イオン生成装置
【課題】 安定して正、負のイオンの生成を確保して、オゾンの発生を抑制できるイオン生成装置を提供する。
【解決手段】 放電電極2、高周波高電圧発生装置3、及び高圧ケーブル4からなり、放電電極2を、1又は複数の導電性の針状電極6と、該針状電極に対向して設けられた導電性の接地電極7とで構成し、高周波高電圧発生装置3の高周波高電圧出力を放電電極2の針状電極6に印加し、該針状電極6でコロナ放電を発生させ、正、負の空気イオンを生成するイオン生成装置1において、高周波高電圧発生装置3は電源回路8、高周波発振回路9、昇圧トランス10及びタイマ回路11を備える。電源回路8により高周波発振回路9を駆動し、高周波発振回路9の出力により昇圧トランス10で高周波高電圧を発生させ、これを高圧ケ−ブルを介して放電電極2の針状電極6に印加するときに、タイマ回路11により高周波発振回路9の出力を周期的にオン、オフする。
【解決手段】 放電電極2、高周波高電圧発生装置3、及び高圧ケーブル4からなり、放電電極2を、1又は複数の導電性の針状電極6と、該針状電極に対向して設けられた導電性の接地電極7とで構成し、高周波高電圧発生装置3の高周波高電圧出力を放電電極2の針状電極6に印加し、該針状電極6でコロナ放電を発生させ、正、負の空気イオンを生成するイオン生成装置1において、高周波高電圧発生装置3は電源回路8、高周波発振回路9、昇圧トランス10及びタイマ回路11を備える。電源回路8により高周波発振回路9を駆動し、高周波発振回路9の出力により昇圧トランス10で高周波高電圧を発生させ、これを高圧ケ−ブルを介して放電電極2の針状電極6に印加するときに、タイマ回路11により高周波発振回路9の出力を周期的にオン、オフする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電物体の静電気を中和して除電するのに適した正及び負の空気イオンを、空気中でコロナ放電を発生させて生成するイオン生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放電電極を構成する、導電性の針状電極と、これに対向する導電性の接地電極との間に高電圧を印加して、該針状電極にて発生するコロナ放電により、空気をイオン化して空気イオンを生成するイオン生成装置が知られている。この種のイオン生成装置は、生成した空気イオンによって帯電物体の電荷を中和することが可能であることから、一般に、帯電物体の静電気を除去する除電装置として使用される。
【0003】
前記放電電極の針状電極には高電圧発生装置が接続されて、直流或いは交流電圧が印加される。針状電極に直流電圧を印加する場合には、電圧の正、負に従ってそれぞれ正、負のイオンが発生するので、正の電圧を印加する正の針状電極と負の電圧を印加する負の針状電極を、それぞれ1ないし2以上設置する必要がある。ここで、正の電荷によって帯電している帯電物体は、前記負の針状電極から発生する負のイオンにより中和、除電され、負の電荷によって帯電している帯電物体は、前記正の針状電極から発生する正のイオンにより中和、除電される。このとき、正、負のイオンの発生バランスがとれていないと、イオン量が不足の場合は中和が不十分で帯電物体の電荷の残留が起き、また、イオン量が過剰の場合は逆帯電が起きるので、イオンの生成量の正確な制御が必要となる不都合がある。
【0004】
一方、針状電極に交流電圧を印加した場合には、該電圧の正、負に従って正、負のイオンが交互に発生する。このため、帯電物体の電荷が正、負のいずれであっても中和することができ、更に、例えば、過剰に生成された正のイオンが残留しても、その後に生成された負のイオンによって中和されるので、前記直流の場合に比して、イオンの生成量の正確な制御を行うことなく除電を行うことができる。このように交流電圧印加の場合は、直流電圧印加の場合に比べてイオンバランスは良好であるが、電源装置が大型で、重量のあるものとなってしまう不都合がある。
【0005】
大きさと重量が直流電源並の交流電源としては、高周波トランスがある。ここで言う高周波は大体10kHzから100kHzの周波数で、一般のMHz、GHzの高周波ではない。この高周波トランスには巻線トランス(例えば、特許文献1参照)と圧電トランス(例えば、特許文献2参照)がある。どちらも小型、軽量であるが、特に圧電セラミックス素子を応用する圧電トランスは小型、軽量にできる。数十kHzの高周波コロナ放電は商用周波のものより低い電圧で放電が開始し、生成イオン量が多いが、イオンとともに発生するオゾンの量が商用周波のものより多いという不都合がある。
【特許文献1】特開昭62−86699号公報(高周波除電装置)
