説明

イソシアネートを基礎にした組成物およびその使用

本開示は、組織をバルキングするか、増大させるか、または閉塞させるための、方法およびキットを記載する。この方法は、生体適合性の生体非吸収性のイソシアネートを基礎にした物質を含有する充分な量の組成物を、この組織の表面または内部に投与する工程を包含する。本発明の方法は、例えば、肛門括約筋、膀胱括約筋および回盲括約筋からなる群より選択される組織をバルキングするため、または組織に移植片を固定するためなどに使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、注入可能な組成物を用いる、経皮増強、管腔充填、組織バルキングの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の開示で用いられる用語「本発明の組成物」または「本開示による組成物」または「本開示の組成物」などは、イソシアネートを基礎にした材料を含む組成物をいう。適切なイソシアネートを基礎にした材料は、制限されないで:i)公開された特許文献1に開示される生体適合性の組織結合性接着剤組成物;ii)公開された特許文献2に開示されるインサイチュ重合性医療用組成物;および特許文献3に開示される組織増強化合物の1つ以上を含む。これら刊行物の各々の全体の開示は、この参照によってその全体が本明細書中に援用される。本発明の組成物は、上記イソシアネートを基礎にした材料と組合せて任意のその他の生態適合性材料を含み得ることが理解されるべきである。さらなる生体適合性成分は、生体吸収可能であるか、または生体吸収不能である。
【0003】
本開示の1つの実施形態によれば、本発明の組成物を用いて、身体全体に位置する括約筋の応答能(competency)を増加するために嵩(bulk)を増加する。これは、括約筋筋肉中への本発明の組成物の直接注入またはその他の直接投与を含む。特許文献3を参照のこと。ここでは、コラーゲンを用いるこのアプローチが、肛門直腸および/または尿失禁を軽減することが示されている。筋肉の嵩におけるこの増加は、筋肉の伸張した状態を相殺し、それを締め、そしてそれによって、尿道の弱ったか、または伸張した筋肉に起因する失禁問題を有する個体の処置を支援する。従って、本発明の方法は、GIおよび尿路に沿った失禁括約筋に起因する失禁を処置するために用いられ得る。処置は、括約筋中への本発明の組成物の直接注入を含む。また、このような組成物を声帯中に注入することは、この領域を大きくし、声の特徴における変化に至る。
【0004】
1つの実施形態において、本開示は、胃食道逆流疾患(「GERD」)を処置するための方法に関する。胃食道逆流は、通常の生理学的減少であるが、いくつかの事例では、それは、極端な事例では重篤になり得る種々の症状を生じ得る病態生理学的状況である。胃食道逆流疾患(「GERD」)は、胃から食道への酸性および酵素液体の逆流をいう。それは、口または肺にさえへの胃酸の逆流がともない得る胸骨の後の灼熱感を引き起こす。この疾患の重篤度を規定するGERDの合併症は、食道組織糜爛、および正常上皮が病態組織によって置換される食道潰瘍を含む。
【0005】
正常患者では、食事後、下部食道括約筋は閉鎖したままであるが、GERDを患う患者では、それは、弛緩し、そしてある程度の酸性材料を、胃収縮の結果として食道管中に逆流させる。実際に、GERDは、主に下部食道括約筋の一時的弛緩に原因があり得る。その他の場合には、GERDは、下部食道括約筋の減少した静止緊張に、または括約筋それ自体の先天的な小寸法に原因があり得る。その他の原因はまた、この疾患の存在および重篤度に変動する程度に寄与するその他の原因もまた存在する。
【0006】
本開示の前には、括約筋の機能を増加する試みにおいて、ウシコラーゲンおよびテフロン(登録商標)ペーストを用いるバルキング法が患者において用いられていた。しかし、両方の方法は成功していない。なぜなら、これら材料は、経時的に移植の初期部位から移動するからである。
【0007】
本発明の方法によるGERDの処置のために、本発明の組成物は、内視鏡送達によるか、または腹腔鏡技法によるいずれかで、食道を経由して導入され得、そして食道が胃と出会う括約筋、すなわち、下部食道括約筋の壁中に注入される。これは、括約筋の内部管腔を低減し、それ故、この筋肉のより容易な収縮を許容し、胃流体の食道中への逆流を低減する。さらに、この処置は、下部食道の炎症を低減する。本発明の組成物はまた、次のX線可視化のためのX線不透過性色素またはその他の造影剤を含み得る。
【0008】
別の実施形態では、本発明の組成物は、GERDを処置するために食道と胃との連結部で括約筋中に注入され得、また、GERDを処置するために用いられる所定量の薬物、例えば、シメチジン、ラニチジン、ファモチジンおよびニザチジンを含むHヒスタミンアンタゴニスト;オメプラゾールおよびランソプラゾールを含むH+、K+−ATPアーゼの阻害剤;例えば、Al(OH)、Mg(OH)、およびCaCOを含む制酸薬を含み得る。尿失禁、排尿逆流疾患、および皮膚皺の処置については、上記組成物はまた、抗炎症剤、血管形成阻害剤、放射活性元素、および有糸分裂阻害剤とともに用いられ得る。
【0009】
本開示に従って上記組成物と組合せて用いられ得るその他の治療剤は、Goodman&GilmanのThe Pharmacological Basis of Therapeutics、第9版、McGraw−Hill(1996)およびThe Physicain’s Desk Reference(登録商標)2000に報告されるような、皮膚疾患、GERD、尿失禁および尿逆流疾患を含む。
【0010】
(尿失禁および尿逆流疾患)
尿失禁は、あまねく一般社会および健康管理設定の両方で、すべての年齢の人々および体の健康のレベルに影響する一般的な問題である。失禁は、真の尿ストレス(尿管過剰運動性)、内因性括約筋欠損(「ISD」)、または両方に起因し得る。それは、特に女性に一般的であり、そしてより少ない程度の失禁が、子供において(特に、ISD)、前立腺摘除術後の男性に存在している。
【0011】
その医療用語における尿逆流疾患、または「膀胱尿管逆流」に従えば、尿が、排尿の間に後方に流れることを単に意味する。この疾患は、しばしば、幼児で起こる。尿管は、腎臓を膀胱と連結する管である。尿は、1つの方向:腎臓から膀胱に流れるはずである。尿が膀胱から腎臓に上方に流れるとき、それは、ヒトにとって健康問題を生じ得る。
【0012】
尿逆流は、腎臓損傷に至り得る。逆流する尿は腎臓に細菌を運び得、そこで、それは、腎臓感染を引き起こし得る。尿の逆流を患う子供は、逆流を患わない子供より腎臓感染を有する可能性がかなり高い。逆流と感染との組み合わせは、永久的な腎臓損傷または「腎臓瘢痕」に至り得る。この瘢痕は、静脈内腎盂像(IVP)と呼ばれるX線、または好ましくは腎臓走査を行うことにより検出される。十分に広範である場合、瘢痕は、一方または両方の腎臓の機能の損失に至り得る。
