説明

イオン発生装置

【課題】安全性とメンテナンス性を両立させたイオン発生装置を提供する。
【解決手段】送風ファン30と、送風ファン30が内部に設置されるチャンバ32と、放電針12及び放電針取付台46から成る放電部14と、チャンバ32と連通されるとともに、放電針12が内部に収容され、少なくとも内壁面が絶縁性の材質から成る絶縁性パイプ22と、チャンバ32内に設置された高圧電源36と、絶縁性パイプ22内に設置された高電圧用端子40と、チャンバ32及び絶縁性パイプ22の内部に設置され、高圧電源36と高電圧用端子40を接続する高圧用電線38と、を備え、放電部14は高電圧用端子40に対して着脱自在に構成され、放電部14を高電圧用端子40に接続したときに、高圧電源36から放電針12に高電圧を印加することが可能となることを特徴とするイオン発生装置10を提供することにより、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン発生装置に係り、特にクリーンルーム内の被除電物に対してイオン化した空気を吹き付けることによって被除電物の除電を行うイオン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高性能化・高集積化が進む半導体デバイスや大型化が進むフラットパネルディスプレイの製造プロセスでは、静電気によるデバイスの破壊や塵埃の付着が問題となっている。これらの静電気障害を防止するため、製造工程中の製造装置内部や搬送工程に空気をイオン化して供給し、発生した電位を低減する除電装置が用いられている。
【0003】
ところで、このような除電装置の多くは放電針が製品(被除電物)の近くに設置されており、放電針が作る電界が製品に障害を与えることが問題となっている。そこで、放電針を製造装置から離す方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の送風除電装置は、図7に示すように、温風又は冷風発生源100からの温風又は冷風は、送風ダクト102中に送られ、送風ダクト102内に設置された直流除電器104で発生したイオンが、送風ダクト102の先端の吹出口106より被除電物に供給される。
【0005】
また、この送風除電装置は、送風ダクト102の胴部に点検窓を設け、この点検窓を閉じる蓋板116(図8参照)に直流除電器104を取り付け、蓋板116で点検窓を閉じた状態で直流除電器104を送風ダクト102内に設置することにより、直流除電器104のメンテナンスを容易にしている。
【0006】
図8に直流除電器104の構造を示す。直流除電器104は、針状電極110、112を電気絶縁性の電極ホルダ114に植設したものである。電極ホルダ114は蓋板116に設置されている。針状電極110、112には、高圧ケーブル118を通じて高電圧がそれぞれ印加され、電極110、112よりイオンが発生する。
【特許文献1】特開2003−36994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示される従来の方式では、高圧ケーブルが装置外に露出しており、安全性に問題がある。また、高圧電源と電極が直接接続されているため、人が誤って電極に触れた場合に人が負傷する危険がある。
【0008】
更に、蓋板を取り外して点検窓を開いた状態にしなければ、電極の汚れ状態を確認することができない。また、放電針の取り外しもできない。このように従来の方式では、メンテナンス性にも問題がある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、安全性とメンテナンス性を両立させたイオン発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、送風ファンと、前記送風ファンが内部に設置されるチャンバと、放電針及び放電針取付台から成る放電部と、前記チャンバと連通されるとともに、前記放電針が内部に収容され、少なくとも内壁面が絶縁性の材質から成る絶縁性パイプと、前記チャンバ内に設置された高圧電源と、前記絶縁性パイプ内に設置された高電圧用端子と、前記チャンバ及び前記絶縁性パイプの内部に設置され、前記高圧電源と前記高電圧用端子を接続する高圧用電線と、を備え、前記放電部は前記高電圧用端子に対して着脱自在に構成され、前記放電部を前記高電圧用端子に接続したときに、前記高圧電源から前記放電針に高電圧を印加することが可能となることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、チャンバ内に高圧電源を設置するとともに、チャンバに連通する絶縁性パイプ内に高電圧用端子を設置することにより、高圧電源と高電圧用端子を接続する高圧用電線を装置外部(チャンバ及び絶縁性パイプの外部)に露出させることなく配線することが可能となり、安全性を高めることができる。また、放電部が高電圧用端子から着脱自在に構成されるので、放電部の取り外し、水洗い、及び使い捨てが可能となり、メンテナンス性が向上する。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の一態様に係り、前記絶縁性パイプには、前記放電部が前記高電圧用端子に接続されるように案内するガイド手段が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、放電部と高電圧用端子の接続が容易となる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明の一態様に係り、前記高圧電源から前記高電圧用端子に異常電流が流れないように電流を制御する電流制御手段が設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、高電圧用端子を介して放電部(放電針)に異常電流が流れないようにすることができ、安全性が向上する。