【特許文献2】特開2001−85189公報(イオン発生装置)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる不都合を解消して、安定して正、負のイオンの生成を確保して、オゾンの発生を抑制できるイオン生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、連続的な高周波コロナ放電において、放電状態を周期的にオン、オフして、放電の休止時間を設けることによりオゾンの発生量を低減するものである。
【0008】
高周波コロナ放電においては、イオンの発生とオゾンの発生は放電電流に比例すると考えられていた。本発明者らは、高周波コロナ放電を周期的にオン、オフして、放電の休止時間を設けると、オゾンは確実に放電時間に比例して減少するが、有効なイオン量はそれほど減少することがなく、条件によってはイオン量が増大するという実験的知見により、本発明の発想を得た。
【0009】
本発明は、放電電極、高周波高電圧発生装置、及び高圧ケーブルからなり、該放電電極を1乃至複数の導電性の針状電極と、該針状電極に対向して設けられた導電性の接地電極とで構成し、該高周波高電圧発生装置の高周波高電圧出力を該放電電極の該針状電極に印加し、該針状電極でコロナ放電を発生させ、正、負の空気イオンを生成するイオン生成装置において、前記高周波高電圧発生装置は電源回路装置、高周波発振回路装置、昇圧トランス及びタイマ回路装置を備え、該電源回路装置により該高周波発振回路装置を駆動し、該高周波発振回路装置の出力により該昇圧トランスで高周波高電圧を発生させ、これを高圧ケ−ブルを介して該放電電極の該針状電極に印加するときに、該タイマ回路装置により該高周波発振回路装置の出力を周期的にオン、オフすることを特徴とする。
【0010】
本発明において、前記高周波高電圧発生装置の昇圧トランスは、巻線トランス、或いは圧電トランスとしても良い。
【0011】
また、前記放電電極の針状電極と前記高圧ケーブルとを容量を介して接続することができる。
【0012】
また、前記放電電極、高周波高電圧発生装置、高圧ケーブル及び送風機を一つの筐体に内蔵し、該筐体に空気取入れ口と空気吹出し口とを設け、該空気取入れ口に送風機を配置し、また、該空気吹出し口に該放電電極を設け、該放電電極の針状電極で生成した空気イオンを該送風機により生成する空気流により移送しても良い。
【0013】
また、本発明では、圧縮空気を噴出させる空気ノズルの空気通路に放電電極を内蔵し、該放電電極の針状電極で生成した空気イオンを該空気ノズルからの空気噴流により移送しても良い。
【0014】
また、前記高周波高電圧発生装置の高電圧出力をオン、オフする周波数を10〜1,000Hzの範囲とし、1周期の内の出力のオン期間の比(デューティ比)を0.4〜0.9の範囲とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、有効な空気イオンの発生を減らすことなく、良好な除電時間を保ちつつ、オゾン濃度の生成を抑制できるイオン生成装置を提供でき、高周波コロナ放電式イオン生成装置の普及を拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態のイオン生成装置の概略構成図、図2は高周波高電圧発生装置の高電圧出力の時間変化を示す説明図、図3は第4の実施形態の放電電極の概略構造を一部断面にて示した説明図、図4は図3のIV−IV線断面図、図5は第5の実施形態のイオン生成装置の概略構成を断面にて示した説明図、図6は第6の実施形態のイオン生成装置の概略構成を一部断面にして示した説明図である。
【0017】
図1に示すように、第1の実施形態のイオン生成装置1は、放電電極2、高周波高電圧発生装置3、及び高圧ケーブル4からなる。放電電極2は電極部材5に1乃至複数の導電性の針状電極6を並べて嵌め込み、該針状電極5に対向して導電性の接地電極7を設ける。高周波高電圧発生装置3は電源回路装置8、高周波発振回路装置9、昇圧トランス10及びタイマ回路装置11からなり、該電源回路装置8により該高周波発振回路装置9を駆動し、該高周波発振回路装置9の出力により該昇圧トランス10で高周波高電圧を発生させ、これを高圧ケ−ブル4を介して該放電電極2の該針状電極6に印加するもので、このとき、該タイマ回路装置11により高周波発振回路装置3の出力を周期的にオン、オフすることを特徴とする。
【0018】
高周波高電圧発生装置3の高周波高電圧出力は、図2に示すように、一定の期間T(sec)においてオン期間Ton(sec)とオフ期間Toff(sec)があり、オン期間Tonでの出力は数十kHzの高周波高電圧であり、オフ期間Toffでの出力はゼロとなる。ここで、出力をオン、オフする期間Tの逆数(1/T)はオン、オフの周波数fと表わし、期間Tの内のオン期間Tonの比δ(Ton/T)をデューティ比と呼ぶ。
