説明

イソペンタン分留装置、その方法、および、燃料油調製方法

【課題】 効率よくイソペンタンを分留するイソペンタン分留装置を提供する。
【解決手段】 ナフサ脱硫反応塔200で水素化脱硫処理した脱硫ナフサを、分離工程により、分離塔110で蒸留して塔底から脱硫重質ナフサを分留し、塔頂から軽質分の第1分留成分を分留する。整合工程により、分離塔110の塔頂に接続した整合塔120で、第1分留成分を蒸留して液化石油ガスを塔頂から分留し、塔底から液化石油ガスを分離した脱硫ナフサの軽質分である第2分留成分を分留する。多成分分留工程により、整合塔120の塔底に接続した分割壁蒸留塔130で、第2分留成分を蒸留し、塔頂からイソペンタンを分留し、塔底から脱硫中質ナフサを分留し、分割壁131で脱硫軽質ナフサを側留留出する。必要最小限の処理段数の簡単な構成で効率よくイソペンタンを分留できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化脱硫処理された脱硫ナフサからイソペンタンを分留するイソペンタン分留装置、その方法、および、燃料油調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軽質ナフサの一部をガソリン基材の1つとしてガソリンに利用している。しかしながら、軽質ナフサにはオクタン価が低い成分も含まれていることから、通常は、他の高オクタン価基材と混合してガソリンが生産されている。ところで、軽質ナフサに含まれるイソペンタン留分はオクタン価が高いことから、ガソリンの基材として利用することが知られている(例えば、特許文献1ないし特許文献3参照)。
【0003】
特許文献1に記載の構成は、脱硫重質ナフサを接触改質処理して改質ガソリンを生成する。イソブタンと低級オレフィンとを酸触媒の存在下で反応させてアルキレートを生成する。軽質ナフサを精密蒸留してイソペンタン留分を得る。そして、改質ガソリン、アルキレートおよびイソペンタン留分を必須成分として混合し、所定の特性のガソリンを製造する構成が採られている。
【0004】
特許文献2に記載の構成は、原油を常圧蒸留して得られるフルレンジナフサを、脱硫装置で処理して脱硫重質ナフサを生成し、この脱硫重質ナフサを接触改質法により改質して改質ガソリンを生成する。また、軽質ナフサを精密蒸留してイソペンタン留分を生成する。そして、改質ガソリンにアルキレートおよびイソペンタン留分を配合してガソリンを製造する構成が採られている。
【0005】
特許文献3に記載の構成は、原油を常圧蒸留して得られるフルレンジナフサを、脱硫装置で処理して脱硫重質ナフサを生成し、この脱硫重質ナフサを接触改質法により改質して改質ガソリンを生成する。また、軽質ナフサを精密蒸留してイソペンタン留分を生成する。改質ガソリン100容量部に対して、アルキレート6〜55容量部、イソペンタン留分3〜28容量部の範囲で混合してガソリンを調製する構成が採られている。
【0006】
【特許文献1】特公平7−10981号公報(第2頁左欄〜第5頁右欄)
【特許文献2】特公平7−10980号公報(第2頁右欄〜第5頁左欄)
【特許文献3】特許第2710603号公報(第2頁右欄〜第5頁左欄)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1ないし特許文献3に記載のようなガソリンを調製する従来の方法では、軽質ナフサから単成分のイソペンタン留分を分留しているので、再沸器蒸気や燃料ガスなどのエネルギー使用量が比較的高くなり、また多段数の蒸留塔を用いる必要があるなどの問題点がある。
【0008】
