説明

イソフタル酸原スラリーの分散媒置換方法

【課題】分散媒置換塔を用いる方法であって、高い置換効率を維持しながら安定に運転を継続するイソフタル酸原スラリーの分散媒置換方法を提供する。
【解決手段】第一分散媒とイソフタル酸結晶からなるイソフタル酸原スラリーを分散媒置換塔上部より導入し、第二分散媒を同置換塔下部より導入し、イソフタル酸原スラリーの第一分散媒を置換して同置換塔上部より主に第一分散媒を抜き出し、主にイソフタル酸結晶と第二分散媒からなる置換スラリーを同置換塔下部より抜き出すイソフタル酸原スラリーの分散媒置換方法であって、イソフタル酸原スラリー導入流量、第二分散媒導入流量及び置換スラリーの抜き出し流量を調節してイソフタル酸結晶が重力により自由沈降する領域(中間部領域)と攪拌することにより均一な分散状態となった下部領域、及び中間部領域と下部領域の間に界面領域を形成し、特定の条件を満たすイソフタル酸原スラリーの分散媒置換方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は第一分散媒とイソフタル酸結晶とからなるイソフタル酸原スラリーの第一分散媒を置換する方法に関する。更に詳細には液相酸化反応より得られたイソフタル酸原スラリー、又は粗イソフタル酸を接触水素化処理や再結晶処理をすることによって得られたイソフタル酸原スラリーであって、不純物の多いイソフタル酸原スラリーの第一分散媒を他の第二分散媒と効率よく置換することのできる分散媒置換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソフタル酸はm−キシレンを代表とするm−ジアルキルベンゼン類の液相酸化反応により製造されるが、通常は酢酸を溶媒としてコバルト、マンガン等の触媒を利用し、またはこれに臭素化合物、アセトアルデヒドのような促進剤を加えた触媒が用いられる。しかし、この反応生成物は上記のように酢酸を溶媒とし、液相酸化反応によって得られた反応生成物には3−カルボキシベンズアルデヒド(3CBA)、メタトルイル酸(m−TOL)等の酸化反応中間体、安息香酸等の副生成物、あるいはその他にも種々の着色性不純物が多く含まれているため、該反応生成物から分離して得られた粗イソフタル酸にもそれら不純物が混入しており、高純度のイソフタル酸を得るにはかなり高度の精製技術を必要とする。
【0003】
液相酸化反応で得られた粗イソフタル酸を精製する方法としては、粗イソフタル酸を酢酸や水、あるいはこれらの混合溶媒などに高温、高圧下で溶解し、接触水素化処理、脱カルボニル化処理、酸化処理、再結晶処理、あるいはイソフタル酸結晶が一部溶解した分散状態での高温浸漬処理などの種々の方法が知られている。このような液相酸化反応による粗イソフタル酸の製造、あるいはその精製においては、いずれの場合も最終的にはイソフタル酸結晶をスラリーから分離する操作が必要となる。
【0004】
しかし、イソフタル酸結晶をスラリーから分離する場合、不純物として存在する3CBA、m−TOL等の酸化反応中間体、安息香酸等の副生成物、あるいは着色原因物質等は、高温ではそのほとんどが分散媒中に溶解しているが、90〜100℃前後まで冷却するとこれらの不純物はイソフタル酸結晶の中に取り込まれるようになり、高純度のイソフタル酸結晶を得ることは困難になる。
【0005】
高純度イソフタル酸を製造する方法として、接触水素化処理法により得られた反応液からイソフタル酸結晶を晶析させたスラリーと高温水との溶媒置換(分散媒置換)を行い、溶媒置換塔(分散媒置換塔)の塔頂からイソフタル酸の微細な結晶の一部を母液と共に抜き出すことにより塔底から得られるイソフタル酸の品質が向上することが開示されている(特許文献1参照。)しかし、長時間の運転状態に関する記載はない。また、溶媒置換塔(分散媒置換塔)下部に導入する高温水の内、上昇液流となる分の線速度が3.6〜36m/hと高すぎ、置換効率の良い溶媒置換塔(分散媒置換塔)とは言えない。
【0006】
攪拌軸が下部壁を貫通して攪拌槽下部に伸びる攪拌機については、芳香族カルボン酸の製造における酸化反応器や晶析槽に用いることが知られている(特許文献2,3参照。)。槽上部に駆動装置があり、槽上壁を貫通した攪拌軸が酸化反応器や晶析槽の全長にわたり設けられている従来の攪拌機と比べて、攪拌機の構造が簡単にして小型化でき、振動や駆動動力を小さくすることができる、更に酸化反応器や晶析槽の上部スペースを有効に利用できることが利点とされているが、分散媒置換塔に適用することは記載されていない。
【特許文献1】特許第3269508号公報
【特許文献2】特開2000−44510号公報
【特許文献3】特開2002−275122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の課題は、分散媒置換塔を用いる方法であって、高い置換効率を維持しながら安定に運転を継続するイソフタル酸原スラリーの分散媒置換方法を見出そうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らはこの課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、一定の条件を満たす界面領域を形成することにより容易に分散媒置換装置を高い置換効率で管理できることを見出し、本発明に到達した。
即ち本発明は、第一分散媒とイソフタル酸結晶からなるイソフタル酸原スラリーを分散媒置換塔上部より導入し、第二分散媒を同置換塔下部より導入し、イソフタル酸原スラリーの第一分散媒を置換して同置換塔上部より主に第一分散媒を抜き出し、主にイソフタル酸結晶と第二分散媒からなる置換スラリーを同置換塔下部より抜き出すイソフタル酸原スラリーの分散媒置換方法であって、イソフタル酸原スラリー導入流量、第二分散媒導入流量及び置換スラリーの抜き出し流量を調節してイソフタル酸結晶が重力により自由沈降する領域(中間部領域)と攪拌することにより均一な分散状態となった下部領域、及び中間部領域と下部領域の間に界面領域を形成し、条件(A)〜条件(D)を満たすイソフタル酸原スラリーの分散媒置換方法に関するものである。
条件(A)分散媒置換塔の内径D(m)が1.00〜5.00である
条件(B)中間部領域の幅L(m)が分散媒置換塔の内径D(m)の0.3〜4.0倍の範囲にあり、下部領域の幅L(m)が分散媒置換塔の内径D(m)の0.3〜1.5倍の範囲にある
条件(C)界面領域の幅L(m)が0.10〜1.00の範囲にある
条件(D)下記の式で表される界面領域におけるイソフタル酸含有量の変化量X(重量%/m)が15〜500の範囲にある
X=(C−C)/L
(式中、Cは中間部領域のイソフタル酸含有量(重量%)、Cは下部領域のイソフタル酸含有量(重量%)を、Lは界面領域の幅(m)を示す。)
【0009】
更に本発明者らは、攪拌機または外部循環装置で攪拌することにより均一な分散状態となった下部領域を形成することができ、界面領域が安定に形成され、容易に分散媒置換装置を高い置換効率で管理できることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0010】