【0019】
本発明によれば、このような周期的に一時休止する高周波高電圧を該放電電極2の該針状電極6に印加し、該針状電極6でコロナ放電を発生させ、正、負の空気イオンを生成する。
【0020】
第1の実施形態のイオン生成装置1では、前記高周波高電圧発生装置3の昇圧トランス10を巻線トランスとしても良く、また、圧電トランスとしても良い。
【0021】
次に図3及び図4を参照して、第2の実施形態のイオン生成装置1aは、前記放電電極2aの形状を、例えば棒状として示す。放電電極2aは、高圧ケーブル4の芯線12を覆う絶縁材13の外周に、複数の金属製の集電環14を一定間隔で配し、該集電環14の外側を絶縁物製のケース15で被覆し、該集電環14に針状電極6を該ケース15の外から貫通して嵌め込み、該ケース15の両端にエンドフランジ16とリードフランジ17を配置し、該エンドフランジ16と該リードフランジ17に接地電極7を固定し、該針状電極6と該接地電極7が対向するように構成した構造である。ここで、高圧ケーブル4の該芯線5と該集電環14は、絶縁材13を介して二重円筒型のコンデンサを形成しており、芯線5と集電環14を電気的に小さな容量で結合することにより、針状電極6からの放電電流を安全な範囲に制限することができる。
【0022】
本発明の第3の実施形態のイオン生成装置1bでは、図5に示すように、一つの筐体18内に、放電電極2b、高周波高電圧発生装置3、高圧ケーブル4及び送風機19を内蔵し、該筐体18に空気取入れ口20と空気吹出し口21とを設け、該空気取入れ口20に送風機19を配置し、また、該空気吹出し口21に該放電電極2bを設け、該放電電極2bの針状電極6で生成した空気イオンを該送風機19により生成する空気流により移送することを特徴とする。
【0023】
本発明の第4の実施形態のイオン生成装置1cでは、図6に示すように、圧縮空気管22から圧縮空気が供給され、圧縮空気を噴出させる空気ノズル23の空気通路24に放電電極2cを内蔵し、該放電電極2cの針状電極6で生成した空気イオンを該空気ノズル23からの空気噴流により移送することを特徴とする。
【0024】
次に、以上のように構成されたイオン生成装置の除電特性とオゾン生成特性について説明する。
【0025】
イオン生成装置としては、例えば第3の実施形態の送風機で空気イオンを移送するイオン生成装置1bを用いる。図7は、イオン生成装置の除電特性を計測する試験装置の構成を示し、図8は、イオン生成装置のオゾン生成特性を計測する試験装置の構成を示す。
【0026】
除電特性については、図7において帯電プレートモニタを用いて、除電時間を測定した。帯電プレートモニタ25は、本体26に150 mm角の金属製プレート(帯電物体)27が絶縁物28を介して取り付けてある。該金属製プレート27は除電すべき帯電物体を模擬するものである。本体26には、表面電位測定装置29、高電圧電源30及びタイマ31が内蔵されていて、金属製プレート27に高電圧電源30を用いて電荷を与えることができ、また、金属製プレート27の電圧は表面電位測定装置29により測定できるとともに電圧の減衰する時間(除電時間)をタイマ31で測定できる。
【0027】
図7に示すよう、卓上にイオン生成装置1bを設置し、その前面、L = 300mmの距離の位置に帯電プレートモニタ25を置き、イオン生成装置1bからの空気イオンを含んだ空気を帯電プレートモニタ25の金属製プレート27に吹き当てる。金属製プレート27を高電圧電源30により±1,000Vに帯電させ、これにイオン生成装置1bからの空気イオンを供給して中和し、±100Vまで低下するに要する減衰時間(除電時間)がタイマ31で測定できる。
【0028】
オゾン生成特性については、図8において大気中オゾン濃度計を用いて、オゾン濃度を測定した。図8に示すように、卓上にイオン生成装置1bを設置し、その前面、L = 300mmの距離の位置に大気中オゾン濃度計32のサンプリング管33を配置し、オゾン濃度を測定した。
【0029】
イオン生成装置1bの仕様は、高周波高電圧発生装置は圧電トランスを採用したもので、その出力は電圧7kVp-p、周波数68kHzである。送風機は、直径12cmのモータファンで、その前面すべてが空気吹き出し口となっている。最大風量は3.3m3/minで、風量は連続的に変えられるので、大、中、小の3段階に変えた。試験のパラメータは、高電圧出力を休止する周波数fと、オン・オフのデューティ比δとした。
【0030】