【特許文献1】国際公開第03/049637A2号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0068078号明細書
【特許文献3】米国特許第6,702,731号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
腎臓瘢痕を防ぐことの鍵は、腎臓感染を防ぐことである。これは、現在、2つの方法で実施されている。大部分の事例では、長期間の予防的抗生物質が与えられる。尿管感染をも防ぐ他方の方法は、逆流の外科的矯正である。両方の方法は、しかし、欠点を有する。抗生物質の長期間使用は、予測できない副作用を引き起こし、そして外科的手順は、不必要なリスクを含む。
【0014】
たとえ多くの尿逆流疾患が、子供においてそれ自身でなくなるとしても、いくつかの事例は、しばしば、重篤な腎臓および尿管感染、そして全腎臓疾患にさえ至る。従って、尿逆流疾患を処置する、安全で、効率的で、より不便でなく、そして長く続く方法に対する必要性が存在する。
【0015】
ISDに関連する尿失禁の処置のための最近のアプローチは、患者に尿管周囲内視鏡コラーゲン注入を受けさせることである。これは、膀胱漏失またはストレス失禁の可能性を減少する試みにおいて膀胱筋肉を増強する。限られた成功率にかかわらず、経尿管コラーゲン注入治療は、その他の適切な代替物の欠如に起因して、内因性括約筋欠陥のための受容可能な処置である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
尿失禁および尿逆流疾患の処置のために、本開示の組成物は、ニードル(例えば、約18ゲージ〜約26ゲージ、好ましくは、22〜24ゲージ)を通じて注射可能であり、そしてリンパ系を通じて排泄されることは可能ではない。本発明の組成物は、尿管を経由して導入され、そして膀胱括約筋の壁中に注入され、括約筋の内部管腔を減少し、それ故、この筋肉のより容易な収縮を許容し、失禁の可能性を減少する。本発明の組成物はまた、X線不透過性色素、または次のX線可視化のためのその他の造影剤を含み得る。
【0017】
別の実施形態では、本発明の組成物は、尿失禁または尿逆流疾患を処置するために膀胱括約筋中に注入され、そしてまた、抗利尿剤、抗コリン作用薬、オキシブチニンおよびバソプレシンのような尿失禁または尿逆流疾患を処置するために用いられる所定量の薬物を含む。
【0018】
注入された組成物は、局所的炎症のようないくつかの一時的な副作用を生成し得、従って、本発明の組成物は、アスピリンを含むサリチル酸誘導体;アセタミノフェンを含むパラアミノフェノール誘導体;インドメタシン、スリンダク、エトドラク、トルメチン、ジクロフェナク、ケトロラク、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビブロフェン、ケトプロフェン、フェノプロフェン、オキサプロジンを含む非ステロイド系抗炎症剤;メフェナム酸、メクロフェナム酸を含むアントラニル酸;ピロキシカム、テノキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェンタトラゾンのようなエノール酸;ナブメトロン;Vioxx(登録商標)およびCelebrex.TMのような抗炎症薬物を含むか、またはこれらとともに注入され得る。コレラの抗炎症性薬物は、好ましくは、短い期間(2〜3日)に亘ってゆっくりと放出される。本発明の組成物はまた、その他の特定の薬物を放出するために用いられ得、これは、患者への注入の前に組成物内にとりこまれ得る。薬物は、短い期間に亘って移植の部位で局所的に放出され、全体の処置を改善する。
【0019】
本開示の組成物中への薬物のような活性分子の取り込みは、組成物を、水溶液または水−有機溶液中の上記活性分子または薬物の溶液と混合することにより達成され得る。
【0020】
(組織欠陥)
別の実施形態では、本開示は、皮膚欠陥を処置する方法に関する。加齢、太陽およびその他の要素への環境曝露、体重減少、妊娠、挫瘡および癌のような疾患、および手術に起因する皮膚への損傷は、しばしば、皮膚輪郭欠陥およびその他の皮膚異常を生じる。軟組織増強のための注射可能材料(例えば、コラーゲン、シリコーン)の使用は、皮膚の輪郭欠陥およびその他の異常を矯正するためにしばしば用いられる方法である。皮膚の増強のための送達デバイスとして皮下ニードルを用いることの利点は、皮下ニードルを一般に用いる利点:容易、正確および通常、非侵襲的な送達、を反映する。なお、このような使用のための要求はまた、極めて厳格である:送達される材料は、ニードルを通じて送達されなければならず、これは、この材料が、ニードルの中空の中心を容易に通過可能でなければならないことを意味する。
【0021】
固体の微粒子もまた、皮膚欠陥の矯正のため、および組織バルキングのために用いられている。例えば、炭素粒子、シリコーン粒子、TEFLON(登録商標)ペースト、コラーゲンビーズおよびポリメチレンメタクリレートスフェアが、とりわけ、組織副作用、生物学的分解および初期移植位置からの移動に起因して失望する結果とともに用いられている。
【0022】
本開示の皮膚増強方法は、本開示による組成物を、このような処置が必要な哺乳動物に投与する工程を包含する。この組成物は、(例えば、約30ゲージ以下の)ニードルを通じて注入可能であり、そしてこの組成物は、マクロファージまたは免疫系のその他の構成要素により消化または排泄され得ることはない。本発明の組成物は、好ましくは、哺乳動物の皮下層中に注入される。この組成物はまた、1つ以上の抗炎症剤を含み得る。
【0023】
本開示の皮膚増強方法を用いる処置に適切なのは、制限されないで、加齢、環境曝露、体重減少、妊娠、手術、挫瘡および癌のような疾患、またはそれらの組み合わせを含む種々の状態によって引き起こされる皮膚輪郭欠陥である。本開示の皮膚の増強方法は、眉間皺線、心配線、皺、目尻の皺、顔の傷、マリオネット線、妊娠線、手術瘢痕、創傷および損傷または事故に起因する切断および咬合のような皮膚輪郭欠陥に特に適切である。
【0024】
本開示は、さらに、皮膚増強および皮膚欠陥の処置の方法を提供する。詳細には、本開示は、哺乳動物における皮膚増強を、本開示に従う組成物を哺乳動物に投与することによって生じる方法を提供する。この組成物は、ニードルを通じて注射可能であり、そしてこの組成物は、消化またはマクロファージまたは免疫系のその他の構成要素によって排泄され得ることはない。本開示によれば、投与の好ましい方法は、上記組成物を、皮膚増強が必要である被験体哺乳動物の領域中に注入することである。投与のより好ましい方法は、上記組成物を被験体哺乳動物の皮下層中に注入することである。