下部領域のイソフタル酸含有量と中間部領域のイソフタル酸含有量に差をつけることにより、イソフタル酸含有量の界面が安定に形成され、分散媒置換装置の運転状態が安定化し、かつ高い置換効率を得ることができ、きわめて有利なイソフタル酸原スラリーの分散媒置換方法が確立される。
【0011】
更には攪拌機が攪拌軸を用いて攪拌羽根を回転させる攪拌機であって、置換塔の下側に設置された攪拌機で攪拌することにより均一な分散状態となった下部領域を形成するとにより、界面領域に攪拌軸が存在しなくなり、イソフタル酸含有量の界面が乱されず安定に形成され、分散媒置換装置の運転状態が安定化し、かつ高い置換効率を得ることができ、極めて有利なイソフタル酸原スラリーの分散媒置換方法が確立される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本発明の内容を詳細に説明する。
本発明に係るイソフタル酸原スラリーの分散媒置換方法は、イソフタル酸結晶及び第一分散媒を主成分とするイソフタル酸原スラリーを無段の分散媒置換塔上部より導入し、又第一分散媒を置換しようとする他の分散媒である第二分散媒を同置換塔下部より導入し、両液を液/液接触状態に置き、その状態でイソフタル酸結晶を第一分散媒から第二分散媒に重力沈降手段により移行させ、同置換塔上部より第一分散媒を抜き出す一方、第二分散媒とイソフタル酸結晶からなる置換スラリーを同置換塔下部より抜き出し、イソフタル酸原スラリーの分散媒を置換する方法に係るものである。
【0013】
本発明において、取り扱われるイソフタル酸原スラリーは、液相酸化反応生成スラリー又は粗イソフタル酸を精製処理した後のスラリーであって、イソフタル酸結晶と第一分散媒とを主成分とするが、イソフタル酸原スラリーを構成する第一分散媒の主成分は、液相酸化反応溶媒又は精製処理溶媒である。この液相酸化反応溶媒には通常、酢酸、水等が使用されるが、より好ましくは水を含んだ酢酸が用いられる。また、精製処理溶媒には通常、水、酢酸等が使用されるが、より好ましくは水が用いられる。イソフタル酸原スラリーのイソフタル酸含有量は20〜45重量%である。導入されるイソフタル酸原スラリーの温度は、105〜200℃である。
【0014】
一方、第二分散媒は、通常は水もしくは酢酸又はこれらの混合物が使用される。なお、第二分散媒には、置換によって少なくとも精製効果が得られる程度にまでは不純物を除去したものを使用することが望ましい。導入される第二分散媒の温度は、60〜180℃である。
【0015】
本発明において、分散媒置換塔は内部に棚段などを特に必要とせず、通常は空塔が用いられる。
分散媒置換塔の形状は円筒で、上鏡部及び下鏡部については球形、楕円形又は円錐形等を例示することができ、特に下鏡部については下部領域を均一な分散状態にし易い楕円形が好ましい。
この分散媒置換塔の下部には、内部を攪拌し、下部領域(後述の界面領域の下側の領域)を攪拌して均一な分散状態(均一化)とするため攪拌装置が設置される。この均一化の目的は、下部領域内のスラリーの部分的低比重化による中間部領域と下部領域との間の密度勾配上の不安定化等を防止することにある。設置される攪拌装置は、実質的に下部領域内を均一化する装置であればよく、種々の攪拌羽根付き攪拌機でも、下部に混合流を生ぜしめる外部循環装置でも構わない。攪拌羽根としてはプロペラ翼、タービン翼、パドル翼、ディスクタービン翼、傾斜パドル翼等を例示することができる。外部循環装置の場合は、該置換塔下部外部に循環パイプを設置し、下部領域内液を抜き出し、循環ポンプを通して下部領域内に戻すことになる。この外部循環の途中に更に攪拌翼による攪拌装置を介在させることも好ましく採られる手段である。また、攪拌を助勢するため置換塔下部にバッフルを入れることも好適に行われる。
【0016】
本発明において、置換塔内流体のバックミキシングを抑制するために、置換塔下部に設置した攪拌装置により内部を攪拌しかつ第二分散媒導入流量及び置換スラリーの抜き出し流量を調節して上側のイソフタル酸含有量が低く下側のイソフタル酸含有量が高い界面領域を形成し、界面領域の下側の領域を均一な分散状態とすることが必要となる。この界面領域下部端面より下側の領域を下部領域、該界面領域上部端面の上側で、イソフタル酸原スラリー導入位置までの領域を中間部領域と定義する。また、イソフタル酸原スラリー導入位置より上の領域を上部領域と定義する。
【0017】
中間部領域は分散媒置換塔上部に導入されたイソフタル酸原スラリー中のイソフタル酸結晶が重力により自由沈降する領域であり、一方下部領域は分散媒置換塔下部領域に沈降してきたイソフタル酸結晶が攪拌装置により混合され均一な分散状態となる領域である。
【0018】
置換塔内を沈降するイソフタル酸結晶は中間部領域から界面領域を経て下部領域に滞りなく移動しているが、中間部領域の第一分散媒と下部領域の第二分散媒は界面領域を介してほとんど混じりあっていない。この現象は自然界の河口域において潮の満ちひきによって川をさかのぼる海水が比重差のために川の水(淡水)と淡塩境界面をつくり、簡単には混ざり合わないことに似ている。
【0019】
イソフタル酸結晶と分散媒からなるスラリーについて言えば、比重差は即ちイソフタル酸含有量の差であり、中間部領域と下部領域にイソフタル酸含有量の差をつけ、それぞれの領域を独立した領域として存在させることにより、それぞれの分散媒が混じらない、つまり分散媒の移動の少ない界面領域が形成される。
【0020】
本発明に係る方法を適用できる分散媒置換塔は大きく分けて置換塔上部、置換塔下部及び置換塔中間部からなり、置換塔上部は先ず、第一分散媒とイソフタル酸結晶からなるイソフタル酸原スラリーの導入口を有するが、この導入口は置換塔上部内壁に開口していてもよいが、置換塔上部内に延びて開口する筒状導入口である方が第一分散媒の抜き出し操作を妨害しない点で好ましい。さらにこの開口先端部は下向きに設置されている方が、イソフタル酸原スラリーと第二分散媒の均一な接触をさせやすいので好ましい。なお、開口先端部には液流分散用邪魔板(又は遮蔽板)を設置すれば、イソフタル酸原スラリーが置換塔内に広く且つ均一に導入されることになり、分散媒置換操作がより順調に進められる。イソフタル酸原スラリー導入口を分散用リング形式とし、該分散用リングに複数個の孔を開けて分散媒置換塔内にイソフタル酸原スラリーを分散して供給する方法もある。置換塔上部には更に、主に第一分散媒を抜き出す第一分散媒抜き出し口を備え、イソフタル酸結晶を殆ど含まない第一分散媒が抜き出される。本発明が対象とするイソフタル酸結晶の形状については特に限定されるものではない。
【0021】