図9及び図10は、イオン生成装置の除電時間及びオゾン濃度と周波数fの関係を示す。周波数fが10Hzから1,000Hzの範囲では、周波数fが高いほど、除電時間が短くなり、オゾン濃度が低くなる。人間が知覚できる音の周波数は20Hzから20kHzまでであり、特に感度が良いのは1,000Hzから3,500Hzとのことなので、うるさい音を発生させないためには、周波数fは1,000Hzを超えないほうが良い。
【0031】
図11及び図12は、イオン生成装置の除電時間及びオゾン濃度とデューティ比δの関係を示す。除電時間は、デューティ比δ=0.8近傍で最小値をもつ特性を示す。一方、オゾン濃度は、デューティ比δが小さくなるほど低くなる。オゾン濃度は、オン期間に単純に比例すると考えられる。デューティ比δは、除電時間を優先するときには大きめ、オゾン濃度を優先するときには小さめに選択できる。
【0032】
以上の知見から、本発明の第5の実施形態のイオン生成装置1dでは、前記高周波高電圧発生装置3の高電圧出力を休止するときの周波数を10〜1,000Hzの範囲とし、1周期の内の出力のオン期間の比(デューティ比)を0.4〜0.9の範囲とする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1の実施形態のイオン生成装置の概略構成図。
【図2】本発明の高周波高電圧発生装置の高電圧出力の時間変化を示す説明図。
【図3】第2の実施形態の放電電極の概略構造図で、一部断面にて示した説明図。
【図4】図3のIV−IV線断面図。
【図5】第3の実施形態のイオン生成装置の概略構成を断面にて示した説明図。
【図6】第4の実施形態のイオン生成装置の概略構成を一部断面にして示した説明図。
【図7】イオン生成装置の除電特性を計測する装置の概略構成図。
【図8】イオン生成装置のオゾン生成特性を計測する装置の概略構成図。
【図9】本発明のイオン生成装置の除電特性と周波数の関係を示す図。
【図10】本発明のイオン生成装置のオゾン生成特性と周波数の関係を示す図。
【図11】本発明のイオン生成装置の除電特性とデューティ比の関係を示す図。
【図12】本発明のイオン生成装置のオゾン生成特性とデューティ比の関係を示す図。
【符号の説明】
【0034】
1,1a,1b,1c,1d・・・イオン生成装置、2,2a,2b,2c・・・放電電極、3・・・高周波高電圧発生装置、6・・・針状電極、7・・・接地電極、8・・・電源回路装置、9・・・高周波発振回路装置、10・・・昇圧トランス、11・・・タイマ回路装置、12・・・芯線、14・・・集電環、19・・・送風機、23・・・空気ノズル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電物体の静電気を中和して除電するのに適した正及び負の空気イオンを、空気中でコロナ放電を発生させて生成するイオン生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放電電極を構成する、導電性の針状電極と、これに対向する導電性の接地電極との間に高電圧を印加して、該針状電極にて発生するコロナ放電により、空気をイオン化して空気イオンを生成するイオン生成装置が知られている。この種のイオン生成装置は、生成した空気イオンによって帯電物体の電荷を中和することが可能であることから、一般に、帯電物体の静電気を除去する除電装置として使用される。
【0003】
前記放電電極の針状電極には高電圧発生装置が接続されて、直流或いは交流電圧が印加される。針状電極に直流電圧を印加する場合には、電圧の正、負に従ってそれぞれ正、負のイオンが発生するので、正の電圧を印加する正の針状電極と負の電圧を印加する負の針状電極を、それぞれ1ないし2以上設置する必要がある。ここで、正の電荷によって帯電している帯電物体は、前記負の針状電極から発生する負のイオンにより中和、除電され、負の電荷によって帯電している帯電物体は、前記正の針状電極から発生する正のイオンにより中和、除電される。このとき、正、負のイオンの発生バランスがとれていないと、イオン量が不足の場合は中和が不十分で帯電物体の電荷の残留が起き、また、イオン量が過剰の場合は逆帯電が起きるので、イオンの生成量の正確な制御が必要となる不都合がある。
【0004】
一方、針状電極に交流電圧を印加した場合には、該電圧の正、負に従って正、負のイオンが交互に発生する。このため、帯電物体の電荷が正、負のいずれであっても中和することができ、更に、例えば、過剰に生成された正のイオンが残留しても、その後に生成された負のイオンによって中和されるので、前記直流の場合に比して、イオンの生成量の正確な制御を行うことなく除電を行うことができる。このように交流電圧印加の場合は、直流電圧印加の場合に比べてイオンバランスは良好であるが、電源装置が大型で、重量のあるものとなってしまう不都合がある。
【0005】