本発明の目的は、このような問題点に鑑み、効率よくイソペンタンを分留するイソペンタン分留装置、その方法、および、燃料油調製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のイソペンタン分留装置は、水素化脱硫処理された脱硫ナフサを蒸留して塔底から脱硫重質ナフサを分留する第1の蒸留塔と、この第1の蒸留塔の塔頂に接続され、前記第1の蒸留塔により分留された前記脱硫ナフサの軽質分を蒸留して液化石油ガスを塔頂から分留する第2の蒸留塔と、この第2の蒸留塔の塔底に接続され、蒸留により塔頂からイソペンタンを分留するとともに塔底から脱硫中質ナフサを分留し、脱硫軽質ナフサを側留留出する分割壁を有した分割壁蒸留塔と、を具備したことを特徴とする。
【0010】
この発明では、第1の蒸留塔により、水素化脱硫処理された脱硫ナフサを蒸留して塔底から脱硫重質ナフサを分留する。そして、第1の蒸留塔の塔頂に接続された第2の蒸留塔により、第1の蒸留塔で分留した脱硫ナフサの軽質分を蒸留して液化石油ガスを塔頂から分留する。さらに、第2の蒸留塔の塔底に接続され分割壁を有する分割壁蒸留塔により、第2の蒸留塔で液化石油ガスが分留された脱硫ナフサの軽質分を蒸留し、塔頂からイソペンタンを分留し、塔底から脱硫中質ナフサを分留し、分割壁で脱硫軽質ナフサを側留留出する。このため、第1の蒸留塔で、脱硫中質ナフサ分が塔頂留分として分留される処理条件となることから、第1の蒸留塔におけるエネルギー使用量が低減する。さらに、水素化脱硫処理した脱硫ナフサの主要成分である脱硫軽質ナフサが分割壁蒸留塔で側留分留されるので、水素化脱硫処理後の脱硫ナフサからイソペンタンを分留するためのエネルギー使用量を低減できる。したがって、必要最小限の処理段数の簡単な構成で効率よくイソペンタンを分留できる。
【0011】
そして、本発明では、前記第2の蒸留塔は、プロパンおよびブタンを主成分とした前記液化石油ガスを分留する構成とすることが好ましい。この発明では、第2の蒸留塔で、プロパンおよびブタンを主成分とした液化石油ガスを分留するので、分割壁蒸留塔で蒸留する最も軽質の成分がイソペンタンとなり、第1の蒸留塔で塔頂留分とした脱硫中質ナフサが分割壁蒸留塔で塔底留分となり、主要成分の脱硫軽質ナフサが側留分留される構成が容易に得られ、効率的なイソペンタンを分留できる簡単な構成が容易に得られる。
【0012】
また、本発明では、前記第1の蒸留塔の塔底と前記分割壁蒸留塔の塔底とが、前記脱硫重質ナフサおよび前記脱硫中質ナフサを合流可能に連結された構成とすることが好ましい。この発明では、第1の蒸留塔の塔底と分割壁蒸留塔の塔底とを連結して、第1の蒸留塔の塔底留分である脱硫重質ナフサと、分割壁蒸留塔の塔底留分である脱硫中質ナフサとを合流するので、イソペンタンを効率よく分留するために第1の蒸留塔で塔頂成分とされた脱硫中質ナフサ分が脱硫重質ナフサに戻される状態となり、イソペンタンを効率よく分留しつつ、成分が変更することなく脱硫重質ナフサが得られる。
【0013】
本発明のイソペンタン分留方法は、水素化脱硫処理された脱硫ナフサからイソペンタンを分留するイソペンタン分留方法であって、前記脱硫ナフサを蒸留して脱硫重質ナフサを分離して前記脱硫ナフサの軽質分を分留する分離工程と、この分離工程で分留した前記脱硫ナフサの軽質分を蒸留して液化石油ガスを分離する整合工程と、この整合工程で前記液化石油ガスを分離した前記脱硫ナフサの軽質分を分割壁が設けられた分割壁蒸留塔により蒸留し、塔頂からイソペンタンを分留するとともに塔底から脱硫中質ナフサを分留し、前記分割壁で脱硫軽質ナフサを側留留出する多成分分留工程とを有することを特徴とする。
【0014】
この発明では、分離工程により、水添脱硫ナフサを蒸留して脱硫重質ナフサを分離し脱硫ナフサの軽質分を分留する。この分離工程で分留した脱硫ナフサの軽質分を、整合工程で蒸留して液化石油ガスを分離する。さらに、整合工程で液化石油ガスを分離した脱硫ナフサの軽質分を、多成分分留工程により、分割壁が設けられた分割壁蒸留塔で蒸留し、塔頂からイソペンタンを分留し、塔底から脱硫中質ナフサを分留し、分割壁で脱硫軽質ナフサを側留留出させる。すなわち、請求項1に記載のイソペンタン分留装置を方法に展開したものである。このため、分離工程では脱硫中質ナフサ分が塔頂留分として分留される処理条件となることから分離工程におけるエネルギー使用量が低減する。さらに、水素化脱硫処理した脱硫ナフサの主要成分である脱硫軽質ナフサが分割壁蒸留塔で側留分留されるので、水素化脱硫処理後の脱硫ナフサからイソペンタンを分留するためのエネルギー使用量を低減できる。したがって、必要最小限の処理段数の簡単な構成で効率よくイソペンタンを分留できる。
