説明

イソシアヌレート基含有ウレタンエラストマー形成性組成物

【課題】注型操作に適した低い粘度を有するとともに、良好な反応性(硬化性)を有し、硬化することにより、流体への溶出物質の量がきわめて少ないエラストマーを形成することができるウレタンエラストマー形成性組成物を提供すること。
【解決手段】
(A)ポリイソシアネート成分と、(B)ポリオール成分とを含有するウレタンエラストマー形成性組成物において、
前記(A)ポリイソシアネート成分として、
(a1)ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体および、
(a2)イソシアネート基末端プレポリマーを含有し、
(a1)及び(a2)中のHDIのイソシアネート基のモル比が、(a1):(a2)=20:80〜50:50であること、
前記(B)ポリオール成分として、少なくとも数平均分子量500以下のジオール又はトリオール(b1)を含有すること、
を特徴とするウレタンエラストマー形成性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウレタンエラストマー形成性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2004−263108号公報において、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを含有するウレタンエラストマー形成性組成物において、ポリイソシアネート成分としてヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート変性体(イソシアヌレート変性体を含有しても良い)およびイソシアネート基末端プレポリマーを含有し、ポリオール成分として、少なくともアミン系ポリオールを含有するウレタンエラストマー形成性組成物が開示されている。これにより得られるポリウレタン樹脂は、低粘度であるため注型性に優れ、良好な反応性を有する旨が示されている。
【0003】
しかしながら、アロファネート変性体に加えてイソシアヌレート変性体を含有する旨の記載はされているが、具体的な含有量や使用による効果について記載されていない。また、それによるゲル分率、ヤング率、熱的挙動等についての記載がされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−263108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の目的は、溶媒に対するゲル分率が良好で、ヤング率、熱的挙動の優れたポリウレタン樹脂形成性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略す。)のイソシアネート変性体およびイソシアネート基末端プレポリマーの含有率を一定の比率に規定することにより、上記課題を解決することを見出した。
【0007】
本発明の内容は、以下(i)から(iii)の通りである。
(i) (A)ポリイソシアネート成分と、(B)ポリオール成分とを含有するウレタンエラストマー形成性組成物において、
前記(A)ポリイソシアネート成分として、
(a1)ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体および、
(a2)イソシアネート基末端プレポリマーを含有し、
(a1)と(a2)中のHDIのイソシアネート基のモル比が、(a1):(a2)=20:80〜50:50であること、
前記(B)ポリオール成分として、少なくとも数平均分子量500以下のジオール又はトリオール(b1)を含有すること、
を特徴とするウレタンエラストマー形成性組成物。
(ii) NCO基末端プレポリマー(a2)が、ヘキサメチレンジイソシアネートとポリテトラメチレングリコール(a3)から得られることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
(iii) NCO基末端プレポリマー(a2)のハードセグメント量が20〜40wt%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。