置換塔下部には第二分散媒導入口と、該第二分散媒で置換されてなる置換スラリーの抜き出し口、第二分散媒導入流量及び置換スラリー抜き出し流量の調節部並びに攪拌装置を備えている。第二分散媒導入口は、置換操作により新たな分散媒となる液の導入口であり、イソフタル酸結晶は含まず低比重であるため、置換スラリーとの混合をよくするため置換塔下部の下方に開口することが好ましい。又、第二分散媒で置換されてなる置換スラリーの抜き出し口は、置換スラリーが高比重であるため、位置的には上記同様置換塔下部の下方に近い方が好ましい。
【0022】
第二分散媒導入流量及び置換スラリー抜き出し流量の調節は置換スラリーのイソフタル酸含有量の制御を可能にしている。これら両者の流量を調節する調節部の設置は安定した置換操作上重要であり、第二分散媒導入流量及び置換スラリー抜き出し流量の調節が下部領域のイソフタル酸含有量と、中間部領域のイソフタル酸含有量の相対的関係に影響し、結果として分散媒置換効率及び置換スラリーの取り扱いの難易に関係する。
【0023】
置換塔中間部は置換塔上部と置換塔下部を上下方向に連結している。なお、ここで置換塔中間部は棚段等のない垂直方向の管状構造であることから、棚段設置の場合のごとくイソフタル酸結晶の堆積や閉塞を気遣う必要がないメリットを有する。
【0024】
本発明において、分散媒置換塔の運転温度は、該置換塔の構造がシンプルであり、閉鎖系故に加圧下での運転が容易であることから、運転圧力下での各分散媒の沸点以下であればよい。また、イソフタル酸原スラリーの温度と第二分散媒の温度は同じであってもよいし、異なっていてもよいが、第二分散媒の温度をイソフタル酸原スラリーの温度よりも低くすれば、置換塔下部のスラリー比重がイソフタル酸原スラリーの比重より高くなり、より安定した系を形成するので好ましい。
【0025】
前述したように、中間部領域のイソフタル酸含有量と下部領域のイソフタル酸含有量の差により界面領域が形成される。そして界面領域及びその近辺の分析の結果、この界面領域においてイソフタル酸原スラリーの第一分散媒が第二分散媒に置き換わっていることがわかった。つまり界面領域には上側の中間部領域と下側の下部領域がお互いに混じらないようにする効果があることが判明した。
【0026】
中間部領域と下部領域に温度差をつけることも分散媒の移動の少ない界面領域の形成に有効に働く。これは分散媒である酢酸や水は温度が高いほど比重が小さくなるからであり、中間部領域の温度を下部領域より高くすると分散媒の比重という点においても界面領域が安定化する。中間部領域の温度は、70〜190℃、下部領域の温度は、60〜180℃である。中間部領域の温度は下部領域の温度より高ければよく、5℃以上高いことが好ましい。このように温度差がある場合は界面領域において分散媒の移動が少ないために、中間部領域と下部領域に界面領域をはさんで温度差のギャップができる。中間部領域の温度はイソフタル酸原スラリーの入熱量と第二分散媒の上昇流量分の入熱量により決まり、下部領域の温度は第二分散媒の入熱量と分散媒置換塔を沈降するイソフタル酸結晶の持つ熱量により決まる。
【0027】
中間部領域はイソフタル酸結晶が自由沈降する領域であるので、中間部領域のイソフタル酸含有量は分散媒置換塔のイソフタル酸結晶処理量によって決まる。このイソフタル酸結晶処理量とはイソフタル酸原スラリーとして分散媒置換塔に導入されたイソフタル酸結晶導入量を分散媒置換塔の中間部領域の断面積で除したものである。下部領域のイソフタル酸含有量は置換塔下部に設置した攪拌装置による攪拌と第二分散媒導入流量及び置換スラリーの抜き出し流量により、均一な含有量のスラリーとして存在しうる範囲で任意に設定できる。
【0028】
本発明に用いる分散媒置換塔は商業規模のイソフタル酸製造に用いられる装置であり、その内径は1.00〜5.00mの範囲である。分散媒置換塔の処理能力は主として単位断面積当りのイソフタル酸結晶処理量で決まるため、イソフタル酸製造設備の生産能力に応じて分散媒置換塔の内径は決まる。処理能力以上のイソフタル酸結晶を処理しようとすると中間部領域におけるイソフタル酸結晶の自由沈降が阻害され、置換効率が低下してしまう。
【0029】
本発明において中間部領域の幅L(m)は、界面領域の上部端面とイソフタル酸原スラリーの導入位置(イソフタル酸原スラリーの導入口の位置)との距離を意味する。
界面領域を安定にするためには分散媒置換塔内に導入されたイソフタル酸結晶が自由沈降する距離を保つことが必要である。これは該界面領域がイソフタル酸原スラリー導入口に近づくとこの導入口から飛び出すイソフタル酸原スラリーの勢いが該界面領域を乱してしまうためであり、更にはイソフタル酸結晶が該置換塔内に十分に分散して均一に自由沈降することができないためである。その結果、置換効率が低下してしまう。一方、距離を長くすれば上側のイソフタル酸含有量が低く下側のイソフタル酸含有量が高い界面領域を乱すことなく、イソフタル酸結晶が均一に自由沈降するので置換効率は向上する。ただし、必要以上に距離を長くするのは、分散媒置換塔が巨大な置換塔となるために実装置化は難しくなる。高い置換効率を得るためには、中間部領域の幅L(m)を分散媒置換塔の内径の0.3〜4.0倍の範囲に操作すればよく、好ましくは0.5〜2.0倍である。
【0030】
本発明において下部領域の幅L(m)は、界面領域の下部端面と分散媒置換塔下部領域を攪拌する撹拌装置の上端位置との距離を意味する。攪拌装置が攪拌羽根付き攪拌機の場合、撹拌装置の上端位置は攪拌羽根の上端位置とする。攪拌装置が外部循環装置の場合は、撹拌装置の上端位置は下部タンジェンシャルラインの位置とする。下部タンジェンシャルラインとは、分散媒置換塔の直胴部と下部鏡部の境界線のことを言う。
界面領域を安定にするためにはイソフタル酸含有量の高い下部領域を該イソフタル酸含有量が均一な状態として安定に保ち、更に界面領域が揺らいだり波打たないように保つことが必要である。
【0031】
攪拌装置が攪拌羽根付き攪拌機である場合は、界面領域の下部端面と攪拌羽根との距離が重要であり、攪拌が外部循環装置である場合は抜き出された下部領域スラリーを循環して該置換塔下部に戻す位置(循環ラインの戻り口の位置)が重要である。
攪拌装置が攪拌羽根付き攪拌機である場合は、界面領域の下部端面が下がる、つまり界面領域の下部端面が攪拌羽根に近づくと攪拌羽根からの吐出流や旋廻流が界面領域に影響を与えて界面が乱れてしまう。逆に界面領域の下部端面が上がる、つまり界面領域の下部端面が攪拌羽根から離れてしまうと下部領域内でイソフタル酸含有量の不均一化が発生し、均一なイソフタル酸含有量に保つことができなくなる。
高い置換効率を得るためには、下部領域の幅L(m)を分散媒置換塔の内径の0.3〜1.5倍の範囲に操作すればよく、好ましくは0.5〜1.0倍である。
【0032】
攪拌を外部循環装置でする場合には、循環ラインの戻り口の位置がほぼ界面領域の下部端面となるため、循環ラインの戻り位置が下がると循環ライン戻り口からの戻り流れの吐出流が置換スラリーの抜き出しに影響を与え、下部領域内でイソフタル酸含有量の不均一化が発生し、均一なイソフタル酸含有量に保つことができなくなる。