大きさと重量が直流電源並の交流電源としては、高周波トランスがある。ここで言う高周波は大体10kHzから100kHzの周波数で、一般のMHz、GHzの高周波ではない。この高周波トランスには巻線トランス(例えば、特許文献1参照)と圧電トランス(例えば、特許文献2参照)がある。どちらも小型、軽量であるが、特に圧電セラミックス素子を応用する圧電トランスは小型、軽量にできる。数十kHzの高周波コロナ放電は商用周波のものより低い電圧で放電が開始し、生成イオン量が多いが、イオンとともに発生するオゾンの量が商用周波のものより多いという不都合がある。
【特許文献1】特開昭62−86699号公報(高周波除電装置)
【特許文献2】特開2001−85189公報(イオン発生装置)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる不都合を解消して、安定して正、負のイオンの生成を確保して、オゾンの発生を抑制できるイオン生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、連続的な高周波コロナ放電において、放電状態を周期的にオン、オフして、放電の休止時間を設けることによりオゾンの発生量を低減するものである。
【0008】
高周波コロナ放電においては、イオンの発生とオゾンの発生は放電電流に比例すると考えられていた。本発明者らは、高周波コロナ放電を周期的にオン、オフして、放電の休止時間を設けると、オゾンは確実に放電時間に比例して減少するが、有効なイオン量はそれほど減少することがなく、条件によってはイオン量が増大するという実験的知見により、本発明の発想を得た。
【0009】
本発明は、放電電極、高周波高電圧発生装置、及び高圧ケーブルからなり、該放電電極を1乃至複数の導電性の針状電極と、該針状電極に対向して設けられた導電性の接地電極とで構成し、該高周波高電圧発生装置の高周波高電圧出力を該放電電極の該針状電極に印加し、該針状電極でコロナ放電を発生させ、正、負の空気イオンを生成するイオン生成装置において、前記高周波高電圧発生装置は電源回路装置、高周波発振回路装置、昇圧トランス及びタイマ回路装置を備え、該電源回路装置により該高周波発振回路装置を駆動し、該高周波発振回路装置の出力により該昇圧トランスで高周波高電圧を発生させ、これを高圧ケ−ブルを介して該放電電極の該針状電極に印加するときに、該タイマ回路装置により該高周波発振回路装置の出力を周期的にオン、オフすることを特徴とする。
【0010】
本発明において、前記高周波高電圧発生装置の昇圧トランスは、巻線トランス、或いは圧電トランスとしても良い。
【0011】
また、前記放電電極の針状電極と前記高圧ケーブルとを容量を介して接続することができる。
【0012】
また、前記放電電極、高周波高電圧発生装置、高圧ケーブル及び送風機を一つの筐体に内蔵し、該筐体に空気取入れ口と空気吹出し口とを設け、該空気取入れ口に送風機を配置し、また、該空気吹出し口に該放電電極を設け、該放電電極の針状電極で生成した空気イオンを該送風機により生成する空気流により移送しても良い。
【0013】
また、本発明では、圧縮空気を噴出させる空気ノズルの空気通路に放電電極を内蔵し、該放電電極の針状電極で生成した空気イオンを該空気ノズルからの空気噴流により移送しても良い。
【0014】
また、前記高周波高電圧発生装置の高電圧出力をオン、オフする周波数を10〜1,000Hzの範囲とし、1周期の内の出力のオン期間の比(デューティ比)を0.4〜0.9の範囲とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、有効な空気イオンの発生を減らすことなく、良好な除電時間を保ちつつ、オゾン濃度の生成を抑制できるイオン生成装置を提供でき、高周波コロナ放電式イオン生成装置の普及を拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の第1の実施形態のイオン生成装置の概略構成図、図2は高周波高電圧発生装置の高電圧出力の時間変化を示す説明図、図3は第4の実施形態の放電電極の概略構造を一部断面にて示した説明図、図4は図3のIV−IV線断面図、図5は第5の実施形態のイオン生成装置の概略構成を断面にて示した説明図、図6は第6の実施形態のイオン生成装置の概略構成を一部断面にして示した説明図である。
【0017】
