説明

イオン電流検出装置及びイオン電流検出方法

【課題】実用炉等の工業用燃焼装置における火炎生成領域を解析又は特定可能なイオン電流検出装置を提供する。
【解決手段】イオン電流検出装置(1)は、プローブ部(10)、補償極(40)、電源(51)及び電流測定部(52)を含む電気回路(50)を備え、プローブ部の探針(11)を火炎(F)に接触させるように構成される。補償極は探針を支持するプローブ部の構造体(13,24)に配設され、探針及び補償極は、同時に火炎に接触する。探針及び補償極は、火炎帯のイオンを媒介として電気的に接続され、電気回路(50)は閉成する。電流測定部(52)は、電気回路を流れる電流を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン電流検出装置及びイオン電流検出方法に関するものであり、より詳細には、実用炉等の工業用燃焼装置の燃焼反応を検出可能なイオン電流検出装置及びイオン電流検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃焼研究における反応領域特定方法として、受感部を備えた探針を火炎と接触させるイオン電流検出法(静電探針法)が知られている(非特許文献1)。図9には、イオン電流検出法の原理が示されている。
【0003】
図9に示すイオン電流検出装置100は、探針102及び冷却ジャケット103を備えたプローブ部101と、電源111及び電流測定部112を備えた電気回路110とから構成される。探針102は、冷却ジャケット103を貫通し、プローブ部101の先端面から前方に突出する。探針102の基端部は、導電線113及び電流測定部112を介して電源111の負極に接続される。電源111の正極が、バーナ120の金属管部分121に接続される。金属管部分121は、電気回路110の補償極として機能する。
【0004】
炭化水素系燃料及び燃焼用空気の予混合気が金属管部分121内の流路123に供給され、金属管部分121の先端開口から吐出する。バーナ120の先端部には、火炎伝播を伴う混合気炎Fが形成される。火炎Fの火炎面近傍に形成される火炎帯F1には、比較的多量のイオンが化学イオン化反応により生成する。火炎帯F1に挿入された探針102の先端部104は、金属管部分121から離間するが、先端部104及び金属管部分121は、火炎帯F1中のイオンを媒介として導電経路を閉成する。この結果、探針102、金属管部分121(補償極)、電源111及び電流測定部112を含む電気的閉回路(電気回路110)が形成され、電気回路110を流れる電流が電流測定部112によって測定される。
【0005】
このようなイオン電流検出法によれば、火炎の電気的性質を検出し得ることから、この種のイオン電流検出法は、燃焼反応の基礎研究の分野において小容量の火炎構造を実験的に研究する手法として、使用されてきた。
【0006】
他方、実用炉等の工業的な燃焼装置では、透明度が非常に高い比較的大容量の火炎を燃焼場に生成する燃焼条件が一般に採用される。このような燃焼条件では、通常は、目視確認不能な燃焼反応が燃焼場に進行するので、火炎生成領域を特定することは、困難である。しかし、このような工業用燃焼装置における火炎生成領域の特定に前述のイオン電流検出法を適用することが可能であれば、目視確認不能な燃焼反応領域を解析し又は特定する有効な手段が得られると考えられる。
【非特許文献1】日本機会学会論文集、昭和46年第37巻第298号「燃焼ガス流中のイオン測定に関する探針形状の影響」(平野敏右著)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、工業的に使用される実用炉等の燃焼装置では、火炎は、通常は、バーナの燃料供給口に付着せず、図10に示す如く、バーナから離間した状態で炉内空間に形成されるので、バーナの金属管部分を補償極とした電気回路を閉成することはできない。このような現象は、燃料及び燃焼用空気を炉内に直に噴射して拡散燃焼の火炎を炉内に生成する形式の実用炉、或いは、燃焼用空気を800℃以上の高温に加熱して炉内に緩慢な燃焼反応を生じさせる高温空気燃焼方式の実用炉において顕著に観られる。
【0008】