【0025】
本開示の皮膚の増強方法は、挫瘡および癌のような疾患に加え、加齢、環境曝露、体重減少、妊娠、損傷、手術によってしばしば引き起こされる、皮膚輪郭欠陥の処置のために特に適切である。本開示の方法による処置に適切なのは、眉間皺線、心配線、皺、目尻の皺、顔の傷、マリオネット線、妊娠線、および損傷から生じる内部または外部瘢痕、創傷、咬合、手術、または事故のような皮膚輪郭欠陥である。本開示はまた、挫瘡および癌のような疾患によって引き起こされる皮膚欠陥を処置するための注入可能な組成物の使用を包含する。
【0026】
なお別の実施形態では、本発明の組成物は、美容増強のために用いられる。本発明の組成物を注入することにより、患者の頬、唇、乳房または陰茎のサイズおよび/または外観の増強が達成され得る。
【0027】
本開示はまた、上記注入可能な組成物を身体中に直接ではなく、身体、器官、または器官の構成要素中にそれらが含まれる前に器官、器官の構成要素、または組織中に身体外から注入することにより組織バルキングまたは皮膚増強を引き起こす方法を提供する。
【0028】
本発明の方法の注入は、好ましくは、任意のタイプのニードル(例えば、約18〜26ゲージ)を備えた滅菌シリンジによって実施され得る。用いられるシリンジのサイズおよびニードルの長さは、特定の疾患または処置される傷害、注入の位置および深さ、および用いられる注入可能な懸濁物の特定の組成のような因子に基づく特定の注入物に依存する。当業者は、経験および本開示の教示を基に、シリンジおよびニードルの選択をなし得る。
【0029】
(幽門バルキング)
幽門閉塞症は、特定の幼児および時折成人で生じ、そこでは、摂取された食物は、適切な栄養摂取を提供するために十分な量で幽門管腔を通過することができない。胃は満たされ、そしてその内容物は次いで逆流する。幼児は、栄養失調を患い、そしてこの閉塞症を矯正するために行われる外科的手順がなければ生存できない。従って、本発明の方法は、肥満成人を処置することで採用され得、誘導された部分的幽門閉塞症または小腸閉塞症は、胃または小腸を空にすることを延長し、患者が頻繁に食すること、または過食を控えることを誘導する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1は、以下にさらに説明されるように、幽門または小腸の壁内にバルキング剤のような本発明の組成物の塊の移植を可能にするための器具20を採用する、患者10の胃14中への接近を得る略図である。この送達器具20は、器具本体遠位端26まで延び、そして少なくとも1つの送達管腔を取り囲む細長い器具本体24の近位端に連結されたハンドル22を備える。この送達器具20は、器具本体遠位端26で少なくとも1つの器具管腔遠位端開口部を取り囲む。
【0031】
この送達器具20は、米国特許第6,251,063号、同第6,251,064号、および同第6,358,197号に記載のような器具の形態をとり得(これらの開示は、それらの全体がこの参照によって本明細書中に援用される)、これは、下部食道括約筋(LES)の領域中にある食道の壁内、またはインサイチュ(in situ)で固くなる肛門括約筋の領域中の直腸壁中にバルキング剤の塊(単数または複数)を注入するために採用される。本明細書で用いられるとき、用語「塊」および「バルク剤の塊」などは、本開示による1つ以上の組成物の少なくとも一部で形成された三次元容量をいう。あるいは、上記送達器具20は、米国特許第6,098,629号、同第6,338,345号、および同第6,401,718号で提示される器具の形態をとり得(これらの開示は、この参照によってそれらの全体が本明細書中に援用される)、これらは、LESの領域中の粘膜の下に予備形成された補綴具バルキングデバイスを挿入するために採用される。LESの領域中の粘膜内のバルキング剤(単数または複数)の塊(単数または複数)の移植は、胃食道逆流疾患(GERD)を患う患者を処置することが意図される。バルキング剤の移植(単数または複数)は、LESに嵩を付加し、LES閉鎖圧力またはバルブ機構としての機能を上昇する。尿失禁または膀胱尿管逆流を矯正するための欠陥の部位の尿管周辺組織中への内視鏡またはその他の器具によるバルキング剤の送達がまた、米国特許第5,667,778号、同第5,755,658号、および同第5,785,642号に開示されている(これらの開示は、この参照によってそれらの全体が本明細書中にそれらの全体が援用される)。好ましくは、この送達器具20は、内視鏡または胃カメラの造影特徴、バルキング剤(単数または複数)の塊(単数または複数)を送達するための送達管腔(単数または複数)、および退却可能な切断または貫通先端部選択的に作動可能であり、粘膜が、それを通るバルキング剤(単数または複数)の塊(単数または複数)の進行を可能にするように穿孔するその他の機構を取込む。
【0032】
本開示の1つの実施形態によれば、上記器具本体24は、患者の口16中に挿入される湾曲した口および喉ガード38を通って挿入され、そして器具本体遠位端26は、食道12およびLES32を通り、そして胃腔30中に進行される。この器具本体遠位端26は、幽門34に、またはさらに十二指腸を通り、かつ小腸の移植部位まで進行される。器具遠位端26は、小腸壁または幽門34の壁内の移植の部位に向けられ、そしてバルキング剤の塊(単数または複数)は、以下にさらに記載される方法の1つで移植される。
【0033】
図2は、胃14と十二指腸50との間の幽門34をより詳細に描写する。示される実施形態において、バルキング剤(単数または複数)の塊(単数または複数)は、粘膜表面または粘膜46と幽門括約筋48との間の粘膜下組織44内に移植され得る。胃内に固有の、粘膜下組織44は、粘膜46と、それ自身が斜めの円形で、かつ長軸方向の筋肉層を備える外側の筋層を分離する組織の線維層である。
【0034】
図3は、幽門34を長軸方向に、そして粘膜断面図で描写し、そしてバルキング剤の塊(単数または複数)が、幽門34の標識された部分に関連して幽門壁42中に移植され得る場所を示す。潜在的なスペースである粘膜下スペースは、粘膜46と幽門括約筋48との間に、粘膜46の幽門括約筋48からの分離によって生成され得る。この粘膜下組織44は、平滑末端器具または機械的切断技法または灼焼ツールによって、バルキング剤の塊またはバルキングデバイスの移植のための粘膜下スペースまたは部位を生成するために分離され得る弾力がある組織である。1つ以上の本発明の組成物を少なくとも一部を含むバルキリング剤は、この粘膜下組織44中に直接注入され得、粘膜下組織をずらし、そしてインサイチュで固化し、非生分解バルキング剤の塊または移植物を形成することが予期される。あるいは、バルキング剤の塊またはバルキングデバイスの移植のための粘膜下組織または部位は、幽門括約筋48の筋肉線維の膨満および分離によって筋肉内に生成され得る。