【発明の効果】
【0008】
本発明により得られるポリウレタン樹脂は、溶媒に対するゲル分率が良好で、ヤング率、熱的挙動が優れるものである。このような性能を有するポリウレタン樹脂を、電気・自動車・建築・土木などの各種産業分野で使用されるシール材および緩衝材、製紙・製鉄・印刷などの工業用ロール、紙送りロールなどのOA機器部品などに用いることにより、優れた性能を発揮することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
<ポリイソシアネート成分>
本発明の組成物は、(A)ポリイソシアネート成分(主剤)として、(a1)HDIのヌレート変性体および(a2)イソシアネート基末端プレポリマーを含有する。また、(A)ポリイソシアネート成分(主剤)として、(a3)HDIのアロファネート変性体が含有(併用)されていてもよい。
【0010】
〔イソシアヌレート変性体〕
本発明に用いられるイソシアヌレート変性のポリイソシアネートは、公知の反応で得られる。例えば、イソシアネート化合物にイソシアヌレ−ト化触媒である第3級アミン類、アルキル置換エチレンイミン類、第3級アルキルフォスフィン類、アセチルアセトン金属塩類、各種有機酸の金属塩類等を単独使用あるいは併用し、必要に応じて助触媒、例えばフェノ−ル性ヒドロキシル基含有化合物、アルコール性ヒドロキシル基含有化合物等を用い、通常0〜120℃、好ましくは20〜100℃の反応温度で溶剤不存在下又はポリウレタン工業に常用の溶剤、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ペンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の極性溶剤等の存在下及び場合によっては反応温度で液状のポリオ−ル又はDOP等の可塑剤中において行われる。反応後、停止剤である例えばリン酸、パラトルエンスルホン酸メチル、硫黄等を使用することにより、触媒を不活性化し反応停止させてもよい。
【0011】
イソシアヌレート変性体(a1)のNCO含量は通常10〜30%とされ、好ましくは14〜25%とされる。
また、(a1)HDIのイソシアヌレート変性体の粘度は3,000mPa・s(25℃)以下であることが好ましい。
【0012】
〔イソシアネート基末端プレポリマー〕
必須のポリイソシアネート成分である(a2)イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネートと、1分子中に2個以上の活性水素原子を有する化合物とを反応させることにより得られる。
【0013】
(a2)イソシアネート基末端プレポリマーの調製に使用されるポリイソシアネートとしては、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、パラフェニレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリイソシアネート、ポリフェニレンポリメチレンポリイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;HDI、1,10−デカンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、シクロブタン1,3−ジイソシアネート、シクロへキサン1,3−ジイソシアネート、シクロへキサン1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、2,6−ヘキサヒドロトルイレンジイソシアネート、ヘキサヒドロ−1,3−フェニルジイソシアネート、ヘキサヒドロ−1,4−フェニルジイソシアネート、ペルヒドロ−2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ペルヒドロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂肪族または脂環族ジイソシアネート;並びに、これらイソシアネートの一部をビュレット、アロハネート、ウレトジオン、ウレトイミン、カルボジイミド、オキサゾリドン、アミド、イミドなどに変性したものを挙げることができる。この中でも、黄変防止といった観点から脂肪族または脂環族ジイソシアネートが好ましい。
【0014】
(a2)イソシアネート基末端プレポリマーの調製に使用される、1分子中に2個以上の活性水素原子を有する化合物としては、低分子ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリラクトン系ポリオール、ヒマシ油系ポリオールおよびポリオレフィン系ポリオールなどを挙げることができる。これらは単独で、または同一もしくは異なる種類のものを2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
ここに、低分子ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールAなどの低分子ジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの3〜8価の低分子ポリオールを挙げることができる。かかる低分子ポリオールの分子量は、50〜200とされる。
【0016】
また、ポリエーテル系ポリオールとしては、上記低分子ポリオールのアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド)付加物、およびアルキレンオキシドの開環重合物を挙げることができ、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、およびエチレンオキシドとプロビレンオキシドの共重合物であるチップドエーテルなどを挙げることができる。かかるポリエーテル系ポリオールの分子量は200〜7,000とされ、500〜5,000であることが好ましい。
【0017】
また、ポリエステル系ポリオールとしては、ポリカルボン酸〔飽和もしくは不飽和の脂肪族ポリカルボン酸(例えばアゼライン酸、ドデカン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、2量化リノール酸)および/または芳香族ポリカルボン酸(例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸)〕と、ポリオール(上記低分子ポリオールおよび/または上記ポリエーテル系ポリオール)との縮重合反応により得られるポリオールを挙げることができる。かかるポリエステル系ポリオールの分子量は200〜5,000とされ、500〜3,000であることが好ましい。
【0018】
また、ポリラクトン系ポリオールとしては、グリコール類、トリオール類などの重合開始剤を使用し、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、ε−メチル−ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトンなどのラクトンを、有機金属化合物、金属キレート化合物、脂肪酸金属アシル化合物などの触媒の存在下に付加重合させて得られるポリオールを挙げることができる。
かかるポリラクトン系ポリオールの分子量は200〜5,000とされ、500〜3,000であることが好ましい。
【0019】
また、ヒマシ油系ポリオールとしては、ヒマシ油、並びにヒマシ油脂肪酸と、ポリオール(上記低分子ポリオールおよび/または上記ポリエーテル系ポリオール)との線状または分岐状ポリエステル、例えばヒマシ油脂肪酸のジグリセライド、モノグリセライド、ヒマシ油脂肪酸とトリメチロールプロパンとのモノエステル、ジエステルまたはトリエステル、ヒマシ油脂肪酸とポリプロピレングリコールとのモノエステル、ジエステルまたはトリエステルなどが挙げられる。かかるヒマシ油系ポリオールの分子量は300〜4,000とされ、好ましくは500〜3,000とされる。
【0020】
ポリオレフイン系ポリオールとしては、ポリブタジエンおよび/またはブタジエンと、スチレンおよび/またはアクリロニトリルとの共重合体の末端に水酸基を導入したポリブタジエン系ポリオールが挙げられる。
【0021】
その他、カルボキシル基および/または水酸基を末端に有するポリエステルにエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加反応させて得られるポリエーテルエステルポリオールを使用することもできる。
【0022】
上記の1分子中に2個以上の活性水素原子を有する化合物としては、加工性や耐加水分解性の観点からポリエーテル系ポリオールが好ましく、高弾性体を得るといった観点からポリテトラメチレングリコールが特に好ましい。
【0023】
(a2)イソシアネート基末端プレポリマーの調製に際して、ポリイソシアネートと、活性水素原子含有化合物との使用割合としては、前者の有するイソシアネート基と、後者の有する活性水素原子との当量比(NCO/活性水素原子)が、通常1.1〜50、好ましくは1.2〜25となる割合される。
(a2)イソシアネート基末端プレポリマーのNCO含量は、通常3〜30%とされ、好ましくは10〜25%とされる。
また、(a2)イソシアネート基末端プレポリマーの粘度は3,000mPa・s(25℃)以下であることが好ましい。
【0024】
(a2)イソシアネート基末端プレポリマーの調製に際しては、ハードセグメント量が20〜40wt%であることが好ましく、25〜35wt%であることが好ましい。上限を超えるとウレタンエラストマーの硬度が高くなりすぎてしまい、下限未満だと機械物性が低下してしまう。