また、燃焼反応の基礎研究の分野において使用される小容量の火炎と異なり、実用炉の分野では、火炎の容量が大きく、このため、炉内をトラバースした火炎測定を行うには、十分な強度及び耐熱性等を備えた大型のプローブ部を製作しなければならない。しかし、プローブ部の大型化は、測定手段としての空間分解能を低下させてしまう。しかも、現実には、大型プローブをトラバースするためのスペースを炉内領域に確保し得るとは限らない。
【0009】
このような事情より、イオン電流検出装置を用いたイオン電流検出法は、実用炉等の工業用燃焼装置においては、火炎生成領域の解析又は特定に適用し難いと考えられてきた。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、実用炉等の工業用燃焼装置において、火炎生成領域の解析又は特定に有効利用可能なイオン電流検出装置及びイオン電流検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成すべく、プローブ部、補償極、電源及び電流測定部を含む電気回路を備え、前記プローブ部の探針を火炎に接触させるように構成されたイオン電流検出装置において、
前記探針を支持するプローブ部の構造体に前記補償極を一体的に配設し、前記探針及び補償極を同時に火炎に接触させるようにしたことを特徴とするイオン電流検出装置を提供する。
【0012】
本発明は又、プローブ部、補償極、電源及び電流測定部を含む電気回路を用い、前記プローブ部の探針を火炎に接触させて前記電気回路の電流を計測するイオン電流検出方法において、
前記プローブ部の先端部に配置された前記探針及び補償極を同時に火炎帯に接触させ、該火炎帯のイオンを媒介として前記探針及び補償極を電気的に接続して前記電気回路を閉成し、該電気回路を流れる電流を測定することを特徴とするイオン電流検出方法を提供する。
【0013】
本発明の上記構成によれば、探針及び補償極の双方がイオン電流検出装置のプローブ部に配設され、プローブ部は、探針及び補償極を一体化した構成を有する。探針及び補償極は、プローブ部と火炎との相対位置を適切に設定することにより、同時に火炎帯に接触することができる。火炎と非接触状態の探針及び補償極は、電気回路を遮断する開路状態の接点として機能する。他方、火炎(殊に火炎帯)と接触した探針及び補償極は、電気回路を閉成する接続状態の接点として機能する。イオン電流が、探針及び補償極の火炎接触により閉成した電気回路を流れ、電流測定部によって測定される。従って、上記イオン電流検出装置及びイオン電流検出方法によれば、バーナ又は炉内構造物を補償極として使用することなく、火炎生成領域を解析し又は特定することができる。
【0014】
本発明者は、本発明のイオン電流検出装置を比較的大型の実用炉に取付け、プローブ部に設けられた冷却装置に冷却液を循環するとともに、探針及び補償極の絶縁性を十分に確保した状態で本発明のイオン電流検出装置の性能を実験した。その結果、本発明のイオン電流検出装置により、高温の炉内に生成した拡散火炎の位置及び性状を有効に検出し得ることが確認された。また、本発明のイオン電流検出装置によれば、探針の受感部の長さ及び直径、受感部及び補償極の間の距離を適正化することにより、火炎の位置及び性状を空間的に高い分解能で測定し得ることが判明した。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、実用炉等の工業用燃焼装置において、火炎生成領域の解析又は特定に有効利用可能なイオン電流検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
イオン濃度が高い火炎帯の厚さは、通常は、0.1〜1.0mm程度であり、受感部及び補償極の双方が火炎帯に接触したときに有効に計測可能なイオン電流が電気回路を流れる。他方、受感部及び補償極が比較的大きく離間した場合、受感部及び補償極と火炎帯との相対角度によっては、受感部及び補償極の一方が火炎帯と接触しない状況が生じ得る。このため、本発明の好適な実施形態では、探針の受感部と、補償極との間の離間距離は、火炎帯の厚さよりも小さい値に設定される。
【0017】
本発明の実施形態において、上記補償極は、プローブ部の先端部から前方に突出し、或いは、プローブ部から前方に突出する突出部分に取付けられ、上記探針の受感部は、補償極から前方に延び、或いは、突出部分から前方に延びる。