【0035】
幽門括約筋48は、成形または円環体で連結される中間括約筋ループおよび遠位括約筋ループを備える。バルキング剤の塊(単数または複数)は、部位SおよびSで、または部位S〜Sの種々の1つで上記中間括約筋ループに隣接して移植され得、幽門管腔40を効果的に狭める。理想的には、バルキング剤の塊(単数または複数)は、部位SおよびSで、または部位S〜Sの種々の1つで上記中間括約筋ループに隣接して移植され得、幽門管腔40を効果的に狭める。理想的には、上記バルキング剤の塊は、幽門括約筋48を横切るか、またはそれに緊密に隣接する位置に移植され、残る括約筋活性は最適化される。あるいは、バルキング剤の塊(単数または複数)は、十二指腸50の平滑筋層中またはそれに対して移植され得、遠位および/または中間括約筋を幽門管腔40を閉塞するために収縮させるようにする嵩を提供する。バルキング剤の塊の正確な数、形状および位置決めは、患者の解剖学的構造に依存し、そして移植時の臨床的選択事項である。
【0036】
図4は、幽門括約筋48に隣接する粘膜下に移植されたバルキング剤60および62の移植されたバルキング剤60および62の移植された塊を描写している。バルキング剤60および62の塊の特定の組成は、本開示またはそれらの等価物に従う組成から選択され得る。このような移植物の特定の移植部位、およびサイズ、形状および数は、特定の患者の必要性に合致するように外科医によって選択され得る。
【0037】
図5は、管腔を制限するため、および胃14、十二指腸50または小腸78の内容物が空になることを遅延するためのバルキング剤の1つ以上の塊の可能な移植部位を識別するGI管の概略図である。このような部位で移植されるバルキング剤の特定の組成は、本開示またはその等価物に従う組成から選択され得る。このような移植物の特定の移植部位、およびサイズ、形状および数は、特定の患者の必要性に合致するように外科医によって選択され得る。
【0038】
十二指腸50内の移植は、第1の屈曲(下十二指腸曲)72に隣接するか、または下十二指腸曲74に隣接し得る。1つ以上のバルキング剤の塊は、幽門34に関してその挿入のために上記で説明された手順に類似の様式で十二指腸の壁内に内視鏡により移植され得る。
【0039】
1つ以上のバルキング剤は、上行結腸80の基部と小腸78の接続部で、回腸括約筋76の壁内に移植され得る。この回腸括約筋76は、開放され、部分的に消化されたびじゅくが小腸78から結腸80に移動することを可能にする。この回腸括約筋76を、それが通常弛緩されるときに部分的に収縮することは、部分的に消化された食物の小腸から大腸までの移動を制限し得、偽閉塞症(食事と関連する、吐気、嘔吐、腹部の痛みの付随する症状とともに)に類似の症状を生じる。バルキング剤の1つ以上の塊は、S字結腸鏡または腹腔鏡の支援で、幽門34に関してその挿入のために上記で説明された手順に類似の様式で回腸括約筋76の壁内に移植され得る。
【0040】
本発明の組成物は、粘膜下組織に直接注入され得、その中にバルキング剤の塊を形成する。あるいは、スペースがまず最初に、水疱を形成するための塩溶液その他の水溶液または生理食塩水の粘膜下への注入により形成され得る。各々の移植のために粘膜下スペース中に注入される本発明の組成物の量は、0.01ccから10ccの範囲であり得る。
【0041】
所望であれば、造影剤が、本発明の組成物中に取込まれ得る。このような造影剤は、水溶性または水に不溶性のいずれかである生体適合性の放射線不透過性材料を含む。水溶性造影剤は、メトリザミド、アイオパミドール、ナトリウムアイオタラメート、ナトリウムヨードミドおよびメグロミンを含む。周知の水不溶性造影剤は、金、タングステンおよび白金粉末およびタンタル粉末、酸化タンタル、および硫酸バリウムなどを含む。本発明の組成物中の随意の造影剤は、バルキング剤の塊が目的の部位に入ること、およびこの手順の終了後モニターされる観察されることを可能にし、この塊の安定性およびその形状または位置における任意の変化が経時的に観察され得る。
【0042】
(接着性移植片)
なお別の実施形態では、本開示は、本発明の組成物を用いて組織移植片を接着するための方法を企図する。組織移植軸の現在の方法は、縫合糸の複数使用、低い美容的価値、異質身体反応、空隙および非接着移植片のような創傷合併症により複雑である。本発明の方法は、当該技術分野で公知の課題を克服する。本明細書中に記載される組織接着の方法は、修復および/または水密シールの必要な組織のために理想的である。これらの組織は、創傷閉鎖のような組織接着が必要である、例えば、心臓血管組織、神経学的組織、胃腸管組織、泌尿器科組織、腎臓組織、眼組織、口腔組織、結合組織、呼吸器組織、耳鼻科組織、皮膚科組織、生殖器組織、婦人科組織または筋骨格組織の任意のタイプであり得る。創傷閉鎖は、損傷した組織の切断または分離した縁もしくは表面の接続を損傷し得る。創傷閉鎖は、損傷した組織の表面上への異種組織の移植術をさらに損傷し得る。
【0043】
本明細書中に記載の方法は、インビトロ実験室適用、エキソビボ組織処置を含む種々の適用における使用のために適切であるが、特に、生存被験体、例えば、ヒト対するインビボの外科的手順、および手術によらない創傷治癒において適切である。
【0044】
本明細書に記載される方法は、外科的適用、例えば、組織移植および/または移植術手術を実施するため、または損傷した組織、例えば、角膜切開を治癒するため、または組織からの漏失を防ぐために、2つ以上の組織を、例えば、シール、閉鎖、またはそうでなければ接続するために特に有用である。本明細書に記載される方法は、正確な接着が必要である、そして/または縫合糸、ステープル、またはタンパク質シーラントの適用が不便であるか、または所望されない外科的適用で用いられ得る。
【0045】
特に有用な実施形態では、本明細書に記載される組織結合方法は、組織移植術で用いられ得る。外来移植片は、例えば、自己移植片、同種移植片または異種移植片であり得る。1つの実施形態では、皮膚、筋肉、血管、胃、食道、結腸または小腸のような組織を含む外来組織移植片が、上記創傷の表面上に配置され得、そして本明細書に記載される組成物と接触される。本発明の組成物の適用は、創傷表面への上記移植片の迅速かつ持続する接着およびせん断ストレスに抵抗する能力を可能にする。移植される組織の供給源は、当該技術分野で公知のいずれかであり得、被験体中の非損傷組織から得た外来移植片を含む。移植される組織の供給源はまた、コラーゲンおよびプロテオグリカンのような細胞外マトリックスを基礎にした足場、および/またはその他の加工された組織移植片を含み得る。
【0046】