ハードセグメント量(wt%)=[ポリイソシアネート+(a2)+(b1)]/[(a1)+(a2)+(b1)]

【0025】
〔ポリイソシアネート成分の組成〕
(A)ポリイソシアネート成分に含有される(a1)HDIのイソシアヌレート変性体のイソシアネート基(NCO基)のモル数を(m1 )とし、(a2)中のHDIのNCO基のモル数を(m2)とするとき、モル比(m1 /m2 )は20/80〜50/50とされ、好ましくは30/70〜50/50とされる。モル比(m1 /m2 )が上記範囲を超えると、本発明により得られるウレタンエラストマーが、ゲル分率、ヤング率、熱的挙動について優れた効果を得ることができない。
【0026】
(A)ポリイソシアネート成分のNCO含量は、通常3〜30%とされ、好ましくは10〜25%とされる。
また、(A)ポリイソシアネート成分の粘度は2,000mPa・s(25℃)以下であることが好ましい。
【0027】
<ポリオール成分>
本発明の組成物は、(B)ポリオール成分(硬化剤)として、少なくとも数平均分子量500以下のジオール又はトリオール(b1)を含有する。
(b1)としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールAなどの低分子ジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトールなどの3〜8価の低分子ポリオールを挙げることができる。この中でも、1,4−ブタンジオールが好ましい。
【0028】
(B)ポリオール成分(硬化剤)として使用される数平均分子量500以下のジオール又はトリオール(b1)以外の成分として、前述のポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ヒマシ油系ポリオールおよびポリオレフィン系ポリオールなどを使用することができ、得られる組成物および最終的に形成されるエラストマーに要求される性能に応じて1種または2種以上を組み合わせて使用(併用)することもできる。
【0029】
(B)ポリオール成分に占める数平均分子量500以下のジオール又はトリオール(b1)の割合としては、通常80質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上とされる。
(b1)の割合が80質量%未満である場合には、十分な硬度や機械物性が得られない等といった問題が生じる。
【0030】
<本発明の組成物>
本発明の組成物は、上記のポリイソシアネート成分(主剤)と、上記のポリオール成分(硬化剤)とを混合することにより製造することができる。
本発明の組成物におけるポリイソシアネート成分とポリオール成分の含有割合(混合割合)としては、 ポリイソシアネート成分(A)の有するイソシアネート基と、後者の有する水酸基の当量比(NCO/OH)が、通常0.8〜1.6、好ましくは0.9〜1.2となる割合とされる。
当量比(NCO/OH)が0.8〜1.6となる割合で両者を含有させることにより、所期の物性を有する硬化物(エラストマー)を形成することができる。
【0031】
上記のようにして製造される本発明の組成物の粘度(混合時の粘度)は、2,000mPa・s(25℃)以下であることが好ましく、より好ましくは1500mPa・s(25℃)以下である。
本発明の組成物は、その調製時(主剤と硬化剤の混合時)において、このような低い粘度を有しているので、注型操作(型への注入操作)を容易かつ円滑に行うことができる。
【0032】
<組成物の硬化(エラストマーの形成)>
本発明の組成物を構成するポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応は、室温で反応を進行させることができ、両者を混合後(組成物を調製後)、金型に注型して20〜150℃で硬化反応させることによる。
なお、ゲル化時間の短縮化および組成物の粘度(混合後の粘度)の低減を図る観点から、両者を予め加温してもよい。
【0033】
本発明の組成物により形成されるウレタンエラストマーは、各種の物性(硬度・引張強さ・伸び・引裂強さなど)に優れている。
本発明の組成物により形成されるウレタンエラストマーは、電気・自動車・建築・土木などの各種産業分野で使用されるシール材および緩衝材、製紙・製鉄・印刷などの工業用ロール、紙送りロールなどのOA機器部品などに利用することができる。
【0034】
また、本発明の組成物は、金属触媒・アミン系触媒などを使用しなくても硬化反応が確実に進行する。従って、これらの触媒を使用しない組成物によって形成されるエラストマーにおいては、これらの触媒や未反応モノマーの溶出が問題となることはない。

