説明

イソオキサゾール誘導体又はジヒドロイソオキサゾール誘導体の製造方法

【課題】収率よく、かつ廃棄物を排出しないイソオキサゾール誘導体の製造方法ならびに新規イソオキサゾール誘導体。
【解決手段】式(3)
【化13】


[式中、R1はアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基などを示す。]で表される1−アルキン化合物と塩化鉄(III)およびNOガスとを、アセトンまたはアセトフェノンの存在下で反応させる、式(4)
【化14】


[式中、R1およびR2は前記と同じ意味である。]で表されるイソオキサゾール誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、イソオキサゾール誘導体又はジヒドロイソオキサゾール誘導体の製造方法に関し、特に、塩化鉄(III)およびNO2ガスを利用することにより、収率よく、かつ廃棄物を排出しないイソオキサゾール誘導体の新規な製造方法ならびに該製造方法により得られる新規なイソオキサゾール誘導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イソオキサゾール誘導体は制癌作用、抗炎症作用及び免疫調節作用など様々な薬理作用を有する化合物であることが知られている。また一方で、へテロ環であるイソオキサゾール環は還元的開環によりα,β−不飽和ケトン、β−ジケトン、β−ヒドロキシケトンおよびγ−アミルアルコールなどに変換できる有機合成上や薬学分野にとって有用な反応中間体である。そこで、このイソオキサゾール誘導体をより効率よく合成する方法を発明することは、非常に有意義なことであると期待される。
【0003】
従来、これらへテロ環の構築はケトン化合物からオキシムを経由し、ニトリルオキシドに導き、1,3−環化付加による方法に依存していた。
【0004】
また、アルケンまたはアルキンといった炭素−炭素不飽和結合を持つ化合物に、硝酸セリウム(IV)アンモニウム(通称CAN(IV)を、アセトン中還流条件下またはアセト
フェノン中80℃において、作用させると、溶媒分子のニトロ化.ニトリルオキシドの生成を経由し1,3−双極子環化付加反応によりイソオキサゾール誘導体が1段階で高収率にて得られること、また、CAN(IV)の代わりにCAN(III)とギ酸を用いても同様の
反応が進行し、副生成物の生成を抑え、さらに収率が向上することが知られている(例えば、非特許文献1、2参照。)。
【非特許文献1】Itoh,K;Takahashi,S;Ueki,T;Takahashi,T and Horiuchi,C.A;TETRAHEDRON LETTERS,43,(2002),p.7035−7037.
【非特許文献2】Itoh,K and Horiuchi,C.A;TETRAHEDRON,60,(2004),p.1671−1681.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1、2に記載されるような硝酸セリウム(IV)アンモニウム
あるいは硝酸セリウム(III)アンモニウムを用いる合成法は、環境汚染につながる廃棄物等が排出され、廃棄物処理などコスト面で高くつき、また収率の点でも必ずしも十分ではないなど問題があった。
【0006】
このような状況に鑑み、本発明者らは、硝酸セリウム以外の金属塩を用いての反応の進行を見込み、様々な金属の塩を用いて検討を行った。その結果、セリウム塩に比べて安価で、副生成物の処理もしやすく環境に順応した金属である塩化鉄(III)を用いかつこれにNO2ガスを併用すると同様の反応が進行することを見出した。
【0007】
この発明の目的は、収率よく、かつ廃棄物を排出しないイソオキサゾール誘導体の新規な製造方法を提供することにある。
【0008】
また、この発明の目的は、塩化鉄(III)およびNO2ガスを利用するアルキン化合物からの新規なイソオキサゾール誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、前記課題を解決するために、イソオキサゾール誘導体の製造方法、特に、塩化鉄(III)およびNO2ガスを利用するイソオキサゾール誘導体の製造方法において、以下の構成を有することを特徴とするものである。
【0010】
(i)式(1)
【0011】
【化6】

【0012】
[式中、R1は置換基を有してもよい直鎖状または分岐状のアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキルカルボキシル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよい芳香族または非芳香族複素環基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアルキルシアノ基、置換基を有してもよいニトロ基あるいは置換基を有してもよいアシル基を示す。]で表される1−アルケン化合物と塩化鉄(III)およびNO2ガスとを、アセトンまたはアセトフェノンの存在下で反応させることを特徴とする、式(2)
【0013】
【化7】