外来移植片は、同様に、合成、例えば、皮膚代用物であり得る。移植術における使用のために適切な合成材料は、制限されないで、シリコーン、ポリウレタン、ポリビニルおよびナイロンを含む。皮膚代用物は、当該技術分野で公知のいずれかであり得、培養誘導体および細胞または非細胞コラーゲン膜を含む代用物を含む。培養代用物は、二層のヒト組織を生じ、例えば、Apligraft(登録商標)は、新生児包皮由来の上皮または皮膚アナログ、宿主被験体からの細胞で再増殖されるようになる宿主−移植片コンポジットを含む。市販され入手可能な皮膚代用物は、シリコーン、ナイロンおよびコラーゲンから構成されるBiobrane(登録商標)、シリコーン、コラーゲン、フィブロネクチンおよびグリコサミノグリカンから構成されるTransCyte(登録商標)、およびシリコーン、コラーゲンおよびグリコサミノグリカンから構成されるIntegra(登録商標)を含む。皮膚代用物は、永久的および半永久的移植術の適用で用いられ得る。
【0047】
組織を移植する際に、移植片の表面が、当該分野において「近置」と称されるプロセスによって、損傷部位に整列される。移植片を損傷部位に近付けることは、当該分野において公知である方法に従って、実施され得る。例えば、移植片が、損傷部位の頂部に配置され、そして染料で染色された皮膚の面が近く接近するように整列される。移植片と損傷部位との間の分子の接触は、近く接近させることによって達成され、この接近は、数枚のティッシュペーパーで皮膚と皮膚との複合面を押さえて滑らかにし、次いで移植片の界面を乱すことなくこれらのティッシュペーパーを取り除くことによって、実施され得る。これにより、この接近した移植片−損傷部位複合面は、本発明の組成物の塗布のための準備ができる。
【0048】
(管腔の閉塞)
本発明の方法はまた、患者の身体内の筋肉または組織における種々の管腔または領域を、完全にかまたは部分的に、遮断するか、封止するか、充填するか、または嵩を加えることを提供する。本明細書中で使用される場合、用語「管腔」は、身体の種々の中空の器官または脈管の内部の空間(例えば、精管、ファローピウス管、静脈、動脈、腸、気管、子宮など)を包含することが意図される。本明細書中で使用される場合、用語「閉鎖」は、空間(例えば、管腔またはチャネル)の、完全かまたは部分的な遮断、封止または閉塞を意味することが意図され、これによって、この空間を通る物質の通過を妨げるかまたは遮断する。
【0049】
代替の実施形態において、本発明の方法は、出産制御または女性における避妊の形態で有用であり、ここで、本発明の組成物は、ファローピウス管が満たされるかまたは遮断されることにより、卵および/または精子が生物材料を通過するかまたは生物材料の周囲を通ることを防止するように、注入または移植される。このアプローチを使用することにより、妊娠が予防される。なぜなら、ファローピウス管内に位置する卵細胞または卵が、子宮から出ず、そして精子と接触しないからである。この遮断、および従って避妊または出産制御は、本発明の物質の除去または手術後の管の切除により、可逆的である。ここで、この管の遮断された部分が切断され、そしてこの管の残りの部分が再度接続される。本発明の組成物で遮断されるファローピウス管のセクションは、子宮に直接接続するかまたは最も接近したセクションであることが好ましい。この治療適応症に対する本発明の組成物の投与は、カテーテルまたは内視鏡(例えば、光ファイバースコープ、子宮鏡など)を介して行われ得る。
【0050】
移植物または注入を介する、本発明の組成物の投与は、最小侵襲性であり、そして通常、外来患者に基づいて実施され得、他の外科手術の形態の避妊または出産制御よりも低い費用をもたらす。この手順はまた、患者のコンプライアンスの問題を排除する。なぜなら、患者は、いずれの特別な指示に従う必要もなく、そして他の形態の出産制御用具(例えば、経口避妊薬、避妊ペッサリーなど)の経口摂取または挿入を覚えておく必要もないからである。しかし、望ましい場合、出産制御の補助的形態(特に、疾患の伝染を防止するもの)が利用され得る。
【0051】
本開示の最も一般的な方法によれば、有効量の組成物が、患者の身体内の管腔または空隙の部位に投与される。用語「有効量」とは、本明細書中で使用される場合、目的の生物学的構造体を増大させるか、遮断するか、または充填するために必要とされる、本発明の組成物の量を意味する。特定の患者に投与される物質の有効量は、多数の要因(患者の性別、体重、年齢、および一般的な健康状態;物質の特別な型、濃度、および一貫性;ならびに処置される特定の部位および状態が挙げられる)に依存して、変動する。この物質は、多数の処置期間にわたって投与され得る。
【0052】
本明細書に開示される、本発明の組成物、方法およびキットの使用に対する用途としては、これらの組成物を、涙管、唾液腺管、汗腺管、および動脈静脈接合部を遮断または閉塞させることが望ましい場合に、これらの管を遮断または閉塞させることに適用することが挙げられる。例えば、動脈静脈吻合として公知である状態(動脈と静脈とが不適切に接合しており、この吻合に起因して迂回される毛細管床によって供給される細胞の「飢餓」をもたらす)において、この吻合の不適切な接合部が、本発明の組成物の使用(不適切なチャネルの遮断を形成するために適用される)によって閉塞され得、動脈血流をこの毛細管床へと再度方向付ける。
【0053】
本発明の別の実施形態は、腫瘍に直接供給する動脈および/または毛細管叢を閉塞させることによって、腫瘍への血液供給を遮断することである。
【0054】
本発明の別の実施形態は、骨(例えば、頭蓋骨)に作製された人造チャネルにおける遮断または閉塞を形成することである。例えば、一時的な頭蓋穿刺が、脳と頭蓋骨との間にたまった血液(例えば、脳震盪に起因する)を放出するために、外科医によって作製され得る。本発明の組成物は、血液および圧力の解放後に、このようなチャネルを満たすために使用され得る。これによって、このチャネルを通る余分な脳の流体または病原体の通過が防止される。
【0055】
組織に閉塞を形成するため、または組織をバルキングするために使用される方法が、図6A〜図6Cに示される。図6Aは、一般的な物質が矢印の方向に流れている、閉塞されていない管腔101を有する通常の脈管100を示す。図6Bは、シリンジ110を介する経皮注射を図示する。このシリンジは、プランジャー111、取り付けられた中空ニードル112を有し、そして本開示に従う流動可能な組成物120を収容する。ニードル112の端部は、所望の脈管の管腔101の内部に配置される。適切な位置決めを(例えば、ラジオグラフまたは視覚的手段により)確認した後に、所望の量の本発明の組成物120が、管腔101に注入される。一旦注入されると、この物質は、閉塞を形成し、この閉塞は、この脈管のそのセクションを通る物質の移動を妨げ、これによって、避妊、出産制御または他の望ましい結果をもたらす。図6Cを参照のこと。
【0056】