【0015】
そして、本発明では、前記整合工程は、プロパンおよびブタンを主成分とした前記液化石油ガスを分留する構成とすることが好ましい。この発明では、請求項2に記載のイソペンタン分留装置を方法に展開したもので、整合工程で、プロパンおよびブタンを主成分とした液化石油ガスを分留するので、分割壁蒸留塔で蒸留する最も軽質の成分がイソペンタンとなり、第1の蒸留塔で塔頂留分とした脱硫中質ナフサが分割壁蒸留塔で塔底留分となり、主成分の脱硫軽質ナフサが側留分留される構成が容易に得られ、効率的なイソペンタンを分留できる簡単な構成が容易に得られる。
【0016】
また、本発明では、前記分離工程で分留した前記脱硫重質ナフサと、前記多成分分留工程で分留した前記脱硫中質ナフサとを混合して脱硫重質ナフサを調製する構成とすることが好ましい。この発明では、請求項3に記載のイソペンタン分留装置を方法に展開したもので、分離工程で分留した脱硫重質ナフサと、多成分分留工程で分留した脱硫中質ナフサとを混合するので、イソペンタンを効率よく分留するために分離工程で軽質成分とされた脱硫中質ナフサ分が脱硫重質ナフサに戻される状態となり、イソペンタンを効率よく分留しつつ、成分が変更することなく脱硫重質ナフサが得られる。
【0017】
本発明の燃料油調製方法は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のイソペンタン分留装置で分留したイソペンタン、または、請求項4ないし請求項6のいずれかに記載のイソペンタン分留方法で分留したイソペンタンを、脱硫重質ナフサを接触改質処理して得られる改質ガソリンと混合して燃料油を調製することを特徴とする。
【0018】
この発明では、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のイソペンタン分留装置で分留したイソペンタン、または、請求項4ないし請求項6のいずれかに記載のイソペンタン分留方法で分留したイソペンタンを、脱硫重質ナフサを接触改質処理して得られる改質ガソリンと混合して燃料油を調製する。このため、例えば高オクタン価のガソリンを燃料油として調製する際に、エネルギー使用量が低減されて効率よく生成されたイソペンタンが利用されるので、高オクタン価のガソリンが効率よく調製されることとなり、効率的な燃料油の調製が容易に得られる。
【0019】
そして、本発明では、前記改質ガソリンは、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のイソペンタン分留装置で生成した脱硫重質ナフサと、請求項4ないし請求項6のいずれかに記載のイソペンタン分留方法における分離工程で生成した脱硫重質ナフサと、請求項3に記載のイソペンタン分留装置における前記脱硫重質ナフサおよび前記脱硫中質ナフサの合流成分と、請求項6に記載のイソペンタン分留方法で調整した脱硫重質ナフサとのうちの少なくともいずれか1つを、接触改質処理して生成したものである構成とすることが好ましい。この発明では、上述のイソペンタン分留装置で生成した脱硫重質ナフサと、上述のイソペンタン分留方法で生成した脱硫重質ナフサと、上述のイソペンタン分留装置で生成した脱硫重質ナフサおよび脱硫中質ナフサの合流成分と、上述のイソペンタン分留方法で生成し脱硫重質ナフサとのうちの少なくともいずれか1つを、脱硫重質ナフサとして接触改質処理して改質ガソリンを得るための脱硫重質ナフサとして利用するので、改質ガソリンの生成においてもエネルギー使用量が低減でき、上述のイソペンタン分留装置あるいはイソペンタン分留方法の利用とあいまって、例えば高オクタン価のガソリンなどの燃料油をエネルギー効率よく調製できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施の形態におけるイソペンタン分留装置の概略構成を示すブロック図である。
