用者が筐体1を把持する把持部42に設けられている。換言すると、外側導電層41を筐体1の把持部42に形成し、かつ内側導電層40と導通するように、内外の導電層40,41が導通する導通部43を筐体1に貫通して設けている。
【0041】
本例においては、筐体1の内側のほぼ全域に内側導電層40を形成し、外側導電層41を筐体1の外側に形成すると共に、その端部導通部43が筐体1を貫通して内側導電層40に導通するように延長している。
【0042】
外側導電層41は、筐体1の把持部42に形成される。把持部42は、使用者が筐体1を持ち運びするために筐体を把持する箇所である。通常、筐体1の中央部が把持部となるが、把持部42は、適所に所定の大きさで形成して配置すればよい。
【0043】
別の態様として、外側導電層41を筐体1の外側全域に形成してもよい。筐体1の外側全域に外側導電層を設けると、静電気が発生しやすい合成樹脂製の筐体1に、導電体(人体を含む)が接触するだけで、導電体を通じて静電気を逃がすことができる。この場合も内外の導電層40,41が導通する導通部43を設けることは勿論である。
【0044】
なお、表示シート35の領域は、発光表示するために導電層がない方が好ましいが、外側導電層41は、表示シート35の表面をも覆うようにしてもよい。
【0045】
また、内側導電層40および外側導電層41の導電化は金属による表面処理膜を形成することで行っている。例えば、クロムメッキ等の金属メッキあるいは金属蒸着により導電層40,41を形成している。金属メッキ又は金属蒸着による表面処理膜は、内側導電層40および外側導電層41の両方またはその一方であってもよい。その他の表面は例えば金属シートを貼り付けるようにしてもよい。
【0046】
また、導電化は、上述の表面処理膜を施す場合と、素材そのものを導電化する場合の二通りがある。後者の導電化としては、筐体を構成する合成樹脂にカーボンや金属を混合して材料自体を導電化し、電気抵抗値を10〜10Ω・cmまで下げることが考えられる。
【0047】
また、別の静電気抑制手段としては、合成樹脂に帯電防止剤を添加する。帯電防止剤としては界面活性剤が挙げられる。添加する方式としては、樹脂に帯電防止剤を練込む方式、樹脂表面へ帯電防止剤を塗布する方式、さらにはフィルムに帯電防止剤をコーティングし、このフィルムを貼りつける方式が挙げられる。
【0048】
練込型帯電防止剤としては、非イオン性界面活性剤を使用し、その配合量としては1.5〜2重量部が好適である。表面塗布型の帯電防止剤の場合、両性界面活性剤を用い、筐体の表面に塗布する。また、フィルムコーティング剤用帯電防止剤としては、例えば、陰イオン性界面活性剤配合物をフィルムにコーティングし、筐体に貼り付ける方法が挙げられる。
【0049】
図6はイオン測定装置のブロック構成図である。検出電極4,5はオペアンプ13に接続され、オペアンプ13は、検出電極4,5から出力される電圧を増幅する。オペアンプ13によって増幅された電圧は、マイクロコンピュータから構成される測定制御部30に入力される。
【0050】
測定制御部30は、内部にCPU、ROM、RAMを備え、検出電極4,5にオペアンプを通して供給電圧を印加すると共に、検出電極4,5からオペアンプ13を通して入力された電圧に基づいてイオンの量を演算し、表示部31に出力する。表示部31には複数の発光ダイオード31aが設けられ、捕獲されたイオンの量によって段階的に点灯表示する。
【0051】
切換えスイッチ37は、線状の電極5および筒状の電極4に印加する電圧の極性を切り換える。切換スイッチからの切換信号は測定制御部30に入力され、測定制御部30からの制御信号により検出電極4,5に所定の電圧が印加される。
【0052】
例えば、線状の電極5には、プラスの電圧を印加することによって、プラスと逆極性の電荷を帯びたマイナスイオンが選択的に捕獲される。また、筒状の電極4には、マイナスの電圧を印加することによって、マイナスと逆極性の電荷を帯びたプラスイオンが選択的に捕獲される。切換えスイッチ37は、例えば、筒状の電極4をゼロボルトとして、線状の電極5にプラスの電圧あるいはマイナスの電圧を印加するよう、切り換えることもできる。これにより、線状の電極5と筒状の電極4とによる1系統の回路により、マイナスイオンとプラスイオンの両イオンの測定が可能となる。なお、検出電極4,5の電圧は、プラスマイナス2〜50ボルトの範囲、好ましくは、プラスマイナス5ボルトの範囲内で与える。
【0053】
上記構成において、イオンの量の測定は、空気取入口2から筐体1内の空気通路3にイオンを含む空気を導入して、線状の電極5と筒状の電極4との間に電位差を設け、イオン検出電極4,5により空気中に含まれるイオン量を検出する。
【0054】
例えば、線状の電極5にプラスの電圧を印加することによって、プラスと逆極性の電荷を帯びたマイナスイオンが選択的に捕獲し、また、筒状の電極4には、マイナスの電圧を印加することによって、マイナスと逆極性の電荷を帯びたプラスイオンが選択的に捕獲する。
【0055】
イオンは、1個当たり、1.6022×10-19 クーロンの電荷Qをもっているので、電極からは捕獲された個数nに応じた電圧が出力される。単位面積(1平方センチメートル)当たりの捕獲されたイオンの個数(個/sec/cm2 )によってイオンの量が表される。イオンの量は、通常、単位体積当たりのイオンの個数、あるいは単位時間当たりのイオンの個数となる。
【0056】
この検出電圧をオペアンプ13により増幅して測定制御部30に入力し、ここで、入力された電圧に基づいてイオンの量を演算し、表示部31に出力し、表示部31の複数の発光ダイオード31aによって、捕獲されたイオンの量を段階的に点灯表示する。