図7A〜図7Bは、組織をバルキングするための物質の皮下注射を図示する。図7Aは、一般的に300で示される、代表的な皮膚層を示す。この皮膚層は、上皮層301、皮膚層302、および皮下層303、ならびに付随する自生の細胞304を備える。図7Bは、組織の質量を増加させるための、材料305の、シリンジ110を介した注入を示す。有効量の材料305が、皮膚層に注入されて、所望の程度の膨潤を引き起こす。
【0057】
本発明の組成物はまた、組織の間の接着を引き起こすために、裂けた線維輪に適用され得る。物質の正確な組み合わせは、その組成物が一旦適用されると、組織の接着の発生を介したシールを形成し得る限り、変動し得る。図8Aは、一般的に700で示される、椎間板複合面を示す。この椎間板複合面は、上椎骨701および下椎骨702、ならびに破壊された椎間板703を備える。示されるように、椎間板703は、線維輪704の一部に沿って破壊されており、髄核705を露出させている。図8Bは、バレル707、プランジャー708、およびニードル709を備える椎間板シリンジ706を図示する。このバレルには、本開示に従う、適用されると線維輪の組織の接着を引き起こし得る組成物710が満たされている。示されるように、組成物710は、線維輪704の損傷した部位に注入されて、この領域を満たす。図8Cは、本発明の組成物の適用および同化後の椎間板複合面を示し、修復された椎間板711を示す。
【0058】
本発明の組成物、方法およびキットは、当業者によって予測および実施され得るように、他の管チャネルおよび管腔の遮断または閉塞のため、ならびに上に記載されたもの以外の組織および筋肉の嵩を高くするために、使用され得る。
【0059】
本発明の方法において、充分な量の物質が、ボーラスとして注射されて、管腔を拡張させ、そしてこの管腔を効果的に閉鎖させる。注入の部位に依存して、この方法は、身体の開口部の狭小化または閉鎖を生じ得る。例えば、子宮の頸部の開口部を閉鎖することが医学的に望ましいかまたは必要である場合、調製物を、この頸部開口部またはその近くに注入することによって、接着の形成が起こり(瘢痕組織または顆粒化組織の形成としてもまた公知)、これが、子宮を閉鎖させる。より広範には、この方法は、開口部を閉鎖または狭小化させることが望ましい、広範な医学的状態に適用され得る。
【0060】
(除皮質)
別の実施形態において、本開示は、本発明の組成物を、除皮質を包含する外科手術手順の後に組織を処置するために使用することを企図する。1つのこのような実施形態において、肺組織が胸腔の壁から分離された後に、本発明の組成物が、この胸腔の壁、肺の外側表面、またはこれらの両方に塗布されて、治癒を補助する。本発明の組成物の塗布が治癒を補助する、除皮質を包含する他の外科手術手順は、当業者に明らかである。
【0061】
本明細書中で使用される場合、用語「投与される」、「移植される」、または「移植」は、交換可能に使用され、そして物質が、当業者に公知である、処置されるべき疾患のために適切な技術によって処置の領域に送達されることを意味する。侵襲性の方法と非侵修正の方法との両方が、送達のために使用され得る。「注射可能」とは、本開示において使用される場合、ニードルまたは他の類似の様式を介して体内に投与され得るか、送達され得るか、または運ばれ得ることを意味する。
【0062】
「皮膚のしわ」、「皮膚の欠陥」および「皮膚の輪郭の欠陥」は、本開示において交換可能に使用され、そして種々の内部状態または外部状態(例えば、加齢、太陽および他の要素に対する環境曝露、体重損失、出産、疾患(例えば、挫瘡および癌)、外科手術、創傷、自己、噛み傷、切り傷)に起因して、異常であるかまたは望ましくないかのいずれかの、皮膚の状態をいう。本開示の文脈において、「皮膚の増大」とは、哺乳動物の皮膚および関連する領域の、外部作用に起因する自然な状態のあらゆる変化をいう。皮膚の増大によって変化し得る領域としては、上皮、真皮、皮下層、脂肪、立毛筋(arrector pill muscle)、毛幹、汗孔、および皮脂腺が挙げられるが、これらに限定されない。本開示の文脈において、「組織をバルキングする」とは、外部の作用または影響に起因する、哺乳動物の皮膚ではない軟部組織の自然な状態のあらゆる変化をいう。この開示により包含される組織としては、筋組織、結合組織、脂肪、および神経組織が挙げられるが、これらに限定されない。本開示によって包含される組織は、多くの器官の部分または身体の部分であり得、括約筋、膀胱括約筋、および子宮が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
有効量の、1種以上の生物学的に活性な薬剤(例えば、創傷治癒剤、抗生物質、または抗菌剤)が、本発明の組成物に組み込まれ得る。この文脈において、「有効量」とは、所望の治療効果(例えば、欠陥または空隙の改善または加速された治癒、あるいは、投与の部位における感染の予防)を得るために必要とされる、生物学的に活性な薬剤、抗生物質、または抗菌剤の量をいう。
【0064】
「生物学的に活性な薬剤」とは、本明細書中で使用される場合、抗ウイルス因子(特に、HIVおよび肝炎などのウイルスに対して有効なもの);ノンオキシノール−9;クロルヘキシジン;ベンザルコニウムクロリド、抗菌剤および/または抗生物質(例えば、エリスロマイシン、バシトラシン、ネオマイシン、ペニシリン、ポリミキシンB、テトラサイクリン、バイオマイシン、クロロミセチンおよびストレプトマイシン、セファゾリン、アンピシリン、アザクタム、トブラマイシン、クリンダマイシンおよびゲンタマイシンなど);アミノ酸、マガイニン、ペプチド、ビタミン、無機元素、タンパク質合成のための補因子;ホルモン;内分泌組織または組織断片;酵素(例えば、コラゲナーゼ、ペプチダーゼ、オキシダーゼなど);実質細胞または他の細胞を含むポリマー細胞足場;表面細胞抗原エリミネーター;血管新生薬物または血管狭窄薬物およびこのような薬物を含有するポリマーキャリア;コラーゲン格子;生体適合性の表面活性剤;抗原性因子;細胞骨格因子;軟骨断片、生存細胞(例えば、胎児細胞、骨髄細胞、間葉系幹細胞);天然抽出物、組織移植物、生体接着剤、増殖因子、成長ホルモン(例えば、ソマトトロピン);骨消化因子;抗腫瘍因子;グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、フィブロネクチン;細胞付着因子および付着剤;免疫抑制剤;アジュバント(例えば、フロイント完全アジュバント、リポポリサッカリド、植物油など);浸透増強剤(例えば、脂肪酸エステル(例えば、ポリエチレングリコール、エナミン誘導体、α−ケトアルデヒドの、ラウリン酸モノエステル、ミリスチン酸モノエステルおよびステアリン酸モノエステル));核酸;生体腐食性ポリマー(例えば、米国特許第4,764,364号および同第4,765,973号に開示されているもの);ならびに上記のもののいずれかの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。このような、医学的に有用な物質の量は、広く変動し得、最適なレベルは、慣用的な実験によって、特定の場合において容易に決定される。