【0021】
〔イソペンタン分留装置の構成〕
図1において、100はイソペンタン分留装置で、このイソペンタン分留装置100は、水素化脱硫処理された脱硫軽質ナフサからイソペンタンを分留する装置で、ナフサ脱硫反応塔200に接続されている。そして、イソペンタン分留装置100は、第1の蒸留塔である分離塔110と、第2の蒸留塔である整合塔120と、分割壁蒸留塔130と、を備えている。
【0022】
このイソペンタン分留装置100が接続されているナフサ脱硫反応塔200は、例えば原油を常圧蒸留して得られる脱硫処理前のフルレンジナフサ(初留点が約20℃以上30℃以下、終点が約145℃以上175℃以下)を原料として、水素化脱硫処理を実施する。
【0023】
一方、イソペンタン分留装置100の分離塔110は、ナフサ脱硫反応塔200に接続され、ナフサ脱硫反応塔200で改質された脱硫ナフサを蒸留する。この分離塔110では、例えば脱硫ナフサを蒸留し、塔底から脱硫重質ナフサ(初留点が約80℃以上100℃以下、終点が約140℃以上175℃以下)を分留するとともに、塔頂から脱硫ナフサの軽質分である第1分留成分を分留する。この分離塔110における蒸留処理が、分離工程となる。この第1分留成分は、液化石油ガスと、脱硫軽質ナフサと、脱硫中質ナフサと、を主成分とする。すなわち、分離塔110では、脱硫中質ナフサ分を塔頂留分に持ち上げる条件で蒸留される。
【0024】
整合塔120は、分離塔110の塔頂に接続され、分離塔110で分留した第1分留成分を蒸留する。この整合塔120では、例えば第1分留成分を、塔頂からプロパンおよびブタンを主成分とした液化石油ガスを分留するとともに、塔底から液化石油ガスが分離された脱硫ナフサの軽質分である第2分留成分を分留する蒸留条件で行うことができる。この整合塔120における蒸留処理が、整合工程となる。この整合塔120で分留した液化石油ガスは、整合塔120の塔頂に接続された図示しない貯蔵タンクに製品として貯蔵される。
【0025】
分割壁蒸留塔130は、整合塔120の塔底に接続され、整合塔120で分留した第2分留成分を蒸留する。この分割壁蒸留塔130は、側留留出して3成分に分留するための分割壁131を有している。そして、分割壁蒸留塔130では、例えば第2分留成分を蒸留し、塔頂からイソペンタンを純度70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上となるように分留するとともに、塔底から脱硫中質ナフサ(初留点が約70℃以上90℃以下、終点が約110℃以上150℃以下)を分留し、分割壁131にて脱硫軽質ナフサ(初留点が約40℃以上60℃以下、終点が約80℃以上120℃以下)を側留留出する。この分割壁蒸留塔130における蒸留処理が、多成分分留工程となる。そして、分留されたイソペンタンは、分割壁蒸留塔130の塔頂に接続された図示しない貯蔵タンクに製品として貯蔵される。また、分留された脱硫軽質ナフサは、分割壁蒸留塔130の塔側に接続された図示しない貯蔵タンクに製品として貯蔵される。
【0026】
そして、イソペンタン分留装置100は、分離塔110の塔底と、分割壁蒸留塔130の塔底とが、分離塔110の塔底留分である脱硫重質ナフサと、分割壁蒸留塔130の塔底留分である脱硫中質ナフサとを合流可能に連結されている。この連結により、合流する脱硫重質ナフサおよび脱硫中質ナフサにて脱硫重質ナフサ(初留点が約70℃以上100℃以下、終点が約145℃以上175℃以下)が混合調製される。この合流位置より下流側に図示しない貯蔵タンクが接続され、調製された脱硫重質ナフサが貯蔵される。