外部循環装置の場合は、下部領域の幅L(m)は、界面領域の下部端面と下部タンジェンシャルラインの位置との距離となる。高い置換効率を得るためには、下部領域の幅L(m)を分散媒置換塔の内径の0.3〜1.5倍の範囲に操作すればよく、好ましくは0.5〜1.0倍である。
もちろん、必要以上に下部領域の幅L(m)を大きくしすぎると、例え置換効率に問題が無くても分散媒置換装置が巨大化する方向であり、実装置化が困難になり好ましくない。
【0033】
中間部領域と下部領域を分ける界面領域の位置は、
(1)イソフタル酸原スラリーの導入流量とイソフタル酸含有量、
(2)第二分分散媒の導入流量、
(3)置換スラリーの抜き出し流量とイソフタル酸含有量
によって決まる。
界面領域の幅Lは、界面領域の上部端面と界面領域の下部端面との距離を意味する。界面領域は中間部領域と下部領域のイソフタル酸含有量が異なるために分散媒置換塔内に発生する。その幅Lは分散媒置換塔の内径Dや中間部領域と下部領域のイソフタル酸含有量の差、中間部領域と下部領域の温度差、イソフタル酸結晶の粒径など様々な因子の影響を受ける。高い置換効率を得るためには、界面領域の幅Lを0.10〜1.00mの範囲に操作すればよい。
【0034】
中間部領域のイソフタル酸含有量は通常1〜40重量%、好ましくは3〜20重量%で操作され、下部領域のイソフタル酸含有量は当該中間部領域のイソフタル酸含有量以上で且つ、6〜51重量%、好ましくは10〜45重量%の条件下で運転される。
【0035】
高い置換効率を得るためには、下部領域のイソフタル酸含有量が中間部領域のイソフタル酸含有量より5重量%以上高いことが必要であるが、単にイソフタル酸含有量差があるだけでなく、下記の式で定義される変化量X(重量%/m)が重要である。
X=(C−C)/L
(式中、Cは中間部領域のイソフタル酸含有量(重量%)、Cは下部領域のイソフタル酸含有量(重量%)を、Lは界面領域の幅(m)を示す。)
この変化量X(重量%/m)は界面領域におけるイソフタル酸含有量の変化であり、単位幅当りのイソフタル酸含有量差と言うことができる。
この変化量Xは界面領域を挟んで中間部領域のイソフタル酸含有量と下部領域のイソフタル酸含有量がどれだけ急激に変化しているかを意味しており、この数値が大きいほど置換効率が良いことが分かった。ただし、界面領域の幅L(m)の最小値が0.10であり、下部領域のイソフタル酸含有量C(重量%)と中間部領域のイソフタル酸含有量C(重量%)の差(C−C)の最大値が50と想定されることから計算して変化量Xの最大値は500と想定される。
実装置規模の分散媒置換塔においては、この変化量Xが15〜500の範囲にあるように操作すればよく、好ましくは19〜500の範囲である。
この場合、上記の第二分散媒の導入流量と置換スラリーの抜き出し流量の調節は具体的数値の範囲として特定できるものではなくて、変化量Xを上記の範囲に保つような流量であればよい。
【0036】
本発明の分散媒置換塔では沈降するイソフタル酸結晶と向流して、つまり該置換塔下部から上部に向かって第二分散媒の微弱な流れを設けることが好適に行われる。これは、第一分散媒が該置換塔下方に拡散することを防ぐための措置である。第二分散媒の上部への微弱な流れは、第二分散媒の上昇流量を置換塔の断面積で除した上昇線速度(空塔基準)を指標に制御する。上昇線速度が0.01〜1.20m/hであることが好ましい。分散媒置換塔の運転温度は、その構造が簡単であり閉鎖系であることから加圧での運転が容易であるため、運転圧力下での各分散媒の沸点以下の温度であれば好適に使用できる。
【0037】
本発明において、イソフタル酸原スラリーの第一分散媒を第二分散媒に置き換える作用は、中間部領域と下部領域のイソフタル酸含有量の差により形成される界面領域において発現する。言い換えれば、より高く且つ安定な置換性能を出すためには界面領域を安定に形成することが必要になる。この界面領域は、撹拌装置が攪拌羽根付き攪拌機の場合、下部領域を均一な分散状態とする攪拌羽根より必ず上に存在するため、攪拌機が置換塔の上側に設置され、攪拌軸が置換塔上壁を貫通して置換塔下部まで伸びている攪拌機では攪拌軸が界面領域を上から下に横断することになる。界面領域に攪拌軸が存在すると、攪拌軸の位置において界面領域が不連続になり、攪拌軸の回転の影響、攪拌軸を介する熱移動の影響、攪拌軸の壁としての影響、更には攪拌軸にイソフタル酸結晶が付着する影響などのために界面領域が乱されて安定に維持することが困難になる。
【0038】
界面領域を攪拌軸が横断しないようにするには、攪拌機が攪拌軸を用いて攪拌羽根を回転させる攪拌機であって、置換塔の下側に設置された攪拌機で攪拌することにより均一な分散状態となった下部領域を形成することが好適である。分散媒置換塔の下部領域を均一に分散させる攪拌機は、酸化反応器や晶析槽のように槽全体を攪拌する必要が無いために攪拌羽根が二段、三段である必要は無く、また下部領域という一部の領域を攪拌するだけなので強い攪拌動力を必要としない。攪拌機が攪拌軸を用いて攪拌羽根を回転させる攪拌機であって、置換塔の下側に設置された攪拌機はこれらの点にまさに合致する。
【0039】
本発明に用いる装置および分散媒置換方法を図1〜4に基づいて説明する。
本発明で用いるイソフタル酸原スラリーは、液相酸化反応生成スラリー又は粗イソフタル酸を精製処理した後のスラリーである。
図1に分散媒置換装置の一例を示す。また、図2に分散媒置換塔内の上部領域、中間部領域、界面領域、下部領域、更には界面領域の中間位置、上部端面、下部端面の一例を示す。図3に攪拌が外部循環方式である分散媒置換装置の一例を示す。図4に攪拌機の攪拌軸が分散媒置換塔上部に接続している分散媒置換装置の一例を示す。
分散媒置換装置Aは、分散媒置換塔1を中心とし、この塔にイソフタル酸原スラリー槽8、第二分散媒を導入する第二分散媒槽11、排出される第一分散媒を受ける溢流分散媒槽9及び抜き出された置換スラリーを受ける置換スラリー槽10が接続されており、必要な送液用ポンプ12,14、熱交換器15,17、分散媒置換塔1の下部に設置された攪拌機13、オンライン密度計16から構成されている。
【0040】
分散媒置換塔1の上部にはイソフタル酸原スラリーが導入され、イソフタル酸原スラリー槽8に接続するイソフタル酸原スラリー受入れ口2と置換塔上部に延びるイソフタル酸原スラリー導入口3とからなり、イソフタル酸原スラリー導入口3の先端にはスラリー分散を助ける分散用邪魔板4が設置されている。
第一分散媒とイソフタル酸結晶からなるイソフタル酸原スラリーはイソフタル酸原スラリー槽8からイソフタル酸原スラリー送液ポンプ12を経てイソフタル酸原スラリー受入れ口2に達し、イソフタル酸原スラリー導入口3から置換塔上部に散布される。散布されたイソフタル酸原スラリーの内、イソフタル酸結晶は概ね分散媒置換塔1の下方に沈降し、第一分散媒とイソフタル酸結晶粒子の内の一部で特に微細なものについては置換塔上部側面の第一分散媒抜き出し口5より第一分散媒槽(溢流分散媒槽)9に溢流する。