【0018】
本発明の他の実施形態において、上記探針及び補償極は、プローブ部の側面に一体的に取付けられ又は固着した導電性金属からなる。
【0019】
本発明の更に他の実施形態において、プローブ部の各構成要素は、導電性材料の管体に収容され、管体の先端部は、上記補償極を構成し、上記探針は、管体の先端中心部から前方に突出する。
【0020】
本発明のイオン電流検出方法に基づいて複数のプローブ部を比較的接近した状態で燃焼域に配置し、プローブ部の先端部を通過する反応体を経時的に測定することができる。従って、本発明のイオン電流検出方法は、空間に浮遊する火炎においても、燃焼反応領域の移動速度を検出する方法として使用することができる。
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0022】
図1〜図3は、本発明のイオン電流検出装置を構成するプローブ部の構造を示す縦断面図、側面図及び正面図であり、図4は、イオン電流検出装置の全体構成を示すシステム構成図である。
【0023】
図1〜図3には、イオン電流検出装置1を構成するプローブ部10の構成が示されている。プローブ部10は、受感部を構成する探針11と、探針11を挿通した被覆管12と、被覆管12を内装した外装管13と、外装管13を収容した水冷ジャケット14とから構成される。
【0024】
探針11は、白金線からなり、探針11の先端部15は、被覆管12から所定距離L1だけ突出する。先端部15は、火炎に接触する受感部を構成する。探針11の基端部16には、信号線17が接続される。信号線17は、外装管13の管内領域に配線され、信号線取出し部18が、外装管13の基端部に装着される。信号線17は、取出し部18を介して外部信号線19に連続する。距離L1を小寸法に設定すると、イオン電流検出装置1の空間分解能が向上するが、その信号強度が低下し、従って、S/N比が悪化する。他方、距離L1を比較的大きな寸法値に設定すると、イオン電流検出装置1の空間分解能は悪化するが、その信号強度は増大し、S/N比が向上する。即ち、信号強度及び空間分解能は、トレードオフ関係にある。従って、実用的には、ノイズの状況等を考慮しつつ、距離L1を2〜10mmの範囲内の値に設定することが望ましい。
【0025】
探針11、被覆管12及び外装管13は、プローブ部10の中心軸線を中心に同心状に配置される。耐熱性及び電気的絶縁性を有する充填材20が、被覆管12と外装管13との間に充填され、外装管13は、充填材20を介して被覆管12を一体的に支持する。被覆管12及び外装管13の先端面は、水冷ジャケット14の先端フランジ23から所定距離L2だけ突出する。距離L2は、任意の寸法値に設定することができる。
【0026】
白金線からなる補償極40が、外装管13の先端部外周面に一体的に取付けられる。導電線41が補償極40に接続される。導電線41を外部信号線43に接続するための接続部42が、水冷ジャケット14の外面に取付けられる。導電線41は、先端フランジ23及び水冷ジャケット14の外面に沿って延び、接続部42において信号線43と接続される。
【0027】
水冷ジャケット14は、外管24、内管26、冷却水導入管27及び冷却水導出管28から構成される。外管24及び内管26は、外装管13と同心状に外装管13廻りに配置される。外管24の先端部は、先端フランジ23に連接し、他方、外管24の基端部は、基端フランジ25の外縁部に連接する。フランジ23、25は、外管24の先端側開口及び基端側開口を夫々閉塞する。基端フランジ25は、信号線取出し部18を装着可能な中心開口を備える。
【0028】
水冷ジャケット14は、外管24の内側に内管26を同心状に配置した二重管構造を有する。冷却水導入管27は、内管26の基端部に接続され、冷却水導出管28は、外管24の基端部に接続される。流路30が内管26と外装管13との間に形成され、流路31が外管24と内管26との間に形成される。流路30、31は、先端フランジ23の近傍に配置された連通部32によって相互連通する。冷却水導入管27の冷却水供給口29から流路30に流入した冷却水は、流路30、連通部32及び流路31を流通して冷却水導出管28の冷却水排出口33に流出し、冷却水導出管28から導出される。冷却水導入管27は、先端フランジ23の部分の過冷却を防止すべく、プローブ部10の基端部に隣接した位置に配置される。