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の発明の一態様に係り、前記絶縁性パイプは透明部材で構成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、絶縁性パイプから放電部を取り外すことなく、絶縁性パイプ内に収容される放電針の汚れ状態を外部から確認することが可能となり、メンテナンス性が向上する。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の発明の一態様に係り、前記放電針取付台には前記放電針を取り外し可能な接続部が設けられていることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、放電針のみを交換することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、チャンバ内に高圧電源を設置するとともに、チャンバに連通する絶縁性パイプ内に高電圧用端子を設置することにより、高圧電源と高電圧用端子を接続する高圧用電線を装置外部(チャンバ及び絶縁性パイプの外部)に露出させることなく配線することが可能となり、安全性を高めることができる。また、放電部が高電圧用端子から着脱自在に構成されるので、放電部の取り外し、水洗い、及び使い捨てが可能となり、メンテナンス性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面に従って本発明に係るイオン発生装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係るイオン発生装置を示した構成図である。図2〜図4は、本実施形態に係るイオン発生装置の絶縁性パイプの正面図、平面図、側断面図である。図5は、本実施形態に係るイオン発生装置の放電部を示した構成図である。
【0023】
図1に示すイオン発生装置10は、複数の放電針12を備える放電部14と、放電針12によってイオンが生成されるイオン生成部16と、イオン生成部16に空気を供給する空気供給部18と、放電針12に高電圧を印加する電源供給部20と、から主に構成される。
【0024】
イオン生成部16は、少なくとも内壁面が絶縁性の材質から成る円筒状の絶縁性パイプ22によって構成される。この絶縁性パイプ22内には、放電部14を構成する複数の放電針12がそれらの針先を前方(絶縁性パイプ22の先端部に設けられる吹出口24側)に向けた状態で収容されている。
【0025】
空気供給部18には送風ファン30が設けられている。送風ファン30はチャンバ32内に設置されており、このチャンバ32は連通口34を介して絶縁性パイプ22の後端部と連通されている。送風ファン30の作動に応じて、チャンバ32から絶縁性パイプ22に空気が供給される。
【0026】
電源供給部20は、高圧電源36、高圧用電線38、及び高電圧用端子40から構成される。高圧電源36はチャンバ32内に設置されるとともに、高電圧用端子40は絶縁性パイプ22内に設置されており、これら(高圧電源36及び高電圧用端子40)を接続する高圧用電線38は、装置外部(チャンバ32及び絶縁性パイプ22の外部)に露出することなく、装置内部(チャンバ32及び絶縁性パイプ22の外部)に配線されている。
【0027】
放電部14は絶縁性パイプ22に対して脱着自在に構成されており、放電部14が絶縁性パイプ22に取り付けられた状態(即ち、複数の放電針12が絶縁性パイプ22内に収容された状態)で、放電部14が高電圧用端子40に接続されるように構成されている。これにより、高圧電源36から放電針12に高電圧を印加することが可能となる。
【0028】
特に、本実施形態の絶縁性パイプ22には、図2〜図4に示すように、放電部14が高電圧用端子40に接続されるように案内するレール部材42(本発明の「ガイド手段」に相当)が設けられている。これにより、放電部14をレール部材42に沿って絶縁性パイプ22に挿入することによって、放電部14と高電圧用端子40の接続を容易にすることができる。
【0029】
また、本実施形態の放電部14には、図5に示すように、各放電針12に対応して設けられる接続部44と、各接続部44が固着される放電針取付台46と、放電針取付台46を支持するとともに、上述したレール部材42に直接案内される被ガイド部材48と、被ガイド部材48の一端に固設される放電針取出用蓋50と、が設けられる。放電部14が絶縁性パイプ22に取り付けられた状態において、放電針取出用蓋50は、絶縁性パイプ22の側壁に設けられた開口を塞ぐように構成される。
【0030】
各接続部44は、それぞれ対応する放電針12の基端部を取り付け及び取り外しが可能(脱着可能)に構成されている。放電針12を交換する場合には、放電針取出用蓋50を把持して絶縁性パイプ22から放電部14を取り外し、接続部44から放電針12を取り外して、該接続部44に新品の放電針を取り付けた後、元の状態に戻してやればよい。このように放電針12を取り外し可能な接続部44を設ける態様によれば、放電針12のみを交換することが可能となる。もちろん、各放電針12の基端部を放電針取付台46に植設する態様もあり得る。
【0031】