【0041】
置換塔下部の下端側には攪拌機13が接続されており、この攪拌機13により置換塔内を沈降してきたイソフタル酸結晶が攪拌されて、中間部領域23よりイソフタル酸含有量が高く、且つイソフタル酸含有量が均一な下部領域24が形成される。この時、界面領域25が発現する。この界面領域はある幅を持っており、中間部領域23に接する上部端面26と下部領域24に接する下部端面27が存在する。
【0042】
置換を終えたスラリーの抜き出しは置換スラリー抜き出し口7から行い、抜き出したスラリーは置換スラリー槽10に貯められる。第二分散媒は第二分散媒槽11より第二分散媒送液ポンプ14を経由し、置換塔下部側面の第二分散媒導入口6より導入される。
【0043】
攪拌が外部循環方式の場合は、置換スラリー抜き出し口7から抜き出した置換スラリーを攪拌ポンプ28で循環させて循環ラインの戻り口29より分散媒置換塔下部に置換スラリーを戻すことによりイソフタル酸含有量が高く、且つイソフタル酸含有量が均一な下部領域24を形成する。この循環流れの一部を抜き出して置換スラリー槽10へ送る。
【実施例】
【0044】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
図1の分散媒置換装置を用いた。分散媒置換塔1として垂直方向に長い構造をしている内径が1.50mのチタン製筒状塔を用い、商業規模の装置を使い、含水酢酸中でm−キシレンをコバルト、マンガン、臭素触媒の存在下、空気により液相酸化(反応温度200℃、反応圧力16気圧)して得た粗イソフタル酸スラリー(イソフタル酸含有量33重量%、第一分散媒である含水酢酸の水分濃度12重量%)を直列に連結された晶析槽へ導いて順次放圧し、150℃まで冷却したものをイソフタル酸原スラリー槽8に供給した。
【0046】
まず分散媒置換塔1に第二分散媒である水を第二分散媒送液ポンプ14より熱交換器15を通して110℃に加熱して置換塔下部へ導入し、分散媒置換塔1を満液状態として第一分散媒抜き出し口5より水を溢流させた。また、攪拌機13を起動しておいた。次にイソフタル酸原スラリー送液ポンプ12を起動してイソフタル酸原スラリーの導入を開始した。イソフタル酸原スラリーの導入温度は150℃とした。分散媒置換塔1の下部にイソフタル酸含有量の高い下部領域24が形成されたのを見計らい置換スラリーの抜き出しを開始した。
各導入流量および抜き出し流量は以下の通りとした。
イソフタル酸原スラリー導入流量 13.55トン/h
第二分散媒導入流量 9.67トン/h
第一分散媒抜き出し流量 10.35トン/h
置換スラリー抜き出し流量 12.88トン/h
【0047】
この時、イソフタル酸原スラリーのイソフタル酸含有量は33.6重量%であり、置換スラリーのイソフタル酸含有量は32.0重量%であり、置換塔内部の分散媒の上昇流量は上昇流量を置換塔の断面積で除した上昇線速度が0.55m/hであった。
また、界面領域の下部端面と攪拌羽根上端位置の距離(下部領域の幅)は0.90mとした。界面領域の位置は置換塔内の垂直方向の温度分布及び置換塔内液サンプリングの結果より確認した。界面領域の幅は0.30mであった。イソフタル酸原スラリー導入口の位置と界面領域の上部端面の距離(中間部領域の幅)は3.00mとした。中間部領域のイソフタル酸含有量は8.4重量%であり温度は118〜146℃であり、下部領域のイソフタル酸含有量は32.0重量%であり温度は113℃であった。中間部領域のイソフタル酸含有量と下部領域のイソフタル酸含有量の差は23.6重量%であり、界面領域のおける変化量X(重量%/m)は79であった。
【0048】
10時間運転を継続し、系内の液流れが十分に定常状態に達してから分散媒置換塔1に導入したイソフタル酸原スラリーの分散媒中の安息香酸濃度と第一分散媒槽(溢流分散媒槽)9内の分散媒中の安息香酸濃度を分析した。
分散媒置換塔の置換率は、イソフタル酸原スラリー分散媒中に副生成物として含まれる安息香酸量に対する、置換されて第一分散媒抜き出し口5より溢流した分散媒中に含まれる安息香酸量、つまり主流のイソフタル酸結晶を多く含む流れから置換して分けられた安息香酸量の百分率と定義する。時間毎のサンプリングを基に該置換率の変化を経時的に測定した結果を表1に示す。
【0049】
表1
経過時間(H) 置換率(%)
4 95.8
6 96.2
8 96.1
10 96.2
【0050】
(実施例2)
図1の分散媒置換装置を用いた。分散媒置換塔1として垂直方向に長い構造をしている内径が1.50mのチタン製筒状塔を用い、商業規模の装置を使い、含水酢酸中でm−キシレンをコバルト、マンガン、臭素触媒の存在下、空気により液相酸化(反応温度200℃、反応圧力16気圧)して得た粗イソフタル酸スラリー(イソフタル酸含有量33重量%、第一分散媒である含水酢酸の水分濃度12重量%)を直列に連結された晶析槽へ導いて順次放圧し、150℃まで冷却したものをイソフタル酸原スラリー槽8に供給した。
【0051】
まず分散媒置換塔1に第二分散媒である水を第二分散媒送液ポンプ14より熱交換器15を通して110℃に加熱して置換塔下部へ導入し、分散媒置換塔1を満液状態として第一分散媒抜き出し口5より水を溢流させた。また、攪拌機13を起動しておいた。次にイソフタル酸原スラリー送液ポンプ12を起動してイソフタル酸原スラリーの導入を開始した。イソフタル酸原スラリーの導入温度は150℃とした。分散媒置換塔1の下部にイソフタル酸含有量の高い下部領域24が形成されたのを見計らい置換スラリーの抜き出しを開始した。
各導入流量および抜き出し流量は以下の通りとした。
イソフタル酸原スラリー導入流量 13.99トン/h
第二分散媒導入流量 6.27トン/h
第一分散媒抜き出し流量 10.81トン/h
置換スラリー抜き出し流量 9.45トン/h
【0052】
この時、イソフタル酸原スラリーのイソフタル酸含有量は32.7重量%であり、置換スラリーのイソフタル酸含有量は43.9重量%であり、置換塔内部の分散媒の上昇流量は上昇流量を置換塔の断面積で除した上昇線速度が0.58m/hであった。
また、界面領域の下部端面と攪拌羽根上端位置の距離(下部領域の幅)は0.90mとした。界面領域の位置は置換塔内の垂直方向の温度分布及び置換塔内液サンプリングの結果より確認した。界面領域の幅は0.25mであった。イソフタル酸原スラリー導入口の位置と界面領域の上部端面の距離(中間部領域の幅)は3.00mとした。中間部領域のイソフタル酸含有量は8.6重量%であり温度は122〜145℃であり、下部領域のイソフタル酸含有量は43.9重量%であり温度は114℃であった。中間部領域のイソフタル酸含有量と下部領域のイソフタル酸含有量の差は35.3重量%であり、界面領域のおける変化量X(重量%/m)は141であった。
【0053】
10時間運転を継続し、系内の液流れが十分に定常状態に達してから分散媒置換塔1に導入したイソフタル酸原スラリーの分散媒中の安息香酸濃度と第一分散媒槽(溢流分散媒槽)9内の分散媒中の安息香酸濃度を分析した。