【0027】
この脱硫重質ナフサを貯蔵する貯蔵タンクは、図示しない接触改質処理装置に適宜接続されている。この接触改質処理装置は、例えば白金系触媒の存在下で、水素分圧0.1MPa以上10MPa、温度400℃以上550℃以下などの条件で接触改質処理する。そして、接触改質処理装置では、リサーチオクタン価が101.5以上(通常は102以上104以下)、リード蒸気圧が0.3kg/cm2以上(好ましくは0.5kg/cm2以上)、沸点範囲が30℃以上200℃以下の性状となる改質ガソリンに改質する。この改質ガソリンと、分割壁蒸留塔130から得られるイソペンタン留分とを主要成分として各種ガソリン基材が適宜混合され、燃料油としての高オクタン価のガソリンが調製される。
【0028】
〔イソペンタン分留装置の作用〕
次に、上述した図1に示すイソペンタン分留装置100の作用として、分留効率の実験について説明する。図2は、分割壁蒸留塔を利用しない比較例の分留装置の概略構成を示すブロック図である。図3は、イソペンタンを側留留出する分割壁蒸留塔を利用する比較例の分留装置の概略構成を示すブロック図である。図4は、分留効率の実験結果を表形式で示す説明図である。
【0029】
分留効率の実験として、上述したイソペンタン分留装置100と、比較例1としての図2に示す分留装置300と、比較例2としての図3に示す分留装置400と、を利用し、純度などの製品規格が同一となる条件で、液化石油ガス、イソペンタン、脱硫軽質ナフサおよび脱硫重質ナフサを製造した。この製造時の再沸器蒸気や燃料ガスなどのエネルギー使用量に基づいて分留効率を演算し比較した。なお、図2および図3に示す分留装置300,400については、図1に示す本実施の形態のイソペンタン分留装置100の構成と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略および簡略化する。
【0030】
ここで、図2に示す比較例1の分留装置300の構成は、ナフサ脱硫反応塔200に接続され、分離塔310と、整合塔320と、蒸留塔330と、を備えている。分離塔310は、ナフサ脱硫反応塔200に接続され、脱硫ナフサを蒸留し、塔底から製品組成の脱硫重質ナフサ(初留点が約80℃以上100℃以下、終点が約145℃以上175℃以下)を分留し、液化石油ガスおよび脱硫軽質ナフサを主成分とする脱硫ナフサの軽質分である第1分留成分を塔頂から分留する。整合塔320は、分離塔310の塔頂に接続され、第1分留成分を蒸留し、塔頂からプロパンおよびブタンを主成分とした製品組成の液化石油ガスを分留するとともに、塔底から液化石油ガスが分離された脱硫ナフサの軽質分である第2分留成分を分留する。蒸留塔330は、整合塔320の塔底に接続され、第2分留成分を蒸留し、塔頂から製品組成のイソペンタンを分留するとともに、塔底から製品組成の脱硫軽質ナフサを分留する。
【0031】
また、図3に示す比較例2の分留装置300の構成は、ナフサ脱硫反応塔200に接続され、図2に示す分留装置300と同様の分離塔310と、整合塔420と、分割壁蒸留塔430と、を備えている。整合塔420は、分離塔310の塔頂に接続され、第1分留成分を蒸留し、塔頂からプロパンを主成分とした液化石油ガスを分留するとともに、塔底からプロパンの液化石油ガスが分離された脱硫ナフサの軽質分である第2分留成分を分留する。分割壁蒸留塔430は、整合塔420の塔底に接続され、第2分留成分を蒸留し、塔頂からブタンを主成分とした液化石油ガスを分留するとともに、塔底から製品組成の脱硫軽質ナフサを分留し、分割壁431にて製品組成のイソペンタンを側留留出する。
【0032】