【0029】
図4に示す如く、イオン電流検出装置1は、プローブ部10と、直流電源51及び電流測定部52を含む電気回路50とから構成される。冷却水供給管36及び冷却水還流管37が冷却水導入管27及び冷却水導出管28に夫々接続され、冷却水は、冷却水圧送装置35の圧力下に水冷ジャケット14を循環する。
【0030】
直流電源51の負極が、電流測定部52及び信号線17、19を介して探針11に接続される。直流電源51の正極が、導電線41及び信号線43を介して補償極40に接続される。プローブ部10の先端部分が、火炎Fに挿入され、探針11及び補償極40は、火炎Fの火炎帯F1に同時に接触する。
【0031】
火炎Fは、炭化水素系燃料の予混合燃焼又は拡散燃焼による火炎からなり、火炎帯F1及びその近傍には、化学イオン化反応により生成したイオンが比較的多量に存在する。探針11の先端部15は、火炎帯F1に挿入される。同時に、外装管13の先端部外周面に配置された補償極40も又、火炎帯F1に挿入される。火炎帯F1は、比較的高いイオン濃度を有し、探針11及び補償極40は、火炎帯F1中のイオンを媒介として導電経路を閉成する。この結果、探針11、補償極40及び電気回路50は、電源51の電流が流れる閉回路を形成し、電流測定部52は、電気回路50を流れる電流を計測する。
【0032】
図4に示すシステム構成から明らかなとおり、イオン電流検出装置1は、補償極40をプローブ部10の先端部分に配置した構成を備えており、バーナ本体の金属部分を補償極として使用する従来のイオン電流検出装置とは、顕著に相違する。本発明者は、探針10及び補償極40を適切に配置したイオン電流検出装置1を用いて火炎Fのイオン電流を計測するとともに、バーナ本体の金属部分を補償極とした従来のイオン電流検出装置を用いて火炎Fのイオン電流を計測し、両者を対比する比較実験を実施した。このような比較実験の結果、従来のイオン電流検出装置と同等の計測結果が、イオン電流検出装置1によって得られることが判明した。即ち、本発明のイオン電流検出装置1によれば、バーナ本体の金属部分を補償極として使用せずに、バーナの金属部分を補償極とした従来のイオン電流検出装置と同様、探針10の火炎接触時に発生するイオン電流を測定することができる。
【0033】
なお、探針10及び補償極40は、探針10及び補償極40の電気的な絶縁性を確保すべく、適切な距離を隔ててプローブ部10の先端部分に配置されるが、火炎帯F1は、一般には、0.1〜1.0mm程度の厚さを有するにすぎない。このため、探針10及び補償極40の離間距離は、探針10及び補償極40の双方が火炎帯F1内に位置するように比較的小寸法(例えば、0.1〜1.0mm)に設定することが望ましい。
【0034】
かくして、探針10及び補償極40の双方をプローブ部10に備えた本発明のイオン電流検出装置1によれば、火炎基部がバーナに付着するか否かにかかわらず、火炎を検出することができる。これは、バーナに付着しない火炎の位置及び特性の検出を可能にする。例えば、燃料及び燃焼用空気を炉内に直に噴射して炉内拡散燃焼を生じさせる形式の実用炉、或いは、燃焼用空気を800℃以上の高温に加熱して炉内に緩慢な燃焼反応を生じさせる高温空気燃焼方式の実用炉においては、火炎は、ある程度の距離をバーナから隔てて炉内領域に生成するが、上記構成のイオン電流検出装置1によれば、このような火炎の位置及び特性をイオン電流検出法によって検出することができる。
【0035】
図5は、本発明の他の形態に係るプローブ部の構造を示す縦断面図である。図5において、前述の実施形態の各構成要素と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号が付されている。
【0036】