【0014】
[式中、R1は前記と同じ意味であり、R2はメチル基またはフェニル基を示す。]で表されるジヒドロイソオキサゾール誘導体の製造方法。
【0015】
(ii)前記反応がマイクロウエーブを照射しながら行われる前項(i)に記載されるジヒドロイソオキサゾール誘導体の製造方法。
【0016】
(iii)前記ジヒドロイソオキサゾール誘導体が、3−アセチルジヒドロイソオキサゾール誘導体である前項(i)または(ii)に記載されるジヒドロイソオキサゾール誘導体の製造方法。
【0017】
(iv)前記ジヒドロイソオキサゾール誘導体が、3−ベンゾイルジヒドロイソオキサゾール誘導体である前項(i)または(ii)に記載されるジヒドロイソオキサゾール誘導体の製造方法。
【0018】
(v)式(3)
【0019】
【化8】

【0020】
[式中、R1は前記と同じ意味である。]で表される1−アルキン化合物と塩化鉄(III)およびNOガスとを、アセトンまたはアセトフェノンの存在下で反応させる、式(4)
【0021】
【化9】

【0022】
[式中、R1およびR2は前記と同じ意味である。]で表されるイソオキサゾール誘導体の製造方法。
【0023】
(vi)式(4)
【0024】
【化10】