そして、図1に示すイソペンタン分留装置100における分離塔110、整合塔120および分割壁蒸留塔130の各エネルギー使用量および合計である消費エネルギー使用量と、図2に示す比較例1の分留装置300の分離塔310、整合塔320および蒸留塔330の各エネルギー使用量および合計の消費エネルギー使用量と、図3に示す比較例2の分留装置400の分離塔310、整合塔420および分割壁蒸留塔430の各エネルギー使用量および合計の消費エネルギー使用量と、を算出した。そして、図1に示すイソペンタン分留装置100を基準として、各比較例での割合を算出し、比較した。その結果を図4に示す。
【0033】
この図4に示す結果から、比較例の分留装置300,400では、整合塔320,420において、エネルギー使用量が本実施の形態の整合塔120に対して3%弱で少ない消費となっているが、分離塔310ではエネルギー使用量が本実施の形態の分離塔110に対して1割強で多く消費することが認められた。これは、本実施の形態では、分離塔110で脱硫中質ナフサ分を塔頂留分として分留しているので、整合塔120での処理量が多くなったために比較例の方が消費エネルギー量が少なくなっていると考えられる。また、比較例の分離塔310では、脱硫重質ナフサを塔底留分としていることから、脱硫中質ナフサ分を塔頂留分として分留する本実施の形態に対してエネルギー使用量が1割強多くなっていると考えられる。さらに、分割壁431を有した分割壁蒸留塔430を利用する比較例2の分留装置400でも、同様の分割壁蒸留塔130を利用する本実施の形態のエネルギー使用量が1割強多くなっていた。これは、分留する各成分の留出量として脱硫軽質ナフサが多く、留出量が多い成分を塔側留出することが少ないエネルギー使用量で済むことが認められた。なお、比較例1の分留装置300では分割壁蒸留塔130の替わりに通常の蒸留塔330を利用しており、この蒸留塔330でのエネルギー使用量が別途加算される。そして、合計での消費エネルギー量で比較すると、本実施の形態は、蒸留塔330を利用する比較例1に比して16%強、分割壁蒸留塔430を利用する比較例2に対しては20%強の消費エネルギー量を低減できることが認められた。このように、蒸留工程数である塔数が3つと同一の条件で、消費エネルギー量を大幅に低減できることが認められた。
【0034】
〔イソペンタン分留装置の作用効果〕
上述したように、上記実施の形態によれば、ナフサ脱硫反応塔200で水素化脱硫処理された脱硫ナフサを、分離工程により、分離塔110で蒸留して塔底から脱硫重質ナフサを分留し、整合工程により、分離塔110の塔頂に接続された整合塔120により、分離塔110で分留した脱硫ナフサの軽質分である第1分留成分を蒸留して液化石油ガスを塔頂から分留する。そして、多成分分留工程により、整合塔120の塔底に接続され分割壁131を有する分割壁蒸留塔130で、整合塔120で液化石油ガスが分留された脱硫ナフサの軽質分である第2分留成分を蒸留し、塔頂からイソペンタンを分留し、塔底から脱硫中質ナフサを分留し、分割壁131で脱硫軽質ナフサを側留留出する。このため、分離塔110で、脱硫中質ナフサ分が塔頂留分として分留される処理条件となることから、分離塔110におけるエネルギー使用量を低減できるとともに、水素化脱硫処理した脱硫ナフサの主要成分である脱硫軽質ナフサが分割壁蒸留塔130で側留分留されるので、水素化脱硫処理後の脱硫ナフサからイソペンタンを分留するためのエネルギー使用量を低減できる。したがって、必要最小限の処理段数の簡単な構成で効率よくイソペンタンを分留できる。
【0035】
そして、整合工程では、整合塔120でプロパンおよびブタンを主成分とした液化石油ガスを分留する構成としている。このため、分割壁蒸留塔130で蒸留する最も軽質の成分がイソペンタンとなり、分離塔110で塔頂留分とした脱硫中質ナフサが分割壁蒸留塔130で塔底留分となるので、主要成分の脱硫軽質ナフサが側留分留される構成が容易に得られ、効率的なイソペンタンを分留できる簡単な構成が容易に得られる。
【0036】