【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、「部」および「%」は、それぞれ、「質量部」および「質量%」を意味する。
【0036】
〔HDIのイソシアヌレート変性体の調製例〕
製造例1
攪拌機,温度計,冷却器及び窒素ガス導入管の付いた容量:1Lの反応器に,ヘキサメチレンジイソシアネートを995g,1,3−ブタンジオールを5g,(助触媒として)フェノールを0.9g仕込み,反応器内を窒素置換して,攪拌しながら反応温度80℃に加温し,2時間反応させた。このときの反応液のイソシアネート含有量を測定したところ,49.2%であった。次に触媒としてキャタリストH0.2gを加え,60℃でイソシアヌレート化反応を行った。反応液のイソシアネート含有量が38.5%に達した時点で,停止剤として酸性リン酸(城北化学工業(株)製)を0.2g加え,反応温度で1時間攪拌した後,未反応のヘキサメチレンジイソシアネートを130℃×0.04kPaの条件での薄膜蒸留により除去して,イソシアネート変性ポリイソシアネート「a1−1」を得た。a1−1は,淡黄色透明液体でイソシアネート含量=21.8%,25℃の粘度=2,500mPa・sであった。
【0037】
〔イソシアネート基末端プレポリマーの調製例〕
攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた反応容器に、表1に記載に従って原料を所定量仕込み、とを70℃で4時間にわたりウレタン化反応させることにより、(a2)イソシアネート基末端プレポリマーを得た。以下、このプレポリマーを「NCO基末端プレポリマー(a2−1〜3)」という。
【0038】
〔ポリオール成分の調製例〕
本実施例では、1,4−ブタンジオール(三菱化学製)をポリオール混合物(B−1)として使用した。
【0039】
<実施例1>
HDIイソシアヌレート変性体(a1−1)15.4gと、NCO基末端プレポリマー(a2−1)56.7gとを、窒素雰囲気下、70℃で4時間にわたり攪拌混合することにより、のポリイソシアネート混合物を調製した。以下、これを「ポリイソシアネート混合物(A−1)」という。
このようにして得られたポリイソシアネート混合物(A−1)と、ポリオール混合物(B−1)とを、25℃の温度条件下、当量比(NCO/OH)が1.06となる割合で混合することにより、相溶均一化された本発明のポリウレタン樹脂PU−1を製造した。
【0040】
<実施例2>
HDIイソシアヌレート変性体(a1−1)10.8gと、NCO基末端プレポリマー(a2−1)60.9gとを、窒素雰囲気下、70℃で4時間にわたり攪拌混合することにより、のポリイソシアネート混合物を調製した。以下、これを「ポリイソシアネート混合物(A−2)」という。
このようにして得られたポリイソシアネート混合物(A−1)と、ポリオール混合物(B−1)とを、25℃の温度条件下、当量比(NCO/OH)が1.06となる割合で混合することにより、相溶均一化された本発明のポリウレタン樹脂PU−2を製造した。
【0041】
<比較例1>
HDIイソシアヌレート変性体(a1−1)4.0gと、NCO基末端プレポリマー(a2−1)66.0gとを、窒素雰囲気下、70℃で4時間にわたり攪拌混合することにより、のポリイソシアネート混合物を調製した。以下、これを「ポリイソシアネート混合物(A−3)」という。
このようにして得られたポリイソシアネート混合物(A−1)と、ポリオール混合物(B−1)とを、25℃の温度条件下、当量比(NCO/OH)が1.07となる割合で混合することにより、相溶均一化された本発明のポリウレタン樹脂PU−3を製造した。