【0065】
用語「増殖因子」とは、本明細書中で使用される場合、細胞の分化または増殖をもたらし得るポリヌクレオチド分子、ポリペプチド分子、または他の関連する化学的因子をいう。本明細書中の教示に従って使用するために企図されるような増殖因子の例としては、上皮増殖因子(EGF)、形質転換増殖因子−α(TGF−α)、形質転換増殖因子−β(TGF−β)、ヒト内皮細胞増殖因子(ECGF)、顆粒細胞マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、骨形成タンパク質(BMP)、神経増殖因子(NGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、および/または血小板由来増殖因子(PDGF)が挙げられる。
【0066】
本明細書中で使用される場合、用語「有効量」とは、生物学的に活性な薬剤に関連して、同様に、処置を受けている特定の患者に対して薬学的および生理学的に受容可能な物質の量をいう。いくつかの実施形態において、この組成物は、マーカーと化学結合することによって、官能基化される。このマーカーは、以下であり得る:
・化学染料(例えば、Cibacron BlueまたはProcion Red HE−3B)であり、組成物の直接の可視化を可能にする(Boschetti,J.Biochem−Biophys.Meth.,19:21−36(1989))。この型のマーキングのために使用可能な、官能基化されたモノマーの例は、N−アクリロイルヘキサメチレンCibacrone BlueまたはN−アクリロイルヘキサメチレンProcion Red HE−3Bである;
・磁気共鳴画像化剤(エルビウム、ガドリニウムまたは磁鉄鉱);
・造影剤(例えば、バリウムまたはヨウ化物塩)(例えば、アシルアミノ−ε−プロピオン−アミド)−3−トリヨード−2,4,6−安息香酸が挙げられ、これは、Boschettiら(Bull.Soc.Chim.No.4 France,(1986))によって記載された条件下で調製され得る)。バリウムまたは磁鉄鉱塩の場合には、これらは、最初の化合物中に粉末形態で直接導入され得る。
【0067】
上記のように、これらの組成物を、それらの合成後にマークすることもまた可能である。このことは、例えば、蛍光マーカー誘導体(例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミンイソチオシアネート(RITC)などが挙げられる)をグラフトすることによってなされ得る。
【0068】
本開示の組成物歯また、これらが治療効果、脈管形成効果、抗脈管形成効果、可視化特性、抗炎症効果、抗菌効果、または抗ヒスタミン効果、あるいはこれらの組み合わせを「運ぶ」ように、化学修飾され得る。本開示の組成物の化学修飾は、これらの組成物は、架橋することによって、種々の特性を保有し、表面共有結合に関連する独特の特徴を保有する化学物質をその構造内に含み得る、ポリマーから作製される粒子を含有するという事実によって、可能にされる。本開示の組成物の化学修飾はまた、投与後に、これらの組成物と、周辺の細胞および組織との相互作用を介して、起こり得る。
【0069】
本開示は、哺乳動物において組織をバルキングするための方法を提供する。この方法は、本開示による組成物を、この哺乳動物に投与する工程を包含する。この組成物は、ニードル(例えば、約18ゲージ〜約26ゲージ)を通して注射され、そしてこれらの組成物は、この動物のリンパ系のマクロファージまたは他のエレメントによって、消化または排除され得ない。本開示の、組織をバルキングする方法は、種々の組織欠陥(歯の組織の欠陥、生体組織の欠陥、または他の皮膚ではない軟部組織の欠陥が挙げられるが、これらに限定されない)を処置するために適切である。
【0070】
本開示の注入方法は、任意の型の滅菌ニードルおよび対応するシリンジ、または他の注射のための手段(例えば、三方向シリンジ)によって、実施され得る。この注入は、好ましくは、組織をバルキングする処置を必要とする領域になされる。注入のためのニードル、シリンジおよび他の手段は、種々の供給者(例えば、VWR Scientific Products(West Chester,Pa.)、Becton Dickinson,Kendal、およびBaxter Healthcare)から市販されている。使用されるシリンジの大きさおよびニードルの長さは、処置される特定の疾患または障害、注入の位置および深さ、ならびに使用される注射可能懸濁液の体積および特定の組成のような要因に基づいて、特定の注入に依存する。当業者は、経験および本開示の教示に基づいて、シリンジおよびニードルを選択し得る。
【0071】
本開示は、さらに、バルキングすること、皮膚を増大させて組織をバルキングすること、組織をバルキングすることおよび/または閉塞させることを実施するための、キットを提供する。このキットは、ニードルおよび対応するシリンジ(これらの両方が、滅菌されている)を備え、このシリンジは、必要に応じて、本開示による組成物を収容する。この組成物は、ニードルを通して注入可能であり、そしてこれらの組成物は、この哺乳動物の免疫系またはリンパ系のマクロファージまたは他のエレメントによって排除され得ない。あるいは、このキットは、ニードル、対応するシリンジ、および別個の容器を備え、この容器は、乾燥および滅菌された形態の組成物および生体適合性の溶媒を収容する。この乾燥および滅菌された組成物ならびに溶媒は、それぞれの容器内でか、またはシリンジ内でかのいずれかで、注射のために混合される準備ができている。これらのキットは、滅菌されており、そして使用の準備ができている。これらのキットは、シリンジおよびニードルの大きさ、ならびにその中に収容される注射可能な組成物の体積に基づいて、種々の形態で設計される。この組成物の体積は、次に、このキットが処置するように設計される特定の皮膚または組織の欠陥に基づく。
【0072】
上記本発明の開示の実施形態は、例示のみが意図され、そして当業者は、慣用的な実験のみを使用して、本明細書中に記載された特定の手順に対する多数の均等物を認識するか、または確認し得る。このような均等物の全ては、本開示の範囲内に入り、そして添付の特許請求の範囲によって網羅される。
【0073】
本明細書中に記載された全ての参考文献の内容は、本明細書中に参考として援用される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】記載なし。