また、分離塔110の塔底と分割壁蒸留塔130の塔底とが、脱硫重質ナフサおよび脱硫中質ナフサを合流可能に連結している。このことにより、分離工程で分留した脱硫重質ナフサと、多成分分留工程で分留した脱硫中質ナフサとを混合して脱硫重質ナフサが調製されるので、分離工程で塔頂成分とした脱硫中質ナフサ分が脱硫重質ナフサに戻される状態となり、イソペンタンを効率よく分留しつつ、純度や性状などの製品規格が変更することなく脱硫重質ナフサを調製できる。
【0037】
したがって、得られる脱硫重質ナフサを接触改質処理装置で接触改質処理して所定の特性の改質ガソリンを得る処理を実施しても、基材の組成が変化しないので、同様の特性の改質ガソリンが得られる。そして、この改質ガソリンと、イソペンタン分留装置100で得られたイソペンタンとを主要成分として混合することで、高オクタン価のガソリンが得られる。また、効率よくイソペンタン分留装置100で分留したイソペンタンと、分留した脱硫重質ナフサから接触改質処理にて得られた改質ガソリンとを主要成分として混合して高オクタン価のガソリンなどの燃料油も調製することで、燃料油も効率よく調製できる。
【0038】
さらに、脱硫重質ナフサに脱硫中質ナフサを混合して脱硫重質ナフサとして貯蔵する構成としている。このため、比較的高い温度でも粘性が増大する脱硫重質ナフサに比較的粘性の増大が少ない脱硫中質ナフサを混合するので、脱硫重質ナフサの取扱が容易となって貯蔵なども容易となり、後処理が容易にできる。
【0039】
〔実施の形態の変形〕
なお、本発明は、好適な実施の形態を挙げて説明したが、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲で以下に示されるような変形をも含むものである。
【0040】
例えば、ナフサ脱硫反応塔200に接続した構成について説明したが、別途得られた脱硫ナフサを原料して分留処理するプラント構成としてもよい。さらには、ナフサ脱硫反応塔200とともに常圧蒸留して原油からフルレンジナフサを得る装置を備えたプラント構成とするなどしてもよい。
【0041】
また、分離塔110の塔底と分割壁蒸留塔130の塔底とが、脱硫重質ナフサおよび脱硫中質ナフサを合流可能に連結して説明したが、連結しなくてもよい。すなわち、脱硫重質ナフサおよび脱硫中質ナフサをそれぞれ独立して貯蔵したり、別の処理装置に接続するなどしてもよい。
【0042】
そして、処理条件や各処理工程での装置構成は、処理量などに基づいて適宜設計変更できることはいうまでもない。
【0043】
また、脱硫重質ナフサを貯蔵する貯蔵タンクに図示しない接触改質処理装置を適宜接続して、高オクタン価のガソリンを調製する構成を例示したが、この接触改質処理装置を接続しない単に各成分を分留するイソペンタン分留装置100のみの構成とし、下流側にいずれの処理設備を接続することができる。
【0044】
その他、本発明は上述の実施の形態における具体的な構造および手順に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良、設計の変更などは本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施の形態におけるイソペンタン分留装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】前記実施の形態における分留効率の実験で比較例1とした分留装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】前記実施の形態における分留効率の実験で比較例2とした分留装置の概略構成を示すブロック図である。
【図4】前記実施の形態における分留効率の実験結果を表形式で示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
100…イソペンタン分留装置
110…第1の蒸留塔としての分離塔
120…第2の蒸留塔としての整合塔
130…分割壁蒸留塔
131…分割壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化脱硫処理された脱硫ナフサを蒸留して塔底から脱硫重質ナフサを分留する第1の蒸留塔と、