【0025】
[式中、R1およびR2は前記と同じ意味である。]で表されるイソオキサゾール誘導体。
【0026】
(vii)前記イソオキサゾール誘導体が、3−アセチルイソオキサゾール誘導体または3−ベンゾイルイソオキサゾール誘導体である前項(vi)に記載されるイソオキサゾール誘導体。
【0027】
(viii)前記イソオキサゾール誘導体が、3−アセチル−5−プロピルイソオキサゾール、3−アセチル−5−ブチルイソオキサゾール、3−アセチル−5−ペンチルイソオキサゾール3−アセチル−5−ヘキシルイソオキサゾール、3−ベンゾイル−5−プロピルイソオキサゾール、3−ベンゾイル−5−ブチルイソオキサゾール、3−ベンゾイル−5−ペンチルイソオキサゾールまたは3−ベンゾイル−5−ヘキシルイソオキサゾールである前項(vi)または(vii)に記載されるイソオキサゾール誘導体。
【発明の効果】
【0028】
請求項1、3および4に記載される発明の構成によれば、反応において塩化鉄(III)は安価で環境に順応した金属であり処理もしやすい優れた試薬であるので、環境にやさしく、かつ、セリウム塩を用いた場合と比べて、反応時間は若干長くかかるがより収率よく目的化合物であるイソオキサゾール誘導体を得ることができる。また、NO2という環境に悪影響を与える廃棄ガスを有効に再利用できる。1段階でイソオキサゾール環の合成ができる。さらに、アセトンよりアセトフェノンを用いた場合にはより高収率で目的化合物を得られる。
【0029】
請求項2に記載される発明の構成によれば、反応中にマイクロウエーブを照射しない場合に比べて収率良く薬理作用を有する有用な新規化合物を合成することができるという効果を奏する。
【0030】
請求項5に記載される発明の構成によれば、廃棄物処理なく、高収率で目的化合物を得ることができるという効果を奏する。
【0031】
請求項6〜8に記載される発明の構成によれば、薬理作用をもつ有用な新規構造のイソオキサゾール誘導体を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、この発明の各構成要件について詳細に説明する。
【0033】
この発明において用いることができる、1−アルケン化合物および1−アルキン化合物の前記式(1)〜式(4)中のR1は、置換基を有してもよい直鎖状または分岐状のアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキルカルボキシル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよい芳香族あるいは非芳香族複素環基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアルキルシアノ基、置換基を有してもよいニトロ基あるいは置換基を有してもよいアシル基などを示す。
【0034】
この発明において用いることができる、1−アルケン化合物および1−アルキン化合物の前記式(1)〜式(4)中のR1の定義における、置換基を有してもよい直鎖状または分岐状のアルキル基としては、好ましくは炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、特に好ましくは炭素数3〜9のアルキル基が挙げられる。
【0035】
該アルキル基の具体例としては、メチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ジクロロメチル基、ヨードメチル基、ブロモメチル基、エチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、n−ヘキシル基、n−へプチル基、1−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、1−エチルペンチル基、1,1−ジエチルペンチル基、1,4−ジエチルペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,3,3−トリメチルブチル基、1−エチル−2.2−ジメチルプロピル基、n−オクチル基、1−メチルヘプチル基、1−エチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、1−プロピルペンチル基、1,1−ジメチルへキシル基、1−エチル−1−メチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、n−ノニル基、1−メチルオクチル基、1−エチルヘプチル基、1,5,5−トリメチルヘキシル基、n−デシル基、1−メチルノニル基、1,1−ジメチルオクチル基、3,7−ジメチルオクチル基、n−ウンデカン基、1−メチルデシル基、n−ドデシル基などが挙げられる。
【0036】
この発明において用いることができる、1−アルケン化合物および1−アルキン化合物の前記式(1)〜式(4)中のR1の定義における、置換基を有してもよいシクロアルキル基としては、好ましくは炭素数3〜10のシクロアルキル基が挙げられ、特に好ましくは炭素数5および6のシクロアルキル基が挙げられる。
【0037】
該シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、[2.2.1]ヘプチル基、[2.2.2]オクチル基などが挙げられる。
【0038】
この発明において用いることができる、1−アルケン化合物および1−アルキン化合物の前記式(1)〜式(4)中のR1の定義における、置換基を有してもよいアルコキシル基としては、好ましくは炭素数1〜6のアルコキシル基が挙げられ、好ましくは炭素数2〜6のアルコキシル基が挙げられる。
【0039】
該アルコキシル基の具体例としては、メトキシ基、トリフルオロメトキシ基、トリクロロメトキシ基、ジクロロメトキシ基、エトキシ基、ブロモエトキシ基、2−ヨードエトキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、プロポシキ基、3−クロロプロポシキ基、ブトキシ基、ペントキシ基などが挙げられる。
【0040】
この発明において用いることができる、1−アルケン化合物および1−アルキン化合物の前記式(1)〜式(4)中のR1の定義における、置換基を有してもよいアルキルチオ基としては、好ましくは炭素数1〜6のアルキルチオ基が挙げられ、特に好ましくは炭素数1〜3のアルキルチオ基が挙げられる。
【0041】
該アルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、1−メチルエチルチオ基、n-ブチルチオ基、1−メチルプロピルチオ基、1,1−ジメチルプロピルチオ基、2,2−ジメチルプロピルチオ基、n−ペンチルチオ基、2−メチルブチルチオ基、n−ヘキシルチオ基などが挙げられる。
【0042】
この発明において用いることができる、1−アルケン化合物および1−アルキン化合物の前記式(1)〜式(4)中のR1の定義における、置換基を有してもよいアルキルシアノ基としては、好ましくは炭素数0〜6のアルキルシアノ基が挙げられ、特に好ましくは炭素数0〜3のアルキルシアノ基が挙げられる。
【0043】
該アルキルシアノ基の具体例としては、シアノ基、メチルシアノ基、エチルシアノ基、n-プロピルシアノ基などが挙げられる。
【0044】
この発明において用いることができる、1−アルケン化合物および1−アルキン化合物の前記式(1)〜式(4)中のR1の定義における、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基としては、好ましくは炭素数1〜6のアルキルスルホニル基が挙げられる。
【0045】
該アルキルスルホニル基の具体例としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n-プロピルスルホニル基、1−メチルエチルスルホニル基、n-ブチルスルホニル基、1−メチルプロピルスルホニル基、n−ペンチルスルホニル基、2−メチルブチルスルホニル基、n−ヘキシルスルホニル基、1−エチルブチルスルホニル基などが挙げられる。
【0046】
この発明において用いることができる、1−アルケン化合物および1−アルキン化合物の前記式(1)〜式(4)中のR1の定義における、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基としては、好ましくは炭素数1〜7のアルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0047】
該アルコキシカルボニル基の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロピキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、イソアミルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0048】
この発明において用いることができる、1−アルケン化合物および1−アルキン化合物の前記式(1)〜式(4)中のR1の定義における、置換基を有してもよいアルキルカルボキシル基としては、好ましくは炭素数2〜6のアルキルカルボキシル基が挙げられる。
【0049】
該アルキルカルボキシル基の具体例としては、メチルカルボキシル基、エチルカルボキシル基、n-プロピルカルボキシル基、1−メチルエチルカルボキシル基、n-ブチルカルボキシル基、1−メチルプロピルカルボキシル基、n−ペンチルカルボキシル基、2−メチルブチルカルボキシル基、n−ヘキシルカルボキシル基、1−エチルブチルカルボキシル基などが挙げられる。
【0050】
この発明において用いることができる、1−アルケン化合物および1−アルキン化合物の前記式(1)〜式(4)中のR1の定義における、置換基を有してもよいフェニル基としては、好ましくは炭素数6〜14のフェニル基が挙げられ、特に好ましくは炭素数6〜10のフェニル基が挙げられる。
【0051】
該フェニル基の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−エチルフェニル基、p−イソプロピルフェニル基、p−t−ブチルフェニル基、p−クロロフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−ブトキシフェニル基などが挙げられる。
【0052】
この発明において用いることができる、1−アルケン化合物および1−アルキン化合物の前記式(1)〜式(4)中のR1の定義における、置換基を有してもよいナフチル基としては、好ましくは炭素数10〜17のナフチル基が挙げられ、特に好ましくは炭素数10〜12のナフチル基が挙げられる。
【0053】
該ナフチル基の具体例としては、1−ナフチル基、2−ナフチル基、6−メチル−2−ナフチル基、6−クロロ−2−ナフチル基などが挙げられる。
【0054】
この発明において用いることができる、1−アルケン化合物および1−アルキン化合物の前記式(1)〜式(4)中のR1の定義における、置換基を有してもよいフェノキシ基としては、好ましくは炭素数6〜14のフェノキシ基が挙げられ、特に好ましくは炭素数6〜10のフェノキシ基が挙げられる。
【0055】
該フェノキシ基の具体例としては、フェノキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基などが挙げられる。
【0056】
この発明において用いることができる、1−アルケン化合物および1−アルキン化合物の前記式(1)〜式(4)中のR1の定義における、置換基を有してもよい芳香族あるいは非芳香族複素環基としては、好ましくは5〜7員環の芳香族あるいは非芳香族複素環基が挙げられ、特に好ましくは5および6員環の芳香族あるいは非芳香族複素環基が挙げられる。
【0057】
該芳香族あるいは非芳香族複素環基の具体例としては、1−ピロリジニル基、ピペリジニル基、モリホリニル基、ピペラジニル基、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンズオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる。
【0058】
この発明において用いることができる、1−アルケン化合物および1−アルキン化合物の前記式(1)〜式(4)中のR1の定義における、置換基を有するアルキルアミノ基としては、好ましくは炭素数0〜13のアルキルアミノ基が挙げられ、特に好ましくは炭素数0〜10のアルキルアミノ基が挙げられる。
【0059】
該アルキルアミノ基の具体例としては、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジブチルアミノ基などが挙げられる。
【0060】