【0042】
実施例及び比較例で得られたポリウレタン樹脂組成物について物性評価等の試験を行った。結果を表2に示す。

【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
各評価の試験方法は以下に示す手順に従って行った。
(硬度試験)
A型硬度計(ASTM2240 JIS−A、高分子計器社製)を用いて、20℃で測定した。測定は各試料につき5ヵ所行い、最大および最小を除いた平均値を硬度とした。

(膨潤試験)
実施例1、2、比較例1で得られたPU−1〜3を0.02gとなるように切り出し、60℃で24時間真空乾燥後、重量を秤量した。これを過剰のトルエンおよびN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)にそれぞれ加え、60℃の恒温槽中に静置した。適度な時間間隔で資料を溶媒中から取り出し、試料表面を軽く拭き取った後、秤量した。平衡膨張に達したことを確認した後、60℃で洪量となるまで真空乾燥させた。測定した試験片の重量を用い、以下の式よりゲル分率および膨潤度をそれぞれ算出した。ここで、gはゲル分率、Wbは膨潤乾燥後の重量、Wは未膨潤資料の重量である。qは膨潤度、Qは膨潤時のゲルと溶媒の体積比、Waは平衡膨潤時の資料重量、dsは溶媒の密度(ds,toluene=0.87、ds、DMF=0.94)、dpは試料の密度である。

g=Wb/W × 100
q=1+Q
Q=[(Wa−Wb)/ds]/[Wb/dp]

(示差走査熱量(DSC)測定)
実施例1、2、比較例1で得られたPU−1〜3を5mg秤量し、簡易密封セルに入れ標準試料(Al)を用いてThermo Plusステーション(理学電気社製)と示唆走査熱量計(DSC8230)を用いて窒素雰囲気下で測定した。測定条件は100〜250℃の温度範囲、窒素流量20ml/min、昇温速度10℃/minとした。

(引張試験)
実施例1、2、比較例1で得られたPU−1〜3を5×10mm2サイズの短冊状に切り出し測定に用いた。試験片の幅および厚さは、ノギスおよびマイクロメーターで各々3ヵ所ずつ測定し、それらの平均値をとって初期断面積とした。引張試験は、テンシロン万能試験機(RTE1210、ORIENTEC社製)を用い、チャック間距離30mm、引張速度10mm/minで測定した。また、得られた応力-ひずみ関係から以下に示すようにヤング率を求めた。
粘弾性体に関して以下の式が成立する。

ασ=Eε
α:伸長率
E:ヤング率
σ:公称応力
ε:ひずみ
n:比例定数(0≦n≦1)
両辺の対数をとり、log(ασ)とlogεプロットの切片によりE、傾きよりnを求めた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリイソシアネート成分と、(B)ポリオール成分とを含有するウレタンエラストマー形成性組成物において、
前記(A)ポリイソシアネート成分として、
(a1)ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性体および、
(a2)イソシアネート基末端プレポリマーを含有し、
(a1)及び(a2)中のHDIのイソシアネート基のモル比が、(a1):(a2)=20:80〜50:50であること、
前記(B)ポリオール成分として、少なくとも数平均分子量500以下のジオール又はトリオール(b1)を含有すること、
を特徴とするウレタンエラストマー形成性組成物。
【請求項2】
NCO基末端プレポリマー(a2)が、ヘキサメチレンジイソシアネートとポリテトラメチレングリコール(a3)から得られることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項3】
NCO基末端プレポリマー(a2)のハードセグメント量が20〜40wt%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリウレタン樹脂形成性組成物。

【公開番号】特開2010−254879(P2010−254879A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108855(P2009−108855)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】