図1に示すように、第1の実施形態のイオン生成装置1は、放電電極2、高周波高電圧発生装置3、及び高圧ケーブル4からなる。放電電極2は電極部材5に1乃至複数の導電性の針状電極6を並べて嵌め込み、該針状電極5に対向して導電性の接地電極7を設ける。高周波高電圧発生装置3は電源回路装置8、高周波発振回路装置9、昇圧トランス10及びタイマ回路装置11からなり、該電源回路装置8により該高周波発振回路装置9を駆動し、該高周波発振回路装置9の出力により該昇圧トランス10で高周波高電圧を発生させ、これを高圧ケ−ブル4を介して該放電電極2の該針状電極6に印加するもので、このとき、該タイマ回路装置11により高周波発振回路装置3の出力を周期的にオン、オフすることを特徴とする。
【0018】
高周波高電圧発生装置3の高周波高電圧出力は、図2に示すように、一定の期間T(sec)においてオン期間Ton(sec)とオフ期間Toff(sec)があり、オン期間Tonでの出力は数十kHzの高周波高電圧であり、オフ期間Toffでの出力はゼロとなる。ここで、出力をオン、オフする期間Tの逆数(1/T)はオン、オフの周波数fと表わし、期間Tの内のオン期間Tonの比δ(Ton/T)をデューティ比と呼ぶ。
【0019】
本発明によれば、このような周期的に一時休止する高周波高電圧を該放電電極2の該針状電極6に印加し、該針状電極6でコロナ放電を発生させ、正、負の空気イオンを生成する。
【0020】
第1の実施形態のイオン生成装置1では、前記高周波高電圧発生装置3の昇圧トランス10を巻線トランスとしても良く、また、圧電トランスとしても良い。
【0021】
次に図3及び図4を参照して、第2の実施形態のイオン生成装置1aは、前記放電電極2aの形状を、例えば棒状として示す。放電電極2aは、高圧ケーブル4の芯線12を覆う絶縁材13の外周に、複数の金属製の集電環14を一定間隔で配し、該集電環14の外側を絶縁物製のケース15で被覆し、該集電環14に針状電極6を該ケース15の外から貫通して嵌め込み、該ケース15の両端にエンドフランジ16とリードフランジ17を配置し、該エンドフランジ16と該リードフランジ17に接地電極7を固定し、該針状電極6と該接地電極7が対向するように構成した構造である。ここで、高圧ケーブル4の該芯線5と該集電環14は、絶縁材13を介して二重円筒型のコンデンサを形成しており、芯線5と集電環14を電気的に小さな容量で結合することにより、針状電極6からの放電電流を安全な範囲に制限することができる。
【0022】
本発明の第3の実施形態のイオン生成装置1bでは、図5に示すように、一つの筐体18内に、放電電極2b、高周波高電圧発生装置3、高圧ケーブル4及び送風機19を内蔵し、該筐体18に空気取入れ口20と空気吹出し口21とを設け、該空気取入れ口20に送風機19を配置し、また、該空気吹出し口21に該放電電極2bを設け、該放電電極2bの針状電極6で生成した空気イオンを該送風機19により生成する空気流により移送することを特徴とする。
【0023】
本発明の第4の実施形態のイオン生成装置1cでは、図6に示すように、圧縮空気管22から圧縮空気が供給され、圧縮空気を噴出させる空気ノズル23の空気通路24に放電電極2cを内蔵し、該放電電極2cの針状電極6で生成した空気イオンを該空気ノズル23からの空気噴流により移送することを特徴とする。
【0024】
次に、以上のように構成されたイオン生成装置の除電特性とオゾン生成特性について説明する。
【0025】
イオン生成装置としては、例えば第3の実施形態の送風機で空気イオンを移送するイオン生成装置1bを用いる。図7は、イオン生成装置の除電特性を計測する試験装置の構成を示し、図8は、イオン生成装置のオゾン生成特性を計測する試験装置の構成を示す。
【0026】
除電特性については、図7において帯電プレートモニタを用いて、除電時間を測定した。帯電プレートモニタ25は、本体26に150 mm角の金属製プレート(帯電物体)27が絶縁物28を介して取り付けてある。該金属製プレート27は除電すべき帯電物体を模擬するものである。本体26には、表面電位測定装置29、高電圧電源30及びタイマ31が内蔵されていて、金属製プレート27に高電圧電源30を用いて電荷を与えることができ、また、金属製プレート27の電圧は表面電位測定装置29により測定できるとともに電圧の減衰する時間(除電時間)をタイマ31で測定できる。
【0027】
図7に示すよう、卓上にイオン生成装置1bを設置し、その前面、L = 300mmの距離の位置に帯電プレートモニタ25を置き、イオン生成装置1bからの空気イオンを含んだ空気を帯電プレートモニタ25の金属製プレート27に吹き当てる。金属製プレート27を高電圧電源30により±1,000Vに帯電させ、これにイオン生成装置1bからの空気イオンを供給して中和し、±100Vまで低下するに要する減衰時間(除電時間)がタイマ31で測定できる。
【0028】
オゾン生成特性については、図8において大気中オゾン濃度計を用いて、オゾン濃度を測定した。図8に示すように、卓上にイオン生成装置1bを設置し、その前面、L = 300mmの距離の位置に大気中オゾン濃度計32のサンプリング管33を配置し、オゾン濃度を測定した。