かかる構成により、高圧電源36から高圧用電線38及び高電圧用端子40を介して放電針12に高電圧が印加されると、放電針12からコロナ放電が発生してイオンが生成される。これと同時に、チャンバ32内に設置される送風ファン30から供給される空気が連通口34を介して絶縁性パイプ22内に流入し、生成されたイオンは空気とともに吹出口24から外部に吹き出される。このようにしてイオン発生装置10から吹き出されるイオン化された空気を被除電物に吹き付けることにより、被除電物の除電を行うことができる。
【0032】
本発明の好ましい態様として、絶縁性パイプ22を透明部材で構成する態様がある。また、放電針取出用蓋50を透明部材で構成する態様も好ましい。このような態様によれば、放電部14を取り外すことなく、絶縁性パイプ22内に収容される放電針12の汚れ状態を外部から確認することが可能となる。絶縁性パイプ22全体が透明部材で構成されていてもよいし、絶縁性パイプ22の一部(例えば、側壁部の一部)に透明部材から成る窓部を設けるようにしてもよい。放電針取出用蓋50についても同様であり、放電針取出用蓋50の少なくとも一部が透明部材で構成されていればよい。また、透明部材は完全に透明である必要はなく、外部から放電針12の汚れ状態を視認できる程度に透明であればよい。
【0033】
また、図6に示すように、高圧電源36から高電圧用端子40に異常電流が流れないように電流を制御する電流制御装置52(本発明の「電流制御手段」に相当)を高圧電源36と高電圧用端子40の間に設ける態様も好ましい。放電部14(放電針12)に異常電流が流れないようにすることができ、人が誤って電極に触れた場合に人が負傷することを防ぐことができる。
【0034】
本実施形態のイオン発生装置10によれば、チャンバ32内に高圧電源36を設置するとともに、チャンバ32に連通する絶縁性パイプ22内に高電圧用端子40を設置することにより、高圧電源36と高電圧用端子40を接続する高圧用電線38を装置外部(チャンバ32及び絶縁性パイプ22の外部)に露出させることなく配線することが可能となり、安全性を高めることができる。また、放電部14を高電圧用端子40から着脱自在に構成することによって、放電部14を高圧電源36側と電気的に分離した状態で放電部14の清掃(例えば、水洗いなど)を行うことができ、放電部の取り外し、水洗い、及び使い捨てが可能となり、メンテナンス性が向上する。
【0035】
なお、本実施形態では、針状電極(放電針12)を用いてイオンを発生させているが、沿面放電を用いる平面電極などの他形状の放電電極を用いても同様の効果を得ることができる。
【0036】
以上、本発明のイオン発生装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係るイオン発生装置を示した構成図
【図2】図1に示すイオン発生装置の絶縁性パイプの正面図
【図3】図1に示すイオン発生装置の絶縁性パイプの平面図
【図4】図1に示すイオン発生装置の絶縁性パイプの側断面図
【図5】図1に示すイオン発生装置の放電部を示した構成図
【図6】電流制御装置を備えたイオン発生装置を示した構成図
【図7】従来技術に係る送風除電装置を示した図
【図8】従来技術に係る直流除電器の構造を示した図
【符号の説明】
【0038】
10…イオン発生装置、12…放電針、14…放電部、16…イオン生成部、18…空気供給部、20…電源供給部、22…絶縁性パイプ、24…吹出口、30…送風ファン、32…チャンバ、34…連通口、36…高圧電源、38…高圧用電線、40…高電圧用端子、42…レール部材、44…接続部、46…放電針取付台、48…被ガイド部材、50…放電針取出用蓋、52…電流制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風ファンと、
前記送風ファンが内部に設置されるチャンバと、
放電針及び放電針取付台から成る放電部と、
前記チャンバと連通されるとともに、前記放電針が内部に収容され、少なくとも内壁面が絶縁性の材質から成る絶縁性パイプと、
前記チャンバ内に設置された高圧電源と、
前記絶縁性パイプ内に設置された高電圧用端子と、
前記チャンバ及び前記絶縁性パイプの内部に設置され、前記高圧電源と前記高電圧用端子を接続する高圧用電線と、を備え、
前記放電部は前記高電圧用端子に対して着脱自在に構成され、
前記放電部を前記高電圧用端子に接続したときに、前記高圧電源から前記放電針に高電圧を印加することが可能となることを特徴とするイオン発生装置。
【請求項2】
前記絶縁性パイプには、前記放電部が前記高電圧用端子に接続されるように案内するガイド手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のイオン発生装置。
【請求項3】
前記高圧電源から前記高電圧用端子に異常電流が流れないように電流を制御する電流制御手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のイオン発生装置。
【請求項4】
前記絶縁性パイプは透明部材で構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のイオン発生装置。
【請求項5】
前記放電針取付台には前記放電針を取り外し可能な接続部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のイオン発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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