この発明において用いることができる、1−アルケン化合物および1−アルキン化合物の前記式(1)〜式(4)中のR1の定義における、置換基を有してもよいアシル基としては、好ましくは炭素数2〜13のアシル基が挙げられ、特に好ましくは炭素数2〜7のアシル基が挙げられる。
【0061】
該アシル基の具体例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘキサノイル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
【0062】
前記置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、置換されていてもよいメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチルなどのアルキル基、置換されていてもよいシクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基、置換されていてもよいメチルチオ、置換されていてもよいフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルなどのフェニル基、置換されていてもよい1−ピロリジル、ピペリジン、モルホリノなどの非芳香族複素環基、置換されていてもよい2−フリル、3−フリル、2−チエニル、2−ピリジル、1−ピロリル、1−イミダゾイル、1−ピラゾリルなどの芳香族複素環基、置換されていてもよいメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ヘキシルオキシ、ノニルオキシなどのアルコキシ基、置換されていてもよいカルボン酸エステル基、置換されていてもよいアルコキシカルボニル基、置換されていてもよいアセチル、プロピオニル、ブチリル、ベンゾイルなどのアシル基、置換されていてもよいメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、フェニルアミノなどのアミノ基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいメトキシ、エトキシ、プロポシキ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシヘキシルオキシなどのヒドロキシル基、エチルチオ、シクロブチルチオ、フェニルチオ、2−ピリジンチオなどのチオール基、カルボニル、エトキシカルボニルなどのエステル化もしくはアミド化されていてもよいカルボキシル基などが挙げられる。
【0063】
この発明において用い得る反応温度は、基質の種類などに応じて適当に選択することができるが、好ましくは5〜35℃であり、特に好ましくは室温である。反応温度が5℃未満でも、35℃を越えても収率が悪化するので好ましくない。
【0064】
反応は、任意の圧力下で行うことができる。
【0065】
反応時間は、反応温度及び圧力に応じて定められるが、収率アップの点から、約20秒間とするのが好ましい。
【0066】
この発明において用いられる塩化鉄(III)の使用量は、基質に対して好ましくは0.5〜2.0モル当量であり、特に好ましくは基質0.5mmolに対して塩化鉄(III)0.5mmolの等モル当量である。塩化鉄(III)の使用量が基質に対して0.5モル当量未満でも、また2.0モル当量を越えても収率が悪化するので好ましくない。
【0067】
導入するNO2ガスの流量は、好ましくは0.5ml/分〜45ml/分である。特に好ましくは約45ml/分である。NO2ガスの流量が0.5ml/分未満でも、45ml/分を越えても収率が悪化するので好ましくない。
【0068】
この発明において反応に用い得る媒体としては、アセトン又はアセトフェノンである。
【0069】
この発明においてマイクロウエーブを用いる場合には、その出力は90〜250ワット(W)であることが好ましく。また、その圧力は2〜16バールとすることが好ましく、約15バールとすることが特に好ましい。マイクロウエーブの出力及び圧力が上述した範囲を超えると収率が悪化するので好ましくない。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を挙げてこの発明の実施態様をさらに具体的に説明するが、この発明はその要旨を超えない限りこの範囲に限定されるものではない。
【0071】
なお、この発明の実施例において使用した基質および塩化鉄(III)FeCl3とも、すべて市販されているものを用いた。
【0072】
また、この発明の生成物であるイソオキサゾール誘導体の構造ならびに物性の測定には下記の測定装置を使用した。
【0073】
IR:FT−IR−230(日本分光製)
NMR:JEOLGSX400(日本電子製)
GC:島津ガスクロマトグラフGC−17A(島津製作所製)
GC−MS:GCMS−QP5050(島津製作所製)
GCL:HP5890(Hewlett Packerd社製)
【0074】
<実験方法>
基質(0.5mol)、塩化鉄(III)FeCl3(0.5mol)をアセトン(3または4ml)中、NO2ガスを約45ml/分の流量で20秒間導入しながら室温または還流条件下において攪拌しながら反応させる。反応終了後、ハイフロスーパーセルにより鉄を濾過、反応混合液を50mlのジエチルエーテルにて抽出した。その後、飽和炭酸水素ナトリウム、飽和食塩水、蒸留水の順で洗浄した。エーテル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し濃縮した。ここで、アセトフェノンを用いた場合には減圧蒸留にて除去した。得られた淡黄色の油状物をシリカゲルクロマトグラフィーによって単離・生成を行い、NMR、IR、GC−MSなどの各スペクトルを測定し構造決定を行った。
【0075】
(実施例1〜12)
<塩化鉄(III)FeCl3およびNO2ガスを利用した1−オクテンとアセトンとの反応>
1−オクテンを基質として、アセトン中で1−オクテンと塩化鉄(III)FeCl3およびNO2ガスとを、1−オクテンに対して塩化鉄(III)FeCl3のモル当量を0〜4.0モル当量変化させて反応させた。
【0076】
その結果、下記表1に示されるように、1−オクテンに対して塩化鉄(III)FeCl3のモル当量が1.0モル当量の時ジヒドロイソオキサゾール誘導体(1a)の収率が高収率で得られることが分かった。
【0077】
【表1】