【0029】
イオン生成装置1bの仕様は、高周波高電圧発生装置は圧電トランスを採用したもので、その出力は電圧7kVp-p、周波数68kHzである。送風機は、直径12cmのモータファンで、その前面すべてが空気吹き出し口となっている。最大風量は3.3m3/minで、風量は連続的に変えられるので、大、中、小の3段階に変えた。試験のパラメータは、高電圧出力を休止する周波数fと、オン・オフのデューティ比δとした。
【0030】
図9及び図10は、イオン生成装置の除電時間及びオゾン濃度と周波数fの関係を示す。周波数fが10Hzから1,000Hzの範囲では、周波数fが高いほど、除電時間が短くなり、オゾン濃度が低くなる。人間が知覚できる音の周波数は20Hzから20kHzまでであり、特に感度が良いのは1,000Hzから3,500Hzとのことなので、うるさい音を発生させないためには、周波数fは1,000Hzを超えないほうが良い。
【0031】
図11及び図12は、イオン生成装置の除電時間及びオゾン濃度とデューティ比δの関係を示す。除電時間は、デューティ比δ=0.8近傍で最小値をもつ特性を示す。一方、オゾン濃度は、デューティ比δが小さくなるほど低くなる。オゾン濃度は、オン期間に単純に比例すると考えられる。デューティ比δは、除電時間を優先するときには大きめ、オゾン濃度を優先するときには小さめに選択できる。
【0032】
以上の知見から、本発明の第5の実施形態のイオン生成装置1dでは、前記高周波高電圧発生装置3の高電圧出力を休止するときの周波数を10〜1,000Hzの範囲とし、1周期の内の出力のオン期間の比(デューティ比)を0.4〜0.9の範囲とする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1の実施形態のイオン生成装置の概略構成図。
【図2】本発明の高周波高電圧発生装置の高電圧出力の時間変化を示す説明図。
【図3】第2の実施形態の放電電極の概略構造図で、一部断面にて示した説明図。
【図4】図3のIV−IV線断面図。
【図5】第3の実施形態のイオン生成装置の概略構成を断面にて示した説明図。
【図6】第4の実施形態のイオン生成装置の概略構成を一部断面にして示した説明図。
【図7】イオン生成装置の除電特性を計測する装置の概略構成図。
【図8】イオン生成装置のオゾン生成特性を計測する装置の概略構成図。
【図9】本発明のイオン生成装置の除電特性と周波数の関係を示す図。
【図10】本発明のイオン生成装置のオゾン生成特性と周波数の関係を示す図。
【図11】本発明のイオン生成装置の除電特性とデューティ比の関係を示す図。
【図12】本発明のイオン生成装置のオゾン生成特性とデューティ比の関係を示す図。
【符号の説明】
【0034】
1,1a,1b,1c,1d・・・イオン生成装置、2,2a,2b,2c・・・放電電極、3・・・高周波高電圧発生装置、6・・・針状電極、7・・・接地電極、8・・・電源回路装置、9・・・高周波発振回路装置、10・・・昇圧トランス、11・・・タイマ回路装置、12・・・芯線、14・・・集電環、19・・・送風機、23・・・空気ノズル。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極、高周波高電圧発生装置、及び高圧ケーブルからなり、該放電電極を1又は複数の導電性の針状電極と、該針状電極に対向して設けられた導電性の接地電極とで構成し、該高周波高電圧発生装置の高周波高電圧出力を該放電電極の該針状電極に印加し、該針状電極でコロナ放電を発生させ、正、負の空気イオンを生成するイオン生成装置において、
前記高周波高電圧発生装置は電源回路装置、高周波発振回路装置、昇圧トランス及びタイマ回路装置を備え、該電源回路装置により該高周波発振回路装置を駆動し、該高周波発振回路装置の出力により該昇圧トランスで高周波高電圧を発生させ、これを高圧ケ−ブルを介して該放電電極の該針状電極に印加するときに、該タイマ回路装置により該高周波発振回路装置の出力を周期的にオン、オフすることを特徴とするイオン生成装置。
【請求項2】
請求項1記載のイオン生成装置において、前記高周波高電圧発生装置の昇圧トランスが圧電トランスであることを特徴とするイオン生成装置。
【請求項3】