【0057】
このとき、イオン検出に影響を及ぼす静電気の発生を抑制し、発生した静電気を除去する静電気抑制手段6を筐体1に設けているので、静電気が発生しやすい合成樹脂製の筐体1であっても、静電気による測定精度の低下を防止することができ、また合成樹脂の使用による設計の自由度を大幅に向上させることができる。
【0058】
さらに、検出電極4,5の両端部は、電気絶縁性の保持リング15,16を介して筐体1に支持されているので、静電気が発生しやすい筐体1と検出電極4,5とを確実に電気絶縁することができる。
【0059】
このとき、検出電極4,5の支持部は、検出電極4,5の両端外周面に嵌合されて電極を保持する保持リング15,16と、該保持リング15,16の径方向に差し渡されて線電極の両端を保持する差渡片17とから構成すると、筒状の電極4と線状の電極5とを一度に保持することができる。ここで、支持部として、電気絶縁性に優れたフッ素樹脂系の素材を使用しているので、軽量かつ確実な電気絶縁が可能となる。
【0060】
また、静電気抑制手段6として、筐体内側に検出電極4,5と非接触の内側導電層40を形成し、この内側導電層40と電気的に導通する外側導電層41を筐体外部の把持部42に形成しているので、たとえ、筐体1の内部に静電気が発生したとしても筐体外部の把持部42を、導電体、例えば、人が握れば、人体を通じて静電気が外部に逃がすことができる。そのため、静電気による検出電圧への悪影響を抑制し、イオン測定精度の低下を防ぐことができる。
【0061】
また、筐体の外側全域にクロムメッキ等の金属メッキ処理(表面処理膜)を施すと、筐体1の内部に静電気が発生したとしても筐体外部の外側導電層に、導電体、例えば、人が接触すれば、人体を通じて静電気が外部に逃げることになるので、把持部の有無に拘わらず、静電気を外部に逃がすことができ、イオン測定精度の低下を防ぐことができる。
【0062】
また、別の静電気抑制手段6としては、筐体を形成する合成樹脂に添加された帯電防止剤から構成すると、静電気の発生を抑制することができる。
【0063】
このようなハンディタイプのイオン測定装置は、イオンを放出して室内空間を殺菌処理するイオン発生装置について、イオン発生装置から放出されるイオンの量を測定するのに好適に使用することができる。
【0064】
なお、上記実施形態では、合成樹脂製の筐体1に帯電防止剤を添加し、かつ筐体の内側と外側とに導電層40,41を形成し、筐体外側の把持部42に外側導電層41を形成した例を示したが、帯電防止剤及び内外の導電層40,41のうち、いずれか一つを採用して筐体1を形成するようにしてもよい。また、本例では検出電極を筒状電極と線状電極から構成したが、他の形状の電極、例えば、板状電極を用いてもよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
1 筐体
1A 上面筐体部
1B 下面筐体部
2 空気取入口
3 空気通路
4 筒状の電極
5 線状の電極
6 静電気抑制手段
7 空気取入側キャップ
8 排気口
9 排気側キャップ
10 仕切受け
11 電極受け
12 イオン検出部
13 オペアンプ
15,16 保持リング
17 差渡片
18 ダストカバー
20 支持枠
21 排気ファン
22 アンプ基板
23 シールドケース
24 シールドカバー
26 バッテリ
27 収容部
28 バッテリカバー
30 測定制御部
31 表示部
31a 発光ダイオード
33 支持ピン
34 表示窓
35 表示シート
40 内側導電層
41 外側導電層
42 把持部
43 導通部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の筐体に形成された空気取入口から筐体内の空気通路にイオンを含む空気を導入してイオン検出電極により空気に含まれるイオン量を検出するイオン測定装置であって、前記筐体にイオン検出に影響を及ぼす静電気の発生を抑制し、発生した静電気を除去する静電気抑制手段が設けられたことを特徴とするイオン測定装置。
【請求項2】
前記検出電極が、筒状の電極と、その中心に配置された線状の電極とを備え、前記電極の両端部が電気絶縁性の支持部を介して筐体に支持され、前記支持部は、電極の両端外周面に嵌合されて電極を保持する保持リングと、該保持リングの径方向に差し渡されて線電極の両端を保持する差渡片とから構成されたことを特徴とする請求項1記載のイオン測定装置。
【請求項3】
前記静電気抑制手段は、筐体内側に形成され、前記検出電極と非接触の内側導電層と、筐体外部に設けられ、前記内側導電層と電気的に導通する外側導電層とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のイオン測定装置。
【請求項4】
前記内側導電層および/または外側導電層が、金属製の表面処理膜が形成されたことを特徴とする請求項3に記載のイオン測定装置。
【請求項5】
前記静電気抑制手段は、筐体を形成する合成樹脂に添加された帯電防止剤から構成されたことを特徴とする請求項1に記載のイオン測定装置。
【請求項6】
筐体がハンディタイプであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のイオン測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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