本実施形態においては、プローブ部10の先端面は、面一に形成され、探針11のみがプローブ部先端面から所定距離L1だけ前方に突出する。水冷ジャケット14を構成する導電性材料の外管24は、補償極40を構成する。外管24は、接続部42によって外部信号線43に接続される。図5に仮想線で示す如く、探針11の先端部15は、火炎帯F1に挿入される。同時に、補償極40を構成する外管24の先端部も又、火炎帯F1に挿入される。探針11及び補償極40は、火炎帯F1中のイオンを媒介として導電経路を閉成するので、探針11、補償極40及び電気回路50(図4)は、電源51の電流が流れる閉回路を形成し、電流測定部52は、電気回路50を流れる電流を計測する。
【0037】
図6には、プローブ先端部分の各種形態が例示されている。図6(A)には、プローブ部10の先端面外縁部に環状プレート38を形成したプローブ先端構造が示されている。図6(B)には、プレート38の変形例が示されており、プレート38は、前方に向かって傾斜した形態を有する。他の変形例として、図6(C)に示すように、先端フランジ23を円錐状に窪ませることによって鋭角の縁部38’を先端フランジ23の外縁部に形成し、或いは、図6(D)に示す如く、前方に突出した縁部38”を 先端フランジ23の外縁部に形成しても良い。
【0038】
図7は、本発明の他の実施形態に係るプローブ部の構成を概略的に示す縦断面図及びI−I線断面図であり、図8は、本発明の更に他の実施形態に係るプローブ部の構成を概略的に示す縦断面図及びII-II線断面図である。
【0039】
図7及び図8に示す各プローブ部10は、アルミナ等のセラミックス成形品からなる円形断面の柱状部材61(側面図として示す)を備える。柱状部材61及び外装管13は、プローブ部10の中心軸線を中心に同心状に配置され、充填材20が柱状部材61と外装管13との間に充填される。柱状部材61は、充填材20を介して外装管13に一体的に支持され、先端フランジ23から前方に突出する。柱状部材61の外周面には、探針11及び補償極40が形成される。探針11及び補償極40は、柱状部材61の外周面に一体的に取付け又は貼付けた線型導電部材、或いは、外管24の外周面にエッチングした白金(Pt)等の導電性金属からなり、柱状部材61の軸芯方向に延びる。探針11及び補償極40は、狭小間隔Sを隔てて離間し、間隔Sは、探針10及び補償極40の双方が火炎帯F1(図4)に接触するように比較的小寸法(例えば、0.1〜1.0mm)に設定される。
【0040】
プローブ部10を含むイオン電流検出装置1は、図4に示すシステム構成と実質的に同じシステム構成を全体として備えており、図4に示す如く、電気回路50を構成する直流電源51及び電流測定部52が、外部信号線19、43を介して探針11及び補償極40に接続される。所望により、複数の信号線が外装管13の管内領域に配線され、これらの信号線は、図4に示す信号線17と同様に外部信号線19と探針11とを接続するとともに、補償極40と外部信号線43とを接続する。
【0041】
図1〜図6に示す実施形態と同様、プローブ部10の先端部分は、火炎Fに挿入され、探針11及び補償極40は、火炎Fの火炎帯F1に同時に接触する。探針11及び補償極40は、火炎帯F1中のイオンを媒介として導電経路を閉成し、電流測定部52は、電気回路50を流れる電流を計測する。
【0042】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能であり、このような変形例又は変更例も又、本発明の範囲内に含まれるものであることは、いうまでもない。
【0043】
例えば、複数のイオン電流検出装置1を炉内に配置し、火炎帯の位置を経時的に計測することにより、火炎の挙動又は移動速度を検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、実用炉等の工業用燃焼装置の燃焼反応を検出するイオン電流検出装置及びイオン電流検出方法に適用される。本発明のイオン電流検出装置及びイオン電流検出方法は、燃料及び燃焼用空気を炉内に噴射する炉内拡散燃焼や、800℃以上の高温の燃焼空気を使用する高温空気燃焼等によって燃焼域に生成した火炎の位置及び特性を検出する装置及び方法として好適に使用し得る。本発明のイオン電流検出装置及びイオン電流検出方法によれば、高価な光学的検出機器等を使用せずに、工業用燃焼装置の炉内に生成した火炎の位置及び特性を比較的簡易な構成で検出することができ、従って、本発明は、実用的に極めて有利である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のイオン電流検出装置を構成するプローブ部の構造を示す縦断面図である。