請求項1記載のイオン生成装置において、前記高周波高電圧発生装置の昇圧トランスが巻線トランスであることを特徴とするイオン生成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載のイオン生成装置において、前記放電電極の針状電極と該高圧ケーブルを容量を介して接続することを特徴とするイオン生成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載のイオン生成装置において、前記放電電極、高周波高電圧発生装置、高圧ケーブル及び送風機を一つの筐体に内蔵し、該筐体に空気取入れ口と空気吹出し口とを設け、該空気取入れ口に送風機を配置し、該空気吹出し口に該放電電極を設け、該放電電極の針状電極で生成した空気イオンを該送風機により生成する空気流により移送することを特徴とするイオン生成装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項記載のイオン生成装置において、圧縮空気を噴出させる空気ノズルの空気通路に放電電極を内蔵し、該放電電極の針状電極で生成した空気イオンを該空気ノズルからの空気噴流により移送することを特徴とするイオン生成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載のイオン生成装置において、前記高周波高電圧発生装置の高電圧出力をオン、オフする周波数を10〜1,000Hzの範囲とし、1周期の内の出力をオンする期間の比(デューティー比)を0.4〜0.9の範囲とすることを特徴とするイオン生成装置。
【請求項1】
放電電極、高周波高電圧発生装置、及び高圧ケーブルからなり、該放電電極を1又は複数の導電性の針状電極と、該針状電極に対向して設けられた導電性の接地電極とで構成し、該高周波高電圧発生装置の高周波高電圧出力を該放電電極の該針状電極に印加し、該針状電極でコロナ放電を発生させ、正、負の空気イオンを生成するイオン生成装置において、
前記高周波高電圧発生装置は電源回路装置、高周波発振回路装置、昇圧トランス及びタイマ回路装置を備え、該電源回路装置により該高周波発振回路装置を駆動し、該高周波発振回路装置の出力により該昇圧トランスで高周波高電圧を発生させ、これを高圧ケ−ブルを介して該放電電極の該針状電極に印加するときに、該タイマ回路装置により該高周波発振回路装置の出力を周期的にオン、オフすることを特徴とするイオン生成装置。
【請求項2】
請求項1記載のイオン生成装置において、前記高周波高電圧発生装置の昇圧トランスが圧電トランスであることを特徴とするイオン生成装置。
【請求項3】
請求項1記載のイオン生成装置において、前記高周波高電圧発生装置の昇圧トランスが巻線トランスであることを特徴とするイオン生成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載のイオン生成装置において、前記放電電極の針状電極と該高圧ケーブルを容量を介して接続することを特徴とするイオン生成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載のイオン生成装置において、前記放電電極、高周波高電圧発生装置、高圧ケーブル及び送風機を一つの筐体に内蔵し、該筐体に空気取入れ口と空気吹出し口とを設け、該空気取入れ口に送風機を配置し、該空気吹出し口に該放電電極を設け、該放電電極の針状電極で生成した空気イオンを該送風機により生成する空気流により移送することを特徴とするイオン生成装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項記載のイオン生成装置において、圧縮空気を噴出させる空気ノズルの空気通路に放電電極を内蔵し、該放電電極の針状電極で生成した空気イオンを該空気ノズルからの空気噴流により移送することを特徴とするイオン生成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載のイオン生成装置において、前記高周波高電圧発生装置の高電圧出力をオン、オフする周波数を10〜1,000Hzの範囲とし、1周期の内の出力をオンする期間の比(デューティー比)を0.4〜0.9の範囲とすることを特徴とするイオン生成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−44876(P2010−44876A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206298(P2008−206298)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000106900)シシド静電気株式会社 (39)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000106900)シシド静電気株式会社 (39)
【Fターム(参考)】
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