【図2】記載なし。
【図3】記載なし。
【図4】記載なし。
【図5】記載なし。
【図6A】記載なし。
【図6B】記載なし。
【図6C】記載なし。
【図7A】記載なし。
【図7B】記載なし。
【図8A】記載なし。
【図8B】記載なし。
【図8C】記載なし。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、生体適合性の生体非吸収性のイソシアネートを基礎にした物質を含有する組成物を、肛門括約筋、膀胱括約筋および回盲括約筋からなる群より選択される組織に、該組織をバルキングするために充分な量で注入する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記組成物が、画像化剤をさらに含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物が、抗炎症剤をさらに含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物が、生物活性剤をさらに含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記注入される組成物の量が、約0.01cc〜約10ccである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
方法であって、生体適合性の生体非吸収性のイソシアネートを基礎にした物質を含有する組成物を、組織内に、該組織を増大させるために充分な量で注入する工程を包含する、方法。
【請求項7】
前記組成物が、皮下注入される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、被験体の頬、唇、乳房または陰茎の大きさまたは外観を増強するために注入される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、画像化剤をさらに含有する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、抗炎症剤をさらに含有する、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、生物活性剤をさらに含有する、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記注入される組成物の量が、約0.01cc〜約10ccである、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
方法であって、生体適合性の生体非吸収性のイソシアネートを基礎にした物質を含有する組成物を、組織に移植片を固定するために充分な量で使用して、組織欠陥の部位に移植片を固定する工程を包含する、方法。
【請求項14】
前記組成物が、画像化剤をさらに含有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、抗炎症剤をさらに含有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物が、生物活性剤をさらに含有する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記注入される組成物の量が、約0.01cc〜約10ccである、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記移植片が、異種移植片である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記移植片が、代用皮膚である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
方法であって、生体適合性の生体非吸収性のイソシアネートを基礎にした物質を含有する組成物を、管腔内に、該管腔の閉塞を達成するために充分な量で投与する工程を包含する、方法。
【請求項21】
前記組成物が、画像化剤をさらに含有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が、抗炎症剤をさらに含有する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記組成物が、生物活性剤をさらに含有する、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記管腔が、ファローピウス管である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
方法であって、生体適合性の生体非吸収性のイソシアネートを基礎にした物質を含有する組成物を、人造チャネル内に、該人造チャネルの閉塞を達成するために充分な量で投与する工程を包含する、方法。
【請求項26】
前記人造チャネルが、頭蓋穿刺である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
方法であって、生体適合性の生体非吸収性のイソシアネートを基礎にした物質を含有する組成物を、除皮質を包含する外科手術手順の間に分離された組織の間に投与する工程を包含する、方法。
【請求項28】
組織をバルキングするか、増大させるか、または閉塞させるためのキットであって、少なくとも1つの滅菌ニードル、少なくとも1つの滅菌シリンジ、および生体適合性の生体非吸収性のイソシアネートを基礎にした物質を含有する組成物を備える、キット。
【請求項29】
生体適合性の溶媒をさらに備える、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
前記少なくとも1つの滅菌シリンジが、約18ゲージ〜約26ゲージのニードルを備える、請求項28に記載のキット。
【請求項31】
前記少なくとも1つのシリンジが、三方向シリンジである、請求項28に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【公表番号】特表2008−505099(P2008−505099A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519402(P2007−519402)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/023147
【国際公開番号】WO2006/004854
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(506334126)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (5)
【Fターム(参考)】