分散媒置換塔の置換率は、イソフタル酸原スラリー分散媒中に副生成物として含まれる安息香酸量に対する、置換されて第一分散媒抜き出し口5より溢流した分散媒中に含まれる安息香酸量、つまり主流のイソフタル酸結晶を多く含む流れから置換して分けられた安息香酸量の百分率と定義する。時間毎のサンプリングを基に該置換率の変化を経時的に測定した結果を表2に示す。
【0054】
表2
経過時間(H) 置換率(%)
4 97.3
6 97.7
8 97.4
10 97.5
【0055】
(実施例3)
図1の分散媒置換装置を用いた。分散媒置換塔1として垂直方向に長い構造をしている内径が1.50mのチタン製筒状塔を用い、商業規模の装置を使い、含水酢酸中でm−キシレンをコバルト、マンガン、臭素触媒の存在下、空気により液相酸化(反応温度200℃、反応圧力16気圧)して得た粗イソフタル酸スラリー(イソフタル酸含有量33重量%、第一分散媒である含水酢酸の水分濃度12重量%)を直列に連結された晶析槽へ導いて順次放圧し、150℃まで冷却したものをイソフタル酸原スラリー槽8に供給した。
【0056】
まず分散媒置換塔1に第二分散媒である水を第二分散媒送液ポンプ14より熱交換器15を通して110℃に加熱して置換塔下部へ導入し、分散媒置換塔1を満液状態として第一分散媒抜き出し口5より水を溢流させた。また、攪拌機13を起動しておいた。次にイソフタル酸原スラリー送液ポンプ12を起動してイソフタル酸原スラリーの導入を開始した。イソフタル酸原スラリーの導入温度は150℃とした。分散媒置換塔1の下部にイソフタル酸含有量の高い下部領域24が形成されたのを見計らい置換スラリーの抜き出しを開始した。
各導入流量および抜き出し流量は以下の通りとした。
イソフタル酸原スラリー導入流量 13.56トン/h
第二分散媒導入流量 18.39トン/h
第一分散媒抜き出し流量 10.42トン/h
置換スラリー抜き出し流量 21.53トン/h
【0057】
この時、イソフタル酸原スラリーのイソフタル酸含有量は33.1重量%であり、置換スラリーのイソフタル酸含有量は18.9重量%であり、置換塔内部の分散媒の上昇流量は上昇流量を置換塔の断面積で除した上昇線速度が0.55m/hであった。
また、界面領域の下部端面と攪拌羽根上端位置の距離(下部領域の幅)は0.90mとした。界面領域の位置は置換塔内の垂直方向の温度分布及び置換塔内液サンプリングの結果より確認した。界面領域の幅は0.30mであった。イソフタル酸原スラリー導入口の位置と界面領域の上部端面の距離(中間部領域の幅)は3.00mとした。中間部領域のイソフタル酸含有量は8.7重量%であり温度は114〜145℃であり、下部領域のイソフタル酸含有量は18.9重量%であり温度は111℃であった。中間部領域のイソフタル酸含有量と下部領域のイソフタル酸含有量の差は10.2重量%であり、界面領域のおける変化量X(重量%/m)は34であった。
【0058】
10時間運転を継続し、系内の液流れが十分に定常状態に達してから分散媒置換塔1に導入したイソフタル酸原スラリーの分散媒中の安息香酸濃度と第一分散媒槽(溢流分散媒槽)9内の分散媒中の安息香酸濃度を分析した。
分散媒置換塔の置換率は、イソフタル酸原スラリー分散媒中に副生成物として含まれる安息香酸量に対する、置換されて第一分散媒抜き出し口5より溢流した分散媒中に含まれる安息香酸量、つまり主流のイソフタル酸結晶を多く含む流れから置換して分けられた安息香酸量の百分率と定義する。時間毎のサンプリングを基に該置換率の変化を経時的に測定した結果を表3に示す。
【0059】
表3
経過時間(H) 置換率(%)
4 94.7
6 94.8
8 94.4
10 94.5
【0060】
(実施例4)
図1の分散媒置換装置を用いた。分散媒置換塔1として垂直方向に長い構造をしている内径が1.50mのチタン製筒状塔を用い、商業規模の装置を使い、含水酢酸中でm−キシレンをコバルト、マンガン、臭素触媒の存在下、空気により液相酸化(反応温度200℃、反応圧力16気圧)して得た粗イソフタル酸スラリー(イソフタル酸含有量33重量%、第一分散媒である含水酢酸の水分濃度12重量%)を直列に連結された晶析槽へ導いて順次放圧し、150℃まで冷却したものをイソフタル酸原スラリー槽8に供給した。
【0061】
まず分散媒置換塔1に第二分散媒である水を第二分散媒送液ポンプ14より熱交換器15を通して110℃に加熱して置換塔下部へ導入し、分散媒置換塔1を満液状態として第一分散媒抜き出し口5より水を溢流させた。また、攪拌機13を起動しておいた。次にイソフタル酸原スラリー送液ポンプ12を起動してイソフタル酸原スラリーの導入を開始した。イソフタル酸原スラリーの導入温度は150℃とした。分散媒置換塔1の下部にイソフタル酸含有量の高い下部領域24が形成されたのを見計らい置換スラリーの抜き出しを開始した。
各導入流量および抜き出し流量は以下の通りとした。
イソフタル酸原スラリー導入流量 13.87トン/h
第二分散媒導入流量 25.35トン/h
第一分散媒抜き出し流量 10.75トン/h
置換スラリー抜き出し流量 28.47トン/h
【0062】
この時、イソフタル酸原スラリーのイソフタル酸含有量は32.5重量%であり、置換スラリーのイソフタル酸含有量は14.3重量%であり、置換塔内部の分散媒の上昇流量は上昇流量を置換塔の断面積で除した上昇線速度が0.57m/hであった。
また、界面領域の下部端面と攪拌羽根上端位置の距離(下部領域の幅)は0.90mとした。界面領域の位置は置換塔内の垂直方向の温度分布及び置換塔内液サンプリングの結果より確認した。界面領域の幅は0.30mであった。イソフタル酸原スラリー導入口の位置と界面領域の上部端面の距離(中間部領域の幅)は3.00mとした。中間部領域のイソフタル酸含有量は8.5重量%であり温度は114〜146℃であり、下部領域のイソフタル酸含有量は14.3重量%であり温度は111℃であった。中間部領域のイソフタル酸含有量と下部領域のイソフタル酸含有量の差は5.8重量%であり、界面領域のおける変化量X(重量%/m)は19であった。
【0063】
10時間運転を継続し、系内の液流れが十分に定常状態に達してから分散媒置換塔1に導入したイソフタル酸原スラリーの分散媒中の安息香酸濃度と第一分散媒槽(溢流分散媒槽)9内の分散媒中の安息香酸濃度を分析した。
分散媒置換塔の置換率は、イソフタル酸原スラリー分散媒中に副生成物として含まれる安息香酸量に対する、置換されて第一分散媒抜き出し口5より溢流した分散媒中に含まれる安息香酸量、つまり主流のイソフタル酸結晶を多く含む流れから置換して分けられた安息香酸量の百分率と定義する。時間毎のサンプリングを基に該置換率の変化を経時的に測定した結果を表4に示す。
【0064】
表4
経過時間(H) 置換率(%)
4 93.1
6 93.3
8 92.8
10 93.0
【0065】
(比較例1)