【0078】
また、アセトン中で塩化鉄(III)FeCl3およびNO2ガスを利用する場合の反応経路および反応機構を下記化11に示す。
【0079】
【化11】

【0080】
(実施例13)
<塩化鉄(III)FeCl3およびNO2ガスを利用した下記基質21とアセトンとの反応>
下記基質21(0.5mmol)、塩化鉄(III)FeCl3(0.5mmol)およびアセトン4.0mlを、室温下、約45ml/分の流量で20秒間攪拌しながら反応させた。得られたイソオキサゾール21aの収率は51%であった。
【0081】
【化12】

【0082】
[スペクトルデータ]
(実施例13)において単離・精製した新規化合物(21a)のスペクトルデータを以下に示す。
【0083】
3−アセチル−5−フェニルイソオキサゾール(21a):淡黄色油状物
IR(KBr):1705および1593cm-1
1H−NMR(CDCl3):δ(ppm)6.36(s,1H),2.75−2.79(t,2H),2.63(s,3H)1.70−1.80(m,2H)および0,98−1,02 (t,3H).
13C−NMR(CDCl3):δ(ppm)192.4,175.4,162.1,99.2,28.6,27.2,20.8および13.5 .
Cl−MS:m/z154[M+H]+
El−MS:m/z153(1.44),138(0.87),124(0.07),109(0.06),83(0.21)および67(0.74).
HR−MS Found:m/z157.0788[M]+.Calcd for C811NO2:M,157.0790 .

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】

[式中、R1は置換基を有してもよい直鎖状または分岐状のアルキル基、置換基を有してもよいシクロアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキルカルボキシル基、置換基を有してもよいアシル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよい芳香族または非芳香族複素環基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアルキルシアノ基あるいは置換基を有してもよいニトロ基を示す。]で表される1−アルケン化合物と塩化鉄(III)およびNO2ガスとを、アセトンまたはアセトフェノンの存在下で反応させることを特徴とする、式(2)
【化2】

[式中、R1は前記と同じ意味であり、R2はメチル基またはフェニル基を示す。]で表されるジヒドロイソオキサゾール誘導体の製造方法。
【請求項2】
前記反応がマイクロウエーブを照射しながら行われることを特徴とする請求項1に記載されるジヒドロイソオキサゾール誘導体の製造方法。
【請求項3】
前記ジヒドロイソオキサゾール誘導体が、3−アセチルジヒドロイソオキサゾール誘導体であることを特徴とする請求項1または2に記載されるジヒドロイソオキサゾール誘導体の製造方法。
【請求項4】
前記ジヒドロイソオキサゾール誘導体が、3−ベンゾイルジヒドロイソオキサゾール誘導体であることを特徴とする請求項1または2に記載されるジヒドロイソオキサゾール誘導体の製造方法。
【請求項5】
式(3)
【化3】

[式中、R1は前記と同じ意味である。]で表される1−アルキン化合物と塩化鉄(III)およびNOガスとを、アセトンまたはアセトフェノンの存在下で反応させることを特徴とする、式(4)
【化4】

[式中、R1およびR2は前記と同じ意味である。]で表されるイソオキサゾール誘導体の製造方法。
【請求項6】
式(4)
【化5】

[式中、R1およびR2は前記と同じ意味である。]で表されるイソオキサゾール誘導体。
【請求項7】
前記イソオキサゾール誘導体が、3−アセチルイソオキサゾール誘導体または3−ベンゾイルイソオキサゾール誘導体であることを特徴とする請求項6に記載されるイソオキサゾール誘導体。
【請求項8】
前記イソオキサゾール誘導体が、3−アセチル−5−プロピルイソオキサゾール、3−アセチル−5−ブチルイソオキサゾール、3−アセチル−5−ペンチルイソオキサゾール3−アセチル−5−ヘキシルイソオキサゾール、3−ベンゾイル−5−プロピルイソオキサゾール、3−ベンゾイル−5−ブチルイソオキサゾール、3−ベンゾイル−5−ペンチルイソオキサゾールまたは3−ベンゾイル−5−ヘキシルイソオキサゾールであることを特徴とする請求項6または7に記載されるイソオキサゾール誘導体。

【公開番号】特開2006−306806(P2006−306806A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132863(P2005−132863)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(300071579)学校法人立教学院 (42)
【Fターム(参考)】