【図2】図1に示すプローブ部の側面図である。
【図3】図1に示すプローブ部の正面図である。
【図4】イオン電流検出装置の全体構成を示すシステム構成図である。
【図5】本発明の他の形態に係るプローブ部の構造を示す縦断面図である。
【図6】プローブ部の先端部分の各種形態を例示する概略断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係るプローブ部の構成を概略的に示す縦断面図及びI−I線断面図である。
【図8】本発明の更に他の実施形態に係るプローブ部の構成を概略的に示す縦断面図及びII-II線断面図である。
【図9】従来のイオン電流検出法の原理を概略的に示すシステム構成図である。
【図10】従来のイオン電流装置によって空間浮遊火炎を計測する状態を例示するシステム構成図である。
【符号の説明】
【0046】
1:イオン電流検出装置
10:プローブ部
11:探針
12:被覆管
13:外装管
14:水冷ジャケット
15:先端部(受感部)
17、19、43:信号線
24:外管
26:内管
40:補償極
41:導電線
50:電気回路
51:直流電源
52:電流測定部
F:火炎
F1:火炎帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブ部、補償極、電源及び電流測定部を含む電気回路を備え、前記プローブ部の探針を火炎に接触させるように構成されたイオン電流検出装置において、
前記探針を支持するプローブ部の構造体に前記補償極を一体的に配設し、前記探針及び補償極を同時に火炎に接触させるようにしたことを特徴とするイオン電流検出装置。
【請求項2】
前記探針の受感部と、前記補償極との間の離間距離を火炎帯の厚さよりも小さい値に設定したことを特徴とする請求項1に記載のイオン電流検出装置。
【請求項3】
前記補償極は、前記プローブ部の先端部から前方に突出し、或いは、前記プローブ部から前方に突出する突出部分に取付けられ、前記探針の受感部は、前記補償極から前方に延び、或いは、前記突出部分から前方に延びることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン電流検出装置。
【請求項4】
前記探針及び補償極は、プローブ部の側面に一体的に取付けられ又は固着した導電性金属からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン電流検出装置。
【請求項5】
前記プローブ部の各構成要素は、導電性材料の管体に収容され、該管体の先端部は、前記補償極を構成し、前記探針は、前記管体の先端中心部から前方に突出することを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン電流検出装置。
【請求項6】
プローブ部、補償極、電源及び電流測定部を含む電気回路を用い、前記プローブ部の探針を火炎に接触させて前記電気回路の電流を計測するイオン電流検出方法において、
前記プローブ部の先端部に配置された前記探針及び補償極を同時に火炎帯に接触させ、該火炎帯のイオンを媒介として前記探針及び補償極を電気的に接続して前記電気回路を閉成し、該電気回路を流れる電流を測定することを特徴とするイオン電流検出方法。
【請求項7】
複数の前記プローブ部を比較的接近した状態で配置し、該プローブ部の先端部を通過する反応体を経時的に測定することを特徴とする請求項6に記載のイオン電流検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−192757(P2007−192757A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−13257(P2006−13257)
【出願日】平成18年1月21日(2006.1.21)
【出願人】(000229748)株式会社NFKホールディングス (8)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】