図1の分散媒置換装置を用いた。分散媒置換塔1として垂直方向に長い構造をしている内径が1.50mのチタン製筒状塔を用い、商業規模の装置を使い、含水酢酸中でm−キシレンをコバルト、マンガン、臭素触媒の存在下、空気により液相酸化(反応温度200℃、反応圧力16気圧)して得た粗イソフタル酸スラリー(イソフタル酸含有量33重量%、第一分散媒である含水酢酸の水分濃度12重量%)を直列に連結された晶析槽へ導いて順次放圧し、150℃まで冷却したものをイソフタル酸原スラリー槽8に供給した。
【0066】
まず分散媒置換塔1に第二分散媒である水を第二分散媒送液ポンプ14より熱交換器15を通して110℃に加熱して置換塔下部へ導入し、分散媒置換塔1を満液状態として第一分散媒抜き出し口5より水を溢流させた。また、攪拌機13を起動しておいた。次にイソフタル酸原スラリー送液ポンプ12を起動してイソフタル酸原スラリーの導入を開始した。イソフタル酸原スラリーの導入温度は150℃とした。分散媒置換塔1の下部にイソフタル酸含有量の高い下部領域24が形成されたのを見計らい置換スラリーの抜き出しを開始した。
各導入流量および抜き出し流量は以下の通りとした。
イソフタル酸原スラリー導入流量 13.79トン/h
第二分散媒導入流量 30.44トン/h
第一分散媒抜き出し流量 10.70トン/h
置換スラリー抜き出し流量 33.53トン/h
【0067】
この時、イソフタル酸原スラリーのイソフタル酸含有量は32.4重量%であり、置換スラリーのイソフタル酸含有量は12.0重量%であり、置換塔内部の分散媒の上昇流量は上昇流量を置換塔の断面積で除した上昇線速度が0.56m/hであった。
また、界面領域の下部端面と攪拌羽根上端位置の距離(下部領域の幅)は0.90mとした。界面領域の位置は置換塔内の垂直方向の温度分布及び置換塔内液サンプリングの結果より確認した。界面領域の幅は0.35mであった。イソフタル酸原スラリー導入口の位置と界面領域の上部端面の距離(中間部領域の幅)は3.00mとした。中間部領域のイソフタル酸含有量は8.4重量%であり温度は112〜145℃であり、下部領域のイソフタル酸含有量は12.0重量%であり温度は110℃であった。中間部領域のイソフタル酸含有量と下部領域のイソフタル酸含有量の差は3.6重量%であり、界面領域のおける変化量X(重量%/m)は10であった。
【0068】
10時間運転を継続し、系内の液流れが十分に定常状態に達してから分散媒置換塔1に導入したイソフタル酸原スラリーの分散媒中の安息香酸濃度と第一分散媒槽(溢流分散媒槽)9内の分散媒中の安息香酸濃度を分析した。
分散媒置換塔の置換率は、イソフタル酸原スラリー分散媒中に副生成物として含まれる安息香酸量に対する、置換されて第一分散媒抜き出し口5より溢流した分散媒中に含まれる安息香酸量、つまり主流のイソフタル酸結晶を多く含む流れから置換して分けられた安息香酸量の百分率と定義する。時間毎のサンプリングを基に該置換率の変化を経時的に測定した結果を表5に示す。
【0069】
表5
経過時間(H) 置換率(%)
4 90.3
6 89.1
8 90.7
10 89.9
【0070】
(実施例5)
図1の分散媒置換装置を用いた。分散媒置換塔1として垂直方向に長い構造をしている内径が2.50mのSUS316製筒状塔を用い、商業規模の装置を使い、含水酢酸中でm−キシレンをコバルト、マンガン、臭素触媒の存在下、空気により液相酸化(反応温度200℃、反応圧力16気圧)して得た粗イソフタル酸スラリーを晶析、固液分離、乾燥して粗イソフタル酸結晶を得、次いで水添工程において水溶媒に加熱溶解して接触水素化反応を行い、得られた精製イソフタル酸スラリーを直列に連結された晶析槽へ導いて順次放圧し、130℃まで冷却したものをイソフタル酸原スラリー槽8に供給した。
【0071】
まず分散媒置換塔1に第二分散媒である水を第二分散媒送液ポンプ14より熱交換器15を通して90℃に加熱して置換塔下部へ導入し、分散媒置換塔1を満液状態として第一分散媒抜き出し口5より水を溢流させた。また、攪拌装置13を起動しておいた。次にイソフタル酸原スラリー送液ポンプ12を起動してイソフタル酸原スラリーの導入を開始した。イソフタル酸原スラリーの導入温度は130℃とした。分散媒置換塔1の下部にイソフタル酸含有量の高い下部領域24が形成されたのを見計らい置換スラリーの抜き出しを開始した。
【0072】
各導入流量および抜き出し流量は以下の通りとした。
イソフタル酸原スラリー導入流量 24.08トン/h
第二分散媒導入流量 16.70トン/h
第一分散媒抜き出し流量 18.07トン/h
置換スラリー抜き出し流量 22.72トン/h
【0073】
この時、イソフタル酸原スラリーのイソフタル酸含有量は32.4重量%であり、置換スラリーのイソフタル酸含有量は33.3重量%であり、置換塔内部の分散媒の上昇流量は上昇流量を置換塔の断面積で除した上昇線速度が0.52m/hであった。
また、界面領域の下部端面と攪拌羽根上端位置の距離(下部領域の幅)は1.00mとした。界面領域の位置は置換塔内の垂直方向の温度分布及び置換塔内液サンプリングの結果より確認した。界面領域の幅は0.60mであった。イソフタル酸原スラリー導入口の位置と界面領域の上部端面の距離(中間部領域の幅)は3.00mとした。中間部領域のイソフタル酸含有量は8.5重量%であり温度は93〜127℃であり、下部領域のイソフタル酸含有量は33.3重量%であり温度は91℃であった。中間部領域のイソフタル酸含有量と下部領域のイソフタル酸含有量の差は24.8重量%であり、界面領域のおける変化量X(重量%/m)は41であった。
【0074】
10時間運転を継続し、系内の液流れが十分に定常状態に達してから分散媒置換塔1に導入したイソフタル酸原スラリーの分散媒中の安息香酸濃度と第一分散媒槽(溢流分散媒槽)9内の分散媒中の安息香酸濃度を分析した。
分散媒置換塔の置換率は、イソフタル酸原スラリー分散媒中に副生成物として含まれる安息香酸量に対する、置換されて第一分散媒抜き出し口5より溢流した分散媒中に含まれる安息香酸量、つまり主流のイソフタル酸結晶を多く含む流れから置換して分けられた安息香酸量の百分率と定義する。時間毎のサンプリングを基に該置換率の変化を経時的に測定した結果を表6に示す。
【0075】
表6
経過時間(H) 置換率(%)
4 96.1
6 96.3
8 96.0
10 96.0
【0076】
(実施例6)
図4の分散媒置換装置を用いた。分散媒置換塔1にはその上部に攪拌機が接続しており、攪拌軸が塔上部から塔下部へ伸びている。イソフタル酸原スラリー導入口は分散用リング形式で、分散用リング30には複数個のスラリー導入口が設けられている。分散媒置換塔1として垂直方向に長い構造をしている内径が1.50mのチタン製筒状塔を用い、商業規模の装置を使い、含水酢酸中でm−キシレンをコバルト、マンガン、臭素触媒の存在下、空気により液相酸化(反応温度200℃、反応圧力16気圧)して得た粗イソフタル酸スラリー(イソフタル酸含有量33重量%、第一分散媒である含水酢酸の水分濃度12重量%)を直列に連結された晶析槽へ導いて順次放圧し、150℃まで冷却したものをイソフタル酸原スラリー槽8に供給した。