この第1の蒸留塔の塔頂に接続され、前記第1の蒸留塔により分留された前記脱硫ナフサの軽質分を蒸留して液化石油ガスを塔頂から分留する第2の蒸留塔と、
この第2の蒸留塔の塔底に接続され、蒸留により塔頂からイソペンタンを分留するとともに塔底から脱硫中質ナフサを分留し、脱硫軽質ナフサを側留留出する分割壁を有した分割壁蒸留塔と、
を具備したことを特徴としたイソペンタン分留装置。
【請求項2】
請求項1に記載のイソペンタン分留装置であって、
前記第2の蒸留塔は、プロパンおよびブタンを主成分とした前記液化石油ガスを分留する
ことを特徴としたイソペンタン分留装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のイソペンタン分留装置であって、
前記第1の蒸留塔の塔底と前記分割壁蒸留塔の塔底とが、前記脱硫重質ナフサおよび前記脱硫中質ナフサを合流可能に連結された
ことを特徴としたイソペンタン分留装置。
【請求項4】
水素化脱硫処理された脱硫ナフサからイソペンタンを分留するイソペンタン分留方法であって、
前記脱硫ナフサを蒸留して脱硫重質ナフサを分離して前記脱硫ナフサの軽質分を分留する分離工程と、
この分離工程で分留した前記脱硫ナフサの軽質分を蒸留して液化石油ガスを分離する整合工程と、
この整合工程で前記液化石油ガスを分離した前記脱硫ナフサの軽質分を分割壁が設けられた分割壁蒸留塔により蒸留し、塔頂からイソペンタンを分留するとともに塔底から脱硫中質ナフサを分留し、前記分割壁で脱硫軽質ナフサを側留留出する多成分分留工程とを有する
ことを特徴とするイソペンタン分留方法。
【請求項5】
請求項4に記載のイソペンタン分留方法であって、
前記整合工程は、プロパンおよびブタンを主成分とした前記液化石油ガスを分留する
ことを特徴とするイソペンタン分留方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載のイソペンタン分留方法であって、
前記分離工程で分留した前記脱硫重質ナフサと、前記多成分分留工程で分留した前記脱硫中質ナフサとを混合して脱硫重質ナフサを調製する
ことを特徴とするイソペンタン分留方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のイソペンタン分留装置で分留したイソペンタン、または、請求項4ないし請求項6のいずれかに記載のイソペンタン分留方法で分留したイソペンタンを、脱硫重質ナフサを接触改質処理して得られる改質ガソリンと混合して燃料油を調製する
ことを特徴とする燃料油調製方法。
【請求項8】
請求項7に記載の燃料油調製方法であって、
前記改質ガソリンは、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のイソペンタン分留装置で生成した脱硫重質ナフサと、請求項4ないし請求項6のいずれかに記載のイソペンタン分留方法における分離工程で生成した脱硫重質ナフサと、請求項3に記載のイソペンタン分留装置における前記脱硫重質ナフサおよび前記脱硫中質ナフサの合流成分と、請求項6に記載のイソペンタン分留方法で調整した脱硫重質ナフサとのうちの少なくともいずれか1つを、接触改質処理して生成したものである
ことを特徴とする燃料油調製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−241076(P2006−241076A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−59476(P2005−59476)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【出願人】(502053100)石油コンビナート高度統合運営技術研究組合 (72)
【Fターム(参考)】