【0077】
まず分散媒置換塔1に第二分散媒である水を第二分散媒送液ポンプ14より熱交換器15を通して110℃に加熱して置換塔下部へ導入し、分散媒置換塔1を満液状態として第一分散媒抜き出し口5より水を溢流させた。また、攪拌機13を起動しておいた。次にイソフタル酸原スラリー送液ポンプ12を起動してイソフタル酸原スラリーの導入を開始した。イソフタル酸原スラリーの導入温度は150℃とした。分散媒置換塔1の下部にイソフタル酸含有量の高い下部領域24が形成されたのを見計らい置換スラリーの抜き出しを開始した。
各導入流量および抜き出し流量は以下の通りとした。
イソフタル酸原スラリー導入流量 13.67トン/h
第二分散媒導入流量 9.38トン/h
第一分散媒抜き出し流量 10.60トン/h
置換スラリー抜き出し流量 12.45トン/h
【0078】
この時、イソフタル酸原スラリーのイソフタル酸含有量は32.7重量%であり、置換スラリーのイソフタル酸含有量は32.4重量%であり、置換塔内部の分散媒の上昇流量は上昇流量を置換塔の断面積で除した上昇線速度が0.57m/hであった。
また、界面領域の下部端面と攪拌羽根上端位置の距離(下部領域の幅)は0.90mとした。界面領域の位置は置換塔内の垂直方向の温度分布及び置換塔内液サンプリングの結果より確認した。界面領域の幅は0.30mであった。イソフタル酸原スラリー導入口の位置と界面領域の上部端面の距離(中間部領域の幅)は3.00mとした。中間部領域のイソフタル酸含有量は8.7重量%であり温度は117〜145℃であり、下部領域のイソフタル酸含有量は32.4重量%であり温度は113℃であった。中間部領域のイソフタル酸含有量と下部領域のイソフタル酸含有量の差は23.7重量%であり、界面領域のおける変化量X(重量%/m)は79であった。
【0079】
10時間運転を継続し、系内の液流れが十分に定常状態に達してから分散媒置換塔1に導入したイソフタル酸原スラリーの分散媒中の安息香酸濃度と第一分散媒槽(溢流分散媒槽)9内の分散媒中の安息香酸濃度を分析した。
分散媒置換塔の置換率は、イソフタル酸原スラリー分散媒中に副生成物として含まれる安息香酸量に対する、置換されて第一分散媒抜き出し口5より溢流した分散媒中に含まれる安息香酸量、つまり主流のイソフタル酸結晶を多く含む流れから置換して分けられた安息香酸量の百分率と定義する。時間毎のサンプリングを基に該置換率の変化を経時的に測定した結果を表7に示す。
【0080】
表7
経過時間(H) 置換率(%)
4 93.2
6 93.0
8 92.7
10 93.2
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明における分散媒置換装置の一例を示す。
【図2】分散媒置換塔内の上部領域、中間部領域、界面領域、下部領域、更には界面領域の中間位置、上部端面、下部端面の一例を示す。また、界面領域の下部端面と攪拌羽根上端位置との関係の一例を示す。
【図3】攪拌が外部循環方式である分散媒置換装置の一例を示す。また、界面領域の下部端面と下部タンジェンシャルラインとの関係の一例を示す。
【図4】攪拌機の攪拌軸が分散媒置換塔上部に接続している分散媒置換装置の一例を示す。
【符号の説明】
【0082】
1・・・・分散媒置換塔(筒状塔)
2・・・・イソフタル酸原スラリー受入れ口
3・・・・イソフタル酸原スラリー導入口
4・・・・分散用邪魔板
5・・・・第一分散媒抜き出し口
6・・・・第二分散媒導入口
7・・・・置換スラリー抜き出し口
8・・・・イソフタル酸原スラリー槽
9・・・・第一分散媒槽(溢流分散媒槽)
10・・・置換スラリー槽
11・・・第二分散媒槽
12・・・イソフタル酸原スラリー送液ポンプ
13・・・攪拌機
14・・・第二分散媒送液ポンプ
15・・・熱交換器
16・・・オンライン密度計
17・・・熱交換器
18・・・分散媒置換塔上部
19・・・分散媒置換塔中間部
20・・・分散媒置換塔下部
21・・・界面領域の中間位置
22・・・分散媒置換塔上部領域
23・・・分散媒置換塔中間部領域
24・・・分散媒置換塔下部領域
25・・・界面領域
26・・・界面領域の上部端面
27・・・界面領域の下部端面
28・・・攪拌ポンプ
29・・・置換スラリー循環ライン戻り口
30・・・イソフタル酸原スラリー導入口(分散用リング)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一分散媒とイソフタル酸結晶からなるイソフタル酸原スラリーを分散媒置換塔上部より導入し、第二分散媒を同置換塔下部より導入し、イソフタル酸原スラリーの第一分散媒を置換して同置換塔上部より主に第一分散媒を抜き出し、主にイソフタル酸結晶と第二分散媒からなる置換スラリーを同置換塔下部より抜き出すイソフタル酸原スラリーの分散媒置換方法であって、イソフタル酸原スラリー導入流量、第二分散媒導入流量及び置換スラリーの抜き出し流量を調節してイソフタル酸結晶が重力により自由沈降する領域(中間部領域)と攪拌することにより均一な分散状態となった下部領域、及び中間部領域と下部領域の間に界面領域を形成し、条件(A)〜条件(D)を満たすイソフタル酸原スラリーの分散媒置換方法。
条件(A)分散媒置換塔の内径D(m)が1.00〜5.00である
条件(B)中間部領域の幅L(m)が分散媒置換塔の内径D(m)の0.3〜4.0倍の範囲にあり、下部領域の幅L(m)が分散媒置換塔の内径D(m)の0.3〜1.5倍の範囲にある
条件(C)界面領域の幅L(m)が0.10〜1.00の範囲にある
条件(D)下記の式で表される界面領域におけるイソフタル酸含有量の変化量X(重量%/m)が15〜500の範囲にある
X=(C−C)/L
(式中、Cは中間部領域のイソフタル酸含有量(重量%)、Cは下部領域のイソフタル酸含有量(重量%)を、Lは界面領域の幅(m)を示す。)
【請求項2】
イソフタル酸原スラリーの温度を第二分散媒の温度より高くすることを特徴とする請求項1記載のイソフタル酸原スラリーの分散媒置換方法。
【請求項3】
攪拌機または外部循環装置で攪拌することにより均一な分散状態となった下部領域を形成する請求項1または2記載のイソフタル酸原スラリーの分散媒置換方法。
【請求項4】
攪拌機が攪拌軸を用いて攪拌羽根を回転させる攪拌機であって、置換塔の下側に設置された攪拌機で攪拌することにより均一な分散状態となった下部領域を形成する請求項3記載のイソフタル酸原スラリーの分散媒置換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−290948(P2008−290948A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135576(P2007−135576)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】